(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】不織布
(51)【国際特許分類】
D04H 3/007 20120101AFI20240201BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
D04H3/007
D04H3/16
(21)【出願番号】P 2022532155
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 KR2020019122
(87)【国際公開番号】W WO2021133110
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】10-2019-0174092
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】504092127
【氏名又は名称】トーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】300,3gongdan 2-ro,Gumi-si,Gyeongsangbuk-do 39389 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ユン ト キョン
(72)【発明者】
【氏名】パク ソ ジン
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-020132(JP,A)
【文献】特表2009-538394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 3/007
D04H 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン単独重合体(homopolymer)
と、前記ポリプロピレン単独重合体100重量部に対して0.5~20重量部の感触改良剤と、を含んで
連続紡糸により形成される繊維を通じて形成され、
前記ポリプロピレン単独重合体は、多分散指数が3.0以下であり、
前記感触改良剤は、繊維柔軟剤を含み、前記繊維柔軟剤は、プロピレン-エチレン共重合体およびC4~C12のアルファ-オレフィン共重合体からなる群から選ばれた1種以上を含み、
下記の条件(1)
~条件(
3)を全て満た
す不織布:
(1)b/a≦0.3
(2)(a
1/2+b)
1/2≦3.6
(3)単位重量当たりのMD方向引張強度/単位重量当たりのCD方向引張強度≦3.8
ここで、前記aは、
前記ポリプロピレン単独重合体の溶融指数(g/10min)であり、前記bは、
前記ポリプロピレン単独重合体の多分散指数(Mw/Mn、重量平均分子量/数平均分子量)である。
【請求項2】
下記の条件(1)および条件(2)を全て満たす、請求項1に記載
の不織布:
(1)b/a≦0.23
(2)(a
1/2+b)
1/2≦3.33
【請求項3】
前記ポリプロピレン単独重合体は、溶融指数が13~70g/10minである、請求項1に記載
の不織布。
【請求項4】
単位重量当たりのMD方向引張強度が0.19kg
f
(1.9N)/5cm/gsm以上である、請求項1に記載
の不織布。
【請求項5】
単位重量当たりのCD方向引張強度が0.05~2.0kg
f
(0.5~20N)/5cm/gsmである、請求項1に記載
の不織布。
【請求項6】
前記プロピレン-エチレン共重合体および
前記C4~C12のアルファ-オレフィン共重合体は、それぞれ独立して、溶融指数が550g/10min以下である、請求項
1に記載
の不織布。
【請求項7】
前記プロピレン-エチレン共重合体は、エチレン単量体およびプロピレン単量体を1:0.8~0.95のモル比で含む、請求項
1に記載
の不織布。
【請求項8】
前記不織布は、坪量が8~50g/m
2である、請求項1に記載
の不織布。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の不織布を含んで形成された衛生材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的強度が向上した不織布に関し、より詳細には、紡糸性に優れ、ソフト性に優れていると同時に、低重量化が可能ながらも、引張強度に優れた効果を示す機械的強度が向上した不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不織布は、使い捨ておむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品、ワイパーなどの清掃用品、マスクなどの医療用品などの幅広い分野において用いられている。このように、不織布は、他の様々な分野において用いられるが、実際に各分野の製品に用いられる場合には、それぞれ製品の用途に適合した性質や構造になるように製造される必要がある。
【0003】
おむつは、最近、中国を中心とした新興国の人口増加に伴って使用量が増大して、巨大な市場が予想されている。一方、使い捨て紙おむつの使用量の増大に伴うCO2排出量の増加が深刻な環境問題となっている。この世界的に増加するCO2排出量を削減する点から、植物由来原料の検討が行われているが、品質、費用、生産性の点から実現されていない。一方、不織布や包装の軽量化によるCO2排出削減の検討が、紙おむつの製造社で検討されているが、十分ではない。
【0004】
一方、使い捨ておむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品に用いられる不織布の場合、汎用的に用いるのに容易な供給性と製品生産に適合した加工性を有するだけでなく、適合した物理的特性と感触およびきれいな衛生的特性などが要求される。
【0005】
しかしながら、従来の不織布の場合、皮膚接触用途に好ましくなく作る粘着性および不便な感触、そして、使い捨ておむつへの適用化のために必要な100gsm以下の低重量化に行くほど、不織布ウェブの形態が非常に不安になるため、製品化が不可能であるという短所があった。
【0006】
また、不織布を形成するポリマーの紡糸性が良くないため、ソフト性が低下し、低重量化と優れた引張強度を同時に発現することができないという問題点があった。
【0007】
これによって、紡糸性に優れ、ソフト性に優れていると同時に、低重量化が可能ながらも、引張強度に優れた効果を発現する不織布に関する研究が急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、紡糸性に優れ、ソフト性に優れていると同時に、低重量化が可能ながらも、引張強度に優れた効果を示す機械的強度が向上した不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は、ポリプロピレン単独重合体(homopolymer)を含んで形成される繊維を通じて形成され、下記の条件(1)および条件(2)を全て満たす、機械的強度が向上した不織布を提供する。
(1)b/a≦0.3
(2)(a1/2+b)1/2≦3.6
ここで、前記aは、ポリプロピレン単独重合体の溶融指数(g/10min)であり、前記bは、ポリプロピレン単独重合体の多分散指数(Mw/Mn、重量平均分子量/数平均分子量)である。
【0010】
本発明の一実施例によれば、下記の条件(1)および条件(2)を全て満たすことができる。
(1)b/a≦0.23
(2)(a1/2+b)1/2≦3.33
【0011】
また、前記ポリプロピレン単独重合体は、溶融指数が13~70g/10minであってもよい。
【0012】
また、前記ポリプロピレン単独重合体は、多分散指数が3.2以下であってもよい。
【0013】
また、下記の条件(3)をさらに満たすことができる。
(3)単位重量当たりのMD方向引張強度/単位重量当たりのCD方向引張強度≦4
【0014】
また、単位重量当たりのMD方向引張強度が0.19kgf
(1.9N)/5cm/gsm以上であってもよい。
【0015】
また、単位重量当たりのCD方向引張強度が0.05~2.0kgf
(0.5~20N)/5cm/gsm以上であってもよい。
【0016】
また、前記繊維は、感触改良剤をさらに含んで形成してもよい。
【0017】
また、前記ポリプロピレン単独重合体100重量部に対して前記感触改良剤を0.1~25重量部でさらに含んでもよい。
【0018】
また、前記感触改良剤は、スリップ剤および、プロピレン-エチレン共重合体およびC4~C12のアルファ-オレフィン共重合体からなる群から選ばれた1種以上を含む繊維柔軟剤の中から選ばれたいずれか一つ以上を含んでもよい。
【0019】
また、前記プロピレン-エチレン共重合体およびC4~C12のアルファ-オレフィン共重合体は、それぞれ独立して、溶融指数が550g/10min以下であってもよい。
【0020】
また、前記プロピレン-エチレン共重合体は、エチレン単量体およびプロピレン単量体を1:0.8~0.95のモル比で含んでもよい。
【0021】
また、前記不織布は、坪量が8~50g/m2であってもよい。
【0022】
一方、本発明は、上述した不織布;を含んで形成された衛生材を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明による機械的強度が向上した不織布は、紡糸性に優れ、ソフト性に優れていると同時に、低重量化が可能ながらも、引張強度に優れた効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施例について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。本発明は、様々な異なる形態で具現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0025】
本発明による機械的強度が向上した不織布は、ポリプロピレン単独重合体(homopolymer)を含んで形成される繊維を通じて形成される。
【0026】
本発明による機械的強度が向上した不織布について説明するに先立って、本発明による機械的強度が向上した不織布が下記の条件(1)および条件(2)を満たさなければならない理由について先に説明する。
【0027】
不織布を形成するポリマーの溶融指数が低い場合、高分子鎖の長さが長くなるにつれて、高い粘性によって紡糸性が顕著に低下することがあり、溶融指数が高い場合、高分子鎖の長さが短くなるにつれて、機械的物性が低下することがある。また、ポリマーの多分散指数が高い場合、繊維の断絶が発生したり、製造された不織布の均一度が低下することがあるので、機械的物性が低下することがある。
【0028】
これによって、本発明による機械的強度が向上した不織布は、下記の条件(1)および条件(2)を満たす。
【0029】
条件(1)として、b/a≦0.3であってもよく、好ましくは、b/a≦0.23であってもよく、より好ましくは、0.08≦b/a≦0.12であってもよい。
【0030】
また、条件(2)として、(a1/2+b)1/2≦3.6であってもよく、好ましくは、(a1/2+b)1/2≦3.33であってもよく、より好ましくは、2.00≦(a1/2+b)1/2≦2.90であってもよい。
【0031】
もし、前記条件(1)においてb/aが0.3を超過すると、紡糸性、ソフト性および機械的物性が低下することがあり、前記条件(2)において(a1/2+b)1/2が3.6を超過すると、機械的物性が低下することがある。
【0032】
以下、本発明による機械的強度が向上した不織布を製造するために用いられるポリプロピレン単独重合体について説明する。
【0033】
上記した特徴を有する多様なポリプロピレン単独重合体は、通常、チーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒やメタロセン(Metallocene)触媒を用いて重合することができる。メタロセン触媒で製作された重合体の場合、チーグラー・ナッタ触媒を用いた場合より、多分散指数が低い傾向にある。多分散指数が低い場合、原料が、紡糸均一性が高いため、高速紡糸に有利になり得る。本発明において提示するポリプロピレン単独重合体の重合に用いられる触媒は、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒に限定されるものではなく、前記条件(1)、条件(2)および後述する物性を満たすようにする触媒が本発明において用いられ得る。
【0034】
一方、前記ポリプロピレン単独重合体は、前記条件(1)および条件(2)を満たすように、溶融指数が13~70g/10minであってもよく、好ましくは、溶融指数が14~60g/10minであってもよく、より好ましくは、溶融指数が15~55g/10minであってもよい。もし、前記ポリプロピレン単独重合体の溶融指数が13g/10min未満であれば、高分子鎖の長さが長くなるにつれて、高い粘性に起因して紡糸性が顕著に低下することがあり、溶融指数が70g/10minを超過すると、高分子鎖の長さが短くなるにつれて、機械的物性が低下することがある。
【0035】
ここで、前記溶融指数は、ASTM D1238-13(または、ISO1133)に基づいて荷重2160gおよび温度230℃の条件で測定したものであってもよい。
【0036】
また、前記ポリプロピレン単独重合体は、140℃~200℃の溶融温度を、好ましくは、145℃~180℃の溶融温度を、より好ましくは、150℃~165℃の溶融温度を有していてもよいが、これに限定されるものではない。
【0037】
一方、前記ポリプロピレン単独重合体は、前記条件(1)および条件(2)を満たすように、多分散指数が3.2以下であってもよく、好ましくは、3以下であってもよく、より好ましくは、1.5~2.5であってもよい。もし、前記ポリプロピレン単独重合体の多分散指数が3.2を超過すると、繊維の断絶が発生したり、製造された不織布の均一度が低下することがあるので、機械的物性が低下することがある。
【0038】
本発明の一実施例によれば、前記繊維は、感触改良剤をさらに含んで形成してもよい。
【0039】
前記感触改良剤は、不織布のソフト性を向上させる機能を行うものであり、当業界において不織布のソフト性を向上させるために使用できる物質であれば、限定されずに使用でき、好ましくは、スリップ剤および、プロピレン-エチレン共重合体およびC4~C12のアルファ-オレフィン共重合体からなる群から選ばれた1種以上を含む繊維柔軟剤の中から選ばれたいずれか一つ以上を含むことが、紡糸性および機械的強度に優れていると同時に、優れたソフト性および低重量を達成するのにさらに有利になり得る。
【0040】
一方、前記感触改良剤としてスリップ剤を使用する場合、樹脂と溶融ブレンドされるとき、前記スリップ剤は、冷却中または加工後に次第に表面に染み出たり、または、移動し、したがって、均一かつ目に見えない薄いコーティングを形成することによって、永久潤滑効果による繊維や不織布表面の滑らかな感じを向上させる。
【0041】
一方、前記スリップ剤は、当業界において通常使用できるスリップ剤であれば、限定されずに使用できるが、好ましくは、エルカアミドが使用できる。
【0042】
一方、前記感触改良剤として前記プロピレン-エチレン共重合体およびC4~C12のアルファ-オレフィン共重合体からなる群から選ばれた1種以上を含む繊維柔軟剤を使用する場合、前記プロピレン-エチレン共重合体およびC4~C12のアルファ-オレフィン共重合体は、それぞれ独立して、溶融指数が550g/10min以下であってもよく、好ましくは、溶融指数が550g/10min以下であってもよい。
【0043】
ここで、前記プロピレン-エチレン共重合体は、エチレン単量体およびプロピレン単量体を1:0.8~0.95のモル比で含んでもよいし、好ましくは、1:0.85~0.9のモル比で含んでもよい。
【0044】
一方、前記感触改良剤は、前記ポリプロピレン単独重合体100重量部に対して0.1~25重量部で、好ましくは、0.5~20重量部でさらに含んでもよい。もし、前記ポリプロピレン単独重合体100重量部に対して前記感触改良剤が0.1重量部未満であれば、目的とするレベルでソフト性を改善することができず、前記感触改良剤が25重量部を超過すると、機械的物性が低下することがある。
【0045】
上述したポリプロピレン単独重合体が主原料として適用されたスパンボンド不織布の製作工程で、樹脂の溶融押出工程後、繊維をドラッグ(drag)させる空気の速度を向上させて、繊維内結晶配向度を高めて、繊維自体の機械的強度の物性を増加させたとき、繊維が積層捕集されるスピンベルト方向への繊維の移動速度が速くなることによる積層された不織布内機械進行方向(MD方向)に配向された繊維の比率が高くなる。不織布形態で積層された繊維の配向方向が、MD方向が多くなると、MD方向の機械的物性が増加するが、CD方向に配向された繊維の比率が減少して、CD方向の物性が低下する。
【0046】
したがって、本発明による機械的強度が向上した不織布は、下記の条件(3)をさらに満たすことができる。
【0047】
条件(3)として、単位重量当たりのMD方向引張強度/単位重量当たりのCD方向引張強度≦4であってもよく、好ましくは、単位重量当たりのMD方向引張強度/単位重量当たりのCD方向引張強度≦3.8であってもよい。
【0048】
もし、前記単位重量当たりのMD方向引張強度/単位重量当たりのCD方向引張強度が4を超過すると、紡糸性が低下し、衛生材加工工程に安定的に使用できないという問題が発生することがある。
【0049】
また、前記不織布は、単位重量当たりのMD方向引張強度が0.19kgf
(1.9N)/5cm/gsm以上であってもよく、好ましくは、単位重量当たりのMD方向引張強度が0.2kgf
(2N)/5cm/gsm以上であってもよく、より好ましくは、単位重量当たりのMD方向引張強度が0.20kgf
(2.0N)/5cm/gsm~0.35kgf
(3.4N)/5cm/gsmであってもよい。
【0050】
そして、前記不織布は、単位重量当たりのCD方向引張強度が0.05kgf
(0.5N)/5cm/gsm~2.0kgf
(20N)/5cm/gsmであってもよく、好ましくは、単位重量当たりのCD方向引張強度が0.07~2.0kgf
(0.7~20N)/5cm/gsmであってもよく、より好ましくは、単位重量当たりのCD方向引張強度が0.07~0.30kgf
(0.7~2.9N)/5cm/gsmであってもよい。
【0051】
本発明の一実施例によれば、前記不織布は、坪量が8~50g/m2であってもよく、好ましくは、坪量が10~30g/m2であってもよい。前記不織布の坪量が前記範囲を満たすことによって、紡糸性に優れ、ソフト性に優れていると同時に、低重量化が可能ながらも、引張強度に優れた効果を発現することができる。
【0052】
本発明によるポリプロピレン単独重合体(homopolymer)を含んで形成される繊維を通じて形成される不織布は、スパンボンド工程を通じて製造することができる。スパンボンド工程を通じて製作された不織布の機械的強度は、スパンボンド溶融押出、冷却、延伸工程によって制御される繊維原糸自体の機械的強度と繊維原糸がウェブ化(web forming)と熱プレス(Calendering)工程によって発生する機械的強度の組み合わせによって決定される。ウェブ化および熱プレス工程は、準備したスパンボンド設備により決定されるので、不織布の物性を変更する最も容易な方法は、スパンボンド不織布用樹脂の物性を変更させたり、ウェブ化の前段階である溶融押出、冷却、延伸工程で変化を与えることである。しかしながら、不織布用樹脂物性を変更することなく、溶融押出、冷却、延伸工程の変化によって繊維原糸の機械的物性を向上させることには限界がある。
【0053】
一般的に、繊維の機械的物性を向上させる最も良い方法は、繊維の結晶化度を増加させ、このような結晶化した高分子の配向性を増加させることである。スパンボンド工程でポリプロピレンの結晶化度は、溶融押出紡糸の初期に大部分決定される。したがって、結晶配向度を増加させるために、繊維を間接ドラッグ(drag)させる空気の移動速度を増加させて、繊維の紡糸速度を増加させなければならない。しかしながら、紡糸速度を増加させることは、設備ごとに限界があり、紡糸する繊維の物性が均一でなければ、一部の繊維が容易に切れて発生する糸切れなどの欠点が発生しやすい。したがって、不織布の機械的物性を向上させるためには、スパンボンド工程用高分子樹脂の均一性および高速紡糸における紡糸安定性が裏付けられなければならない。
【0054】
これによって、本発明は、上述した物性を満たすポリプロピレン単独重合体を通じて不織布を製造する。
【0055】
一方、本発明は、上述した不織布を含んで形成された衛生材を提供する。
【0056】
本発明による機械的強度が向上した不織布は、紡糸性に優れ、ソフト性に優れていると同時に、低重量化が可能ながらも、引張強度に優れた効果を示す。
【0057】
下記の実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、下記の実施例が本発明の範囲を限定するものではなく、これは、本発明の理解を助けるものと解されるべきである。
【0058】
<実施例1>
スパンボンド製造設備(ドイツReifenhauser社製)を用いて溶融指数が15g/10minおよび多分散指数が1.7であるポリプロピレン単独重合体を連続紡糸した後、温度158℃、圧力70dN/cmの条件でカレンダー工程を行って、不織布を製造した。
【0059】
ここで、製造された不織布の坪量は、13g/m2であった。
【0060】
<実施例2~実施例12および比較例1~比較例3>
ポリプロピレン単独重合体の溶融指数、多分散指数および感触改良剤含有の有無などを変更することを除いて、実施例1と同一に実施して製造することによって、表1~表3のような不織布を製造した。
【0061】
<実験例>
実施例および比較例で製造された不織布に対して下記の物性を評価して、下記の表1~表3に示した。
【0062】
1.引張強度の測定
実施例および比較例によって製造された不織布に対して、引張試験機(Instron)を用いてKSK0520に基づいて試験片の幅5cm、間隔10cmの試験片を引張速度500mm/minの条件で引張して、MD方向(mechanical direction)およびCD方向(cross direction)の引張強度をそれぞれ測定した。
【0063】
2.紡糸性の評価
実施例および比較例によって製造された不織布に対して、30分間連続的な紡糸を進めて、何らの異常がない場合、○、不織布を構成する長繊維が3回以上切れる場合、紡糸性均一性の問題に起因して不織布の外観均一度が悪い場合、Хとすることによって、紡糸性を評価した。
【0064】
3.ソフト性の評価
実施例および比較例によって製造された不織布に対して、官能評価によりソフト性を評価した。ソフト性は、数字1~5で、5個の等級に分けられ、ソフト性が良いほど、数字が低く、ソフト性が悪いほど、数字が高い。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
前記表1~表3から分かるように、本発明によるポリプロピレン単独重合体の溶融指数、多分散指数および感触改良剤含有の有無などを全て満たす実施例1、3~5、8、10~12が、これらのうつ一つでも欠けている実施例2、6、7、9および比較例1~3に比べて、紡糸性に優れ、ソフト性に優れていると同時に、低重量化が可能ながらも、引張強度に優れた効果を全部同時に達成できることを確認することができる。
【0069】
また、比較例3は、不織布の均一度が低下するにつれて、機械的強度が不良であること確認することができた。
【0070】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明の思想は、本明細書に提示される実施例に限定されず、本発明の思想を理解する当業者は、同じ思想の範囲内で、構成要素の付加、変更、削除、追加などによって他の実施例を容易に提案することができるが、これも、本発明の思想範囲内に入ると言える。