(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】短絡接地器具
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20240202BHJP
H01R 4/66 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
H02G1/02
H01R4/66 Z
(21)【出願番号】P 2020006355
(22)【出願日】2020-01-17
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】591083772
【氏名又は名称】株式会社永木精機
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒巻 健
(72)【発明者】
【氏名】武田 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】桑野 泰行
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-152935(JP,A)
【文献】特開2000-278830(JP,A)
【文献】特開2016-46983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/00-1/10
H01R 4/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電路上に設置されている柱状の接地用部材を接地するための短絡接地器具であって、
前記接地用部材を把持可能な把持部と該把持部を支持する支持部を備え、
前記把持部は、前記支持部に固定される固定把持部と、前記支持部又は前記固定把持部に軸着され先端側が前記固定把持部に対して開閉自在な可動把持部からなり、
前記支持部は、操作棒を着脱可能に固定する操作棒係合部を有し、
前記支持部又は前記固定把持部は、接地金具と導通している接地線又は該接地線に接続される短絡線を固定する短絡線固定部及び前記可動把持部を前記固定把持部に対して開閉させる開閉機構を有し、
前記固定把持部及び前記可動把持部は、それぞれ先端部から基端側に向かって延び、前記接地用部材の側面に対応する形状の溝部を有し、
前記開閉機構は、前記操作棒係合部に前記操作棒を取り付けた状態で、
前記操作棒の操作により前記可動把持部を開閉させることが可能である
ことを特徴とする短絡接地器具。
【請求項2】
前記固定把持部又は前記可動把持部は、前記溝部の基端側に段差部を有している
ことを特徴とする請求項1記載の短絡接地器具。
【請求項3】
前記固定把持部は、前記支持部に軸着され適宜の位置で固定可能である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の短絡接地器具。
【請求項4】
前記可動把持部は、その基端側に突出している従動部を有しており、
前記開閉機構は、前記可動把持部を前記固定把持部に対して開く方向又は閉じる方向に付勢する付勢手段、前
記従動部の位置を制御するスライダー及び該スライダーを移動させるスライダー移動手段からなる
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の短絡接地器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電設備の法定点検等において高圧受電盤の開閉器側の3線式電線を短絡接地させる際等に、容易に作業を行えるようにするための短絡接地器具に関する。
【背景技術】
【0002】
受電設備では一定期間ごとに法定点検を行っており、点検を行う作業者の安全を確保するため、誤通電、他の電路との混触や誘導による感電の危険を防止するため、短絡接地器具を用いて確実に短絡接地することが義務付けられている。
そして、特許文献1(特開2002-152935号公報)には、接地金具(51)、一本の接地側ケーブル(54)、接地側ケーブル(54)を三本の電線側ケーブル(55)に分岐する分岐端子部(52)、各電線側ケーブル(55)の先端に接続されている導帯挟持部(57)、各導帯挟持部(57)に取付けられる操作棒係合部(56)及び操作棒(60)を備えた短絡接地器具が開示されている(特に、段落0008~0010及び
図1、2を参照)。
短絡接地作業に際しては、受電設備内に収容された3本の電力ケーブル(76)と受電端子盤(72)とを接続する3本の導帯(74)に対して、導帯(74)毎に導帯挟持部(57)を挟持させていくが、作業者は操作棒(60)を操作棒係合部(56)に係合させ、開いた状態の導帯挟持部(57)の導帯当接部(573)を導帯(74)の両端に合わせ、操作棒(60)を所定方向に回動させ導帯当接部(573)を閉めることによって、導帯挟持部(57)を導帯(74)に挟持させることができる(特に、段落0015及び
図3を参照)。
【0003】
また、特許文献2(特許第4180627号公報)には、特別高圧の電線路を接地短絡させる作業を容易にすることのできる接地短絡用具であって、端部に接地金具が設けられている集合接地線(180)、3本の分岐接地線(160)、各分岐接地線(160)の先端部に配設されているネジ端子(170)、ネジ端子保持具(50)及び絶縁操作棒(200)を備える接地短絡用具が開示されている(特に、段落0027、0037及び
図5~7、10を参照)。
短絡接地作業に際しては、電線路(100)に予め設置されている接地短絡用の3つのネジ端子(110)に対して、ネジ端子(170)及び分岐接地線(160)を固定していくが、作業者は絶縁操作棒(200)の先端にジョイント部(52)を介してネジ端子保持具(50)の回転工具部(51)を取り付け、回転工具部(51)にネジ端子(170)の六角ネジ部(173)を内装させた後に絶縁操作棒(200)を回転させ、ネジ端子(170)の雄ネジ部(172)をネジ端子(110)の雌ネジ部(113)に螺合させることによって、ネジ端子(170)及び分岐接地線(160)をネジ端子(110)に固定することができる(特に、段落0023、0037~0040及び
図2、4、5を参照)。
【0004】
さらに、特許文献3(特開2013-13173号公報)には、架空電線又は絶縁碍子に設けられたアークホーンに対してアース線を取付けるためのアース線取付け器具であって、柄部(12)、固定腕体(20)及び回動腕体(22)を有する挟持部(14)、両腕部の基端側の領域で柄部(12)の伸長方向に往復動可能な操作体(26)、操作体(26)を先端側へ付勢するバネ(28)、固定腕体(20)及びバネ(28)が固定されるとともに回動腕体(22)の基端部及び柄部(12)を移動自在に収容するケーシング(16)並びにアース線(18)を備えるアース線取付け器具が開示されている(特に、段落0020~0023及び
図1を参照)。
アース線取付け作業に際しては、線状導電体(A)を挟持部(14)に挟持させることによって、線状導電体(A)とアース線(18)とを導通させるが、作業者は柄部(12)の基端(12b)を持ち、操作体(26)の竿部(26b)を
図1(A)の矢印(100)方向に移動させて上辺部(26a)を線状導電体(A)と当接させ、そのまま竿部(26b)をさらに矢印(100)方向に移動させ、線状導電体(A)によって竿部(26b)を挟持部(14)に対してバネ(28)の付勢力に抗して押し下げると、操作体(26)の凹部(26d)と回動腕体(22)の突起(22b)の係合が解除され、回動腕体(22)はバネ(30)の付勢力により回動し、操作体(26)の上面部(26e)と突起(22b)が当接し、挟持部(14)が線状導電体(A)を挟持する状態が維持される(特に、段落0025及び
図1、2を参照)。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の短絡接地器具は、短絡接地作業に際して、導帯(74)の真正面から操作棒(60)の先端に取り付けた導帯挟持部(57)を挿入し、導帯当接部(573)を導帯(74)の両端に合わせた後に、導帯当接部(573)を閉めることによって導帯挟持部(57)を導帯(74)に挟持させるため、導帯当接部(573)の位置決めが容易ではなく、導帯(74)の正面を広く開放する必要があった。
また、特許文献2に記載の接地短絡用具は、短絡接地作業に際して、ネジ端子(170)の雄ネジ部(172)をネジ端子(110)の雌ネジ部(113)に螺合させることによって、ネジ端子(170)及び分岐接地線(160)をネジ端子(110)に固定するため、雌ネジ部(113)の真正面から作業しなければならず、雄ネジ部(172)と雌ネジ部(113)の螺合作業が容易ではなかった。そして、接地短絡用の3つのネジ端子(110)の正面を広く開放する必要もあった。
さらに、特許文献3に記載のアース線取付け器は、操作体(26)の竿部(26b)を移動させ、上辺部(26a)を線状導電体(A)と当接させ、竿部(26b)をバネ(28)の付勢力に抗して押し下げるだけで挟持部(14)が線状導電体(A)を挟持する状態が維持されるものの、線状導電体(A)に対して略直交する方向から挟持部(14)で挟持する場合に限られ、狭い場所に設置されている導帯等の接地用部材に対する短絡接地作業には適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-152935号公報
【文献】特許第4180627号公報
【文献】特開2013-13173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決し、受電設備等に設置されている柱状の接地用部材に対する短絡接地作業を、感電の危険を防止しつつ容易かつ確実に行うことができるようにすることを第1の課題としている。
また、本発明は、キュービクル内のような狭い場所に設置されている接地用部材の正面が広く開放されていない場合にも、比較的容易に短絡接地作業を行うことができるようにすることを第2の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、電路上に設置されている柱状の接地用部材を接地するための短絡接地器具であって、
前記接地用部材を把持可能な把持部と該把持部を支持する支持部を備え、
前記把持部は、前記支持部に固定される固定把持部と、前記支持部又は前記固定把持部に軸着され先端側が前記固定把持部に対して開閉自在な可動把持部からなり、
前記支持部は、操作棒を着脱可能に固定する操作棒係合部を有し、
前記支持部又は前記固定把持部は、接地金具と導通している接地線又は該接地線に接続される短絡線を固定する短絡線固定部及び前記可動把持部を前記固定把持部に対して開閉させる開閉機構を有し、
前記固定把持部及び前記可動把持部は、それぞれ先端部から基端側に向かって延び、前記接地用部材の側面に対応する形状の溝部を有し、
前記開閉機構は、前記操作棒係合部に前記操作棒を取り付けた状態で、前記操作棒の操作により前記可動把持部を開閉させることが可能であることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の短絡接地器具において、前記固定把持部又は前記可動把持部は、前記溝部の基端側に段差部を有していることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の短絡接地器具において、前記固定把持部は、前記支持部に軸着され適宜の位置で固定可能であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1~3のいずれかに記載の短絡接地器具において、前記可動把持部は、その基端側に突出している従動部を有しており、前記開閉機構は、前記可動把持部を前記固定把持部に対して開く方向又は閉じる方向に付勢する付勢手段、前記従動部の位置を制御するスライダー及び該スライダーを移動させるスライダー移動手段からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明の短絡接地器具によれば、固定把持部及び可動把持部は、それぞれ先端部から基端側に向かって延び、接地用部材の側面に対応する形状の溝部を有し、また、操作棒係合部に操作棒を取り付けた状態で操作棒の操作により可動把持部を開閉させることが可能な開閉機構を有しているので、操作棒係合部に操作棒を取り付け、把持部を適当な角度に開いた状態で接地用部材の先端に位置合わせすれば、接地用部材を把持部の内部に容易に挿入でき、挿入後に可動把持部を閉じる方向へ移動させれば、接地用部材の側面部が固定把持部及び可動把持部の溝部に密着した状態となる。そのため、柱状の接地用部材に対する短絡接地作業を、感電の危険を防止しつつ容易かつ確実に行うことができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、請求項1に係る発明による効果に加えて、固定把持部又は可動把持部は溝部の基端側に段差部を有しているので、短絡接地作業に際して、接地用部材の先端が段差部にぶつかるまで把持部を押し込むだけで、把持部内部の適当な箇所に接地用部材を容易に位置決めできる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、請求項1又は2に係る発明による効果に加えて、固定把持部は、支持部に軸着され適宜の位置で固定可能であるので、接地用部材がキュービクル内のような狭い場所に設置され、かつ、接地用部材の正面が広く開放されていない場合であっても、予め固定把持部を接地用部材に近接させ易い方向に位置付けて固定しておけば、比較的容易に短絡接地作業を行うことができる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、請求項1~3のいずれかに係る発明による効果に加えて、可動把持部は、その基端側に突出している従動部を有しており、開閉機構は、可動把持部を固定把持部に対して開く方向又は閉じる方向に付勢する付勢手段、従動部の位置を制御するスライダー及びスライダーを移動させるスライダー移動手段からなっているので、機械的な手段のみによって、確実に可動把持部を固定把持部に対して開閉操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例1に係る短絡接地器具を用いた三相交流用器具の構成を示す図。
【
図2】実施例1に係る短絡接地器具の構成を示す図。
【
図3】実施例1に係る短絡接地器具を接地用部材に近接させた状態を示す図。
【
図4】実施例1に係る短絡接地器具の固定把持部を曲げて固定した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施例によって本発明の実施形態を説明する。
なお、便宜上本明細書では、
図1及び2において、左側を先端側、右側を基端側と呼び、各部材の左端の部分を先端部、右端の部分を基端部と呼ぶこととする。
【実施例1】
【0018】
図1は実施例1に係る短絡接地器具1を用いた三相交流用器具の構成を示す図であり、
図2は実施例1に係る短絡接地器具1の構成を示す図であり、
図3は実施例1に係る短絡接地器具1をステンレス製の六角ナット(以下「接地用部材」という。)11に近接させた状態を示す図である。
図1に示すように、実施例1の短絡接地器具1を用いた三相交流用器具は、接地点に接続されるワニ口クリップ(以下「接地金具」という。)2、接地金具2と接続され導通している接地線3、接地線3に接続される3本の短絡線4、3本の短絡線4にそれぞれ接続される短絡接地器具1から構成される。
また、
図2及び3に示すように、実施例1の短絡接地器具1は、電路上に設置されている接地用部材11を把持可能な把持部12と、把持部12を支持する支持部13から構成されている。
そして、短絡接地器具1の把持部12は、固定把持部14及び可動把持部15からなり、支持部13は、固定部材16、スライダー17、操作棒係合部18、先端部にスライダー17を保持し操作棒係合部18に固定されているネジ部19及び固定部材16と操作棒係合部18との間に配置され両者が離れる方向に付勢する弾性部材20からなっている。
【0019】
固定把持部14は、先端側が細く基端側が太いステンレス製の部材であり、基端部は固定部材16の上面に軸着され、固定ナット21を締めることにより適宜の位置で固定できるようになっている。
可動把持部15も、固定把持部14と同様に先端側が細く基端側が太いステンレス製の部材であり、基端側には半球状の従動部22が突出している。
そして、可動把持部15の基端側は、固定把持部14の基端側に対して、回動軸23によって軸着されており、可動把持部15の先端側が固定把持部14の先端側に対して開閉自在となっているとともに、図示しないスプリングによって、可動把持部15を固定把持部14に対して開く方向に付勢している。
固定把持部14及び可動把持部15の内面には、先端部から基端側に向かって延び、中央が深い溝条、溝条の両側が水平面から30°傾いた平面となっている溝部24、25が形成され、溝条の両側にある平面のなす角度が120°となるようにしてある。
また、溝部24、25の基端側は段差部26、27となっており、接地用部材11が把持部12の内部に挿入され適当な深さに達すると、接地用部材11の先端が段差部26、27にぶつかるようになっている。
さらに、固定把持部14及び可動把持部15の内面側の側縁28、29には、電線等を挟んだ時に電線等がずれないようにするため、V字状の溝30が多数設けられている。
把持部12は、このような構成となっているので、接地用部材11を把持部12の内部に挿入し、可動把持部15を固定把持部14に対して閉じる方向に移動させると、溝部24、25が接地用部材11の側面に密着して確実に保持される。また、接地用部材11が設けられていない場合であっても、接地が必要な電線を固定把持部14及び可動把持部15の間に位置付け、可動把持部15を固定把持部14に対して閉じる方向に移動させると、同電線が固定把持部14と可動把持部15のV字状の溝30の間に挟まれて保持される。
【0020】
支持部13の固定部材16は、下面側にスライダー17を収容できる凹部31を有するとともに、凹部31の基端側にネジ部19をねじ込むことのできるネジ穴32を有するステンレス製の部材であり、上面には、短絡線4の端部を固定するための短絡線固定部33が設けられている。
そして、支持部13のスライダー17は、平面視が台形状で先端部がテーパ面34になっているとともに、基端側がネジ部19によって回動自在に保持されているステンレス製の部材であり、固定把持部14に対して開く方向に付勢されている可動把持部15の従動部22が、スライダー17の位置及び固定把持部14と固定部材16のなす角度に応じて、テーパ面34の異なる位置で接触するようになっている。
また、支持部13の操作棒係合部18は、先端部にネジ部19が固定され、基端側に操作棒(図示せず)の先端部を挿入するための挿入孔35を有するステンレス製の部材であり、挿入孔35の基端側には、操作棒の先端部に設けてあるピンを差し込み、操作棒の先端側に設けてあるロックナットを締め付けることで、端部にピンを受け入れて操作棒を固定するための溝36が設けられている。
支持部13は、このような構成となっているので、操作棒係合部18又は操作棒係合部18に固定された操作棒を時計回りに回転させれば、ネジ部19も時計回りに回転して先端側に移動し、それに伴ってスライダー17が先端側へ移動して従動部22が下側に移動するので、可動把持部15は固定把持部14に対して閉じる方向に移動する。逆に、操作棒係合部18又は操作棒係合部18に固定された操作棒を反時計回りに回転させれば、ネジ部19も反時計回りに回転して基端側に移動し、それに伴ってスライダー17が基端側へ移動して従動部22が上側に移動するので、可動把持部15は固定把持部14に対して開く方向に移動する。
【0021】
図4は実施例1に係る短絡接地器具1の固定把持部14を曲げて(固定把持部14の長手方向と固定部材16の長手方向の交差角度が45°で)固定した状態を示す図である。
図4の状態では、従動部22は紙面の手前側に移動するが、テーパ面34は従動部22の紙面に垂直な移動範囲において、従動部22と接触できる幅を有しているので、短絡接地器具1が
図1の状態の時と同様に、操作棒係合部18又は操作棒係合部18に固定された操作棒を時計回り又は反時計回りに回転させることによって、可動把持部15を固定把持部14に対して開閉させることができる。
【0022】
図1に示す実施例1に係る短絡接地器具1を用いた三相交流用器具の把持部12を接地用部材11に取り付ける手順を説明する。
なお、予め対象となる電気工作物の電路を開路し、電路の停電を検電器具により確認するとともに残留電荷を放電させた後、キュービクル内のLBS(高圧交流負荷開閉器)を開放しておく。
(1)接地点に接地金具2を接続する(ワニ口クリップ2で接地端子を挟む)。
(2)一つ目の短絡接地器具1の固定把持部14を作業し易い角度となるように固定部材16との角度を調整し固定する。
(3)同短絡接地器具1の操作棒係合部18を回転させ、固定把持部14と可動把持部15の先端部同士の間隔が接地用部材11の大きさより少し大きくなるように調整する。
(4)同短絡接地器具1の操作棒係合部18に操作棒を挿入し固定する。
(5)操作棒を持って把持部12の先端部を接地用部材11の先端に挿入する。
(6)接地用部材11の先端が段差部26、27にぶつかるまで把持部12を押し込む。
(7)操作棒を時計回りに回転させ、把持部12を閉じる方向に操作する。
(8)二つ目及び三つ目の短絡接地器具1に対しても、上記(2)~(7)の手順で作業を行い、それぞれの把持部12を接地用部材11に取り付ける。
【0023】
次に、上記(1)~(8)の手順により取り付けた把持部12を、接地用部材11から外す手順について説明する。
(A)一つ目の短絡接地器具1の操作棒係合部18に挿入、固定した操作棒を反時計回りに回転させ、把持部12を開く方向に操作する。
(B)同操作棒を動かして、把持部12を接地用部材11から引き抜く。
(C)同操作棒の固定状態を解除して、操作棒係合部18から外す。
(D)二つ目及び三つ目の短絡接地器具1に対しても、上記(A)~(C)の手順で作業を行い、それぞれの把持部12を接地用部材11から引き抜き、操作棒を操作棒係合部18から外す。
(E)接地点に接続した接地金具2を外す(ワニ口クリップ2を接地端子から外す)。
【0024】
実施例1に係る短絡接地器具の変形例を列記する。
(1)実施例1においては、電路上に設置されている接地用部材をステンレス製の六角ナットとしたが、接地用部材は導電体からなる柱状のものであれば、どのような形状のものであっても良い。
(2)実施例1においては、把持部及び支持部の全部をステンレス製とし、支持部に短絡線を固定する短絡線固定部を設けたが、固定把持部に短絡線固定部を設けても良い。
そうした場合、固定把持部はステンレス製等の導電体とする必要があるが、支持部や可動把持部は導電性でなくても良い。
(3)実施例1においては、把持部及び支持部の全部をステンレス製(導電体)とし、固定把持部に可動把持部を軸着したが、支持部に可動把持部を軸着し先端側を固定把持部に対して開閉自在としても良い。
そうした場合、支持部に短絡線を固定する短絡線固定部を設けてあり、可動把持部は支持部につながっているので、固定把持部は導電体でなくても良い。
(4)実施例1においては、固定把持部を支持部に軸着するとともに、適宜の位置で固定できるようにしたが、軸着せずに直接固定しても良い。
【0025】
(5)実施例1においては、固定把持部及び可動把持部に、先端部から基端側に向かって延び、中央が深い溝条、溝条の両側が水平面から30°傾いた平面となっている溝部が形成されていたが、中央の深い溝条は形成されていなくても良い。
また、実施例1における溝部の形態は六角ナットを把持するためのものであるので、上記(1)の変形例のように、接地用部材が六角ナット(六角柱状)でない柱状のものである場合には、接地用部材の側面に対応する形状の溝部とする必要がある。
例えば、接地用部材が円柱状の場合は、接地用部材の断面と同じ直径の円弧状断面となっている溝部とし、接地用部材が正四角柱状である場合は、両側が水平面から45°傾いた平面となっている溝部とし、接地用部材が正八角柱状である場合は、両側が水平面から22.5°傾いた平面となっている溝部とすれば良い。
(6)実施例1においては、固定把持部及び可動把持部が、先端部から基端側に向かって延びる溝部を有し、溝部の基端側は段差部となっていたが、段差部は無くても良く、段差部を固定把持部及び可動把持部のいずれか一方だけに設けても良い。
(7)実施例1においては、可動把持部を固定把持部に対して開く方向に付勢しておき、支持部に設けてあるスライダーのテーパ面を移動させることで、可動把持部を閉じる方向に操作できるようにしていたが、逆に可動把持部を閉じる方向に付勢しておくとともにテーパ面の傾きを変更することにより、テーパ面を移動させることで可動把持部を開く方向に操作することもできる。
また、テーパ面の移動によらず、リンク機構によって直線運動を可動把持部の開閉運動に変換するようにしても良く、要するに操作棒係合部に操作棒を取り付けた状態で、可動把持部を開閉させることが可能な開閉機構を支持部又は固定把持部に設けておけば良い。
【符号の説明】
【0026】
1 短絡接地器具 2 接地金具(ワニ口クリップ) 3 接地線
4 短絡線 11 接地用部材(六角ナット) 12 把持部
13 支持部 14 固定把持部 15 可動把持部
16 固定部材 17 スライダー 18 操作棒係合部
19 ネジ部 20 弾性部材 21 固定ナット
22 従動部 23 回動軸 24、25 溝部
26、27 段差部 28、29 内面側の側縁 30 V字状の溝
31 凹部 32 ネジ穴 33 短絡線固定部
34 テーパ面 35 挿入孔 36 固定溝