(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】両面または片面工作機械
(51)【国際特許分類】
B24B 37/08 20120101AFI20240201BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20240201BHJP
B24B 37/10 20120101ALI20240201BHJP
B24B 37/015 20120101ALI20240201BHJP
B24B 37/005 20120101ALI20240201BHJP
B24B 45/00 20060101ALI20240201BHJP
B24B 7/17 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B24B37/08
B23Q11/10 A
B24B37/10
B24B37/015
B24B37/005 B
B24B45/00 Z
B24B7/17 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022008879
(22)【出願日】2022-01-24
【審査請求日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】10 2021 103 709.3
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517033148
【氏名又は名称】ラップマスター ヴォルターズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】ボラー ハンスペーター
(72)【発明者】
【氏名】ヌーバー インゴ
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-326155(JP,A)
【文献】特開平04-365554(JP,A)
【文献】特開2002-273652(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0003850(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/08
B23Q 11/10
B24B 37/10
B24B 37/015
B24B 37/005
B24B 45/00
B24B 7/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の支持ディスク(10、100)に固定され
た第1の作業ディスク(14、140)と、カウンターベアリング要素とを備える両面または片面工作機械であって、
前記第1の作業ディスク(14、140)および前記カウンターベアリング要素は、少なくとも1つの駆動シャフトによって互いに相対的に回転するように駆動可能であり、
作業ギャップ(18、180)は、平坦なワークピースの両面または片面を機械加工するために、前記第1の作業ディスク(14、140)と前記カウンターベアリング要素との間に形成され、
第1のクランプ手段(20)は、前記第1の作業ディスク(14、140)と対向する前記第1の支持ディスク(10、100)のクランプ面(24)に対して、前記作業ギャップ(18、180)から離間する方向に向くクランプ面(26)で前記第1の作業ディスク(14、140)をクランプするために設けられ
、
デカップリング手段は、前記第1の作業ディスク(14、140)を前記第1の支持ディスク(10、100)から少なくとも部分的に分離するために設けられ、
前記デカップリング手段は、前記第1の作業ディスク(14、140)および前記第1の支持ディスク(10、100)の前記クランプ面(24、26)の間に配置される少なくとも1つの軸受(32)を備え、
前記少なくとも1つの軸受(32)は、少なくとも1つの転がり軸受(32)を備え、
前記第1のクランプ手段(20)は、前記第1の支持ディスク(10、100)を、前記第1の作業ディスク(14、140)の前記クランプ面(26)に対してそのクランプ面(24)でクランプするクランプねじ(20)を備えることを特徴とする、両面または片面工作機械。
【請求項2】
前記第1の作業ディスク(14、140)は、環状であることを特徴とする、請求項1に記載の両面または片面工作機械。
【請求項3】
前記デカップリング手段は、前記第1のクランプ手段(20)を弾性的にプレストレスするための弾性プレストレス手段(30)を備えることを特徴とする、
請求項1又は請求項2に記載の両面または片面工作機械。
【請求項4】
前記弾性プレストレス手段(30)は、前記クランプねじ(20)のねじ頭(22)と前記第1の作業ディスク(14、140)から離間した方向に向く前記第1の支持ディスク(10、100)の表面(28)との間に各々配置される弾性ばね座金(30)を備えることを特徴とする、
請求項3に記載の両面または片面工作機械。
【請求項5】
前記デカップリング手段は、前記第1の作業ディスク(14、140)と前記第1の支持ディスク(10、100)との間にデカップリング中間層、特に摺動中間層または熱的分離のための中間層を含むことを特徴とする、
請求項1から4のいずれか一項に記載の両面または片面工作機械。
【請求項6】
前記第1の作業ディスク(14、140)の材料は、前記第1の支持ディスク(10、100)の材料よりも低い熱膨張係数を有することを特徴とする、
請求項1から5のいずれか一項に記載の両面または片面工作機械。
【請求項7】
前記カウンターベアリング要素は
、第2の作業ディスク(16、160)によって形成され、前記第1および第2の作業ディスク(16、160)は、互いに相対的に同軸上に配置され、前記作業ギャップ(18、180)は、平坦なワークピースの両面または片面を機械加工するために、前記第1および第2の作業ディスク(14、140、16、160)の間に形成されることを特徴とする、
請求項1から6のいずれか一項に記載の両面または片面工作機械。
【請求項8】
前記第2の作業ディスク(16、160)は、環状に形成されることを特徴とする、
請求項7に記載の両面又は片面工作機械。
【請求項9】
前記第2の作業ディスク(16、160)は、第2の支持ディスク(12、120)に固定され、第2のクランプ手段は、前記第2の作業ディスク(16、160)に対向する前記第2の支持ディスク(12、120)のクランプ面に対して、前記作業ギャップ(18、180)から離間する方向に向くクランプ面で前記第2の作業ディスク(16、160)をクランプするために設けられ、デカップリング手段はまた、前記第2の作業ディスク(16、160)を前記第2の支持ディスク(12、120)から少なくとも部分的に分離するために設けられることを特徴とする、
請求項8に記載の両面または片面工作機械。
【請求項10】
圧力容積部(300)は、前記第1の支持ディスク(10、100)と前記第1の作業ディスク(14、140)との間に配置され、該圧力容積部が、圧力が前記圧力容積部(300)に蓄積され、前記第1の作業ディスク(14,140)に所定の局所変形を生成するような方法で作動可能な圧力流体供給部に接続されることを特徴とする、
請求項1から9のいずれか一項に記載の両面または片面工作機械。
【請求項11】
温度制御チャネル(220、280)は、前記第1の作業ディスク(14、140)の温度を制御するために設けられ、温度制御流体供給部に接続されることを特徴とする、
請求項1から10のいずれか一項に記載の両面または片面工作機械。
【請求項12】
温度制御チャネル(220、280)は、前記第1の作業ディスク(14、140)の温度を制御するために設けられ、温度制御流体供給部に接続され、
前記温度制御チャネル(220、280)は、前記第1の作業ディスク(14、140)内に配置され、前記温度制御チャネル(220、280)が前記圧力容積部(300)よりも前記作業ギャップ(18、180)の近くに配置され、前記温度制御チャネル(220、280)が前記圧力容積部(300)に接続されないようにすることを特徴とする、
請求項10に記載の両面または片面工作機械。
【請求項13】
前記第1の作業ディスク(14,140)は、互いに接続される2つのディスクから形成され、かつその間に前記温度制御チャネル(220、280)が形成され、一方の前記ディスクは前記作業ギャップ(18、180)に隣接し、他方の前記ディスクは前記第1の支持ディスク(10、100)の前記クランプ面に対してクランプするための前記クランプ面を有することを特徴とする、
請求項11または12に記載の両面または片面工作機械。
【請求項14】
前記2つのディスクは、環状に形成されることを特徴とする、請求項13に記載の両面または片面工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の支持ディスクに固定された好ましくは環状の第1の作業ディスクと、カウンターベアリング要素とを備える両面または片面工作機械であって、第1の作業ディスクおよびカウンターベアリング要素は、少なくとも1つの駆動シャフトによって互いに相対的に回転するように駆動可能であり、作業ギャップは、平坦なワークピースの両面または片面を機械加工するために、第1の作業ディスクとカウンターベアリング要素との間に形成され、第1のクランプ手段は、第1の作業ディスクと対向する第1の支持ディスクのクランプ面に対して、作業ギャップから離間する方向に向くクランプ面で第1の作業ディスクをクランプするために設けられる両面または片面工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ウエハなどの平坦なワークピースは、両面工作機械において、両面同時に機械加工される。そのため、両面工作機械は、上部作業ディスクと下部作業ディスクとを有し、これらの間に作業ギャップが形成され、加工の間、この作業ギャップに機械加工対象のワークピースが案内される。上部作業ディスクは上部支持ディスクに固定され、下部作業ディスクは下部支持ディスクに固定される。機械加工の間、少なくとも1つの作業ディスクがその支持ディスクと共に回転駆動することによって、作業ディスクの間に相対回転が生じる。両面工作機械では、いわゆるロータディスクを誘導する両面工作機械が知られている。ロータディスクは一般に、機械加工されるワークピースを浮いた状態で円形開口部に収納する。また、適切な運動学によって、ロータディスクは、作業ディスクの相対回転中に作業ギャップ内で確実に回転する。その結果、ワークピースは、作業ギャップ内でサイクロイド軌道に沿って移動する。これにより、特に均一な表面機械加工が達成される。
【0003】
ここで問題となるような工作機械では、機械加工中に生じるプロセス熱に起因して、作業ディスクの間の作業ギャップに変化が生じる。具体的には、作業ディスクの熱に関連した変形が生じ、したがってギャップ形状に規定された形状からの偏差が生じる。この偏差は、加工の結果に悪影響を及ぼす。これは、特にいわゆるプライムウエハの非常に高い加工要件に当てはまる。
【0004】
特に半導体ウエハを機械加工するための二ディスク型研磨機が、ドイツ特許第10007390号(特許文献1)から知られている。この場合、冷却チャネルが、研磨ディスクを支持する支持ディスク内、または支持ディスク内および研磨ディスク内に形成され、この冷却チャネルによって冷却が行われることにより、作業ギャップの形状への望ましくない影響が防止される。さらに、ベース支持体と支持ディスクとの間で相対的な半径方向の移動が可能であり、これによりベース支持体と支持ディスクとの温度が異なるとき、変形が低減される。
【0005】
作業ディスクの温度を制御することによって、発生するプロセス熱による悪影響を弱めることが、ドイツ特許第102004040429号(特許文献2)から知られている。チャネルが支持ディスクに形成され、そこに冷却水などの対応する温度制御流体が流される。
【0006】
さらに、上部支持ディスクと、上部支持ディスクと共にそこに取り付けられた上部作業ディスクとを機械的に変形させる装置が、ドイツ特許第102006037490号(特許文献3)から知られている。この装置では、最初は平坦である上部作業ディスクの作業面をわずかに凹状の面に変更できる。反対に、最初はわずかに凸状である上部作業ディスクの作業面を平坦、またはそれぞれ凹状の作業面に変更できる。
【0007】
特に、例えば水のような圧力媒体を作業ディスクに作用する圧力チャンバに導入することによって、作業ディスクの少なくとも一方を局所的に変形させる手段を備えた両面または片面工作機械が、ドイツ特許出願公開第102016102223号(特許文献4)から知られている。この手段では、例えば作業ディスクに作用する局所的な凹状または複雑な変形を生成することが可能である。さらに、冷却チャネルが冷却用の作業ディスクの支持ディスクに形成されている。また、ドイツ特許第102006037490号(特許文献3)に記載のように、全体的な変形を生成するための手段を設けることができる。
【0008】
周知のシステムに関する問題は、作業ギャップに直接隣接する作業ディスクが作業ディスクを支持する支持ディスクよりも動作中により高温の熱を帯びる可能性があることである。その結果、作業ディスクと支持ディスクとの間に応力が生じる可能性がある。したがって、作業ギャップが確実に、制御可能な手段による影響を受けることができなくなる。また、温度差に応じて、支持ディスクと作業ディスクとの間の相互的なずれが生じる可能性がある。動作後の後続の冷却の間、例えばねじ接続から、ディスクは、移動に対抗する摩擦力に起因して、完全に元の位置に戻らない。したがって、完全な冷却の後、摩擦力の2倍の量の力偏差がディスクの間に残る可能性がある。これにより、次に異なる局所形状が生じる可能性がある。さらに、支持ディスクと作業ディスクとの間のブレースの変化により、作業ディスクの全体的な形状が変化する可能性がある。また、動作中に、作業ギャップに隣接する作業ディスクの面と作業ディスクの反対側との間で大きな温度差が生じる可能性がある。これらにより、2つの面に異なる熱膨張が生じる可能性があり、これによって作業ディスクに膨張が生じ、したがって局所形状にも変化が生じる可能性がある。
【0009】
熱に関連した形状の変化は、例えばインバーとして知られる、鉄-ニッケル特殊合金のように、熱膨張係数が非常に低い材料を使用することによって相殺することができる。ただし、このような材料は、高価で、加工、特に鋳造または機械加工が難しい。このような材料を使用することは、比較的薄い作業ディスクに対してのみ経済的に実行可能である。しかしながら、より熱膨張係数の大きい材料で作られた支持ディスクでこのような作業ディスクを支持することにより、バイメタルが形成され、比較的小さな温度変化の場合でも、形状の変化とそれに対応した大きなブレース力が発生することになる。したがって、国際出願第2020/208968号(特許文献5)は、熱膨張係数の低い作業ディスク材料を使用するとき、作業ディスクを支持ディスクで支持するのではなく、マウントを介して作業ディスクを支持ディスクに吊り下げるのみにすることを提案している。その結果、作業ディスクと支持ディスクとの間の接触は、最小化される。しかしながら、支持ディスクと作業ディスクとの間にブレースがないため、加工結果が損なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】ドイツ特許第10007390号
【文献】ドイツ特許第102004040429号
【文献】ドイツ特許第102006037490号
【文献】ドイツ特許出願公開第102016102223号
【文献】国際出願第2020/208968号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の従来技術から進めて、本発明の目的は、熱の影響による、ワークピースを機械加工するための作業ギャップの形状の局所的または全体的な変化を最小化するタイプの両面または片面工作機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、請求項1に記載の両面または片面工作機械によって、この目的を達成する。有利な実施形態は、従属請求項、明細書および図面にて開示される。
【0013】
問題となっているタイプの両面または片面工作機械に対して、本発明は、第1の作業ディスクを第1の支持ディスクから少なくとも部分的に分離するためのデカップリング手段が設けられている点で目的を達成している。
【0014】
工作機械は、例えば、研磨機、ラップ盤、または研削機とすることができる。片面工作機械では、第1の作業ディスクと単純重量または圧力シリンダなどのカウンターベアリング要素との間に作業ギャップが形成され、もしくはウエハなどの機械加工されるワークピースの両面または片面を機械加工する、両面工作機械で第2の作業ディスクとの間に作業ギャップが形成される。工作機械は、両面工作機械または片面工作機械とすることができる。両面工作機械では、ワークピースの底面および上面は、好ましくは作業ギャップ内で同時に機械加工され得る。それに対応して、両方の作業ディスクは、ワークピース表面を機械加工する作業面を有することができる。対照的に、片面工作機械では、片面のワークピースのみ機械加工される。例えば、下部作業ディスクによって底面のみが機械加工される。この場合、1つの作業ディスクのみが、ワークピース表面を機械加工する作業面を有する。この場合、カウンターベアリング要素は、作業ディスクによって機械加工するために対応するカウンターベアリングのみを形成するように機能する。
【0015】
ワークピースは、機械加工のために作業ギャップ内に配置されたロータディスクの開口部に周知の方法で浮遊するように収容可能である。第1の作業ディスクおよびカウンターベアリング要素は、動作中に、例えば第1および/または第2の駆動シャフトならびに少なくとも1つの駆動モータによって、互いに相対的に回転するように駆動する。カウンターベアリング要素ならびに第1の作業ディスクの両方は、例えば反対方向に回転するように駆動可能である。ただし、カウンターベアリング要素または第1の作業ディスクのいずれか一方のみを回転駆動することが可能である。例えば、両面工作機械では、ロータディスクは、適切な運動学によって移動して、この相対回転中に作業ギャップを通って回転し、ロータディスク内に配置されたワークピースが作業ギャップ内でサイクロイド軌道を描くようにすることができる。例えば、ロータディスクは、その外縁部および/または内縁部に、例えば第1の作業ディスクに連携する歯に係合する歯を有してもよい。このようないわゆる遊星運動学による機械は、周知である。
【0016】
第1の作業ディスクは、環状に設計され得る。また、カウンターベアリング要素、またはそれぞれ第2の作業ディスクは、環状に設計され得る。そして、第1の作業ディスクおよび第2の作業ディスクなどのカウンターベアリング要素は、対向する環状の作業面を有し、その間に環状の作業ギャップが形成される。作業面は、研磨布などの作業用カバーで覆われることが可能である。また、作業ディスクを保持する任意の支持ディスクは、環状に設計可能であるか、もしくは作業ディスクを固定する少なくとも環状の支持部分を有する。また、1つの作業ディスクにつき複数の支持ディスクを設けることができる。第1の作業ディスクおよび/またはカウンターベアリング要素は、1つまたは複数の層で形成可能である。第1の作業ディスクまたはカウンターベアリング要素を支持する支持ディスクにも同じことが当てはまる。
【0017】
本発明によれば、デカップリング手段は、第1の支持ディスクから第1の作業ディスクを少なくとも部分的に、例えば、完全に分離するため、具体的には機械的に分離するために設けられる。デカップリング手段によってもたらされる少なくとも部分的な分離により、デカップリング手段がない場合と比較して、第1の作業ディスクおよび第1の支持ディスクは、より容易に、すなわち低減された摩擦力の下で、互いに相対的に移動できるようになる。したがって、作業ディスクおよび任意選択で支持ディスクの実質的な自由膨張が可能である。具体的には、第1の作業ディスクおよび第1の支持ディスクの相互に対向するクランプ面の間で、第1のクランプ手段によってもたらされる、摩擦力が低減される。このため、デカップリング手段は、第1のクランプ手段に作用することができる。
【0018】
従来技術では、冷却または機械的な変形などの付加的な手段によって熱膨張を相殺する、特に可能な限り熱膨張を抑制するように試みられてきた。本発明は、別のアプローチを提供する。サイズの熱的変化は基本的に許容されるが、デカップリング手段は、サイズの熱的変化が作業ギャップに悪影響を与えず、したがって加工結果にも影響を与えないという効果を有する。第1の作業ディスクおよび支持ディスクのクランプ面の間の摩擦力が減少するため、例えば、動作中に作業ディスクのサイズの熱的変化による作業ギャップの形状の変化に関する冒頭で説明した問題は生じない。既述のように、第1の作業ディスクおよび第1の支持ディスクは、例えば動作中に第1の作業ディスクが加熱されると、対応する接合面を形成するそれらのクランプ面に沿って、互いに相対的に変位する。また、既述のように、第1のクランプ手段によってもたらされる摩擦力のために、後続の冷却では、出発位置への完全な復帰運動が生じない。したがって、ある程度のヒステリシスがある。デカップリング手段は、例えば、加熱後に行う冷却中に出発位置への完全な復帰動作が行われるような方法で、第1のクランプ手段によってもたらされる摩擦力を低減する。これにより、持続的な応力および局所的または全体的な形状の変化を最小化できる。同時に、支持ディスクと作業ディスクとの間で広範囲のブレースが実現され、特に第1の作業ディスクおよび/または第1の支持ディスクの表面全体または半径方向の拡張部全体にわたって実質的にブレースが実現される。したがって、このようなブレースがない上述した従来技術とは対照的に、加工結果は損なわれない。
【0019】
デカップリング手段は、第1の作業ディスクおよび第1の支持ディスクのクランプ面の間に配置され得る。したがって、第1の作業ディスクおよび第1の支持ディスクのクランプ面が直接接触せず、デカップリング手段を介した間接的な接触のみが可能である。同時に、作業ディスクおよび支持ディスクを、例えば、半径方向の異なる位置に設けられたクランプねじを介して、それらの表面全体、特に半径方向の拡張部全体にわたって、互いに固定することができる。また、デカップリング手段は、第1のクランプ手段自体にも作用することができる。その場合、第1の作業ディスクが第1の支持ディスクのクランプ面に対して直接そのクランプ面を支持するが、第1のクランプ手段は、例えば、低減された摩擦力で第1の作業ディスクと第1の支持ディスクとの間の相対的な移動がクランプ面の上で可能な方法で、プレストレスされることが可能である。
【0020】
本発明によれば、特に第1の作業ディスクのクランプ面は、第1の支持ディスクのクランプ面に対して直接支持することが可能であり、これらのクランプ面の間に中間層または中間要素が設けられていない。デカップリング手段が第1の作業ディスクおよび第1の支持ディスクのクランプ面の間に配置されている場合、デカップリング手段を除いて、クランプ面の間に中間層またはさらなる中間要素が存在しないことが可能である。
【0021】
特に実用的な実施形態によれば、デカップリング手段は、第1の作業ディスクおよび第1の支持ディスクのクランプ面の間に配置される、少なくとも1つの軸受、特に複数のこのような軸受を備えることができる。クランプ面の間に配置された軸受は、機械的な分離を実現することによって、かなり低減された摩擦力で第1の作業ディスクと第1の支持ディスクとの間で相対的な移動を可能にする。転がり軸受、例えば、ころ軸受は、特に適した軸受である。このような軸受は、例えば、特にクランプ手段、例えばクランプねじの周囲に配置され得る。
【0022】
さらなる実施形態によれば、デカップリング手段は、第1のクランプ手段を弾性的にプレストレスするための弾性プレストレス手段を備えてもよい。このような弾性プレストレス手段は、代替的または追加的に、クランプ面の間に配置される、軸受などのデカップリング手段のために設けられることができる。弾性プレストレス手段は、第1の作業ディスクおよび第1の支持ディスクのクランプ面を互いにクランプするような方法で、第1のクランプ手段を弾性的にプレストレスする。この弾性プレストレスに抗して、クランプ面がサイズの熱的変化の過程で相対的に変位したとき、クランプ面の間の摩擦力が低減される。既述のように、弾性プレストレス手段は、クランプ手段面の間のデカップリング手段、例えば、クランプ面の間の少なくとも1つの軸受に追加して設けられることができる。この場合、弾性プレストレス手段は、少なくとも1つの軸受、例えば、少なくとも1つの転がり軸受をプレストレスできる。そして、弾性プレストレス手段の弾性変形により、第1の作業ディスクおよび第1の支持ディスクのクランプ面の間で移動の自由度を高めることができる。
【0023】
さらなる特に実用的な実施形態によれば、第1のクランプ手段は、第1の支持ディスクを、第1の作業ディスクのクランプ面に対してそのクランプ面でクランプするクランプねじを備えることができる。このようなクランプねじは、作業ギャップから離間する方向に向く側面から、第1の支持ディスクおよび第1の作業ディスクの対応するねじ受容部に挿入可能である。このため、クランプねじを、第1の支持ディスクを通って案内し、第1の作業ディスクにねじ込むことができる。少なくとも第1の作業ディスクでは、ねじ受容部は、対応するねじ山を有することができる。クランプねじのねじ頭は、第1の作業ディスクから離間する方向に向く第1の支持ディスクの側面を支持することができる。固定するために、複数のクランプねじを設けることができる。例えば、環状の第1の作業ディスクの場合、クランプねじの第1のグループは、第1の作業ディスクまたは第1の支持ディスクの半径方向外側の部分円に沿って配置され、クランプねじの第2のグループは、第1の作業ディスクまたは第1の支持ディスクの半径方向内側の部分円に沿って配置される。部分円は各々、第1の作業ディスクまたは第1の支持ディスクの半径方向外側または半径方向内側の端部近くに配置され得る。
【0024】
これに関するさらなる実施形態によれば、弾性プレストレス手段は、弾性ばね座金を備えることができ、これらのばね座金は各々、クランプねじのねじ頭と第1の作業ディスクから離間した方向に向く第1の支持ディスクの表面との間に配置される。ばね座金は、ねじ頭と支持ディスクの対向する面との間でクランプされ、これによって弾性的に圧縮され、したがって、プレストレスされ得る。このプレストレスに対して、第1の作業ディスクおよび第1の支持ディスクのクランプ面の間の摩擦力を低減できる。
【0025】
さらなる実施形態によれば、デカップリング手段は、第1の作業ディスクと第1の支持ディスクとの間にデカップリング中間層を含むことができる。これは、例えば、特にテフロンなどの摺動材料の、摺動中間層であってもよい。ただし、デカップリング中間層は、熱的分離のための中間層であってもよく、したがって、低い熱伝導率を有する。したがって、デカップリング手段はまた、熱的デカップリング手段とすることができる。
【0026】
さらなる実施形態によれば、第1の作業ディスクの材料は、第1の支持ディスクの材料よりも低い熱膨張係数を有することができる。具体的には、第1の作業ディスクの熱膨張係数は、第1の支持ディスクの熱膨張係数よりも実質的に小さくすることができ、例えば、5分の1、好ましくは10分の1まで低くすることができる。冒頭で説明したように、第1の支持ディスクと第1の作業ディスクとに熱膨張係数が大きく異なる材料を使用すると、バイメタルが発生し、サイズが熱的に変化した場合、これによって形状の変化が生じる。第1の作業ディスクと第1の支持ディスクとの間の本発明による少なくとも部分的な分離により、第1の作業ディスクと第1の支持ディスクとの熱膨張係数が大きく異なる場合でも、第1の作業ディスクと第1の支持ディスクとの間で大きな応力が発生しない。その結果、バイメタルに関して冒頭で説明した問題を回避できる。したがって、特に第1の作業ディスクに対してのみ、非常に低い熱膨張係数を有する材料、例えばインバーのような鉄-ニッケル合金を使用することが可能であり、一方で、より高い熱膨張係数を有する従来の材料、例えば鋳鉄を第1の支持ディスクに同時に使用可能である。そして、プロセス熱に大きく依存しない形状が生成される。同時に、熱膨張係数が非常に低い材料を作業ディスクに使用すると、作業ディスクの形状安定性、ひいては作業ギャップの形状安定性に関して有利である。
【0027】
さらなる実施形態によれば、カウンターベアリング要素は、好ましくは環状の第2の作業ディスクによって形成可能であり、第1および第2の作業ディスクは、互いに同軸上に配置され、作業ギャップは、平坦なワークピースの両面または片面を機械加工するために、第1および第2の作業ディスクの間に形成される。第2の作業ディスクは、第2の支持ディスクに固定可能であり、第2のクランプ手段は、第2の作業ディスクに対向する第2の支持ディスクのクランプ面に対して、作業ギャップから離間する方向に向くクランプ面で第2の作業ディスクをクランプするために設けられ、また、デカップリング手段は、第2の作業ディスクを第2の支持ディスクから少なくとも部分的に分離するために設けられる。第2のクランプ手段は、例えば、第1のクランプ手段として設計され得る。また、第2の作業ディスクおよび/または第2の支持ディスクは、第1の作業ディスクまたは第1の支持ディスクと同様に設計され得る。また、第2の作業ディスクを第2の支持ディスクから分離するためのデカップリング手段は、第1の作業ディスクを第1の支持ディスクから分離するためのデカップリング手段と同様に設計され得る。この点で、この文脈で説明した例示的な実施形態はすべて、第2のクランプ手段およびそれらのデカップリング手段を備えた第2の作業ディスクおよび第2の支持ディスクに転換可能である。
【0028】
さらなる実施形態によれば、好ましくは環状の圧力容積部を、第1の支持ディスクと第1の作業ディスクとの間に形成することができる。圧力容積部は、第1の作業ディスクに所定の局所変形を生成する圧力が圧力容積部に蓄積されるように作動可能な圧力流体供給部に接続される。本出願では、流体という用語が使用される限り、それは液体ならびに気体を指すことができる。圧力流体は、液体、具体的には水とすることができる。圧力容積部に圧力流体を導入することによって、支持ディスクと比較して薄い作業ディスクに圧力をかけることができ、当該圧力は作業ディスクの変形をもたらす。具体的には、これによって作業ディスクは、圧力容積部の圧力を低く設定することによって局所的に凹んだ形状に、中程度の圧力を設定することによって局所的に平坦な形状に、高い圧力を設定することによって局所的に凸形状に変化可能である。局所的に凸状の変形、またはそれぞれ凹状の変形、またはそれぞれ形状は、環状の第1の作業ディスクの内縁部と外縁部との間、特に半径方向にある。圧力容積部は、変化可能な圧力容積部である。第1の作業ディスクは、異なる圧力によって生じる圧力容積部の体積に応じて変形する膜を形成する。
【0029】
圧力流体供給部は、圧力容積部に接続された少なくとも1つの圧力ラインに接続される圧力流体リザーバを備える。ポンプおよび制御弁は、圧力ラインに配置可能であり、これらは、例えば、制御および/または調節装置によって、圧力容積部内に所望の圧力を蓄積するように作動することができる。さらに、圧力流体供給部は、圧力容積部内の圧力を直接または間接的に測定する圧力測定装置を備えることができ、また測定値を制御および/または調節装置に送ることができる。圧力容積部内の圧力流体供給部を適切に作動させることにより、所望の作業ギャップ形状に必要な圧力をこれに基づいて調整できる。例えば、半径方向の拡張部の上で作業ディスク間の距離が変化しないことが望ましい。所望のギャップ形状は、静的動作および/または動的動作において、すなわちワークピースの機械加工中に調整可能である。
【0030】
圧力容積部では、設置条件、形状および材料の境界条件によって決定される最大凹形状から最大凸形状の間で、第1の作業ディスクの局所形状をスムーズに調整することが基本的に可能である。第1の作業ディスクは、原則として任意の厚さを有することができる。ディスク形状の所望の調整範囲に応じて、作業ディスクは、その表面積、具体的にはそのリング幅、またはそれぞれその回転半径に応じて利用可能な圧力で変形できるように、適切な厚さを有する。ドイツ特許出願公開第102016102223号にて説明されるように、第1の作業ディスクの局所形状を半径方向に調整する可能性により、機械加工中の温度の影響によるギャップの変化を補償することができる。
【0031】
さらなる実施形態によれば、第1の作業ディスクの温度を制御するために温度制御チャネルを設けることが可能であり、温度制御チャネルは温度制御流体供給部に接続される。温度制御チャネルは、温度制御流体を流すように設計されている。温度制御チャネルは、例えばラビリンス状に設計され得る。温度制御流体、例えば水などの温度制御液体は、機械が動作している間、温度を制御するために、特に作業ディスクを冷却するために、温度制御チャネルを通って案内され得る。作業ディスクの熱に関連する変形は、温度制御チャネルによってある程度相殺され得る。
【0032】
さらなる実施形態によれば、温度制御チャネルは第1の作業ディスク内に配置され、温度制御チャネルが圧力容積部よりも作業ギャップの近くに配置され、温度制御チャネルが圧力容積部に接続されないようにすることが可能である。第1の作業ディスク内、具体的には第1の作業ディスク内に排他的に温度制御チャネルが配置されることにより、温度制御チャネルは、圧力容積部よりも作業ギャップの近くに配置され得る。特に、温度制御流体用の供給ラインおよび排出ラインは、温度制御流体供給部に接続される支持ディスク内を1本のみ貫通することができる。作業ギャップのより近くに配置された温度制御チャネルによって、第1の作業ディスクの冷却は、より効果的になり、特に作業ディスクが支持ディスクよりも強く加熱され、作業ギャップに隣接する作業ディスクの側面がより強く加熱されるという上述の問題を最小化できる。また、第1の作業ディスクと第1の支持ディスクとの間の対応する応力ならびに第1の作業ディスクの望ましくない変形を最小化できる。実際、温度制御チャネルは、作業ギャップに隣接する作業ディスクの表面に可能な限り近くに配置されることにより、作業ディスクを通るプロセス熱の支持ディスクへの浸透を防止できる。第1の作業ディスクと第1の支持ディスクとの間の熱の伝達をさらに最小化するために、第1の支持ディスクおよび/または第1の作業ディスクを、ディスク間の接触面が最小化されるようにそれらの接触の領域にバーまたは他の隆起物を備えて提供することが可能である。
【0033】
さらに、本発明では、温度制御チャネルと圧力容積部とが互いに接続され、かつ共通の回路を形成する従来技術とは異なり、温度制御チャネルは、圧力容積部に接続されない。したがって、一方では温度制御チャネル用に、他方では圧力容積部用に、別個の流体システム(回路)が設けられる。これにより、温度制御チャネル内の圧力とは無関係に、圧力容積部内の圧力をより柔軟に調整することが可能になる。さらに、局所形状を調整するための圧力容積部内の有用な圧力は、従来技術とは対照的に、温度制御チャネル内の圧力によって制限されない。
【0034】
別の実施形態によれば、第1の作業ディスクを、互いに接続される2つの好ましくは環状ディスクから形成することができ、かつその間に温度制御チャネルが形成され、一方のディスクは作業ギャップに隣接し、他方のディスクは第1の支持ディスクのクランプ面に対してクランプするためのクランプ面を備える。したがって、第1の作業ディスクは、2つの部品で構成され、第1の作業ディスクは、サンドウィッチ構造に類似した2つの部分的ディスクの間に温度制御チャネルを形成する。この設計により、第1の作業ディスク内に温度制御チャネルを排他的に形成することが、構造の観点から非常に容易になる。特に実用的な実施形態によれば、2つのディスクは、互いにねじ止めされ得る。ただし、他のタイプの固定ももちろん想定される。
【0035】
別の実施形態によれば、第1の作業ディスクを、その外縁部の領域および内縁部の領域においてのみ、第1の支持ディスクに固定することができる。上述したように、作業ディスクは、特に環状とすることができる。次に、好ましくは環状の圧力容積部は、第1の作業ディスクと第1の支持ディスクとの間に形成される。前述の実施形態では、第1の作業ディスクは、作業面に隣接するその半径方向外縁部および半径方向内縁部の領域においてのみ、第1の支持ディスクに固定され、例えばクランプ手段としてクランプねじを使用して部分円に沿ってねじ留めされる。対照的に、これらの縁部領域の間で、作業ディスクは、支持ディスクに固定されない。具体的には、圧力容積部は、この領域内に形成され得る。このように、圧力容積部内に適切な圧力を蓄積することによって、所望の方法で変形するために、作業ディスクは、必要な可動性を有する。支持ディスクへの作業ディスクの取り付けは、可能であれば作業ディスクの表面全体にわたって特定の変形を得るために、内縁部および外縁部上の接触面が可能な限り狭く保たれるように選択される。
【0036】
本発明の例示的な実施形態は、図面に基づいて下記により詳細に説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図2】第1の例示的な実施形態による両面工作機械の第1の作業ディスクと第1の支持ディスクの断面図を示す。
【
図3】第2の例示的な実施形態による両面工作機械の第1の作業ディスクと第1の支持ディスクの断面図を示す。
【
図4】さらなる例による両面工作機械の第1の作業ディスクと第1の支持ディスクの断面図を示す。
【0038】
特に明記しない限り、同一の参照番号は、図中の同一の対象を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1にて単なる例として示された両面工作機械は、環状の第1の下部支持ディスク100および同様に環状である第2の上部支持ディスク120を有する。環状の第1の下部作業ディスク140は下部支持ディスク100に固定され、同様に環状である第2の上部作業ディスク160は上部支持ディスク120に固定される。環状作業ディスク140、160の間に、環状作業ギャップ180は形成され、この作業ギャップ180に、ウエハなどの平坦なワークピースが動作中に両面加工される。両面工作機械は、例えば研磨機、ラップ盤、または研削機とすることができる。
【0040】
上部支持ディスク120と、それと共に上部作業ディスク160、および/または下部支持ディスク100とそれと共に下部作業ディスク140は、例えば上部駆動シャフト、および/または下部駆動シャフト、ならびに少なくとも1つの駆動モータを備える適切な駆動装置によって互いに相対的に回転駆動可能である。駆動装置自体は周知であり、明確性の理由からさらに説明されない。また、これ自体周知の方法では、機械加工されるワークピースは、作業ギャップ180内のロータディスクに浮遊するように保持され得る。適切な運動学、例えば遊星運動学によって、ロータディスクはまた、支持ディスク100、120、またはそれぞれ作業ディスク140、160の相対回転中に作業ギャップ180を介して確実に回転することができる。制御および/または調整装置200は、両面工作機械の動作を制御、またはそれぞれ調整する。
【0041】
図1に示す例では、ラビリンス状の温度制御チャネル220は、下部作業ディスク140内に設けられる。温度制御チャネル220は、例えば下部支持ディスク100と下部作業ディスク140を駆動する駆動シャフトを介して、供給部240および排出部260によって、温度制御流体供給部に接続される。制御および/または調整装置200を使用して、例えば温度制御チャネルの入口および/または出口で温度制御流体の所定の温度値に調整可能であり、もしくは温度制御流体の温度を相応に調整することによって、温度制御チャネルの入口で示される温度と出口で示される温度との間の所定の温度差を調整できる。また、図示された例では、ラビリンス状の温度制御チャネル280は、上部作業ディスク160内に形成され、また供給部および排出部(図示せず)を介して温度制御流体供給部に接続される。また、この温度制御流体供給部は、制御および/または調整装置200によって制御される。温度制御チャネル220、またはそれぞれ280に温度制御流体、例えば水などの冷却剤を供給することによって、作業ディスク140、160の加熱および支持ディスク100、120への熱の伝達は、効果的に相殺可能であることにより、対応する形状の変化が低減される。
【0042】
さらに、図示された例では、環状の圧力容積部300は、下部支持ディスク100と下部作業ディスク140との間に形成され、供給部320を介して、また例えば下部支持ディスク100と下部作業ディスク140を駆動する駆動シャフトを介して、圧力流体供給部に接続される。また、圧力流体供給部は、制御および/または調整装置200によって作動する。圧力流体を圧力容積部300内に相応に導入することによって、下部作業ディスク140の局所的変形、具体的にはドイツ特許出願公開第102016102223号にて原則として説明されるような局所的な凹状または凸状の変形が生成される可能性がある。
【0043】
図1にて参照できるように、温度制御チャネル220は、圧力容積部300よりも作業ギャップ180の近くに配置される。さらに、圧力容積部300および温度制御チャネル220のダクトシステムは互いに接続されていないが、代わりに別々に制御可能であるか、もしくはそれぞれ調節可能である。
【0044】
図2から4は、
図1に示す両面工作機械に使用可能な第1の支持ディスクと第1の作業ディスクを示す。説明の都合上、
図2から4は、関連する供給部および排出ラインを含む、温度制御チャネル220および圧力容積部300を示していない。また、
図2から4に示す作業ディスクと支持ディスクが、供給部および排出ラインを含む、対応する温度制御チャネルおよび圧力容積部を有することは言うまでもない。さらに、
図2から4は、例として第1の支持ディスクと第1の作業ディスクのみを示している。追加で提供される、第2の支持ディスクと第2の作業ディスクは、適宜設計され得る。
【0045】
図2は、例えば
図1にて示す両面工作機械に使用可能な第1の下部支持ディスク10および第1の下部作業ディスク14の第1の例示的な実施形態を示す。図示された例示的な実施形態では、複数のクランプねじ20が設けられ、このクランプねじ20は作業ギャップ18から離間する方向に向く側面から第1の支持ディスク10を通って挿入され、かつ第1の作業ディスク14の対応するねじ付ボアにねじ込まれる。クランプねじは、環状の支持ディスクおよび作業ディスク10、14を介して2つの部分円、すなわち半径方向外側の部分円および半径方向内側の部分円に沿って配置される。クランプねじ20は、各々ねじ頭22を有する。第1の支持ディスク10は第1の作業ディスク14に対向するクランプ面24を有し、第1の作業ディスク14は第1の支持ディスク10に対向するクランプ面26を有する。クランプねじ20をねじ込む間、第1の支持ディスク10と第1の作業ディスク14は、互いに固定される。
図2による図示された例示的な実施形態では、クランプ面24、26は、固定された状態で互いに直接横たわっており、互いに固定されている。
【0046】
図2による例示的な実施形態では、クランプねじ20のねじ頭22と第1の作業ディスク14から離間する方向に向く第1の支持ディスク10の表面28との間に、弾性ばね座金30が配置され、ばね座金はクランプねじ20がねじ込まれた状態で弾性的に圧縮され、したがって、クランプ手段20を弾性的にプレストレスする。その結果、クランプ面24、26の上の第1の支持ディスク10と第1の作業ディスク14との間における熱に起因する相対移動の場合、クランプ手段20によって提供される摩擦力は低減されることにより、例えば、第1の作業ディスク14の熱膨張およびこれによって第1の支持ディスク10に対して引き起こされる相対移動の後に、第1の作業ディスク14がその元の位置に完全に戻るようになる。
【0047】
図3は、
図2による例示的な実施形態にほぼ対応するさらなる例示的な実施形態を示す。
図3による例示的な実施形態では、弾性ばね座金30に加えて、クランプねじ20の周囲に配置された転がり軸受32が、第1の支持ディスク10と第1の作業ディスク14のクランプ面24、26の間に設けられる。これらの転がり軸受32によって、第1の支持ディスク10と第1の作業ディスク14、具体的にはそれらのクランプ面24、26は、互いに機械的に分離される。したがって、クランプねじ20によって生じる第1の支持ディスク10と第1の作業ディスク14との間の摩擦力は、さらに低減される。
【0048】
図4は、上述したサイズの熱的変化の影響を回避するためのさらなる例を示す。
図4による例は、一方では、弾性ばね座金30の形態でデカップリング手段が設けられていない点で、
図2による例示的な実施形態とは異なる。他方では、第1の支持ディスク10‘と第1の作業ディスク14‘におけるクランプねじ20の周囲に逃げ溝34、36が形成されている点で異なる。このような逃げ溝34,36によって、上述したサイズの熱的変化による不利な影響を相殺する試みが行われてきた。しかしながら、この手段では、
図2および3によるデカップリング手段に関連する成功をもたらさないことがわかっている。
【符号の説明】
【0049】
10、10‘、100 下部支持ディスク
12、120 上部支持ディスク
14、14‘、140 下部作業ディスク
16、160 上部作業ディスク
18、180 作業ギャップ
20 クランプ手段、クランプねじ
22 ねじ頭
24 クランプ面
26 クランプ面
28 表面
30 ばね座金
32 転がり軸受
34 逃げ溝
36 逃げ溝
200 制御および/または調整装置
220 温度制御チャネル
240 供給部
260 排出部
280 温度制御チャネル
300 圧力容積部
320 供給部