IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スズキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両のバックドア構造 図1
  • 特許-車両のバックドア構造 図2
  • 特許-車両のバックドア構造 図3
  • 特許-車両のバックドア構造 図4
  • 特許-車両のバックドア構造 図5
  • 特許-車両のバックドア構造 図6
  • 特許-車両のバックドア構造 図7
  • 特許-車両のバックドア構造 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】車両のバックドア構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/10 20060101AFI20240202BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
B60J5/10 R
B60J5/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020055936
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021154832
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 知紀
(72)【発明者】
【氏名】横地 真
(72)【発明者】
【氏名】林 克明
(72)【発明者】
【氏名】中村 満
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-176360(JP,A)
【文献】特開平05-004520(JP,A)
【文献】実開平04-079723(JP,U)
【文献】特開2000-118445(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0022486(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/10
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部にバックドアが設けられている車両のバックドア構造において、
前記バックドアは、フレームインナとフレームアウタとから構成される金属製のフレーム部材を有し、
前記フレーム部材の外側には、前記バックドアの意匠面を形成する樹脂製のパネル部材が設置されており、
前記フレーム部材は、前記バックドアの下縁部において、車両幅方向に延びる下部フレーム構造体を有し、該下部フレーム構造体は、前記フレーム部材の上下で前記フレームインナと前記フレームアウタとが接合される上側接合部と下側接合部とからなる下部接合部を有しており、
前記バックドアは、上部の後部窓ガラス部に設置されるガラス部材を備え、前記バックドアの上下方向の中間部分には、前記ガラス部材の下縁に沿って、車両幅方向に延びる中部フレーム構造体を有し、該中部フレーム構造体は、前記フレーム部材の上下で前記フレームインナと前記フレームアウタとが接合される上側接合部と下側接合部とからなる中部接合部を有しており、
前記バックドアは、該バックドアの左右両側の側部で車両上下方向に延びる側部フレーム構造体を有し、該側部フレーム構造体は、前記フレーム部材の外側と内側で前記フレームインナと前記フレームアウタとが接合される外側接合部と内側接合部とからなる側部接合部を有しており、
前記下部フレーム構造体、前記中部フレーム構造体及び前記側部フレーム構造体は連続しているとともに、前記下部フレーム構造体の上側接合部、前記中部フレーム構造体の下側接合部及び前記側部フレーム構造体の内側接合部が連続して配置されており、
前記バックドアの外周部から所定の距離離れた面内方向内側の位置には、環状に連続して形成された内周接合部が設けられており、該内周接合部の内側には、前記フレームインナ及び前記フレームアウタが開口していることにより、前記フレーム部材を貫通する開口部が形成されており、
前記下部フレーム構造体、前記中部フレーム構造体及び前記側部フレーム構造体において、前記フレームインナは、前記下部フレーム構造体の前記上側接合部と前記下側接合部、前記中部フレーム構造体の前記上側接合部と前記下側接合部、および前記側部フレーム構造体の前記外側接合部と前記内側接合部を構成するフランジ形状部とすることによって、車室内側に凸なハット形断面形状を有しているとともに、前記フレームアウタは、前記下部フレーム構造体の前記上側接合部と前記下側接合部、前記中部フレーム構造体の前記上側接合部と前記下側接合部、および前記側部フレーム構造体の前記外側接合部と前記内側接合部を構成するフランジ形状部とすることによって、車室外側に凸なハット形断面形状を有しており、
前記フレームインナのフランジ形状部と前記フレームアウタのフランジ形状部とを接合することにより、前記下部フレーム構造体、前記中部フレーム構造体及び前記側部フレーム構造体は、閉断面部を挟んで接合された前記フランジ形状部を有する閉断面構造に構成されており、
前記パネル部材は、前記下部フレーム構造体、前記中部フレーム構造体及び前記側部フレーム構造体に固定されていることを特徴とする車両のバックドア構造。
【請求項2】
前記バックドアは、前記下部フレーム構造体に設けられるドアロック機構を備えていることを特徴とする請求項に記載の車両のバックドア構造。
【請求項3】
前記中部フレーム構造体は、車両上下方向で、テールランプが取付けられるテールランプ取付部と重なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両のバックドア構造。
【請求項4】
前記側部フレーム構造体は、車両幅方向で、テールランプが取付けられるテールランプ取付部と重なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の車両のバックドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のバックドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両の中には、板金製のインナパネルと樹脂製のアウタパネルとが接合された車体のパネル構造を有し、車体パネルがバックドアを構成しているものがある。例えば、特許文献1では、板金製のインナパネルに対して樹脂製のアウタパネルを固定するための固定部を所定領域に集約して設け、縁辺部においてインナパネルとアウタパネルとがスライド可能となるように構成されている。これにより、両パネル間で気温の変化に伴う熱変形量が相違する場合にも、両者の熱変形量の差を縁辺部において吸収するとともに、該縁辺部にシール材を設けることで、両パネル間を液密にシールするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-141877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のパネル構造における板金製のインナパネルには、インナパネル自体を補強する構造が設けられていないので、車体パネルがバックドアなどの場合に、バックドアの剛性が低くなり、樹脂製のアウタパネルにおいても剛性を受け持つ必要があった。そのため、従来のパネル構造では、樹脂製のアウタパネルに補強構造を追加して設けたり、板厚を増大したりしなければならず、バックドアの軽量化が困難になるという問題を有していた。
【0005】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、フレーム部材でバックドアの剛性を担保することでパネル部材を軽量化し、外側のパネル部材によって意匠性を考慮せずにフレーム部材に高い剛性を有する構造を設けることでフレーム部材の板厚を下げ、軽量でかつ高剛性のバックドアを得ることが可能な車両のバックドア構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、車体後部にバックドアが設けられている車両のバックドア構造において、前記バックドアは、フレームインナとフレームアウタとから構成される金属製のフレーム部材を有し、前記フレーム部材の外側には、前記バックドアの意匠面を形成する樹脂製のパネル部材が設置されており、前記フレーム部材は、前記バックドアの下縁部において、車両幅方向に延びる下部フレーム構造体を有し、該下部フレーム構造体は、前記フレーム部材の上下で前記フレームインナと前記フレームアウタとが接合される上側接合部と下側接合部とからなる下部接合部を有しており、前記バックドアは、上部の後部窓ガラス部に設置されるガラス部材を備え、前記バックドアの上下方向の中間部分には、前記ガラス部材の下縁に沿って、車両幅方向に延びる中部フレーム構造体を有し、該中部フレーム構造体は、前記フレーム部材の上下で前記フレームインナと前記フレームアウタとが接合される上側接合部と下側接合部とからなる中部接合部を有しており、前記バックドアは、該バックドアの左右両側の側部で車両上下方向に延びる側部フレーム構造体を有し、該側部フレーム構造体は、前記フレーム部材の外側と内側で前記フレームインナと前記フレームアウタとが接合される外側接合部と内側接合部とからなる側部接合部を有しており、前記下部フレーム構造体、前記中部フレーム構造体及び前記側部フレーム構造体は連続しているとともに、前記下部フレーム構造体の上側接合部、前記中部フレーム構造体の下側接合部及び前記側部フレーム構造体の内側接合部が連続して配置されており、前記バックドアの外周部から所定の距離離れた面内方向内側の位置には、環状に連続して形成された内周接合部が設けられており、該内周接合部の内側には、前記フレームインナ及び前記フレームアウタが開口していることにより、前記フレーム部材を貫通する開口部が形成されており、前記下部フレーム構造体、前記中部フレーム構造体及び前記側部フレーム構造体において、前記フレームインナは、前記下部フレーム構造体の前記上側接合部と前記下側接合部、前記中部フレーム構造体の前記上側接合部と前記下側接合部、および前記側部フレーム構造体の前記外側接合部と前記内側接合部を構成するフランジ形状部とすることによって、車室内側に凸なハット形断面形状を有しているとともに、前記フレームアウタは、前記下部フレーム構造体の前記上側接合部と前記下側接合部、前記中部フレーム構造体の前記上側接合部と前記下側接合部、および前記側部フレーム構造体の前記外側接合部と前記内側接合部を構成するフランジ形状部とすることによって、車室外側に凸なハット形断面形状を有しており、前記フレームインナのフランジ形状部と前記フレームアウタのフランジ形状部とを接合することにより、前記下部フレーム構造体、前記中部フレーム構造体及び前記側部フレーム構造体は、閉断面部を挟んで接合された前記フランジ形状部を有する閉断面構造に構成されており、前記パネル部材は、前記下部フレーム構造体、前記中部フレーム構造体及び前記側部フレーム構造体に固定されている
【発明の効果】
【0007】
上述の如く、本発明に係る車両のバックドア構造は、車体後部にバックドアが設けられており、前記バックドアは、フレームインナとフレームアウタとから構成される金属製のフレーム部材を有し、前記フレーム部材の外側には、前記バックドアの意匠面を形成する樹脂製のパネル部材が設置されている。
したがって、本発明のバックドア構造では、フレーム部材でバックドアの剛性を担保する構造とすることにより、パネル部材の強度及び剛性を低くしても良くなるので、軽量な材料や必要最小限の板厚の材料を用いてパネル部材を成形することができ、パネル部材の軽量化を図ることができる。
また、本発明のバックドア構造では、バックドアの意匠面を樹脂製のパネル部材で構成するようにしているので、パネル部材の内側に配置される金属部品のフレーム部材に外観意匠性を考慮せずに高い剛性を有する構造を設けることができ、フレーム部材の板厚を薄くするなどしてフレーム部材の軽量化を図ることが可能となり、軽量でかつ高剛性のバックドアを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る構造が適用される車両のバックドアを車両後方側から見た正面図である。
図2図1におけるバックドアを車室内側から見た正面図である。
図3】ガラス部材及びパネル部材を取り除いた状態で、図1のバックドアを車両後方側から見た正面図である。
図4】ガラス部材及びパネル部材を取り除いた状態で、図2のバックドアを車室内側から見た正面図である。
図5図1におけるA-A線断面図である。
図6図3におけるB-B線断面図である。
図7図4におけるC-C線断面図である。
図8図7におけるZ部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1図8は本発明の実施形態に係る車両のバックドア構造を示すものである。なお、図において、矢印O方向はバックドアの幅方向外側を示し、矢印U方向はバックドアの上方側を示し、矢印X方向はバックドアの幅方向を示している。
【0010】
図1図8に示すように、本発明の実施形態の構造が適用される車両のバックドア1は、車体後部に設けられ、上部の開閉ヒンジ(図示せず)を介して回動可能に取付けられており、当該バックドア1の回動操作によって車体後部のバックドア開口部(図示せず)を開閉するように構成されている。このような構造のバックドア1は、当該バックドア1と対応した形状に形成され、フレームインナ3とフレームアウタ4とから構成される金属製(板金製)のフレーム部材2を有している。また、フレーム部材2の外側には、バックドア1の意匠面を形成する樹脂製のパネル部材5が設置されている。本実施形態のパネル部材5は、フレーム部材2の下半部を覆うことが可能な大きさを有しており、接着剤を用いてフレームアウタ4の外側面に接合されている。
すなわち、本実施形態のバックドア構造では、フレーム部材2をフレームインナ3及びフレームアウタ4で構成し、これらフレームインナ3とフレームアウタ4との接合構造やフレーム部材2の断面構造などを工夫することによって、フレーム部材2の剛性が高められるようになっている。また、バックドア1の意匠面を樹脂製のパネル部材5で構成し、金属製のフレーム部材2がバックドア1の意匠面とならず、フレーム部材2の形状を自由に形成することによって、フレーム部材2が高い剛性を有するように設計したり、あるいは、フレーム部材2の板厚を薄くしても同等の性能が得られるように設計したりすることも可能な構造となっている。
【0011】
本実施形態のバックドア構造において、フレーム部材2は、図2及び図4図6に示すように、バックドア1の下縁部において、車両幅方向に連続して延びる下部フレーム構造体2Aを有している。この下部フレーム構造体2Aは、フレーム部材2の上下でフレームインナ3とフレームアウタ4とが接合される上側接合部21と下側接合部22とからなる下部接合部Aを有している。これら上側接合部21及び下側接合部22は、フレームインナ3及びフレームアウタ4の上側端部及び下側端部をそれぞれ重ね合わせ、重ね合わせ部分を溶接などによって接合することにより形成されている。
すなわち、本実施形態のバックドア構造は、バックドア1の開閉時において、回動中心となる上部のヒンジ部から最も遠く離れたバックドア1の下縁部に剛性が高い下部フレーム構造体2Aを配置することによって、バックドア1のねじれ変形が抑えられる構造となっている。なお、図4では、下部フレーム構造体2Aの配置範囲を鎖線で概略的に示している。
【0012】
また、本実施形態のバックドア1は、図2及び図4に示すように、下部フレーム構造体2Aに設けられるドアロック機構6を備えている。そのため、バックドア1の幅方向の中央に位置する下縁部には、ドアロック機構6を取付けるためのロック機構取付部20が設けられている。すなわち、本実施形態のバックドア構造では、高い剛性を有する部位にドアロック機構6を設けることによって、バックドア1の開閉時におけるドア閉まりの精度が向上する構造となっている。
【0013】
さらに、本実施形態のバックドア1は、図1図5に示すように、上部の後部窓ガラス部Gに設置されるガラス部材7を備えており、後部窓ガラス部Gには、後部窓開口部11が設けられている。そして、バックドア1の上下方向の中間部分には、ベルトラインBLであるガラス部材7の下縁7aに沿って、車両幅方向に延びる中部フレーム構造体2Bを有している。この中部フレーム構造体2Bは、フレーム部材2の上下でフレームインナ3とフレームアウタ4とが接合される上側接合部23と下側接合部24とからなる中部接合部Bを有している。これら上側接合部23及び下側接合部24は、下部フレーム構造体2Aと同様、フレームインナ3及びフレームアウタ4の上側端部及び下側端部をそれぞれ重ね合わせ、重ね合わせ部分を溶接などによって接合することにより形成されている。
すなわち、本実施形態のバックドア構造は、バックドア1の上下方向の中間部分に剛性が高い中部フレーム構造体2Bを配置することによって、バックドア1のねじれ変形に対する剛性が向上するように構成されている。なお、図4では、中部フレーム構造体2Bの配置範囲を鎖線で概略的に示している。
【0014】
しかも、本実施形態のバックドア構造における中部フレーム構造体2Bは、図3及び図4に示すように、車両上下方向で、テールランプ8が取付けられる左右両側のテールランプ取付部Tと重なる位置に配置されている。そのため、中部フレーム構造体2Bは、フレーム部材2の左右両側に位置するテールランプ取付部Tまで到達可能な長さを有し、車両幅方向に沿って連続して延びている。すなわち、本実施形態のバックドア構造では、重量部品であるテールランプ8を取付けるテールランプ取付部Tが高剛性の中部フレーム構造体2Bによって支えられることになり、バックドア1に生じる変形が低減されるようになっている。
【0015】
また、本実施形態のバックドア1は、図4図7及び図8に示すように、該バックドア1の左右両側の側部で車両上下方向に延びる側部フレーム構造体2Cをそれぞれ有している。これら側部フレーム構造体2Cは、フレーム部材2の外側と内側でフレームインナ3とフレームアウタ4とが接合される外側接合部25と内側接合部26とからなる側部接合部Cを有している。これら外側接合部25及び内側接合部26は、フレームインナ3及びフレームアウタ4の外側端部及び内側端部をそれぞれ重ね合わせ、重ね合わせ部分を溶接などによって接合することにより形成されている。しかも、側部フレーム構造体2Cは、下部フレーム構造体2A及び中部フレーム構造体2Bの少なくとも一方と連続したフレーム構造を形成しており、下部フレーム構造体2Aのみ又は中部フレーム構造体2Bのみと連続していても、あるいは下部フレーム構造体2A及び中部フレーム構造体2Bの両方と連続していても良い。
すなわち、本実施形態のバックドア構造では、バックドア1の側部両側に剛性が高い側部フレーム構造体2Cを配置し、かつ下部フレーム構造体2A及び中部フレーム構造体2Bの少なくとも一方と連続して配置することによって、フレーム部材2の下半部をフレーム構造体2A,2B,2Cで囲まれた構造に設計し、バックドア1のねじれ変形などに対する剛性がより一層向上するように構成されている。なお、図4では、側部フレーム構造体2Cの配置範囲を鎖線で概略的に示している。
【0016】
しかも、本実施形態のバックドア構造における側部フレーム構造体2Cは、図4に示すように、車両幅方向で、テールランプ8が取付けられる左右両側のテールランプ取付部Tと重なる位置に配置されている。そのため、側部フレーム構造体2Cは、フレーム部材2の左右両側に位置するテールランプ取付部Tまで到達可能な長さを有し、車両上下方向に沿って連続して延びている。すなわち、本実施形態のバックドア構造では、重量部品であるテールランプ8を取付けるテールランプ取付部Tが高剛性の側部フレーム構造体2Cによって支えられることになり、バックドア1に入力された荷重に対する変形が低減されるようになっている。
【0017】
一方、本実施形態のバックドア構造におけるパネル部材5は、図5及び図7に示すように、下部フレーム構造体2A、中部フレーム構造体2B及び側部フレーム構造体2Cに固定されている。そのため、バックドア1の意匠面を形成するパネル部材5は、図4に示すように、環状に配置されたフレーム構造体2A,2B,2Cに固定されていることになる。すなわち、本実施形態のバックドア構造では、フレーム部材2に対するパネル部材5の固定強度が確保され、パネル部材5をフレーム部材2に確実に固定することが可能に構成されている。なお、フレーム部材2の内側には、図2及び図5に示すように、バックドア1の内側面を形成する樹脂製の内装部材12が設置されており、該内装部材12は、フレーム部材2の下半部及びガラス部材7の下縁7a側を覆うことが可能な大きさを有している。
【0018】
また、本実施形態のバックドア構造において、下部フレーム構造体2A、中部フレーム構造体2B及び側部フレーム構造体2Cは、図4図5及び図7に示すように、連続しているとともに、下部フレーム構造体2Aの上側接合部21、中部フレーム構造体2Bの下側接合部24及び側部フレーム構造体2Cの内側接合部26が連続して配置されている。しかも、バックドア1の外周部1aから所定の距離離れた面内方向内側の位置には、環状に連続して形成された内周接合部27が設けられており、該内周接合部27の内側には、フレームインナ3及びフレームアウタ4が開口していることにより、フレーム部材2を貫通する開口部28が形成されている。このような開口部28は、フレーム部材2の上半部に設けられた後部窓開口部11の下側に位置し、中部フレーム構造体2Bを間に置いてフレーム部材2の下半部の中央部分に位置しており、環状に配置された下部フレーム構造体2A、中部フレーム構造体2B及び側部フレーム構造体2Cによって囲まれている。
すなわち、本実施形態のバックドア構造では、下部フレーム構造体2A、中部フレーム構造体2B及び側部フレーム構造体2Cを環状に連続して配置することにより、バックドア1に入力された荷重に起因する曲げ変形やねじれ変形に対して強固な構造を有するフレーム部材2が得られることになる。そのため、開口部28がフレーム部材2の下半部の中央部分に形成されていても、フレーム部材2が十分な剛性を有し、かつフレーム部材2の軽量化も実現可能になっている。
【0019】
さらに、本実施形態の下部フレーム構造体2A、中部フレーム構造体2B及び側部フレーム構造体2Cにおいて、フレームインナ3は、図5図8に示すように、上側接合部21,23、下側接合部22,24、外側接合部25及び内側接合部26を構成するフランジ形状部とすることによって、車室内側に凸な断面ハット型形状を有している。また、フレームアウタ4は、上側接合部21,23、下側接合部22,24、外側接合部25及び内側接合部26を構成するフランジ形状部とすることによって、車室外側に凸な断面ハット型形状を有している。そして、フレームインナ3のフランジ形状部とフレームアウタ4のフランジ形状部とを接合することにより、下部フレーム構造体2A、中部フレーム構造体2B及び側部フレーム構造体2Cは、それぞれ閉断面部9A,9B,9Cを有しており、これら閉断面部9A,9B,9Cを挟んで接合されたフランジ形状部を有する閉断面構造に構成されている。すなわち、本実施形態のバックドア構造は、フレームインナ3及びフレームアウタ4がハット形断面形状に形成された下部フレーム構造体2A、中部フレーム構造体2B及び側部フレーム構造体2Cを有することによって、フレーム部材2の断面積をより大きくすることが可能になるとともに、下部フレーム構造体2A、中部フレーム構造体2B及び側部フレーム構造体2Cの周囲にフランジ形状部を形成することによって、フレーム部材2の剛性を高めることが可能になっている。
【0020】
このように、本発明の実施形態に係る車両のバックドア構造は、車体後部にバックドア1が設けられており、バックドア1は、フレームインナ3とフレームアウタ4とから構成される金属製のフレーム部材2を有し、フレーム部材2の外側には、バックドア1の意匠面を形成する樹脂製のパネル部材5が設置されている。
したがって、本実施形態のバックドア構造では、フレーム部材2でバックドア1の剛性を担保する構造とすることにより、パネル部材5の強度及び剛性を低くしても設置することが可能になるので、軽量な材料を使用したり、あるいは必要最低減の板厚で済み、パネル部材5の軽量化を実現することができる。
また、本実施形態のバックドア構造では、バックドア1の意匠面を樹脂製のパネル部材5で構成し、金属製のフレーム部材2がバックドア1の意匠面とならないので、フレーム部材2はデザイン的な制約がなく、自由に形状を形成することができ、例えば、フレームアウタ4を車両外側に膨出した形状とすることで、断面積を大きく形成することができる。そのため、パネル部材5の内側に配置される金属部品のフレーム部材2にデザインなどの意匠性を考慮せずに高い剛性を有する構造を自由に設けることができ、フレーム部材2の板厚を薄くするなどしても同等性能を確保しつつ、フレーム部材2の軽量化を図ることが可能となり、もしくは、重量を増大することなくフレーム部材2の剛性を高めることが可能となり、軽量でかつ高剛性のバックドア1を得ることができる。
【0021】
また、本実施形態のバックドア構造において、フレーム部材2は、バックドア1の下縁部において、車両幅方向に延びる下部フレーム構造体2Aを有し、下部フレーム構造体2Aは、フレーム部材2の上下でフレームインナ3とフレームアウタ4とが接合される上側接合部21と下側接合部22とからなる下部接合部Aを有している。
したがって、本実施形態のバックドア構造では、バックドア1の開閉時において、回動中心となる上部のヒンジ部から最も遠く離れたバックドア1の下縁部に剛性が高い下部フレーム構造体2Aを配置することにより、荷重入力時におけるバックドア1のねじれ変形を効果的に抑えることができるとともに、バックドア1の曲げ変形に対する強度も高めることができる。
【0022】
さらに、本実施形態のバックドア構造において、バックドア1は、下部フレーム構造体2Aに設けられるドアロック機構6を備えているので、剛性が高い部位にドアロック機構6を設けることが可能になり、開閉時におけるバックドア1のドア閉まりの精度向上を図ることができる。
【0023】
そして、本実施形態のバックドア構造において、バックドア1は、上部の後部窓ガラス部Gに設置されるガラス部材7を備えており、バックドア1の上下方向の中間部分には、ガラス部材7の下縁7aに沿って、車両幅方向に延びる中部フレーム構造体2Bを有している。中部フレーム構造体2Bは、フレーム部材2の上下でフレームインナ3とフレームアウタ4とが接合される上側接合部23と下側接合部24とからなる中部接合部Bを有している。したがって、本実施形態のバックドア構造では、バックドア1の上下方向の中間部分に高い剛性を有する中部フレーム構造体2Bを配置することが可能となるので、荷重が入力された場合などにおいて、バックドア1のねじれ変形に対する剛性を向上させることができ、バックドア1のねじれ変形を低減することができる。
【0024】
また、本実施形態のバックドア構造において、中部フレーム構造体2Bは、車両上下方向で、テールランプ8が取付けられるテールランプ取付部Tと重なる位置に配置されている。したがって、本実施形態のバックドア構造では、重量部品であるテールランプ8が高剛性の中部フレーム構造体2Bによって支えられることになるので、バックドア1の変形を低減することができる。
【0025】
さらに、本実施形態のバックドア構造において、バックドア1は、該バックドア1の左右両側の側部で車両上下方向に延びる側部フレーム構造体2Cを有している。側部フレーム構造体2Cは、フレーム部材2の外側と内側でフレームインナ3とフレームアウタ4とが接合される外側接合部25と内側接合部26とからなる側部接合部Cを有している。しかも、側部フレーム構造体2Cは、下部フレーム構造体2A及び中部フレーム構造体2Bの少なくとも一方と連続したフレーム構造を形成している。
したがって、本実施形態のバックドア構造では、バックドア1の側部両側に剛性が高い側部フレーム構造体2Cが配置されているとともに、下部フレーム構造体2A及び中部フレーム構造体2Bの少なくとも一方と連続して配置されているので、フレーム部材2の下半部をフレーム構造体2A,2B,2Cで囲まれた構造に形成することができ、バックドア1の剛性を更に向上させることができる。
【0026】
そして、本実施形態のバックドア構造において、側部フレーム構造体2Cは、車両幅方向で、テールランプ8が取付けられるテールランプ取付部Tと重なる位置に配置されているので、重量部品のテールランプ8を剛性の高い側部フレーム構造体2Cで支えることができ、バックドア1の変形を効果的に低減することができる。
【0027】
また、本実施形態のバックドア構造において、パネル部材5は、下部フレーム構造体2A、中部フレーム構造体2B及び側部フレーム構造体2Cに固定されている。したがって、本実施形態のバックドア構造では、バックドア1の意匠面を形成するパネル部材5が環状に配置されたフレーム構造体2A,2B,2Cに固定されることになるので、フレーム部材2に対するパネル部材5の固定強度を確保でき、パネル部材5をフレーム部材2に確実に固定することができる。
【0028】
さらに、本実施形態のバックドア構造において、下部フレーム構造体2A、中部フレーム構造体2B及び側部フレーム構造体2Cは連続しているとともに、下部フレーム構造体2Aの上側接合部21、中部フレーム構造体2Bの下側接合部24及び側部フレーム構造体2Cの内側接合部26が連続して配置されている。また、バックドア1の外周部1aから所定の距離離れた面内方向内側の位置には、環状に連続して形成された内周接合部27が設けられている。内周接合部27の内側には、フレームインナ3及びフレームアウタ4が開口していることにより、フレーム部材2を貫通する開口部28が形成されている。
したがって、本実施形態のバックドア構造では、下部フレーム構造体2A、中部フレーム構造体2B及び側部フレーム構造体2Cが環状に連続しているので、曲げ変形やねじれ変形に対してより強固な構造のフレーム部材2を実現することができる。その結果、本実施形態のバックドア構造は、開口部28がフレーム部材2の下半部の中央部分に形成されていても、フレーム部材2が十分な剛性を確保できるとともに、フレーム部材2の軽量化も図ることができる。また、本実施形態のバックドア構造は、環状に配置された下部フレーム構造体2A、中部フレーム構造体2B及び側部フレーム構造体2Cを有するフレーム部材2が存在しているので、パネル部材5自身の剛性を最小限に設定することができ、従来のバックドア構造よりもパネル部材5の薄肉化や樹脂化を行うことができる。
【0029】
そして、本実施形態のバックドア構造では、下部フレーム構造体2A、中部フレーム構造体2B及び側部フレーム構造体2Cにおいて、フレームインナ3は、上側接合部21,23、下側接合部22,24、外側接合部25及び内側接合部26を構成するフランジ形状部とすることによって、車室内側に凸なハット形断面形状を有している。また、フレームアウタ4は、上側接合部21,23、下側接合部22,24、外側接合部25及び内側接合部26を構成するフランジ形状部とすることによって、車室外側に凸なハット形断面形状を有している。しかも、これらフレームインナ3のフランジ形状部とフレームアウタ4のフランジ形状部とを接合することにより、下部フレーム構造体2A、中部フレーム構造体2B及び側部フレーム構造体2Cは、閉断面部9A,9B,9Cを挟んで接合されたフランジ形状部を有する閉断面構造に構成されている。
したがって、本実施形態のバックドア構造では、対応するフレームインナ3及びフレームアウタ4のフランジ形状部を接合することによって、下部フレーム構造体2A、中部フレーム構造体2B及び側部フレーム構造体2Cがそれぞれハット形断面形状を有することになるので、フレーム部材2の断面積をより広く取ることができ、かつ、下部フレーム構造体2A、中部フレーム構造体2B及び側部フレーム構造体2Cの周囲にフランジ形状部を形成することによって、フレーム部材2の剛性を更に高めることができる。
【0030】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
例えば、下部フレーム構造体2A、中部フレーム構造体2B及び側部フレーム構造体2Cの閉断面部9A,9B,9Cの断面形状は、既述の実施形態の形状に限られず、適用するバックドア1の形状などに対応させて適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 バックドア
1a 外周部
2 フレーム部材
2A 下部フレーム構造体
2B 中部フレーム構造体
2C 側部フレーム構造体
3 フレームインナ
4 フレームアウタ
5 パネル部材
6 ドアロック機構
7 ガラス部材
7a 下縁
8 テールランプ
9A,9B,9C 閉断面部
20 ロック機構取付部
21 下部フレーム構造体の上側接合部
22 下部フレーム構造体の下側接合部
23 中部フレーム構造体の上側接合部
24 中部フレーム構造体の下側接合部
25 側部フレーム構造体の外側接合部
26 側部フレーム構造体の内側接合部
27 内周接合部
28 開口部
A 下部接合部
B 中部接合部
C 側部接合部
G 後部窓ガラス部
T テールランプ取付部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8