(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】電子制御ユニット
(51)【国際特許分類】
B62J 45/00 20200101AFI20240201BHJP
H05K 5/06 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B62J45/00
H05K5/06 E
(21)【出願番号】P 2022502337
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 IB2021051361
(87)【国際公開番号】W WO2021171146
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2020029231
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】中野 良二
(72)【発明者】
【氏名】小川 貴士
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-170548(JP,A)
【文献】特開2015-227099(JP,A)
【文献】特開2000-294944(JP,A)
【文献】特開2018-008674(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02762371(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 1/00 - 99/00
H05K 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗り型車両(100)の電子制御ユニット(5)であって、
基板(521)と、前記基板(521)の配線に実装された複数の電子部品(522)と、を含む電子回路ユニット(52)と、
前記電子回路ユニット(52)を収容する筐体(53)と、
を備え、
前記筐体(53)には、前記筐体(53)の内部と外部とを連通する貫通孔(533)と、前記貫通孔(533)を塞ぐ防水透湿性部材(535)とが設けられており、
通常時には、前記筐体(53)の内部と外部との間での水の流通が前記防水透湿性部材(535)によって遮断され、前記筐体(53)の内部と外部との間でガスが前記防水透湿性部材(535)を介して流通可能となり、
前記筐体(53)内で発煙が生じている異常発煙時には、前記筐体(53)内で生じた煙(S1)によって前記防水透湿性部材(535)に目詰まりが生じ、前記筐体(53)の内部と外部との間でのガスの流通が前記防水透湿性部材(535)によって遮断され
、
前記異常発煙時に、前記複数の電子部品(522)のうち最初に発煙する電子部品(522)である初期発煙電子部品が発煙している間に、前記防水透湿性部材(535)に目詰まりが生じる、
電子制御ユニット。
【請求項2】
前記初期発煙電子部品は、前記通常時に電力が供給される電子部品(522)である、
請求項
1に記載の電子制御ユニット。
【請求項3】
前記初期発煙電子部品は、前記電子回路ユニット(52)において外部電源(6)の電圧変動を抑制するデカップリングコンデンサ(522a)である、
請求項
2に記載の電子制御ユニット。
【請求項4】
前記初期発煙電子部品は、前記通常時に前記電子回路ユニット(52)において不要な電子部品(522)である、
請求項
2に記載の電子制御ユニット。
【請求項5】
前記初期発煙電子部品は、前記通常時には電力が供給されず、前記筐体(53)内で異常発熱が生じている異常発熱時に電力が供給される電子部品(522)である、
請求項
1に記載の電子制御ユニット。
【請求項6】
前記初期発煙電子部品は、前記複数の電子部品(522)のうちの異常発熱を生じる可能性のある電子部品(522)のうちで最も前記防水透湿性部材(535)に近い位置に実装されている、
請求項
1~5のいずれか一項に記載の電子制御ユニット。
【請求項7】
前記初期発煙電子部品は、前記基板(521)の前記防水透湿性部材(535)に近い側の面(F1)に実装されている、
請求項
1~6のいずれか一項に記載の電子制御ユニット。
【請求項8】
鞍乗り型車両(100)の電子制御ユニット(5)であって、
基板(521)と、前記基板(521)の配線に実装された複数の電子部品(522)と、を含む電子回路ユニット(52)と、
前記電子回路ユニット(52)を収容する筐体(53)と、
を備え、
前記筐体(53)には、前記筐体(53)の内部と外部とを連通する貫通孔(533)と、前記貫通孔(533)を塞ぐ防水透湿性部材(535)とが設けられており、
通常時には、前記筐体(53)の内部と外部との間での水の流通が前記防水透湿性部材(535)によって遮断され、前記筐体(53)の内部と外部との間でガスが前記防水透湿性部材(535)を介して流通可能となり、
前記筐体(53)内で発煙が生じている異常発煙時には、前記筐体(53)内で生じた煙(S1)によって前記防水透湿性部材(535)に目詰まりが生じ、前記筐体(53)の内部と外部との間でのガスの流通が前記防水透湿性部材(535)によって遮断され
、
前記筐体(53)内に、前記配線に電気的に接続されない非電子部品(54)が設けられ、
前記異常発煙時に、前記非電子部品(54)が前記複数の電子部品(522)のうちの少なくとも1つの電子部品(522)によって加熱されて前記複数の電子部品(522)よりも先に発煙し、その間に前記防水透湿性部材(535)に目詰まりが生じる、
電子制御ユニット。
【請求項9】
前記非電子部品(54)は、前記少なくとも1つの電子部品(522)と比較して前記防水透湿性部材(535)に近い側に位置している、
請求項
8に記載の電子制御ユニット。
【請求項10】
前記非電子部品(54)は、前記筐体(53)内の前記基板(521)を基準とする前記防水透湿性部材(535)のある側に配置されている、
請求項
8又は
9に記載の電子制御ユニット。
【請求項11】
前記異常発煙時に、前記煙(S1)のうちの炭素の微粒子及び樹脂の複合成分によって、前記防水透湿性部材(535)の目詰まりが生じる、
請求項1~
10のいずれか一項に記載の電子制御ユニット。
【請求項12】
前記防水透湿性部材(535)の耐水圧は、600mbar以上である、
請求項1~
11のいずれか一項に記載の電子制御ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、鞍乗り型車両の安全性を向上させることができる電子制御ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
モータサイクル等の鞍乗り型車両には、各装置の動作を制御する様々な電子制御ユニットが搭載されている。例えば、特許文献1には、モータサイクルに搭載される電子制御ユニットとして、モータサイクルの車輪を制動する制動力を制御するための液圧制御ユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子制御ユニットでは、基板と、当該基板の配線に実装された複数の電子部品とを含む電子回路ユニットが筐体に収容されている。ここで、電子部品に過電流が流れること等に起因して、筐体内で異常発熱が生じる場合がある。ゆえに、電子制御ユニットの筐体内での異常発熱によって車両の安全性が損なわれることを抑制し、安全性を向上させることが望ましい。特に、鞍乗り型車両では、電子制御ユニットの筐体内での異常発熱が安全性に与える影響が大きいので、異常発熱に対する安全性を向上させる必要性が大きい。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、鞍乗り型車両の安全性を向上させることができる電子制御ユニットを得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子制御ユニットは、鞍乗り型車両の電子制御ユニットであって、基板と、前記基板の配線に実装された複数の電子部品と、を含む電子回路ユニットと、前記電子回路ユニットを収容する筐体と、を備え、前記筐体には、前記筐体の内部と外部とを連通する貫通孔と、前記貫通孔を塞ぐ防水透湿性部材とが設けられており、通常時には、前記筐体の内部と外部との間での水の流通が前記防水透湿性部材によって遮断され、前記筐体の内部と外部との間でガスが前記防水透湿性部材を介して流通可能となり、前記筐体内で発煙が生じている異常発煙時には、前記筐体内で生じた煙によって前記防水透湿性部材に目詰まりが生じ、前記筐体の内部と外部との間でのガスの流通が前記防水透湿性部材によって遮断される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電子制御ユニットでは、電子回路ユニットを収容する筐体には、当該筐体の内部と外部とを連通する貫通孔を塞ぐ防水透湿性部材が設けられている。通常時には、筐体の内部と外部との間での水の流通が防水透湿性部材によって遮断され、筐体の内部と外部との間でガスが防水透湿性部材を介して流通可能となる。一方、筐体内で発煙が生じている異常発煙時には、筐体内で生じた煙によって防水透湿性部材に目詰まりが生じ、筐体の内部と外部との間でのガスの流通が防水透湿性部材によって遮断される。これにより、筐体内で異常発熱が生じた場合に、筐体の外部から内部への酸素の供給を抑制することができるので、筐体内での発火及び延焼を抑制することができる。ゆえに、鞍乗り型車両の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るブレーキシステムが搭載されるモータサイクルの概略構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係るブレーキシステムの概略構成を示す模式図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る液圧制御ユニットを示す斜視図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る液圧制御ユニットの筐体の内部を示す断面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る電子回路ユニットの電子回路の概略構成を示す模式図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る液圧制御ユニットの筐体の内部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る電子制御ユニットについて、図面を用いて説明する。なお、以下では、二輪のモータサイクル用のブレーキシステムの液圧制御ユニットについて説明しているが、本発明に係る電子制御ユニットは、二輪のモータサイクル以外の他の鞍乗り型車両(例えば、三輪のモータサイクル、バギー車、自転車等)に用いられるものであってもよい。なお、鞍乗り型車両は、ライダーが跨って乗車する車両を意味し、スクーター等も含む。また、本発明に係る電子制御ユニットは、液圧制御ユニット以外の電子制御ユニット(例えば、エンジン制御ユニット、サスペンション制御ユニット等)であってもよい。
【0010】
また、以下では、前輪制動機構及び後輪制動機構が、それぞれ1つずつである場合を説明しているが、前輪制動機構及び後輪制動機構の少なくとも一方が複数であってもよく、また、前輪制動機構及び後輪制動機構の一方が設けられていなくてもよい。また、以下では、各制動機構に主流路、副流路及び供給流路が設けられている場合を説明しているが、各制動機構の流路から供給流路が省略されていてもよい。
【0011】
また、以下で説明する構成等は一例であり、本発明に係る電子制御ユニットは、そのような構成等である場合に限定されない。
【0012】
また、以下では、同一の又は類似する説明を適宜簡略化又は省略している。また、各図において、同一の又は類似する部材又は部分については、符号を付すことを省略しているか、又は同一の符号を付している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0013】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について説明する。
【0014】
[ブレーキシステムの構成]
図1及び
図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係るブレーキシステム10の概略構成について説明する。
【0015】
図1は、ブレーキシステム10が搭載されるモータサイクル100の概略構成を示す模式図である。
図2は、ブレーキシステム10の概略構成を示す模式図である。
【0016】
図1及び
図2に示されるように、ブレーキシステム10は、モータサイクル100に搭載される。モータサイクル100は、胴体1と、胴体1に旋回自在に保持されているハンドル2と、胴体1にハンドル2と共に旋回自在に保持されている前輪3と、胴体1に回動自在に保持されている後輪4とを備える。モータサイクル100は、例えば、エンジン(図示省略)を備えており、当該エンジンから出力される動力を用いて走行する。なお、モータサイクル100は、モータから出力される動力を用いて走行するものであってもよい。
【0017】
ブレーキシステム10は、第1ブレーキ操作部11と、少なくとも第1ブレーキ操作部11に連動して前輪3を制動する前輪制動機構12と、第2ブレーキ操作部13と、少なくとも第2ブレーキ操作部13に連動して後輪4を制動する後輪制動機構14とを備える。また、ブレーキシステム10は、液圧制御ユニット5を備え、前輪制動機構12の一部及び後輪制動機構14の一部は、当該液圧制御ユニット5に含まれる。液圧制御ユニット5は、前輪制動機構12によって前輪3に付与される制動力、及び、後輪制動機構14によって後輪4に付与される制動力を制御する機能を担う電子制御ユニットである。
【0018】
第1ブレーキ操作部11は、ハンドル2に設けられており、ライダーの手によって操作される。第1ブレーキ操作部11は、例えば、ブレーキレバーである。第2ブレーキ操作部13は、胴体1の下部に設けられており、ライダーの足によって操作される。第2ブレーキ操作部13は、例えば、ブレーキペダルである。
【0019】
前輪制動機構12及び後輪制動機構14のそれぞれは、ピストン(図示省略)を内蔵しているマスタシリンダ21と、マスタシリンダ21に付設されているリザーバ22と、胴体1に保持され、ブレーキパッド(図示省略)を有しているブレーキキャリパ23と、ブレーキキャリパ23に設けられているホイールシリンダ24と、マスタシリンダ21のブレーキ液をホイールシリンダ24に流通させる主流路25と、ホイールシリンダ24のブレーキ液を逃がす副流路26と、マスタシリンダ21のブレーキ液を副流路26に供給する供給流路27とを備える。
【0020】
主流路25には、込め弁(EV)31が設けられている。副流路26は、主流路25のうちの、込め弁31に対するホイールシリンダ24側とマスタシリンダ21側との間をバイパスする。副流路26には、上流側から順に、弛め弁(AV)32と、アキュムレータ33と、ポンプ34とが設けられている。主流路25のうちの、マスタシリンダ21側の端部と、副流路26の下流側端部が接続される箇所との間には、第1弁(USV)35が設けられている。供給流路27は、マスタシリンダ21と、副流路26のうちのポンプ34の吸込側との間を連通させる。供給流路27には、第2弁(HSV)36が設けられている。
【0021】
込め弁31は、例えば、非通電状態で開き、通電状態で閉じる電磁弁である。弛め弁32は、例えば、非通電状態で閉じ、通電状態で開く電磁弁である。第1弁35は、例えば、非通電状態で開き、通電状態で閉じる電磁弁である。第2弁36は、例えば、非通電状態で閉じ、通電状態で開く電磁弁である。
【0022】
主流路25、副流路26及び供給流路27は、基体511(
図3を参照)の内部に形成される。込め弁31、弛め弁32、アキュムレータ33、ポンプ34、第1弁35及び第2弁36は、モータサイクル100に生じさせるブレーキ液圧を制御するためのコンポーネントに相当し、基体511に組み込まれる。基体511及び当該基体511に組み込まれる上記のコンポーネントは、液圧制御ユニット5の液圧制御機構51に含まれる。液圧制御機構51の動作は、後述する電子回路ユニット52によって制御される。これにより、前輪制動機構12によって前輪3に付与される制動力、及び、後輪制動機構14によって後輪4に付与される制動力が制御される。
【0023】
通常状態(つまり、後述されるABS動作又は自動制動動作等が実行されない状態)では、込め弁31が開放され、弛め弁32が閉鎖され、第1弁35が開放され、第2弁36が閉鎖される。これにより、マスタシリンダ21からホイールシリンダ24へ、副流路26及び供給流路27を介さずに、主流路25を介して、ブレーキ液が流動する状態となる。この状態で、第1ブレーキ操作部11が操作されると、前輪制動機構12において、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増大し、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が前輪3のロータ3aに押し付けられて、前輪3に制動力が付与される。また、第2ブレーキ操作部13が操作されると、後輪制動機構14において、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増大し、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が後輪4のロータ4aに押し付けられて、後輪4に制動力が付与される。
【0024】
ABS動作は、例えば、車輪(具体的には、前輪3又は後輪4)にロック又はロックの可能性が生じた場合に実行され、当該車輪に付与される制動力をライダーによるブレーキ操作部(具体的には、第1ブレーキ操作部11又は第2ブレーキ操作部13)の操作によらずに減少させる動作である。
【0025】
例えば、ABS動作が実行されている状態では、まず、込め弁31が閉鎖され、弛め弁32が開放され、第1弁35が開放され、第2弁36が閉鎖される。これにより、主流路25とホイールシリンダ24との間でのブレーキ液の流動が停止し、ホイールシリンダ24から副流路26へブレーキ液が流動可能な状態となる。ゆえに、ホイールシリンダ24からアキュムレータ33にブレーキ液が流れ込み、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が減少し、車輪に付与される制動力が減少する。アキュムレータ33に流れ込んだブレーキ液は、ポンプ34が駆動されることによって、副流路26を介して主流路25に戻される。
【0026】
そして、上記の状態から込め弁31及び弛め弁32の双方が閉鎖されることにより、主流路25及び副流路26とホイールシリンダ24との間でのブレーキ液の流動が停止し、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が維持されて車輪に付与される制動力が維持される。その後、込め弁31が開放され、弛め弁32が閉鎖されることにより、主流路25とホイールシリンダ24との間でのブレーキ液の流動が再開し、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増大し、車輪に付与される制動力が増大する。
【0027】
自動制動動作は、例えば、モータサイクル100の旋回時等にモータサイクル100の姿勢を安定化する必要性が生じた場合に実行され、車輪(具体的には、前輪3又は後輪4)に付与される制動力をライダーによるブレーキ操作部(具体的には、第1ブレーキ操作部11又は第2ブレーキ操作部13)の操作によらずに生じさせる動作である。
【0028】
例えば、自動制動動作が実行されている状態では、込め弁31が開放され、弛め弁32が閉鎖され、第1弁35が閉鎖され、第2弁36が開放される。これにより、マスタシリンダ21からホイールシリンダ24へ、供給流路27及び副流路26を介して、ブレーキ液が流動する状態となる。その状態で、ポンプ34が駆動されることにより、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増大し、車輪を制動する制動力が生じる。
【0029】
[液圧制御ユニットの構成]
図3~
図5を参照して、本発明の第1の実施形態に係る液圧制御ユニット5の構成について、より詳細に説明する。
【0030】
【0031】
図3に示されるように、液圧制御ユニット5は、液圧制御機構51と、電子回路ユニット52と、筐体53とを備える。
【0032】
液圧制御機構51は、上述したように、基体511及び当該基体511に組み込まれたコンポーネント(具体的には、込め弁31、弛め弁32、アキュムレータ33、ポンプ34、第1弁35及び第2弁36(
図2を参照))を含む。また、基体511の内部には、主流路25、副流路26及び供給流路27(
図2を参照)が形成されている。基体511は、例えば、略直方体形状を有し、金属材料によって形成されている。基体511の外面には、各流路と連通している複数のポート(図示省略)が形成されており、各ポートに、マスタシリンダ21又はホイールシリンダ24(
図2を参照)と接続されているブレーキ液管が取り付けられる。なお、基体511は、1つの部材によって形成されていてもよく、複数の部材によって形成されていてもよい。また、基体511が複数の部材によって形成されている場合、各コンポーネントは、互いに異なる部材に分かれて設けられていてもよい。
【0033】
電子回路ユニット52は、基板521と、当該基板521の配線に実装された複数の電子部品522a,522b,522cとを含む。基板521は、プリント基板であり、絶縁体の平板状部材と、当該平板状部材に施された導体の配線とを含む。電子部品522a,522b,522cは、はんだ付等によって基板521の配線に電気的に接続されており、基板521の配線とともに電子回路ユニット52の電子回路を形成する。
図3では、理解を容易にするために、3つの電子部品522a,522b,522cのみが示されているが、実際には、より多くの電子部品が基板521の配線に実装されている。なお、電子回路ユニット52における電子部品の数は特に限定されない。以下では、各電子部品を特に区別しない場合、単に電子部品522と呼ぶ。電子部品522は、電子回路ユニット52の電子回路を形成する部品であればよく、能動素子、受動素子及びその他の部品のいずれであってもよい。なお、電子回路ユニット52の電子回路の概略構成については、後述する。
【0034】
筐体53は、電子回路ユニット52を収容する。筐体53は、例えば、中空の略四角筒形状を有しており、樹脂によって形成される。筐体53は、ボルト締結等によって、基体511に保持されている。
【0035】
筐体53には、外部装置(つまり、液圧制御ユニット5の外部の装置)と接続されるケーブルが取り付けられる部分として、筒状部531及び複数のコネクタピン532が設けられている。筒状部531は、筐体53から基体511に向かう方向に延びて形成されており、複数のコネクタピン532は、筒状部531の内側で、筒状部531の延在方向に沿って延在している。複数のコネクタピン532の基板521側の端部は、電子回路ユニット52の基板521と接続されており、電子回路ユニット52は、各コネクタピン532を介して外部装置と電気的に接続される。
【0036】
筐体53には、筐体53の内部と外部とを連通する貫通孔533が設けられている。ここで、
図3及び
図4を参照して、貫通孔533の周囲の構成について、詳細に説明する。
【0037】
図4は、液圧制御ユニット5の筐体53の内部を示す断面図である。具体的には、
図4は、
図3に示されるA-A断面を表す図であり、A-A断面は、基板521に直交し、筐体53の貫通孔533を通る断面である。
【0038】
図3及び
図4に示されるように、筐体53には、筐体53の側面に開口し、筐体53の内側に向けて延びる連通路534が形成されている。貫通孔533は、筐体53の内部に収容される電子回路ユニット52の基板521と対向して配置されており、筐体53の内部空間(つまり、電子回路ユニット52が収容される空間)と連通路534とを連通させる。なお、筐体53における貫通孔533及び連通路534の位置は、
図3及び
図4に示される例に特に限定されない。
【0039】
筐体53には、貫通孔533を塞ぐ防水透湿性部材535が設けられている。防水透湿性部材535は、多数の微細な孔が形成されたフィルム状の部材であり、例えば、ゴアテックス(登録商標)により形成されている。防水透湿性部材535は、水圧が過度に高くならない限り水滴が通過できない程度に大きな耐水圧を有している。ゆえに、水滴は防水透湿性部材535を容易には通過できないので、外部から筐体53内への水の浸入が抑制される。また、ガスは防水透湿性部材535を通過できるので、筐体53内の圧力は開放される。このように、通常時(具体的には、後述する異常発熱時及び異常発煙時でない時)には、筐体53の内部と外部との間での水の流通が防水透湿性部材535によって遮断され、筐体53の内部と外部との間でガスが防水透湿性部材535を介して流通可能となる。
【0040】
ここで、電子回路ユニット52の電子部品522に過電流が流れること等に起因して、筐体53内で異常発熱(つまり、過度な発熱)が生じる場合がある。筐体53内で異常発熱が生じている異常発熱時には、電子部品522の温度が過度に上昇する。そして、電子部品522又はその周囲の部材(例えば、基板521等)から煙S1が生じる。筐体53内で発煙が生じている異常発煙時には、防水透湿性部材535に煙S1の一部の成分が徐々に付着していく。その結果、防水透湿性部材535に形成されている孔が煙S1によって塞がれる(つまり、煙S1によって防水透湿性部材535に目詰まりが生じる)。
【0041】
防水透湿性部材535に目詰まりが生じると、ガスが防水透湿性部材535を通過できなくなる。煙S1のうち防水透湿性部材535に目詰まりを生じさせる主な成分は、具体的には、炭素の微粒子及び樹脂の複合成分である。ここで、防水透湿性部材535の耐水圧が大きいほど、外部から筐体53内への水の浸入を抑制する効果が大きくなり、それに加えて、異常発煙時において、防水透湿性部材535に煙S1の成分が付着しやすくなるので、防水透湿性部材535に目詰まりが生じやすくなる。異常発煙時に防水透湿性部材535に目詰まりを生じさせやすくする観点では、防水透湿性部材535の耐水圧は、600mbar以上であることが好ましい。例えば、防水透湿性部材535では、耐水圧が600mbar以上となっている状態が少なくとも30秒間以上維持できるようになっていることが好ましい。
【0042】
上記のように、液圧制御ユニット5では、異常発煙時には、筐体53内で生じた煙S1によって防水透湿性部材535に目詰まりが生じ、筐体53の内部と外部との間でのガスの流通が防水透湿性部材535によって遮断される。これにより、筐体53内で異常発熱が生じた場合に、筐体53の外部から内部への酸素の供給を抑制することができるので、筐体53内での発火及び延焼を抑制することができる。
【0043】
第1の実施形態では、異常発煙時に、複数の電子部品522のうち最初に発煙する電子部品522である初期発煙電子部品が発煙している間に、防水透湿性部材535に目詰まりが生じる。初期発煙電子部品は、具体的には、通常時に電力が供給される電子部品522のうちの電子部品522aである。つまり、異常発煙時に、電子部品522aから発せられる煙S1によって、防水透湿性部材535に目詰まりが生じる。初期発煙電子部品である電子部品522aは、具体的には、電子回路ユニット52において外部電源(つまり、液圧制御ユニット5の外部の電源)の電圧変動を抑制するデカップリングコンデンサである。
【0044】
図5は、電子回路ユニット52の電子回路の概略構成を示す模式図である。なお、
図5に示される例は、理解を容易にするために、あくまでも概略的に示されたものに過ぎず、電子回路ユニット52の電子回路は、実際には、より複雑である。具体的には、電子回路ユニット52の電子回路は、実際には、より多くの構成要素(例えば、ブレーキシステム10のポンプ34を駆動するモータ(
図2を参照)等)を含む。
【0045】
基板521には、外部電源6と接続される接続部として、正極側接続部523p及び負極側接続部523mが設けられている。正極側接続部523pは、基板521に形成される正極側の電源ラインである正極側ライン524pの端部に設けられており、外部電源6の正極側と接続される。正極側接続部523pは、具体的には、筐体53の複数のコネクタピン532(
図3を参照)のうち外部電源6の正極側と接続されるコネクタピン532と接続されている部分である。負極側接続部523mは、基板521に形成される負極側の電源ラインである負極側ライン524mの端部に設けられており、外部電源6の負極側と接続される。負極側接続部523mは、具体的には、筐体53の複数のコネクタピン532(
図3を参照)のうち外部電源6の負極側と接続されるコネクタピン532と接続されている部分である。
【0046】
各電子部品522は、正極側ライン524p及び負極側ライン524mと接続されている。これにより、外部電源6から各電子部品522への電力の供給が実現される。ここで、電子部品522aは、基板521において外部電源6が接続される接続部(つまり、正極側接続部523p及び負極側接続部523m)と、他の電子部品522(例えば、電子部品522b,522c)との間に設けられるデカップリングコンデンサである。デカップリングコンデンサは、上述したように、外部電源6の電圧変動を抑制するために設けられている。デカップリングコンデンサである電子部品522aには、他の電子部品522b,522cと比べて過電流が流れやすいので、電子部品522aは、発熱しやすく、発煙しやすい。
【0047】
ここで、上述した
図3及び
図4を参照して、初期発煙電子部品である電子部品522aと防水透湿性部材535との位置関係について説明する。
【0048】
図3及び
図4に示されるように、初期発煙電子部品である電子部品522aは、複数の電子部品522のうちの異常発熱を生じる可能性のある電子部品522(具体的には、電子部品522a,522b,522c)のうちで最も防水透湿性部材535に近い位置に実装されている。具体的には、各電子部品522と防水透湿性部材535との間の距離は、電子部品522a,522b,522cの順に遠くなっている。なお、電子部品522と防水透湿性部材535との間の距離として、電子部品522の中心位置から防水透湿性部材535の中心位置までの距離が用いられてもよく、電子部品522と防水透湿性部材535との間の最短距離が用いられてもよい。
図3及び
図4に示される例では、電子部品522aの位置が電子部品522b又は電子部品522cの位置である場合と比べて、電子部品522aから発せられる煙S1の多くを、迂回した経路(例えば、筐体53の内壁を反射する経路)を辿ることなく直接的に防水透湿性部材535に供給することができる。
【0049】
また、初期発煙電子部品である電子部品522aは、基板521の防水透湿性部材535に近い側の面F1に実装されている。具体的には、基板521の面F1は、防水透湿性部材535と対向する面であり、基板521の面F2は、面F1と逆側の面である。
図3及び
図4に示される例では、電子部品522aが面F2に実装されている場合と比べて、電子部品522aから発せられる煙S1の多くを、迂回した経路を辿ることなく直接的に防水透湿性部材535に供給することができる。
【0050】
なお、上記では、初期発煙電子部品がデカップリングコンデンサ(つまり、電子部品522a)である例を説明したが、初期発煙電子部品は、この例に限定されない。
【0051】
初期発煙電子部品は、例えば、通常時に電力が供給される部品のうちのデカップリングコンデンサ以外の部品(例えば、抵抗、コイル、集積回路(IC:integrated circuit)等)であってもよい。
【0052】
また、初期発煙電子部品は、例えば、通常時に電子回路ユニット52において不要な電子部品522であってもよい。つまり、通常時には、電力が供給されるものの、電子回路ユニット52における制御動作に寄与しない導体として振る舞い、過電流が生じた場合等に発熱して発煙する電子部品522が、初期発煙電子部品として用いられてもよい。
【0053】
また、初期発煙電子部品は、例えば、通常時には電力が供給されず、筐体53内で異常発熱が生じている異常発熱時に電力が供給される電子部品522であってもよい。例えば、筐体53内に設けられる温度センサの検出結果に基づいて異常発熱時であると判定される場合に、基板521に実装されたスイッチを作動させることによって、通常時には電力が供給されない電子部品522に電力を供給させ、当該電子部品522を発煙させることができる。このように筐体53内で異常発熱が生じている場合にのみ電力が供給される電子部品522が、初期発煙電子部品として用いられてもよい。
【0054】
[液圧制御ユニットの効果]
本発明の第1の実施形態に係る液圧制御ユニット5の効果について説明する。
【0055】
液圧制御ユニット5では、通常時には、筐体53の内部と外部との間での水の流通が防水透湿性部材535によって遮断され、筐体53の内部と外部との間でガスが防水透湿性部材535を介して流通可能となる。一方、筐体53内で発煙が生じている異常発煙時には、筐体53内で生じた煙S1によって防水透湿性部材535に目詰まりが生じ、筐体53の内部と外部との間でのガスの流通が防水透湿性部材535によって遮断される。これにより、筐体53内で異常発熱が生じた場合に、筐体53の外部から内部への酸素の供給を抑制することができるので、筐体53内での発火及び延焼を抑制することができる。ゆえに、モータサイクル100の安全性を向上させることができる。
【0056】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、異常発煙時に、複数の電子部品522のうち最初に発煙する電子部品522である初期発煙電子部品が発煙している間に、防水透湿性部材535に目詰まりが生じる。これにより、筐体53内で異常発熱が生じた場合に、筐体53の外部から内部への酸素の供給を早期に抑制することができる。ゆえに、筐体53内での発火及び延焼を効果的に抑制することができる。
【0057】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、初期発煙電子部品は、通常時に電力が供給される電子部品522(具体的には、電子部品522a)である。これにより、異常発熱が生じている場合にのみ電力が供給される電子部品522を初期発煙電子部品として設ける場合と比べて、部品点数を低減することができる。
【0058】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、初期発煙電子部品は、電子回路ユニット52において外部電源6の電圧変動を抑制するデカップリングコンデンサ(つまり、電子部品522a)である。これにより、基板521に実装された複数の電子部品522のうち特に発煙しやすいデカップリングコンデンサが発煙している間に防水透湿性部材535に目詰まりを生じさせることができるので、筐体53内で異常発熱が生じた場合に、筐体53の外部から内部への酸素の供給をより早期に抑制することができる。
【0059】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、初期発煙電子部品は、通常時に電子回路ユニット52において不要な電子部品522である。この場合、初期発煙電子部品として利用される電子部品522の主な用途は、筐体53内で異常発熱が生じた場合に発煙して防水透湿性部材535に目詰まりを生じさせることとなる。ゆえに、初期発煙電子部品の仕様を、発煙の性能(例えば、発煙が開始する温度、発煙量、生じる煙S1の成分等)を優先して選定することができる。よって、異常発煙時に防水透湿性部材535に目詰まりを適切に生じさせることができる。
【0060】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、初期発煙電子部品は、通常時には電力が供給されず、筐体53内で異常発熱が生じている異常発熱時に電力が供給される電子部品522である。この場合、初期発煙電子部品として利用される電子部品522の主な用途は、筐体53内で異常発熱が生じた場合に発煙して防水透湿性部材535に目詰まりを生じさせることとなる。ゆえに、初期発煙電子部品の仕様を、発煙の性能を優先して選定することができる。よって、異常発煙時に防水透湿性部材535に目詰まりを適切に生じさせることができる。
【0061】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、初期発煙電子部品は、複数の電子部品522のうちの異常発熱を生じる可能性のある電子部品522のうちで最も防水透湿性部材535に近い位置に実装されている。これにより、初期発煙電子部品から発せられる煙S1の多くを、迂回した経路を辿ることなく直接的に防水透湿性部材535に供給することができる。ゆえに、防水透湿性部材535に多くの煙S1を早期に供給することができる。よって、防水透湿性部材535に目詰まりを早期に生じさせることができる。ゆえに、筐体53内での発火及び延焼を効果的に抑制することができる。
【0062】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、初期発煙電子部品は、基板521の防水透湿性部材535に近い側の面F1に実装されている。これにより、初期発煙電子部品から発せられる煙S1の多くを、迂回した経路を辿ることなく直接的に防水透湿性部材535に供給することができる。ゆえに、防水透湿性部材535に多くの煙S1を早期に供給することができる。よって、防水透湿性部材535に目詰まりを早期に生じさせることができる。ゆえに、筐体53内での発火及び延焼を効果的に抑制することができる。
【0063】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、異常発煙時に、煙S1のうちの炭素の微粒子及び樹脂の複合成分によって、防水透湿性部材535の目詰まりが生じる。つまり、煙S1のうち防水透湿性部材535に目詰まりを生じさせる主な成分である炭素の微粒子及び樹脂の複合成分によって目詰まりが生じるように、防水透湿性部材535の仕様が選定される。ゆえに、異常発煙時に防水透湿性部材535に目詰まりを適切に生じさせることができる。
【0064】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、防水透湿性部材535の耐水圧は、600mbar以上である。これにより、異常発煙時に防水透湿性部材535に目詰まりを生じさせやすくすることができる。
【0065】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について説明する。
【0066】
[液圧制御ユニットの構成]
図6を参照して、本発明の第2の実施形態に係る液圧制御ユニット5Aの構成について説明する。
【0067】
図6は、液圧制御ユニット5Aの筐体53の内部を示す断面図である。具体的には、
図6は、液圧制御ユニット5Aにおける
図4と対応する断面を表す図である。
【0068】
図6に示されるように、第2の実施形態に係る液圧制御ユニット5Aでは、上述した第1の実施形態に係る液圧制御ユニット5と比較して、非電子部品54をさらに備える点が異なる。非電子部品54は、筐体53内に設けられ、基板521の配線に電気的に接続されない部品である。つまり、非電子部品54は、電子回路ユニット52の電子回路を形成しない部品である。
【0069】
非電子部品54は、筐体53内において、電子回路ユニット52の電子部品522aに取り付けられている。ゆえに、異常発熱時に、電子部品522aの温度が上昇することに伴って、非電子部品54は電子部品522aによって加熱される。そして、非電子部品54の温度が過度に上昇することによって、非電子部品54は発煙する。
【0070】
第2の実施形態では、上述した第1の実施形態と異なり、異常発煙時に、非電子部品54が複数の電子部品522のうちの少なくとも1つの電子部品522(具体的には、電子部品522a)によって加熱されて複数の電子部品522よりも先に発煙し、その間に防水透湿性部材535に目詰まりが生じる。つまり、異常発煙時に、非電子部品54から発せられる煙S1によって、防水透湿性部材535に目詰まりが生じる。
【0071】
ここで、
図6を参照して、非電子部品54と防水透湿性部材535との位置関係について説明する。
【0072】
図6に示されるように、非電子部品54は、異常発煙時に非電子部品54を加熱する電子部品522aと比較して防水透湿性部材535に近い側に位置している。なお、電子部品522a及び非電子部品54の各部品と防水透湿性部材535との間の距離として、各部品の中心位置から防水透湿性部材535の中心位置までの距離が用いられてもよく、各部品と防水透湿性部材535との間の最短距離が用いられてもよい。
図6に示される例では、非電子部品54が電子部品522aと比較して防水透湿性部材535から遠い側に位置する場合と比べて、非電子部品54から発せられる煙S1の多くを、迂回した経路を辿ることなく直接的に防水透湿性部材535に供給することができる。
【0073】
また、非電子部品54は、筐体53内の基板521を基準とする防水透湿性部材535のある側に配置されている。具体的には、非電子部品54は、基板521の面のうち防水透湿性部材535と対向する面F1に実装されている電子部品522aに取り付けられている。
図6に示される例では、非電子部品54が筐体53内の基板521を基準とする防水透湿性部材535のある側と逆側に配置されている場合と比べて、非電子部品54から発せられる煙S1の多くを、迂回した経路を辿ることなく直接的に防水透湿性部材535に供給することができる。
【0074】
なお、上記では、非電子部品54が電子部品522aと接している例を説明したが、非電子部品54と電子回路ユニット52との位置関係は、この例に限定されない。例えば、非電子部品54は、電子部品522a以外の電子部品522(例えば、電子部品522b又は電子部品522c)と接していてもよい。この場合、非電子部品54は、非電子部品54と接している電子部品522により加熱されて発煙する。また、例えば、非電子部品54は、電子部品522と接触せずに基板521と接触していてもよく、電子回路ユニット52と接していなくてもよい。これらの場合、非電子部品54は、例えば、非電子部品54から最も近い電子部品522により加熱されて発煙する。
【0075】
[液圧制御ユニットの効果]
本発明の第2の実施形態に係る液圧制御ユニット5Aの効果について説明する。
【0076】
液圧制御ユニット5Aでは、異常発煙時に、非電子部品54が複数の電子部品522のうちの少なくとも1つの電子部品522(具体的には、電子部品522a)によって加熱されて複数の電子部品522よりも先に発煙し、その間に防水透湿性部材535に目詰まりが生じる。この場合、非電子部品54の主な用途は、筐体53内で異常発熱が生じた場合に発煙して防水透湿性部材535に目詰まりを生じさせることとなる。ゆえに、非電子部品54の仕様を、発煙の性能を優先して選定することができる。よって、異常発煙時に防水透湿性部材535に目詰まりを適切に生じさせることができる。
【0077】
好ましくは、液圧制御ユニット5Aでは、非電子部品54は、上記の少なくとも1つの電子部品522(つまり、異常発煙時に非電子部品54を加熱する電子部品522a)と比較して防水透湿性部材535に近い側に位置している。これにより、非電子部品54から発せられる煙S1の多くを、迂回した経路を辿ることなく直接的に防水透湿性部材535に供給することができる。ゆえに、防水透湿性部材535に多くの煙S1を早期に供給することができる。よって、防水透湿性部材535に目詰まりを早期に生じさせることができる。ゆえに、筐体53内での発火及び延焼を効果的に抑制することができる。
【0078】
好ましくは、液圧制御ユニット5Aでは、非電子部品54は、筐体53内の基板521を基準とする防水透湿性部材535のある側に配置されている。これにより、非電子部品54から発せられる煙S1の多くを、迂回した経路を辿ることなく直接的に防水透湿性部材535に供給することができる。ゆえに、防水透湿性部材535に多くの煙S1を早期に供給することができる。よって、防水透湿性部材535に目詰まりを早期に生じさせることができる。ゆえに、筐体53内での発火及び延焼を効果的に抑制することができる。
【0079】
本発明は実施形態の説明に限定されない。例えば、実施形態の一部のみが実施されてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 胴体、2 ハンドル、3 前輪、3a ロータ、4 後輪、4a ロータ、5 液圧制御ユニット、5A 液圧制御ユニット、6 外部電源、10 ブレーキシステム、11 第1ブレーキ操作部、12 前輪制動機構、13 第2ブレーキ操作部、14 後輪制動機構、21 マスタシリンダ、22 リザーバ、23 ブレーキキャリパ、24 ホイールシリンダ、25 主流路、26 副流路、27 供給流路、31 込め弁、32 弛め弁、33 アキュムレータ、34 ポンプ、35 第1弁、36 第2弁、51 液圧制御機構、52 電子回路ユニット、53 筐体、54 非電子部品、100 モータサイクル、511 基体、521 基板、522a 電子部品、522b 電子部品、522c 電子部品、523m 負極側接続部、523p 正極側接続部、524m 負極側ライン、524p 正極側ライン、531 筒状部、532 コネクタピン、533 貫通孔、534 連通路、535 防水透湿性部材、F1 面、F2 面、S1 煙。