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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】耐プラズマガラスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/087 20060101AFI20240201BHJP
   C03C 3/062 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C03C3/087
C03C3/062
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022539140
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 KR2020016374
(87)【国際公開番号】W WO2021132893
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】10-2019-0174042
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519234903
【氏名又は名称】アイワンス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IONES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】2061, Anseong-daero, Gosam-myeon, Anseong-si, Gyeonggi-do 17505, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】517434736
【氏名又は名称】コリア インスティチュート オブ セラミック エンジニアリング アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ダエ ジーン キム
(72)【発明者】
【氏名】ヘ ウォン ソク
(72)【発明者】
【氏名】ムン キ リー
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン ジュン キム
【審査官】富永 泰規
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-176335(JP,A)
【文献】特表平05-504271(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0080429(KR,A)
【文献】Hugo R. Fernandes et al.,Apatite crystallization from glasses in the Ca5(PO4)3F-CaAl2Si2O8-CaMgSi2O6-NaAlSi3O8,Journal of Non-Crystalline Solids,2013年,Vol.363,pp.32-38
【文献】A. R. Hanifi et al.,Bioactivity potential of calcium alumino-silicate glasses and glass-ceramics containing nitrogen and fluorine,Journal of Materials Science ,2014年,Vol.49, No.13,pp.4590-4594
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00 - 14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学成分としてSiO 32~52モル%、Al 5~15モル%、CaO 30~55モル%およびCaF 0.1~15モル%を含み、
非晶質構造であることを特徴とする耐プラズマガラス。
【請求項2】
前記CaOと前記CaFは、2.5:1~50:1のモル比を有することを特徴とする請求項1に記載の耐プラズマガラス。
【請求項3】
前記耐プラズマガラスのガラス転移温度(T)は、750℃より低いことを特徴とする請求項1に記載の耐プラズマガラス。
【請求項4】
前記耐プラズマガラスの結晶化温度(T)は、1090℃より低いことを特徴とする請求項1に記載の耐プラズマガラス。
【請求項5】
前記耐プラズマガラスのガラス安定性指数Kは、下記の式で表され、
【数1】
(ここで、Tはガラス転移温度、Tは結晶化温度、Tは液相線温度)
前記耐プラズマガラスは、2.0~3.5の範囲のKを示すことを特徴とする請求項1に記載の耐プラズマガラス。
【請求項6】
前記耐プラズマガラスは、フッ素(fluorine)とアルゴン(Ar)の混合プラズマ環境に用いられるガラスであり、
前記耐プラズマガラスは、フッ素(fluorine)とアルゴン(Ar)の混合プラズマに対してエッチングレートが10nm/minより低い耐プラズマ特性を有することを特徴とする請求項1に記載の耐プラズマガラス。
【請求項7】
前記耐プラズマガラスは、化学成分としてY 0.01~15モル%をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の耐プラズマガラス。
【請求項8】
前記耐プラズマガラスは、化学成分としてZrO 0.01~15モル%をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の耐プラズマガラス。
【請求項9】
SiO粉末、Al前駆体、CaO前駆体およびCaF粉末を混合し、耐プラズマガラス原料を準備する段階と、
前記耐プラズマガラス原料を酸化雰囲気で溶融させる段階と、
溶融物を急速冷却する段階と、
急速冷却した結果物をガラス転移温度より高い温度で熱処理する段階と、
熱処理した結果物を徐冷して、耐プラズマガラスを収得する段階と、を含み、
前記耐プラズマガラスは、化学成分としてSiO 32~52モル%、Al 5~15モル%、CaO 30~55モル%およびCaF 0.1~15モル%を含み、非晶質構造であることを特徴とする耐プラズマガラスの製造方法。
【請求項10】
前記熱処理は、前記耐プラズマガラスのガラス転移温度(T)より高く、前記耐プラズマガラスの結晶化温度(T)より低い温度で行うことを特徴とする請求項9に記載の耐プラズマガラスの製造方法。
【請求項11】
前記Al前駆体は、Al(OH)粉末を含み、
前記CaO前駆体は、CaCO粉末を含むことを特徴とする請求項9に記載の耐プラズマガラスの製造方法。
【請求項12】
前記耐プラズマガラス原料は、Y粉末をさらに含み、
前記耐プラズマガラスは、化学成分としてY 0.01~15モル%をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の耐プラズマガラスの製造方法。
【請求項13】
前記耐プラズマガラス原料は、ZrO粉末をさらに含み、
前記耐プラズマガラスは、化学成分としてZrO 0.01~15モル%をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の耐プラズマガラスの製造方法。
【請求項14】
前記CaOと前記CaFは、2.5:1~50:1のモル比を有することを特徴とする請求項9に記載の耐プラズマガラスの製造方法。
【請求項15】
前記耐プラズマガラスのガラス転移温度(T)は、750℃より低いことを特徴とする請求項9に記載の耐プラズマガラスの製造方法。
【請求項16】
前記耐プラズマガラスの結晶化温度(T)は、1090℃より低いことを特徴とする請求項9に記載の耐プラズマガラスの製造方法。
【請求項17】
前記耐プラズマガラスのガラス安定性指数Kは、下記の式で表され、
【数2】
(ここで、Tはガラス転移温度、Tは結晶化温度、Tは液相線温度)
前記耐プラズマガラスは、2.0~3.5の範囲のKを示すことを特徴とする請求項9に記載の耐プラズマガラスの製造方法。
【請求項18】
前記耐プラズマガラスは、フッ素(fluorine)とアルゴン(Ar)の混合プラズマ環境に用いられるガラスであり、
前記耐プラズマガラスは、フッ素(fluorine)とアルゴン(Ar)の混合プラズマに対してエッチングレートが10nm/minより低い耐プラズマ特性を有することを特徴とする請求項9に記載の耐プラズマガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐プラズマガラスおよびその製造方法に関し、より詳細には、ガラス安定性指数Kが2.0以上と高く、フッ素(fluorine)とアルゴン(Ar)の混合プラズマに対してエッチングレートが10nm/minより低い耐プラズマ特性を示す耐プラズマガラスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3D NANDフラッシュ、FinFET、10nm以下など多様な半導体素子の製造時、プラズマエッチング工程が適用されている。ナノ工程が適用されることによって、エッチング難易度が増加し、高密度プラズマ環境に露出する半導体工程チャンバーの内部部品は、耐食性を有するアルミナ(Al)、イットリア(Y)のような酸化物系セラミックが主に用いられている。
【0003】
多結晶素材が、フッ素系ガスが用いられる高密度プラズマエッチング環境に長期間露出する場合、局部的な浸食に起因して粒子が脱落し、これによる汚染粒子の発生確率が高くなることがある。これは、半導体素子の欠陥を誘発し、半導体生産収率に悪影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】韓国登録特許第10-0689889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ガラス安定性指数Kが2.0以上と高く、フッ素(fluorine)とアルゴン(Ar)の混合プラズマに対してエッチングレートが10nm/minより低い耐プラズマ特性を示す耐プラズマガラスおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、化学成分としてSiO 32~52モル%、Al 5~15モル%、CaO 30~55モル%およびCaF 0.1~15モル%を含む耐プラズマガラスを提供する。
【0007】
前記CaOと前記CaFは、2.5:1~50:1のモル比を有することが好ましい。
【0008】
前記耐プラズマガラスのガラス転移温度(T)は、750℃より低くてもよい。
【0009】
前記耐プラズマガラスの結晶化温度(T)は、1090℃より低くてもよい。
【0010】
前記耐プラズマガラスのガラス安定性指数Kは、下記の式で表され、
【数1】
(ここで、Tはガラス転移温度、Tは結晶化温度、Tは液相線温度)、前記耐プラズマガラスは、2.0~3.5の範囲のKを示すことができる。
【0011】
前記耐プラズマガラスは、フッ素(fluorine)とアルゴン(Ar)の混合プラズマ環境に用いられるガラスであってもよく、前記耐プラズマガラスは、フッ素(fluorine)とアルゴン(Ar)の混合プラズマに対してエッチングレートが10nm/minより低い耐プラズマ特性を有していてもよい。
【0012】
前記耐プラズマガラスは、化学成分としてY 0.01~15モル%をさらに含んでもよい。
【0013】
前記耐プラズマガラスは、化学成分としてZrO 0.01~15モル%をさらに含んでもよい。
【0014】
また、本発明は、SiO粉末、Al前駆体、CaO前駆体およびCaF粉末を混合し、耐プラズマガラス原料を準備する段階と、前記耐プラズマガラス原料を酸化雰囲気で溶融させる段階と、溶融物を急速冷却する段階と、急速冷却した結果物をガラス転移温度より高い温度で熱処理する段階と、熱処理した結果物を徐冷して、耐プラズマガラスを収得する段階と、を含み、前記耐プラズマガラスは、化学成分としてSiO 32~52モル%、Al 5~15モル%、CaO 30~55モル%およびCaF 0.1~15モル%を含む耐プラズマガラスの製造方法を提供する。
【0015】
前記熱処理は、前記耐プラズマガラスのガラス転移温度(T)より高く、前記耐プラズマガラスの結晶化温度(T)より低い温度で行うことが好ましい。
【0016】
前記Al前駆体は、Al(OH)粉末を含んでもよく、前記CaO前駆体は、CaCO粉末を含んでもよい。
【0017】
前記耐プラズマガラス原料は、Y粉末をさらに含んでもよく、前記耐プラズマガラスは、化学成分としてY 0.01~15モル%をさらに含んでもよい。
【0018】
前記耐プラズマガラス原料は、ZrO粉末をさらに含んでもよく、前記耐プラズマガラスは、化学成分としてZrO 0.01~15モル%をさらに含んでもよい。
【0019】
前記CaOと前記CaFは、2.5:1~50:1のモル比を有することが好ましい。
【0020】
前記耐プラズマガラスのガラス転移温度(T)は、750℃より低くてもよい。
【0021】
前記耐プラズマガラスの結晶化温度(T)は、1090℃より低くてもよい。
【0022】
前記耐プラズマガラスのガラス安定性指数Kは、下記の式で表され、
【数2】
(ここで、Tはガラス転移温度、Tは結晶化温度、Tは液相線温度)、前記耐プラズマガラスは、2.0~3.5の範囲のKを示すことができる。
【0023】
前記耐プラズマガラスは、フッ素(fluorine)とアルゴン(Ar)の混合プラズマ環境に用いられるガラスであってもよく、前記耐プラズマガラスは、フッ素(fluorine)とアルゴン(Ar)の混合プラズマに対してエッチングレートが10nm/minより低い耐プラズマ特性を有していてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の耐プラズマガラスによれば、ガラス安定性指数Kが2.0以上と高く、フッ素(fluorine)とアルゴン(Ar)の混合プラズマに対してエッチングレートが10nm/minより低い耐プラズマ特性を示す。
【0025】
本発明の耐プラズマガラスは、半導体またはディスプレイ製造工程で用いられる装置や部品の素材に用いられることができ、耐プラズマガラスを使用することによってプラズマ環境にも十分に耐久性を示すことができ、パーティクル(particle)の発生も抑制することができ、表面がなめらかで、表面に気孔などがないので、汚染なども防止することができる。
【0026】
また、本発明の耐プラズマガラスを粉砕してガラス粉体を作製し、前記ガラス粉体を含むペーストを半導体またはディスプレイ製造工程で用いられる装置や部品(例えば、セラミック材質からなる装置や部品)にコーティングすると、前記効果以外に、ガス放出 (outgassing)も防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、実験例によって製造されたガラスを示す写真である。
図2図2は、実験例によって製造されたガラスのX線回折(XRD;X-ray diffraction)分析結果を示す図である。
図3図3は、[CaF]/([CaF]+[CaO])のモル分率(molar ratio)の関数による実験例によって製造されたガラスの熱膨張係数(α)を示す図である。
図4図4は、CaFの含有量による実験例によって製造されたガラスのDTA(differential thermal analysis)曲線を示す図である。
図5図5は、[CaF]/([CaF]+[CaO])のモル分率(molar ratio)の関数による実験例によって製造されたガラスのガラス転移温度(glass transition temperature)を示す図である。
図6図6は、ガラス組成内CaF添加および含有量によるプラズマガスによるエッチング速度の変化を多結晶アルミナ、単結晶サファイアおよびクォーツガラスと比較して示す図である。
図7図7は、実験例によって製造されたガラスのCFプラズマエッチング前後における表面粗さの変化を基準物質3種と比較して示す図である。
図8a図8aは、ラマンスペクトル(Raman spectra)の構造単位Q(800~1200cm-1)に対するガウスカーブフィッティングを示す図である。
図8b図8bは、ラマンスペクトル(Raman spectra)の構造単位Q(800~1200cm-1)に対するガウスカーブフィッティングを示す図である。
図8c図8cは、ラマンスペクトル(Raman spectra)の構造単位Q(800~1200cm-1)に対するガウスカーブフィッティングを示す図である。
図8d図8dは、ラマンスペクトル(Raman spectra)の構造単位Q(800~1200cm-1)に対するガウスカーブフィッティングを示す図である。
図8e図8eは、ラマンスペクトル(Raman spectra)の構造単位Q(800~1200cm-1)に対するガウスカーブフィッティングを示す図である。
図9図9は、800~1200cm-1で[CaF]/([CaF]+[CaO])のモル分率(molar ratio)の関数による構造単位Qの面積分率(area fraction)を示す図である。
図10図10は、プラズマエッチング前後における表面微細構造と成分分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付の図面を参照して本発明による好ましい実施例を詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は、この技術分野における通常の知識を有する者に本発明が十分に理解されるように提供されるものであり、様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲が下記に記述される実施例に限定されるものではない。
【0029】
発明の詳細な説明または請求範囲においていずれか一つの構成要素が他の構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対になる記載がない限り、当該構成要素だけからなるものに限定されて解釈されるものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいものと理解されなければならない。
【0030】
本発明の好ましい実施例による耐プラズマガラスは、化学成分としてSiO 32~52モル%、Al 5~15モル%、CaO 30~55モル%およびCaF 0.1~15モル%を含む。
【0031】
前記CaOと前記CaFは、2.5:1~50:1のモル比を有することが好ましい。
【0032】
前記耐プラズマガラスのガラス転移温度(T)は、750℃より低くてもよい。
【0033】
前記耐プラズマガラスの結晶化温度(T)は、1090℃より低くてもよい。
【0034】
前記耐プラズマガラスのガラス安定性指数Kは、下記の式で表され、
【数3】
(ここで、Tはガラス転移温度、Tは結晶化温度、Tは液相線温度)、前記耐プラズマガラスは、2.0~3.5の範囲のKを示すことができる。
【0035】
前記耐プラズマガラスは、フッ素(fluorine)とアルゴン(Ar)の混合プラズマ環境に用いられるガラスであってもよく、前記耐プラズマガラスは、フッ素(fluorine)とアルゴン(Ar)の混合プラズマに対してエッチングレートが10nm/minより低い耐プラズマ特性を有していてもよい。
【0036】
前記耐プラズマガラスは、化学成分としてY 0.01~15モル%をさらに含んでもよい。
【0037】
前記耐プラズマガラスは、化学成分としてZrO 0.01~15モル%をさらに含んでもよい。
【0038】
本発明の好ましい実施例による耐プラズマガラスの製造方法は、SiO粉末、Al前駆体、CaO前駆体およびCaF粉末を混合し、耐プラズマガラス原料を準備する段階と、前記耐プラズマガラス原料を酸化雰囲気で溶融させる段階と、溶融物を急速冷却する段階と、急速冷却した結果物をガラス転移温度より高い温度で熱処理する段階と、熱処理した結果物を徐冷して、耐プラズマガラスを収得する段階と、を含んでもよく、前記耐プラズマガラスは、化学成分としてSiO 32~52モル%、Al 5~15モル%、CaO 30~55モル%およびCaF 0.1~15モル%を含んでもよい。
【0039】
前記熱処理は、前記耐プラズマガラスのガラス転移温度(T)より高く、前記耐プラズマガラスの結晶化温度(T)より低い温度で行うことが好ましい。
【0040】
前記Al前駆体は、Al(OH)粉末を含んでもよく、前記CaO前駆体は、CaCO粉末を含んでもよい。
【0041】
前記耐プラズマガラス原料は、Y粉末をさらに含んでもよく、前記耐プラズマガラスは、化学成分としてY 0.01~15モル%をさらに含んでもよい。
【0042】
前記耐プラズマガラス原料は、ZrO粉末をさらに含んでもよく、前記耐プラズマガラスは、化学成分としてZrO 0.01~15モル%をさらに含んでもよい。
【0043】
前記CaOと前記CaFは、2.5:1~50:1のモル比を有することが好ましい。
【0044】
前記耐プラズマガラスのガラス転移温度(T)は、750℃より低くてもよい。
【0045】
前記耐プラズマガラスの結晶化温度(T)は、1090℃より低くてもよい。
【0046】
前記耐プラズマガラスのガラス安定性指数Kは、下記の式で表され、
【数4】
(ここで、Tはガラス転移温度、Tは結晶化温度、Tは液相線温度)、前記耐プラズマガラスは、2.0~3.5の範囲のKを示すことができる。
【0047】
前記耐プラズマガラスは、フッ素(fluorine)とアルゴン(Ar)の混合プラズマ環境に用いられるガラスであってもよく、前記耐プラズマガラスは、フッ素(fluorine)とアルゴン(Ar)の混合プラズマに対してエッチングレートが10nm/minより低い耐プラズマ特性を有していてもよい。
【0048】
以下、本発明の好ましい実施例による耐プラズマガラスをより具体的に説明する。
【0049】
耐プラズマガラスは、金属フッ化物のT(boiling point)の高い酸化物を多く含有するほど、プラズマエッチングに対する抵抗性が向上する。また、ガラスは、非晶質構造に起因して均一にエッチングされて、粒子汚染の発生が抑制される。R-SiO-Al(R:Gd、La、Y)ガラスは、プラズマ露出時にガラスの表面に高いboiling pointのフッ素化合物を形成する希土類酸化物の添加が、低いエッチング速度に寄与する。RO-Al-SiO(R:Mg、Ca、Sr、Ba)ガラスは、CFプラズマと反応して、高いboiling pointを有するRF系フッ素化合物を表面に形成させる。エッチング速度は、これらのTが高いほど低い。このようにガラス組成の成分とフッ素系プラズマの反応は、表面にフッ素系化合物層を形成し、エッチング速度に影響を及ぼす。
【0050】
これを基に高いTを有するCaFをガラスに適用したとき、耐プラズマ特性が向上することができる。また、CaFは、粘度と融点の減少に効果があるので、加工が容易な低融点ガラスを製造することができる。
【0051】
このような点を考慮して、本発明の好ましい実施例による耐プラズマガラスは、化学成分としてSiO 32~52モル%、Al 5~15モル%、CaO 30~55モル%およびCaF 0.1~15モル%を含む。
【0052】
前記耐プラズマガラスは、化学成分としてY 0.01~15モル%をさらに含んでもよい。
【0053】
前記耐プラズマガラスは、化学成分としてZrO 0.01~15モル%をさらに含んでもよい。
【0054】
前記CaOと前記CaFは、2.5:1~50:1のモル比を有することが好ましい。
【0055】
前記耐プラズマガラスのガラス転移温度(T)は、750℃より低くてもよい。例えば、前記ガラス転移温度(T)は、680~749℃程度でありうる。
【0056】
前記耐プラズマガラスの結晶化温度(T)は、1090℃より低くてもよい。例えば、前記結晶化温度(T)は、1030~1089℃程度でありうる。
【0057】
前記耐プラズマガラスのガラス安定性指数Kは、下記の式で表され、
【数5】
(ここで、Tはガラス転移温度、Tは結晶化温度、Tは液相線温度)、前記耐プラズマガラスは、2.0~3.5の範囲のKを示すことができる。
【0058】
前記耐プラズマガラスは、フッ素(fluorine)とアルゴン(Ar)の混合プラズマ環境に用いられるガラスであってもよく、前記耐プラズマガラスは、フッ素(fluorine)とアルゴン(Ar)の混合プラズマに対してエッチングレートが10nm/minより低い耐プラズマ特性を有していてもよい。
【0059】
以下では、本発明の好ましい実施例による耐プラズマガラスの製造方法をより具体的に説明する。
【0060】
SiO粉末、Al前駆体、CaO前駆体およびCaF粉末を混合し、耐プラズマガラス原料を準備する。
【0061】
前記Al前駆体は、後述する溶融工程および/または急速冷却工程でAlに変換される。このために、後述する溶融は、酸素(O)、空気(air)のような酸化雰囲気で行うことが好ましい。前記Al前駆体は、Al(OH)粉末を含んでもよい。
【0062】
前記CaO前駆体は、後述する溶融工程および/または急速冷却工程でCaOに変換される。このため、後述する溶融は、酸素(O)、空気(air)のような酸化雰囲気で行うことが好ましい。前記CaO前駆体は、CaCO粉末を含んでもよい。
【0063】
最終生成される耐プラズマガラスの化学成分においてCaOとCaFが2.5:1~50:1のモル比を有するように、前記CaO前駆体と前記CaFは、粉末の含有量を調節することが好ましい。
【0064】
前記耐プラズマガラス原料は、Y粉末をさらに含んでもよい。
【0065】
前記耐プラズマガラス原料は、ZrO粉末をさらに含んでもよい。
【0066】
前記耐プラズマガラス原料を酸化雰囲気で溶融させる。耐プラズマガラス原料が溶融することができる温度(例えば、1300~1800℃の温度)で一定時間(例えば、1~48時間)の間維持し、耐プラズマガラス原料を溶融させる。前記溶融は、1300~1800℃の温度で、酸化雰囲気で行うことが好ましい。
【0067】
溶融物を急速冷却する。前記急速冷却は、水冷、空冷などからなり得る。
【0068】
急速冷却した結果物をガラス転移温度より高い温度で熱処理する。前記熱処理は、前記耐プラズマガラスのガラス転移温度(T)より高く、前記耐プラズマガラスの結晶化温度(T)より低い温度(例えば、760~850℃)で行うことが好ましい。
【0069】
熱処理した結果物を徐冷して、耐プラズマガラスを収得する。
【0070】
このように製造された耐プラズマガラスは、化学成分としてSiO 32~52モル%、Al 5~15モル%、CaO 30~55モル%およびCaF 0.1~15モル%を含む。前記耐プラズマガラスは、化学成分としてY 0.01~15モル%をさらに含んでもよい。前記耐プラズマガラスは、化学成分としてZrO 0.01~15モル%をさらに含んでもよい。前記CaOと前記CaFは、2.5:1~50:1のモル比を有することが好ましい。
【0071】
前記耐プラズマガラスのガラス転移温度(T)は、750℃より低くてもよい。例えば、前記ガラス転移温度(T)は、680~749℃程度でありうる。
【0072】
前記耐プラズマガラスの結晶化温度(T)は、1090℃より低くてもよい。例えば、前記結晶化温度(T)は、1030~1089℃程度でありうる。
【0073】
前記耐プラズマガラスのガラス安定性指数Kは、下記の式で表され、
【数6】
(ここで、Tはガラス転移温度、Tは結晶化温度、Tは液相線温度)、前記耐プラズマガラスは、2.0~3.5の範囲のKを示すことができる。
【0074】
前記耐プラズマガラスは、フッ素(fluorine)とアルゴン(Ar)の混合プラズマ環境に用いられるガラスであってもよく、前記耐プラズマガラスは、フッ素(fluorine)とアルゴン(Ar)の混合プラズマに対してエッチングレートが10nm/minより低い耐プラズマ特性を有していてもよい。
【0075】
以下では、本発明による実験例を具体的に提示し、下記に提示する実験例に本発明が限定されるものではない。
【0076】
耐プラズマガラスは、金属フッ化物のT(boiling point)の高い酸化物を多く含有するほど、プラズマエッチングに対する抵抗性が向上する。また、ガラスは、非晶質構造に起因して均一にエッチングされて、粒子汚染の発生が抑制される。R-SiO-Al(R:Gd、La、Y)ガラスは、プラズマ露出時にガラスの表面に高いboiling pointのフッ素化合物を形成する希土類酸化物の添加が、低いエッチング速度に寄与する。RO-Al-SiO(R:Mg、Ca、Sr、Ba)ガラスは、CFプラズマと反応して、高いboiling pointを有するRF系フッ素化合物を表面に形成させる。エッチング速度は、これらのTが高いほど低い。このようにガラス組成の成分とフッ素系プラズマの反応は、表面にフッ素系化合物層を形成し、エッチング速度に影響を及ぼす。
【0077】
これを基に高いTを有するCaFをガラスに適用したとき、耐プラズマ特性が向上することができる。また、CaFは、粘度と融点の減少に効果があるので、加工が容易な低融点ガラスを製造することができる。
【0078】
本実験例では、前記の予想を実際確認しようとした。CaF含有量は、0~9.6mol%まで相異に調節し、CaF含有量によるガラスの熱的、構造的特性の変化を確認した。また、CF/O/Ar混合ガスを用いた高密度プラズマ乾式エッチング後、エッチング速度の観点および表面粗さおよび微細構造分析の観点における耐プラズマ特性を評価した。
【0079】
1.ガラス製造
フッ素(Fluoride)成分を含有するガラスの組成は、SiO-Al-(48-x)CaO-xCaF(CASF)であり、溶融-急冷法で製造された。
【0080】
CaF含有量は、表1のように、CaO:CaFの比を調節して原料を称量した。
【0081】
耐プラズマガラス原料は、SiO粉末、Al(OH)粉末、CaCO粉末およびCaF粉末を使用し、表1に示した組成比を有するように称量した。
【0082】
称量した原料は、3Dミキサーを用いて3時間の間均一に混合した。
【0083】
ガラス溶融は、混合した原料を白金るつぼに入れ、電気加熱炉を用いて1400℃で2時間の間行われた。
【0084】
溶融物は、黒鉛モルドに注入した後、急冷し、内部応力を除去するために、ガラス転移温度より50℃高い温度で2時間の間維持させた後、徐冷した。このように実験例によって製造されたガラスは、SiO-Al-(48-x)CaO-xCaFの組成を有するCASFガラスである。
【0085】
このように製造されたガラスの結晶相は、X線回折装置(DMAX-2500,Rigaku,Japan)を用いて確認した。
【0086】
【表1】
【0087】
本実験例では、CaO-Al-SiO(CAS)ガラスのCaOをCaFに置換したとき、その構造、熱特性および耐プラズマ特性に及ぼす影響を調査した。CaFが添加されることによって、ガラス転移温度(T)、結晶化温度(T)および液相線温度(T)がさらに低い温度に移動した。これは、ガラス構造単位であるQの比が減少し、Qの比が増加し、Fイオンがガラス構造を破壊することと関連したと考える。また、CaFは、CF/O/Ar混合ガスに対する耐浸食性を増加させた。これは、CaFの高いboiling point(T)によるものと推定する。エッチング後、クォーツガラス(quartz glass)および焼結アルミナの表面粗さが増加することとは異なって、F含有ガラスの微細構造は変わらなかった。したがって、CaFをCASガラスのCaOに置換したとき、ガラスの低温および高温粘度を低減し、耐プラズマ特性を向上させる。以下では、上述した内容についてより具体的に記述する。
【0088】
2.熱・構造的特性
ガラスの熱膨張係数(α=100~300℃)とガラス転移温度(T)は、ディラトメーター(DIL 402 C,NETZSCH,Germany)を用いてN-4wt% H混合ガス雰囲気下で10℃の昇温速度で測定された。結晶化温度(T)および液相線温度(T)は、示差熱分析装置(DTA,Labsys evo,France)を用いてAr雰囲気下で10℃の昇温速度で測定された。ガラスの構造は、ラマン分光計(inVia,Renishaw,England)を用いた。532nmの波長を有するAr excitation laserソースを用いて800~1200cm-1の範囲のsilicate構造のスペクトルを収集した。
【0089】
3.高密度プラズマ乾式エッチング
プラズマエッチング試験のために、10×10×2mmで加工されたガラス試験片を両面ミラーポリッシングし、被エッチング部位を除いて5重のキャプトンテープで試験片をマスキングした。プラズマエッチング試験は、polymer etcher(TCP-9400DFM,Lam Research,USA)を使用した。フルオロカーボンに基づくガス比率は、酸素を添加することによって、より多くのフッ素ラジカルを形成するように設計され、詳細な条件を表2に示した。試験は、1時間の間行われ、10分間エッチング後、5分間休止するサイクルで、過度なエッチングを防止した。また、エッチング速度を基準物質と比較するために、焼結アルミナ、サファイア、クォーツガラスも共にウェハーに装着してテストした。
【0090】
【表2】
【0091】
4.耐プラズマ特性評価
エッチング速度の観点における耐プラズマ特性は、α-step(surfcorder,ET3000,Kosaka laboratory Ltd.,Japan)を用いて評価した。粒子汚染の観点における耐プラズマ特性は、表面粗さ測定装置(surftest,SJ-411,Mitutoyo,Japan)を用いて評価した。また、表面反応を確認するために、走査電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)(JEOL,JSM-6701F,Japan)で微細構造を確認し、エネルギー分散分光装置(EDS;energy dispersive spectrometry)(AZtecOne,Oxford Instruments,UK)で成分分析を行った。図1は、実験例によって製造されたガラスを示す写真である。
【0092】
図1を参照すると、ガラスは、外観上きれいでかつ透明に製造され、F成分の含有量が増加するにつれて、黄色が次第に減少した。
【0093】
図2は、実験例によって製造されたガラスのX線回折(XRD;X-ray diffraction)分析結果を示す図である。
【0094】
図2を参照すると、実験例によって製造されたガラスは、典型的な非晶質の回折パターンを示し、結晶相は観察されなかった。
【0095】
図3は、[CaF]/([CaF]+[CaO])のモル分率(molar ratio)の関数による実験例によって製造されたガラスの熱膨張係数(α)を示す図である。
【0096】
図3で、平均100~300℃で計算された熱膨張係数(α)は、[CaF]/([CaF]+[CaO])含有量の関係で図示された。αは、組成内CaOがCaFに置き換えられるにつれて増加する傾向を示した。しかしながら、組成内フッ素置換レベルによる体系的なαの変化は現れなかった。
【0097】
図4は、CaFの含有量による実験例によって製造されたガラスのDTA(differential thermal analysis)曲線を示す図である。
【0098】
図4を参照すると、組成の変化によるガラスのDTAプロファイルを示し、結晶化温度(T)は、CaOをCaFに置き換えるにつれて減少した。液相線温度(T)は、CaOをCaFに置き換えるにつれて1283℃から約1200℃まで減少した。CaFがガラスの融点と粘度減少剤の役割をすることを確認することができた。
【0099】
図5は、[CaF]/([CaF]+[CaO])のモル分率(molar ratio)の関数による実験例によって製造されたガラスのガラス転移温度(glass transition temperature)を示す図である。
【0100】
図5を参照すると、ガラス転移温度(T)は、[CaF]/([CaF]+[CaO])の含有量の関係で示された。二つの変数間のregressionは、97.6%と非常に高い。これは、F成分がガラス転移温度(T)に及ぼす影響が非常に大きいことを示す。加熱時に、結晶化に抵抗するガラスの能力を指すガラス安定性という用語は、T、TおよびTのような特性温度間の相関関係から評価することができる。ガラス安定性指数の一つであるHrubパラメーター(K)を下記の数式1に示した。
【0101】
[数式1]
【数7】
:ガラス転移温度
:結晶化温度
:液相線温度
【0102】
パラメーターKと臨界冷却速度(critical cooling rate)との間には逆線形関係があるので、Kが大きいほど、ガラスの安定性が高く、これは、冷却時に溶融物のガラス形成能力(GFA)の尺度として用いられ得る。すべてのガラスのK値と特定温度値を表3に示した。CaOがCaFに置き換えられるにつれてガラスの安定性が増加し、CaF=7.2mol%で最大値に到達した。しかしながら、CaF含有量が9.6mol%であるとき、K=2.18であり、CaF含有ガラス中、ガラス形成能力が最も低かった。
【0103】
【表3】
【0104】
図6は、ガラス組成内CaFの添加および含有量によるプラズマガスによるエッチング速度の変化を多結晶アルミナ、単結晶サファイアおよびクォーツガラスと比較して示す図である。図6を参照すると、エッチング速度は、組成内CaOがCaFに置き換えられるにつれて減少する傾向を示した。すなわち、耐プラズマ特性が高まることを意味する。特に、CaF含有量が9.6mol%と増加したとき、エッチング速度は、5.04±0.14nm/minと最も低く、クォーツガラス、焼結アルミナ、サファイア対比それぞれ4、11、26%レベルであった。CaF含有量が4.8mol%以上であるとき、CaF含有量の増加がエッチング速度に及ぼす影響は少なかった。図7は、実験例によって製造されたガラスのCFプラズマエッチング前後における表面粗さの変化を基準物質3種と比較して示す図である。
【0105】
図7を参照すると、エッチング後、クォーツガラス、焼結アルミナの表面粗さは、それぞれ、26.1、24.2%増加した。これとは異なって、サファイアとCASFガラスは、エッチング後にも、R=0.014μm以下と非常に低い表面粗さの値を維持し、これは、プラズマエッチング時に、均等なエッチングが行われたことを意味する。
【0106】
図10は、プラズマエッチング前後における表面微細構造と成分分析結果を示す図である。図10で、(a)はクォーツガラス、(b)はサファイア、(c)は焼結アルミナ、(d)はG1000ガラスサンプル、(e)はG8020ガラスサンプルを示す。
【0107】
図10を参照すると、基準物質とCASFガラスのプラズマエッチング前後における表面微細構造の変化と成分分析結果を確認することができる。エッチング時に、試験片の表面は、フッ素成分と化学的な反応を伴うが、成分分析の結果、フッ素成分が検出されなかった。これは、強い物理的エッチングによってフッ素とガラス組成物で構成された二次生成物層がきれいに除去されたと判断される。Quartz glassの場合、均一な表面は、エッチング後、1~10μmのサイズを有する円形の局部的な浸食が散発的に発生した。焼結アルミナとサファイアの場合、同一元素で構成されたが、結晶構造によるエッチング様相の差異を示した。多結晶構造であるアルミナは、構造が破壊される程度の強い局部的なエッチングが観察された。サファイアとCASFガラスのエッチング前後における微細構造は、電子顕微鏡で判別できない程度に均一であり、差異がなかった。
【0108】
図5から、すべてのガラス組成に対するTは、CaF含有量の増加によって減少したことを確認した。ガラス製造のための溶融過程で、シリケート(silicate)ガラスの溶融物のガラスネットワーク構造は、ガラスの構造と性能を決定する主な要素である。Si4+とAl3+は、溶融物のネットワーク(network)形成のために架橋酸素イオンと結合したネットワーク形成カチオンである。これとは異なって、O2-とCaFドーピングによるFイオンは、Si-O、Al-O結合を破壊して溶融物のネットワーク維持を妨害するネットワーク改質(modifier)アニオンである。Fイオンのガラスネットワークに及ぼす影響は、ラマンスペクトル(Raman spectra)の構造単位Q(800~1200cm-1)に対するガウスカーブフィッティング(図8a~図8e参照)と面積分率(area fraction)の比率(図9参照)を通じて確認することができる。すべてのQ値に対するラマンactive vibrationsおよびラマンシフトは、表4に示した。
【0109】
【表4】
【0110】
CaFの添加は、QとQの比率の変化に影響を及ぼし、QとQの比率の変化には影響が少なかった。また、CaF含有量の増加によってQの比率が増加し、Qの比率が減少することによって非架橋酸素が増加することを確認した。FイオンとO2-イオンの半径は、それぞれ、1.25×10-7、1.32×10-7mmと非常に僅かなので、これらは、Si-O結合に作用してシリコン酸化物(silicon oxide)クラスターを破壊する。また、Fイオンの電気陰性度がO2-より高いため、Fイオンは、架橋または非架橋酸素を置き換えてSi原子の電子環境を歪曲させることができる。このような現象は、[SiO四面体でSi-O結合に関連した力(force)の定数と振動の周波数を減少させ、Si-O結合を弱化させる。したがって、Fイオンは、O2-イオンよりシリケートネットワーク(silicate network)の破壊に効果的に作用することができ、これがTに影響を及ぼしたものと考えられる。図4のDTA結果から、CaFが添加されることによって、TとTがさらに低い温度にシフト(shift)したことを確認した。CaFを添加することによって、シリケートネットワークは、[SiF](sheet)または[SiOF](chain)に変化し、下記のような反応式1および反応式2で説明される。
【0111】
[反応式1]
2[SiO(3D network)+F=[SiF] (sheet)
【0112】
[反応式2]
[SiF] (sheet)+F=2[SiOF] (chain)
【0113】
また、シリケート溶融物において、CaFは、Ca2+イオンと反応して、二つのCaFイオンを形成する。
【0114】
Ca2++CaF⇔2CaF
【0115】
*このような反応で形成されたCaFイオンは、単一結合した酸素に付着し、単一結合酸素(O)とCa2+の引力相互作用を減少させ、その結果、ガラスの高温粘度が減少する。したがって、CaFのシリケートネットワークの損傷によるガラスの構造的変化がガラスの低温および高温粘度の減少を引き起こすと判断される。
【0116】
CF/O/Ar混合ガスをエッチング気体として用いたプラズマは、プラズマ放電によって分解および活性化する。これは、反応性が高いフッ素ラジカルとArイオンを生成し、それぞれエッチング物質との化学的反応と物理的衝突を誘導することになる。このようなエッチング物質とプラズマ間の反応に起因して反応生成物が表面に形成される。また、物理的スパッタリングによって基板から脱落反応(エッチング)が起こる。図6で、エッチング速度で比較したすべてのガラスの耐プラズマ性特徴は、CaF含有量に比例して向上した。ガラスは、多様な元素で構成された化合物であり、フッ素ラジカルと酸化物がフッ素系化合物を形成する。また、フッ素系化合物のTが高いほど、エッチング速度が減少する。表5は、基準物質とガラス組成の元素に対するフッ素系化合物のTを示す。
【0117】
【表5】
【0118】
が低いほど、エッチング速度が高かった。SiFの場合、Tは、-86℃と非常に低くて、フッ素化が進行されると同時に、気化して、フッ素化層が存在しない。フッ素化層の不在は、エッチング速度の増加に影響を及ぼす。AlF、CaFのTは、それぞれ、1275、2533℃であり、常温で安定した固体で存在するので、フッ素化が進行した部分は、揮発性が非常に低くて、Arイオンを通した物理的エッチングの影響のみを受ける。そのため、フッ素系化合物のTが高く、含有量が多いほど、CFプラズマによるエッチング速度を低減できると判断される。フッ素との反応で表面に形成されたフッ素系化合物は、物理的エッチングによって表面から脱落して汚染粒子として作用することができる。図10で、エッチング後、クォーツガラスと焼結アルミナの表面はひどく浸食された。クォーツガラスの場合、エッチング前に微細構造によるエッチングの影響がないことが予想された。しかしながら、フッ素との反応生成物が非常に早く揮発されるので、局部的なエッチングが発生し、この部分に浸食の加速化が起こったと推定される。アルミナの場合、浸食が集中できる基点を気孔と粒界が提供するので、エッチング工程中に汚染粒子を誘発および構造的欠陥に寄与すると考えられる。これとは異なって、単結晶構造であるサファイアと非晶質構造であるCASFガラスは、界面と気孔による局部的なエッチングと特定方向によるエッチング速度の差異を防止できるものと判断される。CFプラズマエッチング前後における表面形状変化の差異は、表面粗さの変化と一致した(図7参照)。したがって、汚染粒子の減少の観点から、低い表面粗さと均一な微細構造を維持することは、耐プラズマ特性の評価時に重要な要素として作用する。実験例では、CaF添加によるCaO-Al-SiOガラスの構造的、熱的特性挙動を確認した。また、CF/O/Ar混合ガスをエッチング気体として用いた高密度プラズマ乾式エッチング後、耐プラズマ特性を評価した。
【0119】
CaF添加によるFイオンは、シリケート構造のネットワーク破壊を深化し、粘度の減少を招いた。そのため、ガラスの熱膨張係数が増加し、転移温度が794℃から688.4℃まで減少した。このような結果は、CaF含有量の増加による構造ユニットQの比率の増加と一致した。ガラス形成能力は、CaF含有量の増加に比例して増加し、CaF含有量が7.4mol%であるとき、最も高かった。
【0120】
ガラスのエッチング速度は、フッ素含有量が増加するほど、Tが2533℃であるCaFの含有量を増加させることによって、エッチング速度を5.04nm/minまで低減することができた。CFプラズマエッチング前後におけるガラスの表面粗さと微細構造は、フラット(flat)状態を維持した。
【0121】
結論的に、CaFの添加は、低温粘度(T)と高温粘度(T)を減少させ、ガラス形成の安定性と耐プラズマ特性を向上させた。
【0122】
以上、本発明の好ましい実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、当該分野において通常の知識を有する者によって様々な変形が可能である。
【0123】
[この発明を支援した国家研究開発事業]
[課題固有番号]S2520985
[部署名]中小企業庁
[研究管理専門機関]中小企業技術情報振興院
[研究事業名]WC300
[研究課題名]半導体/ディスプレイ製造装備用600phi以上の立体形状部品および6世代以上の超大面積部品に対するプラズマ耐食性の表面処理技術開発
[寄与率]1/1
[主管機関]アイワンス(株)
[研究期間]2017.06.01~2021.12.31
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図8d
図8e
図9
図10