(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】とろみ付与用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 29/269 20160101AFI20240201BHJP
【FI】
A23L29/269
(21)【出願番号】P 2022554086
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2021036057
(87)【国際公開番号】W WO2022071471
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2020167724
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】小野 高裕
(72)【発明者】
【氏名】堀 一浩
(72)【発明者】
【氏名】大川 純平
(72)【発明者】
【氏名】川上 智美
(72)【発明者】
【氏名】早川 結樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彩子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 麻奈
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-271258(JP,A)
【文献】特開2009-000055(JP,A)
【文献】特開2014-023478(JP,A)
【文献】国際公開第2014/034176(WO,A1)
【文献】特開2017-055763(JP,A)
【文献】藤田有紀ほか,市販とろみ調整食品の分類,県立広島大学人間文学部紀要, 2017, vol.12, p.1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キサンタンガムを含む
粉末状のとろみ付与用組成物であって、
前記とろみ付与用組成物は、液体の粘度を10mPa・s~1000mPa・sに調整し且つ当該調整後の当該液体の嚥下時における咽頭残留発生の抑制のために用いられるものであり、
前記キサンタンガムの含有割合は20質量%~40質量%であり、
前記とろみ付与用組成物を用いて調製されたとろみ液の応力緩和試験で決定される弾性率E
∞が0.25以上である、前記とろみ付与用組成物、
ここで、
前記応力緩和試験が行われるとろみ液は、粘度が150mPa・sに調整された水溶液であり、
前記応力緩和試験は、前記とろみ液に対して歪ε
0を与えたときの応力Sの経時変化を測定するものであり、
前記弾性率E
∞は、前記応力緩和試験において測定される応力Sを以下の式(1)
【数1】
(式(1)において、S(t)は或る時刻における応力であり、ε
0はとろみ液に付与される歪みであり、E
∞、E
1、及びE
2は弾性率であり、tは応力が測定される時刻であり、λ
1及びλ
2は緩和時間である。)
にフィッティングすることによって取得される。
【請求項2】
前記とろみ付与用組成物は、水溶性カルシウム塩をさらに含む、請求項1に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項3】
前記とろみ付与用組成物はデキストリンをさらに含み、且つ、前記デキストリンの含有割合が50質量%以上である、請求項1又は2に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項4】
とろみ付与に伴い増加する嚥下時舌圧を低減するために用いられる、請求項
1~3のいずれか一項に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項5】
液体の嚥下時における咽頭通過時間を短縮するために用いられる、請求項1~4のいずれか一項に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項6】
嚥下困難者が摂取する液体にとろみを付与するために用いられる、請求項1~5のいずれか一項に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項7】
前記嚥下困難者は、嚥下反射惹起の遅延、咽頭圧の低下、及び、咽頭残留の発生のうちの少なくとも一つを呈する嚥下困難者である、請求項6に記載のとろみ付与用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、とろみ付与用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢社会において、加齢や疾患に伴う嚥下障害は誤嚥や窒息を引き起こす可能性があり、大きな問題の一つとなっている。誤嚥には、嚥下前誤嚥、嚥下中誤嚥、及び嚥下後誤嚥の3つが存在する。例えば嚥下前誤嚥では、液体の咽頭流入に対し、喉頭閉鎖のタイミングが遅れることで、食塊が喉頭侵入し、誤嚥に至る。
【0003】
このような液体の早期流入による誤嚥を防ぐために、例えば液体にとろみを付与することが行われる。これまでに、液体にとろみを付与するための組成物に関していくつか提案されている。例えば、下記特許文献1には、キサンタンガムと水溶性カルシウム塩とを含有することを特徴とするトロミ剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記で述べた液体の早期流入の原因としては、口腔内での食塊の保持力の低下や嚥下反射惹起の遅延が挙げられる。液体へのとろみ付与により、粘性を増加させることで、液体の口腔内保持が容易になり、咽頭への輸送が遅らされる。これにより、液体の早期流入の頻度を低下させることができると考えられる。とろみ付き液体に関して、日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013によると、均質で付着性が低く、粘度が適切で凝集性が高いことが求められる。
【0006】
しかし、とろみ付き液体は、口腔内又は咽頭内において残留する場合がある。例えば咽頭残留は、嚥下後誤嚥を誘発しうる。そのため、このような残留を防ぐことが望ましい。
また、とろみ付き液体は、例えば水と比べると、飲み込みの際により多くの舌圧を要する場合がある。そのため、飲み込む際に要する舌圧が高いことは、摂取するヒトにとってはより多くの負荷がかかっていると考えられる。そのため、より低い舌圧で飲み込むことが可能なとろみ付き液体が望ましい。
以上を踏まえ、本技術は、嚥下に適したとろみを液体に付与することができるとろみ付与用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定のとろみ付与用組成物が嚥下に適したとろみを液体に付与するために適していることを見出した。
すなわち、本技術は、以下を提供する。
[1]増粘多糖類を含むとろみ付与用組成物であって、
前記とろみ付与用組成物を用いて調製されたとろみ液の応力緩和試験で決定される弾性率E
∞が0.25以上である、前記とろみ付与用組成物、
ここで、
前記応力緩和試験が行われるとろみ液は、粘度が150mPa・sに調整された水溶液であり、
前記応力緩和試験は、前記とろみ液に対して歪ε
0を与えたときの応力Sの経時変化を測定するものであり、
前記弾性率E
∞は、前記応力緩和試験において測定される応力Sを以下の式(1)
【数1】
(式(1)において、S(t)は或る時刻における応力であり、ε
0はとろみ液に付与される歪みであり、E
∞、E
1、及びE
2は弾性率であり、tは応力が測定される時刻であり、λ
1及びλ
2は緩和時間である。)
にフィッティングすることによって取得される。
[2]前記増粘多糖類はキサンタンガムを含む、[1]に記載のとろみ付与用組成物。
[3]とろみ付与された液体の嚥下時における咽頭残留性を低減するために用いられる、[1]又は[2]に記載のとろみ付与用組成物。
[4]とろみ付与に伴い増加する嚥下時舌圧を低減するために用いられる、[3]に記載のとろみ付与用組成物。
[5]液体の嚥下時における咽頭通過時間を短縮するために用いられる、[1]~[4]のいずれか一つに記載のとろみ付与用組成物。
[6]嚥下困難者が摂取する液体にとろみを付与するために用いられる、[1]~[5]のいずれか一つに記載のとろみ付与用組成物。
[7]前記嚥下困難者は、送り込み障害を有する、[6]に記載のとろみ付与用組成物。
また、本技術は以下も提供する。
<1>キサンタンガムを含む粉末状のとろみ付与用組成物であって、
前記とろみ付与用組成物は、液体の粘度を10mPa・s~1000mPa・sに調整し且つ当該調整後の当該液体の嚥下時における咽頭残留発生の抑制のために用いられるものであり、
前記キサンタンガムの含有割合は20質量%~40質量%であり、
前記とろみ付与用組成物を用いて調製されたとろみ液の応力緩和試験で決定される弾性率E
∞
が0.25以上である、前記とろみ付与用組成物、
ここで、
前記応力緩和試験が行われるとろみ液は、粘度が150mPa・sに調整された水溶液であり、
前記応力緩和試験は、前記とろみ液に対して歪ε
0
を与えたときの応力Sの経時変化を測定するものであり、
前記弾性率E
∞
は、前記応力緩和試験において測定される応力Sを、上記[1]に記載の式(1)にフィッティングすることによって取得される。
<2>前記とろみ付与用組成物は、水溶性カルシウム塩をさらに含む、<1>に記載のとろみ付与用組成物。
<3>前記とろみ付与用組成物はデキストリンをさらに含み、且つ、前記デキストリンの含有割合が50質量%以上である、<1>又は<2>に記載のとろみ付与用組成物。
<4>とろみ付与に伴い増加する嚥下時舌圧を低減するために用いられる、<1>~<3>のいずれか一つに記載のとろみ付与用組成物。
<5>液体の嚥下時における咽頭通過時間を短縮するために用いられる、<1>~<4>のいずれか一つに記載のとろみ付与用組成物。
<6>嚥下困難者が摂取する液体にとろみを付与するために用いられる、<1>~<5>のいずれか一つに記載のとろみ付与用組成物。
<7>前記嚥下困難者は、嚥下反射惹起の遅延、咽頭圧の低下、及び、咽頭残留の発生のうちの少なくとも一つを呈する嚥下困難者である、<6>に記載のとろみ付与用組成物。
【発明の効果】
【0008】
本技術により、嚥下に適したとろみを液体に付与することができる。例えば、本技術により、とろみ付き液体の咽頭残留を防ぐことができる。
なお、本技術の効果は、ここに記載された効果に限定されず、本明細書内に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1B】とろみ液を応力緩和試験に付した場合の応力緩和を説明するための模式的なグラフである。
【
図3】舌圧センサの配置を説明するための図である。
【
図5】嚥下音測定装置の配置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本技術の好ましい実施形態について説明する。ただし、本技術は以下の好ましい実施形態のみに限定されず、本技術の範囲内で自由に変更することができる。
【0011】
1.本技術の基本概念
【0012】
本技術のとろみ付与用組成物は、増粘多糖類を含み、且つ、前記とろみ付与用組成物を用いて調製されたとろみ液に対して所定の応力緩和試験を行ったときに、当該とろみ液が所定の物性を有すると決定されるものである。
本発明者らは、同じ粘度を有するとろみ液であっても、嚥下のための適性が異なること、さらに、前記所定の物性を液体に付与するとろみ付与用組成物によって、とろみ液の嚥下適性を向上させることができ、例えば咽頭残留の発生を防ぐことができることを見出した。
【0013】
前記応力緩和試験が行われるとろみ液は、粘度が150mPa・sに調整された水溶液であり、前記応力緩和試験は、前記とろみ液に対して歪ε
0を与えたときの応力Sの経時変化を測定するものであり、当該物性は、前記応力緩和試験において測定される応力Sを以下の式(1)
【数2】
(式(1)において、S(t)は或る時刻における応力であり、ε
0はとろみ液に付与される歪みであり、E
∞、E
1、及びE
2は弾性率であり、tは応力が測定される時刻であり、λ
1及びλ
2は緩和時間である。)
にフィッティングすることによって取得される。弾性率E
∞、E
1、及びE
2の単位はPaである。また、応力S(t)の単位もPaである。また、緩和時間λ
1及びλ
2は単位は秒(Sec)である。
上記式(1)は、
図1Aに示されるとおりの粘弾性モデルに対応する式である。当該粘弾性モデルが、とろみ液の粘弾性を表すために適している。同図に示されるとおり、当該粘弾性モデルは、並列された1つのばね要素と2つのマックスウェル要素とを有する。歪ε
0は、同図に示されるとおりに付与される。当該ばね要素の弾性率がE
∞である。当該2つのマックスウェル要素の粘性率がそれぞれη
1及びη
2であり、且つ、弾性率がそれぞれE
1及びE
2である。ここで、緩和時間λは、η/Eによって表される。すなわち、λ
1=η
1/E
1であり、λ
2=η
2/E
2である。とろみ液を応力緩和試験に付した場合の、時間に対する応力の変化を示す模式的なグラフを
図1Bに示す。
図1Bに示されるように、とろみ液に応力緩和試験に付した場合において、最初に急激な応力緩和を示し、その後、なだらかな応力緩和を示す。そのため、上記のとおり2つのマックスウェル要素を有する粘弾性モデルが適している。
前記所定の物性は、前記弾性率E
∞であってよい。また、前記所定の物性は、前記緩和時間λ
1及び/又はλ
2であってもよい。また、前記所定の物性は、前記弾性率E
∞、前記緩和時間λ
1、及び前記緩和時間λ
2のうちのいずれか2つの組合せであってよく、又は、これら全てであってもよい。前記所定の物性は、前記弾性率E
1及び/又はE
2を含んでもよい。これらの物性のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つが後述の数値範囲内にあるとろみ液を生成するとろみ付与用組成物が、嚥下に適したとろみ液を生成することができる。
【0014】
前記応力緩和試験が行われるとろみ液は、とろみ付与用組成物の水溶液である。当該とろみ液は、とろみ付与用組成物を水に溶解させることによって調製されてよい。当該とろみ液の粘度は、E型回転粘度計を用いて、20℃且つずり速度50sec-1の条件下で測定される粘度である。所望の粘度(例えば150mPa・s又は400mPa・s)を達成するために、水に添加されるとろみ付与用組成物の量は適宜調整されてよい。
【0015】
本技術において、150mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の弾性率E∞は、好ましくは0.25以上であり、より好ましくは0.30以上、0.35以上、又は0.40以上であり、さらにより好ましくは0.42以上、0.45以上、又は0.50以上であってよい。
150mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の弾性率E∞は、例えば1.50以下、1.20以下、又は1.00以下であってよく、特には0.80以下、さらにより特には0.60以下であってもよい。
本技術において、150mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の弾性率E∞の数値範囲は、上記で挙げた上限値及び下限値から選択された組合せであってよく、例えば0.25以上1.50以下、0.30以上1.20以下、又は0.42以上1.00以下であってよい。
弾性率E∞の数値を調節することによって、嚥下適性を向上させることができ、例えば咽頭残留発生を抑制することができる。
【0016】
本技術において、150mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の緩和時間λ1は、好ましくは1.00以上であり、より好ましくは1.50以上、2.00以上、2.50以上、又は3.00以上であってよい。
150mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の緩和時間λ1は、例えば20.00以下であり、好ましくは18.00以下、より好ましくは14.00以下、12.00以下、10.00以下、8.00以下、6.00以下、又は4.00以下であってよい。
本技術において、150mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の緩和時間λ1の数値範囲は、上記で挙げた上限値及び下限値から選択された組合せであってよく、例えば1.00以上20.00以下、1.50以上16.00以下、又は2.00以上10.00以下であってよい。
緩和時間λ1の数値を調節することによって、嚥下適性を向上させることができ、例えば嚥下時舌圧の低減及び/又は咽頭通過時間の短縮が可能となる。
【0017】
本技術において、150mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の緩和時間λ2は、好ましくは0.04以上であり、より好ましくは0.06以上、より好ましくは0.08以上、さらにより好ましくは0.10以上であってよい。
150mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の緩和時間λ2は、例えば2.00以下であり、好ましくは1.00以下であり、より好ましくは0.70以下、0.50以下、又は0.30以下であってよい。
本技術において、150mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の緩和時間λ2の数値範囲は、上記で挙げた上限値及び下限値から選択された組合せであってよく、例えば0.04以上2.00以下、0.06以上0.70以下、又は0.06以上0.50以下であってよい。
緩和時間λ2の数値を調節することによって、嚥下適性を向上させることができ、例えば嚥下時舌圧の低減及び/又は咽頭通過時間の短縮が可能となる。
【0018】
本技術において、150mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の弾性率E1は、好ましくは0.50以上であり、好ましくは1.00以上、1.20以上、又は1.50以上であり、より好ましくは1.70以上であり、さらにより好ましくは2.00以上であり、2.50以上、3.00以上、又は3.50以上であってよい。
150mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の弾性率E1は、例えば10.00以下、8.00以下、又は6.00以下であってよく、特には5.00以下、さらにより特には4.00以下であってもよい。
本技術において、150mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の弾性率E1の数値範囲は、上記で挙げた上限値及び下限値から選択された組合せであってよく、例えば0.50以上10.00以下、1.70以上8.00以下、又は2.00以上5.00以下であってよい。
【0019】
本技術において、150mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の弾性率E2は、例えば3.00以上であり、好ましくは3.50以上、より好ましくは4.50以上、5.00以上、5.50以上、又は6.00以上であってよい。
150mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の弾性率E2は、好ましくは12.00以下、より好ましくは10.00以下、9.00以下、又は8.00以下、さらにより好ましくは7.45以下であってもよい。
本技術において、150mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の弾性率E2の数値範囲は、上記で挙げた上限値及び下限値から選択された組合せであってよく、例えば3.00以上12.00以下、4.50以上10.00以下、又は4.50以上9.00以下であってよい。
【0020】
以上で述べた物性は、150mPa・sの粘度を有するとろみ液についての物性であるが、本技術において、前記応力緩和試験が行われるとろみ液の粘度は、400mPa・sであってもよい。以下で、前記応力緩和試験が行われるとろみ液の粘度が400mPa・sである場合における前記所定の物性を説明する。
【0021】
本技術において、400mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の弾性率E∞は、好ましくは1.50以上、2.00以上、2.50以上、3.00以上、3.50以上、又は4.00以上であり、より好ましくは4.25以上、4.28以上、又は4.30以上であってよい。
400mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の弾性率E∞は、例えば10.00以下、8.00以下、又は6.00以下であってよく、特には5.00以下、さらにより特には4.50以下であってもよい。
本技術において、400mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の弾性率E∞の数値範囲は、上記で挙げた上限値及び下限値から選択された組合せであってよく、例えば1.50以上10.00以下、4.00以上8.00以下、又は4.25以上6.00以下であってよい。
弾性率E∞の数値を調節することによって、嚥下適性を向上させることができ、例えば咽頭残留発生を抑制することができる。
【0022】
本技術において、400mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の緩和時間λ1は、例えば1.00以上であり、特には2.00以上、3.00以上、4.00以上、5.00以上であってよい。
400mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の緩和時間λ1は、例えば30.00以下であり、好ましくは25.00以下、より好ましくは18.00以下、15.00以下、12.00以下、10.00以下であり、又は8.00以下であってよい。
本技術において、400mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の緩和時間λ1の数値範囲は、上記で挙げた上限値及び下限値から選択された組合せであってよく、例えば1.00以上30.00以下、2.00以上20.00以下、又は3.00以上15.00以下であってよい。
緩和時間λ1の数値を調節することによって、嚥下適性を向上させることができ、例えば嚥下時舌圧の低減及び/又は咽頭通過時間の短縮が可能となる。
【0023】
本技術において、400mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の緩和時間λ2は、例えば0.04以上であり、好ましくは0.06以上、より好ましくは0.08以上、さらにより好ましくは0.10以上、0.12以上、又は0.14以上であってよい。
400mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の緩和時間λ2は、例えば2.00以下であり、好ましくは1.00以下であり、より好ましくは0.70以下、0.50以下、又は0.30以下であってよい。
本技術において、400mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の緩和時間λ2の数値範囲は、上記で挙げた上限値及び下限値から選択された組合せであってよく、例えば0.04以上2.00以下、0.06以上0.70以下、又は0.06以上0.50以下であってよい。
緩和時間λ2の数値を調節することによって、嚥下適性を向上させることができ、例えば嚥下時舌圧の低減及び/又は咽頭通過時間の短縮が可能となる。
【0024】
本技術において、400mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の弾性率E1は、例えば6.00以上であり、好ましくは7.00以上、8.00以上、又は9.00以上であり、さらにより好ましくは10.00以上、11.00以上、又は12.00以上であってよい。
400mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の弾性率E1は、例えば20.00以下、18.00以下、16.00以下、又は15.00以下であってよい。
本技術において、400mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の弾性率E1の数値範囲は、上記で挙げた上限値及び下限値から選択された組合せであってよく、例えば6.00以上20.00以下、8.00以上18.00以下、又は10.00以上16.00以下であってよい。
【0025】
本技術において、400mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の弾性率E2は、例えば5.00以上であり、好ましくは10.00以上、より好ましくは15.00以上、16.00以上、又は17.00以上であってよい。
400mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の弾性率E2は、例えば50.00以下、好ましくは40.00以下、30.00以下、又は25.00以下であってもよい。
本技術において、400mPa・sの粘度を有する前記とろみ液の弾性率E2の数値範囲は、上記で挙げた上限値及び下限値から選択された組合せであってよく、例えば5.00以上50.00以下、10.00以上40.00以下、15.00以上40.00以下、又は15.00以上30.00以下であってよい。
【0026】
以上で述べた数値範囲内の物性を有するとろみ液を調製可能とするために、本技術のとろみ付与用組成物に含まれる増粘多糖類は、好ましくはキサンタンガムを含み、特にはキサンタンガムのみであってもよい。
例えばとろみ付与によって、液体の咽頭への早期流入を防ぐことができるが、咽頭残留を引き起こす場合もある。キサンタンガムを含むとろみ付与用組成物は、当該早期流入を防ぐことができ且つ咽頭残留の発生を防ぐことができるとろみ液を調製することができる。
【0027】
特に好ましい実施態様において、本技術のとろみ付与用組成物は、キサンタンガムを含み、且つ、当該とろみ付与用組成物を用いて調製されたとろみ液を上記でのべたとおりの応力緩和試験に付して測定される弾性率E∞、好ましくはE∞並びに緩和時間λ1及び/又はλ2が、上記で述べたとおりの数値範囲内にある。当該とろみ付与用組成物によって、とろみ液の咽頭残留を防ぐことができる。さらに、嚥下の際に必要となる舌圧を低減することもでき、これは嚥下の際にヒトにかかる負担の低減になる。例えば嚥下困難者にとっては、嚥下の際に必要となる舌圧はより低いほうが望ましいと考えられる。そのため、本技術のとろみ付与用組成物によって、嚥下困難者がより摂取しやすいとろみ液を調製することができる。
【0028】
本技術のとろみ付与用組成物は、とろみ付与された液体の嚥下時における咽頭残留性を低減するために用いられてよい。本技術のとろみ付与用組成物は、前記咽頭残留性を低減するために適しているので、例えば嚥下後誤嚥の発生を抑制することができる。
【0029】
また、本技術のとろみ付与用組成物は、とろみ付与に伴い増加する嚥下時舌圧を低減するために用いられてよい。例えば水ととろみ付き水とを比較すると、一般的には、後者のほうが嚥下時舌圧は高くなる。嚥下時舌圧が高くなることは、摂取するヒトの負担の上昇になると考えられる。本技術のとろみ付与用組成物によりとろみを付与された液体は、他のとろみ付与用組成物によりとろみを付与された液体と比べて、より低い嚥下時舌圧によって摂取することができる。そのため、本技術により、とろみ液を摂取するヒトの負担を低減することができる。
【0030】
また、本技術のとろみ付与用組成物は、液体の嚥下時における咽頭通過時間を短縮するために用いられてよい。前記咽頭通過時間は、例えば嚥下音の継続時間として測定されるものであってよい。本技術のとろみ付与用組成物は、前記咽頭通過時間を短縮するために適しており、これは、とろみ付与された液体がまとまった状態で飲み込まれやすいためと考えられる。
【0031】
また、本技術のとろみ付与用組成物は、とろみ付与された液体を嚥下する際のホワイトアウト時間を短縮するために用いられてよい。前記ホワイトアウト時間は、嚥下内視鏡による嚥下観察において、嚥下反射中の視野消失となる時間である。当該視野消失は、嚥下時の咽頭収縮により一時的に当該内視鏡視野が白くなり、観察不能となるために起こる。本技術のとろみ付与用組成物によって、とろみ付与された液体の嚥下時におけるホワイトアウト時間を短縮することができる。
【0032】
本技術のとろみ付与用組成物は、種々のヒトが摂取する液体にとろみを付与するために用いられてよく、特には嚥下困難者が摂取する液体にとろみを付与するために用いられてよい。当該嚥下困難者は、例えば、嚥下反射惹起の遅延、咽頭圧の低下、及び、咽頭残留の発生のうちの少なくとも一つを呈する嚥下困難者であってよい。当該嚥下困難者、舌の筋力が低下した嚥下困難者であってよく、又は、送り込み障害を有する嚥下困難者であってもよい。本技術のとろみ付与用組成物は、とろみの付与による早期流入の防止だけでなく、とろみ付与に伴って生じうる咽頭残留の発生を抑制することができる。そのため、本技術のとろみ付与用組成物は、前記嚥下困難者が摂取する液体にとろみを付与するために適している。
本明細書内において、嚥下反射惹起の遅延の有無は、嚥下造影検査による嚥下開始のタイミングを測る(観察する)ことにより評価される。具体的には、20ml未満の液体(水もしくはとろみ液)摂取時にMBSImP(Modified Barium Swallow Impairment Profile)の評価基準Component 6 (Initiation of Pharyngeal Swallow)のスコアが1以上である場合に、嚥下反射惹起の遅延を呈すると判定される。なお、スコア1以上は嚥下開始時の食塊先端が、喉頭蓋谷よりも奥(=咽頭側)に侵入している場合を指す。本技術のとろみ付与用組成物は、評価基準Component 6のスコアが1以上、特には2以上、3以上、又は4である嚥下困難者が摂取する液体にとろみを付与するために用いられてよい。
本明細書内において、咽頭圧の低下の有無もMBSImPに従い評価される。具体的には、20ml未満の液体(水もしくはとろみ液)摂取時にMBSImPの評価基準Component 15 (Tongue Base Retraction)のスコアが1以上である場合に、咽頭圧の低下を呈すると判定される。なお、スコア1以上は、舌根部と咽頭後壁の接触が不十分である場合を指す。本技術のとろみ付与用組成物は、評価基準Component 15のスコアが1以上、特には2以上、3以上、又は4である嚥下困難者が摂取する液体にとろみを付与するために用いられてよい。
本明細書内において、咽頭残留の発生の有無もMBSImPに従い評価される。具体的には、20ml未満の液体(水もしくはとろみ液)摂取時にMBSImPの評価基準Component 16 (Pharyngeal Residue)のスコアが1以上である場合に、咽頭残留の発生を呈していると判定される。なお、一連の嚥下運動の後、咽頭に、わずかでも食塊が残っている場合をスコア1とする。本技術のとろみ付与用組成物は、評価基準Component 16のスコアが1以上、特には2以上、3以上、又は4である嚥下困難者が摂取する液体にとろみを付与するために用いられてよい。
MBSImPに従う評価の詳細は、Bonnie Martin-Harrisら(MBS measurement tool for swallow impairment-MBSImp: establishing a standard, Dysphagia. 2008 Dec;23(4):392-405. doi: 10.1007/s00455-008-9185-9. Epub 2008 Oct 15.)に記載されている。
また、本技術のとろみ付与用組成物によりとろみ付与された液体は、より少ない舌圧で嚥下可能である。そのため、本技術のとろみ付与用組成物は、例えば嚥下困難者がとろみ液をより容易に嚥下することに貢献する。
また、本技術のとろみ付与用組成物によりとろみ付与された液体は、より短い咽頭通過時間で嚥下可能である。そのため、本技術のとろみ付与用組成物は、この点からも、例えば嚥下困難者がとろみ液をより容易に嚥下することに貢献する。
前記嚥下困難者は、例えば嚥下反射惹起が遅く生じるヒト、特には咽頭感覚が低下して嚥下反射惹起が遅いヒト又は口腔保持能力が低下して早期流入が発生しやすいヒトであってよい。
また、前記嚥下困難者は、例えば嚥下のために努力を要するヒト、特には舌圧が低いヒト又は嚥下に関連する筋力が低下したヒトであってよい。
また、前記嚥下困難者は、例えば咽頭残留が発生しやすいヒト、特には咽頭圧が低いヒトであってよい。
また、前記嚥下困難者は、例えば食塊形成能力が低下したヒト、特には嚥下に関する各器官の協調性が低下したヒトであってよい。
より具体的な嚥下困難者の例として、例えば口腔腫瘍の手術後のヒト及び脳血管障害を有するヒトを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0033】
2.本技術のとろみ付与用組成物の組成
【0034】
本技術のとろみ付与用組成物の組成の例を以下で説明する。本技術のとろみ付与用組成物は、上記で述べたとおり、増粘多糖類を含み、当該増粘多糖類は例えばキサンタンガムを含んでよい。キサンタンガムは、グルコース、マンノース、及びグルクロン酸を構成単位として有する多糖類である。キサンタンガムの主鎖はグルコースから構成され、且つ、キサンタンガムの側鎖はマンノース及びグルクロン酸から構成される。前記側鎖は、前記主鎖のグルコース残基に、1つおきに結合していてよい。前記側鎖の末端のマンノース残基は、ピルビン酸を有してよく又は有していなくてもよい。前記主鎖に結合したマンノース残基はアセチル化されていてよく又はアセチル化されていなくてもよい。
前記キサンタンガムは、キサントモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)により産生される多糖類であってよく、より特にはキサントモナス・キャンペストリスが菌体外に分泌した多糖類であってよい。
【0035】
前記キサンタンガムの含有割合は、例えば40質量%以下であり、好ましくは38質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下であり、さらにより好ましくは33質量%以下であってよい。
前記キサンタンガムの含有割合は、例えば20質量%以上であり、好ましくは22質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上であり、特に好ましくは27質量%以上であってよい。
前記キサンタンガムの含有割合の数値範囲の上限値及び下限値は、上記で述べた値のうちからそれぞれ選択されてよく、当該含有割合は、例えば20質量%~40質量%、好ましくは22質量%~38質量%であり、より好ましくは25質量%~35質量%である。
上記で述べた通りの所定の物性をとろみ液に付与するために、このような含有割合が好ましい。
また、前記キサンタンガムの含有割合が高すぎる場合は、ダマが生じやすくなることがある。また、前記キサンタンガムの含有割合が低すぎる場合は、とろみを付与するためにより多くのとろみ付与用組成物が必要となり、効率的でなくなりうる。
前記キサンタンガムの含有割合は、本技術のとろみ付与用組成物に含まれる成分のうち、バインダーとして用いられる水以外の成分の合計質量に対する、キサンタンガムの質量の割合である。すなわち、当該キサンタンガムの含有割合は、本技術のとろみ付与用組成物100質量部に対して、その原料として使用したキサンタンガムの含量の割合とほぼ同義である。本明細書内において、キサンタンガム以外の成分(例えば水溶性カルシウム塩と、クエン酸塩、及び賦形剤など)の含有割合も、同様である。すなわち、本技術の組成物中の各成分の含有割合は、バインダーとして用いられる水以外の成分の合計質量に対する各成分の質量の割合である。
【0036】
本技術のとろみ付与用組成物はさらに水溶性カルシウム塩を含んでよい。当該水溶性カルシウム塩は、例えば乳酸カルシウム又は塩化カルシウムであり、より好ましくは乳酸カルシウムである。カルシウム塩は水和物であってもよく、乳酸カルシウム五水和物が好ましい。
【0037】
水溶性カルシウム塩(特には乳酸カルシウム)の含有割合は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらにより好ましくは1.5質量%以上、特に好ましくは2.0質量%以上であってよい。
水溶性カルシウム塩(特には乳酸カルシウム)の含有割合は、例えば10.0質量%以下、好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下、さらにより好ましくは5.0質量%以下、特に好ましくは4.0質量%以下、3.5質量%以下、又は3.0質量%以下であってよい。
前記水溶性カルシウム塩の含有割合の数値範囲の上限値及び下限値は、上記で述べた値のうちからそれぞれ選択されてよく、当該含有割合は、例えば0.5質量%~10.0質量%、好ましくは1.0質量%~6.0質量%、より好ましくは1.5質量%~4.0質量%、さらにより好ましくは2.0質量%~3.0質量%である。
上記で述べた通りの所定の物性をとろみ液に付与するために、このような含有割合が好ましい。
また、前記水溶性カルシウム塩が上記数値範囲内にあることが、ダマ発生を防ぐために適しており、且つ、効率的な粘度発現に適している。
【0038】
本技術のとろみ付与用組成物はクエン酸塩をさらに含んでよい。前記クエン酸塩は、好ましくはクエン酸のアルカリ金属塩であり、より好ましくはクエン酸のナトリウム塩若しくはカリウム塩、又は、クエン酸のナトリウム塩及びクエン酸のカリウム塩の混合物であり、さらにより好ましくはクエン酸のナトリウム塩である。当該クエン酸のナトリウム塩は、より好ましくはクエン酸三ナトリウムであり、例えばクエン酸三ナトリウム二水和物である。
【0039】
前記クエン酸塩の含有割合は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらにより好ましくは1.5質量%以上、特に好ましくは2.0質量%以上であってよい。
前記クエン酸塩の含有割合は、例えば10.0質量%以下、好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下、さらにより好ましくは5.0質量%以下、特に好ましくは4.0質量%以下、3.5質量%以下、又は3.0質量%以下であってよい。
前記クエン酸塩の含有割合の数値範囲の上限値及び下限値は、上記で述べた値のうちからそれぞれ選択されてよく、当該含有割合は、例えば0.5質量%~10.0質量%、好ましくは1.0質量%~6.0質量%、より好ましくは1.5質量%~4.0質量%、さらにより好ましくは2.0質量%~3.0質量%である。
上記で述べた通りの所定の物性をとろみ液に付与するために、このような含有割合が好ましい。
また、前記クエン酸塩が上記数値範囲内にあることが、ダマ発生を防ぐために適しており、且つ、効率的な粘度発現に適している。
【0040】
前記とろみ付与用組成物はさらに賦形剤を含みうる。当該賦形剤は、例えばデキストリン、澱粉、及び糖類からなる群から選ばれる1つ又は2以上の組合せであってよい。
前記デキストリンとして、例えばデキストリン、アミロデキストリン、エリトロデキストリン、アクロデキストリン、マルトデキストリン、及びシクロデキストリンを挙げることができる。
前記澱粉として、トウモロコシ由来澱粉、モチトウモロコシ由来澱粉、馬鈴薯由来澱粉、甘蔗由来澱粉、小麦由来澱粉、米由来澱粉、餅米由来澱粉、タピオカ由来澱粉、及びサゴヤシ由来澱粉などの生澱粉、及び、当該生澱粉のいずれかに物理的又は化学的処理を施した加工澱粉を挙げることができる。当該加工澱粉として、酸分解澱粉、酸化澱粉、α化澱粉、グラフト化澱粉、例えばカルボキシメチル基又はヒドロキシアルキル基などが導入されたエーテル化澱粉、例えばアセチル基などが導入されたエステル化澱粉、澱粉の2カ所以上の水酸基間に多官能基を結合させた架橋澱粉、例えばオクテニルコハク酸基などの疎水基が導入された乳化性澱粉、及び湿熱処理又は乾熱処理された澱粉を挙げることができる。
前記糖類として、ショ糖、果糖、ぶどう糖、麦芽糖、澱粉糖化物、還元澱粉水飴、及びトレハロースを挙げることができる。
前記賦形剤として、これら列挙された材料のうちの1つ又は2以上の組合せが用いられてよい。
【0041】
本技術の好ましい実施態様に従い、前記賦形剤はデキストリンである。デキストリンを賦形剤として用いることが、本技術の組成物の液体への分散性及び/又は溶解性の向上に貢献する。本技術において用いられるデキストリンのデキストロース当量(DE)は、好ましくは5~20であり、より好ましくは10~15である。この数値範囲内のDEを有するデキストリンが、本技術の組成物の液体への分散性及び/又は溶解性の向上に貢献する。
【0042】
前記賦形剤(特にはデキストリン)の含有割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは55質量%以上であり、さらにより好ましくは60質量%以上であり、特に好ましくは62質量%以上である。
前記賦形剤(特にはデキストリン)の含有割合は、好ましくは75質量%以下であり、より好ましくは73質量%以下であり、さらにより好ましくは70質量%以下であり、特に好ましくは68質量%以下である。
前記賦形剤の含有割合の数値範囲の上限値及び下限値は、上記で述べた値のうちからそれぞれ選択されてよく、当該含有割合は、例えば50質量%~75質量%、好ましくは55質量%~75質量%であり、より好ましくは60質量%~70質量%である。
上記で述べた通りの所定の物性をとろみ液に付与するために、このような含有割合が好ましい。
また、上記数値範囲内の含有割合が、本技術の組成物の液体への分散性及び/又は溶解性の向上に貢献する。
【0043】
本技術の一つの好ましい実施態様に従い、本技術のとろみ付与用組成物は、キサンタンガムと、水溶性カルシウム塩と、クエン酸塩とを含む。特に好ましくは、当該水溶性カルシウム塩は乳酸カルシウムであり、且つ、当該クエン酸塩はクエン酸のナトリウム塩である。これら三成分を含むことが、ダマ形成の抑制のために適しており、さらには粘度発現のためにも適している。また、これら三成分を含むとろみ付与用組成物に関して以下で述べる粒度分布を採用することが、ダマ形成の抑制にとって特に好ましく、さらには粘度発現のためにも特に好ましい。
これら三成分の合計含有割合が、好ましくは25質量%~45質量%、より好ましくは30質量%~40質量%、さらにより好ましくは32質量%~38質量%であってよい。この実施態様において、本技術のとろみ付与用組成物は、賦形剤としてデキストリンを含んでよい。デキストリンの含有割合が、好ましくは55質量%~75質量%、より好ましくは60質量%~70質量%、さらにより好ましくは62質量%~68質量%である。
例えば、本技術のとろみ付与用組成物は、キサンタンガムと、乳酸カルシウムと、クエン酸のナトリウム塩と、賦形剤(特にはデキストリン)の合計含有割合が90質量%以上であってよく、より好ましくは95質量%以上であってよく、さらにより好ましくは98質量%以上であってよい。
【0044】
3.とろみ付与用組成物の特性及び形状
【0045】
本技術のとろみ付与用組成物の特性及び形状の例を以下で説明する。
本技術のとろみ付与用組成物は粉末状であってよい。当該とろみ付与用組成物は、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の50%以下であってよく、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の15%以上であってよい。この粒度分布を有することによって、当該組成物を液体に添加及び混合した場合におけるダマの発生をより確実に防ぐことができる。例えば、当該組成物を液体に添加してしばらく経過した後に撹拌した場合においても、ダマが生じることなく、当該液体にとろみを付与することができる。
本明細書内において、「ダマ」とは、粉末を液体に加えたときに、溶解又は分散することなく集合した粉末の集合物を意味してよく、特には肉眼で確認できる程度の大きさを有する塊をいう。
【0046】
本明細書内において、粒度分布は、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定される。当該測定は、JIS Z8825-1に準拠した噴射型乾式測定である。当該測定を行うための装置として、市販入手可能なレーザー回折式粒度分析測定装置が用いられてよく、例えばMastersizer 3000(Malvern Panalytical社)が用いられる。測定条件は、以下の通りであってよい。
非球形粒子のモード:「はい」を選択
Fraunhoferタイプ:「いいえ」を選択
分散媒:「Dry dispersion」
散乱強度の下限:1.00%
散乱強度の上限:10.00%
分散ユニット:Aero S(乾式の分散ユニット)
フィードレート:41
空気圧:3.5bar
ベンチュリの種類:標準ベンチュリ
トレイの種類:汎用トレイ
ホッパーのギャップ:2.00mm
洗浄シーケンス:強力
解析モデル:汎用
シングル測定結果モード:「いいえ」を選択
オフの検出器数:0
乾燥微粉末モード:「いいえ」を選択
【0047】
本技術のとろみ付与用組成物を構成する粒子のうち、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合は、上記のとおり、全粒子数の50%以下であってよく、より好ましくは49%以下、さらにより好ましくは48%以下である。
本技術のとろみ付与用組成物を構成する粒子のうち、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合は、例えば25%以上であり、より好ましくは30%以上であり、さらにより好ましくは35%以上であり、特に好ましくは37%以上である。
粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が上記数値範囲内にあることによって、ダマの発生をより確実に防ぐことができる。
【0048】
本技術の好ましい実施態様に従い、前記とろみ付与用組成物を構成する粒子のうち、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合は、好ましくは35%以上であり、より好ましくは37%以上である。粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が上記下限値以上であることによって、本技術のとろみ付与用組成物は、ダマ発生を防ぐだけでなく、より高い粘度を液体に付与することができる。
この実施態様において、前記とろみ付与用組成物を構成する粒子のうち、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合は、例えば35%~50%であり、より好ましくは37%~50%である。
【0049】
本技術のとろみ付与用組成物を構成する粒子のうち、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合は、上記のとおり、全粒子数の15%以上であってよく、より好ましくは18%以上、さらにより好ましくは20%以上である。
本技術のとろみ付与用組成物を構成する粒子のうち、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合は、例えば40%以下であり、より好ましくは35%以下であり、さらにより好ましくは30%以下である。
粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が上記数値範囲内にあることによって、ダマの発生をより確実に防ぐことができる。
【0050】
本技術のとろみ付与用組成物を構成する粒子のうち、粒子サイズが250μm超であり且つ500μm以下である粒子の数の割合は、好ましくは全粒子数の20%以下、より好ましくは15%以下、さらにより好ましくは10%以下である。
本技術のとろみ付与用組成物を構成する粒子のうち、粒子サイズが250μm超であり且つ500μm以下である粒子の数の割合は、例えば1%以上であり、より好ましくは2%以上であり、さらにより好ましくは3%以上である。
粒子サイズが250μm超であり且つ500μm以下である粒子の数の割合が上記数値範囲内にあることによって、ダマの発生をより確実に防ぐことができ、より高い粘度を付与することにも貢献する。
【0051】
本技術のとろみ付与用組成物を構成する粒子のうち、粒子サイズが75μm以下である粒子の数の割合は、好ましくは、全粒子数の30%以下であり、より好ましくは27%以下、さらにより好ましくは25%以下である。
本技術のとろみ付与用組成物を構成する粒子のうち、粒子サイズが75μm以下である粒子の数の割合は、例えば5%以上であり、より好ましくは10%以上であり、さらにより好ましくは12%以上である。
粒子サイズが75μm以下である粒子の数の割合が上記数値範囲内にあることによって、ダマの発生をより確実に防ぐことができる。
【0052】
特に好ましい実施態様において、本技術のとろみ付与用組成物を構成する粒子のうち、粒子サイズが75μm以下である粒子の数の割合は、好ましくは、全粒子数の15%以上であり、より好ましくは16%以上、さらにより好ましくは17%以上である。
粒子サイズが75μm以下である粒子の数の割合が上記数値範囲内にあることによって、ダマの発生をより確実に防ぐことができ、且つ、より高い粘度を付与することができる。
【0053】
本技術のとろみ付与用組成物を構成する粒子のうち、粒子サイズが500μm以下である粒子の数の割合は、好ましくは、全粒子数の90%以上であり、より好ましくは93%以上、さらにより好ましくは95%以上である。
粒子サイズが500μm以下である粒子の数の割合が上記数値範囲内にあることによって、ダマの発生をより確実に防ぐことができる。
【0054】
本技術のとろみ付与用組成物の比表面積が、50m2/kg~80m2/kgであり、より好ましくは60m2/kg~80m2/kgであり、さらにより好ましくは60m2/kg~75m2/kgである。当該比表面積が上記数値範囲内にあることが、ダマ発生の抑制に貢献しうる。
特に好ましくは、本技術のとろみ付与用組成物の比表面積は60m2/kg~80m2/kgであり、さらにより好ましくは60m2/kg~75m2/kgであってよい。当該比表面積が上記数値範囲内にあることが、より高い粘度を液体に付与するために適している。
前記比表面積は、上述のMastersizer 3000(Malvern Panalytical社)による粒度分布の測定に際して、同時に測定することができる。
【0055】
本明細書内において、「とろみ」とは、液体が多少の粘度を有する状態を意味してよく、例えば水よりも高い粘度を有する状態をいう。当該粘度は、上記で述べたとおりであってよい。
また、本明細書内において、「とろみ付与用組成物」とは、液体の粘度を増加させるために用いられる組成物、すなわち増粘するための組成物を意味してよい。「とろみ付与用組成物」は、増粘剤または増粘性組成物ということもできる。
【0056】
本技術のとろみ付与用組成物は、当該組成物3.0gを20℃の脱イオン水100gに3rpsで撹拌しながら5秒間で添加してさらに3rpsで30秒間撹拌した直後の当該脱イオン水の粘度が、好ましくは350mPa・s以上、より好ましくは360mPa・s以上、さらにより好ましくは370mPa・s以上になるというとろみ付与特性を有する。本技術のとろみ付与用組成物は、当該とろみ付与特性を有することによって、より効率的に液体に粘度を付与することができる。
【0057】
4.とろみ付与用組成物の製造方法
【0058】
本技術のとろみ付与用組成物は、例えば、当該組成物に含まれる成分を混合及び造粒することにより製造することができる。本技術のとろみ付与用組成物の製造方法は例えば、キサンタンガム含有粉末をバインダーを用いて造粒する造粒工程を含む。当該造粒工程において、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の50%以下となり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の15%以上となるように、造粒が行われうる。
前記キサンタンガム含有粉末は、例えば、キサンタンガム、水溶性カルシウム塩(特には乳酸カルシウム)、クエン酸塩、及び賦形剤を混合して粉末状混合物であってよい。例えば、前記製造方法は、サンタンガム、水溶性カルシウム塩(特には乳酸カルシウム)、クエン酸塩、及び賦形剤を混合して粉末状混合物を得る混合工程を含みうる。
すなわち、本技術の一つの実施態様において、前記製造方法は、
キサンタンガム、水溶性カルシウム塩(特には乳酸カルシウム)、クエン酸塩、及び賦形剤を混合して粉末状混合物を得る混合工程、及び
前記粉末状混合物を、バインダーを用いて造粒して組成物を得る造粒工程
を含みうる。当該組成物が、本技術のとろみ付与用組成物であってよい。
【0059】
前記混合工程において用いられるキサンタンガム、水溶性カルシウム塩、クエン酸塩、及び賦形剤は好ましくは粉末状であり、すなわち、前記混合工程において、粉末状のキサンタンガム、粉末状の水溶性カルシウム塩、粉末状のクエン酸塩、及び粉末状の賦形剤が混合されうる。これら成分の詳細は、上記「2.本技術のとろみ付与用組成物の組成」において述べたとおりであってよい。
【0060】
また、これらの成分の、前記混合工程における配合割合は、上記「2.本技術のとろみ付与用組成物の組成」において述べた組成が得られるように設定されてよく、例えば上記「2.本技術のとろみ付与用組成物の組成」において述べた含有割合が、これら成分の前記混合工程における配合割合として採用されてよい。
【0061】
例えば、前記キサンタンガムの配合割合は、上記「2.本技術のとろみ付与用組成物の組成」において述べたように、例えば40質量%以下であり、好ましくは38質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下であり、さらにより好ましくは33質量%以下であってよい。前記キサンタンガムの含有割合は、例えば20質量%以上であり、好ましくは22質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上であり、特に好ましくは27質量%以上であってよい。前記キサンタンガムの配合割合は、本技術のとろみ付与用組成物に含まれる成分のうち、バインダーとして用いられる水以外の成分の合計質量に対する、キサンタンガムの質量の割合である。本明細書内において、キサンタンガム以外の成分(例えば水溶性カルシウム塩と、クエン酸塩、及び賦形剤など)の配合割合も、同様である。
【0062】
また、前記水溶性カルシウム塩(特には乳酸カルシウム)の配合割合は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらにより好ましくは1.5質量%以上、特に好ましくは2.0質量%以上であってよい。前記水溶性カルシウム塩(特には乳酸カルシウム)の配合割合は、例えば10.0質量%以下、好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下、さらにより好ましくは5.0質量%以下、特に好ましくは4.0質量%以下、3.5質量%以下、又は3.0質量%以下であってよい。
【0063】
前記クエン酸塩の配合割合は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらにより好ましくは1.5質量%以上、特に好ましくは2.0質量%以上であってよい。前記クエン酸塩の配合割合は、例えば10.0質量%以下、好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下、さらにより好ましくは5.0質量%以下、特に好ましくは4.0質量%以下、3.5質量%以下、又は3.0質量%以下であってよい。
【0064】
前記賦形剤(特にはデキストリン)の配合割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは55質量%以上であり、さらにより好ましくは60質量%以上であり、特に好ましくは62質量%以上である。前記賦形剤(特にはデキストリン)の配合割合は、好ましくは75質量%以下であり、より好ましくは73質量%以下であり、さらにより好ましくは70質量%以下であり、特に好ましくは68質量%以下である。
【0065】
本技術の一つの好ましい実施態様に従い、前記混合工程において、キサンタンガム、水溶性カルシウム塩、及びクエン酸塩の三成分の合計配合割合が、好ましくは25質量%~45質量%、より好ましくは30質量%~40質量%、さらにより好ましくは32質量%~38質量%であってよい。この実施態様において、前記混合工程において、賦形剤としてデキストリンが用いられてよい。当該デキストリンの配合割合は、好ましくは55質量%~75質量%、より好ましくは60質量%~70質量%、さらにより好ましくは62質量%~68質量%である。
本技術の特に好ましい実施態様において、前記混合工程において、キサンタンガムと、乳酸カルシウムと、クエン酸のナトリウム塩と、賦形剤(特にはデキストリン)の合計配合割合は、90質量%以上であってよく、より好ましくは95質量%以上であってよく、さらにより好ましくは98質量%以上であってよい。
【0066】
当該造粒工程における造粒条件を調整することによって、上記で述べた粒度分布を有する本技術のとろみ付与用組成物を得ることができる。代替的には、造粒工程後に、上記で述べた粒度分布を有するように、ふるいを用いてふるい分けされてもよい。
【0067】
前記造粒工程において用いられるバインダーは、例えば水であってよい。
【0068】
例えば、前記造粒工程において、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の50%以下となり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の15%以上となるように、造粒が行われうる。
【0069】
また、前記造粒工程において、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の50%以下、より好ましくは49%以下、さらにより好ましくは48%以下となるように、造粒が行われうる。
また、前記造粒工程において、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、例えば25%以上、より好ましくは30%以上、さらにより好ましくは35%以上、特に好ましくは37%以上となるように造粒が行われうる。
【0070】
本技術の好ましい実施態様に従い、前記造粒工程において、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、好ましくは35%以上であり、より好ましくは37%以上となるように、造粒が行われうる。
また、この実施態様において、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、例えば35%~50%であり、より好ましくは37%~50%となるように造粒が行われうる。
【0071】
また、前記造粒工程において、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の15%以上、より好ましくは18%以上、さらにより好ましくは20%以上となるように、造粒が行われうる。
また、前記造粒工程において、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、例えば40%以下、より好ましくは35%以下、さらにより好ましくは30%以下となるように造粒が行われうる。
【0072】
前記造粒工程において、粒子サイズが250μm超であり且つ500μm以下である粒子の数の割合が、好ましくは全粒子数の20%以下、より好ましくは15%以下、さらにより好ましくは10%以下となるように、造粒が行われてよい。
また、前記造粒工程において、粒子サイズが250μm超であり且つ500μm以下である粒子の数の割合が、例えば1%以上、より好ましくは2%以上、さらにより好ましくは3%以上となるように造粒が行われてよい。
【0073】
前記造粒工程において、粒子サイズが75μm以下である粒子の数の割合が、好ましくは、全粒子数の30%以下、より好ましくは27%以下、さらにより好ましくは25%以下となるように造粒が行われてよい。
前記造粒工程において、粒子サイズが75μm以下である粒子の数の割合が、例えば5%以上、より好ましくは10%以上、さらにより好ましくは12%以上となるように、造粒が行われてよい。
【0074】
前記造粒工程において、粒子サイズが75μm以下である粒子の数の割合は、好ましくは、全粒子数の15%以上、より好ましくは16%以上、さらにより好ましくは17%以上となるように造粒が行われてよい。
【0075】
前記造粒工程において、粒子サイズが500μm以下である粒子の数の割合が、好ましくは、全粒子数の90%以上、より好ましくは93%以上、さらにより好ましくは95%以上となるように造粒が行われてよい。
【0076】
前記混合工程及び前記造粒工程は、市販入手可能な造粒装置を用いて行われてよく、例えば、流動層造粒装置を用いることができる。
【0077】
5.とろみ付与用組成物の使用方法
【0078】
本技術のとろみ付与用組成物は、液体にとろみを付与するために用いられる。当該液体は、好ましくは水を含む液体であり、より好ましくは水を母体として含む液体である。
当該液体は、好ましくは液状飲食品である。当該液状飲食品は、例えば茶成分を含む液体、蛋白質及び/又は脂肪を含む液体、酸成分を含む液体、塩分を含む液体、又はミネラルを含む液体でありうる。当該液状飲食品のより具体的な例は、以下のとおりである。
水;
乳性飲料、例えば牛乳、加工乳、乳飲料、乳酸菌飲料、及びドリンクヨーグルトなど;
清涼飲料、例えば果汁又は野菜汁入りの清涼飲料、スポーツ飲料、機能性成分含有飲料、イオン飲料、ビタミン含有飲料など;
果汁飲料、例えばオレンジジュースなど;
野菜汁飲料、例えばトマトジュース及びニンジンジュースなど;
茶飲料、例えば緑茶飲料、紅茶飲料、麦茶飲料、玄米茶飲料、抹茶飲料、及びほうじ茶飲料など;
コーヒー飲料;
ココア飲料;
栄養補給用飲料、例えばビタミン補給用飲料など;
酒、例えば果実酒(ワインなど)、日本酒、及びウィスキーなど;
スープ、例えば味噌汁、清汁、コンソメスープ、ポタージュスープ、クリームスープ、及び中華スープなど;
液状最終食品、例えばシチュー、カレー、及びグラタンなど;
特殊食品又は治療食、例えば蛋白質・リン・カリウム調整食品、塩分調整食品、油脂調整食品、整腸作用食品、カルシウム・鉄・ビタミン強化食品、低アレルギー食品、濃厚流動食、ミキサー食、及びキザミ食など;及び
液状調味料、例えば醤油及びソースなど。
本技術のとろみ付与用組成物は、液状飲食品のこれらの具体例のいずれかにとろみを付与するために用いられてよい。
すなわち、本技術は、本技術のとろみ付与用組成物を含む飲食品組成物も提供する。当該飲食品組成物は、例えば10mPa・s~1000mPa・sの粘度、特には100mPa・s~800mPa・s、より特には200mPa・s~600mPa・s、さらにより特には300mPa・s~500mPa・sを有しうる。当該粘度を有する飲食品組成物は、例えば嚥下困難者用であってよいが、嚥下困難者以外のヒトにより摂取されてもよい。
【0079】
本技術のとろみ付与用組成物は、例えば液体(特には上記液状飲食品)の粘度を10mPa・s~1000mPa・sにするために用いられてよく、例えば10mPa・s未満の粘度を有する液体(特には上記液状飲食品)の粘度を10mPa・s~1000mPa・sとするために用いられてよい。当該粘度は、100mPa・s~800mPa・s、200mPa・s~600mPa・s、又は、300mPa・s~500mPa・sであってもよい。
本技術のとろみ付与用組成物によるとろみ付与後の液体の粘度は、上記のとおり10mPa・s~1000mPa・sであり、100mPa・s~800mPa・sであり、例えば200mPa・s~600mPa・sであってよい。当該粘度は、当該液体を摂取する対象(ヒト)の口腔機能に応じて適宜設定されてよい。
本明細書内において、粘度は、E型回転粘度計を用いて後述する実施例に記載の条件下で測定される。
【0080】
本技術のとろみ付与用組成物によって液体にとろみを付与するために、当該組成物は当該液体(特には上記液状飲食品)に添加及び混合される。液体へのとろみ付与のために、例えば液体150gに対して好ましくは0.1g~15g、より好ましくは0.3g~13g、さらにより好ましくは0.5g~10gの当該組成物が添加及び混合されてよい。
【0081】
本技術のとろみ付与用組成物によってとろみ付与される液体の温度は、好ましくは0℃~60℃、より好ましくは3℃~55℃、さらにより好ましくは5℃~50℃であってよい。本技術のとろみ付与用組成物は溶解性及び/分散性に優れているので、このような幅広い温度の液体に添加されても、ダマを生じることなく液体にとろみを付与することができる。
【0082】
以下で実施例を参照して本技術をより詳しく説明するが、本技術はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0083】
(1)とろみ付与用組成物の製造
【0084】
キサンタンガム(三栄源エフ・エフ・アイ社製)30質量部、乳酸カルシウム五水和物(第一化成社製)2.6質量部、クエン酸三ナトリウム二水和物2.4質量部、及びデキストリン(東亜化成社製)65質量部を流動層造粒装置により造粒して造粒物を得た。当該造粒物を、以下で「実験例1のとろみ付与用組成物」という。
【0085】
また、市販されているとろみ付与用組成物3種を用意した。当該3種のとろみ付与用組成物に含まれる増粘多糖類は、キサンタンガム、澱粉、又はグァガムであった。当該キサンタンガム含有とろみ付与用組成物、当該澱粉有とろみ付与用組成物、及び当該グァガム含有とろみ付与用組成物をそれぞれ、実験例2、3、及び4の組成物という。
【0086】
実験例1~4の組成物をそれぞれ水(後述のとおりに着色された水である)に溶解させ、E型回転粘度計(品番:TPE-100(H形)、製造会社名:東機産業株式会社)における20℃、ずり速度50sec-1の粘度を150mPa・s又は400mPa・sに調整したとろみ液を用意した。
コーン角度:1°34′
コーン半径:24mm
ギャップ:40μm
以下では、実験例1~4の組成物を用いて調製されたとろみ液をそれぞれ実験例1~4のとろみ液という。
【0087】
粘度を150mPa・s又は400mPa・sの実験例1~4のとろみ液及び水の9種の試料を用いて、嚥下適性に関する試験を以下のとおりに行った。これら9種の試料はいずれも、観察のために着色されていた。
なお、当該着色のために、各とろみ液の調製のために用いられた水は食用メロン色素によって着色されていた。着色された水は、以下のとおりに調製された。
まず、200gの水に8.0gのメロン色素を溶解させ色素濃縮液を調製した。次に、480gの水に20.8gの当該色素濃縮液を加えて、前記着色された水が調製された(なお、前記9種の試料のうちの一つである水は、当該着色された水である)。次に、前記着色された水に各とろみ付与用組成物を溶解させて、上記のとおりに各とろみ液が調製された。
【0088】
(2)早期流入に関する評価
【0089】
粘度150mPa・sの実験例1のとろみ液3mlを複数の被験者にそれぞれ複数回摂取させ、各摂取時における早期流入の有無を、嚥下内視鏡による観察によって評価した。当該観察において、液体の咽頭への流入がホワイトアウト開始より先に起きていた場合に、早期流入が発生したと評価した。粘度400mPa・sの実験例1のとろみ液についても、同じように評価を行った。さらに、前記とろみ液の量を15mlと変更したこと以外は同じ評価をさらに行った。実験例2~4のとろみ液及び水についても、実験例1のとろみ液と同じ評価を行った。評価結果を表1及び
図2に示す。前記表及び図には、各摂取量について、とろみ液の合計摂取回数(粘度150mPa・sのとろみ液の摂取回数及び粘度400mPa・sのとろみ液の摂取回数の合計)に対する、早期流入の発生の頻度が示されている。
【0090】
【0091】
前記表及び図に示されるとおり、実験例1~4のとろみ液を摂取した場合の早期流入の発生頻度は、水と比べると低い。そのため、とろみを付与することによって、早期流入を抑制することができることが分かる。
【0092】
(3)咽頭残留発生に関する評価
【0093】
粘度150mPa・sの実験例1のとろみ液15mlを被験者に複数回摂取させ、各摂取時における咽頭残留の有無を、嚥下内視鏡による観察によって評価した。粘度400mPa・sの実験例1のとろみ液についても、同じ評価を行った。実験例2~4のとろみ液及び水についても、実験例1のとろみ液と同じ評価を行った。
以上の評価が、合計20人の健常有歯顎者に対して行われた。
【0094】
前記嚥下内視鏡による評価は、以下の通りに行われた。すなわち、被験者の鼻から内視鏡(鼻咽頭喉頭ファイバースコープ)を口蓋垂後方付近まで入れて、嚥下時の試料の挙動を観察した。嚥下運動終了後に喉頭蓋谷又は梨状陥凹に着色した試料の残留が認められる場合を「咽頭残留あり」と評価し、残留が認められない場合は「咽頭残留なし」と評価した。
【0095】
また、この評価の際に、ホワイトアウト時間も測定された。ホワイトアウト時間は、上記でも述べたように、嚥下反射中の視野消失となる時間である。
【0096】
咽頭残留発生に関する評価結果を以下の表2に示す。
【0097】
【0098】
表2に示されるとおり、実験例1及び2のとろみ液は水よりも高い粘度を有するにもかかわらず、実験例1及び2のとろみ液の摂取時における咽頭残留の発生頻度は、粘度400mPa・sの場合は、水の摂取時における咽頭残留発生頻度と同程度であり、粘度150mPa・sの場合は、水の摂取時における咽頭残留発生頻度よりも低かった。一方で、同表に示されるとおり、実施例3及び4のとろみ液の摂取時における咽頭残留の発生頻度は、水と同程度であるか又はそれよりも高かった。水と同程度又はより低い咽頭残留発生頻度という結果を与えた実施例1及び2のとろみ液に含まれる増粘多糖類はキサンタンガムであり、実施例3及び4のとろみ液に含まれる増粘多糖類はそれぞれ澱粉及びグァガムである。そのため、増粘多糖類としてキサンタンガムを含むとろみ付与用組成物によって、咽頭残留の発生を抑制することができることが分かる。
【0099】
一般的に、液体にとろみを付与することによって、咽頭残留が発生しやすくなる傾向にある。しかしながら、以上の結果に示されるとおり、同じ粘度を有するとろみ液であっても、とろみ付与に用いられる増粘多糖類の種類によって、咽頭残留の発生のしやすさが異なることが分かる。
【0100】
また、キサンタンガムを含むとろみ付与用組成物は、上記「(2)早期流入に関する評価」で説明したとおり早期流入を防ぐことができることに加え、本評価において示された通り咽頭残留の発生を抑制することができる。
【0101】
また、ホワイトアウト時間については、実験例1~4のとろみ液の間で、大きな差は確認されなかったが、粘度400mPa・sのとろみ液については、実験例1のとろみ液の摂取時のホワイトアウト時間が、実験例2のとろみ液の摂取時のホワイトアウト時間よりも、やや短いことが確認された。粘度400mPa・sのとろみ液15mlを摂取した場合に関して、実験例1についてはホワイトアウト時間の平均値は0.64秒であるのに対し、実験例2についてのホワイトアウト時間の平均値は0.71秒であった。
【0102】
(4)嚥下時の舌圧に関する評価
【0103】
健常有歯顎者の口腔内に、舌圧センサ(Swallow Scan、ニッタ株式会社製)を装着した。当該舌圧センサは5つのセンサ(ch1~ch5)を含み、これら5つのセンサは口蓋に接触するように配置される。これらセンサのそれぞれによって舌圧が測定される。
【0104】
ch1~ch5の位置を、以下で
図3を参照して説明する。
図3は、口蓋の模式図である。
ch1は、口蓋正中線上の、切歯乳頭から1mm~10mm後方、特には切歯乳頭から3~8mm後方、より特には5mm後方の位置である。
ch2は、2つの鉤切痕を結ぶ線と口蓋正中線との交点と切歯乳頭とを結ぶ線上であり且つ切歯乳頭から約1/3の位置であり、例えば口蓋正中線上且つ左右2つの第一小臼歯又は左右2つの第二小臼歯の間の位置である。
ch3は、2つの鉤切痕を結ぶ線と口蓋正中線との交点と切歯乳頭とを結ぶ線上で切歯乳頭から約2/3の位置であり、例えば口蓋正中線上且つ左右2つの第一大臼歯又は左右2つの第二大臼歯の間の位置である。
ch4は、咽頭側からみて左側の鉤切痕と切歯乳頭とを結ぶ線上の前方から約2/3の位置であり、例えばch3と咽頭側からみて左側の第一大臼歯又は第二大臼歯との間の位置、より特にはch3と咽頭側からみて左側の第一大臼歯又は第二大臼歯との中間位置よりも当該第一大臼歯側又は当該第二大臼歯側の位置である。
ch5は、咽頭側からみて右側の鉤切痕と切歯乳頭とを結ぶ線上の前方から約2/3の位置であり、例えばch3と咽頭側からみて右側の第一大臼歯又は第二大臼歯との間の位置、より特にはch3と咽頭側からみて右側の第一大臼歯又は第二大臼歯との中間位置よりも当該第一大臼歯側又は当該第二大臼歯側の位置である。
【0105】
粘度400mPa・sの実験例1~4のとろみ液及び水それぞれを3ml又は15mlずつ20℃で上記健常有歯顎者に口内に含ませ、そして、指示を与えることで当該試料を嚥下させた。当該試料を嚥下した際のch1~ch5の舌圧を測定した。舌圧の単位はkPaで示す。
以上の舌圧測定は、上記「(3)咽頭残留発生に関する評価」と同時に行われ、すなわち、合計20人の健常有歯顎者に対して行われた。
ch4及びch5による測定結果の平均値が表3及び
図4に示されている。
【0106】
【0107】
前記表及び図に示されるとおり、摂取量が15mlの場合、実験例2~4のとろみ液の摂取時の舌圧(より特には周縁後方部舌圧)は、水摂取時の舌圧よりも高かった。これは、とろみの付与によって、嚥下時の舌圧が高くなることを示していると考えられる。一方で、実験例1のとろみ液の摂取時の舌圧は、水摂取時の舌圧よりも高いものの、実施例2~4のとろみ液の摂取時の舌圧よりも低かった。すなわち、実施例1のとろみ液は、とろみが付与されているものの、嚥下時に必要な舌圧は、他のとろみ液よりも低かった。そのため、実施例1のとろみ液は、より少ない舌圧で嚥下することが可能であることが分かる。
例えば、嚥下時の舌圧が低いほど、嚥下するヒトへの負荷が小さいと考えられる。そのため、実施例1のとろみ液は、同じ粘度を有する他のとろみ液よりも、より少ない負担で、嚥下することができると考えられる。
【0108】
摂取量が3mlの場合についても、実験例1のとろみ液について、15mlの場合と同様の結果が確認された。なお、摂取量が3mlの場合は、実験例4のとろみ液も、必要な舌圧はやや低かった。
【0109】
この評価が行われたとろみ液はいずれも同じ粘度を有するが、上記結果に示されるとおり、嚥下時に必要な舌圧には違いがあった。特に、実験例1及び2のとろみ液に含まれる増粘多糖類はいずれもキサンタンガムであるが、本評価において示されたとおり、嚥下時に必要な舌圧は異なり、実験例1のとろみ液のほうが、嚥下時舌圧はより低かった。そのため、キサンタンガムを含むとろみ付与用組成物によってとろみ付与された2種のとろみ液のうち、実験例1のとろみ液のほうが、より嚥下適性が高いことが分かった。
【0110】
(5)咽頭通過時間に関する評価
【0111】
上記「(4)嚥下時の舌圧に関する評価」における15ml摂取時の舌圧測定の際に、咽頭マイク(Voice Touch、有限会社南豆無線電機製)を装着し、当該嚥下諸器官の動作として嚥下音持続時間を測定した。
図5に示されるとおり、咽頭マイク2は被験者の喉頭蓋の位置に装着された。当該嚥下音持続時間が、試料が咽頭を通過する時間に対応し、すなわち咽頭通過時間である。
測定された咽頭通過時間の平均値が表4及び
図6に示されている。
【0112】
【0113】
前記表及び図に示されるとおり、咽頭通過時間は、水を摂取した場合が最も長く、実験例1~4のとろみ液を摂取した場合は、水を摂取した場合よりも短かった。そのため、とろみを付与することによって、液体がよりまとまって咽頭を通過することが確認できた。
【0114】
また、実験例1及び2のとろみ液はいずれもキサンタンガムを含むものであるが、実験例1のとろみ液のほうが、咽頭通過時間はより短かった。これらの結果より、実験例1のとろみ液は、実験例2のとろみ液よりもまとまって咽頭を通過すること、及び、実験例2のとろみ液よりも嚥下適性に優れていることが分かる。
【0115】
なお、実験例3及び4のとろみ液の摂取時の咽頭通過時間は、実験例1よりもやや短かかった。
【0116】
(6)応力緩和試験
【0117】
以上(1)~(5)において示されるとおり、同じ粘度を有するとろみ液であっても、嚥下適性は異なる。例えば、実験例1~4のとろみ液のうち、実験例1及び2のとろみ液が、咽頭残留発生を抑制するために特に優れていた。また、実験例1及び2のうち、嚥下時舌圧及び咽頭通過時間の観点から、実験例1が特に優れていた。
そこで、嚥下適性に関与する物性を特定するために、応力緩和試験を実施した。当該応力緩和試験は、以下のとおりに行われた。
【0118】
レオメータ(TAInstruments社製ARES-LS1)を用意した。当該レオメータに、直径50mmφ及びアングル0.0395ラジアンのコーンプレートを備え、測定温度20℃、ギャップ0.058mmの条件で、粘度が150mPa・s又は400mPa・sである実験例1~4のとろみ液それぞれに、20%の歪を与えた時の応力値を120秒間、経時的に測定した。当該120秒間において合計200点のデータが取得された。測定開始直後において測定間隔は0.01秒であり、時間の経過に伴い徐々に測定間隔を広げ、測定終了直前において測定間隔は5秒となるように、測定間隔は設定された。
【0119】
測定結果に対して、上記で述べた式(1)へのフィッティング処理を行った。当該フィッティング処理は、ソフトウェアTA orchestrator Ver.7.2.0.2(TAInstruments社製)を用いて、同ソフトウェアの製造者指示に従い、行われた。当該フィッティング処理により得られた弾性率及び緩和時間を以下の表5に示す。なお、400mPa・sである実験例4のとろみ液については、応力緩和試験は行われなかった。
【0120】
【0121】
表2に示される結果より、実験例1及び2のとろみ液は、実験例3及び4のとろみ液と比べて、弾性率E∞がより高い。上記「(3)咽頭残留発生に関する評価」の結果を踏まえると、例えば150mPa・sの粘度を有するとろみ液の弾性率E∞が例えば0.25以上、0.30以上、0.35以上、又は0.40以上であることが、咽頭残留発生の抑制に寄与していると考えられる。また、400mPa・sの粘度を有するとろみ液の弾性率E∞が例えば1.50以上、2.00以上、2.50以上、3.00以上、3.50以上、又は4.00以上であることも、咽頭残留発生の抑制に寄与していると考えられる。
【0122】
同表に示される結果より、実験例1のとろみ液は、実験例2のとろみ液と比べて、緩和時間λ1がより小さい。上記「(4)嚥下時の舌圧に関する評価」及び「(5)咽頭通過時間に関する評価」の結果を踏まえると、例えば150mPa・sの粘度を有するとろみ液の緩和時間λ1が例えば14.00以下、12.00以下、10.00以下、8.00以下、6.00以下、又は4.00以下であることが、嚥下時舌圧の低減及び/又は咽頭通過時間の短縮に寄与していると考えられる。また、400mPa・sの粘度を有するとろみ液の緩和時間λ1が例えば18.00以下、15.00以下、12.00以下、10.00以下であり、又は8.00以下であることも、嚥下時舌圧の低減及び/又は咽頭通過時間の短縮に寄与していると考えられる。
【0123】
同表に示される結果より、実験例1のとろみ液は、実験例2のとろみ液と比べて、緩和時間λ2がより小さい。上記「(4)嚥下時の舌圧に関する評価」及び「(5)咽頭通過時間に関する評価」の結果を踏まえると、例えば150mPa・sの粘度を有するとろみ液の緩和時間λ2が例えば0.70以下、0.50以下、又は0.30以下であることが、嚥下時舌圧の低減及び/又は咽頭通過時間の短縮に寄与していると考えられる。また、400mPa・sの粘度を有するとろみ液の緩和時間λ2が例えば0.70以下、0.50以下、又は0.30以下であることも、嚥下時舌圧の低減及び/又は咽頭通過時間の短縮に寄与していると考えられる。
【0124】
同表に示される結果より、実験例1のとろみ液は、実験例2~4のとろみ液と比べて、弾性率E1が高い。上記「(3)咽頭残留発生に関する評価」、「(4)嚥下時の舌圧に関する評価」、及び「(5)咽頭通過時間に関する評価」の結果を踏まえると、例えば、150mPa・sの粘度を有するとろみ液の弾性率E1が例えば2.00以上であり、2.50以上、3.00以上、又は3.50以上であることも、嚥下適性の向上(例えば咽頭残留発生の抑制、嚥下時舌圧の低減、及び咽頭通過時間の短縮のうちのいずれか一つ以上)に寄与していると考えられる。また、400mPa・sの粘度を有するとろみ液の弾性率E1が例えば10.00以上、11.00以上、又は12.00以上であることも、嚥下適性の向上(例えば咽頭残留発生の抑制、嚥下時舌圧の低減、及び咽頭通過時間の短縮のうちのいずれか一つ以上)に寄与していると考えられる。
【0125】
同表に示される結果より、実験例1のとろみ液は、実験例2のとろみ液と比べて弾性率E2が高く、実験例3のとろみ液と比べて弾性率E2が低い。上記「(3)咽頭残留発生に関する評価」、「(4)嚥下時の舌圧に関する評価」、及び「(5)咽頭通過時間に関する評価」の結果を踏まえると、例えば、150mPa・sの粘度を有するとろみ液の弾性率E2が例えば4.50以上10.00以下又は4.50以上9.00以下であることも、嚥下適性の向上(例えば咽頭残留発生の抑制、嚥下時舌圧の低減、及び咽頭通過時間の短縮のうちのいずれか一つ以上)に寄与していると考えられる。また、400mPa・sの粘度を有するとろみ液の弾性率E2が例えば15.00以上40.00以下又は15.00以上30.00以下であることも、嚥下適性の向上(例えば咽頭残留発生の抑制、嚥下時舌圧の低減、及び咽頭通過時間の短縮のうちのいずれか一つ以上)に寄与していると考えられる。
【0126】
以上のとおり、本技術のとろみ付与用組成物は、嚥下適性に優れたとろみを液体に付与することができる。