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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】白金合金
(51)【国際特許分類】
   C22C 5/04 20060101AFI20240201BHJP
   C22F 1/14 20060101ALN20240201BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20240201BHJP
【FI】
C22C5/04
C22F1/14
C22F1/00 630C
C22F1/00 671
C22F1/00 673
C22F1/00 681
C22F1/00 685Z
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 691Z
C22F1/00 694A
C22F1/00 692A
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022173243
(22)【出願日】2022-10-28
(65)【公開番号】P2023088265
(43)【公開日】2023-06-26
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】21214514.8
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス-ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・キスリング
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・フェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョナ・ヴァンノ
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン・シャルボン
(72)【発明者】
【氏名】ドニ・ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】ステファーヌ・ローペル
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-112715(JP,A)
【文献】特開2006-269096(JP,A)
【文献】特開平06-112252(JP,A)
【文献】国際公開第2015/193659(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 5/00- 5/10
C22F 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金合金であって、以下の元素:
-95.00~96.00重量%のPt、
-1.00~4.95重量%のRu、
-0.05~2.00重量%のGe、
-0~2.00重量%のAu、
-総含有量が≦0.50重量%である任意の不純物
からなる、白金合金。
【請求項2】
Ru含有量は、2.00~4.95重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の白金合金。
【請求項3】
Ru含有量は、3.00~4.95重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の白金合金。
【請求項4】
Ru含有量は、3.50~4.80重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の白金合金。
【請求項5】
Ge含有量は、0.05~1.50重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の白金合金。
【請求項6】
Ge含有量は、0.05~1.00重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の白金合金。
【請求項7】
Ge含有量は、0.07~0.70重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の白金合金。
【請求項8】
Au含有量は、0.05~1.50重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の白金合金。
【請求項9】
Au含有量は、0.10~1.00重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の白金合金。
【請求項10】
Au含有量は、0.10~0.70重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の白金合金。
【請求項11】
95.00~96.00重量%のPtと、2.00~4.90重量%のRuと、0.05~1.50重量%のGeと、0.05~1.50重量%のAuと、総含有量≦0.50重量%の任意の不純物とからなることを特徴とする、請求項1に記載の白金合金。
【請求項12】
95.00~96.00重量%のPtと、3.00~4.85重量%のRuと、0.05~1.00重量%のGeと、0.10~1.00重量%のAuと、総含有量≦0.50重量%の任意の不純物とからなることを特徴とする、請求項1に記載の白金合金。
【請求項13】
95.00~96.00重量%のPtと、3.50~4.83重量%のRuと、0.07~0.70重量%のGeと、0.10~0.70重量%のAuと、総含有量≦0.50重量%の任意の不純物とからなることを特徴とする、請求項1に記載の白金合金。
【請求項14】
140~230HV2硬度、及び7~8の黄色度指数Yi10°を有することを特徴とする、請求項1に記載の白金合金。
【請求項15】
その構造が面心立方型単相であり、GePt3、GePt2、Ge2Pt3、GePt、Ge3Pt2、GeRuである金属間析出物を含まないことを特徴する、請求項1に記載の白金合金。
【請求項16】
請求項1に記載の白金合金で作製された品物。
【請求項17】
前記品物は装飾品であることを特徴とする、請求項16に記載の品物。
【請求項18】
前記品物は、ミドルケース、裏蓋、ベゼル、プッシュボタン、竜頭、ベルトのリンク、ベルトの中留、文字盤、時計針、及び文字盤時字を含む群から選択される計時器部品であることを特徴とする、請求項16に記載の品物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金合金に関する。本発明は、この合金から作製された品物、特に装飾品に関し、より具体的には、計時器部品に関する。
【背景技術】
【0002】
腕時計の製造及び宝飾品に使用される白金系合金は、数種類が市販されている。これらの合金は、国際的に認知されている95重量%の等級で主に使用されるという特徴を有し、そのため合金化元素の含有量が大きく制限される。したがって、合金化元素は、当該元素に特異的な技術上の制約を受けることとなる。第1の従来の合金化元素は、ルテニウム、コバルト、銅、イリジウムである。ルテニウムを含有する白金合金は、宝飾品及び腕時計の製造において、特に機械加工製品に広く使用されている。ルテニウムを含有する白金合金は、市販されている最も白い白金合金であるという特徴を有する。残念ながら、この合金は、鋳造温度が高く、溶融範囲が比較的低いことから、鋳造が困難である。加えて、この合金は、プロファイルターニング、ミリング及びドリル加工などの従来の機械加工技術にしか適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、機械加工への適性に優れながら鋳造が容易であり、眩しい白さを有する新規白金合金を提案することによって、上記欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的のため、本発明は、95.00~96.00重量%のPtと、1.00~4.95重量%のRuと、0.05~2.00重量%のGeと、0~2.00重量%のAuと、総含有量が0.50重量%以下の任意の不純物とからなる白金金属に関する。
【0005】
好ましくは、Ru含有量は、2.00~4.95重量%である。より好ましくは、Ru含有量は、3.00~4.95重量%である。特に好ましくは、Ru含有量は、3.50~4.80重量%である。
【0006】
好ましくは、Ge含有量は、0.05~1.50重量%である。より好ましくは、Ge含有量は、0.05~1.00重量%である。特に好ましくは、Ge含有量は、0.07~0.70重量%である。
【0007】
好ましくは、Au含有量は、0.05~1.50重量%である。より好ましくは、Au含有量は、0.10~1.00重量%である。特に好ましくは、Au含有量は、0.10~0.70重量%である。
【0008】
ルテニウムは、合金にある程度の硬度及び白色度をもたらす。ゲルマニウムの添加は、合金の硬度を大幅に増大させる。更に、ゲルマニウムの添加は、合金の機械加工性を高め、鋳造温度を低下させると同時に溶融範囲を増大することを可能にする。金の添加は、機械加工性及び鋳造性に対して同じ効果を有する。
【0009】
典型的には、本発明による合金は、黄色度指数Yi10°が7~8であり、HV2硬度が140~230である。
【0010】
有利には、本発明による合金は、面心立方型単相構造を有し、GePt3、GePt2、Ge2Pt3、GePt、Ge3Pt2、GeRuなどの金属間析出物を含まない。金属間析出物は固溶体によって硬度を低下し、研磨工程中に欠陥を発生する可能性がある(ハードスポットの存在)。
【0011】
したがって、この合金の組成は、硬度と、機械加工性と、鋳造性とのバランスに非常に優れ、合金の白色に悪影響を及ぼさない。
【0012】
本発明は、この合金から作製された品物、特に計時器部品にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の合金は、95重量%の等級の白金合金である。
【0014】
本発明によると、白金合金は、95.00~96.00重量%のPtと、1.00~4.95重量%のRuと、0.05~2.00重量%のGeと、0~2.00重量%のAuと、総含有量≦0.50重量%の任意の不純物とからなる。合金は、上記の種々の元素と不純物とからなる。すなわち、Pt、Ru、Ge、Au及び任意の不純物の全部で、100%の割合に達する。
【0015】
好ましくは、Ru含有量は、2.00~4.95重量%である。より好ましくは、Ru含有量は、3.00~4.95重量%である。特に好ましくは、Ru含有量は、3.50~4.80重量%である。
【0016】
好ましくは、Ge含有量は、0.05~1.50重量%である。より好ましくは、Ge含有量は、0.05~1.00重量%である。特に好ましくは、Ge含有量は、0.07~0.70重量%である。
【0017】
好ましくは、Au含有量は、0.05~1.50重量%である。より好ましくは、Au含有量は、0.10~1.00重量%である。特に好ましくは、Au含有量は、0.10~0.70重量%である。
【0018】
有利には、第1の変形によると、白金合金は、95.00~96.00重量%のPtと、2.00~4.90重量%のRuと、0.05~1.50重量%のGeと、0.05~1.50重量%のAuと、総含有量≦0.50重量%の任意の不純物とからなる。
【0019】
有利には、第2の変形によると、白金合金は、95.00~96.00重量%のPtと、3.00~4.85重量%のRuと、0.05~1.00重量%のGeと、0.10~1.00重量%のAuと、総含有量≦0.50重量%の任意の不純物とからなる。
【0020】
有利には、第3の変形によると、白金合金は、95.00~96.00重量%のPtと、3.50~4.83重量%のRuと、0.07~0.70重量%のGeと、0.10~0.70重量%のAuと、総含有量≦0.50重量%の任意の不純物とからなる。
【0021】
本発明による白金合金は、特に計時器部品の製造に適用され、より具体的には、ミドルケース、裏蓋、ベゼル、プッシュボタン、竜頭、ベルトのリンク、ベルトの中留、文字盤、時計針、文字盤時字などの外側部分の計時器部品に適用される。概して、この合金は、任意の品物に使用されてもよく、より具体的には、任意の装飾品に、例えば、宝飾品の分野で、使用されてもよい。
【0022】
本発明による合金は、HV2硬度が140~230、場合により150~210であり、後に定義するような黄色度指数Yi10°が7~8である。
【0023】
有利には、本発明による合金は、面心立方型単相構造を有し、GePt3、GePt2、Ge2Pt3、GePt、Ge3Pt2、GeRuなどの金属間析出物を含まない。
【0024】
本発明による白金合金を調製する手順は、以下のとおりである:
-合金の組成に組み込まれる主な元素は、999~999.9パーミルの純度を有し、脱酸素されている。
-合金の組成元素を、ルツボに入れ、元素が溶融するまで加熱する。
-加熱は、アルゴン分圧下の密閉誘導炉内で実施する。
-溶融合金を、インゴット鋳型に鋳込む。
-固化後、インゴットを、任意選択で水焼入れ処理する。
-冷却されたインゴットを、次いで、冷間圧延し、その後焼きなましする。各焼きなましと焼きなましとの間の冷間加工の度合いは、40~80%である。
-各焼きなましは20~120分間持続し、純H又はHとNとの混合物からなる還元雰囲気下にて900℃~1100℃で実施する。
-焼きなまし作業後の冷却は、水焼入れ又は開放空気冷却により実施する。
【実施例
【0025】
上記の方法で作製した本発明による合金の比色値及び硬度を、比較例と共に表1に示す。比較例であるNo.1の組成は、ゲルマニウムを含まず、金とルテニウムとを含む。No.2~No.11の試料は、金とゲルマニウムとを含むが、No.12及びNo.13の試料は金を含まない。測定は、焼きなましと研磨を施した試料で実施した。
【0026】
CIELAB色空間におけるL比色値(IEC No.15、lSO 7724/1、DIN5033 Teil7、ASTM E-1164に従う)は、KONICA MINOLTA Cm-2600d分光測色計にD65光源及び視角10°を用いて測定した。合金の白色度の指標である黄色度指数Yi10°は、ASTM E313に従って、L値から計算されている。この指数が低いほど、合金は白い。
【0027】
No.2~No.13の合金では、ゲルマニウムの添加により、硬度の大幅且つほぼ直線的な増加が観察されるが、黄色度指数は、ほぼ同じ7~8の範囲に維持される。本発明による合金は、150~196HV2の硬度を有するのに対し、ゲルマニウムを含まない参照合金No.1は138HV2である。合金No.5及びNo.7における0.1重量%という少量のゲルマニウムの添加は、硬度に大きく影響し、その値は150HV2に達する。0.5重量%のゲルマニウムを添加すると、硬度は196HV2まで上昇する。ゲルマニウムの添加は、合金が金を含むか否かにかかわらず、硬度に大きな影響を与えることが観察できる。
【0028】
【表1】