(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60K 6/405 20071001AFI20240202BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20240202BHJP
B60K 6/547 20071001ALI20240202BHJP
B60K 6/40 20071001ALI20240202BHJP
B60K 6/36 20071001ALI20240202BHJP
F16H 57/021 20120101ALI20240202BHJP
F16H 57/03 20120101ALI20240202BHJP
B60K 17/08 20060101ALI20240202BHJP
B60K 17/04 20060101ALI20240202BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20240202BHJP
B60K 23/02 20060101ALN20240202BHJP
【FI】
B60K6/405
B60K6/48 ZHV
B60K6/547
B60K6/40
B60K6/36
F16H57/021
F16H57/03
B60K17/08 Z
B60K17/04 G
H02K7/116
B60K23/02 L
B60K23/02 M
(21)【出願番号】P 2019225396
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 将英
(72)【発明者】
【氏名】北岡 圭史
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-081610(JP,A)
【文献】特開2001-078373(JP,A)
【文献】特開平05-248450(JP,A)
【文献】特開昭54-158569(JP,A)
【文献】特開2009-216114(JP,A)
【文献】特開平05-280556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/405
B60K 6/48
B60K 6/547
B60K 6/40
B60K 6/36
F16H 57/021
F16H 57/03
B60K 17/08
B60K 17/04
H02K 7/116
B60K 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の動力を断接するクラッチとレリーズベアリングとが同軸上に設置され、前記内燃機関の動力が前記クラッチを介して伝達される入力軸と、
前記入力軸と平行に設置されディファレンシャル装置のファイナルドリブンギヤに噛み合うファイナルドライブギヤを有するカウンタ軸と、
前記入力軸と前記カウンタ軸の間の動力伝達経路上に設置され、前記入力軸の回転を前記カウンタ軸に伝達可能な中間軸と、
回動自在なクラッチレリーズ軸を有し、前記クラッチレリーズ軸を回動させることにより前記レリーズベアリングを介して前記クラッチを断接するクラッチレリーズ機構と、
前記入力軸、前記カウンタ軸、前記中間軸、前記クラッチレリーズ機構を収容する変速機ケースとを備え、
前記変速機ケースは、前記変速機ケースの内部を、前記入力軸、前記カウンタ軸および前記中間軸を収容するギヤ室と、前記クラッチ、前記レリーズベアリングおよび前記クラッチレリーズ機構を収容するクラッチ室とに仕切る仕切壁を有し、
前記仕切壁は、軸受を介して前記カウンタ軸を回転自在に支持するカウンタ軸用の軸受支持部と、軸受を介して前記中間軸を回転自在に支持する中間軸用の軸受支持部とを有し、
前記中間軸用の軸受支持部は、前記中間軸の軸方向で前記カウンタ軸用の軸受支持部よりも前記クラッチから離れた位置に形成されており、
前記クラッチレリーズ軸は、前記中間軸の延長線と交差するように設置されていることを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項2】
前記中間軸用の軸受支持部の前記クラッチ側の面に、前記クラッチレリーズ軸を回転自在に支持するクラッチレリーズ軸支持部が連結されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記クラッチレリーズ軸支持部は、前記カウンタ軸用の軸受支持部に対して前記カウンタ軸の軸方向で重なる位置に設けられており、
前記仕切壁は、前記クラッチレリーズ軸支持部と前記カウンタ軸用の軸受支持部を連結するリブを有することを特徴とする請求項2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
モータと、前記モータを前記変速機ケースに取付けるブラケットとを備え、
前記変速機ケースは、上壁を有し、前記上壁は、前記ブラケットが取付けられるケース側取付部を有し、
前記クラッチレリーズ軸支持部を第1のクラッチレリーズ軸支持部とした場合に、前記上壁に、前記第1のクラッチレリーズ軸支持部と異なる第2のクラッチレリーズ軸支持部が設けられており、
前記ケース側取付部は、前記第
2のクラッチレリーズ軸支持部に連結部を介して連結していることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力軸と同軸上に設置されるクラッチおよびレリーズベアリングを有し、エンジンの動力を、レリーズベアリングを介して断続するクラッチレリーズ機構が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このクラッチレリーズ機構は、入力軸の軸方向と直交する方向に延びるクラッチレリーズシャフトを有し、クラッチレリーズシャフトは、連結部材を介してピンによってクラッチレリーズベアリングに連結されている。
【0004】
クラッチレリーズ機構は、クラッチペダルの操作に連動して入力軸の軸方向に移動することにより、レリーズベアリングを入力軸の軸方向に移動させ、レリーズベアリングによってクラッチを断続する。
【0005】
変速機は、入力軸以外に複数の回転軸を備えており、入力軸と複数の回転軸は、ライトケースの隔壁に設けられた複数の軸受支持部にそれぞれ軸受を介して回転自在に支持されている(特許文献1の
図3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来のクラッチレリーズ機構にあっては、クラッチレリーズシャフトの位置と軸受支持部との位置関係が開示されていない。
【0008】
このため、クラッチレリーズシャフトが軸受支持部と干渉しないようにするために、クラッチレリーズシャフトを設置するための広い空間が必要となり、変速機ケースが大型化するおそれがあり、未だ、改善の余地がある。
【0009】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、クラッチレリーズ軸と軸受支持部が干渉することを防止しつつ、クラッチレリーズ軸の設置空間と支持剛性を確保でき、大型化することを抑制できる車両用駆動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、内燃機関の動力を断接するクラッチとレリーズベアリングとが同軸上に設置され、前記内燃機関の動力が前記クラッチを介して伝達される入力軸と、前記入力軸と平行に設置されディファレンシャル装置のファイナルドリブンギヤに噛み合うファイナルドライブギヤを有するカウンタ軸と、前記入力軸と前記カウンタ軸の間の動力伝達経路上に設置され、前記入力軸の回転を前記カウンタ軸に伝達可能な中間軸と、回動自在なクラッチレリーズ軸を有し、前記クラッチレリーズ軸を回動させることにより前記レリーズベアリングを介して前記クラッチを断接するクラッチレリーズ機構と、前記入力軸、前記カウンタ軸、前記中間軸、前記クラッチレリーズ機構を収容する変速機ケースとを備え、前記変速機ケースは、前記変速機ケースの内部を、前記入力軸、前記カウンタ軸および前記中間軸を収容するギヤ室と、前記クラッチ、前記レリーズベアリングおよび前記クラッチレリーズ機構を収容するクラッチ室とに仕切る仕切壁を有し、前記仕切壁は、軸受を介して前記カウンタ軸を回転自在に支持するカウンタ軸用の軸受支持部と、軸受を介して前記中間軸を回転自在に支持する中間軸用の軸受支持部とを有し、前記中間軸用の軸受支持部は、前記中間軸の軸方向で前記カウンタ軸用の軸受支持部よりも前記クラッチから離れた位置に形成されており、前記クラッチレリーズ軸は、前記中間軸の延長線と交差するように設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このように上記の本発明によれば、クラッチレリーズ軸と軸受支持部が干渉することを防止しつつ、クラッチレリーズ軸の設置空間と支持剛性を確保でき、車両用駆動装置が大型化することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置の左側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置の正面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置の後面図である
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置の上面図であり、シフトユニットが装着されていない状態を示す。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置の軸配置を示す左側面図であり、レフトケースが装着されていない状態を示す。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例に係る動力伝達装置の動力伝達系の展開図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施例に係る車両用駆動装置を右斜め前方から見た斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施例に係る車両用駆動装置のライトケースの上面図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施例に係る車両用駆動装置のライトケースの右側面図である。
【
図10】
図10は、クラッチとクラッチレリーズ機構を追加した
図9のX-X方向矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態に係る車両用駆動装置は、内燃機関の動力を断接するクラッチとレリーズベアリングとが同軸上に設置され、内燃機関の動力がクラッチを介して伝達される入力軸と、入力軸と平行に設置されディファレンシャル装置のファイナルドリブンギヤに噛み合うファイナルドライブギヤを有するカウンタ軸と、入力軸とカウンタ軸の間の動力伝達経路上に設置され、入力軸の回転をカウンタ軸に伝達可能な中間軸と、回動自在なクラッチレリーズ軸を有し、クラッチレリーズ軸を回動させることによりレリーズベアリングを介してクラッチを断接するクラッチレリーズ機構と、入力軸、カウンタ軸、中間軸、クラッチレリーズ機構を収容する変速機ケースとを備え、変速機ケースは、変速機ケースの内部を、入力軸、カウンタ軸および中間軸を収容するギヤ室と、クラッチ、レリーズベアリングおよびクラッチレリーズ機構を収容するクラッチ室とに仕切る仕切壁を有し、仕切壁は、軸受を介して前記カウンタ軸を回転自在に支持するカウンタ軸用の軸受支持部と、軸受を介して中間軸を回転自在に支持する中間軸用の軸受支持部とを有し、中間軸用の軸受支持部は、中間軸の軸方向でカウンタ軸用の軸受支持部よりもクラッチから離れた位置に形成されており、クラッチレリーズ軸は、中間軸の延長線と交差するように設置されている。
【0014】
これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用駆動装置は、クラッチレリーズ軸と軸受支持部が干渉することを防止しつつ、クラッチレリーズ軸の設置空間と支持剛性を確保でき、大型化することを抑制できる。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の一実施例に係る車両用駆動装置について、図面を用いて説明する。
図1から
図12は、本発明の一実施例に係る車両用駆動装置を示す図である。
図1から
図12において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態の車両用駆動装置を基準とし、車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向(車両の幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
【0016】
まず、構成を説明する。
図1において、ハイブリッド車両(以下、単に車両という)1は、車体2を備えており、車体2は、ダッシュパネル3によって前側のエンジンルーム2Aと後側の車室2Bとに仕切られている。
【0017】
エンジンルーム2Aには駆動装置4が設置されており、駆動装置4は、前進6速、後進1速の変速段を有する。駆動装置4は、本発明における車両用駆動装置を構成する。
【0018】
図2において、駆動装置4には内燃機関を構成するエンジン20が連結されている。駆動装置4は変速機ケース5を備えており、変速機ケース5は、エンジン20の側から順に、ライトケース6、レフトケース7、減速機ケース8、減速機カバー9、および、パーキングカバー42(
図1参照)を有する。各ケースやカバーは、左右方向に垂直な面にて結合されている。つまり、各ケースやカバーの合わせ面は、左右方向に垂直な面に形成されている。
【0019】
エンジン20は、ライトケース6に連結されている。エンジン20は、クランク軸20A(
図10参照)を有し、クランク軸20Aは、車両1の幅方向(左右方向、以下、単に車幅方向という)に延びるように設置されている。すなわち、本実施例のエンジン20は、横置きエンジンから構成されており、本実施例の車両1は、フロントエンジン・フロントドライブ(FF)車両である。
【0020】
ライトケース6は、右側端部がエンジン20に連結される周壁、および、周壁の左側端部に架設設置された仕切壁6W(
図5参照)を有し、右側が開口した形状のケースである。仕切壁6Wは、駆動装置4の後部にディファレンシャル装置17(
図6参照)を設置するために、前部に比べて後部は右側に膨らんでディファレンシャル装置17の収容空間を形成している。
【0021】
レフトケース7は、エンジン20と反対側、すなわち、ライトケース6の左側に連結されている。
図5に示すように、ライトケース6の仕切壁6Wの外周縁にはフランジ部6Aが形成されている。
【0022】
レフトケース7は、
図4に示すように、右側端部がライトケース6に連結される周壁、および、周壁の左側端部に架設設置された左側壁7Kを有し、右側が開口した形状のケースである。
【0023】
図2に示すように、レフトケース7の周壁の右端部にはフランジ部7Aが形成されている。つまり、レフトケース7の右端部はその全体がフランジ部7Aとなっており、ライトケース6の左側に連結される合わせ面となっているので、車幅方向でレフトケース7の右端部は同じ位置となっている。
【0024】
これに対して、レフトケース7の左端部は、車幅方向で、後部が前部に比較してライトケース6側に位置している。このため、
図4に示すように、レフトケース7の左側壁7Kは、前側の第1の左壁部7Cと、後側の第2の左壁部7Dとを有する。
【0025】
ライトケース6の仕切壁6Wとレフトケース7の左側壁7Kは、左右方向に略垂直な面となっており、レフトケース7の左側壁7Kは、ライトケース6の仕切壁6Wと車幅方向で対向している。そして、レフトケース7の左側壁7Kとライトケース6の仕切壁6Wの間にはギヤ室21が形成されている(
図6参照)。
【0026】
図2に示すように、フランジ部7Aにはボルト10Aが挿入されるボス部7aが設けられており、ボス部7aは、フランジ部7Aに沿って複数設けられている。
【0027】
フランジ部6Aにはボス部7aに車幅方向で合致する複数のボス部6aが形成されており、ボルト10Aによってフランジ部6Aのボス部6aとフランジ部7Aのボス部7aを締結することで、ライトケース6とレフトケース7が締結されて一体化されている。
【0028】
図10に示すように、仕切壁6Wの右側に位置するライトケース6の内部空間にはクラッチ室19が形成されている。クラッチ室19には乾式のクラッチ41、フライホイール43、レリーズベアリング44およびクラッチレリーズ機構45が収容されている。
【0029】
図6に示すように、仕切壁6Wの左側においてライトケース6とレフトケース7にて形成されるギヤ室21には、主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13、カウンタ軸14、後進軸15およびディファレンシャル装置17が収容されている。
【0030】
このように、本実施例の仕切壁6Wは、変速機ケース5の内部をクラッチ室19とギヤ室21とに仕切っている。
【0031】
主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13、カウンタ軸14、後進軸15およびディファレンシャル装置17は、車幅方向(左右方向)に沿って平行に設置されている。また、主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13、およびカウンタ軸14は、ライトケース6の仕切壁6Wとレフトケース7の左側壁7K(第1の左壁部7C)に架設されている。後進軸15とディファレンシャル装置17は、ライトケース6の仕切壁6Wとレフトケース7の左側壁7K(第2の左壁部7D)に架設されている。
【0032】
主入力軸11は、クラッチ41を介してエンジン20に連結されている。クラッチ41は、エンジン20の動力を断接するようになっており、主入力軸11にはクラッチ41およびフライホイール43を介してエンジン20の動力が伝達される。本実施例の主入力軸11は、本発明の入力軸を構成する。
【0033】
図10に示すように、フライホイール43は、エンジン20のクランク軸20Aに連結されており、クランク軸20Aと一体で回転する。
【0034】
クラッチ41は、主入力軸11と同軸上に設けられている。クラッチ41は、主入力軸11と一体回転自在、かつ主入力軸11の軸方向に移動自在に設けられたクラッチディスク41Aと、クラッチディスク41Aをフライホイール43に押し付けるプレッシャプレート41Bと、プレッシャプレート41Bをフライホイール43側に付勢するダイヤフラムスプリング41Cとを備えている。
【0035】
ライトケース6の仕切壁6Wには筒状部6Pが形成されている。筒状部6Pは、仕切壁6Wから主入力軸11の軸方向に沿ってクラッチ41側に延びており、筒状部6Pの内部には主入力軸11が挿通されている。主入力軸11は、筒状部6Pからクラッチ41側に突出しており、スプライン嵌合によりクラッチディスク41Aが突出部分に取付けられている。
【0036】
クラッチ41と仕切壁6Wの間において、筒状部6Pの外周部にはレリーズベアリング44が軸方向に摺動自在に設けられており、レリーズベアリング44は、主入力軸11と同軸上に設置されている。
【0037】
レリーズベアリング44は、フライホイール43側に移動してクラッチ41を開放する位置と、フライホイール43から離れる側に移動してクラッチ41を締結する位置との間でクラッチ41の軸方向(主入力軸11の軸方向)に移動する。
【0038】
レリーズベアリング44と仕切壁6Wの間にはクラッチレリーズ機構45が設けられており、クラッチレリーズ機構45は、レリーズベアリング44をクラッチ41の軸方向に移動させる。
【0039】
レリーズベアリング44は、クラッチレリーズ機構45によってエンジン20側に押圧されると、軸方向に移動して、ダイヤフラムスプリング41Cの径方向内端部に接触する。更に押圧されると、ダイヤフラムスプリング41Cの付勢力に抗してエンジン20側(右側)に移動して、ダイヤフラムスプリング41Cの径方向内端部を押圧する。
【0040】
このとき、ダイヤフラムスプリング41Cの変形に伴いプレッシャプレート41Bの付勢が解除され、クラッチディスク41Aがフライホイール43から離れる。この結果、クラッチ41は、エンジン20のクランク軸20Aの回転を主入力軸11に伝達しなくなる。
【0041】
一方、レリーズベアリング44は、クラッチレリーズ機構45の押圧力が解除されると、ダイヤフラムスプリング41Cの付勢力によりレフトケース7側に移動する。さらに、後述するコイルスプリングにて、レリーズベアリング44はレフトケース7側に移動して、レリーズベアリング44はダイヤフラムスプリング41Cの径方向内端部から離れる。
【0042】
このとき、ダイヤフラムスプリング41Cが元の状態に戻り、ダイヤフラムスプリング41Cがプレッシャプレート41Bを付勢してクラッチディスク41Aをフライホイール43に押し付ける。この結果、クラッチ41は接続状態となり、エンジン20のクランク軸20Aの回転を主入力軸11に伝達する。
【0043】
このようにクラッチ41は、エンジン20のクランク軸20Aと主入力軸11との間で動力を伝達可能または動力を遮断可能、すなわち、エンジン20の動力を断接可能となっている。
【0044】
図9に示すように、仕切壁6Wには筒状の軸受支持部61、62、63、64、65が形成されており、軸受支持部61、62、63、64、65は、仕切壁6Wからクラッチ室19側に膨出している。詳細には、
図6、
図12に示すように、軸受支持部64は、軸受支持部61、62、63よりも仕切壁6Wからクラッチ室19側に膨出している。
【0045】
図6に示すように、主入力軸11の右側部分は、仕切壁6Wを貫通して仕切壁6Wの右側に突出し、クラッチ41に接続されている。主入力軸11は、仕切壁6Wを貫通する部分で玉軸受22Aを介してライトケース6の仕切壁6Wの軸受支持部61に回転自在に支持されている。そして、主入力軸11の左端部11fは、玉軸受22Bを介してレフトケース7の左側壁7K(第1の左壁部7C)の図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。
【0046】
アイドル軸12の右端部12rは、玉軸受23Aを介してライトケース6の仕切壁6Wの軸受支持部62に回転自在に支持されている。そして、アイドル軸12の左端部12fは、玉軸受23Bを介してレフトケース7の左側壁7K(第1の左壁部7C)の図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。本実施例のアイドル軸12は、本発明の中間軸を構成する。
【0047】
副入力軸13の右端部13rは、玉軸受24Aを介してライトケース6の仕切壁6Wの軸受支持部63に回転自在に支持されている。そして、副入力軸13の左端部13fは、玉軸受24Bを介してレフトケース7の左側壁7K(第1の左壁部7C)の図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。
【0048】
カウンタ軸14の右端部14rは、円錐ころ軸受25Aを介してライトケース6の仕切壁6Wの軸受支持部64に回転自在に支持されている。そして、カウンタ軸14の左端部14fは、円錐ころ軸受25Bを介してレフトケース7の左側壁7K(第1の左壁部7C)の図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。
【0049】
後進軸15の右端部15rは、玉軸受26Aを介してライトケース6の仕切壁6Wの軸受支持部65に回転自在に支持されており、後進軸15の左端部15fは、玉軸受26Bを介してレフトケース7の左側壁7K(第2の左壁部7D)の図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。
【0050】
本実施例の軸受支持部62は、本発明の中間軸用の軸受支持部を構成し、軸受支持部64は、本発明のカウンタ軸用の軸受支持部を構成する。玉軸受23Aと円錐ころ軸受25Aは、本発明の軸受を構成する。
【0051】
図9、
図12に示すように、ライトケース6には、ディファレンシャル装置17が配置される膨出部66が設けられている。膨出部66は、仕切壁6Wからクラッチ室19側に膨出しており、膨出部66の膨出方向(右方向)の端部側には開口部66hが形成されている。開口部66hには図示しない軸受支持部が設けられている。
【0052】
軸受支持部にはディファレンシャル装置17の後述するデフケース17Bの筒状部17bが、円錐ころ軸受28A(
図6参照)を介して回転自在に支持されている。
【0053】
そして、後述するデフケース17Bの左端部に形成された筒状部17aは、円錐ころ軸受28B(
図6参照)を介してレフトケース7の左側壁7K(第2の左壁部7D)の図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。
【0054】
以上説明した通り、
図4に示すように、レフトケース7の左側壁7Kは、フランジ部7Aに対してライトケース6から離れる方向に位置する第1の左壁部7Cと、その後側に設置されフランジ部7Aに対してライトケース6から離れる方向に位置し、かつ、第1の左壁部7Cのよりもライトケース6側に位置する第2の左壁部7Dとを有している。
【0055】
主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13およびカウンタ軸14の左端部は11f、12f、13f、14fは、第1の左壁部7Cの軸受支持部に支持されており、主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13およびカウンタ軸14よりも軸長の短い後進軸15の左端部15fとディファレンシャル装置17は、第2の左壁部7Dの軸受支持部に支持されている。つまり、第2の左壁部7Dは、少なくとも後進軸15およびディファレンシャル装置17の左側に位置するレフトケース7の左側壁7Kである。
【0056】
図6に示すように、主入力軸11は、1速段用の入力ギヤ11A、2速段用の入力ギヤ11B、3速/5速段用の入力ギヤ11Cおよび4速/6速段用の入力ギヤ11Dを有する。
【0057】
1速段用の入力ギヤ11Aと2速段用の入力ギヤ11Bは、主入力軸11に一体に形成されており、主入力軸11と一体で回転する。3速/5速段用の入力ギヤ11Cおよび4速/6速段用の入力ギヤ11Dは、主入力軸11にスプライン嵌合されており、主入力軸11と一体で回転する。
【0058】
入力ギヤ11A、11B、11C、11Dは、入力ギヤ11Aから入力ギヤ11Dに向かうに従って径が大きくなっている。また、入力ギヤ11A、11B、11C、11Dは、エンジン20側から順に設置されている。軸方向の位置で、入力ギヤ11Aと11Bは、カウンタ軸14に後述する同期装置31が設置できるように離れて設置されている。
【0059】
軸方向の位置で、入力ギヤ11Bと入力ギヤ11Cは、その間にカウンタ軸14に後述するリダクションドリブンギヤ14Eが設置できるように離れて設置されている。軸方向の位置で、入力ギヤ11Cと入力ギヤ11Dは、カウンタ軸14に後述する同期装置32やアイドル軸12に後述する同期装置33が設置できるように離れて設置されている。
【0060】
カウンタ軸14は、1速段用のカウンタギヤ14A、2速段用のカウンタギヤ14B、5速段用のカウンタギヤ14C、6速段用のカウンタギヤ14D、リダクションドリブンギヤ14Eおよび前進用のファイナルドライブギヤ14Fを有する。
【0061】
カウンタギヤ14A、14B、14C、14Dは、ニードル軸受14a、14b、14c、14dを介してカウンタ軸14に支持されている遊転ギヤであり、カウンタ軸14と相対回転自在となっている。
【0062】
リダクションドリブンギヤ14Eは、カウンタ軸14にスプライン嵌合されており、カウンタ軸14と一体で回転する。前進用のファイナルドライブギヤ14Fは、カウンタ軸14に一体に形成されており、カウンタ軸14と一体で回転する。
【0063】
カウンタギヤ14A、14B、14C、14Dは、カウンタギヤ14Aからカウンタギヤ14Dに向かうに従って径が小さくなっており、それぞれ同じ変速段を構成する入力ギヤ11Aから入力ギヤ11Dに噛み合っている。
【0064】
また、カウンタギヤ14A、14B、14C、14D、リダクションドリブンギヤ14E、ファイナルドライブギヤ14Fは、エンジン20側から順に、ファイナルドライブギヤ14F、カウンタギヤ14A、14B、リダクションドリブンギヤ14E、カウンタギヤ14C、14Dの順に設置されている。
【0065】
アイドル軸12は、3速段用のアイドルギヤ12A、4速段用のアイドルギヤ12Bおよびリダクションドライブギヤ12Cを有する。リダクションドライブギヤ12Cは、4速段用のアイドルギヤ12Bに対して3速段用のアイドルギヤ12Aの反対側に位置している。
【0066】
3速段用のアイドルギヤ12Aおよび4速段用のアイドルギヤ12Bは、ニードル軸受12a、12bを介してアイドル軸12に支持されている遊転ギヤであり、アイドル軸12と相対回転自在となっている。
【0067】
リダクションドライブギヤ12Cは、主入力軸11に設けられた2速段用の入力ギヤ11Bと軸方向で同じ位置となるように、アイドル軸12にスプライン嵌合されており、アイドル軸12と一体で回転する。3速段用のアイドルギヤ12A、4速段用のアイドルギヤ12Bおよびリダクションドライブギヤ12Cは、エンジン20側から順に、リダクションドライブギヤ12C、3速段用のアイドルギヤ12A、4速段用のアイドルギヤ12Bの順に設置されている。
【0068】
軸方向の位置で、リダクションドライブギヤ12Cと3速段用のアイドルギヤ12Aは、その間に副入力軸13に設置される後述するリダクションドライブギヤ13Bの外周縁が入り込むことができるように離れて設置されている。
【0069】
3速段用のアイドルギヤ12Aは、3速/5速段用の入力ギヤ11Cに噛み合っている。4速段用のアイドルギヤ12Bは、3速段用のアイドルギヤ12Aよりも小径に形成されており、4速/6速段用の入力ギヤ11Dに噛み合っている。
【0070】
本実施例の駆動装置4は、3速段と5速段とが1つの3速/5速段用の入力ギヤ11Cを共用し、部品点数の削減と駆動装置4の小型化(軸方向の寸法の短縮)がなされている。また、4速段と6速段とが1つの4速/6速段用の入力ギヤ11Dを共用し、部品点数の削減と駆動装置4の小型化(軸方向の寸法の短縮)がなされている。
【0071】
さらに、3速段用のアイドルギヤ12Aと5速段用のカウンタギヤ14Cとが同一のギヤから構成されており、4速段用のアイドルギヤ12Bと6速段用のカウンタギヤ14Dが同一のギヤから構成されている。同じギヤを用いることで、生産性の向上が図られている。
【0072】
すなわち、3速段用のアイドルギヤ12Aを5速段用のカウンタギヤ14Cとして用いることが可能であり、その逆に、5速段用のカウンタギヤ14Cを3速段用のアイドルギヤ12Aとして用いることが可能である。
【0073】
また、4速段用のアイドルギヤ12Bを6速段用のカウンタギヤ14Dとして用いることが可能であり、その逆に、6速段用のカウンタギヤ14Dを4速段用のアイドルギヤ12Bとして用いることが可能である。
【0074】
副入力軸13は、リダクションドリブンギヤ13A、リダクションドライブギヤ13Bおよびダンパ機構16を有する。リダクションドリブンギヤ13A、リダクションドライブギヤ13Bおよびダンパ機構16は、エンジン20側から順に、ダンパ機構16、リダクションドリブンギヤ13A、リダクションドライブギヤ13Bの順に設置されている。
【0075】
リダクションドリブンギヤ13Aは、リダクションドライブギヤ12Cよりも大径に形成されており、リダクションドライブギヤ12Cに噛み合っている。リダクションドリブンギヤ13Aは、ダンパ機構16で許容される範囲内で副入力軸13と相対回転自在に、副入力軸13に支持されている。
【0076】
リダクションドライブギヤ13Bは、リダクションドリブンギヤ13Aよりも大径で、かつ、リダクションドリブンギヤ14Eよりも小径に形成されており、リダクションドリブンギヤ14Eに噛み合っている。リダクションドライブギヤ13Bは、副入力軸13にスプライン嵌合されており、副入力軸13と一体で回転する。
【0077】
すなわち、リダクションドリブンギヤ14Eは、リダクションドライブギヤ12C、リダクションドリブンギヤ13Aおよびリダクションドライブギヤ13Bよりも大径に形成されている。このため、3速段と4速段とにおいて、アイドル軸12から副入力軸13を介してカウンタ軸14に伝達される動力は、5速段と6速段に比べて減速される。
【0078】
なお、減速比に関し、アイドル軸12に設置されたアイドルギヤ12Aとアイドルギヤ12Bを用いる変速段の間に、カウンタ軸14に設置されたカウンタギヤ14Cを用いる変速段を設定することも可能であるが、後述する同期装置32、33を動作させる作動機構が複雑となるため、本実施例では同期装置32、33が連続する変速段を切り替えるようにしている。
【0079】
本実施例のリダクションドライブギヤ12Cとリダクションドリブンギヤ13Aは、第1のリダクションギヤ対を構成しており、リダクションドライブギヤ13Bとリダクションドリブンギヤ14Eは、第2のリダクションギヤ対を構成している。すなわち、駆動装置4は、2組のリダクションギヤ対を有する。
【0080】
リダクションドライブギヤ12C、リダクションドリブンギヤ13A、リダクションドライブギヤ13Bおよびリダクションドリブンギヤ14Eは、それぞれが設置される各軸の軸方向の略中央部に設置されている。軸方向で、第1のリダクションギヤ対は、第2のリダクションギヤ対のエンジン20側に設置され、入力ギヤ11B、カウンタギヤ14Bと同じ位置に設置されている。以後、各軸という場合には、主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13、カウンタ軸14および後進軸15を示す。
【0081】
リダクションドリブンギヤ14Eの外周部の一部は、主入力軸11の軸方向で2速段用の入力ギヤ11Bと3速/5速段用の入力ギヤ11Cの間に入り込んでいる。リダクションドライブギヤ13Bの外周部の一部は、アイドル軸12の軸方向でリダクションドライブギヤ12Cと3速段用のアイドルギヤ12Aの間に入り込んでいる。
【0082】
このため、大径のリダクションドライブギヤ13Bおよびリダクションドリブンギヤ14Eを用いても主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13およびカウンタ軸14の軸間距離を短縮でき、変速機ケース5の小型化を図ることができる。この結果、駆動装置4の小型化を図ることができる。
【0083】
このように本実施例のアイドル軸12は、主入力軸11とカウンタ軸14の動力伝達経路上に設置されており、主入力軸11からカウンタ軸14にエンジン20の動力を伝達可能となっている。
【0084】
ダンパ機構16は、外筒部材16Aと、ゴム等の弾性体16Bと、内筒部材16Cとを有する。
【0085】
内筒部材16Cは、外筒部材16Aよりも小径に形成されており、外筒部材16Aの内径側に設置されている。つまり、軸方向で、内筒部材16Cは、外筒部材16Aと同じ位置に設置されている。内筒部材16Cは、副入力軸13にスプライン嵌合されており、副入力軸13と一体で回転する。
【0086】
弾性体16Bは、外筒部材16Aの内径と内筒部材16Cの外径の間に設置されており、外周面と内周面がそれぞれ外筒部材16Aと内筒部材16Cに固定されている。つまり、弾性体16Bは、径方向で外筒部材16Aと内筒部材16Cの間に設置されている。
【0087】
外筒部材16Aは、弾性体16Bを収容する部位からリダクションドリブンギヤ13A側に延びる延出部を有し、延出部の内周部には内周スプライン16aが形成されている。内筒部材16Cは、弾性体16Bを取付ける部位からリダクションドリブンギヤ13A側に延びる延出部を有し、延出部には外周スプライン16cが形成されている。
【0088】
リダクションドリブンギヤ13Aは、外筒部材16Aの延出部の内径側に入り込み内筒部材16C側に延びる延出部を有し、延出部には外周スプライン13eが形成されている。そして、外周スプライン16c、13eは、外筒部材16Aの内周スプライン16aに嵌合されている。
【0089】
外筒部材16Aの内周スプライン16aとリダクションドリブンギヤ13Aの外周スプライン13eは、周方向の隙間が小さく形成されており、タイト(回転方向のガタが比較的少ない状態)にスプライン嵌合している。
【0090】
これに対して、外筒部材16Aの内周スプライン16aと内筒部材16Cの外周スプライン16cは、周方向の隙間が大きく形成されており、ルーズ(回転方向のガタが比較的多い状態)にスプライン嵌合している。つまり、外筒部材16Aと内筒部材16Cとは、多少の相対回転が可能な状態にスプライン嵌合している。
【0091】
ダンパ機構16は、副入力軸13とリダクションドリブンギヤ13Aとの間の動力伝達を行うが、外筒部材16Aの内周スプライン16aと内筒部材16Cの外周スプライン16cの上記したスプライン嵌合により、異なる動力伝達経路を達成可能となっている。
【0092】
回転方向で、内周スプライン16aと外周スプライン16cが当接しない状態では弾性体16Bを介する動力伝達となり、内周スプライン16aと外周スプライン16cが当接する状態では内周スプライン16aと外周スプライン16cを介した動力伝達が可能となっている。
【0093】
つまり、ダンパ機構16は、伝達する駆動力が比較的小さい場合、弾性体16Bを介する動力伝達を行い、伝達する駆動力が比較的大きい場合、内周スプライン16aと外周スプライン16cが当接して内周スプライン16aと外周スプライン16cを介した動力伝達を行う。弾性体16Bは、微小なトルク変動(回転変動)を吸収して、歯打ち音等を抑制することができる。
【0094】
後進軸15は、後進ギヤ15Aおよび後進用のファイナルドライブギヤ15Bを有する。後進ギヤ15Aは、ニードル軸受15aを介して後進軸15に支持されており、後進軸15と相対回転自在となっている。後進ギヤ15Aは、1速段用のカウンタギヤ14Aに噛み合っている。
【0095】
後進用のファイナルドライブギヤ15Bは、後進軸15に一体に形成されており、後進軸15と一体で回転する。後進用のファイナルドライブギヤ15Bは、ディファレンシャル装置17のファイナルドリブンギヤ17Aに噛み合っている。
【0096】
カウンタ軸14には同期装置31が設けられており、同期装置31は、カウンタ軸14の軸方向で1速段用のカウンタギヤ14Aと2速段用のカウンタギヤ14Bの間に設置されている。同期装置31は、ハブ31A、スリーブ31Bおよびシンクロナイザリング31C、31Dを備えている。
【0097】
ハブ31Aの内周面は、カウンタ軸14にスプライン嵌合しており、ハブ31Aは、カウンタ軸14と一体で回転する。スリーブ31Bは、ハブ31Aにスプライン嵌合されており、カウンタ軸14の軸方向に移動自在となっている。
【0098】
スリーブ31Bは、シフト操作によって変速段が1速段または2速段にシフトされると、中立位置から図示しないシフトフォークによって1速段用のカウンタギヤ14A側または2速段用のカウンタギヤ14B側に移動される。なお、図示したスリーブ31Bの位置は、中立位置である。
【0099】
例えば、自動によるシフト操作が行われる場合には、スリーブ31Bは、後述するシフトユニット50によって駆動される。シフトユニット50は、運転者によって操作される図示しないシフトレバーがドライブレンジにシフトされた状態あるいはリバースレンジにシフトされた状態において、予めスロットル開度と車速とをパラメータとして設定された変速マップに基づいて同期装置31および後述する同期装置32、33、34を操作して変速段の制御を行う。
【0100】
スリーブ31Bの内周面にはスプライン31a、31bが形成されている。1速段用のカウンタギヤ14Aにはスプライン31aに嵌合するスプライン14gが形成されており、2速段用のカウンタギヤ14Bにはスプライン31bに嵌合するスプライン14hが形成されている。
【0101】
スリーブ31Bが中立位置から1速段用のカウンタギヤ14A側に移動すると、スリーブ31Bのスプライン31aが1速段用のカウンタギヤ14Aのスプライン14gに嵌合することにより、スリーブ31Bを介して1速段用のカウンタギヤ14Aがカウンタ軸14に連結され、1速段用のカウンタギヤ14Aがカウンタ軸14と一体で回転する。
【0102】
これにより、エンジン20の動力が主入力軸11から1速段用の入力ギヤ11Aおよび1速段用のカウンタギヤ14Aを介してカウンタ軸14に伝達される。
【0103】
スリーブ31Bが中立位置から2速段用のカウンタギヤ14B側に移動すると、スリーブ31Bのスプライン31bが2速段用のカウンタギヤ14Bのスプライン14hに嵌合することにより、スリーブ31Bを介して2速段用のカウンタギヤ14Bがカウンタ軸14とに連結され、2速段用のカウンタギヤ14Bがカウンタ軸14と一体で回転する。
【0104】
これにより、エンジン20の動力が主入力軸11から2速段用の入力ギヤ11Bおよび2速段用のカウンタギヤ14Bを介してカウンタ軸14に伝達される。
【0105】
ここで、同期装置によって1速段用のカウンタギヤ14Aがカウンタ軸14に連結されることは、1速段用のカウンタギヤ14Aがカウンタ軸14と一体で回転するようにカウンタ軸14に直結されることである。以後、ギヤが回転軸に連結されるという表現は、ギヤが回転軸と一体で回転するように回転軸に直結されることを意味する。
【0106】
シンクロナイザリング31Cは、ハブ31Aと1速段用のカウンタギヤ14Aとの間に設けられており、外周面にスリーブ31Bのスプライン31aに嵌合するスプラインが形成されている。
【0107】
シンクロナイザリング31Dは、ハブ31Aと2速段用のカウンタギヤ14Bとの間に設けられており、外周面にスリーブ31Bのスプライン31bに嵌合するスプラインが形成されている。
【0108】
シンクロナイザリング31Cは、スリーブ31Bが中立位置から1速段のカウンタギヤ14A側に移動したときに、シンクロナイザリング31Cに形成されたスプラインがスリーブ31Bのスプライン31aに係合し、1速段のカウンタギヤ14Aに摩擦接触することにより、1速段用のカウンタギヤ14Aの回転をスリーブ31Bの回転(カウンタ軸14の回転)に同期させる。
【0109】
シンクロナイザリング31Dは、スリーブ31Bが中立位置から2速段のカウンタギヤ14B側に移動したときに、シンクロナイザリング31Dに形成されたスプラインがスリーブ31Bのスプライン31bに係合し、2速段のカウンタギヤ14Bに摩擦接触することにより、2速段用のカウンタギヤ14Bの回転をスリーブ31Bの回転(カウンタ軸14の回転)に同期させる。
【0110】
このように本実施例の同期装置31は、1速段用のカウンタギヤ14Aと2速段用のカウンタギヤ14Bを選択的にカウンタ軸14に連結し、連結時に同期動作を行うことで変速ショックや異音が発生することを抑制する。
【0111】
これにより、エンジン20の動力が主入力軸11から1速段用の入力ギヤ11Aおよび1速段用のカウンタギヤ14Aを介してカウンタ軸14に伝達される。また、エンジン20の動力が主入力軸11から1速段用の入力ギヤ11Bおよび2速段用のカウンタギヤ14Bを介してカウンタ軸14に伝達される。
【0112】
カウンタ軸14には更に、上記した同期装置31と同様の働きをする同期装置32が設けられており、同期装置32は、カウンタ軸14の軸方向で5速段用のカウンタギヤ14Cと6速段用のカウンタギヤ14Dの間に設置されている。
【0113】
アイドル軸12には上記した同期装置31、32と同様の働きをする同期装置33が設置されており、同期装置33は、アイドル軸12の軸方向で3速段用のアイドルギヤ12Aと4速段用のアイドルギヤ12Bの間に設置されている。
【0114】
シフト操作によって3速段にシフトされると、同期装置33は、3速段のアイドルギヤ12Aをアイドル軸12に連結する。
【0115】
これにより、エンジン20の動力が主入力軸11から3速/5速段用の入力ギヤ11Cおよび3速段用のアイドルギヤ12Aを介してアイドル軸12に伝達される。
【0116】
シフト操作によって4速段にシフトされると、同期装置33は、4速段用のアイドルギヤ12Bをアイドル軸12に連結する。
【0117】
これにより、エンジン20の動力が主入力軸11から4速/6速段用の入力ギヤ11Dおよび4速段用のアイドルギヤ12Bを介してアイドル軸12に伝達される。
【0118】
アイドル軸12にエンジン20の動力が伝達されると、エンジン20の動力は、アイドル軸12からリダクションドライブギヤ12C、リダクションドリブンギヤ13A、ダンパ機構16、副入力軸13、リダクションドライブギヤ13Bおよびリダクションドリブンギヤ14Eを介してカウンタ軸14に伝達される。
【0119】
これにより、3速段および4速段において、アイドル軸12から副入力軸13を介してカウンタ軸14に動力が伝達されるとともに、伝達される動力(回転速度)が減速される。
【0120】
シフト操作によって5速段にシフトされると、同期装置32は、5速段用のカウンタギヤ14Cをカウンタ軸14に連結する。
【0121】
これにより、エンジン20の動力が主入力軸11から3速/5速段用の入力ギヤ11Cおよび5速段用のカウンタギヤ14Cを介してカウンタ軸14に伝達される。
【0122】
シフト操作によって6速段にシフトされると、同期装置32は、6速段用のカウンタギヤ14Dをカウンタ軸14に連結する。
【0123】
これにより、エンジン20の動力が主入力軸11から4速/6速段用の入力ギヤ11Dおよび6速段用のカウンタギヤ14Dを介してカウンタ軸14に伝達される。
【0124】
後進軸15には同期装置34が設置されている。シフト操作によって後進段にシフトされると、同期装置34は、後進ギヤ15Aを後進軸15に連結し、後進ギヤ15Aを後進軸15と一体で回転させる。なお、後進軸15には、エンジン20側から順に、後進用のファイナルドライブギヤ15B、後進ギヤ15A、同期装置34の順に設置されている。
【0125】
これにより、エンジン20の動力が主入力軸11から1速段の入力ギヤ11A、1速段用のカウンタギヤ14Aおよび後進ギヤ15Aを介して後進軸15に伝達される。
【0126】
同期装置32、33、34は、所謂、シングルコーン式であり、同期装置31は、所謂、トリプルコーン式であるが、同期装置32、33、34は、同期装置31と同様の同期動作を行うので、具体的な説明は省略する。
【0127】
前進用のファイナルドライブギヤ14Fおよび後進用のファイナルドライブギヤ15Bは、ディファレンシャル装置17のファイナルドリブンギヤ17Aに噛み合っている。これにより、カウンタ軸14の動力は、前進用のファイナルドライブギヤ14Fを経て、後進軸15の動力は、後進用のファイナルドライブギヤ15Bを経て、ディファレンシャル装置17に伝達される。
【0128】
ディファレンシャル装置17は、ファイナルドリブンギヤ17Aと、ファイナルドリブンギヤ17Aが外周部に取付けられたデフケース17Bと、デフケース17Bに内蔵された差動機構17Cとを有する。
【0129】
デフケース17Bは、膨出部66に収容されている。
図12に示すように、膨出部66は、仕切壁6Wからレフトケース7と離れる方向(右方)に膨出しており、レフトケース7から離れるに従って断面積が縮径される円錐形状に形成されている。
【0130】
デフケース17Bの左端部には筒状部17aが設けられており、デフケース17Bの右端部には筒状部17bが設けられている。筒状部17a、17bには左右のドライブシャフト18L、18Rのそれぞれの一端部が挿通されている。
【0131】
具体的には、
図1に示すように、第1の左壁部7Cには開口部7cが形成されており、左側のドライブシャフト18Lの一端部は、開口部7cを通して筒状部17aに挿通されている。右側のドライブシャフト18Rの一端部は、仕切壁6Wの開口部66hを通して筒状部17b挿通されている。
【0132】
左右のドライブシャフト18L、18Rの一端部は、差動機構17Cに連結されており、左右のドライブシャフト18L、18Rの他端部は、それぞれ図示しない左右の駆動輪に連結されている。
【0133】
ディファレンシャル装置17は、エンジン20の動力を差動機構17Cによって左右のドライブシャフト18L、18Rに分配して駆動輪に伝達する。
【0134】
図2、
図3に示すように、レフトケース7の前方の上側にはモータ35が設置されている。モータ35は、モータケース35Aと、モータケース35Aに回転自在に支持されたモータ出力軸35B(
図5、
図6参照)と、モータケース35Aに取付けられたモータコネクタ35Cとを有する。
【0135】
モータケース35Aの右側端部は、ブラケット36A、36Bによってライトケース6の上壁6Bと前壁6Cに取付けられている。
【0136】
図7に示すように、ブラケット36Aは、L字形状に形成されている。
図8に示すように、ライトケース6の上壁6Bにはボス形状のケース側取付部6Gが設けられている。ブラケット36Aは、ボルト10Eによってケース側取付部6Gに固定されているとともに、ボルト10Fによってモータケース35Aの右側面に固定されている。
【0137】
ブラケット36Bは、ボルト10Gによってライトケース6の前壁6Cに固定されているとともに、ボルト10Hによってモータケース35Aの右側面に固定されている。本実施例の上壁6Bは、本発明の変速機ケースの上壁を構成する。
【0138】
モータケース35Aの左側端部は、減速機ケース8に取付けられている。すなわち、モータ35は、モータ出力軸35Bを左右方向に沿った状態で変速機ケース5の前方の上側に設置されている。そして、モータ35およびモータ出力軸35Bは、変速機内部に配置された軸と
図6に示すような位置関係に配置されている。
【0139】
モータケース35Aの内部にはいずれも図示しないロータと、コイルが巻き付けられたステータとが収容されている。
【0140】
モータ35において、コイルに三相交流が供給されることにより、周方向に回転する回転磁界を発生する。ステータは、発生した磁束をロータに鎖交させることにより、モータ出力軸35Bと一体のロータを回転駆動させる。
【0141】
モータコネクタ35Cは、モータケース35Aの右側端部から上方に突出している。モータコネクタ35Cには、モータ35を駆動するための電力を供給する図示しないパワーケーブルが接続される。
【0142】
パワーケーブルは、モータコネクタ35Cに対して左側から挿入することで接続される。つまり、パワーケーブルは、モータケース35Aの上方を通過するように配索されている。モータコネクタ35Cが、モータケース35Aから上方に突出配置されることで、冠水路走行における被水を抑制するとともに、上方からの接続作業が容易となって整備性を向上させることができる。
【0143】
図6に示すように、アイドル軸12の左端部にはスプロケット取付部12Mが設けられており、スプロケット取付部12Mは、玉軸受23Bおよび左側壁7K(第1の左壁部7C)よりも外方、すなわち、レフトケース7の外方に突出している。このため、スプロケット取付部12Mは、玉軸受23Bに片持ちで支持されている。
【0144】
スプロケット取付部12Mにはスプロケット37が取付けられており、スプロケット37にはチェーン38が巻き掛けられている。チェーン38は、モータ出力軸35Bに取付けられたスプロケット35Dに巻き掛けられている。
【0145】
このため、モータ35の動力は、モータ出力軸35Bからチェーン38およびスプロケット37を介してアイドル軸12に伝達される。すなわち、アイドル軸12は、モータ35の動力が伝達される入力軸として機能する。
【0146】
図5において、モータ出力軸35Bは、主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13、カウンタ軸14、後進軸15よりも前方に設置され、更に各軸よりも上方に設置されている。
アイドル軸12は、主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13、カウンタ軸14、後進軸15の中で最も前側に設置された軸であり、モータ出力軸35Bの後側斜め下方に設置されている。主入力軸11は、アイドル軸12の後側斜め上方に設置されており、副入力軸13は、アイドル軸12の後側斜め下方に設置されている。
【0147】
カウンタ軸14は、アイドル軸12の後方で、かつ、上下方向で主入力軸11と副入力軸13の間に設置されている。
【0148】
すなわち、主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13およびカウンタ軸14は、主入力軸11の軸心O1とアイドル軸12の軸心O2と副入力軸13の軸心O3とカウンタ軸14の軸心O4とを結んだ仮想線L1が四角形となるようにギヤ室21に設置されている。
【0149】
そして、
図5において、四角形の主入力軸11の軸心O1とアイドル軸12の軸心O2を結んだ辺に対向するように、モータ35およびモータ出力軸35Bが配置されている。詳細には、軸心O1と軸心O2を結んだ辺に対向しつつ、やや軸心O2よりにモータ35およびモータ出力軸35Bが配置されている。
【0150】
さらに、レフトケース7は、モータ35に対向する面が後述する仮想直線L3と同様に前下がりの斜めの面であって、モータ35に対向する面が仮想直線L3よりも急角度の前下がりの斜面に形成されており、モータ35に対向する面の前方にモータ35の設置空間を形成し、モータ35をより後方に配置できるようにしている。つまり、レフトケース7は、前側の上部が前側の下部に比較して後方に位置し、前側の上部の前方にモータ35の設置空間を形成している。
【0151】
このため、アイドル軸12は、主入力軸11、副入力軸13およびカウンタ軸14よりもモータ35に接近した位置に設置している。このため、チェーン38を短くすることができ、減速機ケース8の小型化を図ることができ、駆動装置4の小型化を図ることができる。
【0152】
副入力軸13は、アイドル軸12に対してチェーン38の張力が作用する方向、すなわち、モータ出力軸35Bの軸心O5とアイドル軸12の軸心O2とを結んだ仮想直線L2の略延長線上に設置されている。具体的には、副入力軸13の軸心O3は、仮想直線L2に対してやや前方に位置している。
【0153】
主入力軸11、アイドル軸12および副入力軸13は、アイドル軸12の軸心O2と副入力軸13の軸心O3を結んだ仮想直線L4に対して、アイドル軸12の軸心O2と主入力軸11の軸心O1を結んだ仮想直線L3が略直角となるように設置されている。
【0154】
具体的には、主入力軸11、アイドル軸12および副入力軸13は、仮想直線L4が仮想直線L3に対して鈍角になるように設置されている。また、主入力軸11は、モータ出力軸35Bの軸心O5とアイドル軸12の軸心O2とを結んだ仮想直線L2に対して副入力軸13と反対側に設置されている。
【0155】
図5に示すように、後進軸15は、ファイナルドリブンギヤ17Aの上方で、かつ、カウンタ軸14の後側斜め上方に設置されており、軸心の位置で比較すると主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13およびカウンタ軸14よりも上方に設置されている。
【0156】
レフトケース7の左側壁7Kには図示しない開口部が形成されている。開口部にはアイドル軸12のスプロケット取付部12Mが挿通されており、スプロケット取付部12Mは、開口部を通してギヤ室21から外方(左方)に突出している。スプロケット37は、レフトケース7の左側壁7K(第1の左壁部7C)よりも左側であって、レフトケース7の外に設置されている。
【0157】
図1、
図2に示すように、減速機ケース8は、モータケース35Aを左方から覆うようにして図示しないボルトによってモータケース35Aとレフトケース7の左側壁7K(第1の左壁部7C)に取付けられている。
【0158】
減速機ケース8は、チェーン38を収容しており、モータ出力軸35Bのスプロケット35Dとスプロケット37とに巻き掛けられるチェーン38に沿った形状に形成されている。左方向から見て、レフトケース7の前部の左側方から前方斜め上方にかけて、後部が下方となるように後側斜め下方に傾斜するように設置されている。
【0159】
減速機ケース8は、右側面のモータ出力軸35Bの挿入部とスプロケット取付部12Mの挿入部と左側は、開口しており、減速機カバー9が減速機ケース8の左側開口を閉止するようにボルト10Bによって減速機ケース8に取付けられている。
【0160】
レフトケース7の左側壁7Kには図示しない開口部が形成されている。
図1に示すように、レフトケース7にはボルト10Cによってパーキングカバー42が取付けられており、パーキングカバー42によって開口部が覆われている。駆動装置4には図示しないパーキング装置が設置されている。
【0161】
レフトケース7の左側壁7Kからパーキングカバー42が取り外されると、作業者は、パーキング装置の交換作業やメンテナンス作業を行うことができる。
【0162】
図9に示すように、クラッチレリーズ機構45は、クラッチレリーズ軸46と、上側レリーズフォーク部材47Aと、上側レリーズフォーク部材47Aの下方に位置する下側レリーズフォーク部材47Bとを有する。クラッチレリーズ機構45は、図示しないコイルスプリングにて、上下のレリーズフォーク部材47A、47Bの先端がクラッチ41から離れる方向となるように回転方向に付勢されている。
【0163】
図9、
図10に示すように、クラッチレリーズ軸46は、筒状部6Pの側方で上下方向に延びており、アイドル軸12の軸方向でアイドル軸12と並ぶように設置されている(
図12参照)。すなわち、クラッチレリーズ軸46は、
図12に示すように、中間軸(アイドル軸12)の延長線12Lと交差するように設置され、アイドル軸12の軸方向でアイドル軸12と車幅方向(左右方向)に対向している。
【0164】
上側レリーズフォーク部材47Aは、前端部(基端部)がクラッチレリーズ軸46に固定されており、後端部(先端部)がクラッチレリーズ軸46からレリーズベアリング44に向かって延びている。下側レリーズフォーク部材47Bは、前端部(基端部)がクラッチレリーズ軸46に固定されており、後端部(先端部)がクラッチレリーズ軸46からレリーズベアリング44に向かって延びている。
【0165】
上側レリーズフォーク部材47Aの後端部と下側レリーズフォーク部材47Bの後端部は、レリーズベアリング44の左端部に当接するとともに係合し、レリーズベアリング44の回転方向の姿勢を維持している。
【0166】
図12に示すように、軸受支持部62は、アイドル軸12の軸方向で軸受支持部64よりもクラッチ41から離れた位置に形成されている。換言すれば、軸受支持部62は、アイドル軸12の軸方向で軸受支持部64に対してクラッチ41と反対側に形成されている。
【0167】
図6、
図12に示すように、軸方向で、軸受支持部62は仕切壁6Wとほぼ同じ位置に形成され、軸受支持部64は仕切壁6Wよりもクラッチ41に接近するようにクラッチ室19内に膨出している。
【0168】
図6に示すように、アイドル軸12のアイドルギヤ12A、12Bとリダクションドライブギヤ12Cは、仕切壁6Wよりもレフトケース7の左側壁7K(第1の左壁部7C)側に設置されている。すなわち、アイドルギヤ12A、12Bとリダクションドライブギヤ12Cは、レフトケース7の左側壁7K(第1の左壁部7C)に近づくように設置されている。
【0169】
これにより、アイドル軸12の軸方向でリダクションドライブギヤ12Cとライトケース6の仕切壁6Wとの間に広い空間71が存在する。このため、カウンタ軸14よりもアイドル軸12をより短くすることができ、軸受支持部64よりもクラッチ41から離れた位置に軸受支持部62を容易に形成できる。
【0170】
図9、
図12に示すように、ライトケース6の仕切壁6Wにはリブ48が形成されている。リブ48は、ライトケース6の仕切壁6Wからクラッチ41側に軸受支持部64とほぼ同じ高さで突出しており、軸受支持部62とライトケース6の前壁6Cを連結するとともに、軸受支持部62と軸受支持部64を連結している。つまり、リブ48は、軸受支持部62を横断するように、軸受支持部64と前壁6Cを連結している。
【0171】
仕切壁6Wには下側クラッチレリーズ軸支持部49Aが設けられており、下側クラッチレリーズ軸支持部49Aは、カウンタ軸14の軸方向の位置で軸受支持部64と同じ位置に設けられている。換言すれば、下側クラッチレリーズ軸支持部49Aと軸受支持部64は、カウンタ軸14と直交する方向(前後方向)に並んで設置されている。
【0172】
クラッチレリーズ軸46の下端部は、下側クラッチレリーズ軸支持部49Aに挿入されており、すべり軸受10Iを介して下側クラッチレリーズ軸支持部49Aに回動自在に支持されている(
図11参照)。
【0173】
下側クラッチレリーズ軸支持部49Aは、軸受支持部62のクラッチ41側の面62aから立設されており、軸受支持部62のクラッチ41側の面62aに連結されている。すなわち、軸受支持部62のクラッチ41側の面62aには下側クラッチレリーズ軸支持部49Aとリブ48が連結されている。本実施例の軸受支持部62の面62aは、本発明の中間軸用の軸受支持部のクラッチ側の面を構成する。
【0174】
図7から
図9に示すように、ライトケース6の上壁6Bには上側クラッチレリーズ軸支持部49Bが設けられている。上側クラッチレリーズ軸支持部49Bは、上下方向に貫通する貫通孔48bを有する(
図11参照)。
【0175】
図11に示すように、クラッチレリーズ軸46の上部は、貫通孔48bに挿入されており、すべり軸受10Tを介して上側クラッチレリーズ軸支持部49Bに回動自在に支持されている。
【0176】
図7、
図11に示すように、クラッチレリーズ軸46の上端部は、貫通孔48bを通してライトケース6の上方に突出しており、上端部がシフトユニット50の後述するクラッチアクチュエータに連結されている。
【0177】
そして、クラッチレリーズ軸46の上部は、上側クラッチレリーズ軸支持部49Bに挿入されることにより、上側クラッチレリーズ軸支持部49Bに回動自在に支持されている。
【0178】
このようにクラッチレリーズ軸46は、上側クラッチレリーズ軸支持部49Bと下側クラッチレリーズ軸支持部49Aに回動自在に支持されている。
【0179】
本実施例の下側クラッチレリーズ軸支持部49Aは、本発明の第1のクラッチレリーズ支持部を構成し、上側クラッチレリーズ軸支持部49Bは、本発明の第2のクラッチレリーズ軸支持部を構成する。下側クラッチレリーズ軸支持部49Aおよび上側クラッチレリーズ軸支持部49Bは、本発明のクラッチレリーズ軸支持部を構成する。
【0180】
図8、
図11に示すように、ライトケース6の上壁6Bには、上側クラッチレリーズ軸支持部49Bと、ケース側取付部6G(ブラケット36Aの固定場所)が近接配置されている。ライトケース6は、上壁6Bから上方に膨出する膨出部6Hを有する。
【0181】
図8に示すように、上側クラッチレリーズ軸支持部49Bは、膨出部6Hに連結されている。膨出部6Hは、ケース側取付部6Gに連結されており、上側クラッチレリーズ軸支持部49Bとケース側取付部6Gは、膨出部6Hによって連結されている。本実施例の膨出部6Hは、本発明の連結部を構成する。
【0182】
図1、
図3に示すように、レフトケース7の上壁7Eにはシフトユニット50が設置されており、シフトユニット50は、モータ35の後方に位置している。
【0183】
シフトユニット50は、ベースプレート51、リザーバタンク52、アキュムレータ53、オイルポンプ54、モータ55および筐体56を備えている。
【0184】
図1に示すように、ベースプレート51は、平板状のプレート部51Aと、プレート部51Aの後部から下方に突出するアキュムレータ取付部51Bとを備えており、プレート部51Aは、ボルト10D(
図4参照)によってレフトケース7の上壁7Eに取付けられている。
【0185】
リザーバタンク52は、プレート部51Aの上側に取付けられており、リザーバタンク52には図示しないシフトアンドセレクト軸を動作させる操作用のオイルが貯留されている。
【0186】
オイルポンプ54は、プレート部51Aの後端部の下側に取付けられている。モータ55は、オイルポンプ54と上下方向でプレート部51Aを挟んで対向するようにプレート部51Aの後端部の上側に設置されている。
【0187】
オイルポンプ54は、モータ55によって駆動されることにより、リザーバタンク52に貯留されている作動油を加圧してプレート部51Aとアキュムレータ取付部51Bとに形成された図示しない油路を介してアキュムレータ53に供給する。すなわち、ベースプレート51の内部には油路が形成されており、オイルポンプ54はアキュムレータ53に加圧された作動油を供給および蓄圧する。
【0188】
アキュムレータ53は、アキュムレータ取付部51Bに取付けられており、アキュムレータ取付部51Bからレフトケース7の後方を横切るように左方に延びている。アキュムレータ53は、左右方向でレフトケース7の第2の左壁部7Dよりも左側に設置されている。
【0189】
アキュムレータ53は、オイルポンプ54から供給された作動油の圧力を蓄え、ベースプレート51に形成された図示しない油路を通して高圧の油圧を筐体56に供給する。
【0190】
筐体56は、リザーバタンク52の後方に位置するようにプレート部51Aの上側に設置されており、筐体56には、いずれも図示しない制御装置、シフト操作ソレノイド、セレクト操作ソレノイド、クラッチ操作ソレノイド、シフトアクチュエータ、セレクトアクチュエータ、クラッチアクチュエータが設けられている。
【0191】
シフト操作ソレノイドおよびセレクト操作ソレノイドは、制御装置から出力される制御信号によって作動されることにより、アキュムレータ53から供給される高圧の作動油をシフトアクチュエータ、セレクトアクチュエータ、クラッチアクチュエータに作用させることによってシフトアクチュエータ、セレクトアクチュエータ、クラッチアクチュエータを駆動し、シフトアンドセレクト軸をシフト方向とセレクト方向に操作するとともに、クラッチの断接を操作する。
【0192】
制御装置は、モータ55に駆動信号を出力してモータ55を駆動する。また、制御装置は、例えば、運転席に設けられる図示しないシフトレバーのシフト操作を検出する図示しないシフトポジョンセンサの検出情報、車速を検出する図示しない車速センサの検出情報、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサ等からの検出情報に基づいて変速点を判断する。
【0193】
制御装置は、変速点を判断したときに、シフト操作ソレノイド、セレクト操作ソレノイド、クラッチ操作ソレノイドに制御信号を出力してこれらソレノイドを制御して、シフトアクチュエータ、セレクトアクチュエータ、クラッチアクチュエータを駆動することにより、シフトアンドセレクト軸を操作する。これにより、駆動装置4の変速制御が実施される。
【0194】
クラッチアクチュエータは、クラッチレリーズ軸46を一方向に回動させるようになっている。クラッチレリーズ軸46がクラッチアクチュエータによって一方向に回動されると、レリーズフォーク部材47A、47Bがレリーズベアリング44をクラッチ41のダイヤフラムスプリング41Cに向かって押圧する。
【0195】
クラッチレリーズ軸46は、図示しないコイルスプリングによって他方に回動するように付勢されている。クラッチアクチュエータの駆動が停止されると、ダイヤフラムスプリング41Cの付勢力によってレリーズベアリング44がクラッチ41から離れる方向に移動し、クラッチレリーズ軸46がダイヤフラムスプリング41Cの付勢力に加えて、コイルスプリングの付勢力(アシスト力)によって他方向に回動する。
【0196】
次に、主な変速段における動力伝達経路を説明する。
(変速段が1速段の場合の動力伝達経路)
1速段においては、同期装置31が中立位置から1速段用のカウンタギヤ14A側に移動し、1速段用のカウンタギヤ14Aをカウンタ軸14に連結する。
【0197】
このとき、エンジン20の動力は、主入力軸11から1速段用の入力ギヤ11A、1速段用のカウンタギヤ14Aおよび同期装置31を介してカウンタ軸14に伝達される。
【0198】
カウンタ軸14に伝達されたエンジン20の動力は、カウンタ軸14から前進用のファイナルドライブギヤ14Fを経てディファレンシャル装置17に伝達された後、ディファレンシャル装置17からドライブシャフト18L、18Rを介して駆動輪に分配される。
【0199】
なお、2速段において、主入力軸11に伝達されるエンジン20の動力は、1速段と同ように2速段用の入力ギヤ11B、2速段用のカウンタギヤ14Bおよび同期装置31を介してカウンタ軸14に伝達される。
【0200】
(変速段が3速段の場合の動力伝達経路)
3速段においては、同期装置33が中立位置から3速段用のアイドルギヤ12A側に移動し、3速段用のアイドルギヤ12Aをアイドル軸12に連結する。
【0201】
このとき、エンジン20の動力は、主入力軸11から3速/5速段用の入力ギヤ11C、3速段用のアイドルギヤ12Aおよび同期装置33を介してアイドル軸12に伝達される。
【0202】
次いで、アイドル軸12に伝達されたエンジン20の動力は、リダクションドライブギヤ12Cからリダクションドリブンギヤ13Aに伝達され、ダンパ機構16を介して副入力軸13に伝達された後、副入力軸13からリダクションドライブギヤ13Bおよびリダクションドリブンギヤ14Eを介してカウンタ軸14に減速されて伝達される。
【0203】
カウンタ軸14に伝達されたエンジン20の動力は、カウンタ軸14から前進用のファイナルドライブギヤ14Fを経てディファレンシャル装置17に伝達された後、ディファレンシャル装置17からドライブシャフト18L、18Rを介して駆動輪に分配される。
【0204】
副入力軸13にはダンパ機構16が設置されており、ダンパ機構16の外筒部材16Aの内周スプライン16aとリダクションドリブンギヤ13Aの外周スプライン13eは、タイト(ガタがほとんどない)にスプライン嵌合し、外筒部材16Aの内周スプライン16aと内筒部材16Cの外周スプライン16cは、ルーズ(ガタを有する)にスプライン嵌合している。内筒部材16Cと副入力軸13はタイトにスプライン嵌合している。
【0205】
このため、エンジン20の微小な回転変動やトルク変動がリダクションドリブンギヤ13Aからダンパ機構16に入力されると、ダンパ機構16の弾性体16Bが周方向に弾性変形することにより、微小な回転変動やトルク変動が吸収されて、動力が副入力軸13に伝達される。
【0206】
また、逆に、微小な回転変動やトルク変動を含む動力が副入力軸13からダンパ機構16に入力されると、ダンパ機構16の弾性体16Bが周方向に弾性変形することにより、微小な回転変動やトルク変動が吸収されて、リダクションドリブンギヤ13Aに動力が伝達される。
【0207】
一方、伝達するトルクが比較的大きくて弾性体16Bが周方向に過度に弾性変形する場合には、ルーズに設定されている外筒部材16Aの内周スプライン16aの歯と内筒部材16Cの外周スプライン16cの歯が接触することにより、内周スプライン16aと外周スプライン16cによって動力伝達が行われ、弾性体16Bが弾性変形することが抑制される。このため、弾性体16Bの耐久性が悪化することを防止できる。
【0208】
なお、4速段において、主入力軸11に伝達されるエンジン20の動力は、3速段と同様にアイドル軸12、ダンパ機構16および副入力軸13を経てカウンタ軸14に伝達される。
【0209】
3速段および4速段においては、エンジン20の微小なトルク変動や回転変動がダンパ機構16によって吸収できるので、各ギヤの歯打ち音等を抑制できる。
【0210】
(変速段が5速段の場合の動力伝達経路)
5速段においては、同期装置32が中立位置から5速段用のカウンタギヤ14C側に移動し、5速段用のカウンタギヤ14Cをカウンタ軸14に連結する。
【0211】
このとき、エンジン20の動力は、主入力軸11から3速/5速段用の入力ギヤ11C、5速段用のカウンタギヤ14Cおよび同期装置32を介してカウンタ軸14に伝達される。
【0212】
カウンタ軸14に伝達されたエンジン20の動力は、カウンタ軸14から前進用のファイナルドライブギヤ14Fを経てディファレンシャル装置17に伝達された後、ディファレンシャル装置17からドライブシャフト18L、18Rを介して駆動輪に分配される。
【0213】
なお、6速段において、主入力軸11に伝達されるエンジン20の動力は、5速段と同様にカウンタ軸14に伝達される。
【0214】
(後進段の場合の動力伝達経路)
後進段においては、同期装置34が中立位置から後進ギヤ15A側に移動し、後進ギヤ15Aを後進軸15に連結する。
【0215】
このとき、エンジン20の動力は、主入力軸11から1速段用の入力ギヤ11A、1速段用のカウンタギヤ14A、後進ギヤ15Aおよび同期装置34を介して後進軸15に伝達される。
【0216】
後進軸15に伝達されたエンジン20の動力は、後進軸15に形成された後進用のファイナルドライブギヤ15Bを経てディファレンシャル装置17に伝達された後、ディファレンシャル装置17からドライブシャフト18L、18Rを介して駆動輪に分配される。
【0217】
(モータの動力伝達経路)
モータ35は、車両1のモータ走行時の動力を得る場合と、車両1の発進および加速時にエンジン20の動力をアシストする動力を得る場合と、変速中に同期装置31、32、33、34がそれまでの変速段を達成する位置から新たな変速段を達成する位置に移動するまでの間にエンジン20の動力を補完するギャップフィリング用の動力を得る場合とに使用される。
【0218】
ギャップフィリングとは、有段変速機において変速する場合に必要となるクラッチの切断によるエンジン20からの駆動力の途切れである。モータ35は変速時に途切れるエンジン20の動力を補完するように駆動力を出力し、車両のスムーズな走行を可能とする。
【0219】
モータ35の動力は、モータ出力軸35Bからチェーン38を介してアイドル軸12に伝達された後、リダクションドライブギヤ12Cからリダクションドリブンギヤ13Aおよびダンパ機構16を介して副入力軸13に伝達された後、副入力軸13からリダクションドライブギヤ13Bおよびリダクションドリブンギヤ14Eを介してカウンタ軸14に減速されて伝達される。
【0220】
カウンタ軸14に伝達されたモータ35の動力は、カウンタ軸14から前進用のファイナルドライブギヤ14Fを経てディファレンシャル装置17に伝達された後、ディファレンシャル装置17からドライブシャフト18L、18Rを介して駆動輪に分配される。
【0221】
なお、モータ35は正転と逆転が可能で、モータ35を前進時の正転に対して逆回転させることでモータ35の動力は後進時にも使用可能となっている。後進時におけるモータの動力伝達経路は上記した前進時におけるモータの動力伝達経路と同じである。
【0222】
つまり、モータ35のモータ出力軸35Bと駆動輪は、常に動力が伝達可能に連結されている。モータ35は発電も可能であって、例えば車両の減速時に、モータ35は回生発電を行う。
【0223】
副入力軸13にはダンパ機構16が設置されており、モータ35の微小な回転変動やトルク変動を含む駆動力がリダクションドリブンギヤ13Aに入力されると、3速段および4速段と同様にダンパ機構16の弾性体16Bが周方向に弾性変形することにより、微小な回転変動やトルク変動が吸収されて、副入力軸13に駆動力が伝達される。
【0224】
また、副入力軸13に設置されているダンパ機構16は、カウンタ軸14、リダクションドリブンギヤ14Eおよびリダクションドライブギヤ13Bを介して副入力軸13に伝達されるエンジン20や駆動輪からの微小な回転変動やトルク変動を含む動力から微小な回転変動やトルク変動を吸収して、アイドル軸12やモータ35に動力を伝える。
【0225】
さらに、ダンパ機構16は、モータ35からの微小な回転変動やトルク変動とエンジン20や駆動輪からの微小な回転変動やトルク変動とを、副入力軸13上にて調整する働きをする。
【0226】
したがって、モータ35の微小な回転変動やトルク変動が副入力軸13に伝わることが抑制されて、各ギヤの歯打ち音等の異音の発生を防止でき、車両1の商品性を向上させることができる。
【0227】
次に、本実施例の駆動装置4の効果を説明する。
本実施例の駆動装置4は、エンジン20の動力を断接するクラッチ41とレリーズベアリング44が同軸上に設置され、エンジン20の動力がクラッチ41を介して伝達される入力軸11と、主入力軸11と平行に設置され、ディファレンシャル装置17のファイナルドリブンギヤ17Aに噛み合うファイナルドライブギヤ14Fを有するカウンタ軸14とを有する。
【0228】
また、駆動装置4は、主入力軸11とカウンタ軸14の間の動力伝達経路上に設置され、主入力軸11の回転を、カウンタ軸14に伝達可能なアイドル軸12と、回動自在なクラッチレリーズ軸46を有し、クラッチレリーズ軸46を回動させることにより、クラッチ41を断接するクラッチレリーズ機構45とを有する。
【0229】
変速機ケース5の内部をギヤ室21とクラッチ室19に仕切るライトケース6の仕切壁6Wは、カウンタ軸14を、円錐ころ軸受25Aを介して回転自在に支持する軸受支持部64と、アイドル軸12を、玉軸受23Bを介して回転自在に支持する軸受支持部62とを有する。
【0230】
図12に示すように、軸受支持部62は、アイドル軸12の軸方向で軸受支持部64よりもクラッチ41から離れた位置に形成されており、クラッチレリーズ軸46は、アイドル軸12の軸方向でアイドル軸12と並ぶように設置されている。そして、下側クラッチレリーズ軸支持部49Aはリブ48の高さ範囲内に形成され、当該部分のリブ48の高さは軸受支持部64の高さとほぼ同等となっている。
【0231】
このように、軸受支持部62を、軸受支持部64に対してアイドル軸12の軸方向でクラッチ41から離れる方向にずらし、クラッチレリーズ軸46を、アイドル軸12の軸方向でアイドル軸12と並ぶように設置することにより、クラッチレリーズ軸46が軸受支持部62、64と干渉することを防止しつつ、クラッチレリーズ軸46の設置スペースを確保できる。
【0232】
また、クラッチレリーズ軸46がクラッチ41と干渉することを防止しつつ、クラッチレリーズ軸46の設置スペースを確保できる。このため、変速機ケース5が大型化することを抑制でき、結果的に駆動装置4が大型化することを抑制できる。
【0233】
また、本実施例の駆動装置4は、ギヤ室21において、アイドル軸12のアイドルギヤ12A、12Bとリダクションドライブギヤ12Cがレフトケース7の左側壁7K(第1の左壁部7C)に近づくように設置されているので、アイドル軸12の軸方向でリダクションドライブギヤ12Cとライトケース6の仕切壁6Wとの間に広い空間71を確保できる。
【0234】
このため、軸受支持部64よりもクラッチ41から離れた位置に軸受支持部62を設置するための空間71を確保でき、軸受支持部62と軸受支持部64とをアイドル軸12の軸方向に離すために変速機ケース5が軸方向に長くなることを防止できる。この結果、駆動装置4が大型化することをより効果的に抑制できる。
【0235】
ここで、軸受支持部62と軸受支持部64をアイドル軸12の軸方向で重なる位置に設置し、クラッチレリーズ軸46を、アイドル軸12の軸方向でアイドル軸12と並ぶように設置した場合、すなわち、軸受支持部62をクラッチ41に近づけた場合には、クラッチ41をクラッチレリーズ軸46から右方のエンジン20側に離す必要があり、変速機ケース5が軸方向に長くなり、変速機ケース5が大型化する。
【0236】
本実施例の駆動装置4は、クラッチレリーズ軸46と軸受支持部62が干渉することを防止しつつ、クラッチレリーズ軸46の設置空間と支持剛性を確保でき、駆動装置4が大型化することを抑制できる。
【0237】
また、本実施例の駆動装置4によれば、軸受支持部62のクラッチ41側の面62aに、クラッチレリーズ軸46を回転自在に支持する下側クラッチレリーズ軸支持部49Aが連結されている。
【0238】
これにより、玉軸受23Aが取付けられた剛性の高い軸受支持部62によって下側クラッチレリーズ軸支持部49Aを補強でき、下側クラッチレリーズ軸支持部49Aによるクラッチレリーズ軸46の支持剛性を高くできる。
【0239】
また、本実施例の駆動装置4によれば、下側クラッチレリーズ軸支持部49Aは、軸受支持部64に対してカウンタ軸14の軸方向で重なる位置に設けられており、仕切壁6Wは、下側クラッチレリーズ軸支持部49Aと軸受支持部64を連結するリブ48を有する。
【0240】
これにより、剛性の高い軸受支持部64に加えて剛性の高いリブ48によって下側クラッチレリーズ軸支持部49Aを補強でき、下側クラッチレリーズ軸支持部49Aによるクラッチレリーズ軸46の支持剛性をより一層高くできる。
【0241】
また、本実施例の駆動装置4によれば、ライトケース6の上壁6Bは、ブラケット36Aが取付けられるケース側取付部6Gを有し、ケース側取付部6Gは、上側クラッチレリーズ軸支持部49Bに膨出部6Hを介して連結されている。
【0242】
これにより、ボルト10Eによってブラケット36Aが固定される剛性の高いケース側取付部6Gによって、上側クラッチレリーズ軸支持部49Bを補強でき、上側クラッチレリーズ軸支持部49Bの剛性を高くできる。
【0243】
このため、いずれも剛性の高い下側クラッチレリーズ軸支持部49Aと上側クラッチレリーズ軸支持部49Bによってクラッチレリーズ軸46の支持剛性をより一層高くできる。
【0244】
なお、本実施例の駆動装置4は、モータ35の動力をチェーン38によってアイドル軸12に伝達しているが、これに限定されるものではない。例えば、モータ35の動力をベルトによってアイドル軸12に伝達してもよい。
【0245】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0246】
4...駆動装置(車両用駆動装置)、5...変速機ケース、6B...上壁(変速機ケースの上壁)、6G...ケース側取付部、6H...膨出部(連結部)、6W...仕切壁(変速機ケースの仕切壁)、11...主入力軸(入力軸)、12...アイドル軸(中間軸)、14...カウンタ軸、17...ディファレンシャル装置、17A...ファイナルドリブンギヤ、19...クラッチ室、20...エンジン(内燃機関)、21...ギヤ室、23A...玉軸受(軸受)、25A...円錐ころ軸受(軸受)、35...モータ、36A...ブラケット、41...クラッチ、44...レリーズベアリング、45...クラッチレリーズ機構、46...クラッチレリーズ軸、48...リブ、49A...下側クラッチレリーズ軸支持部(クラッチレリーズ軸支持部、第1のクラッチレリーズ軸支持部)、49B...上側クラッチレリーズ軸支持部(クラッチレリーズ軸支持部、第2のクラッチレリーズ軸支持部)、62...軸受支持部(中間軸用の軸受支持部)、62a...面(中間軸用の軸受支持部のクラッチ側の面)、64...軸受支持部(カウンタ軸用の軸受支持部)