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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ベルト
(51)【国際特許分類】
   D21F 3/02 20060101AFI20240201BHJP
   C08G 18/61 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
D21F3/02 Z
C08G18/61
C08G18/61 050
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022156459
(22)【出願日】2022-09-29
(65)【公開番号】P2023051862
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2022-11-22
(31)【優先権主張番号】20216016
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】515183610
【氏名又は名称】バルメット テクノロジーズ オサケユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ヴェサ‐マッティ リーヒオヤ
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/014927(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102018204884(DE,A1)
【文献】特開2006-144139(JP,A)
【文献】特開昭62-205116(JP,A)
【文献】特開2021-134466(JP,A)
【文献】特開昭63-159591(JP,A)
【文献】特開2011-080016(JP,A)
【文献】特開平05-222147(JP,A)
【文献】特表2020-526679(JP,A)
【文献】特開2006-037328(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104603358(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C19/00-19/44
C08F 6/00-246/00
C08G18/00-18/87
C08G71/00-71/04
C09D 1/00-10/00
D21B 1/00-D21J7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙、板紙、パルプ、又はティッシュ機械のためのベルトの本体を製造する製造方法であって、前記本体は内面及び外面を有しており、当該製造方法は、
変性ポリウレタンを得るために、少なくとも1つの官能基を有するポリジアルキルシロキサンをポリウレタンの製造プロセスに添加することによって前記変性ポリウレタンを製造するステップであって、該変性ポリウレタンは前記ポリジアルキルシロキサンとの共有結合を有するポリウレタンマトリックスを含む、ステップと、
前記ベルトの前記本体を形成するステップであって、該本体は、前記本体の前記外面を形成する外層を含み、該外層は、少なくとも0.5mmの厚さを有する、ステップと、を含み、
前記本体の前記外層は前記変性ポリウレタンを含
少なくとも1つの官能基を有する前記ポリジアルキルシロキサンは、
F1-[Si(CH O]n-Si(CH -F2
の構造を有するポリジメチルシロキサンであり、
ここで、nはSi(CH O単位の繰り返し数であり、F1及びF2の少なくとも1つが前記官能基を含み、F1及びF2のいずれかが水素(H)であり、F1及びF2のいずれかがOH又はNH からなる、
製造方法。
【請求項2】
前記変性ポリウレタンを含む前記ベルトの層は、この層全体を通して同じポリジアルキルシロキサン含有量を有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
少なくとも1つの官能基を有する前記ポリジアルキルシロキサン中の官能基の割合が、0.2mol%~4mol%の範囲、好ましくは1mol%~2mol%の範囲である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
紙、板紙、パルプ、又はティッシュ機械のためのベルト(10)であって、当該ベルトは、内面及び外面を含む本体を含み、該本体は、前記本体の前記外面を形成する外層を含み、該外層は、少なくとも0.5mmの厚さを有しており、
前記ベルトの前記本体の前記外面は変性ポリウレタンを含み、該変性ポリウレタンは、ポリジアルキルシロキサンとの共有結合を有するポリウレタンマトリックスを含
少なくとも1つの官能基を有する前記ポリジアルキルシロキサンは、
F1-[Si(CH O]n-Si(CH -F2
の構造を有するポリジメチルシロキサンであり、
ここで、nはSi(CH O単位の繰り返し数であり、F1及びF2の少なくとも1つが前記官能基を含み、F1及びF2のいずれかが水素(H)であり、F1及びF2のいずれかがOH又はNH からなる、
ベルト。
【請求項5】
記繰り返し単位の数nは、好ましくは30~150の範囲である、請求項に記載のベルト。
【請求項6】
前記変性ポリウレタンを含む前記ベルトの層は、この層全体を通して同じポリジアルキルシロキサン含有量を有する、請求項4に記載のベルト。
【請求項7】
前記外層は、前記ベルトの前記本体の厚さと等しいか又はそれよりも小さい厚さを有しており、少なくとも前記外層は変性ポリウレタンを含む、請求項又はに記載のベルト。
【請求項8】
前記変性ポリウレタンを含む前記本体の前記外層は、前記ベルトの外面からの深さとして測定して、0.5mm~3mmの範囲、好ましくは1mm~2.5mmの範囲の厚さを有する、請求項に記載のベルト。
【請求項9】
前記ポリジアルキルシロキサンの量が、前記変性ポリウレタンの総重量から測定して、0.8wt%~3wt%、好ましくは1.0wt%~2.5wt%の間の範囲である、請求項乃至のいずれか一項に記載のベルト。
【請求項10】
前記本体は溝又はパターンのない外面を有する、請求項乃至のいずれか一項に記載のベルト。
【請求項11】
前記本体の外面には溝がある、請求項乃至のいずれか一項に記載のベルト。
【請求項12】
前記本体は内層をさらに含み、該内層は、当該ベルトの前記本体の厚さより薄い厚さを有しており、前記内層は前記本体の内面を形成し、該内面には前記ポリジアルキルシロキサンがない、請求項乃至11のいずれか一項に記載のベルト。
【請求項13】
前記ポリジアルキルシロキサンは、1500g/molを超える、好ましくは約1500~6000g/molである分子量(MW)を有する、請求項乃至12のいずれか一項に記載のベルト。
【請求項14】
請求項乃至13のいずれか一項に記載のベルト(10)を含むスリーブ・ロール(100)。
【請求項15】
請求項乃至13のいずれか一項に記載のベルト(10)を含むシュー・プレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、板紙、パルプ、又はティッシュ機械のためのベルトの本体の製造プロセスに関する。本発明は、紙、板紙、パルプ、又はティッシュ機械のためのベルトにさらに関する。
【背景技術】
【0002】
抄紙機は、板紙、パルプ、及びティッシュ機械と同様に、典型的に、成形セクション、プレスセクション、及び乾燥セクションを備えている。紙、パルプ、及び板紙の製造において、生産効率を高めるために湿潤繊維ウェブ(wet fiber web)からの脱水量をいかに増やすかが課題となっている。
【0003】
現在、これらの機械には、典型的に、繊維ウェブから水を除去するためのフェルト及びワイヤがある。少なくとも1つの成形ワイヤを介して成形セクション上で、及び例えばフェルトを用いてプレスセクション上で、水を除去することができる。
【0004】
例えば成形セクションで湿潤繊維ウェブからの脱水を高めるに、スリーブ・ロール(sleeve roll)を使用することができる。シュー・プレス(shoe press)は、例えば、プレスセクションで脱水を高めるために使用することができる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、紙、板紙、パルプ、又はティッシュ機械のためのベルトに関する。本発明の1つの目的は、改良したベルトを提供することである。
【0006】
本発明の態様は、独立請求項に記載されていることによって特徴付けられる。本発明の様々な実施形態は、従属請求項に開示されている。
【0007】
紙、板紙、パルプ、又はティッシュ機械は、スリーブ・ロールを含み得る。スリーブ・ロールは、典型的に、紙、板紙、パルプ、又はティッシュ機械のワイヤセクションに配置される。スリーブ・ロールにより、ワイヤセクションの水分除去が改善され得る。
【0008】
代替的又は追加的に、紙、板紙、パルプ、又はティッシュ機械は、1つ又は複数のシュー・プレスを含み得る。シュー・プレスは、典型的に、紙、板紙、パルプ、又はティッシュ機械のプレスセクションに配置される。シュー・プレスにより、プレスセクションの水分除去が改善され得る。
【0009】
従って、紙、板紙、パルプ、又はティッシュ機械は、少なくとも1つのスリーブ・ロール及び/又は少なくとも1つのシュー・プレスを含み得る。新規なベルトは、スリーブ・ロール用のベルトであっても、シュー・プレス用のベルトであってもよい。
【0010】
ベルトは、内面及び外面を含む本体を有する。さらに、ベルトは、例えば本体に埋め込まれ得る補強構造を含み得る。ベルトは閉じたループを形成してもよい。
【0011】
新規なベルトは変性ポリウレタンを含み、変性ポリウレタンは、ポリジアルキルシロキサンとの共有結合を有するポリウレタンマトリックスを含む。
【0012】
有利には、本体は、本体の外面を形成する外層を含み、外層は、少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも1mm、最も好ましくは少なくとも1.5mmの厚さを有し、本体の外層は、変性ポリウレタンを含む。技術的な効果は、ベルトの外面が摩耗し始めた後でも、ベルトが摩擦を減らすことができることである。少なくとも1mm、好ましくは少なくとも1.5mmのより厚い厚さを有するベルトは、ベルトの使用中に長期間に亘ってベルトの摩耗を低減するのに適している。
【0013】
紙、板紙、パルプ、又はティッシュ機械のためのベルトの本体を製造するプロセスは、
変性ポリウレタンを得るために、少なくとも1つの官能基を有するポリジアルキルシロキサンをポリウレタンの製造プロセスに添加することによって、変性ポリウレタンを製造するステップであって、変性ポリウレタンは、ポリジアルキルシロキサンとの共有結合を有するポリウレタンマトリックスを含む、ステップと、
ベルトの本体を形成するステップであって、本体は、本体の外面を形成する外層を含み、外層は、少なくとも0.5mmの厚さを有し、本体の外層は、変性ポリウレタンを含む、ステップと、を含み得る。
【0014】
ポリジアルキルシロキサンのアルキル基は、1~4個の炭素原子、好ましくは1~3個の炭素原子を含み得る。有利には、ポリジアルキルシロキサンはポリジメチルシロキサンである。これにより、製造プロセスの容易性を高めることができる。さらに、ポリジメチルシロキサンによって、変性ポリウレタンのいくつかの特性を改善することができる。
【0015】
ポリジメチルシロキサン等のポリジアルキルシロキサンは、ポリウレタンの製造プロセス中にイソシアネート(-NCO)基と反応できる官能基を少なくとも1つ有するため、特性が改善された変性ポリウレタンを得ることができる。ポリジアルキルシロキサンがポリウレタンマトリックスとの共有結合を有するため、変性ポリウレタンのポリジアルキルシロキサン含有量は、変性ポリウレタン材料全体を通して同一又は実質的に同一であり得る。こうして、変性ポリウレタンを含むベルトの層は、この層を通して同じ又は実質的に同じポリジアルキルシロキサン含有量を有することができる。従って、ベルトの外面の摩擦レベルを制御することができる。
【0016】
少なくとも1つの官能基を有するポリジアルキルシロキサンは、直鎖シロキサン鎖に基づき得る。
【0017】
一実施形態では、少なくとも1つの官能基を有するポリジアルキルシロキサンは、
ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン、及び
アミノ末端ポリジメチルシロキサンからなるグループから選択され得る。
【0018】
少なくとも1つの官能基を有するポリジアルキルシロキサンは、
F1-[Si(CHO]n-Si(CH-F2
の構造を有することができる。ここで、nはSi(CHO単位の繰り返し数であり、F1及びF2の少なくとも1つが、官能基を含むか、又は官能基からなる。
【0019】
一実施形態では、少なくとも1つの官能基を有するポリジアルキルシロキサンは、アミノプロピル末端ポリジメチルシロキサンである。一実施形態では、少なくとも1つの官能基を有するポリジアルキルシロキサンは、カルビノール(carbinol)ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンである。一実施形態では、少なくとも1つの官能基を有するポリジアルキルシロキサンは、アミノメチル末端ポリジメチルシロキサンである。
【0020】
こうして、少なくとも1つの官能基を有するポリジアルキルシロキサンは、
F1-[Si(CHO]n-Si(CH-F2
の構造を有することができる。ここで、F1は、NCO、或いはOH又はNHを含んでもよく、F2は、NCO又はOH又はNH又はHを含んでもよい。
【0021】
ポリジアルキルシロキサンの少なくとも1つの官能基は、典型的に、変性ポリウレタンを形成するために、イソシアネート(-NCO)基と反応する。ポリジアルキルシロキサンの少なくとも1つの官能基がNCOを含む場合に、生成した変性ポリウレタンは、少なくとも1つの官能基がOH又はNHを含む場合よりも劣った特性を有する可能性がある。従って、好ましくは、F1はOH又はNHであり、F2はOH又はNH又はHである。
【0022】
ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン、及びアミノ末端ポリジメチルシロキサンは、例えば、異なる反応速度(すなわち、化学反応が進行する速度)を有しており、この速度によって、変性ポリウレタンに異なる特性をもたらす可能性がある。こうして、最も好ましくは、F1はOHを含み、F2は、水素であるか、又はOHを含む。
【0023】
ポリジアルキルシロキサンの末端基は、より長い長さを有することができる。従って、F1は、例えば、-R1-OH、-R1-NH、又は-OH、又は-NHであってもよく、R1は(CH)mであってもよい。繰り返し単位(CH)の数mは、1~3の範囲であってもよい。あるいは又はさらに、F2は、例えば、-R1-OH、-R1-NH、又は-OH、又は-NHであってもよく、ここで、R1は(CH)pを含んでもよく、繰り返し単位の数pは1~3の範囲であってもよい。変性ポリウレタンのいくつかの特性は、末端基の長さが増加すると変化し得る。こうして、この実施形態では、その数は、好ましくは3以下である。
【0024】
一実施形態では、少なくとも1つの官能基を有するポリジアルキルシロキサンは、アミノ末端ポリジメチルシロキサンである。この実施形態では、アミノ末端ポリジメチルシロキサン中のNH基の割合(fraction:画分)は、好ましくは0.2mol%~4mol%の範囲、より好ましくは1mol%~2mol%の範囲である。その割合は、所定の摩擦特性を有する変性ポリウレタンを得るのに適している可能性がある。
【0025】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの官能基を有するポリジアルキルシロキサンは、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンである。この実施形態では、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン中のOH基の割合は、好ましくは0.2mol%~4mol%の範囲、より好ましくは1mol%~2mol%の範囲である。その割合は、摩擦特性が向上した変性ポリウレタンを得るのに適している可能性がある。
【0026】
少なくとも1つの官能基を有するポリジアルキルシロキサン、及び変性ポリウレタン中のポリジアルキルシロキサン鎖は、
[Si(CHO-]n
の繰り返し単位を有することができる。ここで、nはSi(CHO-単位の繰り返し数である。
【0027】
Si(CHO-単位の繰り返し数nは、好ましくは30~200の範囲、より好ましくは50~150の範囲、最も好ましくは60~120の範囲であり得る。単位の繰り返し数によって、変性ポリウレタンの特性を改善することができる。さらに、製造プロセスの容易性を高めることができる。しかしながら、一実施形態では、繰り返しの数は、少なくとも5であり、500未満であり得る。
【0028】
ポリウレタンの製造プロセスに添加される、少なくとも1つの官能基を有するポリジメチルシロキサン等のポリジアルキルシロキサンの粘度は、20cst~750cstの範囲、好ましくは50cst~400cstの範囲、より好ましくは70cst~250cstの範囲、最も好ましくは80cst~180cstの範囲であり得る。こうして、ポリジアルキルシロキサンは、変性ポリウレタンの他の原料と容易に混合され、ポリジアルキルシロキサンの官能基がその中のNCO基と反応することを可能にし、それにより変性ポリウレタンを得ることができる。
【0029】
ベルトは、内面及び外面を含む本体を有する。ベルトの本体は、本体の外面を形成する本体の外層を含む。本体の外層は、ベルトの本体の厚さ以下の厚さを有することができる。外層は、ポリジアルキルシロキサンとの共有結合を有するポリウレタンマトリックスを有する変性ポリウレタンを含む。
【0030】
ポリジメチルシロキサン等のポリジアルキルシロキサンは、約1500g/mol~8000g/mol、より好ましくは1600g/mol~6000g/mol、最も好ましくは1700g/mol~5000g/molの範囲の分子量(MW)を有することができる。この分子量のポリジアルキルシロキサンを用いることにより、製造プロセスの容易性が高まり、こうして製品の品質を向上させることができる。
【0031】
変性ポリウレタン中のポリジアルキルシロキサンの量は、変性ポリウレタン材料の重量から測定して、0.5wt%~3wt%の範囲、好ましくは0.8wt%~2.5wt%の範囲であってもよい。さらに、ベルト本体の外層におけるポリジアルキルシロキサンの量は、外層の総重量から測定して、0.5wt%~3wt%の範囲、好ましくは1wt%~2.5wt%の範囲であってよい。こうして、ベルトとワイヤ/フェルトとの間の摩擦を、コスト効率よく低減することができる。
【0032】
議論したように、ベルトの少なくとも外層は変性ポリウレタンを含む。変性ポリウレタンを含む外層の厚さは、ベルト外面からの深さとして測定して、0.5mm以上、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上であってよい。こうして、外層は、摩擦を減らすことができるように適切な厚さを有することができる。少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも1mmのより厚い厚さによって、ベルトは、ベルトの外面が摩耗し始めた後に摩擦を減らすことができる。変性ポリウレタンを含む本体の外層は、ベルトの外面から深さとして測定して、本体の厚さ以下、好ましくは4mm以下、より好ましくは3mm以下の厚さを有することができる。好ましくは、外層は、ベルトの外面からの深さとして測定して、0.5mm~3mmの範囲、より好ましくは1mm~2.5mmの範囲の厚さを有する。
【0033】
ベルト本体の外面は滑らかであってもよい。こうして、ベルトは滑らかな外面を有することができる。変性ポリウレタンは、ベルトが滑らかな、又は実質的に滑らかな外面を有する場合に、ベルトの摩擦特性に最大の効果を与えることができる。
【0034】
ベルトの本体は、内層をさらに含んでもよい。この実施形態では、本体の外層の厚さは本体の厚さよりも薄く、内層は本体の内面を形成する。内層の厚さは、ベルト本体の厚さよりも薄い。内層はポリジアルキルシロキサンを含まなくてもよい。これにより、ベルトの製造コストを削減することができる。ただし、一実施形態では、内層はポリジアルキルシロキサンを含む。
【0035】
ベルトの本体は、少なくとも外層を含む。ベルトの本体は、内層をさらに含んでもよい。さらに、ベルトの本体は、内層と外層との間に1つ又は複数の層を含んでもよい。内層と外層との間の層は、使用される場合に、変性ポリウレタンを含まなくてもよい。これにより、ベルトの他の特性に実質的に影響を与えることなく、ベルトの製造コストを削減することができる。しかしながら、一実施形態では、ベルトは、内層と外層と、内層と外層との間の1つ又は複数の層とを含み、内層と外層との間の少なくとも1つの層は変性ポリウレタンを含む。
【0036】
新規な解決策によって、ベルトの摩耗だけでなく、ベルトと接触するワイヤ又はフェルトの摩耗も減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
以下に、本発明を図面によって説明する。
図1a】シュー・プレスの一例を示す図である。
図1b】スリーブ・ロールの一例を示す図である。
図2】ベルトの一例を示す図である。
図3a】ベルトの例示的な構造を示す図である。
図3b】ベルトの例示的な構造を示す図である。
図3c】ベルトの例示的な構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図はイラストであり、縮尺通りではない場合がある。同様の部品は、同じ参照符号によって図に示されている。
【0039】
本願における全ての実施形態は、例示的な例として提示しており、それら実施形態は制限と見なすべきではない。
【0040】
以下の参照符号を、本願で使用する。
1 シュー・プレス
2 プレス・シュー
3 カウンターロール
4 プレスゾーン
6 第1の抄紙機ファブリック、例えばプレスフェルト
7 第2の抄紙機ファブリック
8 繊維ウェブ
10 ベルト
10a ベルトの本体の厚さ
11 内面
12 外面
15 ベルトの本体
30 補強構造
31 補強構造の第1のヤーン層
32 補強構造の第2のヤーン層
50 ベルト外面の溝
53 溝同士の間のランド
60 ベルトの取り付け箇所
D1 ベルトの第1の方向
D2 ベルトの第2の方向
MD ベルトの進行方向
CD ベルトの交差方向
100 スリーブ・ロール
102 スリーブ・ロールの支持シャフト
110 スリーブ・ロールの曲線要素
C1 スリーブ・ロールの第1の曲線
C2 スリーブ・ロールの第2の曲線
【0041】
本願において、「変性ポリウレタン」という用語は、ポリジメチルシロキサン等のポリジアルキルシロキサンとの共有結合を有するポリウレタンマトリックスを含む材料を指し得る。
【0042】
本願において、「PDMS」という用語は、ポリジメチルシロキサンを指す。
【0043】
「PDMS-F1」という用語は、少なくとも1つの官能基を有するポリジメチルシロキサンを指す。少なくとも1つの官能基は、例えば、OH、NH、又はNCO、より好ましくはOH又はNH、最も好ましくはOHを含み得る。
【0044】
「PDMS-OH」という用語は、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンを指す。
【0045】
PDMS、及びPDMS-F1は、直鎖シロキサン鎖に基づくことができる。本願において、「ベルト本体の外層」という用語は、ポリジアルキルシロキサンを含む変性ポリウレタンを含む層を指す。ポリジアルキルシロキサンは、ポリウレタンマトリックスと共有結合を有することができる。外層は、本体の外面からベルトの深さ方向に延びる。ベルトの本体の外層の厚さは、ベルトの本体の厚さ以下であってもよい。
【0046】
本願では、「進行方向」MD及び「交差方向」CDという用語が使用される。
【0047】
進行方向MDは、使用中のベルトの回転方向を指す。さらに、「第2の方向」D2という用語は、ベルトの進行方向に平行又は実質的に平行な方向を指すことができる。
【0048】
交差方向CDは、ベルト10の進行方向MDに対して典型的に横方向である長手方向を指す。使用中に、横方向はベルトの回転軸に平行である。本願では、用語「第1の方向」D1は、ベルトの交差方向に平行又は実質的に平行な方向を指すことができる。
【0049】
本願において、「実質的に平行」という用語は、一方向が実質的に平行な方向から10度を超えて逸脱せず、最も好ましくは3度を超えて逸脱しないことを意味する。こうして、例えば「進行方向に実質的に平行」とは、本願において、方向が進行方向から10度を超えて逸脱せず、好ましくは3度を超えて逸脱しないことを意味する。
【0050】
ベルトの厚さという用語は、ベルトの深さ方向を参照して使用される。なお、本体の厚みとは、ベルト本体の深さ方向を指す。
【0051】
紙、板紙、パルプ、及びティッシュ機械
【0052】
典型的には、紙、板紙、パルプ、及びティッシュ機械では、繊維ウェブは、プロセスラインに連続して配置された、いくつかの機器によって形成されるアセンブリで製造及び処理される。
【0053】
典型的な生産ラインは、ヘッドボックス及びワイヤを含む成形セクション、フェルトを含むプレスセクション、乾燥セクション、及び最終的な巻き取りを含む。さらに、生産ラインは、典型的には、例えば、顧客別ロール(customer roll)を形成するための少なくとも1つのワインダー装置を含む。
【0054】
成形セクションでは、ヘッドボックスを使用して繊維ウェブを成形する。さらに、少なくとも1つの抄紙機ファブリック(fabric:布)、すなわち少なくとも1つの成形ワイヤを通していくらかの水を除去することができる。ベルトを備えたスリーブ・ロールを用いることにより、水分除去率を高めることができる。
【0055】
プレスセクションでは、成形セクションの後に残っている水の一部を、少なくとも1つの抄紙機ファブリック、つまりフェルトを用いて除去することができる。ベルトを備えたシュー・プレス1を用いることにより、水分除去率を高めることができる。
【0056】
シュー・プレス
【0057】
図1aは、シュー・プレスの例を示している。
【0058】
シュー・プレス1は、紙、板紙、パルプ、又はティッシュ機械で使用することができる。図1aは、シュー・プレス1におけるシュー・プレスベルト10の配置の縮小図を示す。
【0059】
シュー・プレスベルト10を備えたシュー・プレス1は、繊維ウェブ8を脱水するために使用することができる。シュー・プレス1は、典型的には、カウンターロール3及びプレス・シュー2を含み、それらの間にプレスゾーン4が形成される。こうして、プレス・シュー2とカウンターロール3との間に拡張プレスゾーン、すなわち、いわゆるロング・ニップ(long nip)が形成される。シュー・プレス1の機能は、典型的には、繊維ウェブ8から水を除去することである。
【0060】
シュー・プレスベルト10、少なくとも1つの抄紙機ファブリック6、7、好ましくは2つの抄紙機ファブリック6、7、及び脱水される繊維ウェブ8は、進行方向(MD)にプレスゾーン4を通過するように配置される。こうして、繊維ウェブ8は、フェルト及び/又はワイヤ等の少なくとも1つの抄紙機ファブリック6、7によって支持される。
【0061】
シュー・プレスベルト10は、その外面12が繊維ウェブ8に面し、その内面11がプレス・シュー2に面するように、シュー・プレス1に接続されるか、又はシュー・プレス1に関連して配置され得る。湿潤繊維ウェブ8の一方の面が、典型的に、回転式カウンターロール3によって圧縮される一方、繊維ウェブ8の他方の面は、可撓性本体及びループ形状を有するシュー・プレスベルト10によって取り囲まれたプレス・シュー2によって圧縮される。
【0062】
動作中に、シュー・プレスベルト10は、典型的に、少なくとも1つのカウンターロール3とプレス・シュー2との間のプレスゾーン4を通って移動する。有利には、抄紙機ファブリック6、好ましくはプレスフェルトが取り付けられるか、又はシュー・プレスベルト10に対して取り付けられるように構成される。プレスフェルト又は対応する抄紙機ファブリック6、7の上で、繊維ウェブ8は、シュー・プレスベルト10の外面12が抄紙機ファブリック6、好ましくはプレスフェルトと直接接触し、シュー・プレスベルト10の内面11がプレス・シュー2の摺動面に対して摺動するように、シュー・プレス1を通って運ばれる。
【0063】
典型的には、プレス・シュー2及びカウンターロール3は、シュー・プレスベルト10、少なくとも1つの抄紙機ファブリック6、7、及び脱水される繊維ウェブ8が全て、プレス・シュー2とカウンターロール3との間のニップで実行され、圧縮されるように、プレスゾーンで互いに押し付けられる。例えば、プレスフェルトは、典型的に、プレスゾーンで圧縮され、圧縮後に初期の厚さに実質的に戻るように構成される。
【0064】
スリーブ・ロール
【0065】
図1bは、スリーブ・ロールの一例を示している。
【0066】
スリーブ・ロール100は、その中の水の除去を高めるために成形セクションに配置することができる。スリーブ・ロール100は、例えば、最下層のワイヤループに配置することができる。スリーブ・ロールは、スリーブ・ロールとツインワイヤ形成部分の反対側のワイヤとの間のスリーブ・ロール・ニップで、多層繊維ウェブの層を接合するために使用され得る。ベルト10は、スリーブ・ロール100上に配置することができ、スリーブ・ロール100は、例えば、紙、板紙、パルプ、又はティッシュ機械のワイヤセクションに配置することができる。
【0067】
スリーブ・ロール100は、支持シャフト102を含むことができる。スリーブ・ロールは、典型的に、スリーブ・ロール100の外面の周りに配置されるベルト10をさらに含む。ベルト10は、支持シャフト102の周りを一周するように案内することができる。
【0068】
さらに、スリーブ・ロール100は、支持シャフト102上に互いに離間して配置された支持要素を含むことができる。スリーブ・ロールの外面の周りを一周できるベルト10は、支持要素によって支持することができる。
【0069】
スリーブ・ロール100は、曲線(curve:湾曲)要素110をさらに含むことができる。動作中に、ベルトは、典型的に、曲線要素上の脱水ゾーンを通過する。曲線要素110は、曲線要素110に対してベルトを引き伸ばす増加した力を生じさせることができる。曲線要素110は移動可能であり得る。すなわち、曲線要素110の表面に対するベルトの曲率半径は、曲線要素110を、スリーブ・ロールの中心に向けて、又はスリーブ・ロールの外面から外側に移動させることによって制御され得る。こうして、ベルト10の伸びは、通常の速度から非常に高い速度まで変化し得る。
【0070】
ベルト10は、その外面12が繊維ウェブに面し、その内面11がスリーブ・ロールに面するように、スリーブ・ロール100に関連して配置することができる。こうして、ループ形状のベルト10によってスリーブ・ロール100を取り囲むことができる。
【0071】
ベルトの周長は、可動式曲線要素110により、ベルトの動作時間中に増減することができる。従って、ベルトは、スリーブ・ロールの曲線要素110によって引き起こされる伸張を処理できるように、高い弾性を有することができる。さらに、ベルトは容易に破断しないように良好な強度特性を有することができる。
【0072】
ベルト10は、固定支持シャフト102の周りを一周するように案内することができる。さらに、ワイヤは、ベルト10によって支持することができる曲線状脱水ゾーンC1、C2を介して案内することができる。
【0073】
スリーブ・ロール100は、第1の部分曲線C1の曲率半径が、ベルトの進行方向MDの第1の部分曲線に続く第2の部分曲線の曲率半径よりも大きくなるように、典型的には少なくとも2つの部分曲線C1、C2を含む少なくとも1つの曲線状脱水ゾーンC1、C2を含むことができる。これにより、繊維ウェブからの水の除去を高めることができる。
【0074】
曲線状脱水ゾーンC1、C2は、スリーブ・ロール100の曲線要素110によって形成され得る。曲線要素110の曲率は、増加する脱水圧力が繊維に加えられるように、ベルト10の進行方向に増加することができ、繊維ウェブは、曲線要素110上の少なくとも1つの曲線状脱水ゾーンC1、C2のワイヤ同士の間を移動する。曲線要素110上の曲線状脱水ゾーンC1、C2は、好ましくは曲率半径がワイヤの走行方向に減少するように、いくつかの曲線を含むことができる。これにより、繊維ウェブからの水の除去を高めることができる。
【0075】
スリーブ・ロール100は、ベルト10の内面11とスリーブ・ロール100の外面との間に潤滑剤を含むことができる。こうして、スリーブ・ロールは、ベルト10とスリーブ・ロールの外面との間のギャップ内に潤滑剤を送り込むために使用することができる潤滑ポンプを含むことができる。
【0076】
曲線要素110は、2つ以上の位置の間で移動することができる。従って、曲線要素110は、曲線要素110に対するベルト10の曲率半径を制御するために使用され得る。
【0077】
曲線要素110の第1の位置は、曲線要素上に第1の表面を形成することができる。第1の表面は、曲線要素に近い表面と同じ曲率半径を有することができる。
【0078】
曲線要素110の第2の位置では、曲線要素の外面を外側に移動させることができる。こうして、曲線要素110の第2の位置は、曲線要素上に第2の表面を形成することができる。第2の表面は、曲線要素に近い面と比較すると、曲率半径が小さくなっている場合がある。
【0079】
曲線要素110の第2の位置では、ベルト10は、曲線要素110のために伸張する必要がある場合がある。さらに、曲線要素100が移動可能である場合に、ベルト10は、曲線要素が第1(最初)の位置に戻るときに元の形状に戻る必要がある場合がある。こうして、ベルト10は、適切な強度特性だけでなく、良好な弾性を有する必要がある場合がある。
【0080】
上述のように、ベルト10は、スリーブ・ロール100の周りに延びるように配置することができる。ベルト10の内面11は、スリーブ・ロール100の外面に対して摺動することができる。処理される繊維ウェブは、ベルトに案内することができ、典型的には、ワイヤ等の1つ又は複数のファブリックによって支持される。
【0081】
ベルト
【0082】
「ベルト」という用語は、紙、板紙、パルプ、又はティッシュ機械のスリーブ・ロール及び/又はシュー・プレスに適したベルトを指す。
【0083】
ベルト10は、典型的には、エンドレスループのような形状である。ベルト10は、長さ、周長、及び厚さを有する。厚さは最小寸法である。ベルトをスリーブ・ロール100又はシュー・プレス1に適合させるために、周長及び長さを選択することができる。ベルト10の周囲(長)は、ベルト10の内径が、動作中に目的に適しているように決定される。ベルト10は不浸透性ベルトとすることができる。
【0084】
ベルトは、内面及び外面を含む。ベルトは補強構造を含むことができる。ベルトは閉じたループを形成してもよい。
【0085】
ベルトにはベルトの本体がある。本体は、本体の内面及び本体の外面を含むことができる。本体の内面は、ベルトの内面を形成することができる。本体の外面は、ベルトの外面、又はベルトの外面の少なくとも一部を形成することができる。
【0086】
本願において、「弾性」という用語は、力を取り除いたときにベルトが元の形状に戻る能力を指す。弾性率(%)は、ベルトがどれだけ弾性的に伸びることができるかを示す値である。
【0087】
ベルトは、ベルトを伸ばす力が取り除かれた後にベルトが元の長さに戻るように、ベルトの進行方向に1.5%以上弾性的に伸びるように構成され得る。一実施形態では、ベルトは、ベルトを伸ばす力が取り除かれた後にベルトが元の長さに戻るように、ベルトの進行方向に1.5%~少なくとも5.0%、より好ましくは2.0%~4.0%の範囲で弾性的に伸びるように構成することができる。こうして、ベルトは、少なくともベルトの進行方向において、良好な伸縮性及び弾性を有することができる。従って、ベルトは損傷しにくくなり得る。ベルト10はさらに曲げることができる。すなわち、ベルトは、破断することなく、少なくとも所定の曲率半径まで曲げることができる。
【0088】
交差方向のベルトの長さは、機械の幅に従って決定され、例えば、1.5m~12.6mの範囲であり得る。
【0089】
ベルト10の周長、すなわち1回転の長さは、動作時に、ベルト10の内径が使用に適したものとなるように決定される。スリーブ・ロールベルト及びシュー・プレスベルトの周長は異なる場合がある。ベルトの内径は、0.7m~6.3mの範囲であってもよい。一実施形態において、ベルト10の内径は、0.7~2.5m、より好ましくは1.0~1.9m、最も好ましくは1.09~1.82mである。別の実施形態では、ベルト10の周長は、少なくとも2.2m、より有利には少なくとも3.0m、好ましくは少なくとも3.4mである。さらに、この実施形態では、ベルトの周長は、好適には6.3m以下であり、より有利には6.0m以下であり、好ましくは5.8m以下である。
【0090】
ベルトの厚さは、少なくとも1.5mm、より好ましくは少なくとも2.0mm、最も好ましくは3mm以上とすることができる。これにより、適度な強度を得ることができるとともに、例えば、ヤーン(yarn:糸)等の補強構造をベルトに配置することができる。さらに、ベルトの厚さは、7mm以下、より好ましくは5mm以下、最も好ましくは4mm以下、例えば2.5mm~5mmの範囲であり得る。ベルトの材料とともに、厚さは、ベルトに良好な強度特性を与えることができる。
【0091】
ベルトの本体
【0092】
好ましくは、ベルト10は、圧縮後にその初期形状に戻る能力を有する弾性体を含む。ベルト10は、エラストマー材料を主原料とすることが好ましい。ベルト10は、良好な弾性を有するために弾性体15を含むことができる。本願において、「弾性」という用語は、伸張又は加圧後にベルトが元の形状に戻る能力を指す。
【0093】
ベルト10は、紙、板紙、パルプ、及びティッシュ機械に適しており、ワイヤ又は繊維ウェブに損傷を与えず、適切な伸縮性及び強度特性を有する材料で作製することができる。
【0094】
本体は、ポリマーを含むか、又はポリマーからなることができる。本体15は、エラストマー材料を含むか、又はエラストマー材料からなることができる。エラストマー材料は、ベルトの主原料であることが好ましい。
【0095】
本体は、変性ポリウレタンを含むポリウレタンを含んでもよい。本体の少なくとも最外面は、ポリジアルキルシロキサンを含む変性ポリウレタンを含む。好ましくは、弾性体は主にポリウレタンを含む。有利には、ベルトは、ベルトの総重量から計算して、少なくとも50wt%、より有利には少なくとも70wt%、好ましくは少なくとも80wt%のポリウレタンを含む。ポリウレタンは、弾性及び屈曲性等のベルトの特性を改善することができ、シュー・プレス及びスリーブ・ロールと組み合わせて使用するのに特に適している。こうして、ポリウレタンは、良好な強度及び弾性特性を得るために使用することができる。このため、ベルトは、動作時間中に破損することなく、伸長及び屈曲することができる。また、変性ポリウレタンは、ベルトの外面の摩擦を低下させるために特に適している場合がある。さらに、ベルトは、ベルトの総重量から計算して、99.9wt%以下、より好ましくは97wt%以下、又は95wt%以下のポリウレタンを含むことができる。例えば、補強構造は、他の材料を含んでもよい。
【0096】
ベルトの本体は、特定の組成及び硬度を有し、耐クラック性、耐摩耗性、耐屈曲疲労性等の物性に優れたポリウレタンから構成される層を有することができる。本体の少なくとも最外層が変性ポリウレタンをさらに含むことにより、耐摩耗性が大幅に改善され得る。
【0097】
変性ポリウレタンの製造
【0098】
変性ポリウレタンは、ポリジアルキルシロキサンと共有結合したポリウレタンマトリックスを含む。
【0099】
少なくとも1つの官能基を有するポリジアルキルシロキサンは、例えば、炭素及びケイ素を含む構造を有するポリマーである。OH基等の少なくとも1つの官能基がポリマーに添加される。
【0100】
ポリウレタンの製造方法は当業者に知られている。ポリウレタンの製造プロセスは、先行技術の方法に基づくことができる。
【0101】
ポリウレタンは、末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを連鎖延長剤、好ましくはアミン基(HN2-)、OH基、又はこれらの混合物を含む連鎖延長剤と混合することによって製造することができる。
【0102】
変性ポリウレタンは、少なくとも1つの官能基を有するポリジアルキルシロキサンと一緒に先行技術の原材料を用いて製造することができ、こうして、ポリジアルキルシロキサンの官能基をポリウレタンマトリックスのNCO基と反応させることができる。
【0103】
こうして、一実施形態では、少なくとも1つの官能基を有するポリジアルキルシロキサンは、変性ポリウレタンを形成するために、変性ポリウレタンの他の原材料と混合することができ、変性ポリウレタンは、ポリジアルキルシロキサンとの共有結合を有するポリウレタンマトリックスを含む。
【0104】
少なくとも1つの官能基を有するポリジアルキルシロキサンは、
F1-[Si(CHO]n-Si(CH-F2
の構造を有することができる。ここで、nはSi(CHO単位の繰り返し数であり、F1及びF2の少なくとも1つは、官能基を含むか、又は官能基からなる。
【0105】
F1は、NCO、或いはOH又はNHを含んでもよく、F2は、NCO又はOH又はNH又はHを含んでもよい。ポリジアルキルシロキサンの少なくとも1つの官能基は、変性ポリウレタンを形成するために、NCO基と反応することができる。ポリジアルキルシロキサンの少なくとも1つの官能基がNCOを含む場合に、生成した変性ポリウレタンは、少なくとも1つの官能基がOH又はNHを含む場合よりも劣った特性を有する可能性がある。こうして、好ましくは、F1はOH又はNHを含み、F2はOH又はNH又はHである。
【0106】
ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン、及びアミノ末端ポリジメチルシロキサンは、例えば、異なる反応速度(すなわち、化学反応が進行する速度)を有しており、この速度は、変性ポリウレタンに異なる特性をもたらす可能性がある。ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンは、OH基を有する反応性ポリジメチルシロキサンである。こうして、ベルトにおいて、ポリジメチルシロキサンは、ポリウレタンマトリックスに堅く取り付ける(attach:付着する)ことができる。この解決策は、ベルトと抄紙機ファブリックと間の摩擦を減らすことができ、他のベルトと比較してベルトの寿命を延ばすことができる。こうして、最も好ましくは、F1はOHを含み、F2は、水素であるか、又はOHを含む。
【0107】
一実施形態では、少なくとも1つの官能基を有するポリジアルキルシロキサンは、
HO-[Si(CHO]n-Si(CHOH
の構造を有するヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンである。ここで、nはSi(CHO単位の繰り返し数である。
ポリジメチルシロキサンのOH基は、変性ポリウレタンの製造プロセス中にNCO基と反応することができ、こうして、ポリウレタンマトリックスと共有結合を形成する。
【0108】
驚くべきことに、ポリジアルキルシロキサンはNCO-基と共有結合を形成できるため、得られる材料は、ベルトに適した特性を有しながら、ベルトと、ワイヤ又はフェルト等の抄紙機ファブリックとの間の摩擦を減らすことができることが分かった。
【0109】
OH基等の官能基の一部は、形成した変性ポリウレタンの特性に影響を及ぼし、そのため、形成したベルトの特性に影響を与える。
【0110】
ポリジアルキルシロキサンは、0.2mol%~4mol%の範囲、好ましくは0.5mol%~3mol%の範囲、より好ましくは0.8mol%~2.2mol%の範囲、最も好ましくは1mol%~2mol%の範囲の官能基含有量を有するF1-[Si(CHO]n-Si(CH-F2ポリマーを含むことができる。ポリウレタンマトリックスとポリジアルキルシロキサンとの間の共有結合によって、ポリジアルキルシロキサンは、長期間に亘ってポリウレタンに堅く取り付けられたままであり得る。さらに、そのような割合を有するポリジアルキルシロキサンは、ポリジアルキルシロキサンとポリウレタンとの間に共有結合を形成するために、ポリウレタンのNCO基と効果的に反応することができる。さらに、形成した変性ポリウレタンは、摩擦を効率的に低減することができる。
【0111】
有利な実施形態では、ヒドロキシ末端ポリジアルキルシロキサンは、0.2mol%~4mol%の範囲、好ましくは0.5mol%~3mol%の範囲、より好ましくは0.8mol%~2.2mol%の範囲、最も好ましくは1mol%~2mol%の範囲のOH含有量を有するHO-[Si(CHO]n-Si(CHOHポリマーを含む。ポリウレタンとポリジアルキルシロキサンとの間の共有結合によって、安定した電子配置を形成することができる。こうして、ポリジアルキルシロキサンは、長期間に亘ってポリウレタンに堅く取り付けたままにすることができる。さらに、そのような割合のOH基を有するポリジアルキルシロキサンは、ポリウレタンのNCO基と効果的に反応して、ポリジアルキルシロキサンとポリウレタンとの間に共有結合を形成することができる。さらに、形成した変性ポリウレタンは、摩擦を効率的に低減することができる。
【0112】
一実施形態では、少なくとも1つの官能基を有するポリジアルキルシロキサンの粘度は、20cst~750cstの範囲であってもよい。これにより、製造プロセスの容易性を高めることができる。
【0113】
反応性ポリジアルキルシロキサンによって、ポリジアルキルシロキサンの官能基は、ポリウレタンの製造プロセス中にイソシアネート(-NCO)基と反応することができる。こうして、ポリジアルキルシロキサンは、共有結合でポリウレタンマトリックスに結合することができる。こうして、添加したポリジアルキルシロキサンは、たとえベルトが2つ以上のポリウレタン層を含んでいても、ポリウレタン層同士の間の接着を妨げないようにすることができる。さらに、ポリジアルキルシロキサンは、ベルトの外面に均一に分布し続けることができる。
【0114】
ヒドロキシ末端ポリジアルキルシロキサン中のSi(CHO-単位の繰り返し数nは、30~200の範囲、好ましくは50~160の範囲、より好ましくは60~130の範囲、最も好ましくは70~100であってもよい。典型的には、繰り返し単位の数は、変性ポリウレタンの製造プロセス中に変化しない。こうして、変性ポリウレタン中のポリジアルキルシロキサンは、変性ポリウレタンの製造プロセスに適用されるポリジアルキルシロキサンと同じ数の繰り返し単位を有することができる。繰り返し単位の数によって、材料の加工性を向上させることができる。
【0115】
変性ポリウレタン中のポリジアルキルシロキサンによって、ポリジアルキルシロキサンを含まないベルトと比較して、ベルトと、ワイヤ/フェルトとの間の摩擦を最大30%減らすことができる。
【0116】
ベルトの本体のポリジアルキルシロキサン
【0117】
ベルトの本体は、変性ポリウレタンを含む。
【0118】
ベルト本体の少なくとも外面は、ポリジアルキルシロキサンとの共有結合を有するポリウレタンマトリックスを含む変性ポリウレタンを含む。
【0119】
本体は、1つ又は複数の層を含んでもよい。本体は、本体の少なくとも外面を形成する少なくとも外層を含む。
【0120】
変性ポリウレタンを含む本体の外層の厚さは、ベルトの本体の厚さ以下にすることができる。
【0121】
一実施形態では、ベルトの本体は、ポリジアルキルシロキサンを含む変性ポリウレタンから少なくとも本質的になる。
【0122】
変性ポリウレタンを含む本体の外層は、ベルトの本体の外面からの深さとして測定して、0.5mm以上、好ましくは1mm以上、より好ましくは1.5mm以上、最も好ましくは1.8mm以上の厚さを有することができる。これにより、ベルトの摩耗を低減することができる。0.5mmのより薄い厚さは、ベルトの始動中のベルトとワイヤ/フェルトとの間の摩擦を減らすのに特に適している。1.0mm以上、好ましくは1.5mm以上のより厚い厚さは、ベルトが摩耗し始めたときに、ベルトの使用中のベルトの摩耗を低減するのに適切であり得る。
【0123】
変性ポリウレタンを含む本体の外層は、ベルトの本体の外面からの深さとして測定して、ベルト本体の厚さ以下の厚さ、好ましくは3mm以下の厚さ、より好ましくは2.5mm以下の厚さ、最も好ましくは2.2mm以下の厚さを有することができる。これにより、コスト効率良くベルトの摩耗を低減することができる。さらに、ポリジアルキルシロキサンは、ベルトの中間で多くの肯定的な効果を有さない可能性がある。
【0124】
変性ポリウレタン中のポリジアルキルシロキサンの量は、変性ポリウレタンの特性に影響を与える。ポリジアルキルシロキサンの量は、変性ポリウレタンの総重量から測定して、0.5wt%~3wt%の範囲、好ましくは0.8wt%~2.7wt%の範囲、より好ましくは1.0wt%~2.5wt%の範囲、最も好ましくは、1.2wt%~2.0wt%の範囲であってもよい。技術的効果は、形成した変性ポリウレタン中のポリジアルキルシロキサンの総量が、ベルトの他の特性にあまり影響を与えることなく、使用中のベルトとワイヤ又はフェルトとの間の摩擦を実質的に減少させることができることである。さらに、変性ポリウレタン中のOH基等の未結合の官能基が多過ぎると、製品にとって有利ではない可能性がある。
【0125】
ポリジアルキルシロキサンの量は、ベルトの外層の総重量から測定して、0.5wt%~3wt%の範囲、好ましくは0.8wt%~2.7wt%の範囲、より好ましくは1.0wt%~2.5wt%の範囲、最も好ましくは1.2wt%~2.0wt%の範囲であってもよい。これにより、ベルトの外面とワイヤ又はフェルトとの間の摩擦を低減することができる。
【0126】
ヒドロキシ末端ポリジアルキルシロキサンの分子量(MW、g/mol)は変化し得る。ヒドロキシ末端ポリジアルキルシロキサンは、1500g/mol~8000g/molの範囲等、1500g/molを超える分子量(MW)を有し得る。ヒドロキシ末端ポリジアルキルシロキサンの分子量は、好ましくは約1500g/mol~6000g/mol、より好ましくは約2000g/mol~約5500の範囲、最も好ましくは2500g/mol~5000g/molの範囲である。ポリジアルキルシロキサンの分子量は、変性ポリウレタンの特性に影響を及ぼす可能性がある。さらに、ポリジアルキルシロキサンの分子量は、製造プロセスに影響を及ぼす可能性がある。
【0127】
議論したように、ベルトの本体は、ポリジアルキルシロキサンがポリウレタンマトリックスとの共有結合を有する変性ポリウレタンを含む。ポリジアルキルシロキサンの添加は、ベルトの耐摩耗性を大幅に向上させることができる。ポリジアルキルシロキサンは、好ましくはポリジメチルシロキサンである。
【0128】
ベルトと抄紙機ファブリックとの間の摩擦は、特にベルトが実質的に滑らかな外面を有する場合に、実質的に高くなり得る。そのため、ベルトの摩耗が非常に早く開始する場合がある。ポリジアルキルシロキサンとの共有結合を有するポリウレタンマトリックスを含む変性ポリウレタンによって、ベルトとワイヤ/フェルトとの間の摩擦を低減することができる。これにより、ベルトとワイヤ/フェルトとの摩耗を低減することができる。
【0129】
ベルトの外面
【0130】
ベルトの外面12は、変性ポリウレタンを含むか、又は変性ポリウレタンからなる。ベルトの本体の外面12は、変性ポリウレタンで形成することができる。
【0131】
変性ポリウレタンは、滑らかな外面を有するベルトに特に有利であり得る。なぜなら、そのようなベルトはそうでなければベルトとワイヤ/フェルトとの間に高い摩擦を有する可能性があるからである。こうして、有利には、変性ポリウレタンを含むベルトは滑らかな外面を有する。滑らかな外面を有するベルトは、0.4mmを超える深さを有する溝もパターンも有さない場合がある。特に、滑らかな表面は、0.4mmを超える深さを有する、10mmを超える面積を有さない場合がある。
【0132】
ベルトの外面12は、僅かなパターンニング、すなわち、いわゆるバフ研磨を含んでもよい。ベルト10の外面12に対するバフ研磨の深さは、例えば、0~50μm、又は3~30μmとすることができる。ベルトの外面の適切な粗さは、抄紙機ファブリック、特に変性ポリウレタンとの作用に有利な効果をもたらすことができる。
【0133】
一実施形態では、ベルトの外面12は、例えば図3a~図3cに示されるように、ベルト10の脱水特性を高めるために、いくつかの平行な溝50だけでなく、それら溝の間の隆起部も含む。技術的効果は、向上した水除去速度を得ることである。溝の深さは、脱水溝の最深点から測定して、0.4mmよりも大きく、好ましくは2.0mm以下、例えば0.5mm~1.5mmの範囲であり得る。脱水溝50の幅は、0.5mm以上2.0mm以下であってもよい。隣接する2つの平行な脱水溝50の中心線同士の間の距離は、少なくとも1.5mm以上7.0mm以下であってもよい。脱水溝50の総水量は、例えば、約100~800g/mの間であり得る。脱水溝50の数は、少なくとも140本/mであり、より有利には少なくとも200本/mであり、有利には670本/m以下である。脱水溝50の上述の特徴により、脱水溝50を介してより効率的にウェブから水を除去することができる。これらの利点は、典型的には、ベルト10に上述の特徴がより多く実現されればされるほど、より良く実現される。図3bに示されるように、溝は、本体材料によって形成され得る。代替的に、ベルトの外面12は、例えば図3aに示されるように実質的に滑らかにすることができる。
【0134】
一実施形態では、溝は、図3cに示されるように、強化構造によって少なくとも部分的に形成してもよい。ベルトの表面近くにいくつかのヤーンを配置することにより、ベルトの摩耗をさらに減らすことができる。ベルトの中立軸をベルトの外面の近くに配置することにより、ベルトの外面の摩耗を少なくすることができる。ベルトの外面がヤーンを含む場合に、ヤーンは、典型的に、ベルトの進行方向に配置される。しかしながら、議論したように、ベルトの外面12は、例えば、図3aに示されるように、実質的に滑らかにすることができる。こうして、一実施形態では、本体15及び/又は補強構造30は、溝50を形成しない場合がある。
【0135】
ベルトの内面
【0136】
ベルト10は内面11を有する。本体の内面はベルトの内面を形成することができる。
【0137】
ベルトの内面11は、実質的に滑らかであり得る。内面は、僅かなパターニング、すなわち、いわゆるバフ研磨を含んでも含まなくてもよい。バフ研磨の深さは、例えば、0~15μm、好ましくは0.01μm~4.00μm、より好ましくは0.1μm~2μmの範囲であってもよい。ベルトの内面の粗さ、すなわちバフ研磨は、ベルトの耐久性に実質的な影響を与える可能性がある。例えば、潤滑油膜の均一性が崩れた場合に、バフ研磨された内面11を有するベルトは、平滑な内面を有するベルトほど容易に損傷を受けないことがある。換言すれば、内面11のバフ研磨なしで、ベルトは、潤滑油膜の均一性が崩れた後に、滑らかな表面のために強い減速効果を有し、ベルトに永久変形をもたらす可能性がある。一実施形態では、内面11は変性ポリウレタンを含む。
【0138】
ベルトの補強構造
【0139】
ベルトは補強構造を含んでもよい。補強構造は、本体を支持する支持構造とすることができる。ベルトの弾性をかなり高くする必要があるかもしれないので、補強構造は、ベルトの弾性をあまり低下させてはならない。
【0140】
補強構造はヤーンを含んでもよい。「ヤーン(yarn:糸)」という用語は、断面が比較的小さい長い構造を指す。ヤーンは、撚りの有無にかかわらず、繊維及び/又はフィラメントで構成することができる。ヤーンは多重撚糸であってもよい。ヤーンは合成ポリマーに基づいてもよい。「フィラメント」という用語は、非常に長い繊維を指す。
【0141】
ベルトは、少なくとも2つの方向、すなわち第1の方向及び第2の方向に配置された、いくつかのヤーンを有することができる。第1の方向は、ベルトの回転軸に平行又は実質的に平行であり得、第2の方向は、ベルトの進行方向に平行又は実質的に平行であり得る。
【0142】
異なる層31、32内のヤーンは、次の層のヤーンと接触するか結合してもよく、又は互いに離間してもよい。好ましくは、互いの上にある補強ヤーン層31、32は、互いに分離されている。こうして、ヤーン層は、互いに固定する必要も、互いに結合する必要もない。あるいはまた、第2のヤーンを第1のヤーンに結合してもよい。第2のヤーンに結合した第1のヤーンは、強化構造の強度特性を向上させることができる。
【0143】
ヤーンは弾性体に埋め込んでもよい。こうして、ヤーンは、本体の材料によって完全に取り囲まれ得る。一実施形態では、いくつかのヤーンをベルトの弾性体上に少なくとも部分的に配置することができる。こうして、この実施形態では、一部のヤーンは、本体の材料によって完全に取り囲まれない可能性がある。技術的な効果は、ベルトの中立軸をベルトの外面近くにできることである。これにより、ベルトの摩耗を減らし、ベルトの寿命を延ばすことができる。
【0144】
ヤーンは、高強度、高モジュラス、及び高弾性モジュラスを有する合成繊維を含んでもよい。ヤーンは、ポリアミド(PA)、例えば、ナイロン、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、レーヨン、ビスコース、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアラミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶プラスチック(LCP)、ポリイミド、及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の少なくとも1つを含むか、又はその少なくとも1つからなることができる。上述の材料を含む、又はその材料からなるヤーンは、ベルトを補強することができるが、ベルトの必要なレベルの曲げ及び伸張を引き続き可能にする。
【0145】
製法の一例
【0146】
ベルトの本体を製造するプロセスは、
変性ポリウレタンを得るために、少なくとも1つの官能基を有するポリジアルキルシロキサンをポリウレタンの製造プロセスに添加することによって、変性ポリウレタンを製造するステップであって、変性ポリウレタンは、ポリジアルキルシロキサンとの共有結合を有するポリウレタンマトリックスを含む、ステップと、
ベルトの本体を形成するステップであって、本体の少なくとも外面は変性ポリウレタンを含む、ステップと、を含むことができる。
【0147】
ベルトは、それ自体既知の方法で形成することができる。ベルトは、例えば、
いくつかの支持ヤーンを提供するステップと、
ポリウレタンを含むエラストマー材料を金型表面に対してキャストすることによって、ベルト用の本体を成形するステップであって、本体の少なくとも外面が変性ポリウレタンを含む、ステップと、
材料を硬化させるステップと、
オプションで、フレームの外面にいくつかの溝を設けるステップと、によって製造することができる。
【0148】
ベルトは、板紙機械、抄紙機、パルプ機械、又はティッシュ機械のスリーブ・ロール又はシュー・プレスに取り付けることを意図することができる。ベルトは、例えば、ベルトの取り付けのためにベルトの複数の取り付け点60をさらに含んでもよい。
【0149】
例1
【0150】
摩擦に対する変性ポリウレタンの効果を、実験的試験中にテストした。ポリジメチルシロキサンの量は、表1に示されるように、変性ポリウレタンサンプルで変化した。
【0151】
規格ASTM D1894に従ってアセンブリを有するAlwetron TCT-20装置を使用することにより、全てのサンプルの摩擦を同じ方法で測定した。値は、3420mmの同じ面積を有する円形サンプルに対して52Nの重りを用いて決定した。ファブリック(湿ったワイヤ)をサンプルの下に置き、固定した。サンプル毎に、ワイヤの裏側は、測定中にサンプルと直接接触していた。
【0152】
結果を表1に示す。確認されるように、0wt%を超えるPDSM含有量を有する変性ポリウレタンは、摩擦に対する改善効果を与え、1wt%~2wt%の範囲のPDMSの量は、摩擦に最も効果があった。
【0153】
【表1】
表1において、用語「PU」は(変性)ポリウレタンを指す。
【0154】
本発明について、図解及び例を用いて説明してきた。本発明は、上記の実施形態のみに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内で修正することができる。
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図3c