IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中化藍天集団有限公司の特許一覧 ▶ 浙江中藍新能源材料有限公司の特許一覧 ▶ 浙江省化工研究院有限公司の特許一覧

特許7429785LiPF6生産工程、生産システム、およびLiPF6を含有する混合結晶体、組成物、電解液、リチウム電池
<>
  • 特許-LiPF6生産工程、生産システム、およびLiPF6を含有する混合結晶体、組成物、電解液、リチウム電池 図1
  • 特許-LiPF6生産工程、生産システム、およびLiPF6を含有する混合結晶体、組成物、電解液、リチウム電池 図2
  • 特許-LiPF6生産工程、生産システム、およびLiPF6を含有する混合結晶体、組成物、電解液、リチウム電池 図3
  • 特許-LiPF6生産工程、生産システム、およびLiPF6を含有する混合結晶体、組成物、電解液、リチウム電池 図4
  • 特許-LiPF6生産工程、生産システム、およびLiPF6を含有する混合結晶体、組成物、電解液、リチウム電池 図5
  • 特許-LiPF6生産工程、生産システム、およびLiPF6を含有する混合結晶体、組成物、電解液、リチウム電池 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】LiPF6生産工程、生産システム、およびLiPF6を含有する混合結晶体、組成物、電解液、リチウム電池
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/455 20060101AFI20240201BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240201BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20240201BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240201BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240201BHJP
【FI】
C01B25/455
H01M10/052
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/0569
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2022535583
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-10
(86)【国際出願番号】 CN2020134848
(87)【国際公開番号】W WO2021115316
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】201911254922.4
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911254953.X
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911254957.8
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911254959.7
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911254960.X
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911255090.8
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513016127
【氏名又は名称】中化藍天集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】SINOCHEM LANTIAN CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.96, Jiangnan Avenue, Binjiang District, Hangzhou 310051, Zhejiang, China
(73)【特許権者】
【識別番号】522229835
【氏名又は名称】浙江中藍新能源材料有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】520217629
【氏名又は名称】浙江省化工研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】レン ジェンガン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ハイビン
(72)【発明者】
【氏名】マ シャオホン
(72)【発明者】
【氏名】マ グオチァン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ハイダオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン チン
(72)【発明者】
【氏名】ドン ジンボ
(72)【発明者】
【氏名】チェン フイチュアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン チー
(72)【発明者】
【氏名】シェン ナン
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101544361(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106745096(CN,A)
【文献】特開平05-279003(JP,A)
【文献】特開2018-170217(JP,A)
【文献】特開2018-170237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/455
H01M 10/052
H01M 10/0567
H01M 10/0568
H01M 10/0569
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘキサフルオロリン酸リチウムの生産工程であって、
PFを含む第一フィードフローと、LiFおよびHFを含む第二フィードフローと、を第一マイクロチャンネル反応装置に導入すること、
前記第一マイクロチャンネル反応装置中の産物におけるガス部分を第二マイクロチャンネル反応装置に導入してLiPF、LiFおよびHFを含む第三フィードフローと反応させること、および、
前記第一マイクロチャンネル反応装置中の産物における液体部分に対して結晶化と乾燥とを行って、ヘキサフルオロリン酸リチウムを得ること、を包含し、
前記第二マイクロチャンネル反応装置中の産物における液体部分は、第四フィードフローとして、前記第一マイクロチャンネル反応装置に加えられ、
前記第一フィードフローは、さらに、物質伝達促進成分としてHClを含み、
前記第二マイクロチャンネル反応装置の反応温度は、前記第一マイクロチャンネル反応装置の反応温度より1~10℃高い、生産工程。
【請求項2】
前記第一フィードフローは、さらに、HFを含む、請求項1に記載の生産工程。
【請求項3】
前記第一マイクロチャンネル反応装置と前記第二マイクロチャンネル反応装置とにおける反応温度は、0~17℃に制御される、請求項1に記載の生産工程。
【請求項4】
前記第一マイクロチャンネル反応装置および前記第二マイクロチャンネル反応装置での滞留時間は、5~120秒である、請求項1に記載の生産工程。
【請求項5】
前記第一マイクロチャンネル反応装置中の産物における前記液体部分を、結晶化槽に入れて結晶化させる前に、合成液槽に入れて貯蔵する、請求項1に記載の生産工程。
【請求項6】
用意されたヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体、純度が99.99wt%以上であり、均一な粒径の結晶粒子であり、
80wt%以上の結晶体の粒径が0.2~0.3mmであり、
90wt%以上の結晶体の粒径が0.18~0.35mmである、請求項1~5のいずれかに記載の生産工程
【請求項7】
ヘキサフルオロリン酸リチウムの連続生産システムであって、
五フッ化リン発生装置(2)と、第一マイクロチャンネル反応装置(3)と、気液分離装置A(4)と、第二マイクロチャンネル反応装置(6)と、気液分離装置B(7)と、を含み、
原料としてのPFガスとLiFとが溶解されたHF溶液が用いられた逆循環反応が行われ、前記五フッ化リン発生装置(2)で生成されたガスが前記第一マイクロチャンネル反応装置(3)中に導入され、前記第一マイクロチャンネル反応装置(3)の出力物を前記気液分離装置A(4)に入れ、前記気液分離装置A(4)から分離されたガスが反応材料として前記第二マイクロチャンネル反応装置(6)に入って引き続き反応が行われ、前記第二マイクロチャンネル反応装置(6)の出力物が前記気液分離装置B(7)に入り、前記気液分離装置B(7)から分離される液体成分が前記第一マイクロチャンネル反応装置(3)中に送られ、
前記逆循環反応は、以下の特徴:
前記五フッ化リン発生装置(2)から生成された、PF 、HCl、および附帯のHFガスの混合ガスが前記第一マイクロチャンネル反応装置(3)に導入されること;
同時に、前記第一マイクロチャンネル反応装置(3)中に、ポンプでLiFが溶解されたHF溶液を輸送すること;
前記第一マイクロチャンネル反応装置(3)中で、PF と、HF溶液中のLiFとを反応させること;および、
液分離装置B(7)から分離される液体成分は、LiPF と未反応のLiFとを含むこと;
を含み、
前記第二マイクロチャンネル反応装置(6)は、少なくとも二つのフィードフローを含んでおり、
一方は、前記気液分離装置A(4)によって分離された前記ガスであり、当該ガスは未反応のPF と附帯のHFとHCl成分とを含み、
他方は、LiFとLiPF とが溶解された前記HF溶液である、連続生産システム。
【請求項8】
前記第二マイクロチャンネル反応装置(6)中の前記反応原料PFとLiFとのモル比が1:1~2に制御される、請求項に記載のヘキサフルオロリン酸リチウムの連続生産システム。
【請求項9】
前記逆循環反応は、さらに、以下の特徴:
前記第一マイクロチャンネル反応装置(3)の出力物が前記気液分離装置A(4)中に入ること;
前記気液分離装置A(4)から分離される前記液体混合物が前記合成液槽(5)と結晶化槽(9)とに入り、引き続いてヘキサフルオロリン酸リチウムの結晶化が行われること;および、
結晶化およびろ過後のLiPFを含有するHF溶液を前記第二マイクロチャンネル反応装置(6)に輸送して、第三フィードフローとすること;
を含む、請求項に記載のヘキサフルオロリン酸リチウムの連続生産システム。
【請求項10】
前記逆循環反応は、さらに、以下の特徴:
前記気液分離装置B(7)から分離された前記ガスが増圧設備を通ってHFおよびHCI分離システム(8)に輸送されること;
前記分離システム(8)上部のHClが水に吸収されて工業塩酸となること;および、
底部のHFが反応原料としてリサイクルされること;
を含む、請求項に記載のヘキサフルオロリン酸リチウムの連続生産システム。
【請求項11】
前記結晶化槽(9)は冷却状態におけるヘキサフルオロリン酸リチウムの結晶化に用いられ、前記結晶化および前記ろ過後、乾燥および酸除去のための乾燥システム(10)が用いられて前記乾燥および前記酸除去が行われることによって、ヘキサフルオロリン酸リチウム製品が得られる請求項に記載のヘキサフルオロリン酸リチウムの連続生産システム。
【請求項12】
結晶化によって、純度が99.98%以上のヘキサフルオロリン酸リチウムの製品が得られ、
前記製品における水分が20ppm以下であり、遊離酸(HFで計算)が90ppm以下であり、不溶物が200ppm以下であり、硫酸塩(SO で計算)が5ppm以下であり、塩化物(Clで計算)が2ppm以下であり、その他の各種金属イオンが1ppm以下である不純物を含む、請求項に記載のヘキサフルオロリン酸リチウムの連続生産システム。
【請求項13】
ヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する混合結晶体であって、
アスペクト比が1~1.5であり、
平均粒径が0.15~0.4mmであり、
90%以上の該結晶体において結晶面族{110}が20~80%を占め、結晶面族{111}が20~80%を占め、かつ、
不溶物と遊離酸とを含み、
68%以上の該結晶体の粒径が0.2~0.3mmであり、80wt%以上の該結晶体の粒径が0.18~0.35mmであり、
安息角が20~40°である、結晶体。
【請求項14】
80%以上の前記結晶体中、結晶面族{110}が40~60%を占め、結晶面族{111}が40~60%を占める、請求項13に記載の結晶体。
【請求項15】
かさ密度が1.3~1.8g/mLである、請求項13に記載の結晶体。
【請求項16】
前記結晶体中のヘキサフルオロリン酸リチウムの質量百分比含有量が99.90~99.995%である、請求項13に記載の結晶体。
【請求項17】
LiPF結晶体と水分とを含み、LiPF結晶粒子の分布が均一であって、35~50%の結晶体の粒径が0.2mm以上0.25mm未満であり、35~50%の結晶体の粒径が0.25mm以上0.3mm以下であり、該組成物の水分含有量が8ppm未満である、組成物。
【請求項18】
40~50%の結晶体の粒径が0.2mm以上0.25mm未満であり、40~50%の結晶体の粒径が0.25mm以上0.3mm以下である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
リチウム塩と有機溶媒と添加剤とを含む非水電解液であって、
前記リチウム塩はヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する混合結晶体であり、前記混合結晶体のアスペクト比が1~1.5であり、該結晶体の平均粒径が0.15~0.4mmであり、90%以上の該結晶体中、結晶面族{110}が20~80%を占め、結晶面族{111}が20~80%を占め、該結晶体は不溶物および遊離酸を含み、該結晶体中のヘキサフルオロリン酸リチウムの質量百分比含有量が99.90~99.995%であり、
該非水電解液中のヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度が0.6~2mol/Lであり、
前記添加剤は、ジフルオロリン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、およびフルオロカーボネートのうちの少なくとも二つを含み、
100重量%の該非水電解液に対し、前記ジフルオロリン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、およびフルオロカーボネートの重量比が1:0.5~1.5:2.5~3.5である、非水電解液。
【請求項20】
100重量%の該非水電解液に対し、前記添加剤の添加量が0.01~5%である、請求項19に記載の非水電解液。
【請求項21】
前記フルオロカーボネートは、フルオロエチレンカーボネートおよび/またはトリフルオロプロピレンカーボネートを含む、請求項19に記載の非水電解液。
【請求項22】
フルオロエチレンカーボネートとトリフルオロプロピレンカーボネートとの重量比は1:1~6である、請求項21に記載の非水電解液。
【請求項23】
前記有機溶媒は、環状カーボネートおよび/または鎖状カーボネートを含む非水溶媒である、請求項19に記載の非水電解液。
【請求項24】
前記環状カーボネートと前記鎖状カーボネートとの体積比は1:1~9である、請求項23に記載の非水電解液。
【請求項25】
請求項19に記載の非水電解液を備える、リチウム二次電池。
【請求項26】
フッ素含有電解液であって、
ヘキサフルオロリン酸リチウムを含み、
該フッ素含有電解液を製作する時に使用されるヘキサフルオロリン酸リチウムは、68wt%以上が0.2mm以上0.3mm以下の粒径を有するヘキサフルオロリン酸リチウムであり、水分含有量が6ppm未満であり、ヘキサフルオロリン酸リチウムの純度は99.99%超過であり、
該フッ素含有電解液中のヘキサフルオロリン酸リチウムの質量百分比含有量は5~20wt%であり、
該フッ素含有電解液は、さらに、LiPO 、LiBF 、LiBF 、LiFSI、LiTFSI、LiAsF 、LiClO 、LiSO CF 、LiC BC 、LiF BC 、LiPO 、LiPF 、LiPF およびLiPF のうちの少なくとも一つのフッ素含有リチウム塩を含み、
該フッ素含有電解液中でのフッ素含有リチウム塩の質量百分比含有量は0.1~5wt%であり、
該フッ素含有電解液は、さらに、1,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンを含み、1,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンの該電解液中の質量百分比含有量は0.1~3wt%である、フッ素含有電解液。
【請求項27】
該フッ素含有電解液を製作する時に使用されるヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体は、結晶体の粒径の分布が均一であり、30~50%の結晶体の粒径が0.2mm以上0.25mm未満であり、30~50%の結晶体の粒径が0.25mm以上0.3mm以下である、請求項26に記載のフッ素含有電解液。
【請求項28】
該フッ素含有電解液を製作する時に使用されるヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体は、結晶体の粒径の分布が均一であり、40~50%の結晶体の粒径が0.2mm以上0.25mm未満であり、40~50%の結晶体の粒径が0.25mm以上0.3mm以下である、請求項27に記載のフッ素含有電解液。
【請求項29】
さらに、LiPOとLiBFとを含む、請求項26に記載のフッ素含有電解液。
【請求項30】
エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、およびジエチルカーボネートを含み、
エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、およびジエチルカーボネートの該フッ素含有電解液中の総質量百分比含有量は70~90wt%であり、
エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、およびジエチルカーボネートの質量比は2.5~3.5:4.5~5.5:1.5~2.5である、請求項26に記載のフッ素含有電解液。
【請求項31】
ヘキサフルオロリン酸リチウムは、二つのマイクロチャンネル反応装置を用いて製作したヘキサフルオロリン酸リチウムである、請求項26に記載のフッ素含有電解液。
【請求項32】
請求項2631のいずれか一項に記載のフッ素含有電解液を備える、リチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新エネルギー技術分野に関し、具体的にはリチウム電池の電解液分野に関し、特にヘキサフルオロリン酸リチウムの生産方法、設備、連続生産システム、製作される製品およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)は白色の結晶体粉末であり、商用のリチウム電池の電解液の主な構成部分である。ヘキサフルオロリン酸リチウムは電池に高いエネルギー密度、高い循環容量、低い放電率、長い品質保証期間と優れた操作の安全性を持たせ、電池の性能に影響を与える重要な要素である。リチウム電池の電解液はヘキサフルオロリン酸リチウムの純度に対する要求が極めて高く、そのうちの不純物含有量に対して厳しく管理しなければならず、さもないと電池内部の抵抗が大きくなって、電池容量の減衰が速くなり、安全性が落ちる。しかし、ヘキサフルオロリン酸リチウムは製作が難しく、生産条件が厳しいだけでなく、ヘキサフルオロリン酸リチウムは低い熱安定性や高い吸湿性および加水分解し易いなどの特性がある。このため、高品質のヘキサフルオロリン酸リチウムを得ることは非常に難しい。
【0003】
ヘキサフルオロリン酸リチウムの製作方法には、主に気固反応法や有機溶媒法およびフッ化水素溶媒法などがある。現在、国内外で主流となっているヘキサフルオロリン酸リチウムの製作方法はフッ化水素溶媒法であって、これがすべての産業化生産方法中80%以上を占めている。日本の森田化工や、DFD化工、江蘇九九久などの大型企業では、いずれもこの方法を利用して産業化生産を実現している。
【0004】
CN108640129A(森田化工)にはヘキサフルオロリン酸リチウムの製作方法が開示されている。この方法は、(1)五フッ化リンガスを事前にフッ化リチウムとフッ化水素を入れた反応窯中に入れて1~2時間反応させて、ヘキサフルオロリン酸リチウム溶液を獲得する段階と、(2)攪拌条件下で結晶化を実現する段階と、および(3)乾燥する段階と、を含む。
【0005】
CN101723346B(DFD化工)にはヘキサフルオロリン酸リチウムの製作方法が開示されている。この方法は、五塩化リンと無水フッ化水素を反応させてヘキサフルオロリン酸と無水フッ化水素の混合液を獲得する段階と、その後、フッ化リチウムの無水フッ化水素溶液を製作する段階と、最後に、フッ化リチウムの無水フッ化水素溶液をヘキサフルオロリン酸と無水フッ化水素の混合液中に入れて、反応、結晶化、分離、乾燥を経て、純粋なヘキサフルオロリン酸リチウム製品を得る段階と、を含む。
【0006】
CN106698384B(江蘇九九久科技)には、ヘキサフルオロリン酸リチウムの生産装置が開示されている。ヘキサフルオロリン酸リチウムの合成窯は合金窯の原料輸送ポンプと接続され、合金窯の原料輸送ポンプは輸送パイプによって乾燥塔中の噴霧ノズルと接続されている。乾燥塔の塔壁は多段に分けられ、且つ多段塔壁の温度は上から下へと次第に高くなり、個々の段の塔壁はいつも一定の温度を維持している。乾燥塔上部の出口は、流量計を通じて、無水フッ化水素凝縮器や五フッ化リン反応装置と接続されている。無水フッ化水素凝縮器は、無水フッ化水素貯蔵タンクと接続されている。無水フッ化水素貯蔵タンクは、ヘキサフルオロリチウム合成窯と接続されている。五フッ化リン反応装置は、ガスバッファタンクと接続されている。ガスバッファタンクは、ヘキサフルオロリチウム合成窯と接続されている。ヘキサフルオロリチウム合成窯は、排気ガス吸収装置と接続されている。乾燥塔底部の出口は、スクリュー輸送機と接続されている。スクリュー輸送機は、乾燥器を接続されている。
【0007】
CN101544361A(洛陽森藍化工)には、ヘキサフルオロリン酸リチウムの連続化製作工程およびその装置が開示されている。ここでは、フッ化リチウムが溶解されている無水フッ化水素溶液Aと五フッ化リンまたは五フッ化リンとその他のガスの混合ガスBを一定の比例で気液混合装置1に通して原料の混合を行い、原料混合物を多段階チューブ式反応装置2に入れて、多段階合成反応を行う。多段階チューブ式反応装置2は、フッ素樹脂をライニングした細いチューブと円滑に直列接続されている。多段階合成反応を経た反応産物は、気液分離装置3に入り、未反応ガスを分離・除去する。液体の反応産物は、混合反応装置4に入って引き続き混合反応を行い、さらに別途に入れた五フッ化リンガスBと反応させ、溶液中に存在する可能性のある微量の未反応フッ化リチウム成分を除去する。これによって、フッ化リチウムの完全な転化を実現することができる。また、反応済み溶液を母液貯蔵槽5に入れて一時保存してから、蒸発結晶化装置に入れて、蒸発、冷却、結晶化、ろ過、乾燥を経て、純度が99.9%に達するヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体を得る。この特許では、多段階反応を利用して、反応物を十分混合する目的に達成し、反応が長い停留時間、十分接触中に完了できるようにしている。後続の混合反応は最後の品質保証の役割を果たし、微量の未反応フッ化リチウムが再び高い濃度の五フッ化リンガスと接触反応させる。これによって、フッ化リチウムの完全な転化を実現し、高純度のヘキサフルオロリン酸リチウムを製作する目的を達成することができる。この特許は、連続化工程であるけれど、伝統的な反応装置を使用している。このため、反応の停留時間が長く、液体反応産物は未反応の五フッ化リンガスを分離除去してから再び五フッ化リンガスを入れて反応を行なう。このため、原料の利用が不十分であり、工程のフローが不合理的だといえ、原価が高い。また、製作されたヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体の純度がわずか99.9%しかない。
【0008】
CN108147436A(江蘇新泰材料)には、ヘキサフルオロリン酸リチウムの生産における合成効率の向上と、生産単位の消費低減とに関する方法が開示されている。この方法は、1)フッ化水素を気体化する段階と、2)気体化されたフッ化水素を液体化する段階と、3)段階2)から得た液体フッ化水素を五フッ化リンが入った反応タンク中に滴下して反応させる段階と、4)段階3)反応から得た混合ガスをチューブに伴う冷却を行い、再び合成反応窯中に入れる段階と、5)合成反応窯の合成反応プロセスは高圧液体の真空吸気による高効率混合方式を利用して行う段階と、6)合成反応窯から排出される排気ガスを吸収反応窯中に入れる段階と、および7)吸収反応窯から排出される排気ガスを、水洗吸収処理を行う前に先ず凝縮器で冷却する段階と、を含む。
【0009】
CN1108985C(株式会社厚成)には、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)の製作方法が開示されている。五塩化リン(PCl5)や塩化リチウム(LiCl)およびフッ化水素酸(HF)を原料としている。この方法は、(a)五塩化リンとフッ化水素酸を反応させて五フッ化リン(PF)を製作する段階、および(b)五フッ化リンと塩化リチウムをフッ化水素酸溶液にて反応させて、ヘキサフルオロリン酸リチウムを製作する段階と、を含む。
【0010】
上記特許文献中のフッ化水素溶液法はいずれも反応窯を利用した間歇法生産であり、生産プロセスが多く、工程が煩雑であり、性能効率が低く、設備に対する要求が高く、原価が高い。
【0011】
マイクロチャンネル反応装置とは、精密加工技術を利用して製作された特徴寸法が10ないし300μm(または1000μm)間のマイクロ型反応装置を指し、マイクロチャンネル反応装置中には数百万ないし数千万のマイクロ型チャンネルがある。このため、非常に高い産出量を実現することができる。マイクロチャンネル反応装置は上世紀90年代初に米国のDupont社により率先的に研究が行われ、現在すでに多くの化工工程中に幅広く利用されている。しかし、ヘキサフルオロリン酸リチウムの製作中、マイクロチャンネル反応装置の利用は、まだまだ少ない。
【0012】
ただCN106745096A(九江天賜)中だけに、五フッ化リンガスとフッ化アルカリ金属塩溶液を量り取ってマイクロチャンネル反応装置に入れて、混合、反応を行なわせ、その後、得られた反応液に対する結晶化、乾燥を行なって、ヘキサフルオロリン酸リチウムを得ることが記載されている。しかし、この特許出願中のヘキサフルオロリン酸リチウム製品の収率は最高98.5%しかなく、純粋な五フッ化リンガスを使用するため、原価が高い。また、ヘキサフルオロリン酸リチウム製品の具体的な純度とどうやってヘキサフルオロリン酸リチウム製品の品質を向上するかに対する方法は開示されていない。
【0013】
マイクロチャンネル反応装置はただの反応装置中の一つのタイプであって、多くの分野に利用できるけれど、具体的な利用においては、依然として多くの難点を克服しなければならず、反応タイプによっては、異なる生産工程を使用する場合のみ、反応効率や製品品質および生産原価のバランスを取ることができ、大規模産業化生産を実現することができる。また、ヘキサフルオロリン酸リチウムの商業化リチウム電池への大量利用において、その純度や安定性、一致性に対する要求が非常に高い。
【発明の概要】
【0014】
発明が解決しようとする第一の課題
本発明は。大規模産業化連続生産に適するヘキサフルオロリン酸リチウムの製作工程および生産システムを提供する。製作されたヘキサフルオロリン酸リチウムは純度が高く、粒径が均一であり、製品品質の安定性が高いなどの長所があり、リチウム電池の電解液成分としての利用に最適である。
【0015】
第一課題を解決するための技術手段
LiPF生産プロセスであって、PFを含む第一フィードフローと、LiFとHFを含む第二フィードフローとを第一マイクロチャンネル反応装置に入れ、第一マイクロチャンネル反応装置中の産物におけるガス部分を第二マイクロチャンネル反応装置に入れて、LiPF、LiFおよびHFを含む第三フィードフローと反応させ、第一マイクロチャンネル反応装置中の産物における液体部分に対して結晶化、乾燥を行うことによって、LiPFを得る。
【0016】
さらに、前記第二マイクロチャンネル反応装置中の産物における液体部分を、第四フィードフローとして第一マイクロチャンネル反応装置に入れる。
【0017】
さらに、第一フィードフロー中には、物質伝達促進成分も含まれる。
【0018】
第一フィードフロー中の物質伝達促進成分は、好ましくは、HClである。
【0019】
さらに、第一フィードフロー中には、HFも含まれる。
【0020】
前記第一マイクロチャンネル反応装置と第二マイクロチャンネル反応装置の反応温度を、好ましくは、0~17℃とする。
【0021】
前記第一マイクロチャンネル反応装置と第二マイクロチャンネル反応装置での滞留時間は、5~120秒である。
【0022】
さらに、第一マイクロチャンネル反応装置中の産物における液体部分を結晶化槽に入る前に合成液槽に入れて貯蔵する。
【0023】
さらに、前記乾燥は、乾燥による酸除去プロセスである。
【0024】
本発明のLiPF生産工程に使用される生産システムは、第一マイクロチャンネル反応装置や第二マイクロチャンネル反応装置、結晶化槽および乾燥システムを含み、第一マイクロチャンネル反応装置は第一気液分離装置を通じて第二マイクロチャンネル反応装置と連通され、第一マイクロチャンネル反応装置産物中のガス部分は第二マイクロチャンネル反応装置中に通され、第一マイクロチャンネル反応装置は第一気液分離装置や合成液槽を通じて結晶化槽と連通され、結晶化槽は乾燥システムと接続され、第一マイクロチャンネル反応装置産物中の液体部分は結晶化や乾燥を経て、LiPFを得る。
【0025】
結晶化槽は、母液槽やフッ化リチウム溶液槽を通じて第二マイクロチャンネル反応装置と連通される。第二マイクロチャンネル反応装置は、第二気液分離装置を通じて第一マイクロチャンネル反応装置と連通される。第二マイクロチャンネル反応装置中の産物における液体部分は第一マイクロチャンネル反応装置に通され、第二マイクロチャンネル反応装置中の産物におけるガス部分は分離システムに入って、分離回収される。
【0026】
第一マイクロチャンネル反応装置のフィード側は五フッ化リン発生装置と連通され、五フッ化リン発生装置に入る原料PClは、固体輸送装置によって提供される。
【0027】
本発明において、結晶化槽の結晶体は冷却状態下でのヘキサフルオロリン酸リチウムの結晶体である。固体状結晶体をろ過した後、乾燥システムにて乾燥して酸を除去する。ろ過済み母液を母液槽に貯蔵するが、母液中にはLiPFとHFが含まれる。母液槽中の母液は分析を経てその中のヘキサフルオロリン酸リチウムの含有量を定量した後、フッ化リチウム溶解槽に送って定量のフッ化リチウム溶解液を製作する。フッ化リチウム溶解液は第二マイクロチャンネル反応装置に入るLiPFやLiFおよびHFを含む第三フィードフローである。
【0028】
好ましくは、本発明のPFを含む第一フィードフローはPF発生装置から生成された後、直接第一マイクロチャンネル反応装置に入れられるため、途中分離プロセスが要らなく、連続反応が可能となる。好ましくは、PFを含む第一フィードフロー中には、またHClも含み、HClは物質伝達促進成分である。第一マイクロチャンネル反応装置において、HCLは反応に参与せず、物質伝達促進成分として反応物間の物質伝達促進効果を向上する役割を果たし、PFとLiFとを十分反応させ、LiFを完全に反応させる。
【0029】
既存技術では、煩雑な反応と純化プロセスとによって純粋なPFガスを製作し、その後、純粋なPFガスをマイクロチャンネル反応装置に入れて反応させる。これに対し、本発明では、PF発生装置から出る産物を全部直接第一マイクロチャンネル反応装置に入れるので、ガスの分離と純化の原価を低減するだけでなく、物質伝達と熱伝達効果を向上し、マイクロチャンネルの塞ぎを避けて、産業化大規模連続生産を実現することができる。本発明のマイクロチャンネル反応装置は伝統的な反応窯に比べて、連続生産が実現できるだけでなく、反応時間を短縮し、生産能率を向上し、安全性を向上し、且つ反応がより一層十分になり、産物の純度も高く、粒径ももっと均一になる。
【0030】
前の記載のとおり、第一フィードフロー中にはHFも含まれる。前記HFガスはPF発生装置に入れられた未反応のHFである。第一、第二マイクロチャンネル反応装置に入るフィードフロー中には、いずれも液体状態または気体状態のHFが含まれている。フィードフローは均一に混合されており、反応効率が高い。
【0031】
本発明において、PF発生装置には冷却ジャケットが付いており、原料PCl5は計量装置付き固体輸送機によってフィーディングされる。
【0032】
本発明において、LiFとHFを含む第二フィードフロー中、HFはフッ化水素溶液である。第二フィードフロー中のLiFの質量分数は0.5~5.5%(wt)である。
【0033】
本発明において、第二マイクロチャンネル反応装置中の産物における液体部分はフッ化リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する。
【0034】
本発明において、第一マイクロチャンネル反応装置と第二マイクロチャンネル反応装置の反応温度を0~17℃とし、好ましくは3~10℃とし、さらに好ましくは5~7℃とする。
【0035】
好ましくは、第一マイクロチャンネル反応装置と第二マイクロチャンネル反応装置の反応温度は違う。さらに好ましくは、第二マイクロチャンネル反応装置の反応温度は、第一マイクロチャンネル反応装置の反応温度より高い。さらに好ましくは、第二マイクロチャンネル反応装置の反応温度は、第一マイクロチャンネル反応装置の反応温度より1~10℃高い。さらに好ましくは、第二マイクロチャンネル反応装置の反応温度は、第一マイクロチャンネル反応装置の反応温度より2~6℃高い。さらに好ましくは、第二マイクロチャンネル反応装置の反応温度は、第一マイクロチャンネル反応装置の反応温度より2~5℃高い。第一マイクロチャンネル反応装置と第二マイクロチャンネル反応装置の温度範囲を上記温度範囲内に制御することによって、反応効率と産物の純度をより一層向上することができる。
【0036】
前に記載のとおり、第一マイクロチャンネル反応装置と第二マイクロチャンネル反応装置との停留時間を好ましくは5~120秒とし、さらに好ましくは5~30秒とし、さらに好ましくは10~20秒とする。
【0037】
好ましくは、第一マイクロチャンネル反応装置と第二マイクロチャンネル反応装置との滞留時間は違う。さらに好ましくは、第二マイクロチャンネル反応装置の滞留時間は、第一マイクロチャンネル反応装置の滞留時間より長い。さらに好ましくは、第二マイクロチャンネル反応装置の滞留時間は、第一マイクロチャンネル反応装置の滞留時間より1~30秒長い。さらに好ましくは、第二マイクロチャンネル反応装置の滞留時間は、第一マイクロチャンネル反応装置の滞留時間より2~20秒長い。さらに好ましくは、第二マイクロチャンネル反応装置の滞留時間は、第一マイクロチャンネル反応装置の滞留時間より2~5秒長い。
【0038】
第一と第二マイクロチャンネル反応装置中の産物は、気液分離装置によって、ガス部分と液体部分とに分離される。
【0039】
第一マイクロチャンネル反応装置中の産物におけるガス部分にはHClと未反応のPFが含まれる。
【0040】
第一マイクロチャンネル反応装置中の産物における液体部分にはLiPFとHFが含まれる。結晶化槽において、合成液の冷却速度と結晶化槽中のミキサーの攪拌速度を制御することによって、粒径が均一なLiPF結晶体を得る。具体的には、合成液の冷却速度を1.5~5℃/hとし、好ましくは1.5~3℃/hとし、ミキサーの攪拌速度を0~50rpmとし、好ましくは40rpmとし、さらに好ましくは30rpmとする。合成液の温度範囲を20~30℃から-40~-48℃まで下げ、-40~-48℃に冷やしてから6~12時間保持し、その後ろ過、乾燥を行う。
【0041】
第二マイクロチャンネル反応装置中の産物におけるガス部分にはHClと附帯のHFが含まれるが、分離システムによってHClをさらに分離することができ、分離されるHClは工業塩酸の生産に利用することができ、三廃の処理量を低減し、分離されるHFは循環利用が可能であり、フッ化水素の消耗量を低減する。
【0042】
ヘキサフルオロリン酸リチウム製品中に含まれる不溶物を減らし、製品の純度を向上するために、本発明の第一マイクロチャンネル反応装置中のLiFを完全に反応させ、第二マイクロチャンネル反応装置中のPFを完全に反応させる。そのため、
【0043】
第一マイクロチャンネル反応装置中の五フッ化リンとフッ化リチウムのモル比を2~5:1とし、好ましくは2.5~4:1とする。第二マイクロチャンネル反応装置中の五フッ化リンとフッ化リチウムのモル比を1:1~2とし、好ましくは1:1.1~1.3とし、さらに好ましくは1:1.15~1.25とする。
【0044】
本発明において、第一マイクロチャンネル反応装置の産物フロー中、LiPFの質量分数を15~25%(wt)とし、好ましくは18~22%(wt)とし、さらに好ましくは19~20%(wt)とする。第二マイクロチャンネル反応装置中の第三フィードフロー中のLiPFの質量分数を0~15%(wt)とし、好ましくは0~12%(wt)とし、さらに好ましくは0~10%(wt)とする。
【0045】
本発明の生産工程によって製作されるLiPF結晶体は、純度が99.99%以上(wt)にも達し、結晶体の粒径が均一であり、80%(wt)以上の結晶体の粒径が0.2~0.3mmであり、90%(wt)以上の結晶体の粒径が0.18~0.35mmである。好ましくは、純度が99.995%以上(wt)にも達し、結晶体の粒径が均一であり、83%(wt)以上の結晶体の粒径が0.2~0.3mmであり、94%(wt)以上の結晶体の粒径が0.18~0.35mmである。
【0046】
本発明の結晶体の粒径は大きさ適当であり、製品の安定性が良く、一致性が良く、純度が高く、電解液の成分として製作されたリチウムイオン電池の性能も抜群である。
【0047】
本発明のLiPF結晶体を利用して電解液を製作する場合、LiPF結晶体の電解液中での質量百分比含有量は、好ましくて5~20wt%である。好ましくは、電解液中にはまたLiPO、LiBFも含まれる。好ましくは、LiPF:LiPO:LiBFの質量比は(50~90):(5~40):(5~30)である。好ましくは、(55~85):(10~30):(10~25)である。電解液中にはまた1,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンを含むこともでき、1,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンの電解液中での質量百分比含有量は0.1~3wt%である。電解液中にはまたエチレンカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートを含むこともでき、エチレンカーボネートやエチルメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートの電解液中での総質量百分比含有量は70~90wt%であり、且つエチレンカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートの質量比は2.5~3.5:4.5~5.5:1.5~2.5である。本発明のLiPF結晶体で製作した電解液は、安定性が良く、耐久性が良く、電池の循環性能が良いなどの長所がある。
【0048】
本発明は二つのマイクロチャンネル反応装置を利用し、マイクロチャンネル反応装置中に物質伝達促進成分を導入して、操作条件を制御するとともに、特定の結晶工程に結合して、純度が高く、均一性が良く、粒径が適当なLiPF結晶体を得る。本発明の生産工程は原料の反応が完全であって、無駄なく、十分利用でき、生産原価が低く、設備投資が少なく、生産効率が高く、収率が99.6%にも達するので、産業化大規模連続生産に適する。
【0049】
発明が解決しようとする第二の課題
本発明はマイクロチャンネル反応装置に基づく、ヘキサフルオロリン酸リチウムの連続生産システムを提供し、逆循環方式を利用して反応原料の十分利用と転化を実現するとともに、プロセス中分離・回収装置を設計して原料の消耗を低下させる。
【0050】
マイクロチャンネル反応装置は一般的にマイクロ加工と精密加工技術によって製作され、その特徴としては、相当直径桁違いがマイクロメーターとミリメーター間の流体が流れるチャンネルを有し、具体的な寸法は反応原料の物理状態や化学性能および化学反応条件によって選択し、その高さと幅はいずれも流体が流れる方向と垂直している。反応室の長さは通常比較的長いが、生産の必要に応じて選定することができる。本発明の前記マイクロチャンネル反応装置は直列型チャンネル構造または補強混合型チャンネル構造を含み、前記直列型チャンネル構造はチューブ状構造であり、前記補強混合型チャンネル構造の断面はいずれかの形状にすることができ、例えば、T型構造、Z型構造、V型構造、S型構造、球形構造、半球形構造、球形バッフル付き構造、水滴状構造、漏斗構造、三角型構造、ハート型構造または傘型構造を取ることができる。これらに限らず、且つチャンネルの相当直径が0.5mm~10mmであり、好ましくは1.5mm~3mmであり、液滞留体積は10~4000mlであり、好ましくは25~50mlである。
【0051】
マイクロチャンネル反応装置中には数多くのマイクロチャンネルがあって、極めて大きな比表面積を持たせ、通常の反応窯比表面積の数百倍、甚だしくは数千倍にも達することができ、これによって、極めて優れた熱伝導と物質伝達能力とを有し、最高熱伝導係数は1700KW/(m・K)にも達することができる。マイクロチャンネル内の反応物は壁面と高効率の熱交換を行なうことができ、温度の均一性が良く、反応床の温度は定温に近いので、PFとHF溶液中のLiF反応によって放出される熱量が早速且つ高効率に伝導されるとともに、瞬間的に吸収されるようにし、これによってヘキサフルオロリン酸リチウムが反応熱量によって、熱分解されて不溶物を形成しないようにする。反応温度はムラが小さくて安定しており、化学反応が穏やかに行なわれることに有利である。
【0052】
反応タンクなどの通常設備を利用してヘキサフルオロリン酸リチウムを製作するプロセスにおいて、HFはヘキサフルオロリン酸リチウムの表面に附着し易く、除去し難いLiPF・HFを生成し、これによって製品中の遊離酸の含有量が高くなり、生産中の難題となっている。本発明では、マイクロチャンネル反応装置を使用することによって、反応速度が速く、時間が短く、反応物の反応装置での滞留時間が5~120秒であって、通常反応中の反応時間1~10hに比べて、大きく短縮されるとともに、HFを含有する反応物が連続状態で反応槽中に入り、LiPFを含有する範応物が連続状態で反応装置から排出されるが、反応物HFおよび産物LiPFが反応装置での停留時間が短く、相互間の妨害が少なく、つまり、産物LiPFと反応物HFの接触および反応の可能性を減らし、これによって、ヘキサフルオロリン酸リチウムとHFの副反応の発生を効果的に抑制することができ、製品の遊離酸を低減する目的を達成する。
【0053】
マイクロチャンネル反応装置の小さなチャンネル寸法は重要な安全要素である。火炎の拡張はマイクロチャンネル反応装置中で抑制されるので、これらの反応装置は爆発の範囲で操作する場合でも如何なる特別な安全措置を講じなくても良い。これをフッ化水素酸溶媒法に利用してヘキサフルオロリン酸リチウムを製作する場合、火炎を抑制する問題は存在しないけれど、事故の危険性を減らし、事故の危害性を減らすことができ、操作の安全性を向上することができる。
【0054】
マイクロチャンネル反応装置の反応チャンネルの各面は反応チャンネル壁によって限定される。これらの壁は硬質材料を使用することができ、これによって、優れた耐用性、耐食性、耐高温性(200℃)、耐高圧性(100bar)を保証することができ、且つ優れた熱伝導性を有する。硬質材料としては、金属、金属合金、炭化ケイ素を使用することができ、好ましくは、ステンレスやモネル合金、ニッケル基合金、ハステロイ合金または炭化ケイ素を使用することができる。
【0055】
連続生産システムを使用することによって、通常の間歇式反応中、余分に配置される装置と転移中生じる漏れを避けることができ、安全性が高くなる。無水HFは危険性の高い化学品であり、LiFをHF中に溶解させて一連の反応を行なわせるが、その結晶化、分離、乾燥処理は危険性が比較的高い。それと同時に、ヘキサフルオロリン酸リチウム製品は水分に極めて敏感であって、湿気によって加水分解され易いので、操作が無水の環境にて行われるようにすることが極めて大切である。ということはプロセス全体における設備の優れた密封性が要求される。連続性生産システムは密封操作を実現し易く、生産効率の向上に有利である。
【0056】
本発明は、第一マイクロチャンネル反応装置(3)と第二マイクロチャンネル反応装置(6)といった、二セットのマイクロチャンネル反応装置を使用し、逆循環方式で原料の十分な反応を保証する。普通の二セットのマイクロチャンネル反応装置の直列連結にとって、通常第一マイクロチャンネル反応装置(3)の出力物フローA出力を直接第二マイクロチャンネル反応装置(6)の入力物フローとするが、これによって、反応物が反応装置に滞留する時間が長くなり、反応産物の含有量が増え、反応物フロー中の反応物含有量が低くなって、その中の反応物LiFまたはPFの反応が完全に行なわれず、返って反応産物中に反応物LiFが残留して、産物の純度を保証できなくなり、未反応のPFがHClガスとともにガスの後続処理システムに入って、水によって吸収処理されるので、原料の消耗が多くなる。本発明では第一マイクロチャンネル反応装置(3)の出力物フローを気液分離装置A(4)に送って、気液分離を行い、その中の液体、つまりヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する成分を合成液槽(5)に送って貯蔵する。分離されたガスには未反応のPFと附帯のHFとHCl成分を含み、第二マイクロチャンネル反応装置(6)中に送られる。第二マイクロチャンネル反応装置(6)中には少なくとも二つのフィードフローが含まれるが、その一は、気液分離装置A(4)によって分離されたガスであり、未反応のPFと附帯のHFとHCl成分を含み、その二は、LiFとLiPFが溶解されたHF溶液である。PFはLiFと反応が発生して、ヘキサフルオロリン酸リチウムを生成する。これから見れば、本発明の二セットのマイクロチャンネル反応装置を使用したことは簡単な直列連結ではなく、その効果も二セットのマイクロチャンネル反応装置を簡単に重ねたものではなく、原料と産物の化学反応性能を結合したものであり、第二マイクロチャンネル反応装置(6)の入力原料フローを調整することによって、副反応を制御し、原料の利用率を向上し、製品の純度を高める目的を達成する。
【0057】
この連続生産システムは五フッ化リン発生装置(2)と、第一マイクロチャンネル反応装置(3)と、気液分離装置A(4)と、第二マイクロチャンネル反応装置(6)と、気液分離装置B(7)と、を含み、PCl5ガスを含有し、且つLiFが溶解されたHF溶液を原料として、逆循環反応を通じて、前記五フッ化リン発生装置(2)から生成されたガスをマイクロチャンネル反応装置A(3)中に入れ、第一マイクロチャンネル反応装置(3)の出力物を気液分離装置A(4)に入れ、気液分離装置A(4)から分離されるガスは第二マイクロチャンネル反応装置(6)に入り、反応原料として引き続き反応が行われ、第二マイクロチャンネル反応装置(6)の出力物は気液分離装置B(7)に入り、気液分離装置B(7)から分離される液体成分は、第一マイクロチャンネル反応装置(3)中に送られる。
【0058】
ヘキサフルオロリン酸リチウム製品中に含まれている不溶物を減らし、製品の純度を向上するために、本発明の第一マイクロチャンネル反応装置中のLiFを完全に反応させ、第二マイクロチャンネル反応装置中のPFを完全に反応させる。そのために、
【0059】
第一マイクロチャンネル反応装置(3)には少なくとも二つのフィードフローが含まれる。その一つは、LiFが溶解されたHF溶液であり、その二は、PFとHClの混合ガスおよび附帯のHFガスである。さらに好ましくは、第一マイクロチャンネル反応装置(3)中のPF原料の過量を制御することによって、反応原料LiFの十分転化を保証するが、好ましくは、第一マイクロチャンネル反応装置(3)中のPFとLiFのモル比は2~5:1であり、さらに好ましくは、2.5~4:1である。
【0060】
マイクロチャンネル反応装置B(6)には少なくとも二つのフィードフローが含まれる。その一は、気液分離装置A(4)から分離されたガス、つまり、未反応のPFと附帯のHF、HClの成分であり、その二は、LiFとLiPFが溶解されたHF溶液である。第二マイクロチャンネル反応装置(6)中の原料の配合比例を調整することによって、転化率をさらに向上することができ、好ましくは、第二マイクロチャンネル反応装置(6)中のLiF原料の過量を制御することによって、反応原料PFの十分転化を保証し、好ましくは、第二マイクロチャンネル反応装置(6)中のPFとLiFのモル比を11~2とし、さらに好ましくは、1:1.1~1.3であり、さらに好ましくは、1:1.15~1.25である。
【0061】
さらに好ましくは、第一マイクロチャンネル反応装置(3)は第三フィードフローを含み、気液分離装置B(7)から液体成分が分離され、分離された液体成分はLiPFと未反応のLiFを含有する。
【0062】
さらに好ましくは、第一マイクロチャンネル反応装置(3)の出力物は気液分離装置A(4)に入り、気液分離装置A(4)によって分離される液体混合物は、次第に合成液槽(5)と結晶化槽(9)に入って、ヘキサフルオロリン酸リチウムの結晶化が行われ、結晶体のろ過後済み母液は母液槽(11)に貯蔵される。母液槽(11)中の母液は定量分析によってその中のヘキサフルオロリン酸リチウムの含有量を確定した後、LiF溶解槽(12)に送って、定量のLiF溶解液の製作を行う。ヘキサフルオロリン酸リチウムを含有するHF溶液は定量のLiFを溶解した後、第二マイクロチャンネル反応装置(6)に送って、反応を行い、第二マイクロチャンネル反応装置(6)には第三のフィードフローが含まれるが、これは、結晶体のろ過済みLiPFを含有するHF溶液である。
【0063】
要するに、本発明はマイクロチャンネル反応装置の優れた熱伝導性能を利用して、反応時間を数時間から数十秒ないし数分に短縮し、効率を著しく向上すると同時に、無水フッ化水素酸反応の安全性を保証する。また、連続生産システムを利用することによって、密閉操作を実現し易く、通常間歇式反応中に必要な余分の装置と転移中に発生する漏れを避けるとともに、生産能率の向上に有利である。そして、逆循環方式を利用して、原料と副産物を循環利用するとともに、反応原料の配合比例をさらに調整することによって、原料を十分反応させ、原料の転化率を向上し、原料の原価を低減する。さらに、HF、HCl分離システムを設置して、HFとHClを十分分離して、混合酸の処理を減らすとともに、工業用塩酸を製作し、無水HFを回収することによって、原料の消耗と三廃の処理経費を低減する。
【0064】
本発明によって製作されるヘキサフルオロリン酸リチウムは多く分野に利用されるが、好ましくは、前に記載されたように、リチウム電池の電解液の成分として使用することができる。
【0065】
発明が解決しようとする第三の課題
本発明は粒径の分布が均一で、一致性が高く、ヘキサフルオロリン酸リチウムの含有量が高い混合結晶体およびその製作方法を提供する。
【0066】
第三課題を解決するための技術手段
ヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する混合結晶体であり、前記ヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する混合結晶体のアスペクト比は1~1.5であり、結晶体の平均粒径は0.15~0.4mmであり、90%(wt)以上の前記結晶粒子中、結晶面族{110}が20~80%を占め、結晶面族{111}が20~80%を占める。前記混合結晶体には、また不溶物や遊離酸も含まれている。上記結晶面族{110}、結晶面族{111}の占める比例はそれぞれ単一結晶体において、結晶面族{110}と結晶面族{111}が当該結晶粒子の全部の結晶面中に占める比例である。
【0067】
そのうち、前記不溶物の含有量は200ppm未満であり、前記遊離酸(フッ素水素酸で計算)の含有量は90ppm以下である。
【0068】
混合結晶体のアスペクト比は好ましくて1~1.3である。
【0069】
68%(wt)以上の混合結晶体の粒径は0.2~0.3mmであり、80%(wt)以上の混合結晶体の粒径は0.18~0.35mmであり、好ましくは、80%(wt)以上の混合結晶体の粒径は0.2~0.3mmであり、90%(wt)以上の混合結晶体の粒径は0.18~0.35mmである。
【0070】
80%(wt)以上の混合結晶体中、結晶面族{110}が40~60%を占め、結晶面族{111}が40~60%を占める。
【0071】
混合結晶体の安息角は20~40°であり、さらに好ましくは20~30°である。
【0072】
混合結晶体のかさ密度は1.3~1.8g/mLであり、さらに好ましくは1.5~1.8g/mLである。
【0073】
混合結晶体中のヘキサフルオロリン酸リチウムの質量百分比含有量は99.90~99.995%であり、好ましくは99.95~99.995%であり、さらに好ましくは、混合結晶体中のヘキサフルオロリン酸リチウムの質量百分比含有量は99.99~99.995%である。
【0074】
混合結晶体中には、また、水分や硫酸塩、塩化物、金属イオンも含まれており、前記金属イオンは、Na、K、Ca、Mg、Fe、Ni、Cr、Cu、Pbを含み、水分は20ppm未満であり、硫酸塩(硫酸イオンで計算)は5ppm未満であり、塩化物(塩素イオンで計算)は2ppm以下であり、金属イオンはそれぞれ1ppmで未満あり、前記金属イオンは、Na、K、Ca、Mg、Fe、Ni、Cr、Cu、Pbを含む。
【0075】
結晶体のアスペクト比は、結晶体内部を経過する最も長い直径とそれと垂直する最も長い直径との比と理解すれば良い。アスペクト比はある程度結晶粒子の一致性を反映することができ、本発明のヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する混合結晶体のアスペクト比は比例の範囲が小さく、結晶粒子の一致性が高い。
【0076】
本発明のヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する混合結晶体は、結晶体の粒径が小さくて、分布が均一であり、ヘキサフルオロリン酸リチウムの含有量が高く、電解液への溶解に有利であり、且つ溶解時の放熱も小さくて均一である。
【0077】
本発明の結晶面族は、結晶体中の原子、イオンまたは分子の配列が全く同じであるあらゆる結晶面と理解すれば良い。本発明のヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する混合結晶体は、結晶化の傾向が一致し、結晶体の形態が均一であり、一致性が良い。
【0078】
本発明中の安息角は、重力場中、粒子が粉末体堆積層の自由斜面上で滑り移動する時に受ける重力と粒子間の摩擦力とのバランスが取れて、静止状態になった時に測定された最大角度であり、安息角が小さければ小さいほど摩擦力が小さく、流動性が良い。
【0079】
本発明のヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する混合結晶体は、かさ密度が高く、流動性が良く、塊りになり難く、電解液の生産中操作・制御し易く、溶解中の溶解熱を制御し易い。
【0080】
本発明の上記混合結晶体は前記方法やマイクロチャンネル反応装置、連続生産システムを利用して製作しており、PFを含む物質フローとLiFとHFを含む物質フローを原料として、第一マイクロチャンネル反応装置と第二マイクロチャンネル反応装置にて連続逆循環反応を行なう。
【0081】
具体的に、PFを含む第一フィードフローと、LiFとHFを含む第二フィードフローと、を第一マイクロチャンネル反応装置中に入れ、第一マイクロチャンネル反応装置中の産物におけるガス部分を第二マイクロチャンネル反応装置中に入れて、LiPFやLiFおよびHFを含む第三フィードフローと反応させ、第一マイクロチャンネル反応装置中の産物における液体部分に対する結晶化、乾燥によって、LiPFを獲得し、第二マイクロチャンネル反応装置中の産物における液体部分を第四フィードフローとして第一マイクロチャンネル反応装置に入れて、このように、逆循環反応を行なわせて、原料と副産物の十分な回収利用を促進する。
【0082】
固体結晶体はろ過後、乾燥システムに送られて乾燥と酸除去が行われる。ろ過後の母液は母液槽に貯蔵されるが、母液中にはLiPFとHFが含まれる。母液槽中の母液は分析定量によってその中のヘキサフルオロリン酸リチウムの含有量を確定した後、フッ化リチウム溶解槽に送られて定量のフッ化リチウムを製作する。フッ化リチウム溶液は第二マイクロチャンネル反応装置に入るLiPFやLiFおよびHFを含む第三フィードフローである。
【0083】
前記第一マイクロチャンネル反応装置と第二マイクロチャンネル反応装置の反応温度は0~17℃であり、好ましくは3~10℃であり、例えば、4℃、5.5℃、7℃、8℃、9℃、9.5℃であり、さらに好ましくは5~7℃である。
【0084】
第一マイクロチャンネル反応装置と第二マイクロチャンネル反応装置での停留時間は5~120sであり、好ましくは5~30sであり、さらに好ましくは5~25sである。
【0085】
本発明の連続逆循環方法を利用して製作したヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する混合結晶体において、その中の不溶物や水分、HF、金属などの不純物の含有量は厳しく制御されており、特に異なるマイクロチャンネル反応装置内の反応温度や反応時間、反応物の配合比などの反応条件を制御することによって、不溶物とHFの含有量をそれぞれ70ppm、20ppm以下に制御することができる。
【0086】
本発明によって製作されたヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する混合結晶体は純度が高く、不純物の含有量が少なくて、業界の基準を満足する。また、結晶体の粒径が小さく、粒径の分布が均一であり、結晶体の一致性が良く、且つ結晶体の流動性が良く、電解液における結晶体の溶解に有利であり、溶解放熱が小さくて均一であり、本発明の結晶体によって製作された電解液は電気化学性が良く、循環性能が良く、耐用性に優れ、倍率性能が良く、電池の高倍率充放電要求を満足する。
【0087】
発明が解決しようとする第四の課題
本発明は、LiPF結晶体と水分を含む組成物を提供する。LiPF結晶体の粒径の分布が均一であり、一致性が高く、水分の含有量が低く、製品品質の安定性が良く、リチウムイオン電池の電解液成分としての利用に適している。
【0088】
第四の課題を解決するための技術手段
組成物であって、LiPF結晶体と水分とを含み、LiPF結晶体の粒径の分布が均一であり、35~50%(wt)の結晶体の粒径が0.2mm以上、0.25mm未満であり、35~50%(wt)の結晶体の粒径が0.25mm以上、0.3mm以下であり、組成物の水分の含有量は8ppm未満である。
【0089】
好ましくは、40~50%(wt)の結晶体の粒径が0.2mm以上、0.25mm未満であり、40~50%(wt)の結晶体の粒径が0.25mm以上、0.3mm以下である。
【0090】
好ましくは、45~50%(wt)の結晶体の粒径が0.2mm以上、0.25mm未満であり、45~50%(wt)の結晶体の粒径が0.25mm以上、0.3mm以下である。
【0091】
前記組成物の製作はマイクロチャンネル反応装置を利用しており、前記方法やマイクロチャンネル反応装置および連続生産システムを利用して組成物を製作する。マイクロチャンネル反応装置は二つあり、第一マイクロチャンネル反応装置中の産物におけるガス部分は第二マイクロチャンネル反応装置に入り、第二マイクロチャンネル反応装置中の産物における液体部分は第一マイクロチャンネル反応装置に入る。
【0092】
本発明組成物中の水分含有量は好ましくは7ppm未満であり、さらに好ましくは6ppm、5ppm、4ppm、3ppm、2ppm、1ppm未満である。本発明組成物中のLiPF結晶体含有量は99.99%(wt)以上にも達する。結晶体の粒径は均一であり、大きさが適当である。本発明の製品は安定性が良く、一致性が良く、純度が高く、水分の含有量が低く、電解液成分として製作されたリチウムイオン電池は性能が抜群である。
【0093】
『GB7746-2011工業無水フッ化水素』中、I類無水フッ化水素の水分含有量は50ppm以下である。しかし、50ppmの水分含有量は依然として高純度低含水量のヘキサフルオロリン酸リチウム製品が原料性質に対する要求を満たすことができない。ヘキサフルオロリン酸リチウムの生産において、水分の存在は副産物を増やし、製品中のヘキサフルオロリン酸リチウムの含有量を低下し、不純物を増やす。
【0094】
本発明の無水フッ化水素はF2発泡法を利用して水の含有量を制御する。発泡時間は0.5~5hであり、温度は-15~-30℃であり、F2流量は2~800g/Hrである。F2はフッ化水素中の水分と反応が発生して、フッ化水素と二フッ化酸素OF2ガスとを生成し、OF2は非常に低い沸点(-145℃)を有するとともに、反応後揮発・除去し易い。
【0095】
本発明の発泡処理後、無水フッ化水素の水分含有量は10ppm未満であり、好ましくは8ppm未満、さらに好ましくは5ppm、2ppm、1ppm未満である。
【0096】
本発明のF2発泡法によるフッ化水素中の水除去は非常に徹底的であり、伝統的な分留などの方法に比べて、設備に対する要求が低く、原価が低く、工程が簡単で、効果が良い。
【0097】
本発明の組成物を生産する時に、第一マイクロチャンネル反応装置と第二マイクロチャンネル反応装置との反応温度を0~17℃に制御する。第一マイクロチャンネル反応装置と第二マイクロチャンネル反応装置とでの滞留時間を5~120秒とする。第一マイクロチャンネル反応装置中の産物における液体部分は結晶槽に入って結晶化される前に、先ず合成槽に入れて貯蔵する。第一マイクロチャンネル反応装置中の産物における液体部分は、結晶化と乾燥を経て組成物を獲得するが、その乾燥は乾燥による酸除去プロセスである。
【0098】
乾燥後は熱処理を行う。乾燥後の産物を加熱炉に入れて、熱処理をし、ここでの熱処理を通じて、純度のもっと高いヘキサフルオロリン酸リチウム結晶粒子の組成物を獲得する。加熱炉の内部を真空状態にしてから、五フッ化リンガスを充填し、加熱時間を1~3h、温度を85~100℃、圧力を大気圧にして、室温まで冷やし、容器内部を真空状態にすることによって組成物を獲得する。
【0099】
本発明は二つのマイクロチャンネル反応装置を使用し、マイクロチャンネル反応装置中に物質伝達促進成分を導入し、操作条件を制御するとともに、無水フッ化水素原料中の水分に対する正確な制御および特定の結晶化工程と乾燥工程とによって、純度が高く、均一性が良く、粒径が適当で、水分の含有量が低いLiPF結晶体組成物を獲得する。本発明の生産工程は、原料の反応が完全であり、無駄がなく、十分利用でき、生産原価が低く、設備の投資が少なく、生産効率が高く、LiPFの収率が99.6%以上にも達し、産業化大規模連続生産に適する。
【0100】
本発明の組成物をリチウムイオン電池の電解液成分として使用すると、電池の性能が抜群であり、安定性や耐久性がもっと良く、電池の循環性能がもっと良いなどの長所がある。
【0101】
発明が解決しようとする第五の課題
本発明は非水電解液の性能を向上し、既存技術中の非水電解液の高温循環性能および高温貯蔵性が良くない問題を解決するため、リチウム二次電池用の非水電解液およびリチウム二次電池を提供して、リチウム二次電池の性能を向上するとともに、高温下でのリチウム二次電池の循環性能と貯蔵性能をさらに向上する。
【0102】
第五課題を解決するための技術手段
本発明は非水電解液を提供し、前記非水電解液はリチウム塩と有機溶媒を含み、前記リチウム塩はヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する混合結晶体であり、前記混合結晶体のアスペクト比は1~1.5であり、結晶体に平均粒径は0.15~0.4mmであり、90%以上の前記結晶粒子中、結晶面族{110}が20~80%を占め、結晶面族{111}が20~80%を占め、前記混合結晶体には、また不溶物と遊離酸も含まれている。上記結晶面族{110}と結晶面族{111}が占める比例はそれぞれ単一の結晶粒子中において、結晶面族{110}と結晶面族{111}が当該結晶粒子の全部の結晶面中に占める比例である。
【0103】
本発明の非水電解液中、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は0.6~2mol/Lであり、好ましくは0.9~1.4mol/Lである。
【0104】
そのうち、混合結晶体中、前記不溶物の含有量は<200ppmであり、前記遊離酸(フッ化水素で計算)の含有量は<90ppmである。
【0105】
混合結晶体のアスペクト比は好ましくは1~1.3である。
【0106】
68%(wt)以上の混合結晶体の平均粒径は0.2~0.3mmであり、80%(wt)以上の混合結晶体の平均粒径は0.18~0.35mmである。
【0107】
80%(wt)以上の混合結晶体中、結晶面族{110}が40~60%を占め、結晶面族{111}が40~60%を占める。
【0108】
混合結晶体の安息角は20~40°であり、さらに好ましくは20~30°である。
【0109】
混合結晶体のかさ密度は1.3~1.8g/mLであり、さらに好ましくは1.5~1.8g/mLである。
【0110】
混合結晶体中、ヘキサフルオロリン酸リチウムの質量百分比含有量は99.90~99.995%であり、好ましくは99.95~99.995%であり、さらに好ましくは、混合結晶体中、ヘキサフルオロリン酸リチウムの質量百分比含有量は99.99~99.995%である。
【0111】
混合結晶体中は、また水分や硫酸塩、塩化物、金属イオンを含み、前記金属イオンは、Na、K、Ca、Mg、Fe、Ni、Cr、Cu、Pbを含み、水分が20ppm未満、硫酸塩(硫酸イオンで計算)が5ppm未満、塩化物(塩素イオンで計算)が2ppm以下、金属イオンがそれぞれ1ppm未満、前記金属イオンは、Na、K、Ca、Mg、Fe、Ni、Cr、Cu、Pbを含む。
【0112】
本発明のヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する混合結晶体は、結晶粒子が小さくて分布が均一であり、ヘキサフルオロリン酸リチウムの含有量が高く、電解液中の溶解に有利であり、且つ溶解放熱が小さくて均一である。本発明のヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する混合結晶体は、比表面積が小さく、かさ密度が高く、安息角が小さく、流動性が良く、塊りになり難く、電解液の生産中、操作・制御し易く、溶解中の溶解熱を制御し易い。本発明のヘキサフルオロリン酸リチウム混合結晶体の結晶体構造は、ヘキサフルオロリン酸リチウムの加水分解敏感性を小さくすることによって、HFの生成を抑制し、電池中の電気化学システムを保護し、リチウム二次電池の高温貯蔵性能と高温循環性能を著しく向上する。
【0113】
本発明のヘキサフルオロリン酸リチウム混合結晶体で製作した電解液は、電気化学性能が高く、循環性能が良く、耐用期間が長く、倍率性能が高く、電池の高倍率充放電の要求を満たすことができる。
【0114】
本発明中、前記非水電解液はまた添加剤を含み、100%重量の電解液に対し、前記添加剤の添加量は0.01~5%であり、好ましくは0.2~3%である。
【0115】
本発明の電解液に使用される添加剤はジフルオロリン酸リチウムやビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム塩およびフルオロカーボネート中の少なくとも二つを含み、好ましくは、添加剤はジフルオロリン酸リチウムやビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム塩およびフルオロカーボネートの混合物であり、さらに好ましくは、100%重量の電解液に対し、前記ジフルオロリン酸リチウムやビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム塩およびフルオロカーボネートの重量比は1:0.5~1.5:2.5~3.5である。
【0116】
本発明のヘキサフルオロリン酸リチウム混合結晶体を電解質とし、且つ添加剤のジフルオロリン酸リチウムやビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム塩およびフルオロカーボネートとの相互協同によって、非水電解液およびリチウム二次電池の高温循環性能や高温貯蔵性能および低温出力性能を改善することができる。
【0117】
前記フルオロカーボネートはフルオロエチレンカーボネートおよび/またはトリフルオロプロピレンカーボネートを含み、さらに好ましくは、フルオロエチレンカーボネートとトリフルオロプロピレンカーボネートとの重量比は1:1~6であり、好ましくは1:1~3である。
【0118】
本発明の非水電解液中、前記添加剤は、またビス(4-フルオロフェニル)スルホンを含み、前記ビス(4-フルオロフェニル)スルホンの添加量は前記添加剤総重量の0~30%を占め、好ましくは0.8~15%である。ビス(4-フルオロフェニル)スルホンは正極表面と負極表面上のSEI膜を形成することによって、電解液溶液の連続の酸化と還元を防げ、電解液の高温環境における耐用性を向上する。特に、電解液の高電圧特性を向上する。
【0119】
本発明の非水電解液の前記添加剤は、また金属フッ化物も含み、金属フッ化物はLiF、RbF、TiF、AgFおよびその組成物中のいずれかの一つから選択され、前記金属フッ化物の添加量は前記添加剤総重量の0~30%であり、好ましくは0.8~15%である。金属フッ化物は正極の活性物質と電解質との反応を抑制し、電池の容量が急激に下がる現象を抑制する。
【0120】
前記有機溶媒は環状カーボネートおよび/または鎖状カーボネートの非水溶媒である。
【0121】
好ましくは一つ以上の環状カーボネート系溶媒および/または鎖状カーボネート系溶媒である。具体的にいうと、環状カーボネート系溶媒はエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(FEC)中のいずれかの一つ、またはそれらの二つまたはそれ以上の混合物から選択されるが、本発明はこれに限らず、環状カーボネートの組成物としては、好ましくは、ECおよびVC、ECおよびFEC、PCおよびVCの組成物であり、各組成物中、各成分の体積比は1:0.1~10であり、好ましくは1:0.2~5である。
【0122】
前記鎖状カーボネート系溶媒はジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)中のいずれかの一つ、またはそれらの二つまたはそれ以上の混合物から選択されるが、本発明はこれらに限らない。鎖状炭酸エステルの組成物として、好ましくは、EMCおよびDEC、MPCおよびDPC、DMCおよびEMCの組成物であり、各組成物中の各成分の体積比は1:0.1~10であり、好ましくは1:0.2~5である。
【0123】
さらに好ましくは、前記有機溶媒は環状カーボネートと鎖状カーボネートの混合物であり、前記環状カーボネートと鎖状カーボネートの体積比は1:1~9であり、好ましくは1:1.2~4である。
【0124】
有機溶媒は環状カーボネート系溶媒と鎖状カーボネート系溶媒との混合物であり、特に上記配合比例の作用の下で、高温条件下での電解液の循環特性を著しく向上し、出力性能を向上することができる。
【0125】
本発明の前記ヘキサフルオロリン酸リチウムの混合結晶体は、前記方法やマイクロチャンネル反応装置、連続生産システムによって製作される。
【0126】
前記非水電解液に基づき、本発明はまた前に記載の非水電解液を含むリチウム二次電池を提供する。
【0127】
リチウム二次電池は、相互向き合って設置される正極活性材料を含む正極と、負極活性材料を含む負極と、正極と負極との間に挟まれるセパレータと、非水電解液と、を含む。
【0128】
正極は、正極活性材料と導電剤と粘着剤とを混合して形成する活性材料層と、正極集電体に実施される正極コーティング組成物、例えばアルミニウムホイルが圧延された組成物からなる。
【0129】
リチウム二次電池の正極活性材料は、具体的には、リチウムと、コバルト、マンガン、ニッケル、またはアルミニウム系金属中の少なくとも一つと、で構成されるリチウム複合金属酸化物である。このようなリチウム複合金属酸化物の例としては、リチウム-コバルト系酸化物(例えばコバルト酸リチウム)、リチウム-マンガン系酸化物(例えばマンガン酸リチウム)、リチウム-ニッケル系酸化物(例えばニッケル酸リチウム)、リチウム-ニッケル-マンガン系酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト系酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト-遷移金属(?)酸化物などがあり、且つこれらのいずれかの一つまたはこれらの二つまたはそれ以上の混合物を含むことができる。
【0130】
正極の導電剤に対しては特別な制限はなく、化学的変化が発生しない電子導電材料であれば良い。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛)、黒鉛、人造黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどからなる。
【0131】
粘着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)、スルホン化EPDM、フェニルエチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、各種共重合体、および類似物からなる。
【0132】
負極は本分野において既知の方法で製作する。例えば、負極は負極活性材料を、つまり粘着剤で混合した導電剤で形成される負極活性材料層を負極集電体上にコーティングすることによって製作される。負極活性材料としては、可逆的にリチウムイオンの挿入/脱離ができる化合物を使用することができ、例えば、遊離リチウム金属、可逆的リチウムイオンの挿入/脱離ができる炭素材料、金属またはリチウムの当該金属との合金、金属複合酸化物、リチウムのドーピングまたは未ドーピングの材料、および遷移金属酸化物で構成されるグループ中の少なくとも一つからなる。
【0133】
電池用のセパレータに対しては、特別な制限はなく、ポリプロピレン、ポチエチレンを使用することができる。
【0134】
リチウム二次電池は通常の方法で製作することができ、多くの周知の正極材料や負極材料およびセパレータを使用して製作する。本発明によって提供される非水電解液を含むリチウム二次電池は、リチウムイオン電池またはリチウム重合体電池からなり、タイプによっては、カラム形、プリズム形、コイン型、袋型などに分けられ、寸法によってはブロック型とフィルム型に分けられ、本発明の実施形態による電解液は種類を問わず、いずれも使用できる。
【0135】
本発明によって提供される非水電解液とリチウム二次電池は、電気化学性能が良く、循環性が良く、耐用期間が長く、倍率性能が良く、電池の高倍率充放電の要求を満たすことができ、且つ高温の下で優れた循環性能と貯蔵性能を有するだけでなく、低温出力性能も著しく向上される。
【0136】
本発明の非水電解液を含むリチウム二次電池は、電話や携帯電話、ノートブックPC、デジタルカメラ、携帯式ビデオカメラなどのモバイル設備、電動自動車、ハイブリッド自動車、および中型または大型エネルギー貯蔵システムなどに幅広く使用されている。
【0137】
発明が解決しようとする第六の課題
本発明は安定性の高いフッ素含有電解液を提供するが、この電解液は含水量が低く、一致性が良く、溶解性が良く、電極の表面に均一な膜を形成して、電池の耐久性が良い。
【0138】
第六課題を解決するための技術手段
フッ素含有電解液であって、前記電解液はヘキサフルオロリン酸リチウムを含み、フッ素含有電解液の製作に使用されるヘキサフルオロリン酸リチウムは、68%(wt)以上の粒径が0.2mm以上、0.3mm以下であり、ヘキサフルオロリン酸リチウムの水分含有量が6ppm未満である。好ましくは、80%(wt)以上のヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体の粒径が0.18~0.35mmである。
【0139】
好ましくは、フッ素含有電解液の製作に使用されるヘキサフルオロリン酸リチウムは、75%(wt)以上の粒径が0.2mm以上、0.3mm以下であり、好ましくは、85%(wt)以上のヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体の粒径が0.18~0.35mmである。
【0140】
さらに好ましくは、フッ素含有電解液の製作に使用されるヘキサフルオロリン酸リチウムは、80%(wt)以上の粒径が0.2mm以上、0.3mm以下であり、90%(wt)以上のヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体の粒径が0.18~0.35mmである。
【0141】
さらに好ましくは、フッ素含有電解液の製作に使用されるヘキサフルオロリン酸リチウムは、85%(wt)以上の粒径が0.2mm以上、0.3mm以下であり、95%(wt)以上のヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体の粒径が0.18~0.35mmである。
【0142】
さらに好ましくは、フッ素含有電解液の製作に使用されるヘキサフルオロリン酸リチウムは、90%(wt)以上の粒径が0.2mm以上、0.3mm以下であり、99%(wt)以上のヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体の粒径が0.18~0.35mmである。
【0143】
好ましくは、ヘキサフルオロリン酸リチウムの水分含有量は5ppm未満であり、さらに好ましくは、ヘキサフルオロリン酸リチウムの水分含有量は4ppm、3ppm、2ppm、1ppm未満である。
【0144】
フッ素含有電解液に使用されるヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体の粒径分布は均一であり、30~50%(wt)の結晶体粒径が0.2mm以上、0.25mm以下であり、30~50%(wt)の結晶体粒径が0.25mm以上、0.3mm以下であり、好ましくは、35~50%(wt)の結晶体粒径が0.2mm以上、0.25mm未満であり、35~50%(wt)の結晶体粒径が0.25mm以上、0.3mm以下であり、好ましくは、40~50%(wt)の結晶体粒径が0.2mm以上、0.25mm未満であり、40~50%(wt)の結晶体粒径が0.25mm以上、0.3mm以下である。
【0145】
フッ素含有電解液中、ヘキサフルオロリン酸リチウムの質量百分比含有量は5~20wt%であり、好ましくは、6~18wt%であり、さらに好ましくは、8~16wt%、9~15wt%、10~13wt%である。
【0146】
フッ素含有電解液中には、またLiPO、LiBF、LiBF、LiPF、LiFSI、LiTFSI、LiAsF、LiClO、LiSOCF、LiCBC、LiFBC、LiPO、LiPF、LiPFおよびLiPF中の少なくとも一つのフッ素含有リチウム塩を含み、フッ素含有電解液中での質量百分比含有量は0.1~5wt%である。上記フッ素含有リチウムを入れることによって、電解液の導電率や安定性、フィルム加工性を向上し、電池の循環性能と耐久性を改善することができる。
【0147】
好ましくは、フッ素含有電解液中には、またLiPOとLiBFとが含まれ、ヘキサフルオロリン酸リチウム:LiPO:LiBFの質量比は(50~90):(5~40):(5~30)であり、好ましくは、(55~85):(10~30):(10~25)である。
【0148】
好ましくは、フッ素含有電解液中には、また1,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンを含む。
【0149】
好ましくは、本発明中、1,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンのフッ素含有電解液における質量百分比含有量は0.1~3wt%である。1,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンを添加することによって、本発明の電解液が電極に対する浸透性、フィルム加工性などが高くなり、フッ素含有電解液に優れた安定性と安全性を持たせる。好ましくは、1,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンのフッ素含有電解液における質量百分比含有量は0.5~2wt%である。
【0150】
フッ素含有電解液中には、エチレンカーボネートやメチルエチルカーボネートおよびジエチルカーボネートが含まれ、エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、およびジエチルカーボネートがフッ素含有電解液における総質量百分比含有量は70~90wt%であり、且つエチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、およびジエチルカーボネートの質量比は2.5~3.5:4.5~5.5:1.5~2.5である。エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、およびジエチルカーボネートは共同に本発明電解液中の非水溶媒として、シナジー効果があり、その効果は、エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、およびジエチルカーボネートを単独に使用することに比べて優れている。好ましくは、エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、およびジエチルカーボネートがフッ素含有電解液における総質量百分比含有量は75~80wt%であり、且つエチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、およびジエチルカーボネートの質量比は2.8~3.2:4.8~5.2:1.8~2.2である。
【0151】
本発明中のヘキサフルオロリン酸リチウムは、前記方法やマイクロチャンネル反応装置および連続生産システムによって製作される。
【0152】
本発明において、オプションで、フッ素含有電解液中にはジエチルエーテルを含ませることもできる。その質量百分比は0~15wt%であって、イオンの伝導性を調節することができる。オプションで、ジエチルエーテルの質量百分比は2~5wt%である。
【0153】
本発明において、オプションで、フッ素含有電解液中にはトリフルオロメチルエチルスルホンを含ませることもできる。その質量百分比は0~20wt%であって、電池の循環性能と耐久性とを向上することができる。オプションで、トリフルオロメチルエチルスルホンの質量百分比は5~10wt%である。
【0154】
本発明において、電解液の製作に使用される各成分はいずれも乾燥または純化などの脱水段階を経る。本発明のフッ素含有電解液製品の含水量は6ppm未満であり、好ましくは、5ppm、4ppm、3ppm、2ppm、1ppm未満である。
【0155】
好ましくは、本発明のフッ素含有電解液は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、LiPO、LiBF、エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、およびジエチルカーボネートだけで構成される。
【0156】
好ましくは、本発明のフッ素含有電解液は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、LiPO、LiBF、1,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、およびジエチルカーボネートだけで構成される。
【0157】
好ましくは、本発明のフッ素含有電解液は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、LiPO、LiBF、1,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジエチルエーテル、およびトリフルオロメチルエチルスルホンだけで構成される。
【0158】
本発明のフッ素含有電解液は普通の大規模方法で生産する。
【0159】
さらに、本発明のフッ素含有電解液を使用したリチウムイオン電池は、正極、負極、電解液を含む。
【0160】
本発明において、電解液の製作に使用されるヘキサフルオロリン酸リチウムには粉末状のヘキサフルオロリン酸リチウムは含まれていない。ヘキサフルオロリン酸リチウムは粒径が均一であり、流動性が良く、貯蔵中と製作中とに変質し難い。ヘキサフルオロリン酸リチウムは、粒径が適当であり、流動性が良く、製作中操作し易く、溶解効果が良く、製作効率も高い。ロット別製品は一致性が良く、品質が安定であり、製品の性質が優れている。
【0161】
本発明において、フッ素含有電解液中の各成分は、シナジー効果があり、フッ素含有電解液に高い安定性、優れた耐久性、優れた電池循環性能を持たせるなどの長所がある。本発明のフッ素含有電解液は、含水量が低く、安全性が高く、安定性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0162】
図1は本発明のLiPF生産工程フローチャートである。
図2は実施例2.1のヘキサフルオロリン酸リチウム連続生産システムのフローチャートである。
図3は実施例2.2のヘキサフルオロリン酸リチウム連続生産システムのフローチャートである。
図4は実施例3.1、5.1により製作されたヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する混合結晶体のSEM図である。
図5は実施例3.1により製作されたヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する混合結晶体のSEM図である。
図6は実施例3.1により製作されたヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する混合結晶体のXRD図である。
【0163】
図中の符号:1-固体輸送機、2-五フッ化リン発生装置、3-第一マイクロチャンネル反応装置、4-第一気液分離装置、5-合成液槽、6-第二マイクロチャンネル反応装置、7-第二気液分離装置、8-分離システム、9-結晶化槽、10-乾燥システム、11-母液槽、12-フッ化リチウム溶解槽。
【発明を実施するための形態】
【0164】
以下、実施例を挙げて本発明の生産工程をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限るものではない。
【0165】
実施例1.1
五塩化リンを計量装置付き固体輸送機1で冷却ジャケット付きフッ化水素が入っている五フッ化リン反応装置2中に輸送し、温度を0℃ぐらいに制御し、五塩化リンとフッ化水素との反応によって五フッ化リンとフッ化水素を生産する。五フッ化リン、塩化水素およびフッ化水素を附帯する混合ガスを第一マイクロチャンネル反応装置3中に入れて、第一フィードフローを構成する。冷却ジャケットとミキサー付き溶液槽中にフッ化水素を入れて、冷却しながら固体添加装置で溶液槽の中にフッ化リチウムを入れ、溶解温度を0℃ぐらいに制御し、フッ化リチウムの質量分数を2wt%とする。ポンプでフッ化リチウムが溶解されたフッ化水素溶液を第一マイクロチャンネル反応装置3中に輸送して、第二フィードフローを構成する。第一マイクロチャンネル反応装置3の反応温度を3℃とし、滞留時間を5秒とする。。第一マイクロチャンネル反応装置3から出る気液混合物は第一気液分離装置4中に入り、第一気液分離装置4中の液体は合成槽5に送られて貯蔵され、第一気液分離装置によって分離されたガス中の未反応の五フッ化リン、塩化水素および附帯のフッ化水素があり、これらの混合ガスは第二マイクロチャンネル反応装置6中に輸送されて、LiPF、LiFおよびHFを含有する第三フィードフローと反応が行われる。第二マイクロチャンネル反応装置6の反応温度を3℃とし、滞留時間を5秒とする。第二マイクロチャンネル反応装置中の気液混合物は第二気液分離装置7に入り、第二気液分離装置7から出るガスには塩化水素と附帯のフッ化水素が含有されており、この混合ガスは増圧設備を通じて、フッ化水素と塩化水素分離システム8とに送られる。第二気液分離装置7から分離される液体には原母液中のヘキサフルオロリン酸リチウム、新たな反応によって生成されるヘキサフルオロリン酸リチウムおよび未反応のフッ化リチウムが含有されている。この混合液を第一マイクロチャンネル反応装置3中に輸送して、第四フィードフローとする。合成液槽5中の合成液を結晶化槽9中に輸送して、ヘキサフルオロリン酸リチウムに対する結晶化を行い、冷却状態でヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体を得る。結晶化槽9において、合成液の冷却速度を2℃/hとし、ミキサーの攪拌速度を50rpmとし、合成液を20℃から-45℃まで下げて、-45℃まで冷却してから6時間保持する。その後、固体結晶体をろ過してから乾燥システム10に送って乾燥・酸除去を行うことによって、ヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体を得る。ろ過済み母液を母液槽11中に貯蔵する。母液槽11中の母液は分析・定量を経てその中のヘキサフルオロリン酸リチウムの含有量を確定した後、フッ化リチウム溶解槽12中に送って定量のフッ化リチウム溶液の製作を行う。ヘキサフルオロリン酸リチウムを含有するフッ化水素溶液は定量のフッ化リチウムを溶解した後、第二マイクロチャンネル反応装置6中に送られて反応が行われ、第三フィードフローを構成する。第一マイクロチャンネル反応装置中の五フッ化リンとフッ化リチウムのモル比を2:1とし、第一マイクロチャンネル反応装置中の五フッ化リンとフッ化リチウムのモル比とを1:1する。
【0166】
測定の結果、生成されたヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体の純度が99.9%、収率が99.6%であり、82%(wt)以上の結晶体の粒径が0.2~0.3mmであり、91%(wt)以上の結晶体の粒径が0.18~0.35mmであった。
【0167】
実施例1.2
本実施例と実施例1.1生産工程との違いは、第一マイクロチャンネル反応装置の反応温度を5℃とし、滞留時間を10秒とし、第二マイクロチャンネル反応装置の反応温度を8℃とし、滞留時間を10秒とすることである。
【0168】
測定の結果、生成されたヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体の純度が99.994%、収率が99.8%であり、85%(wt)以上の結晶体の粒径が0.2~0.3mmであり、93%(wt)以上の結晶体の粒径が0.18~0.35mmである。
【0169】
実施例1.3
本実施例と実施例1.2生産工程との違いは、第一マイクロチャンネル反応装置中の五フッ化リンとフッ化リチウムとのモル比を2.5:1とし、第二マイクロチャンネル反応装置中の五フッ化リンとフッ化リチウムとのモル比を1:1.1とすることである。
【0170】
測定の結果、生成されたヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体の純度が99.995%、収率が99.8%であり、85%(wt)以上の結晶体の粒径が0.2~0.3mmであり、94%(wt)以上の結晶体の粒径が0.18~0.35mmである。
【0171】
実施例1.4
本実施例と実施例1.1生産工程との違いは、第一マイクロチャンネル反応装置の反応温度を4℃とし、滞留時間を10秒とし、第二マイクロチャンネル反応装置の反応温度を6℃とし、滞留時間を12秒とすることである。
【0172】
測定の結果、生成されたヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体の純度が99.995%、収率が99.85%であり、85%(wt)以上の結晶体の粒径が0.2~0.3mmであり、94%(wt)以上の結晶体の粒径が0.18~0.35mmである。
【0173】
実施例1.5
本実施例と実施例1.1生産工程との違いは、結晶化槽において、合成液の冷却速度を35℃/hとし、ミキサーの攪拌速度を800rpmとし、合成液を25℃から-10℃まで下げて、-10℃まで冷却してから1時間保持することである。
【0174】
測定の結果、生成されたヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体の純度が99.994%、収率が99.83%であり、86%(wt)以上の結晶体の粒径が0.2~0.3mmであり、92%(wt)以上の結晶体の粒径が0.18~0.35mmである。
【0175】
比較例1.1
本比較例と実施例1.1生産工程との違いは、第一マイクロチャンネル反応装置に入れる第一フィードフローを純化済みPFとすることである。
【0176】
測定の結果、生成されたヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体の純度が99.91%、収率が99.3%であり、70%(wt)以上の結晶体の粒径が0.2~0.3mmであり、75%(wt)以上の結晶体の粒径が0.18~0.35mmである。
【0177】
比較例1.2
本比較例と実施例1.1生産工程との違いは、第一マイクロチャンネル反応装置に入れる第一フィードフローを純化済みPFとし、第二マイクロチャンネル反応装置を設置せず、第一マイクロチャンネル反応装置中の五フッ化リンとフッ化リチウムとのモル比を1.5:1とすることである。
【0178】
測定の結果、生成されたヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体の純度が99.85%、収率が99.3%であり、62%(wt)以上の結晶体の粒径が0.2~0.3mmであり、67%(wt)以上の結晶体の粒径が0.18~0.35mmである。
【0179】
比較例1.3
本比較例と実施例1.1生産工程との違いは、第一と第二マイクロチャンネル反応装置をそれぞれ第一と第二反応窯に替えた後、間歇式生産を行い、第一と第二反応窯の反応時間を5時間まで伸ばすことである。
【0180】
測定の結果、生成されたヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体の純度が99.7%、収率が95.6%であり、55%(wt)以上の結晶体の粒径が0.2~0.3mmであり、60%(wt)以上の結晶体の粒径が0.18~0.35mmである。
【0181】
比較例1.4
本比較例と実施例1.1生産工程との違いは、結晶化槽において、合成液の冷却速度を10℃/hとし、ミキサーの攪拌速度を100rpmとし、合成液を25℃から-45℃まで下げて、-45℃まで冷却してから6時間保持することである。
【0182】
測定の結果、生成されたヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体の純度が99.96%、収率が99.5%であり、72%(wt)以上の結晶体の粒径が0.2~0.3mmであり、80%(wt)以上の結晶体の粒径が0.18~0.35mmである。
【0183】
実施例2.1~2.3に対する共同説明
実施例2.1~2.3は、マイクロチャンネル反応装置に基づく、ヘキサフルオロリン酸リチウムの連続生産システムを提供するが、当該連続生産システムはPF発生装置(2)、第一マイクロチャンネル反応装置(3)、気液分離装置A(4)、第二マイクロチャンネル反応装置(6)、気液分離装置B(7)を含み、PFを含有するガスとLiFとが溶解されたHF溶液を原料として逆循環反応を行なう。そのうち、第一マイクロチャンネル反応装置(3)と第二マイクロチャンネル反応装置(6)とは同じ構造の反応装置であり、補強混合型チャンネル構造であり、チャンネルの断面形状はハート型構造であり、チャンネルの相当直径が2mmであり、液滞留体積が50mlであり、チャンネル壁の硬質材料は炭化ケイ素である。
【0184】
上記連続生産システムにおいて、好ましくは、PClを計量装置付き固体輸送機(1)でHFが貯蔵されているPF発生装置(2)中に輸送し、PCl5とHFとの反応によってPFと副産物のHClが生成されるが、化学式(1)のとおりである。さらに、固体輸送機(1)は、好ましくは計量装置付き固体輸送機(1)である。HFが貯蔵されているPF発生装置(2)は、好ましくはHFが貯蔵されている冷却ジャケット付きPF発生装置(2)であり、さらに好ましくは、攪拌装置付きである。
5HF+PCl→5HCl+PF (1)
【0185】
5フッ化リン発生装置(2)から生成される混合ガスPF、HCl、および附帯のHFガスをマイクロチャンネル反応装置A(3)中に入れると同時に、第一マイクロチャンネル反応装置(3)中にポンプでLiFが溶解されたHF溶液を輸送する。PFはHF溶液中のLiFと迅速に反応が行われて、反応熱を放出するが、化学式(2)のとおりである。
LiF(液)+PF(気)→LiPF (2)
【0186】
第一マイクロチャンネル反応装置から出る気液混合物は、主に目標産物ヘキサフルオロリン酸リチウム、未反応のPFおよび反応に参与していないHCl、HFを含む。
【0187】
第一マイクロチャンネル反応装置(3)から出る気液混合物は、気液分離装置A(4)に入り、気液分離を行い、その中の液体、つまりヘキサフルオロリン酸リチウム成分を合成液槽(5)に輸送して貯蔵する。分離されたガス、つまり未反応のPFおよび附帯のHF、HClを含有する成分を第二マイクロチャンネル反応装置(6)に輸送して、その中にLiFとLiPFとが溶解されているHF溶液と反応させる。PFとHF溶液中のLiFとは迅速に反応が行われて、反応熱を放出するが、化学式(3)のとおりである。
LiF+PF(気)→LiPF (3)
【0188】
第二マイクロチャンネル反応装置(6)から出る気液混合物は主に目標産物ヘキサフルオロリン酸リチウムおよびHCl、HFを含む。
【0189】
第二マイクロチャンネル反応装置(6)から出る気液混合物は気液分離装置B(7)に入り、気液分離装置B(7)によって分離されたガスにはHClおよびHFが含まれ、分離された液体にはヘキサフルオロリン酸リチウムおよび未反応のLiFが含まれている。
【0190】
好ましくは、気液分離装置B(7)から分離されたガスを増圧設備でHF、HCl分離システム(8)に輸送する。分離システム(8)上部のHClは水に吸収されて工業塩酸となり、底部のHFは反応原料として循環使用が可能となる。前記HF、HCl分離システム(8)は好ましくは分離塔である。
【0191】
気液分離装置B(7)から分離される液体、つまりヘキサフルオロリン酸リチウムおよび未反応のLiFを含有する混合液を第一マイクロチャンネル反応装置(3)に輸送して、引き続きその中のPFと反応させて、混合液中のLiFが完全に反応されるようにする。
【0192】
合成液槽(5)中の合成液を結晶化槽(9)に輸送してヘキサフルオロリン酸リチウムの結晶化を行い、冷却状態でヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体を得る。結晶体を、ろ過後、乾燥システム(10)に送って、乾燥・酸除去を行なうことによって、ヘキサフルオロリン酸リチウム製品を得る。
【0193】
さらに好ましくは、ろ過済み母液を母液槽(11)に貯蔵し、母液槽(11)中の母液を、定量分析を経てその中のヘキサフルオロリン酸リチウムの含有量を確定した後、LiF溶解槽(12)に送って、定量のLiF溶解液の製作を行い、ヘキサフルオロリン酸リチウムを含有するHF溶液で定量のLiFを溶解した後、第二マイクロチャンネル反応装置(6)に送って反応を行なわせる。このように反応システムは連続的に運行できる。
【0194】
上記ヘキサフルオロリン酸リチウムの連続生産システムで製作したヘキサフルオロリン酸リチウム製品は、更なる純化が要らなく、高純度製品を獲得でき、純度が99.98%以上に達し、好ましくは、99.98%以上にも達する。含まれる不純物種類および含有量は以下のとおりである。水分が20ppm以下、好ましくは15ppm以下であり、遊離酸(HFで計算)が90ppm以下、好ましくは80ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下であり、不溶物が200ppm以下、好ましくは160ppm以下、さらに好ましくは110ppm以下であり、硫酸塩(SOで計算)が5ppm以下、好ましくは4ppm以下であり、塩化物(Clで計算)が2ppm以下であり、その他の各種金属イオンが1ppm以下である。
【0195】
実施例2.1
以下図2に基づいて、実施例2.1に対してさらに詳しく説明することにする。冷却ジャケットとミキサー付き溶液槽において、ポンプでHFを輸送し、冷却しながら固体添加装置にLiFを添加するが、LiFの添加速度はHFの温度が0℃になるようにし、LiFの濃度を5wt%とし、それと同時に、計量装置付き固体輸送機(1)でPClをHFが貯蔵された五フッ化リン発生装置(2)中に輸送して、PFガスを生成する。加圧状態下で、LiFが溶解されたHF溶液とPFガスとをポンプで第一マイクロチャンネル反応装置(3)に輸送する。第一マイクロチャンネル反応装置(3)中の反応物PFとLiFとのモル比を2:1とし、反応物滞留時間を30秒とし、反応温度を15℃とする。反応物は連続状態で第一マイクロチャンネル反応装置(3)に入り、出力物も連続状態で出力され、気液分離装置A(4)に入って、気液分離が行われ、分離された液体産物、つまりヘキサフルオロリン酸リチウムを含む成分は、合成液槽(5)に輸送されて使用に備える。分離された気体産物、つまり未反応のPFおよび附帯のHF、HClを含む成分は、第二マイクロチャンネル反応装置(6)に入ってその中のLiFが溶解されたHF溶液(LiPFを含有)と反応する。第二マイクロチャンネル反応装置(6)中の反応物PFとLiFとのモル比を1:1.67とし、反応物停留時間を30秒とし、反応時間を15℃とする。第二マイクロチャンネル反応装置(6)から出る混合物は気液分離装置B(7)に入り、気液分離装置B(7)から分離されるガスはHClおよびHFを含み、分離された液体はヘキサフルオロリン酸リチウムおよび未反応のLiFを含む。気液分離装置B(7)から分離されたガスは圧縮機に入って加圧され、その後HF、HCl分離システム(8)、つまり分離塔に輸送される。塔の上部のHClは水に吸収されて工業酸となり、塔窯中のHFは循環利用が可能となる。
【0196】
気液分離装置B(7)から分離された液体、つまりヘキサフルオロリン酸リチウムおよび未反応のLiFを含有する混合液は合成液槽(5)に輸送され、合成液槽(5)中の合成液をポンプで結晶化槽(9)に輸送してヘキサフルオロリン酸リチウムに対する結晶化を行い、冷却状態でヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体を得る。結晶体をろ過した後、乾燥システム(10)にて加熱し、且つ窒素を吹き入れて乾燥して酸を除去することによって、ヘキサフルオロリン酸リチウム製品を得る。
【0197】
実施例2.2
以下図3に基づいて実施例2.2に対してさらに詳しく説明することにする。冷却ジャケットとミキサー付き溶液槽において、ポンプでHFを輸送し、冷却しながら固体添加装置にLiFを添加するが、LiFの添加速度はHFの温度が0℃になるようにし、LiFの濃度を4wt%とし、それと同時に、計量装置付き固体輸送機(1)でPClをHFが貯蔵された五フッ化リン発生装置(2)中に輸送して、PFガスを生成する。加圧状態下で、LiFが溶解されたHF溶液とPFガスとをポンプで第一マイクロチャンネル反応装置(3)に輸送する。第一マイクロチャンネル反応装置(3)中の反応物PFとLiFとのモル比を2:1とし、反応物滞留時間を30秒とし、反応温度を15℃とする。反応物は連続状態で第一マイクロチャンネル反応装置(3)に入り、出力物も連続状態で出力され、気液分離装置A(4)に入って、気液分離が行われ、分離された液体産物、つまりヘキサフルオロリン酸リチウムを含む成分は合成液槽(5)に輸送されて使用に備える。分離された気体産物、つまり未反応のPFおよび附帯のHF、HClを含む成分は、第二マイクロチャンネル反応装置(6)に入って、その中のLiFが溶解されたHF溶液(LiPFを含有)と反応が行われる。マイクロチャンネル反応装置B(6)中の反応物PFとLiFとのモル比を1:1.67とし、反応物滞留時間を30秒とし、反応時間を15℃とする。第二マイクロチャンネル反応装置(6)から出る混合物は気液分離装置B(7)に入り、気液分離装置B(7)から分離されるガスはHClおよびHFを含み、分離された液体はヘキサフルオロリン酸リチウムおよび未反応のLiFを含む。気液分離装置B(7)から分離されたガスは圧縮機に入って加圧され、その後HF、HCl分離システム(8)、つまり分離塔に輸送される。塔の上部のHClは水に吸収されて工業酸となり、塔窯中のHFは循環利用が可能となる。
【0198】
気液分離装置B(7)から分離された液体、つまり、ヘキサフルオロリン酸リチウムおよび未反応のLiFを含有する混合液は、ポンプによって第一マイクロチャンネル反応装置(3)に送って、引き続きその中のPFと反応させ、混合液中のLiFが完全に反応されるようにする。合成液槽(5)中の合成液をポンプで結晶化槽(9)に輸送してヘキサフルオロリン酸リチウムに対する結晶化を行い、冷却状態でヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体を得る。結晶体をろ過した後、乾燥システム(10)にて加熱し、且つ窒素を吹き入れて乾燥して酸を除去することによって、ヘキサフルオロリン酸リチウム製品を得る。
【0199】
実施例2.3
以下図1に基づいて、実施例2.3に対してさらに詳しく説明することにする。冷却ジャケットおよびミキサー付き溶液槽において、ポンプでHFを輸送し、冷却しながら固体添加装置にLiFを添加するが、LiFの添加速度はHFの温度が0℃になるようにし、LiFの濃度を4wt%とし、それと同時に、計量装置付き固体輸送機(1)でPClをHFが貯蔵された五フッ化リン発生装置(2)中に輸送して、PFガスを生成する。加圧状態下で、LiFが溶解されたHF溶液とPFガスとを、ポンプで第一マイクロチャンネル反応装置(3)に輸送する。第一マイクロチャンネル反応装置(3)中の反応物PFとLiFとのモル比を2:1とし、反応物停留時間を30秒とし、反応温度を15℃とする。反応物は連続状態でマイクロチャンネル反応装置A(3)に入り、出力物も連続状態で出力され、気液分離装置A(4)に入って、気液分離が行われ、分離された液体産物、つまりヘキサフルオロリン酸リチウムを含む成分は、合成液槽(5)に輸送されて使用に備える。分離された気体産物、つまり未反応のPFおよび附帯のHF、HClを含む成分は、第二マイクロチャンネル反応装置(6)に入って、その中のLiFが溶解されたHF溶液(LiPFを含有)と反応が行われる。第二マイクロチャンネル反応装置(6)中の反応物PFとLiFとのモル比を1:1.67とし、反応物滞留時間を30秒とし、反応時間を15℃とする。第二マイクロチャンネル反応装置(6)から出る混合物は気液分離装置B(7)に入り、気液分離装置B(7)から分離されるガスはHClおよびHFを含み、分離された液体はヘキサフルオロリン酸リチウムおよび未反応のLiFを含む。気液分離装置B(7)から分離されたガスは圧縮機に入って加圧され、その後HF、HCl分離システム(8)、つまり分離塔に輸送される。塔の上部のHClは水に吸収されて工業酸となり、塔窯中のHFは循環利用が可能となる。
【0200】
気液分離装置B(7)から分離された液体、つまりヘキサフルオロリン酸リチウムおよび未反応のLiFを含有する混合液は、ポンプによって第一マイクロチャンネル反応装置(3)に送って、引き続きその中のPFと反応ささせ、混合液中のLiFが完全に反応されるようにする。つまり、二台のマイクロチャンネル反応装置によって構成される連続逆循環式ヘキサフルオロリン酸リチウムの合成反応が完了される。合成液槽(5)中の合成液をポンプで結晶化槽(9)に輸送してヘキサフルオロリン酸リチウムに対する結晶化を行い、冷却状態でヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体を得る。結晶体をろ過した後、乾燥システム(10)にて加熱し、且つ窒素を吹き入れて乾燥して酸を除去することによって、ヘキサフルオロリン酸リチウム製品を得る。
【0201】
さらに、ろ過済み母液を母液槽(11)に貯蔵し、母液槽(11)中の母液は定量分析によってその中のヘキサフルオロリン酸リチウム含有量を確定した後、LiF溶液槽(12)に送って、定量のLiF溶解液の製作を行い、ヘキサフルオロリン酸リチウムを含有するHF溶液に定量のLiFを溶解した後、第二マイクロチャンネル反応装置(6)に送って反応を行なう。
【0202】
比較例2.1
冷却ジャケットとミキサー付き溶液槽において、ポンプでHFを輸送し、冷却しながら固体添加装置にLiFを添加するが、LiFの添加速度はHFの温度が0℃になるようにし、LiFの濃度を4wt%とし、それと同時に、計量装置付き固体輸送機(1)でPClをHFが貯蔵された五フッ化リン発生装置(2)中に輸送して、PFガスを生成する。加圧状態下で、LiFが溶解されたHF溶液とPFガスをポンプで第一マイクロチャンネル反応装置(3)に輸送する。第一マイクロチャンネル反応装置A(3)中の反応物PFとLiFとのモル比を2:1とし、反応物停留時間を30秒とし、反応温度を15℃とする。反応物は連続状態で第一マイクロチャンネル反応装置(3)に入り、出力物も連続状態で出力され、気液分離装置A(4)に入って、気液分離が行われ、分離された液体産物、つまりヘキサフルオロリン酸リチウムを含む成分は合成液槽(5)に輸送される。合成液槽(5)中の合成液をポンプで結晶化槽(9)に輸送してヘキサフルオロリン酸リチウムに対する結晶化を行い、冷却状態でヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体を得る。結晶体をろ過した後、乾燥システム(10)にて加熱し、且つ窒素を吹き入れて乾燥して酸を除去することによって、ヘキサフルオロリン酸リチウム製品を得る。
【0203】
比較例2.2
冷却ジャケットとミキサー付き溶液槽において、ポンプでHFを輸送し、冷却しながら固体添加装置にLiFを添加するが、LiFの添加速度はHFの温度が0℃になるようにし、LiFの濃度を4wt%とし、それと同時に、計量装置付き固体輸送機(1)でPClをHFが貯蔵された五フッ化リン発生装置(2)中に輸送して、PFガスを生成する。加圧状態下で、LiFが溶解されたHF溶液とPFガスとをポンプで第一マイクロチャンネル反応装置(3)に輸送する。マイクロチャンネル反応装置A(3)中の反応物PFとLiFとのモル比を2:1とし、反応物滞留時間を30秒とし、反応温度を15℃とする。反応物は連続状態で第一マイクロチャンネル反応装置(3)に入り、出力物も連続状態で出力され、出力物は第二マイクロチャンネル反応装置(6)に入り、反応物停留時間を30秒とし、反応温度を15℃とする。第二マイクロチャンネル反応装置(6)から出る混合物は気液分離装置A(4)に入って、気液分離が行われ、分離された液体産物、つまりヘキサフルオロリン酸リチウムを含む成分は、合成液槽(5)に輸送されて使用に備える。合成液槽(5)中の合成液をポンプで結晶化槽(9)に輸送してヘキサフルオロリン酸リチウムに対する結晶化を行い、冷却状態でヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体を得る。結晶体をろ過した後、乾燥システム(10)にて加熱し、且つ窒素を吹き入れて乾燥して酸を除去することによって、ヘキサフルオロリン酸リチウム製品を得る。
【0204】
【表1】
【0205】
表1のデータから見れば、実施例2.1~2.3において二セットのマイクロチャンネル反応装置を使用し、逆循環反応を使用した製品の純度は著しく高く、単一のマイクロチャンネル反応装置を使用した比較例2.1と直接二セットのマイクロチャンネル反応装置を直列連結した比較例2.2に比べて、不純物の含有量がより低く、製品の転化率がより優れている。
【0206】
実施例3.1
五塩化リンを計量装置付き固体輸送機で、フッ化水素が貯蔵されている冷却ジャケット付き五フッ化リン発生装置中に輸送し、温度を0℃ぐらいに制御して、五塩化リンとフッ化水素とを反応させて五フッ化リンと塩化水素とを生産する。五フッ化リン、塩化水素および附帯のフッ化水素ガスからなる混合ガスを第一マイクロチャンネル反応装置中に入れて、第一フィードフローを構成する。冷却ジャケットおよびミキサー付き溶解槽中にフッ化水素を添加し、冷却しながら固体添加装置で溶液槽中にフッ化リチウムを添加し、溶解温度を0℃ぐらいに制御し、フッ化リチウムの質量分数を2wt%とする。ポンプでフッ化リチウムが溶解されたフッ化水素溶液を第一マイクロチャンネル反応装置中に輸送して、第二フィードフローを構成する。第一マイクロチャンネル反応装置の反応温度を3℃とし、停留時間を5秒とする。第一マイクロチャンネル反応装置から出る気液混合物は、第一気液分離装置に入り、第一気液分離装置中の液体は、合成液槽に輸送されて貯蔵され、第一気液分離装置から出るガスは、未反応の五フッ化リン、塩化水素および附帯のフッ化水素を含み、この混合ガスは、第二マイクロチャンネル反応装置に輸送されて、LiPF、LiFおよびHFを含む第三フィードフローと反応が行われる。第二マイクロチャンネル反応装置の反応温度を3℃とし、停留時間を5秒とする。第二マイクロチャンネル中の気液混合物を第二気液分離装置に入れるが、第二気液分離装置から出るガスは、塩化水素と附帯のフッ化水素を含有し、この混合ガスは、増圧設備によってフッ化水素、塩化水素の分離システムに送られる。第二気液分離装置から出る液体は、原母液中のヘキサフルオロリン酸リチウムや新な反応によって生成されたヘキサフルオロリン酸リチウムおよび未反応のフッ化リチウムを含有する。この混合液を第一マイクロチャンネル反応装置に輸送して、第四フィードフローとする。合成液槽中の合成液を結晶化槽に送ってヘキサフルオロリン酸リチウムに対する結晶化を行い、冷却状態でヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体を得る。結晶化槽において、合成液の冷却速度を2℃/hとし、ミキサーの攪拌速度を50rpmとし、合成液を20℃から-45℃まで下げて、-45℃まで冷却してから6時間保持する。その後、固体結晶体をろ過してから乾燥システムに送って乾燥・酸除去を行うことによって、ヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体を得る。ろ過済み母液を母液槽中に貯蔵し、母液槽中の母液は分析・定量を経てその中のヘキサフルオロリン酸リチウムの含有量を確定した後、フッ化リチウム溶解槽中に送って定量のフッ化リチウム溶液の製作を行う。ヘキサフルオロリン酸リチウムを含有するフッ化水素溶液は定量のフッ化リチウムを溶解した後、第二マイクロチャンネル反応装置中に送られて反応が行われ、第三フィードフローを構成する。第一マイクロチャンネル反応装置中の五フッ化リンとフッ化リチウムとのモル比を2:1とし、第二マイクロチャンネル反応装置中の五フッ化リンとフッ化リチウムとのモル比を1:1とする。
【0207】
製作された結晶体の具体的な性能パラメータは表2を、結晶体のSEM図は図4を、結晶体のXRD図は図6を参照。
【0208】
実施例3.2
実施例3.1中の段階と条件とによって、ヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する混合結晶体を製作する。違う所は、第一マイクロチャンネル反応装置中の五フッ化リオンとフッ化リチウムとのモル比を2.5:1とし、第二マイクロチャンネル反応装置中の五フッ化リオンとフッ化リチウムとのモル比を1:1.1とすることである。
【0209】
製作された結晶体の具体的な性能パラメータは表2を参照。
【0210】
実施例3.3
実施例3.1の段階と条件とによって、ヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する混合結晶体を製作する。違う所は、第一マイクロチャンネル反応装置の反応温度を4℃とし、停留時間を10秒とし、第二マイクロチャンネル反応装置の反応温度を6℃とし、停留時間を12秒とすることである。
【0211】
製作された結晶体の具体的な性能パラメータは表2を参照。
【0212】
比較例3.1
実施例3.1の段階と条件とによって、ヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する混合結晶体を製作する。違う所は、第二マイクロチャンネル反応装置を設置せず、ただ第一マイクロチャンネル反応装置中だけにて反応を行なわせることであって、製作された結晶体の具体的な性能パラメータは表2を、結晶体のSEM図は図5を参照。
【0213】
【表2】
【0214】
実施例4.1
図1のとおり、F2発泡法を利用して、無水フッ化水素中の含水量を8ppmまで下げる。発泡時間を2時間とし、温度を-20℃とし、F2の流量を20g/hrとする。五塩化リンを計量装置付き固体輸送機1で、冷却ジャケット付きの無水フッ化水素が貯蔵されている五フッ化リン発生装置2中に入れて、温度を0℃ぐらいに制御し、五塩化リンと無水フッ化水素とを反応させて五フッ化リンと塩化水素とを生産する。五フッ化リン、塩化水素および附帯のフッ化水素ガスからなる混合ガスを第一マイクロチャンネル反応装置3中に入れて、第一フィードフローを構成する。冷却ジャケットおよびミキサー付き溶解槽中に無水フッ化水素を添加し、冷却しながら固体添加装置で溶液槽中にフッ化リチウムを添加し、溶解温度を0℃ぐらいに制御し、フッ化リチウムの質量分数を3wt%とする。ポンプでフッ化リチウムが溶解されたフッ化水素溶液を第一マイクロチャンネル反応装置3中に輸送して、第二フィードフローを構成する。第一マイクロチャンネル反応装置3の反応温度を5℃とし、滞留時間を10秒とする。第一マイクロチャンネル反応装置3から出る気液混合物は、第一気液分離装置4に入り、第一気液分離装置4中の液体は、合成液槽5に輸送されて貯蔵され、第一気液分離装置から分離されるガスは、未反応の五フッ化リン、塩化水素および附帯のフッ化水素を含み、この混合ガスは、第二マイクロチャンネル反応装置6に輸送されて、LiPF、LiFおよびHFを含む第三フィードフローと反応が行われる。第二マイクロチャンネル反応装置6の反応温度を5℃とし、滞留時間を10秒とする。第二マイクロチャンネル中の気液混合物を第二気液分離装置7に入れるが、第二気液分離装置7から分離されるガスは、塩化水素と附帯のフッ化水素を含有し、この混合ガスは、増圧設備によってフッ化水素、塩化水素の分離システム8に送られる。第二気液分離装置7から分離される液体は、原母液中のヘキサフルオロリン酸リチウム、新な反応によって生成されたヘキサフルオロリン酸リチウムおよび未反応のフッ化リチウムを含有する。この混合液を第一マイクロチャンネル反応装置3に輸送して、第四フィードフローとする。合成液槽5中の合成液を結晶化槽9に送ってヘキサフルオロリン酸リチウムに対して結晶化を行い、冷却状態でヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体を得る。結晶化槽9において、合成液の冷却速度を2℃/hとし、ミキサーの攪拌速度を50rpmとし、合成液を25℃から-45℃まで下げて、-45℃まで冷却してから6時間保持する。その後、固体結晶体をろ過してから乾燥システム10に送って乾燥・酸除去を行うことによって、ヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体を得る。ろ過済み母液を母液槽11中に貯蔵し、母液槽11中の母液は分析・定量を経て、その中のヘキサフルオロリン酸リチウムの含有量を確定した後、フッ化リチウム溶解槽12中に送って定量のフッ化リチウム溶液の製作を行う。ヘキサフルオロリン酸リチウムを含有するフッ化水素溶液は定量のフッ化リチウムを溶解した後、第二マイクロチャンネル反応装置6中に送られて反応が行われ、第三フィードフローを構成する。第一マイクロチャンネル反応装置中の五フッ化リンとフッ化リチウムのモル比を2.1:1とし、第二マイクロチャンネル反応装置中の五フッ化リンとフッ化リチウムのモル比を1:1.1とする。
【0215】
測定の結果、生成された組成物中、ヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体の含有量が99.995%、収率が99.8%であり、41%の結晶体の粒径が0.2mm以上、0.25mm未満であり、42%の結晶体の粒径が0.25mm以上、0.3mm以下であり、水分の含有量が3ppmである。水分含有量はGB/T 19282-2014中の方法で測定する。
【0216】
実施例4.2
本実施例と実施例4.1の生産工程との違う所は、乾燥システムにて乾燥と酸除去とを行なってから熱処理を行い、乾燥済み産物を加熱炉に供給する。加熱炉内部を真空状態にした後、五フッ化リンガスを入れて、加熱時間を2時間とし、温度を98℃とし、圧力を大気圧とし、室温まで冷やし、容器内部を真空状態にすることによって組成物を得る。測定の結果、生成された組成物中、ヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体の含有量が99.9952%、水分含有量が2ppmであり、45%の結晶体の粒径が0.2mm以上、0.25mm未満であり、45%の結晶体の粒径が0.25mm以上、0.3mm以下である。
【0217】
比較例4.1
本比較例と実施例4.1の生産工程との違う所は、第一マイクロチャンネル反応装置に入れられる第一フィードフローは純化済みPFガスであり、第二マイクロチャンネル反応装置を設置せず、第一マイクロチャンネル反応装置中の五フッ化リンとフッ化リチウムとのモル比を1.5:1とすることである。測定の結果、生成された組成物中、ヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体の含有量が99.88%、収率が98.5%であり、34%の結晶体の粒径が0.2mm以上、0.25mm未満であり、29%の結晶体の粒径が0.25mm以上、0.3mm以下であり、水分の含有量が9ppmである。
【0218】
比較例4.2
本比較例と実施例4.1の生産工程との違う所は、第一と第二マイクロチャンネル反応装置をそれぞれ第一および第二反応窯に替えることである。反応窯に替えた後は間歇式生産となり、第一および第二反応窯の反応時間は8時間に延ばされる。
【0219】
測定の結果、生成された組成物中、ヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体の含有量が99.75%、収率が96.1%であり、31%の結晶体の粒径が0.2mm以上、0.25mm未満であり、23%の結晶体の粒径が0.25mm以上、0.3mm以下であり、水分の含有量が10ppmである。
【0220】
実施例5.1~5.14に対する共同説明
実施例5.1~5.14に使用されるヘキサフルオロリン酸リチウム混合結晶体の製作方法:
【0221】
五塩化リンを計量装置付き固体輸送機で、フッ化水素が貯蔵されている冷却ジャケット付き五フッ化リン発生装置中に輸送し、温度を0℃ぐらいに制御して、五塩化リンとフッ化水素とを反応させて五フッ化リンと塩化水素とを生産する。五フッ化リン、塩化水素および附帯のフッ化水素ガスからなる混合ガスを第一マイクロチャンネル反応装置中に入れて、第一フィードフローを構成する。冷却ジャケットおよびミキサー付き溶解槽中にフッ化水素を添加し、冷却しながら固体添加装置で溶液槽中にフッ化リチウムを添加し、溶解温度を0℃ぐらいに制御し、フッ化リチウムの質量分数を2wt%とする。ポンプでフッ化リチウムが溶解されたフッ化水素溶液を第一マイクロチャンネル反応装置中に輸送して、第二フィードフローを構成する。第一マイクロチャンネル反応装置の反応温度を3℃とし、停留時間を5秒とする。第一マイクロチャンネル反応装置から出る気液混合物は第一気液分離装置に入れ、第一気液分離装置中の液体は合成液槽に輸送されて貯蔵され、第一気液分離装置から出るガスは、未反応の五フッ化リン、塩化水素および附帯のフッ化水素を含み、この混合ガスは第二マイクロチャンネル反応装置に輸送されて、LiPF、LiFおよびHFを含む第三フィードフローと反応が行われる。第二マイクロチャンネル反応装置の反応温度を3℃とし、停留時間を5秒とする。第二マイクロチャンネル中の気液混合物を第二気液分離装置に入れるが、第二気液分離装置から出るガスは塩化水素と附帯のフッ化水素とを含有し、この混合ガスは、増圧設備によってフッ化水素、塩化水素の分離システムに送られる。第二気液分離装置から出る液体は原母液中のヘキサフルオロリン酸リチウム、新たな反応によって生成されたヘキサフルオロリン酸リチウムおよび未反応のフッ化リチウムを含有する。この混合液を第一マイクロチャンネル反応装置に輸送して、第四フィードフローとする。合成液槽中の合成液を結晶化槽に送ってヘキサフルオロリン酸リチウムに対する結晶化を行い、冷却状態でヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体を得る。結晶化槽において、合成液の冷却速度を2℃/hとし、ミキサーの攪拌速度を50rpmとし、合成液を20℃から-45℃まで下げて、-45℃まで冷却してから6時間保持する。その後、固体結晶体をろ過してから乾燥システムに送って乾燥・酸除去を行うことによって、ヘキサフルオロリン酸リチウム結晶体を得る。ろ過済み母液を母液槽中に貯蔵し、母液槽中の母液は分析・定量を経てその中のヘキサフルオロリン酸リチウムの含有量を確定した後、フッ化リチウム溶解槽中に送って定量のフッ化リチウム溶液の製作を行う。ヘキサフルオロリン酸リチウムを含有するフッ化水素溶液は、定量のフッ化リチウムを溶解した後、第二マイクロチャンネル反応装置中に送られて反応が行われ、第三フィードフローを構成する。第一マイクロチャンネル反応装置中の五フッ化リンとフッ化リチウムとのモル比を2:1とし、第二マイクロチャンネル反応装置中の五フッ化リンとフッ化リチウムのモル比を1:1とする。
【0222】
実施例5.1
体積比が2:4:4であるエチレンカーボネート、メチルエチルカーボネートおよびジエチルカーボネートからなる有機溶剤中にヘキサフルオロリン酸リチウム混合結晶体を添加して、製作された非水電解液中のヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度が1.2mol/Lであり、混合溶解させ、ヘキサフルオロリン酸リチウムのアスペクト比が1~1.5であり、平均粒径が0.2mmであり、80%(wt)の前記結晶粒子中、結晶面族{110}が40~60%を占め、結晶面族{111}が40~60%を占め、91%(wt)の前記結晶粒子中、結晶面族{110}が20~80%を占め、結晶面族{111}が20~80%を占め、82%(wt)の混合結晶体の平均粒径が0.2~0.3mmであり、91%(wt)の混合結晶体の平均粒径が0.18~0.35mmであり、混合結晶体の安息角が38°であり、かさ密度が1.35g/mLであり、混合結晶体中、ヘキサフルオロリン酸リチウムの質量百分比含有量が99.99%であり、100%重量の電解液に対し、前記添加剤の添加量が2重量%であり、前記添加剤はジフルオロリン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム塩およびフルオロカーボネートであり、その重量比は1:1:3であり、そのうち、フルオロカーボネートは重量比が1:2であるフルオロエチレンカーボネートとトリフルオロプロピレンカーボネートとの混合物であり、これによって二次電池に使用される非水電解液を製作する。
【0223】
実施例5.2
実施例5.1の段階と条件とによって非水電解液を製作する。違う所は、有機溶剤を体積比が1:4であるエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートにすることである。
【0224】
実施例5.3
実施例5.1の段階と条件とによって非水電解液を製作する。違う所は、添加剤がないことである。
【0225】
実施例5.4
実施例5.1の段階と条件とによって非水電解液を製作する。違う所は、添加剤の添加量を5%とすることである。
【0226】
実施例5.5
実施例5.1の段階と条件とによって非水電解液を製作する。違う所は、前記添加剤をジフルオロリン酸リチウムとすることである。
【0227】
実施例5.6
実施例5.1の段階と条件とによって非水電解液を製作する。違う所は、前記添加剤をジフルオロリン酸リチウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム塩とし、その重量比を1:1とすることである。
【0228】
実施例5.7
実施例5.1の段階と条件とによって非水電解液を製作する。違う所は、前記添加剤をジフルオロリン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム塩、フルオロカーボネートおよびビス(4-フルオロフェニル)スルホンとし、その重量比を1:1:3:0.5とすることである。
【0229】
実施例5.8
実施例5.1の段階と条件とによって非水電解液を製作する。違う所は、前記添加剤をジフルオロリン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム塩、フルオロカーボネートおよびLiFとし、その重量比を1:1:3:0.5とすることである。
【0230】
実施例5.9
実施例5.1の段階と条件とによって非水電解液を製作する。違う所は、前記添加剤をジフルオロリン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム塩、フルオロカーボネート、ビス(4-フルオロフェニル)スルホンおよびLiFとし、その重量比を1:1:3:0.5:0.5とすることである。
【0231】
実施例5.10
実施例5.1の段階と条件とによって非水電解液を製作する。違う所は、フルオロカーボネートをフルオロエチレンカーボネートにすることである。
【0232】
実施例5.11
実施例5.1の段階と条件とによって非水電解液を製作する。違う所は、有機溶媒をプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネートとし、その体積比を1:2:1.1:2.5とし、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度を0.9mol/Lとすることである。
【0233】
実施例5.12
実施例5.1の段階と条件とによって非水電解液を製作する。違う所は、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、メチルエチルカーボネートおよびジエチルカーボネートの体積比を1:1:6:6とすることである。
【0234】
実施例5.13
実施例5.1の段階と条件とによって非水電解液を製作する。違う所は、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度を1.4mol/Lとすることである。
【0235】
実施例5.14
実施例5.1の段階と条件とによって非水電解液を製作する。違う所は、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度を1.6mol/Lとすることである。
【0236】
比較例5.1
実施例5.1の段階と条件とによって非水電解液を製作する。違う所は、添加剤の添加量を6%とすることである。
【0237】
比較例5.2
実施例5.1の段階と条件とによって非水電解液を製作する。違う所は、ヘキサフルオロリン酸リチウム混合結晶体のアスペクト比が0.7~1.3であり、平均粒径が0.2mmであり、70%(wt)の前記結晶粒子中、結晶面族{110}が40~60%を占め、結晶面族{111}が40~60%を占めており、80%(wt)の前記結晶粒子中、結晶面族{110}が20~80%を占め、結晶面族{111}が20~80%を占めており、45%(wt)の混合結晶体の平均粒径が0.2~0.3mmであり、62%(wt)の混合結晶体の平均粒径が0.18~0.35mmであり、混合結晶体の安息角が18°であり、かさ密度が1.3g/mLであることである。
【0238】
比較例5.3
実施例5.1の段階と条件とによって非水電解液を製作する。違う所は、ヘキサフルオロリン酸リチウム混合結晶体のアスペクト比が0.6~0.9であり、平均粒径が0.11mmであり、55%(wt)の前記結晶粒子中、結晶面族{110}が40~60%を占め、結晶面族{111}が40~60%を占めており、70%(wt)の前記結晶粒子中、結晶面族{110}が20~80%を占め、結晶面族{111}が20~80%を占めており、35%(wt)の混合結晶体の平均粒径が0.2~0.3mmであり、50%(wt)の混合結晶体の平均粒径が0.18~0.35mmであり、混合結晶体の安息角が15°であり、かさ密度が1.2g/mLであることである。
【0239】
実施例5.1~5.14および比較例5.1~5.3中リチウム二次電池の製作方法
(1)正極板の製作
リチウム・ニッケル・コバルト・マンガン三元材料-LiNi0.5Co0.2Mn0.3、粘着剤-ポリフッ化ビニリデン、導電剤-アセチレンブラックを質量比97:1.5:2で混合し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を入れて、均一に攪拌混合して、正極スラリーを得る。正極スラリーを厚さ14μmの正極集電体のアルミニウムホイル上に均一に塗り付けて、アルミニウムホイルを室温にて乾燥した後、冷間圧延、カッティングすることによって、正極板を得る。
【0240】
(2)負極板の製作
負極活性材料-人造黒鉛、カーボンブラック、粘着剤-ポリフッ化ビニリデンを質量比98:1:1で混合し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を入れて、均一に攪拌混合して、負極スラリーを得る。負極スラリーを厚さ8μmの負極集電体の銅ホイル上に均一に塗り付けて、銅ホイルを室温にて乾燥した後、冷間圧延、カッティングすることによって、負極板を得る。
【0241】
(3)セパレータの製作
12μm厚さのポリエチレンでセパレータを製作する。
【0242】
(4)リチウムイオン二次電池の製作
正極、セパレータ、負極を次第に積み重ねて、四角形のベアダイに巻いた後、アルミプラスチックフィルムに入れ、乾燥後、対応する電解液を注入してシーリングし、静置、熱間・冷間圧延、形成、クランプ、分容積などの工程によって、リチウムイオン二次電池を得る。
【0243】
試験例
以下の試験例は、実施例5.1~5.14および比較例5.1~5.3によって製作された電池性能に対する測定結果であり、表3のとおりである。
【0244】
(1)リチウム二次電池の高温貯蔵性能試験
室温25℃にて、リチウムイオン二次電池を、1Cの定電流で電圧が4.2Vになるまで充電し、さらに、4.2Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、10分間静置した後、1Cの定電流で電圧が2.75Vになるまで放電して、初期放電容量を測定する。その後、リチウムイオン二次電池を、を室温25℃にて、1Cの定電流で電圧が4.2Vになるまで充電し、さらに、4.2Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、その後、60℃にて4週間貯蔵する。その後、1Cの定電流で電圧が4.2Vになるまで充電し、さらに、4.2Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、10分間静置した後、1Cの定電流で電圧が2.75Vになるまで放電して、貯蔵後の放電容量を測定し、さらに、容量保持率を算出する。
【0245】
容量保持率(%)=[4週間貯蔵後の放電容量/初期法放電容量]×100%
【0246】
(2)リチウム二次電池の高温循環性能試験
60℃にて、1Cの定電流で電圧が4.2Vになるまで充電し、さらに、4.2Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、10分間静置した後、1Cの定電流で電圧が2.75Vになるまで放電し、これを一つの充放電循環とし、今回の放電容量をリチウム二次電池の初期放電容量とする。上記方法によって、リチウム二次電池に対する500回の循環充電/放電試験を行い、60℃における500回循環後の容量保持率を得る。
【0247】
容量保持率(%)=(500回循環後の放電容量/初期放電容量)×100%
【0248】
(3)リチウム二次電池の大倍率充電性能試験
室温25℃にて、1Cの倍率で電流が2.75Vになるまで放電し、10min静置してから、0.5Cの倍率で電流が4.2Vになるまで充電し、10min静置してから、1Cの倍率で電流が2.75Vになるまで放電することによって、0.5C倍率の充電における充電容量を得る。
【0249】
25℃にて、1Cの倍率で電流が2.75Vになるまで放電し、10min静置してから、5Cの倍率で電流が4.2Vになるまで充電し、10min静置してから、1Cの倍率で電流が2.75Vになるまで放電することによって、5Cの倍率充電における充電容量を得る。
【0250】
リチウム二次電池の5C充電倍率における充電容量比(%)=5Cの倍率充電における充電容量/0.5Cの倍率充電における充電容量×100%
【0251】
(4)リチウム二次電池の定温放電性能試験
25℃にて、1Cの定電流で電圧が4.2Vになるまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で電圧が0.05Cになるまで充電し、10分間静置し、その後リチウム二次電池をそれぞれ異なる温度(25℃、0℃、-10℃)にて4h静置してから、1Cの定電流で電圧が2.75Vになるまで放電し、放電が終わってから、再び5分間静置し、この時リチウム二次電池の放電容量を記録する。
【0252】
リチウム二次電池の異なる温度における放電容量比(%)=(0℃、-10℃における放電容量)/(25℃における放電容量)×100%
【0253】
表3は実施例5.1~5.14および比較例5.1~5.3の性能試験結果である。
【0254】
【表3】
【0255】
表3から見れば、本発明のヘキサフルオロリン酸リチウム混合結晶体をリチウム塩の非水電解液として製作したリチウム電池は、優れた高温循環性能や高温貯蔵性能、低温放電性能、大倍率充電性能を有する。本発明の特定の添加剤および有機溶媒を添加することによって、リチウム二次電池の上記性能を著しく向上することができる。
【0256】
実施例6.1~6.3に対する共同説明
本発明の実施例6.1~6.3に使用されるヘキサフルオロリン酸リチウムは、実施例4.1によって製作される。
【0257】
実施例6.1
フッ素含有電解液であって、前記電解液は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、LiPO、LiBF、エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、およびジエチルカーボネートを含む。電解液の製作に使用されるヘキサフルオロリン酸リチウムの純度は99.995wt%、水分含有量は3ppm、41%の結晶体の粒径が0.2mm以上、0.25mm未満であり、42%の結晶体の粒径が0.25mm以上、0.3mm以下である。水分含有量はGB/T19282-2014中の方法によって測定する。フッ素含有電解液中、ヘキサフルオロリン酸リチウムの質量分数は18wt%、LiPOの質量分数は1wt%、LiBFの質量分数は1wt%、エチレンカーボネートの質量分数は24wt%、メチルエチルカーボネートの質量分数は41wt%、ジエチルカーボネートの質量分数は15wt%である。
【0258】
測定の結果、25℃において、フッ素含有電解液の導電率は10.07mS/cmである。(LiCoO/黒鉛全電池を組立、25℃において、臨界電圧が3.0V~4.4V時に0.5Cの倍率で500回循環した後の容量保持率を測定したが、90.5%である。)
【0259】
実施例6.2
フッ素含有電解液であって、前記電解液は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、LiPO、LiBF、1,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、およびジエチルカーボネートを含む。電解液の製作に使用されるヘキサフルオロリン酸リチウムの純度は99.995wt%、水分含有量は3ppm、41%の結晶体の粒径が0.2mm以上、0.25mm未満であり、42%の結晶体の粒径が0.25mm以上、0.3mm以下である。水分含有量はGB/T19282-2014中の方法によって測定する。フッ素含有電解液中、ヘキサフルオロリン酸リチウムの質量分数は18wt%、LiPOの質量分数は1wt%、LiBFの質量分数は1wt%、1,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンの質量分数は3wt%、エチレンカーボネートの質量分数は24wt%、メチルエチルカーボネートの質量分数は38wt%、ジエチルカーボネートの質量分数は15wt%である。
【0260】
測定の結果、25℃において、フッ素含有電解液の導電率は10.42mS/cmである。(LiCoO/黒鉛全電池を組立、25℃において、臨界電圧が3.0V~4.4Vの時に0.5C倍率で500回循環した後の容量保持率を測定したが、91.6%である。)
【0261】
実施例6.3
フッ素含有電解液であって、前記電解液は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、LiPO、LiBF、1,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジエチルエーテルおよびトリフルオロメチルスルホンを含む。電解液の製作に使用されるヘキサフルオロリン酸リチウムの純度は99.995wt%、水分含有量は3ppm、41%の結晶体の粒径が0.2mm以上、0.25mm未満であり、42%の結晶体の粒径が0.25mm以上、0.3mm以下である。水分含有量はGB/T19282-2014中の方法によって測定する。フッ素含有電解液中、ヘキサフルオロリン酸リチウムの質量分数は12wt%、LiPOの質量分数は3wt%、LiBFの質量分数は2wt%、1,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンの質量分数は2wt%、エチレンカーボネートの質量分数は20wt%、メチルエチルカーボネートの質量分数は38wt%、ジエチルカーボネートの質量分数は13wt%、ジエチルエーテルの質量分数は5wt%、トリフルオロメチルスルホンの質量分数は5wt%である。
【0262】
測定の結果、25℃において、フッ素含有電解液の導電率は10.85mS/cmである。(LiCoO/黒鉛全電池を組立、25℃において、臨界電圧が3.0V~4.4V時に0.5Cの倍率で500回循環した後の容量保持率を測定したが、92.8%である。)
【0263】
比較例6.1
本比較例と実施例6.1との違う所は、電解液の製作に使用されるヘキサフルオロリン酸リチウムの純度は99.89wt%、水分含有量は20ppm、28%の結晶体の粒径が0.2mm以上、0.25mm未満であり、23%の結晶体の粒径が0.25mm以上、0.3mm以下であり、水分含有量はGB/T19282-2014中の方法によって測定することである。
【0264】
測定の結果、25℃において、フッ素含有電解液の導電率は8.77mS/cmである。(LiCoO/黒鉛全電池を組立、25℃において、臨界電圧が3.0V~4.4V時に0.5Cの倍率で500回循環した後の容量保持率を測定したが、86.5%である。)
【0265】
比較例6.2
本比較例と実施例6.2との違う所は、1,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンをトリフルオロメチルベンゼンに替えることである。測定の結果、25℃において、フッ素含有電解液の導電率は9.56mS/cmである。(LiCoO/黒鉛全電池を組立、25℃において、臨界電圧が3.0V~4.4V時に0.5Cの倍率で500回循環した後の容量保持率を測定したが、88.6%である。)
図1
図2
図3
図4
図5
図6