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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】電解質及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0565 20100101AFI20240201BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240201BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240201BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240201BHJP
   G02F 1/1516 20190101ALI20240201BHJP
   G02F 1/1523 20190101ALI20240201BHJP
   H01G 11/56 20130101ALI20240201BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20240201BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20240201BHJP
   H01G 11/58 20130101ALI20240201BHJP
   H01G 11/64 20130101ALI20240201BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/052
G02F1/1516
G02F1/1523
H01G11/56
H01G11/62
H01G11/60
H01G11/58
H01G11/64
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022169631
(22)【出願日】2022-10-24
(65)【公開番号】P2023073211
(43)【公開日】2023-05-25
【審査請求日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】110142346
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】522415771
【氏名又は名称】捷能科技股▲ふぇん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】林 士淵
(72)【発明者】
【氏名】田 孝通
(72)【発明者】
【氏名】▲温▼ 治宇
(72)【発明者】
【氏名】楊 懋▲つん▼
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-070997(JP,A)
【文献】特開2010-113939(JP,A)
【文献】特開2019-053104(JP,A)
【文献】特開2012-186055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0565
H01M 10/0568
H01M 10/0569
H01M 10/052
G02F 1/1516
G02F 1/1523
H01G 11/56
H01G 11/62
H01G 11/60
H01G 11/58
H01G 11/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料と、リチウム塩と、有機溶媒と、可塑剤と、イオン性溶液と、補助材料と、を含み、これらを混練してコロイド状にしたものであり、該高分子材料は20重量%以上45重量%以下、該リチウム塩は2重量%以上20重量%以下、該有機溶媒は10重量%以上30重量%以下、該可塑剤は10重量%以上30重量%以下、該イオン性溶液は1重量%以上2重量%以下、該補助材料は1重量%以上2重量%以下である電解質であって、
該高分子材料は、熱可塑性高分子材料又は熱硬化性高分子材料であり、ポリビニルブチラール、酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂及びポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種の材料であり、
該リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロヒ素酸リチウム、トリフルオロメチルスルホン酸リチウム、ビス(シュウ酸)ホウ酸リチウム、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ジフルオロリン酸リチウム及びテトラフルオロシュウ酸リン酸リチウムからなる群から選択される少なくとも1種の材料であり、
該有機溶媒はプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、酪酸プロピル、N-メチル-ピロリジン及びジメチルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種の材料であり、
該可塑剤はジエチレングリコールブチルエーテル又はアジピン酸から選択され、
該イオン性溶液は主シクロプロピルに塩素酸根を持つ〔(Pmim)(ClO )〕であり、
該補助材料は任意の色の色材であるトナー、UV吸収剤、光安定剤、温度安定剤及び10 ~10ナノサイズの任意の形状の粒子で構成されるシリコン粉末からなる群から選択される少なくとも1種の材料であることを特徴とする電解質。
【請求項2】
高分子材料を50~70℃の反応温度で15~30分間反応させ、脱水乾燥して乾燥高分子材料を得る乾燥ステップと、
該乾燥高分子材料をリチウム塩、有機溶媒、可塑剤、イオン性溶液及び補助材料と均一に撹拌し、コロイド電解質を得る材料混合ステップと、
該コロイド電解質を70~140℃の反応温度で2~10分間反応させ、混練機を利用して該コロイド電解質を機械力及び化学作用により均一に混合する混練ステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の電解質の製造方法。
【請求項3】
該混練ステップで混練した該コロイド電解質を100~140℃の作動温度、0.2~1MPaの押出圧力で押し出し、高速カッターを利用して造粒しながら、急速な降温及び乾燥をし、顆粒のサイズが1~30mmの顆粒状電解質を製造する押出造粒ステップをさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の電解質の製造方法。
【請求項4】
該混練ステップで混練した該コロイド電解質を80~150℃で加熱して溶融し、流動性コロイドとし、開口径サイズを調整可能なスリット状吐出口を先端に有する、塗布ヘッドのキャビティに該流動性コロイドを前記キャビティの圧力により注入し、該流動性コロイドを該スリット状吐出口から均一に流出させ、離型膜上に塗布して粘着膜構造を形成し、次に、エアナイフにより急速に降温し、厚さを制御してコロイド電解質膜を形成する、第1コロイド電解質膜形成ステップをさらに含むことを特徴とする請求項に記載の電解質の製造方法。
【請求項5】
該押出造粒ステップで製造された該顆粒状電解質を70~140℃の反応温度で2~10分間反応させ、混練して該顆粒状電解質を第2コロイド電解質とし、該第2コロイド電解質を80~150℃で加熱して溶融し、流動性コロイドとし、開口径サイズを調整可能なスリット状吐出口を先端に有する塗布ヘッドのキャビティに該流動性コロイドを前記キャビティの圧力により注入し、該流動性コロイドを該スリット状吐出口から均一に流出させ、離型膜上に塗布して粘着膜構造を形成し、次に、エアナイフにより急速に降温し、粘着膜の厚さを制御して、コロイド電解質膜を形成する、第2コロイド電解質膜形成ステップをさらに含むことを特徴とする請求項に記載の電解質の製造方法。
【請求項6】
該混練ステップで混練した該コロイド電解質を押出温度80~160℃、エアナイフ噴射口の風圧95~1000 kPa、押出圧力約0.5~1MPaで加熱して押し出し、厚さ0.005~3mmのコロイド電解質膜を形成する、第3コロイド電解質膜形成ステップをさらに含むことを特徴とする請求項に記載の電解質の製造方法。
【請求項7】
該押出造粒ステップで製造された該顆粒状電解質を、押出延流法により70~140℃で加熱して粘稠状コロイドとし、次に、該粘稠状コロイドを押出温度80~160℃、エアナイフ噴射口の風圧95~1000kPa、押出圧力0.5~1 MPaで加熱して押し出し、厚さ0.005~3mmのコロイド電解質膜を形成する第4コロイド電解質膜形成ステップをさらに含むことを特徴とする請求項に記載の電解質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質及びその製造方法、特にコロイド電解質、及び該コロイド電解質を混練方式で製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の電解質の形態には、固体、液体やコロイドなどがある。液体電解質はイオン伝導率が高く、通電の効果が良いが、流動性を有するため、長時間使用されたり外力に押されたりすると、液漏れが生じやすく、電子部品が作動できなくなる。さらに、液体電解質には強酸や強アルカリなどの溶媒が含まれており、これらの溶媒が漏れると安全上のリスクを招く。固体電解質は、液体電解質の代わりに高分子や無機金属酸化物を用いることで、液体電解質の液漏れの問題を解決できるが、固体電解質と電極との間にインタフェース抵抗が存在するため、固体電解質のイオン伝導率が高くなく、電子部品の性能が望ましくない。コロイド電解質は固体電解質と液体電解質の間のものであり、双方の優位性を持ち、将来の電解質材料の主流となる。しかし、現在一般的なコロイド電解質には、濃度分布が不均一であり、光透過性が悪く、伝導率が低いなどの問題があり、このため、従来のコロイド電解質を改良する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の1つの目的は、高粘着性、高透光率及び高伝導率の特性を同時に備える電解質を提供することである。
【0004】
本発明の別の目的は、完成品が保存されやすく、生産力を高めるという特徴がある電解質の製造方法を提供する。
【0005】
本発明のさらなる目的は、エレクトロクロミック技術、ポリマーリチウム電池、スーパーキャパシタンス及びスーパーバッテリーなど、電気化学エネルギー貯蔵や省エネ技術の分野に有用であるコロイド電解質、及び該コロイド電解質を混練方式で製造する製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記及び他の目的を達成させるために、本発明の電解質は、高分子材料と、リチウム塩と、有機溶媒と、可塑剤と、イオン性溶液と、補助材料と、を含み、これらを混練してコロイド状にしたものであり、該高分子材料は約20~45重量%、該リチウム塩は約2~20重量%、該有機溶媒は約10~30重量%、該可塑剤は約10~30重量%、該イオン性溶液は約1~4重量%、該補助材料は約1~4重量%である。
【0007】
上記及び他の目的を達成させるために、本発明の電解質の製造方法は、高分子材料を約50~70℃の反応温度で約15~30分間反応させ、脱水乾燥して乾燥高分子材料を得る乾燥ステップと、該乾燥高分子材料をリチウム塩、有機溶媒、可塑剤、イオン性溶液及び補助材料と均一に撹拌し、コロイド電解質を得る材料混合ステップと、該コロイド電解質を70~140℃の反応温度で約2~10分間反応させ、混練して該コロイド電解質を均一にする混練ステップと、を含む。
【0008】
本発明のいくつかの実施例では、該高分子材料は熱可塑性高分子材料又は熱硬化性高分子材料であり、ポリビニルブチラール(PVB)、酢酸ビニル共重合体(EVA)、エポキシ樹脂(EP)及びポリエチレン(PE)からなる群から選択される少なくとも1種の材料又は他の代替可能な材料である。
【0009】
本発明のいくつかの実施例では、該リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロヒ素酸リチウム(LiAsF)、トリフルオロメチルスルホン酸リチウム(LiCFSO)、ビス(シュウ酸)ホウ酸リチウム(LiBOB)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiODFB)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)及びテトラフルオロシュウ酸リン酸リチウム(LiFOP)からなる群から選択される少なくとも1種の材料又は他の代替可能な材料である。
【0010】
本発明のいくつかの実施例では、該有機溶媒はプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、酪酸プロピル(γ-BL)、N-メチル-ピロリジン(NMP)及びジメチルカーボネート(DMC)からなる群から選択される少なくとも1種の材料又は他の代替可能な材料である。
【0011】
本発明のいくつかの実施例では、該可塑剤は、ジエチレングリコールブチルエーテル(Diethylene Glycol Monobutyl Ether)又はアジピン酸(Adipic acid)から選択される。
【0012】
本発明のいくつかの実施例では、該イオン性溶液は、実質的には、主シクロプロピルから構成される。
【0013】
本発明のいくつかの実施例では、該補助材料はトナー、UV吸収剤、光安定剤、温度安定剤及びシリコン粉末からなる群から選択される少なくとも1種の材料である。
【0014】
本発明のいくつかの実施例では、該混練ステップで混練した該コロイド電解質を押し出し、高速カッターを利用して造粒しながら、急速な降温及び乾燥をし、顆粒状電解質を製造する押出造粒ステップをさらに含む。
【0015】
本発明のいくつかの実施例では、該押出造粒ステップでは、作動温度は約100~140℃であり、押出圧力は約0.2~1メガパスカル(MPa)であり、製造された該顆粒状電解質の顆粒のサイズが約1~30mmである。
【0016】
本発明のいくつかの実施例では、該混練ステップで混練した該コロイド電解質を80~150℃で加熱して溶融し、流動性コロイドとし、開口径サイズを調整可能なスリット状吐出口を先端に有する塗布ヘッドのキャビティに該流動性コロイドを前記キャビティの圧力により注入し、該流動性コロイドを該スリット状吐出口から均一に流出させ、離型膜上に塗布して粘着膜構造を形成し、次に、エアナイフにより急速に降温し、厚さを制御してコロイド電解質膜を形成する第1コロイド電解質膜形成ステップをさらに含む。
【0017】
本発明のいくつかの実施例では、該押出造粒ステップで製造された該顆粒状電解質を約70~140℃の反応温度で約2~10分間反応させ、混練して該顆粒状電解質を第2コロイド電解質とし、該第2コロイド電解質を約80~150℃で加熱して溶融し、流動性コロイドとし、開口径サイズを調整可能なスリット状吐出口を先端に有する塗布ヘッドのキャビティに該流動性コロイドを前記キャビティの圧力により注入し、該流動性コロイドを該スリット状吐出口から均一に流出させ、離型膜上に塗布して粘着膜構造を形成し、エアナイフにより急速に降温し、粘着膜の厚さを制御してコロイド電解質膜を形成する第2コロイド電解質膜形成ステップをさらに含む。
【0018】
本発明のいくつかの実施例では、該混練ステップで混練した該コロイド電解質体を押出温度約80~160℃、エアナイフ噴射口の風圧約95~1000キロパスカル(kPa)、押出圧力約0.5~1メガパスカル(MPa)で加熱して押し出し、厚さ約0.005~3mmのコロイド電解質膜を形成する、第3コロイド電解質膜形成ステップをさらに含む。
【0019】
本発明のいくつかの実施例では、該押出造粒ステップで製造された該顆粒状電解質を、押出延流法により約70~140℃で加熱して粘稠状コロイドとし、次に、該粘稠状コロイドを押出温度約80~160℃、エアナイフ噴射口の風圧約95~1000キロパスカル(kPa)、押出圧力約0.5~1メガパスカル(MPa)で加熱して押し出し、厚さ約0.005~3mmのコロイド電解質膜を形成する、第4コロイド電解質膜形成ステップをさらに含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明の有益な効果は以下の通りである。
【0021】
本発明のコロイド電解質では、特定成分及び各成分間の特定の割合を採用し、混練により各成分を均一に分散させることによって、該コロイド電解質は、凝集機械的性質が高いため低流動性を有する。イオン伝導率も固体電解質よりも明らかに向上し、イオン伝導率が高い、スペーサを必要としない、ガラスやプラスチックなどの粘着に有用であるなどの特性を実現する。安全性が高いので液漏れを回避し、また、高粘着性、高透光率及び高伝導率を有する。
【0022】
本発明の電解質は、エレクトロクロミックデバイスの電解質層に利用可能であり、また、粘着技術を利用して作製できる。また、従来のエネルギー貯蔵部品例えばスーパーキャパシタンス、リチウムポリマー電池、スーパーバッテリーの電解質は全てセパレータと組み合わせて電極から隔離されて、電極導通を回避することができる。これらを比較すると、本発明の電解質は粘着膜にした場合、2つの電極間にスペーサ及びイオン伝達や電子バリアのためのものとして使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の電解質の製造方法の一実施例のフローチャートである。
図2】本発明の電解質の製造方法の別の実施例フローチャートである。
図3】本発明の電解質の製造方法の別の実施例フローチャートである。
図4】本発明の電解質の製造方法の別の実施例フローチャートである。
図5】本発明の電解質の製造方法の別の実施例フローチャートである。
図6】本発明の電解質の製造方法の別の実施例フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は本発明の電解質の製造方法の一実施例のフローチャートである。図1に示すように、本実施例の電解質は、高分子材料と、リチウム塩と、有機溶媒と、可塑剤と、イオン性溶液と、補助材料と、を含み、これらを混練してコロイド状にしたものである。該高分子材料は約20~45重量%、該リチウム塩は約2~20重量%、該有機溶媒は約10~30重量%、該可塑剤は約10~30重量%、該イオン性溶液は約1~4重量%、該補助材料は約1~4重量%である。
【0025】
好ましくは、該高分子材料は、熱可塑性高分子材料又は熱硬化性高分子材料であり、ポリビニルブチラール(PVB)、酢酸ビニル共重合体(EVA)、エポキシ樹脂(EP)及びポリエチレン(PE)からなる群から選択される少なくとも1種の材料又は他の代替可能な材料である。本実施例では、該熱可塑性高分子材料はポリビニルブチラール(PVB)であり、主にイオン伝導経路を提供するものとして機能し、コロイド電解質の粘着度及びイオン伝導率を向上させるとともに、優れた電子絶縁性を有する。
【0026】
好ましくは、該リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロヒ素酸リチウム(LiAsF)、トリフルオロメチルスルホン酸リチウム(LiCFSO)、ビス(シュウ酸)ホウ酸リチウム(LiBOB)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiODFB)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)及びテトラフルオロシュウ酸リン酸リチウム(LiFOP)からなる群から選択される少なくとも1種の材料又は他の代替可能な材料である。本実施例では、該リチウム塩は過塩素酸リチウム(LiClO4)であり、解離してイオンを生成することができ、該熱可塑性高分子間で移動することで好ましいイオン伝導機能を付与する。
【0027】
好ましくは、該有機溶媒はプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、酪酸プロピル(γ-BL)、N-メチル-ピロリジン(NMP)及びジメチルカーボネート(DMC)からなる群から選択される少なくとも1種の材料又は他の代替可能な材料である。該有機溶媒はリチウムイオンを伝達する場所を提供し、イオンが該リチウム塩から解離することを補助する。該有機溶媒は好ましくは高沸点の特性を有する。
【0028】
好ましくは、該可塑剤はジエチレングリコールブチルエーテル(Diethylene Glycol Monobutyl Ether)又はアジピン酸(Adipic acid)から選ばれる。本実施例では、該可塑剤はジエチレングリコールブチルエーテルである。該可塑剤の添加により電解質の透光性が向上し、電解質の適用性が向上し、特にエレクトロクロミックデバイス(Electrochromic device/ECD)への適用が可能になる。
【0029】
好ましくは、該イオン性溶液は実質的には主シクロプロピルから構成される。本実施例では、該イオン性溶液は主シクロプロピルに塩素酸根を持つ〔(Pmim)(ClO)〕ものである。該イオン性溶液は、リチウムイオン以外の伝導イオンを提供し、電解質のイオン濃度を高め、また、リチウムイオンの環境安定性を高める。
【0030】
好ましくは、該補助材料はトナー、UV吸収剤、光安定剤、温度安定剤及びシリコン粉末からなる群から選択される少なくとも1種の材料である。該トナーは任意の色の色材であってもよく、フィルタリングや深さの調整用として有用である。該UV吸収剤は二酸化チタン、2-(2'-ヒドロキシ-5'-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールとトリアゾールとの混合物から構成され、接着材の寿命を延ばし、耐候性を向上させることができる。該光安定剤はペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナートを主材料として構成され、UV光を吸収した高分子の酸化分解による変質を回避できる。該温度安定剤はエチレングリコール(EG)を主材料として構成され、接着材の耐低温凍結性や耐高温揮発性を向上させる。シリコン粉末は10~10ナノサイズの任意の形状の粒子であってもよく、接着材の機械的特性や電気絶縁特性を向上させる。
【0031】
該熱可塑性高分子、該リチウム塩及び該有機溶媒を混合した後、該熱可塑性高分子は該有機溶媒で膨潤させて高分子網目を形成する。該熱可塑性高分子の主鎖又は側鎖上の高陰電性原子(例えば酸素)又はヒドロキシ基(即ちOH-)は不対電子(unpaired electron)を有する。このため、該リチウム塩から解離されたリチウムイオン(Li+)は該熱可塑性高分子と一時的な配位結合を形成し、該高分子網目内を伝達しやすくなる。該有機溶媒の存在はリチウムイオンの別の伝導方式を提供し、リチウムイオンが該有機溶媒を介して上記コロイド状高分子電解質内を移動できるようにする。
【0032】
本実施例の電解質の製造方法は、高分子材料を約50~70℃の反応温度で約15~30分間反応させ、脱水乾燥して乾燥高分子材料を得る乾燥ステップS0と、該乾燥高分子材料をリチウム塩、有機溶媒、可塑剤、イオン性溶液及び補助材料と均一に撹拌し、コロイド電解質を得る材料混合ステップS1と、該コロイド電解質を約70~140℃の反応温度で約2~10分間反応させ、混練して該コロイド電解質を均一にする混練ステップS2と、を含む。本実施例では、該材料混合ステップS1では、撹拌器により撹拌し、該混練ステップS2では、混練機を利用して該コロイド電解質を機械力及び化学作用により均一に混合する。
【0033】
図2は本発明の電解質の製造方法の別の実施例のフローチャートである。図2に示すように、好ましくは、本実施例の方法は、該混練ステップS2で混練した該コロイド電解質を押し出し、高速カッターを利用して造粒しながら、急速な降温及び乾燥をし、顆粒状電解質を製造する押出造粒ステップS3をさらに含む。本実施例では、該コロイド電解質はスクリューにより押し出された後、造粒機を利用して高速カッターにより急速な降温及び乾燥をし、顆粒状電解質となり、このようにして、完成品の保存が容易になり、後続のプロセスへの利用に有利である。降温及び乾燥に関しては、例えば水又は有機溶媒で降温してから、風乾方式で乾燥してもよい。
【0034】
好ましくは、該押出造粒ステップS3は、作動温度約100~140℃、押出圧力約0.2~1メガパスカル(MPa)であり、製造された該顆粒状コロイド電解質の顆粒サイズは約1~30mmである。本実施例では、電解質顆粒のサイズは4mmであり、作動温度は105℃であり、押出圧力は0.8メガパスカル(MPa)である。
【0035】
図3は本発明の電解質の製造方法の別の実施例のフローチャートである。図3に示すように、好ましくは、後続のプロセスでの取り扱い性から、本実施例の電解質の製造方法は、該混練ステップS2で混練した該コロイド電解質を約80~150℃で加熱して溶融し、流動性コロイドとし、開口径サイズを調整可能なスリット状吐出口を先端に有する塗布ヘッドのキャビティに該流動性コロイドを上記キャビティの圧力により注入し、該流動性コロイドを該スリット状吐出口から均一に流出させ、離型膜上に塗布して粘着膜構造を形成し、エアナイフにより急速に降温し、厚さを制御してコロイド電解質膜を形成する第1コロイド電解質膜形成ステップS41をさらに含む。本実施例では、加熱溶融温度を95℃とし、開口径サイズを調整可能なスリット状吐出口を先端に有する塗布ヘッドのキャビティに該流動性コロイドを上記キャビティの圧力により注入し、該流動性コロイドを塗布ヘッドのスリット状吐出口から均一に流出させ、該流動性コロイドを離型膜上に塗布するにつれて粘着膜構造を構成し、粘着膜をエアナイフにより急速に降温し、粘着膜の厚さを制御して、コロイド電解質膜を形成する。
【0036】
図4は本発明の電解質の製造方法の別の実施例のフローチャート。図4に示すように、好ましくは、後続のプロセスでの取り扱い性から、本実施例の電解質の製造方法は、該押出造粒ステップS3で製造された該顆粒状電解質置を約70~140℃の反応温度で約2~10分間反応させ、混練して該顆粒状電解質を第2コロイド電解質とし、該第2コロイド電解質を約80~150℃で加熱して溶融し、流動性コロイドとし、開口径サイズを調整可能なスリット状吐出口を先端に有する塗布ヘッドのキャビティに該流動性コロイドを上記キャビティの圧力により注入し、該流動性コロイドを該スリット状吐出口から均一に流出させ、離型膜上に塗布して粘着膜構造を形成し、エアナイフにより急速に降温し、粘着膜の厚さを制御して、コロイド電解質膜を形成する第2コロイド電解質膜形成ステップS42をさらに含む。本実施例では、反応温度を90℃、反応時間を5分間とし、また、混練機を利用して、該顆粒状電解質をコロイド電解質にし、次に、該コロイド電解質を95℃で加熱して溶融し、流動性コロイドとし、塗布ヘッドのキャビティに該流動性コロイドを上記キャビティの圧力により注入する。塗布ヘッドの先端は開口径サイズを調整可能なスリット状吐出口であり、該流動性コロイドは塗布ヘッドのスリット状吐出口から流出し、離型膜上に塗布されるにつれて粘着膜構造を形成する。ここで、離型膜は紙膜、布膜又はプラスチック膜である。粘着膜をエアナイフにより急速に降温し、粘着膜の厚さを制御して、コロイド電解質膜を形成し、最後に、離型膜を被覆し、粘着膜巻き取り装置によりコロイド電解質膜を得る。
【0037】
図5は本発明の電解質の製造方法の別の実施例のフローチャートである。図5に示すように、好ましくは、後続のプロセスでの取り扱い性から、本実施例の電解質の製造方法は、該混練ステップS2で混練した該コロイド電解質体を押出温度約80~160℃、エアナイフ噴射口の風圧約95~1000キロパスカル(kPa)、押出圧力約0.5~1メガパスカル(MPa)で加熱して押出し、厚さ約0.005~3mmのコロイド電解質膜を形成する、第3コロイド電解質膜形成ステップS43をさらに含む。本実施例では、押出温度は120℃であり、エアナイフ噴射口の吹き角度は90°~105°であり、押出噴射口のキャップは1mmであり、押出圧力は0.6メガパスカル(MPa)であり、最後には、厚さ0.6mmのコロイド電解質膜が形成される。
【0038】
図6は本発明の電解質の製造方法の別の実施例のフローチャートである。図6に示すように、好ましくは、後続のプロセスでの取り扱い性から、本実施例の電解質の製造方法は、該押出造粒ステップS3で製造された該顆粒状電解質を、押出延流法により約70~140℃で加熱して粘稠状コロイドとし、次に、該粘稠状コロイドを押出温度約80~160℃、エアナイフ噴射口の風圧約95~1000キロパスカル(kPa)、押出圧力約0.5~1メガパスカル(MPa)で加熱して押出し、厚さ約0.005~3mmのコロイド電解質膜を形成する、第4コロイド電解質膜形成ステップS44をさらに含む。本実施例では、該顆粒状電解質を100℃で加熱して粘稠状コロイドとし、押出温度は120℃であり、エアナイフ噴射口の風圧は約100キロパスカル(kPa)であり、風は押出噴射口の幅全体にわたって存在し、エアナイフ噴射口の吹き角度は90°~105°であり、押出噴射口のキャップは約1mmであり、押出圧力は0.6メガパスカル(MPa)であり、最後に、厚さ0.6mmのコロイド電解質膜が形成される。
【0039】
本発明のコロイド電解質では、特定成分及び各成分間の特定の割合を採用し、混練により各成分を均一に分散させることによって、該コロイド電解質は、凝集機械的性質が高いため低流動性を有する。イオン伝導率も固体電解質よりも明らかに向上し、イオン伝導率が高い、スペーサを必要としない、ガラスやプラスチックなどの粘着に有用であるなどの特性を実現する。安全性が高いので液漏れを回避し、また、高粘着性、高透光率及び高伝導率を有する。
【0040】
本発明の電解質は、エレクトロクロミックデバイスの電解質層に利用可能であり、また、粘着技術を利用して作製できる。また、従来のエネルギー貯蔵部品例えばスーパーキャパシタンス、リチウムポリマー電池、スーパーバッテリーの電解質は全てセパレータと組み合わせて電極から隔離されて、電極導通を回避することができる。これらを比較すると、本発明の電解質は粘着膜にした場合、2つの電極間にスペーサ及びイオン伝達や電子バリアのためのものとして使用できる。
【符号の説明】
【0041】
S0 乾燥ステップ
S1 材料混合ステップ
S2 混練ステップ
S3 押出造粒ステップ
S41 第1コロイド電解質膜形成ステップ
S42 第2コロイド電解質膜形成ステップ
S43 第3コロイド電解質膜形成ステップ
S44 第4コロイド電解質膜形成ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6