(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】インピーダンス測定治具
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20240202BHJP
G01R 27/02 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
H05H1/46 L
G01R27/02 A
(21)【出願番号】P 2020041727
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】藤原 将喜
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-149638(JP,A)
【文献】特開2008-147312(JP,A)
【文献】特開2012-163574(JP,A)
【文献】特開2008-249482(JP,A)
【文献】特開2003-319015(JP,A)
【文献】特開2010-160000(JP,A)
【文献】特開2010-261761(JP,A)
【文献】特開2021-103641(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0270174(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
G01R 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置を構成するアンテナのインピーダンスを測定するためのインピーダンス測定治具であって、一方の端子が前記アンテナの一端部に電気的に接続されるインピーダンス測定器とともに用いられるものであり、
前記アンテナの他端部に電気的に接続されるとともに、前記インピーダンス測定器の他方の端子が電気的に接続される導電性剛体を備え
、
前記導電性剛体は、前記アンテナが載置されるとともに、前記アンテナの一端部及び他端部を支持する金属容器である、インピーダンス測定治具。
【請求項2】
前記導電性剛体が、複数回のインピーダンス測定に亘って形状を維持できるものである、請求項1記載のインピーダンス測定治具。
【請求項3】
前記導電性剛体が、前記アンテナの一端部側から他端部側に亘って設けられており、当該導電性剛体における前記アンテナの一端部側に前記インピーダンス測定器の前記他方の端子が電気的に接続される、請求項1又は2記載のインピーダンス測定治具。
【請求項4】
前記金属容器と前記アンテナの一端部及び他端部それぞれとの間に介在する絶縁体と、
前記金属容器と前記アンテナの他端部とを電気的に接続する接続体とをさらに備える
請求項1乃至3のうち何れか一項に記載のインピーダンス測定治具。
【請求項5】
前記金属容器を塞ぐとともに、当該金属容器内に配置された前記アンテナに電磁波が入り込むことを抑制する電磁波シールドをさらに備える請求項4記載のインピーダンス測定治具。
【請求項6】
前記アンテナを支持する絶縁性のアンテナ支持部材をさらに備える請求項1乃至5のうち何れか一項に記載のインピーダンス測定治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置を構成するアンテナのインピーダンスを測定するためのインピーダンス測定治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、プラズマCVD法による膜形成、エッチング、アッシング、スパッタリング等に用いられるプラズマ処理装置は、特許文献1に示すように、アンテナに高周波電流を流すことによりプラズマを生成するように構成されている。
【0003】
かかるプラズマ処理装置において、例えば複数本のアンテナを用いる場合など、均一なプラズマを生成するためには、それぞれのアンテナのインピーダンスが揃っているかなどを装置の製造前に確認しておくことが望まれる。
【0004】
そこで、従来は
図5に示すように、アンテナのインピーダンスをネットワークアナライザ等のインピーダンス測定器を用いて測定することがあり、具体的にはインピーダンス測定器の一方の端子をアンテナの一端部に電気的に接続するとともに、他方の端子をアンテナの他端部に電気的に接続している。
【0005】
しかしながら、上述したインピーダンス測定において、アンテナが長尺のものであると、アンテナの両端部のうちの少なくとも一方を、インピーダンス測定器の端子に接続するためには、配線ケーブルを介す必要がある。そうすると、測定毎に配線ケーブルの這わせ方や取り回しの違い或いは配線ケーブルの揺らぎなどに起因して、周辺から受ける電磁波や寄生容量等の影響が変わり、測定値が安定せず、測定値のばらつきが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、かかる問題を解決するべくなされたものであり、アンテナのインピーダンス測定において、測定値のばらつきを低減させることのできるインピーダンス測定治具を提供することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係るインピーダンス測定治具は、プラズマ処理装置を構成するアンテナのインピーダンスを測定するためのインピーダンス測定治具であって、一方の端子が前記アンテナの一端部に電気的に接続されるインピーダンス測定器とともに用いられるものであり、前記アンテナの他端部に電気的に接続されるとともに、前記インピーダンス測定器の他方の端子が電気的に接続される導電性剛体を備えることを特徴とするものである。
【0009】
このように構成されたインピーダンス測定治具であれば、アンテナの他端部とインピーダンス測定器の他方の端子とを導電性剛体を介して電気的に接続しているので、電気ケーブルを介して接続する場合に比べて、周辺から受ける電磁波や寄生容量等の影響の変動を抑えることができ、測定値のばらつきを低減させることができる。
【0010】
上述した作用効果をより顕著に発揮させるためには、前記導電性剛体が、複数回のインピーダンス測定に亘って形状を維持できるものであることが好ましい。
【0011】
前記導電性剛体が、前記アンテナの一端部側から他端部側に亘って設けられており、当該導電性剛体における前記アンテナの一端部側に前記インピーダンス測定器の前記他方の端子が電気的に接続されることが好ましい。
これらならば、アンテナの一端部側にインピーダンス測定器を設けることで、インピーダンス測定器の一方の端子とアンテナの一端部とを電気的に接続する電気ケーブルを不要に或いは可及的に短くすることができ、測定値のばらつきをより確実に低減させることができる。
【0012】
より具体的な実施態様としては、前記導電性剛体が、前記アンテナの一端部及び他端部を支持する金属容器であり、前記金属容器と前記アンテナの一端部及び他端部それぞれとの間に介在する絶縁体、及び、前記金属容器と前記アンテナの他端部とを電気的に接続する接続体をさらに備える態様を挙げることができる。
これならば、インピーダンス測定治具を簡易な構成にすることができるうえ、金属容器にアンテナを載置してインピーダンスを簡単に測定することができる。
【0013】
上述した金属容器内に配置されたアンテナに電磁波が入り込むと、このアンテナは例えば近傍に測定者が近づくだけでもインピーダンスが変化するほど不安定なものとなり、このインピーダンスの変化も測定値のばらつきの要因となる。
そこで、測定値のばらつきをより低減するためには、前記金属容器を塞ぐとともに、当該金属容器内に配置された前記アンテナに電磁波が入り込むことを抑制する電磁波シールドをさらに備えることが好ましい。
【0014】
前記アンテナを支持する絶縁性のアンテナ支持部材をさらに備えることが好ましい。
これならば、アンテナの撓みを低減することができ、測定値のばらつきをより低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
このように構成した本発明によれば、アンテナのインピーダンス測定における測定値のばらつきを従来に比べて低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態のインピーダンス測定治具の構成を模式的に示す斜視図。
【
図2】同実施形態のインピーダンス測定治具の構成を模式的に示す断面図。
【
図3】同実施形態のインピーダンス測定治具の作用効果を示す測定結果。
【
図4】その他の実施形態におけるインピーダンス測定治具の構成を模式的に示す断面図。
【
図5】アンテナのインピーダンスを測定する従来例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係るインピーダンス測定治具の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態のインピーダンス測定治具は、プラズマ処理装置を構成するアンテナのインピーダンスを測定するためのものである。なお、プラズマ処理装置は、誘導結合型のプラズマを用いて基板等の処理物にプラズマ処理を施すものであり、具体的には例えばプラズマCVD法による膜形成、エッチング、アッシング、スパッタリング等をするものである。
【0019】
このインピーダンス測定治具100(以下、単に測定治具100ともいう)は、
図1に示すように、例えばネットワークアナライザ等のインピーダンス測定器Zとともに用いられるものである。
【0020】
インピーダンス測定器Zは、一対の端子Za、Zbを備えており、これらの端子Za、ZbそれぞれをアンテナXに電気的に接続することで、アンテナXのインピーダンスを測定するものである。
【0021】
以下では、アンテナXが長尺状をなすものであり、インピーダンス測定器Zの一方の端子ZaをアンテナXの一端部Xaに電気的に接続するとともに、他方の端子ZbをアンテナXの他端部Xbに電気的に接続する場合について説明する。
【0022】
具体的には、
図1及び
図2に示すように、インピーダンス測定器Zを、アンテナXの一端部Xa側、より詳細にはアンテナXの一端部Xaの近傍に配置しており、その一方の端子ZaをアンテナXの一端部Xaに接触させている。なお、一方の端子Zaは、必ずしもアンテナXの一端部Xaに接触させる必要はなく、アンテナXの一端部Xaに例えば導電性部材を介して電気的に接続されていれば、アンテナXとは非接触であっても良い。
【0023】
一方で、アンテナXの他端部Xbとインピーダンス測定器Zの他方の端子Zbとの電気的な接続に、本実施形態の測定治具100が用いられている。
【0024】
然して、この測定治具100は、アンテナXの他端部Xbに電気的に接続されるとともに、インピーダンス測定器Zの他方の端子Zbが電気的に接続される導電性剛体1を備えるものである。
【0025】
この導電性剛体1は、配線ケーブルなどとは異なり、複数回のインピーダンス測定に亘って形状を維持できるものであり、少なくとも複数回のインピーダンス測定に亘ってインピーダンスが不変なものである。
【0026】
具体的に導電性剛体1は、アンテナXの一端部Xa側から他端部Xb側に亘って設けられており、接地されている。そして、この導電性剛体1におけるアンテナXの一端側に、上述したインピーダンス測定器Zの他方の端子Zbが電気的に接続される。
【0027】
本実施形態の導電性剛体1は、アンテナXが載置される金属容器1であり、アンテナXの一端部Xa及び他端部Xbを支持するものである。なお、金属容器1の深さ、すなわち金属容器1の底面からアンテナXまでの高さは、一例としてプラズマ処理装置の真空チャンバの底面からアンテナXまでの高さにする態様が挙げられる。これにより、真空チャンバとアンテナXとの間における寄生容量を、金属容器1とアンテナXとの間で模擬的に生じさせることができ、アンテナXがプラズマ処理装置に組み込まれた状態を模擬しながらインピーダンス測定を行うことができる。
【0028】
ここで、本実施形態の測定治具100は、
図2に示すように、金属容器1とアンテナXの一端部Xa及び他端部Xbそれぞれとの間に介在する絶縁体2と、金属容器1とアンテナXの他端部Xbとを電気的に接続する接続体3とをさらに備えている。
【0029】
絶縁体2は、金属容器1に着脱可能なものであり、ここではアンテナXの端部Xa、Xbを例えば上下から挟み込む一対の絶縁要素21、22からなるものである。これにより、金属容器1に下側の絶縁要素21を設置し、その下側要素にアンテアの端部Xa、Xbを載置して、上側の絶縁要素22で挟み込むことで、アンテナXの両端部Xa、Xbが絶縁体2により絶縁された状態で金属容器1に支持される。
【0030】
接続体3は、アンテナXの他端部Xbに接触するとともに、金属容器1におけるアンテナXの他端部Xb側に接触する例えば配線ケーブル等である。このように、金属容器1における他端部Xb側に接触させることにより、この配線ケーブル3としては短いものを用いることができるので、この配線ケーブル3による測定値のばらつきは実質的に無視できる程度のものとなる。なお、接続体3として、配線ケーブルよりも剛性があり、より変形しにくい部材を用いても良い。
【0031】
さらに、本実施形態の測定治具100は、
図2に示すように、金属容器1を塞ぐとともに、当該金属容器1内に配置されたアンテナXに電磁波が入り込むことを抑制する電磁波シールド4と、アンテナXを支持する絶縁性のアンテナ支持部材5とをさらに備えている。
【0032】
電磁波シールド4は、金属容器1に電気的に接続されるとともに接地されており、金属容器1に対して着脱可能なものである。具体的にここでの電磁波シールド4は、金属容器1の上方を向く開口を塞ぐ例えばパンチングメタル等からなるファラデーシールドである。
【0033】
アンテナ支持部材5は、金属容器1や絶縁体2に支持された状態で金属容器1内に設けられており、ここではアンテナXの一端部Xaから他端部Xbに亘りアンテナXに沿って設けられた樹脂やガラスなどからなる長尺状のものである。
【0034】
このように構成された測定治具100によれば、アンテナXの他端部Xbとインピーダンス測定器Zの他方の端子Zbとを導電性剛体たる金属容器1を介して電気的に接続しているので、電気ケーブルを介して接続する場合に比べて、周辺から受ける電磁波や寄生容量等の影響の変動を抑えることができ、測定値のばらつきを低減させることができる。
【0035】
ここで、アンテナXのインピーダンスを本実施形態の測定治具100を用いて測定した結果と、従来の測定方法により測定した結果とを比較したものを
図3に示す。なお、これらの測定結果は、互いに等しい或いはほぼ等しいインピーダンスを有する同一形状(同一長さ)の複数本のアンテナXに13.56MHzの高周波電流を流し、その際の各アンテナXのインピーダンスを測定した結果である。
この測定結果から看取されるように、従来の測定方法では測定結果のばらつきが9.2Ωであるのに対して、本実施形態の測定治具100を用いることで測定結果のばらつきが1.1Ωとなり、測定結果のばらつきを低減できていることが分かる。
【0036】
また、本実施形態の測定治具100は、導電性剛体1としてアンテナXが載置される金属容器1を用いているので、測定治具100を簡易な構成にすることができるうえ、アンテナXのインピーダンスを簡単に測定することができる。
【0037】
さらに、測定治具100が金属容器1内に配置されたアンテナXに電磁波が入り込むことを抑制する電磁波シールド4を備えているので、アンテナXに電磁波が入り込むことに起因する測定値のばらつきを可及的に減らすことができる。
【0038】
そのうえ、測定治具100がアンテナXを支持するアンテナ支持部材5を備えているので、アンテナXの撓みを低減することができ、この撓みに起因する測定値のばらつきを可及的に減らすことができる。
【0039】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0040】
例えば、前記実施形態では、導電性剛体1が金属容器であったが、
図4に示すように、導電性剛体1は、アンテナXの一端部Xa及び他端部Xbに沿って設けられた金属製の棒状をなすものであっても良い。すなわち、導電性剛体1は、アンテナXの他端部Xbとインピーダンス測定器Zの他方の端子Zbとを電気的に接続するものであれば、その形状は種々のものを選択して構わない。
【0041】
また、前記実施形態では、インピーダンス測定器Zの端子Za、ZbをアンテナXの一端部Xa及び他端部Xbそれぞれに電気的に接続していたが、例えば一方の端子Za又は他方の端子ZbをアンテナXの中央部に接続するなどしても良い。
【0042】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0043】
100・・・インピーダンス測定治具
X ・・・アンテナ
Xa ・・・一端部
Xb ・・・他端部
Z ・・・インピーダンス測定器
Za ・・・一方の端子
Zb ・・・他方の端子
1 ・・・導電性剛体(金属容器)
2 ・・・絶縁体
21 ・・・下側の絶縁要素
22 ・・・上側の絶縁要素
3 ・・・接続体
4 ・・・電磁波シールド
5 ・・・アンテナ支持部材