(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】モータサイクル用のブレーキシステム、及び、モータサイクル
(51)【国際特許分類】
B60T 8/17 20060101AFI20240201BHJP
B62L 3/08 20060101ALI20240201BHJP
B60T 8/175 20060101ALI20240201BHJP
B60T 8/1755 20060101ALI20240201BHJP
B60T 8/176 20060101ALI20240201BHJP
B60T 8/36 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B60T8/17 B
B62L3/08
B60T8/175
B60T8/1755 Z
B60T8/176 Z
B60T8/36
(21)【出願番号】P 2022512494
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 IB2021052479
(87)【国際公開番号】W WO2021198859
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2020067077
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】フェルメート マーティン,ライナー
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-513904(JP,A)
【文献】特開2019-209710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/17
B62L 3/08
B60T 8/175
B60T 8/1755
B60T 8/176
B60T 8/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライダーによって操作される第1操作子(11)及び第2操作子(12)を備えた、モータサイクル(100)用のブレーキシステム(10)であって、
少なくとも前記第1操作子(11)の運動に応じた摩擦力で前記モータサイクル(100)の前輪(3)を制動する第1摩擦付与装置(21)を含む前輪制動部(20)と、
少なくとも前記第2操作子(12)の運動に応じた摩擦力で前記モータサイクル(100)の後輪(4)を制動する第2摩擦付与装置(50)を含む後輪制動部(40)と、
前記前輪(3)及び前記後輪(4)のスリップを制御するスリップ制御動作を実行する制御装置(60)と、
を備えており、
前記前輪制動部(20)は、更に、前記第1操作子(11)の前記運動が伝達されるマスタシリンダ(22)と、ブレーキ液が充填された液路(24)を介して該マスタシリンダ(22)に連通するホイールシリンダ(25)と、該ホイールシリンダ(25)のブレーキ液の液圧を調整する液圧調整機構(32、33、36、38、39)と、を含み、
前記前輪制動部(20)では、前記第1摩擦付与装置(21)によって前記前輪(3)に付与される前記摩擦力が、常用ブレーキ時においては、前記マスタシリンダ(22)のブレーキ液の液圧に応じて変化し、前記スリップ制御動作の実行時においては、前記制御装置(60)による前記液圧調整機構(32、33、36、38、39)の制御によって変化し、
前記後輪制動部(40)は、更に、前記第2操作子(12)の前記運動を検出する第2操作子運動センサ(92)と、前記第2摩擦付与装置(50)と共にユニット化されたアクチュエータ(41)と、を含み、
前記後輪制動部(40)では、前記第2摩擦付与装置(50)によって前記後輪(4)に付与される前記摩擦力が、常用ブレーキ時においては、前記第2操作子運動センサ(92)の検出結果に応じた前記制御装置(60)による前記アクチュエータ(41)の制御によって変化し、前記スリップ制御動作の実行時においては、該制御装置(60)による該アクチュエータ(41)の制御によって変化
し、
前記制御装置(60)は、前記液圧調整機構(32、33、36、38、39)の動作を司る第1制御部(61)と、前記アクチュエータ(41)の動作を司る第2制御部(62)と、を含み、
前記第1制御部(61)及び前記第2制御部(62)は、前記液圧調整機構(32、33、36、38、39)と共にユニット化された、
ブレーキシステム(10)。
【請求項2】
ライダーによって操作される第1操作子(11)及び第2操作子(12)を備えた、モータサイクル(100)用のブレーキシステム(10)であって、
少なくとも前記第1操作子(11)の運動に応じた摩擦力で前記モータサイクル(100)の前輪(3)を制動する第1摩擦付与装置(21)を含む前輪制動部(20)と、
少なくとも前記第2操作子(12)の運動に応じた摩擦力で前記モータサイクル(100)の後輪(4)を制動する第2摩擦付与装置(50)を含む後輪制動部(40)と、
前記前輪(3)及び前記後輪(4)のスリップを制御するスリップ制御動作を実行する制御装置(60)と、
を備えており、
前記前輪制動部(20)は、更に、前記第1操作子(11)の前記運動が伝達されるマスタシリンダ(22)と、ブレーキ液が充填された液路(24)を介して該マスタシリンダ(22)に連通するホイールシリンダ(25)と、該ホイールシリンダ(25)のブレーキ液の液圧を調整する液圧調整機構(32、33、36、38、39)と、を含み、
前記前輪制動部(20)では、前記第1摩擦付与装置(21)によって前記前輪(3)に付与される前記摩擦力が、常用ブレーキ時においては、前記マスタシリンダ(22)のブレーキ液の液圧に応じて変化し、前記スリップ制御動作の実行時においては、前記制御装置(60)による前記液圧調整機構(32、33、36、38、39)の制御によって変化し、
前記後輪制動部(40)は、更に、前記第2操作子(12)の前記運動を検出する第2操作子運動センサ(92)と、前記第2摩擦付与装置(50)と共にユニット化されたアクチュエータ(41)と、を含み、
前記後輪制動部(40)では、前記第2摩擦付与装置(50)によって前記後輪(4)に付与される前記摩擦力が、常用ブレーキ時においては、前記第2操作子運動センサ(92)の検出結果に応じた前記制御装置(60)による前記アクチュエータ(41)の制御によって変化し、前記スリップ制御動作の実行時においては、該制御装置(60)による該アクチュエータ(41)の制御によって変化
し、
前記制御装置(60)は、前記液圧調整機構(32、33、36、38、39)の動作を司る第1制御部(61)と、前記アクチュエータ(41)の動作を司る第2制御部(62)と、を含み、
前記第1制御部(61)は、前記液圧調整機構(32、33、36、38、39)と共にユニット化され、
前記第2制御部(62)は、前記第2摩擦付与装置(50)及び前記アクチュエータ(41)と共にユニット化された、
ブレーキシステム(10)。
【請求項3】
ライダーによって操作される第1操作子(11)及び第2操作子(12)を備えた、モータサイクル(100)用のブレーキシステム(10)であって、
少なくとも前記第1操作子(11)の運動に応じた摩擦力で前記モータサイクル(100)の前輪(3)を制動する第1摩擦付与装置(21)を含む前輪制動部(20)と、
少なくとも前記第2操作子(12)の運動に応じた摩擦力で前記モータサイクル(100)の後輪(4)を制動する第2摩擦付与装置(50)を含む後輪制動部(40)と、
前記前輪(3)及び前記後輪(4)のスリップを制御するスリップ制御動作を実行する制御装置(60)と、
を備えており、
前記前輪制動部(20)は、更に、前記第1操作子(11)の前記運動が伝達されるマスタシリンダ(22)と、ブレーキ液が充填された液路(24)を介して該マスタシリンダ(22)に連通するホイールシリンダ(25)と、該ホイールシリンダ(25)のブレーキ液の液圧を調整する液圧調整機構(32、33、36、38、39)と、を含み、
前記前輪制動部(20)では、前記第1摩擦付与装置(21)によって前記前輪(3)に付与される前記摩擦力が、常用ブレーキ時においては、前記マスタシリンダ(22)のブレーキ液の液圧に応じて変化し、前記スリップ制御動作の実行時においては、前記制御装置(60)による前記液圧調整機構(32、33、36、38、39)の制御によって変化し、
前記後輪制動部(40)は、更に、前記第2操作子(12)の前記運動を検出する第2操作子運動センサ(92)と、前記第2摩擦付与装置(50)と共にユニット化されたアクチュエータ(41)と、を含み、
前記後輪制動部(40)では、前記第2摩擦付与装置(50)によって前記後輪(4)に付与される前記摩擦力が、常用ブレーキ時においては、前記第2操作子運動センサ(92)の検出結果に応じた前記制御装置(60)による前記アクチュエータ(41)の制御によって変化し、前記スリップ制御動作の実行時においては、該制御装置(60)による該アクチュエータ(41)の制御によって変化
し、
前記制御装置(60)は、前記液圧調整機構(32、33、36、38、39)の動作を司る第1制御部(61)と、前記アクチュエータ(41)の動作を司る第2制御部(62)と、を含み、
前記第1制御部(61)は、前記液圧調整機構(32、33、36、38、39)と共にユニット化され、
前記第2制御部(62)は、前記第2操作子運動センサ(92)と共にユニット化された、
ブレーキシステム(10)。
【請求項4】
前記液圧調整機構(32、33、36、38、39)は、前記スリップ制御動作の実行時に前記ホイールシリンダ(25)のブレーキ液を減圧するポンプ(35)の駆動源であるモータ(36)を含む、
請求項1~
3の何れか一項に記載のブレーキシステム(10)。
【請求項5】
前記ポンプ(35)は、前記スリップ制御動作の実行時に前記ホイールシリンダ(25)のブレーキ液を増圧する、
請求項
4に記載のブレーキシステム(10)。
【請求項6】
前記前輪制動部(20)は、ポンプレス式である、
請求項1~
3の何れか一項に記載のブレーキシステム(10)。
【請求項7】
前記スリップ制御動作は、アンチロックブレーキ制御が実行される動作を含む、
請求項1~
6の何れか一項に記載のブレーキシステム(10)。
【請求項8】
前記スリップ制御動作は、空転抑制制御が実行される動作を含む、
請求項1~
7の何れか一項に記載のブレーキシステム(10)。
【請求項9】
前記スリップ制御動作は、横滑り抑制制御が実行される動作を含む、
請求項1~
8の何れか一項に記載のブレーキシステム(10)。
【請求項10】
前記制御装置(60)は、前記ライダーによって前記第1操作子(11)及び前記第2操作子(12)の一方のみが操作されている状態で前記第1摩擦付与装置(21)及び前記第2摩擦付与装置(50)の両方に前記摩擦力を生じさせる連動ブレーキ制御動作を実行する、
請求項1~
9の何れか一項に記載のブレーキシステム(10)。
【請求項11】
請求項1~
10の何れか一項に記載のブレーキシステム(10)を備えた、
モータサイクル(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライダーによって操作される第1操作子及び第2操作子を備えた、モータサイクル用のブレーキシステムと、そのようなブレーキシステムを備えたモータサイクルと、に関する。
【背景技術】
【0002】
ライダーによって操作される第1操作子及び第2操作子を備えた、モータサイクル用のブレーキシステムが知られている。ブレーキシステムは、少なくとも第1操作子の運動に応じた摩擦力で前輪を制動する第1摩擦付与装置を含む前輪制動部と、少なくとも第2操作子の運動に応じた摩擦力で後輪を制動する第2摩擦付与装置を含む後輪制動部と、を備えている。また、ブレーキシステムは、前輪及び後輪のスリップを制御するスリップ制御動作を実行する制御装置を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のモータサイクル用のブレーキシステムでは、前輪制動部及び後輪制動部の両方が、操作子の運動が伝達されるマスタシリンダと、ブレーキ液が充填された液路を介してそのマスタシリンダに連通するホイールシリンダと、そのホイールシリンダのブレーキ液の液圧を調整する液圧調整機構と、を含む構成である。そのような構成では、液路を構成するためのブレーキ液管を前輪から後輪に亘って配設する必要が生じる。モータサイクルは、他の車両(例えば、自動車、トラック等)と比較して車体が極めて小さいため、従来のモータサイクル用のブレーキシステムの構成では、ブレーキ液管を配設するためのスペース及びその作業のためのスペースを確保できない場合が生じかねない。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、前輪及び後輪のスリップ制御動作を実行可能なブレーキシステムのモータサイクルへの搭載性を向上することを目的とする。また、そのようなブレーキシステムを備えたモータサイクルを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るブレーキシステムは、ライダーによって操作される第1操作子及び第2操作子を備えた、モータサイクル用のブレーキシステムであって、少なくとも前記第1操作子の運動に応じた摩擦力で前記モータサイクルの前輪を制動する第1摩擦付与装置を含む前輪制動部と、少なくとも前記第2操作子の運動に応じた摩擦力で前記モータサイクルの後輪を制動する第2摩擦付与装置を含む後輪制動部と、前記前輪及び前記後輪のスリップを制御するスリップ制御動作を実行する制御装置と、を備えており、前記前輪制動部は、更に、前記第1操作子の前記運動が伝達されるマスタシリンダと、ブレーキ液が充填された液路を介して該マスタシリンダに連通するホイールシリンダと、該ホイールシリンダのブレーキ液の液圧を調整する液圧調整機構と、を含み、前記前輪制動部では、前記第1摩擦付与装置によって前記前輪に付与される前記摩擦力が、常用ブレーキ時においては、前記マスタシリンダのブレーキ液の液圧に応じて変化し、前記スリップ制御動作の実行時においては、前記制御装置による前記液圧調整機構の制御によって変化し、前記後輪制動部は、更に、前記第2操作子の前記運動を検出する第2操作子運動センサと、前記第2摩擦付与装置と共にユニット化されたアクチュエータと、を含み、前記後輪制動部では、前記第2摩擦付与装置によって前記後輪に付与される前記摩擦力が、常用ブレーキ時においては、前記第2操作子運動センサの検出結果に応じた前記制御装置による前記アクチュエータの制御によって変化し、前記スリップ制御動作の実行時においては、該制御装置による該アクチュエータの制御によって変化する。
【0007】
本発明に係るモータサイクルは、上述のブレーキシステムを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るブレーキシステムでは、前輪制動部が、第1操作子の運動が伝達されるマスタシリンダと、ブレーキ液が充填された液路を介してそのマスタシリンダに連通するホイールシリンダと、そのホイールシリンダのブレーキ液の液圧を調整する液圧調整機構と、を含む構成であり、後輪制動部が、第2操作子の運動を検出する第2操作子運動センサと、第2摩擦付与装置と共にユニット化されたアクチュエータと、を含む構成である。前輪制動部では、第1摩擦付与装置によって前輪に付与される摩擦力が、常用ブレーキ時においては、マスタシリンダのブレーキ液の液圧に応じて変化し、スリップ制御動作の実行時においては、制御装置による液圧調整機構の制御によって変化する。また、一方で、後輪制動部では、第2摩擦付与装置によって後輪に付与される摩擦力が、常用ブレーキ時及びスリップ制御動作の実行時において、制御装置によるアクチュエータの制御によって変化する。そのため、液路を構成するためのブレーキ液管をより狭い領域に配設すれば足りると共に、モータサイクルの挙動に大きな影響を与える前輪のスリップを液圧の制御、つまり応答性が優れている制御によって抑制することが可能となって、搭載性の向上と安全性の確保とが両立される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係るブレーキシステムが搭載されるモータサイクルの構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るブレーキシステムの構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るブレーキシステムの液圧調整ユニットの構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るブレーキシステムの後輪制動部の要部構成を示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係るブレーキシステムのシステム構成を示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係るブレーキシステムの構成の変形例を示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係るブレーキシステムの構成の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明について、図面を用いて説明する。
なお、以下では、本発明に係るブレーキシステムが自動二輪車に適用される場合を説明するが、本発明に係るブレーキシステムは自動二輪車以外の他のモータサイクルに適用されてもよい。モータサイクルには、自動三輪車が含まれる。自動二輪車又は自動三輪車には、オートバイ、スクーター、電動スクーター等が含まれる。また、以下では、前輪制動部が第1操作子のみに接続され、後輪制動部が第2操作子のみに接続されている場合を説明しているが、前輪制動部及び後輪制動部の少なくとも一方が第1操作子及び第2操作子の両方に接続されていてもよい。
【0011】
また、以下で説明する構成、動作等は、一例であり、本発明に係るブレーキシステムは、そのような構成、動作等である場合に限定されない。また、各図においては、同一の又は類似する部材又は部分に対して、同一の符号を付している場合又は符号を付すことを省略している場合がある。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。また、重複又は類似する説明が、適宜簡略化又は省略されている場合がある。
【0012】
実施の形態
以下に、実施の形態に係るブレーキシステムを説明する。
【0013】
<ブレーキシステムの構成及び動作>
図1~
図7を参照しつつ、実施の形態に係るブレーキシステムの構成及び動作について説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係るブレーキシステムが搭載されるモータサイクルの構成を示す図である。
図2は、本発明の実施の形態に係るブレーキシステムの構成を示す図である。
図3は、本発明の実施の形態に係るブレーキシステムの液圧調整ユニットの構成を示す図である。
図4は、本発明の実施の形態に係るブレーキシステムの後輪制動部の要部構成を示す図である。
図5は、本発明の実施の形態に係るブレーキシステムのシステム構成を示す図である。
図6及び
図7は、本発明の実施の形態に係るブレーキシステムの構成の変形例を示す図である。
【0015】
特に
図1及び
図2に示されるように、ブレーキシステム10は、モータサイクル100に搭載される。モータサイクル100は、胴体1と、胴体1に旋回自在に保持されているハンドル2と、胴体1にハンドル2と共に旋回自在に保持されている前輪3と、胴体1に回動自在に保持されている後輪4と、を含む。
【0016】
ブレーキシステム10は、ライダーによって操作される第1操作子11及び第2操作子12を備えている。第1操作子11は、例えば、ハンドル2に設けられたブレーキレバーとして構成され、使用者の手によって操作される。第2操作子12は、例えば、胴体1の下部に設けられたフットペダルとして構成され、使用者の足によって操作される。
【0017】
ブレーキシステム10は、第1操作子11に液圧式に接続された前輪制動部20と、第2操作子12に電気的に接続された後輪制動部40と、を含む。前輪制動部20は、前輪3と共に回動するディスクロータ3aに、胴体1に保持されている第1摩擦付与装置21の摩擦材(図示省略)を押し当てて、第1操作子11の操作量に応じた摩擦力で前輪3を制動するものである。後輪制動部40は、後輪4と共に回動するディスクロータ4aに、胴体1に保持されている第2摩擦付与装置50の摩擦材51を押し当てて、第2操作子12の操作量に応じた摩擦力で後輪4を制動するものである。なお、第1摩擦付与装置21及び第2摩擦付与装置50は、他の構造であってもよい。例えば、第1摩擦付与装置21が、前輪3と共に回動するブレーキドラムに、胴体1に保持されているブレーキシューの摩擦材を押し当てて、第1操作子11の操作量に応じた摩擦力を生じさせるものであってもよい。また、第2摩擦付与装置50が、後輪4と共に回動するブレーキドラムに、胴体1に保持されているブレーキシューの摩擦材を押し当てて、第2操作子12の操作量に応じた摩擦力を生じさせるものであってもよい。
【0018】
前輪制動部20は、第1操作子11の運動が伝達されるマスタシリンダ22と、マスタシリンダ22に付設されているリザーバ23と、ブレーキ液が充填された液路24を介してマスタシリンダ22に連通し、第1摩擦付与装置21に内蔵されたホイールシリンダ25と、液路24の一部を構成し、一端がマスタシリンダ22に接続されたブレーキ液管24aと、液路24の一部を構成し、一端がホイールシリンダ25に接続されたブレーキ液管24bと、ブレーキ液管24aの他端とブレーキ液管24bの他端とに接続された液圧調整ユニット30と、を含む。なお、ブレーキ液管24aが用いられずに、液圧調整ユニット30がマスタシリンダ22に直接接続されていてもよく、また、ブレーキ液管24bが用いられずに、液圧調整ユニット30がホイールシリンダ25に直接接続されていてもよい。また、液圧調整ユニット30が、マスタシリンダ22又はホイールシリンダ25と共にユニット化されていてもよい。
【0019】
特に
図2及び
図3に示されるように、液圧調整ユニット30は、基体31を備えている。基体31には、ブレーキ液管24aが接続されるマスタシリンダポートMPと、ブレーキ液管24bが接続されるホイールシリンダポートWPと、液路24の一部を構成し、マスタシリンダポートMPとホイールシリンダポートWPとの間を接続する内部液路である主液路24cと、液路24の一部を構成し、主液路24cをバイパスする内部液路である副液路24dと、が形成されている。ホイールシリンダ25のブレーキ液は、その副液路24dを介して主液路24cの途中部に逃がされる。
【0020】
主液路24cには、込め弁32が設けられている。副液路24dには、上流側から順に、弛め弁33と、ブレーキ液を貯留するアキュムレータ34と、ポンプ35と、が設けられている。ポンプ35は、モータ36によって駆動される。込め弁32、弛め弁33、アキュムレータ34、ポンプ35、及び、モータ36は、基体31に組付けられる。基体31には、制御装置(ECU)60の少なくとも一部を収容するためのハウジング37が取り付けられる。込め弁32は、例えば、制御装置60によって非通電状態から通電状態になると、その設置個所でのブレーキ液の流通を開放から閉鎖に切り替える電磁弁である。弛め弁32は、例えば、制御装置60によって非通電状態から通電状態になると、その設置個所を介してポンプ35へ向かうブレーキ液の流通を閉鎖から開放に切り替える電磁弁である。込め弁32、弛め弁33、及び、モータ36は、本発明における「液圧調整機構」に相当する。
【0021】
特に
図2及び
図4に示されるように、後輪制動部40は、第2摩擦付与装置50と共にユニット化されたアクチュエータ41を含む。アクチュエータ41は、第2摩擦付与装置50の外側に取り付けられていてもよく、また、第2摩擦付与装置50に内蔵されていてもよい。第2摩擦付与装置50は、浮動式キャリパとして構成される。第2摩擦付与装置50は、他の構造であってもよい。例えば、第2摩擦付与装置50が、対向式キャリパとして構成されてもよい。第2摩擦付与装置50は、ディスクロータ4aを挟む一対の摩擦材51と、摩擦材51のディスクロータ4aに対する距離を調整するスピンドル52と、を含む。アクチュエータ41は、スピンドル52に連結され、スピンドル52にその距離の調節のための直進運動を生じさせる。アクチュエータ41は、例えば、モータである。スピンドル52の直進運動が、弾性部材を介して摩擦材51に伝達されてもよく、また、作動液等の流体を介して摩擦材51に伝達されてもよい。
【0022】
特に
図2及び
図5に示されるように、制御装置60は、込め弁32、弛め弁33、及び、モータ36の動作を司る第1制御部61と、アクチュエータ41の動作を司る第2制御部62と、を含む。第1制御部61及び第2制御部62のそれぞれは、1つにまとまっていてもよく、また、複数に分かれていてもよい。第1制御部61及び第2制御部62のそれぞれの一部又は全ては、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されてもよく、また、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0023】
制御装置60には、例えば、前輪回転速センサ81、ブレーキ液圧センサ82、後輪回転速センサ91、第2操作子運動センサ92、摩擦材運動センサ93等の出力信号が有線又は無線で送信される。制御装置60に他のセンサの出力信号が送信されてもよい。制御装置60は、それらの出力信号に基づいて、前輪3及び後輪4に生じさせる目標制動力を導出する。第1制御部61は、前輪3に生じさせる目標制動力に応じた指令信号を、込め弁32、弛め弁33、及び、モータ36のドライバに有線又は無線で送信する。また、第2制御部62は、後輪4に生じさせる目標制動力に応じた指令信号を、アクチュエータ41のドライバに有線又は無線で送信する。
【0024】
前輪回転速センサ81は、前輪3の回転速を検出する。前輪回転速センサ81は、例えば、胴体1によって保持される。前輪回転速センサ81が、前輪3の回転速に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。
【0025】
ブレーキ液圧センサ82は、例えば、ホイールシリンダ25のブレーキ液の液圧を検出する。ブレーキ液圧センサ82は、例えば、主液路24cのうちの込め弁32よりもホイールシリンダ25側の領域に設けられる。ブレーキ液圧センサ82が、ホイールシリンダ25のブレーキ液の液圧に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。
【0026】
後輪回転速センサ91は、後輪4の回転速を検出する。後輪回転速センサ91は、例えば、胴体1によって保持される。後輪回転速センサ91が、後輪4の回転速に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。
【0027】
第2操作子運動センサ92は、第2操作子12の運動を検出する。第2操作子運動センサ92は、ライダーの所望する制動力が反映された物理量を検出するものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、第2操作子運動センサ92は、ライダーによる第2操作子12の操作量を検出するものであってもよく、また、ライダーによって第2操作子12に加えられている力を検出するものであってもよい。第2操作子運動センサ92は、例えば、胴体1によって保持される。第2操作子運動センサ92が、第2操作子12の操作量又は第2操作子12に加えられている力に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。
【0028】
摩擦材運動センサ93は、第2摩擦付与装置50の摩擦材51の運動を検出する。摩擦材運動センサ93は、第2摩擦付与装置50によって後輪4に生じている制動力が反映された物理量を検出するものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、摩擦材運動センサ93は、アクチュエータ41の駆動量を検出するものであってもよく、また、スピンドル52に作用する反力を検出するものであってもよい。摩擦材運動センサ93は、例えば、第2摩擦付与装置50によって保持される。摩擦材運動センサ93が、アクチュエータ41の駆動量又はスピンドル52に作用する反力に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。
【0029】
第1制御部61及び第2制御部62は、液圧調整ユニット30のハウジング37内に収容される。つまり、第1制御部61及び第2制御部62は、込め弁32、弛め弁33、及び、モータ36と共にユニット化されている。第2制御部62が、第2摩擦付与装置50及びアクチュエータ41と共にユニット化されていてもよく、また、第2操作子運動センサ92と共にユニット化されていてもよい。
【0030】
モータサイクル100が停止している、又は、モータサイクル100が前輪3及び後輪4に基準値を超えるスリップが生じていない状態で走行している状態で、ライダーが第1操作子11を操作する時、つまり、前輪制動部20の常用ブレーキ時において、第1制御部61は、込め弁32及び弛め弁33を非通電状態に制御し、また、モータ36を非駆動状態に制御する。ライダーが第1操作子11を操作すると、マスタシリンダ22のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ25のブレーキ液の液圧が増加し、第1摩擦付与装置21の摩擦材(図示省略)がディスクロータ3aに押し付けられて、前輪3が制動される。また、ライダーが第1操作子11を放すと、マスタシリンダ22のピストン(図示省略)が戻されてホイールシリンダ25のブレーキ液の液圧が減少し、第1摩擦付与装置21の摩擦材(図示省略)がディスクロータ3aから離される。つまり、前輪制動部20では、常用ブレーキ時においては、第1摩擦付与装置21によって前輪3に付与される摩擦力が、マスタシリンダ22のブレーキ液の液圧に応じて変化する。なお、ライダーが第1操作子11を操作した際に、第1摩擦付与装置21による前輪3への摩擦力の付与に加えて、第2摩擦付与装置50による後輪4への摩擦力の付与が行われる連動ブレーキ制御動作が実行されてもよい。
【0031】
モータサイクル100が停止している、又は、モータサイクル100が前輪3及び後輪4に基準値を超えるスリップが生じていない状態で走行している状態で、ライダーが第2操作子12を操作する時、つまり、後輪制動部40の常用ブレーキ時において、第2制御部62は、第2操作子運動センサ92の出力信号に応じた駆動量でアクチュエータ41を駆動させる。ライダーが第2操作子12を操作すると、アクチュエータ41の駆動によってスピンドル52が押し出され、第2摩擦付与装置50の摩擦材51がディスクロータ4aに押し付けられて、後輪4が制動される。また、ライダーが第2操作子12を放すと、アクチュエータ41の駆動によってスピンドル52が戻されて、第2摩擦付与装置50の摩擦材51がディスクロータ4aから離される。つまり、後輪制動部40では、常用ブレーキ時においては、第2摩擦付与装置50によって後輪4に付与される摩擦力が、制御装置60による第2操作子運動センサ92の検出結果に応じたアクチュエータ41の制御によって変化する。なお、ライダーが第2操作子12を操作した際に、第2摩擦付与装置50による後輪4への摩擦力の付与に加えて、第1摩擦付与装置21による前輪3への摩擦力の付与が行われる連動ブレーキ制御動作が実行されてもよい。
【0032】
なお、モータサイクル100の停止、及び、前輪3及び後輪4に生じているスリップは、前輪回転速センサ81及び後輪回転速センサ91の出力信号を用いた周知の手法で判定できる。
【0033】
モータサイクル100が前輪3及び後輪4に基準値を超えるスリップが生じている状態で走行している場合には、制御装置60は、スリップを抑制するためのスリップ制御動作を実行する。スリップ制御動作には、例えば、各車輪のアンチロックブレーキ制御が実行される動作、各車輪の空転抑制制御が実行される動作、各車輪の横滑り抑制制御が実行される動作等が含まれる。制御装置60は、スリップ制御動作を実行する際に、ブレーキシステム10に加えて、モータサイクル100に搭載されている他のシステムを制御してもよい。
【0034】
スリップ制御動作の実行時において、前輪3に付与されている摩擦力を減少させる必要がある状態では、第1制御部61は、込め弁32及び弛め弁33を通電状態に制御し、また、ブレーキ液圧センサ82の出力信号に応じた駆動量でモータ36を駆動させる。そのような制御によってホイールシリンダ25のブレーキ液の液圧が減少し、第1摩擦付与装置21の摩擦材(図示省略)がディスクロータ3aから離される。つまり、前輪制動部20では、スリップ制御動作の実行時においては、第1摩擦付与装置21によって前輪3に付与される摩擦力が、制御装置60による込め弁32、弛め弁33、及び、モータ36の制御によって変化する。なお、ブレーキ液圧センサ82の出力信号に換えて、その直前に第1制御部61が送信した込め弁32、弛め弁33、及び、モータ36のドライバへの指令信号が用いられてもよい。
【0035】
スリップ制御動作の実行時において、後輪4に付与されている摩擦力を減少させる必要がある状態では、第2制御部62は、摩擦材運動センサ93の出力信号に応じた駆動量でアクチュエータ41を駆動させる。そのような制御によってスピンドル52が戻されて、第2摩擦付与装置50の摩擦材51がディスクロータ4aから離される。つまり、後輪制動部40では、スリップ制御動作の実行時においては、第2摩擦付与装置50によって後輪4に付与される摩擦力が、制御装置60によるアクチュエータ41の制御によって変化する。なお、摩擦材運動センサ93の出力信号に換えて、その直前に第2制御部62が送信したアクチュエータ41のドライバへの指令信号が用いられてもよい。
【0036】
ブレーキシステム10は、スリップ制御動作の実行時において、前輪3に付与されている摩擦力を減少及び増加させることができる構成であってもよい。つまり、
図6に示されるように、液圧調整ユニット30の基体31に、一端が主液路24cのうちの副液路24dの下流端との合流部のマスタシリンダ22側に接続され、他端が副液路24dのうちのアキュムレータ34とポンプ35との間に接続された内部流路である増圧液路24eが形成されていてもよい。主液路24cのうちの増圧液路24eとの合流部と副液路24dの下流端との合流部との間に切換弁38が設けられ、増圧液路24eに増圧弁39が設けられる。切換弁38は、例えば、制御装置60によって非通電状態から通電状態になると、その設置個所でのブレーキ液の流通を開放から閉鎖に切り替える電磁弁である。増圧弁39は、例えば、制御装置60によって非通電状態から通電状態になると、その設置個所を介してポンプ35へ向かうブレーキ液の流通を閉鎖から開放に切り替える電磁弁である。切換弁38及び増圧弁39は、本発明における「液圧調整機構」に相当する。
【0037】
スリップ制御動作の実行時において、前輪3に付与されている摩擦力を増加させる必要がある状態では、第1制御部61は、込め弁32及び弛め弁33を非通電状態に制御し、また、切換弁38及び増圧弁39を通電状態に制御し、また、ブレーキ液圧センサ82の出力信号に応じた駆動量でモータ36を駆動させる。そのような制御によってホイールシリンダ25のブレーキ液の液圧が増加し、第1摩擦付与装置21の摩擦材(図示省略)がディスクロータ3aに押し付けられる。つまり、前輪制動部20では、スリップ制御動作の実行時においては、第1摩擦付与装置21によって前輪3に付与される摩擦力が、制御装置60による込め弁32、弛め弁33、切換弁38、増圧弁39、及び、モータ36の制御によって変化する。なお、ブレーキ液圧センサ82の出力信号に換えて、その直前に第1制御部61が送信した込め弁32、弛め弁33、切換弁38、増圧弁39、及び、モータ36のドライバへの指令信号が用いられてもよい。
【0038】
ブレーキシステム10は、スリップ制御動作の実行時において、後輪4に付与されている摩擦力を減少及び増加させることができる構成であってもよい。スリップ制御動作の実行時において、後輪4に付与されている摩擦力を増加させる必要がある状態では、第2制御部62は、摩擦材運動センサ93の出力信号に応じた駆動量でアクチュエータ41を駆動させる。そのような制御によってスピンドル52が押し出され、第2摩擦付与装置50の摩擦材51がディスクロータ4aに押し付けられる。つまり、後輪制動部40では、スリップ制御動作の実行時においては、第2摩擦付与装置50によって後輪4に付与される摩擦力が、制御装置60によるアクチュエータ41の制御によって変化する。なお、摩擦材運動センサ93の出力信号に換えて、その直前に第2制御部62が送信したアクチュエータ41のドライバへの指令信号が用いられてもよい。
【0039】
なお、ブレーキシステム10の前輪制動部20は、ポンプレス式であってもよい。つまり、
図7に示されるように、副液路24dにポンプ35が設けられていない。そのような構成であっても、スリップ制御動作の実行時において、第1制御部61が、例えば、ブレーキ液圧センサ82の出力信号に応じたパルス幅で込め弁32及び弛め弁33をPWM制御することで、アキュムレータ34に内蔵されたバネの反力により、副液路24dを介してホイールシリンダ25のブレーキ液をマスタシリンダ22に還流させて、前輪3に付与されている摩擦力を減少させることが可能である。つまり、前輪制動部20では、スリップ制御動作の実行時においては、第1摩擦付与装置21によって前輪3に付与される摩擦力が、制御装置60による込め弁32及び弛め弁33の制御によって変化する。なお、ブレーキ液圧センサ82の出力信号に換えて、その直前に第1制御部61が送信した込め弁32及び弛め弁33のドライバへの指令信号が用いられてもよい。
【0040】
<ブレーキシステムの効果>
実施の形態に係るブレーキシステムの効果について説明する。
【0041】
ブレーキシステム10では、前輪制動部20が、第1操作子11の運動が伝達されるマスタシリンダ22と、ブレーキ液が充填された液路24を介してそのマスタシリンダ22に連通するホイールシリンダ25と、そのホイールシリンダ25のブレーキ液の液圧を調整する液圧調整機構(例えば、込め弁32、弛め弁33、モータ36、切換弁38、増圧弁39等)と、を含む構成であり、後輪制動部40が、第2操作子12の運動を検出する第2操作子運動センサ92と、第2摩擦付与装置50と共にユニット化されたアクチュエータ41と、を含む構成である。前輪制動部20では、第1摩擦付与装置21によって前輪3に付与される摩擦力が、常用ブレーキ時においては、マスタシリンダ22のブレーキ液の液圧に応じて変化し、スリップ制御動作の実行時においては、制御装置60による液圧調整機構の制御によって変化する。また、一方で、後輪制動部40では、第2摩擦付与装置50によって後輪4に付与される摩擦力が、常用ブレーキ時及びスリップ制御動作の実行時において、制御装置60によるアクチュエータ41の制御によって変化する。そのため、液路24を構成するためのブレーキ液管をより狭い領域に配設すれば足りると共に、モータサイクル100の挙動に大きな影響を与える前輪3のスリップを液圧の制御、つまり応答性が優れている制御によって抑制することが可能となって、搭載性の向上と安全性の確保とが両立される。
【0042】
好ましくは、制御装置60は、液圧調整機構(例えば、込め弁32、弛め弁33、モータ36、切換弁38、増圧弁39等)の動作を司る第1制御部61と、アクチュエータ41の動作を司る第2制御部62と、を含む。そして、第1制御部61及び第2制御部62は、液圧調整機構と共にユニット化される。そのように構成されることで、第1制御部61及び第2制御部62の密封構造を共通化することが可能となって、ブレーキシステム10のコスト性が向上する。
【0043】
好ましくは、制御装置60は、液圧調整機構(例えば、込め弁32、弛め弁33、モータ36、切換弁38、増圧弁39等)の動作を司る第1制御部61と、アクチュエータ41の動作を司る第2制御部62と、を含む。そして、第1制御部61は、液圧調整機構と共にユニット化され、第2制御部62は、第2摩擦付与装置50及びアクチュエータ41と共に、又は、第2操作子運動センサ92と共にユニット化される。そのように構成されることで、前輪制動部20及び後輪制動部40を分離して管理することが可能となって、ブレーキシステム10のメンテナンス性、レトロフィット性等が向上する。
【0044】
以上、実施の形態に係るブレーキシステムついて説明したが、本発明に係るブレーキシステムは、実施の形態の説明に限定されない。例えば、実施の形態の一部のみが実施されてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 胴体、2 ハンドル、3 前輪、4 後輪、10 ブレーキシステム、11 第1操作子、12 第2操作子、20 前輪制動部、21 第1摩擦付与装置、22 マスタシリンダ、23 リザーバ、24 液路、25 ホイールシリンダ、30 液圧調整ユニット、31 基体、32 込め弁、33 弛め弁、34 アキュムレータ、35 ポンプ、36 モータ、37 ハウジング、38 切換弁、39 増圧弁、40 後輪制動部、41 アクチュエータ、50 第2摩擦付与装置、51 摩擦材、52 スピンドル、60 制御装置、61 第1制御部、62 第2制御部、81 前輪回転速センサ、82 ブレーキ液圧センサ、91 後輪回転速センサ、92 第2操作子運動センサ、93 摩擦材運動センサ、100 モータサイクル。