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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/50 20230101AFI20240202BHJP
   H10K 30/85 20230101ALI20240202BHJP
   H10K 30/40 20230101ALI20240202BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/85
H10K30/40
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021514790
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 JP2019040826
(87)【国際公開番号】W WO2020213196
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2019078084
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】横山 智康
(72)【発明者】
【氏名】西谷 雄
(72)【発明者】
【氏名】楠本 将平
(72)【発明者】
【氏名】宮本 唯未
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109326715(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108574044(CN,A)
【文献】Weijun Ke et al.,“TiO2-ZnS Cascade Electron Transport Layer for Efficient Formamidinium Tin Iodide Perovskite Solar Cells”,Journal of the American Chemical Society,2016年,Vol.138,p.14998-15003
【文献】Haimin Zhang et al.,“A highly crystalline Nb3O7F nanostructured photoelectrode: fabrication and photosensitisation”,Journal of Materials Chemistry A,2013年,Vol.1,p.6563-6571
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-39/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極及び前記第2電極の間に位置する光電変換層と、
前記第1電極及び前記光電変換層の間に位置する第1電子輸送層と、
を具備し、
前記第1電極及び前記第2電極からなる群より選ばれる少なくとも1つの電極が透光性を有し、
前記光電変換層は、1価のカチオン、Snカチオン、及びハロゲンアニオンにより構成されるペロブスカイト化合物を含み、
前記第1電子輸送層は、酸ハロゲン化ニオブを含む、
太陽電池。
【請求項2】
前記第1電子輸送層は2つの主面を有し、
2つの主面のうち、一方の主面は前記光電変換層に面し、
2つの主面のうち、他方の主面は前記第1電極に面し、
そして、前記一方の主面は、前記他方の主面よりも高いハロゲン濃度を有する、
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記第1電子輸送層は、前記光電変換層から前記第1電極に向かう方向にハロゲンの濃度が低下する濃度勾配を、当該第1電子輸送層の厚さ方向の少なくとも一部の領域に有する、
請求項1又は2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記第1電子輸送層及び前記第1電極の間に位置する第2電子輸送層をさらに具備し、
前記第2電子輸送層は、酸化ニオブを含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記第1電子輸送層は、前記光電変換層と前記第2電子輸送層とに接している、
請求項4に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記酸ハロゲン化ニオブを構成するハロゲンは、FおよびClからなる群から選択される少なくとも一つである、
請求項1から5のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記1価のカチオンは、ホルムアミジニウムカチオンである、
請求項1から6のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記ハロゲンアニオンは、ヨウ化物イオンである、
請求項1から7のいずれか一項に記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ペロブスカイト太陽電池が研究及び開発されている。ペロブスカイト太陽電池では、化学式ABX3で示されるペロブスカイト化合物が光電変換材料として用いられる。ここで、Aは1価のカチオン、Bは2価のカチオン、及びXはハロゲンアニオンである。
【0003】
特許文献1及び非特許文献1には、化学式CH3NH3SnI3又は化学式(NH22CHSnI3で示されるスズ系ペロブスカイト化合物を光電変換材料として含むスズ系ペロブスカイト太陽電池が開示されている。非特許文献2には、化学式((NH22CH)0.85(CH3NH30.15PbI3で示される鉛系ペロブスカイト化合物にNbF5を添加した光電変換材料を含む鉛系ペロブスカイト太陽電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-17252号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Shuyan Shao et. al., "Highly Reproducible Sn-Based Hybrid Perovskite Solar Cells with 9% Efficiency", Advanced Energy Materials, 2018, Vol. 8, 1702019
【文献】S. Yuan et al., "NbF5: A Novel α-Phase Stabilizer for FA-Based Perovskite Solar Cells with High Efficiency", Adv. Func. Mater., 2019, 1807850
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、スズ系ペロブスカイト太陽電池の変換効率を高める技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示による太陽電池は、
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極及び前記第2電極の間に位置する光電変換層と、
前記第1電極及び前記光電変換層の間に位置する第1電子輸送層と、
を具備し、
前記第1電極及び前記第2電極からなる群より選ばれる少なくとも1つの電極が透光性を有し、
前記光電変換層は、1価のカチオン、Snカチオン、及びハロゲンアニオンにより構成されるペロブスカイト化合物を含み、
前記第1電子輸送層は、酸ハロゲン化ニオブを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、高い変換効率を有するスズ系ペロブスカイト太陽電池を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、鉛系ペロブスカイト太陽電池、及び従来のスズ系ペロブスカイト太陽電池における実測値に基づく電流-電圧特性を示すグラフである。
図2図2は、デバイスシミュレーションに基づく太陽電池の電流-電圧特性と、エネルギーオフセットとの関係を示すグラフである。
図3図3は、本開示の実施形態による太陽電池の断面図を示す。
図4図4は、比較例1の太陽電池に対する飛行時間型二次イオン質量分析(以下、「TOF-SIMS」と記載される)の評価結果を示すグラフである。
図5図5は、実施例3の太陽電池に対するTOF-SIMSの評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<用語の定義>
本明細書において用いられる用語「ペロブスカイト化合物」とは、化学式ABX3(ここで、Aは1価のカチオン、Bは2価のカチオン、及びXはハロゲンアニオンである)で示されるペロブスカイト結晶構造体及びそれに類似する結晶を有する構造体を意味する。本明細書において用いられる用語「スズ系ペロブスカイト化合物」とは、2価のカチオンとしてSnカチオンを含むペロブスカイト化合物を意味する。
【0011】
本明細書において用いられる用語「ペロブスカイト太陽電池」とは、ペロブスカイト化合物を光電変換材料として含む太陽電池を意味する。本明細書において用いられる用語「スズ系ペロブスカイト太陽電池」とは、スズ系ペロブスカイト化合物を光電変換材料として含む太陽電池を意味する。
【0012】
<本開示の基礎となった知見>
本開示の基礎となった知見は、次のとおりである。
【0013】
スズ系ペロブスカイト化合物は、太陽電池の光電変換材料として理論上好適とされる1.4eV付近のバンドギャップを有する。上記バンドギャップの値によれば、スズ系ペロブスカイト太陽電池には高い変換効率が期待される。しかし、従来のスズ系ペロブスカイト太陽電池の変換効率は、鉛系ペロブスカイト化合物を光電変換材料として含む鉛系ペロブスカイト太陽電池と比べて低い。なお、鉛系ペロブスカイト化合物は、2価のカチオンとしてPbカチオンを含むペロブスカイト化合物である。
【0014】
図1は、鉛系ペロブスカイト太陽電池、及び従来のスズ系ペロブスカイト太陽電池における実測値に基づく電流-電圧特性を示すグラフである。実測値の測定に用いられた各太陽電池は、本発明者らによって作製された。各太陽電池は、基板、第1電極、電子輸送層、多孔質層、光電変換層、正孔輸送層及び第2電極がこの順に積層された積層構造を有していた。それぞれの太陽電池について、各層を構成する材料は以下のとおりである。
【0015】
(鉛系ペロブスカイト太陽電池)
基板:ガラス
第1電極:インジウム-錫複合酸化物(以下、「ITO」と記載される)、及びアンチモンがドープされた酸化錫(以下、「ATO」と記載される)の混合物
電子輸送層:緻密TiO2(以下、「c-TiO2」と記載される)
多孔質層:メソポーラスTiO2(以下、「mp-TiO2」と記載される)
光電変換層:HC(NH22PbI3
正孔輸送層:(2,2',7,7'-tetrakis-(N,N-di-p-methoxyphenylamine)-9,9'-spirobifluorene)(以下、「spiro-OMeTAD」と記載される)
第2電極:金
【0016】
(従来のスズ系ペロブスカイト太陽電池)
基板:ガラス
第1電極:ITO及びATOの混合物
電子輸送層:c-TiO2
多孔質層:mp-TiO2
光電変換層:HC(NH22SnI3
正孔輸送層:(poly[bis(4-phenyl)(2,4,6-trimethylphenyl)amine])(以下、「PT
AA」と記載される)
第2電極:金
【0017】
図1に示されるように、従来のスズ系ペロブスカイト太陽電池の開放電圧は、鉛系ペロブスカイト太陽電池と比べて低い。この低い開放電圧が、従来のスズ系ペロブスカイト太陽電池における低い変換効率の要因であると推定される。本発明者らは、低い開放電圧をもたらす要因として、スズ系ペロブスカイト化合物と、電子輸送層を構成する電子輸送材料との間における伝導帯下端のエネルギー準位差に着目した。当該エネルギー準位差が大きい場合には、光電変換層と電子輸送層との界面においてキャリアの再結合が進行する状態が想定される。本明細書では、これ以降、「光電変換層を構成する光電変換材料の伝導帯下端のエネルギー準位Epecに対する、電子輸送層を構成する電子輸送材料の伝導帯下端のエネルギー準位Eetの差」が「エネルギーオフセット」と記載される。エネルギーオフセットは、エネルギー準位Eetからエネルギー準位Epecを引いた値である。なお、本明細書における「伝導体下端のエネルギー準位」の値は、真空準位を基準とする。
【0018】
スズ系ペロブスカイト化合物の伝導帯下端のエネルギー準位は、例えば、-3.5eVである。一方、鉛系ペロブスカイト化合物の伝導帯下端のエネルギー準位は、例えば、-4.0eVである。すなわち、スズ系ペロブスカイト化合物の伝導帯下端は、鉛系ペロブスカイト化合物の伝導帯下端に比べてエネルギー的に浅い位置にある。それ故、鉛系ペロブスカイト太陽電池と同じ電子輸送層をスズ系ペロブスカイト太陽電池に適用した場合には、エネルギーオフセットに基づくエネルギー差が電子輸送層と光電変換層との界面に生じる。鉛系ペロブスカイト太陽電池で使用されている代表的な電子輸送材料は、TiO2である。TiO2の伝導帯下端のエネルギー準位は、-4.0eVである。すなわち、スズ系ペロブスカイト化合物と電子輸送材料であるTiO2との間には、-0.5eVのエネルギーオフセットがある。エネルギーオフセットに基づくエネルギー差は、界面近傍での電子の存在確率を増大させる。これにより、界面におけるキャリアの再結合確率が増大し、開放電圧のロスを生む。言い換えると、鉛系ペロブスカイト太陽電池と同じ電子輸送層をスズ系ペロブスカイト太陽電池に適用した場合には、開放電圧が低く、変換効率が低下する。
【0019】
図2は、デバイスシミュレーションに基づく太陽電池の電流-電圧特性と、エネルギーオフセットとの関係を示すグラフである。デバイスシミュレーションには、SCAPS(Solar Cell Capacitance Simulator)が使用された。図2には、当該グラフ上の右側から順に、エネルギーオフセットを0.0eV、-0.1eV、-0.2eV、-0.3eV、-0.4eV、-0.5eV、-0.6eV、及び-0.7eVに設定したときの電流-電圧特性が示されている。図2には、エネルギーオフセットが小さくなるほど太陽電池の変換効率が向上することが示されている。スズ系ペロブスカイト太陽電池の変換効率を高めるためには、スズ系ペロブスカイト化合物との間で小さなエネルギーオフセットを達成可能な電子輸送材料が求められる。
【0020】
本発明者らは、スズ系ペロブスカイト太陽電池の電子輸送層を構成する電子輸送材料として酸ハロゲン化ニオブを用いる知見を見出した。酸ハロゲン化ニオブは、スズ系ペロブスカイト化合物の電子親和力に近い電子親和力を有している。このため、スズ系ペロブスカイト化合物との間の小さいエネルギーオフセットが達成されうる。したがって、酸ハロゲン化ニオブの電子輸送材料としての使用によって、スズ系ペロブスカイト太陽電池の変換効率の向上が可能となる。
【0021】
<本開示の実形態施形態>
以下、本開示の実施形態が、図面を参照しながら説明される。
【0022】
図3は、本実施形態による太陽電池の断面図である。図3に示されるように、本実施形態による太陽電池100は、第1電極2、第2電極6、光電変換層4、及び第1電子輸送層3aを備える。光電変換層4は、第1電極2及び第2電極6の間に位置する。第1電子輸送層3aは、第1電極2及び光電変換層4の間に位置する。第1電極2は、第1電子輸送層3a及び光電変換層4が第1電極2及び第2電極6の間に配置されるように、第2電極6と対向している。第1電極2及び第2電極6からなる群より選ばれる少なくとも1つの電極は、透光性を有する。本明細書において、「電極が透光性を有する」とは、200nm以上2000nm以下の波長を有する光のうち、いずれかの波長において、10%以上の光が電極を透過することを意味する。
【0023】
第1電子輸送層3aは、酸ハロゲン化ニオブを含む。より具体的には、第1電子輸送層3aは、酸ハロゲン化ニオブを含む電子輸送材料から構成される。これ以降、第1電子輸送層3aを構成する電子輸送材料は、「第1電子輸送材料」と記載される。
【0024】
第1電子輸送材料の伝導帯下端のエネルギー準位は、-3.9eVを超えていてもよい。また、当該エネルギー準位は、-3.1eV未満であってもよく、-3.9eVを超え、かつ-3.1eV未満であってもよい。
【0025】
第1電子輸送材料と、光電変換層4を構成する光電変換材料との間のエネルギーオフセットの絶対値は、0.3eV以下であってもよく、0.3eV未満であってもよい。エネルギーオフセットの絶対値が0.3eV以下の場合には、高変換効率の太陽電池が期待される。高変換効率の太陽電池は、例えば、電圧0.7V及び電流密度27mA/cm2以上の電流-電圧特性を示しうる。
【0026】
第1電子輸送材料に含まれる酸ハロゲン化ニオブは、フッ素(すなわち、F)、塩素(すなわち、Cl)及び臭素(すなわち、Br)からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素をハロゲンとして含みうる。ハロゲンは、FおよびClからなる群から選択される少なくとも1つである。ハロゲンは、Fであることが望ましい。
【0027】
酸ハロゲン化ニオブは、組成式Nb2(1+a)5(1-a-b)10bで示される組成を有していてもよい。Xは、ハロゲンである。ハロゲンの例は、上述のとおりである。aは、-0.05以上0.05以下であってもよい。bは、0.05以上0.95以下であってもよい。ただし、a及びbの合計は1未満である。
【0028】
酸ハロゲン化ニオブにおける酸素に対するニオブの組成比Nb/Oは、0.36以上0.43以下であってもよい。また、酸ハロゲン化ニオブにおけるニオブに対するハロゲンの組成比X/Nbは0.006以上であってもよい。組成比は、モル比である。上記組成比Nb/Oおよび上記組成比X/Nbからなる群から選択される少なくとも一つを酸ハロゲン化ニオブが満たす場合、スズ系ペロブスカイト太陽電池の変換効率がより確実に向上可能である。酸ハロゲン化ニオブの組成及び上記組成比は、X線光電子分光法(以下、「XPS」と記載される)、エネルギー分散型X線分析法(以下、「EDX」と記載される)、ICP発光分光分析法、及びラザフォード後方散乱分析法(以下、「RBS」と記載される)のような各種の分析手法により評価できる。
【0029】
第1電子輸送材料は、酸ハロゲン化ニオブ以外の他の物質を含んでいてもよい。他の物質の例は、酸化ニオブである。言い換えると、第1電子輸送材料は、酸ハロゲン化ニオブ及び酸化ニオブを含んでいてもよい。ただし、他の物質は、上記例に限定されない。第1電子輸送材料は、酸ハロゲン化ニオブを主として含んでいてもよいし、酸ハロゲン化ニオブから実質的になってもよい。本明細書において、ある物質を「主として含む」とは、当該物質の含有率が50モル%以上であることを意味し、当該物質の含有率は60モル%以上であってもよい。本明細書において、ある物質から「実質的になる」とは、当該物質の含有率が90モル%以上であることを意味し、当該物質の含有率は95モル%以上であってもよい。第1電子輸送材料は、酸ハロゲン化ニオブからなってもよい。なお、第1電子輸送材料が含みうる酸化ニオブの組成は、第2電子輸送層3bの説明において後述する酸化ニオブの組成と同じでありうる。
【0030】
第1電子輸送層3aでは、第1電極2側の表面におけるハロゲンの濃度に比べて、光電変換層4側の表面におけるハロゲンの濃度が高くてもよい。第1電極2側の表面は、例えば、第2電子輸送層3bとの界面である。光電変換層4側の表面は、例えば、光電変換層4との界面である。また、第1電子輸送層3aは、光電変換層4から第1電極2に向かう方向にハロゲンの濃度が低下する濃度勾配を、当該第1電子輸送層3aの厚さ方向の少なくとも一部の領域に有していてもよい。第1電子輸送層3aは、当該第1電子輸送層3aの厚さ方向の全域にわたって上記濃度勾配を有していてもよい。この場合、第1電子輸送層3aでは、光電変換層4側の表面から第1電極2側の表面に向けて、ハロゲンの濃度が低下する。酸ハロゲン化ニオブを含む第1電子輸送材料では、ハロゲンの濃度が低いほど電子移動度が高くなる傾向を示す。このため、第1電子輸送層3aが上記形態を有する場合に、スズ系ペロブスカイト太陽電池の変換効率がより確実に向上可能となる。
【0031】
第1電子輸送層3aにおける典型的なハロゲンの濃度の変化は、以下のとおりである。
・光電変換層4側の表面から第1電極2側の表面に向けて、ハロゲンの濃度が上昇してピークを迎えた後、低下する。ピークよりも第1電極2側に位置する領域は、上記ハロゲンの濃度が低下する濃度勾配を有する。
・ハロゲンの濃度がピークを迎える位置は、第1電子輸送層3aの厚さ方向の中心に比べて光電変換層4側にある。言い換えると、光電変換層4側の表面から第1電極2側の表面に向けてハロゲンの濃度が一旦上昇してピークを迎えた後、当該上昇に比べて緩やかに低下する。
この典型的な濃度の変化において、第1電極2側の表面におけるハロゲンの濃度に比べて、光電変換層4側の表面におけるハロゲンの濃度が高くてもよい。言い換えると、第1電子輸送層は2つの主面を有し、2つの主面のうち一方の主面は光電変換層に面し、2つの主面のうち他方の主面は第1電極に面し、そして、一方の主面は、他方の主面よりも高いハロゲン濃度を有する。
【0032】
第1電子輸送層3aにおける光電変換層4側の表面において、上記酸素に対するニオブの組成比Nb/Oの範囲および上記ニオブに対するハロゲンの組成比X/Nbの範囲からなる群から選択される少なくとも一つが満たされる。
【0033】
第1電子輸送材料が上記他の物質を含む場合、第1電子輸送層3aでは、第1電極2側の表面における酸ハロゲン化ニオブの含有率に比べて、光電変換層4側の表面における酸ハロゲン化ニオブの含有率が高くてもよい。
【0034】
第1電子輸送層3aは、同一の組成を有する複数の層から形成されていても、互いに異なる組成を有する複数の層から形成されていてもよい。第1電子輸送層3aが複数の層から形成される場合、光電変換層4側の層において、上記酸素に対するニオブの組成比Nb/Oの範囲および上記ニオブに対するハロゲンの組成比X/Nbの範囲からなる群から選択される少なくとも一つが満たされる。
【0035】
第1電子輸送層3aの厚さは、2nm以上350nm以下であってもよい。この範囲内の厚さを有する第1電子輸送層3aは、十分な電子輸送性を有しうるとともに低抵抗を維持できる。第1電子輸送層3aの厚さは、5nm以上350nm以下であってもよく、50nm以上350nm以下であってもよい。
【0036】
第1電子輸送層3aは、光電変換層4に接していてもよい。
【0037】
図3に示される太陽電池100では、基板1上に、第1電極2、第2電子輸送層3b、第1電子輸送層3a、光電変換層4、正孔輸送層5、及び第2電極6がこの順に積層されている。この太陽電池100では、第1電子輸送層3aは、光電変換層4と第2電子輸送層3bとに接している。第1電子輸送層3a及び第2電子輸送層3bは、電子輸送層3として機能する。本開示の太陽電池では、基板1上に、第2電極6、正孔輸送層5、光電変換層4、第1電子輸送層3a、第2電子輸送層3b、及び第1電極2がこの順に積層されていてもよい。本開示の太陽電池は、基板1を備えていなくてもよい。本開示の太陽電池は、第2電子輸送層3bを備えていなくてもよい。この場合、第1電子輸送層3aが、電子輸送層3として機能する。本開示の太陽電池は、正孔輸送層5を備えていなくてもよい。
【0038】
太陽電池100の基本的な作用効果が説明される。太陽電池100に光が照射されると、光電変換層4が光を吸収し、励起された電子及び正孔を発生させる。励起された電子は、第1電子輸送層3aに移動する。正孔は、正孔輸送層5に移動する。第1電子輸送層3a及び正孔輸送層5は、それぞれ、直接又は他の層を介して、第1電極2及び第2電極6に電気的に接続されている。負極及び正極としてそれぞれ機能する第1電極2及び第2電極6から、電流が取り出される。
【0039】
以下、太陽電池100の各構成要素が、具体的に説明される。
【0040】
(第2電子輸送層3b)
図3に示される太陽電池100は、第1電極2及び第1電子輸送層3aの間に位置する第2電子輸送層3bをさらに備える。この太陽電池100では、第2電子輸送層3bは第1電極2に接している。ただし、第2電子輸送層3bと第1電極2との間には、別の機能を有する層が設けられていてもよい。第2電子輸送層3bは、酸化ニオブを含む。第2電子輸送層3bは、酸ハロゲン化ニオブを含まなくてもよい。より具体的には、第2電子輸送層3bは、酸化ニオブを含む電子輸送材料から構成される。これ以降、第2電子輸送層3bを構成する電子輸送材料は、「第2電子輸送材料」と記載される。
【0041】
第2電子輸送材料の伝導帯下端のエネルギー準位は、-3.9eVを超えていてもよい。また、当該エネルギー準位は、-3.1eV未満であってもよく、-3.9eVを超え、かつ-3.1eV未満であってもよい。第2電子輸送材料の伝導帯下端のエネルギー準位は、第1電子輸送材料の伝導帯下端のエネルギー準位に比べて大きくてもよい。
【0042】
第2電子輸送材料と、光電変換層4を構成する光電変換材料との間のエネルギーオフセットの絶対値は、0.3eV以下であってもよく、0.3eV未満であってもよい。第2電子輸送材料と光電変換材料との間のエネルギーオフセットの絶対値は、第1電子輸送材料と光電変換材料との間のエネルギーオフセットの絶対値に比べて大きくてもよい。
【0043】
第2電子輸送材料に含まれる酸化ニオブは、組成式Nb2(1+c)5(1-c)で示される組成を有していてもよい。cは、0.05以上0.05以下であってもよい。
【0044】
酸化ニオブにおける酸素に対するニオブの組成比Nb/Oは、0.36以上0.43以下であってもよい。組成比は、モル比である。上記組成比Nb/Oを酸化ニオブが満たす場合、スズ系ペロブスカイト太陽電池の変換効率がより確実に向上可能である。酸化ニオブの組成及び上記組成比は、XPS、EDX、ICP発光分光分析法、及びRBSのような各種の分析手法により評価できる。
【0045】
第2電子輸送材料は、酸化ニオブ以外の他の物質を含んでいてもよい。第2電子輸送材料は、酸化ニオブを主として含んでいてもよいし、酸化ニオブから実質的になってもよい。第2電子輸送材料は、酸化ニオブからなってもよい。
【0046】
第2電子輸送材料が含みうる他の物質は、通常、半導体である。第2電子輸送材料が含みうる当該他の物質は、例えば、3.0eV以上のバンドギャップを有する半導体S1である。第2電子輸送材料が半導体S1を含む場合、第2電子輸送層3bを介した光電変換層4への可視光及び赤外光の透過がより確実となる。半導体S1の例は、有機のn型半導体、及び無機のn型半導体である。
【0047】
有機のn型半導体の例は、イミド化合物、キノン化合物、フラーレン及びその誘導体である。無機のn型半導体の例は、金属元素の酸化物、金属元素の窒化物、及びペロブスカイト酸化物である。金属元素の酸化物の例は、Cd、Zn、In、Pb、Mo、W、Sb、Bi、Cu、Hg、Ti、Ag、Mn、Fe、V、Sn、Zr、Sr、Ga及びCrからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物である。金属元素の酸化物の具体例は、TiO2である。金属元素の窒化物の例は、GaNである。ペロブスカイト酸化物の例は、SrTiO3及びCaTiO3である。
【0048】
半導体S1は、第1電子輸送材料に含まれていてもよい。
【0049】
第2電子輸送層3bは、同一の組成を有する複数の層から形成されていても、互いに異なる組成を有する複数の層から形成されていてもよい。
【0050】
第2電子輸送層3bの厚さは、2nm以上350nm以下であってもよい。この範囲内の厚さを有する第2電子輸送層3bは、十分な電子輸送性を有しうるとともに低抵抗を維持できる。第2電子輸送層3bの厚さは、5nm以上350nm以下であってもよく、50nm以上350nm以下であってもよい。
【0051】
第2電子輸送層3bの厚さt2に対する第1電子輸送層3aの厚さt1の比t1/t2は、0.01以上1.0以下であってもよく、0.5以上0.8以下であってもよい。比t1/t2がこれらの範囲にある場合、エネルギーオフセットの低減に基づく上記作用が得られるとともに、双方の電子輸送層3a,3bを含む電子輸送層全体としての電子伝導性の向上が可能である。
【0052】
(基板1)
基板1は、太陽電池100を構成する各層を保持する。基板1は、透明な材料から形成されうる。基材1の例は、ガラス基板及びプラスチック基板である。プラスチック基板は、プラスチックフィルムであってもよい。各層を保持できる十分な強度を第1電極2が有する場合、太陽電池100は基板1を備えていなくてもよい。
【0053】
(第1電極2及び第2電極6)
第1電極2及び第2電極6は、導電性を有する。第1電極2及び第2電極6からなる群より選ばれる少なくとも1つの電極は、透光性を有する。透光性を有する電極は、例えば、可視から近赤外に至る領域に属する光を透過させうる。透光性を有する電極は、例えば、透明であり、かつ導電性を有する金属酸化物および金属窒化物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物から構成されうる。透明であり、かつ導電性を有する金属酸化物及び金属窒化物の例は、(i)リチウム、マグネシウム、ニオブ及びフッ素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素がドープされた酸化チタン、(ii)スズ及びシリコンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素がドープされた酸化ガリウム、(iii)シリコン及び酸素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素がドープされた窒化ガリウム、(iv)インジウム-錫複合酸化物、(v)アンチモン及びフッ素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素がドープされた酸化錫、(vi)ホウ素、アルミニウム、ガリウム及びインジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素がドープされた酸化亜鉛、並びに(vii)これらの複合物である。
【0054】
透光性を有する電極は、透明ではない材料から構成され、かつ光が透過しうるパターン形状を有する電極であってもよい。光が透過しうるパターン形状の例は、線状(ストライプ状)、波線状、格子状(メッシュ状)、及び多数の微細な貫通孔が規則的又は不規則に配列されたパンチングメタル状である。上記パターン形状を有する電極では、電極材料が存在しない開口部分を光が透過できる。透明ではない材料の例は、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム、チタン、鉄、ニッケル、スズ、亜鉛、及びこれらのいずれかを含む合金である。当該材料は、導電性を有する炭素材料であってもよい。
【0055】
太陽電池100は、第1電極2及び光電変換層4の間に第1電子輸送層3aを備えている。このため、第1電極2は、光電変換層4から移動する正孔をブロックする特性を有していなくてもよい。第1電極2は、光電変換層4との間でオーミック接触を形成可能な材料から構成されうる。
【0056】
太陽電池100が正孔輸送層5を備えていない場合、第2電極6は、光電変換層4から移動する電子をブロックする特性(以下、「電子ブロック性」と記載される)を有する。この場合、第2電極6は、光電変換層4とオーミック接触しない。本明細書において、電子ブロック性とは、光電変換層4で発生した正孔のみを通過させ、かつ電子を通過させない特性を意味する。電子ブロック性を有する材料のフェルミエネルギー準位は、光電変換層4の伝導帯下端のエネルギー準位に比べて低い。電子ブロック性を有する材料のフェルミエネルギー準位は、光電変換層4のフェルミエネルギー準位に比べて低くてもよい。電子ブロック性を有する材料の例は、白金、金、及びグラフェンのような炭素材料である。なお、これらの材料は透光性を有さない。したがって、これらの材料を用いて透光性の電極を形成する場合は、例えば、上述のようなパターン形状を有する電極が採用される。
【0057】
太陽電池100が第2電極6及び光電変換層4の間に正孔輸送層5を備える場合、第2電極6は、電子ブロック性を有していなくてもよい。この場合、第2電極6は、光電変換層4との間でオーミック接触を形成可能な材料から構成されうる。
【0058】
第1電極2及び第2電極6の光の透過率は、50%以上であってもよく、80%以上であってもよい。電極を透過する光の波長は、光電変換層4の吸収波長に依存する。第1電極2及び第2電極6のそれぞれの厚さは、例えば、1nm以上1000nm以下である。
【0059】
(光電変換層4)
光電変換層4は、1価のカチオン、2価のカチオン及びハロゲンアニオンにより構成されるペロブスカイト化合物を光電変換材料として含む。ペロブスカイト化合物は、化学式ABX3で示されるペロブスカイト結晶構造体及びそれに類似する結晶を有する構造体である。Aは1価のカチオン、Bは2価のカチオン、及びXはハロゲンアニオンである。
【0060】
1価のカチオンAの例は、アルカリ金属カチオン及び有機カチオンである。カチオンAは、メチルアンモニウムカチオン(CH3NH3 +)、ホルムアミジニウムカチオン(NH2CHNH2 +)、セシウムカチオン(Cs+)、フェニルエチルアンモニウムカチオン(C6524NH3 +)及びグアニジニウムカチオン(CH63 +)からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。カチオンAは、ホルムアミジニウムカチオンであってもよい。ペロブスカイト化合物は、複数の種類のカチオンAを含んでいてもよく、この場合、ホルムアミジニウムカチオンを主として含んでいてもよい。
【0061】
2価のカチオンBは、Snカチオンである。ペロブスカイト化合物は、Snカチオン以外の2価のカチオンBを含んでいてもよいが、この場合、通常、Snカチオンを主として含む。
【0062】
アニオンXは、例えば、ヨウ化物イオンである。ペロブスカイト化合物は、複数の種類のアニオンXを含んでいてもよく、この場合、ヨウ化物イオンを主として含んでいてもよい。
【0063】
光電変換層4は、ペロブスカイト化合物を主として含んでいてもよい。この場合、光電変換層4におけるペロブスカイト化合物の含有率は、例えば50質量%以上であり、70質量%以上、さらには80質量%以上であってもよい。また、この場合、光電変換層4は、ペロブスカイト化合物以外の化合物をさらに含んでいてもよい。ペロブスカイト化合物以外の化合物の例は、ペロブスカイト化合物の欠陥密度を低減するためのクエンチャー物質である。クエンチャー物質の例は、フッ素化合物である。フッ素化合物の例は、フッ化スズである。また、光電変換層4は不純物を含みうる。
【0064】
光電変換層4の厚さは、例えば、100nm以上10μm以下である。光電変換層4の厚さは、100nm以上1000nm以下であってもよい。光電変換層4の厚さは、光電変換層4の光吸収の大きさに依存しうる。
【0065】
(正孔輸送層5)
図3に示される太陽電池100は、第2電極6及び光電変換層4の間に位置する正孔輸送層5をさらに備える。正孔輸送層5は、例えば、有機半導体又は無機半導体により構成される。正孔輸送層5は、互いに異なる材料から構成される複数の層を有していてもよい。
【0066】
有機半導体の例は、3級アミンを骨格内に含むフェニルアミン及びトリフェニルアミン誘導体、並びにチオフェン構造を含むPEDOT化合物である。有機半導体の分子量は限定されない。有機半導体は、高分子体であってもよい。有機半導体の代表的な例は、(i)spiro-OMeTAD、(ii)PTAA、(iii)P3HT:poly(3-hexylthiophene-2,5-diyl)、(iv)PEDOT:poly(3,4-ethylenedioxythiophene) 及び(v)CuPC:Copper(II) phthalocyanine triple-sublimed gradeである。
【0067】
無機半導体の例は、Cu2O、CuGaO2、CuSCN、CuI、NiOx、MoOx、V25、及び酸化グラフェンのようなカーボン系材料である。
【0068】
正孔輸送層5の厚さは、1nm以上1000nm以下であってもよく、10nm以上500nm以下であってもよく、10nm以上50nm以下であってもよい。この範囲の厚さを有する正孔輸送層5は、高い正孔輸送性を有しうる。
【0069】
正孔輸送層5は、支持電解質及び溶媒を含んでいてもよい。支持電解質及び溶媒は、正孔輸送層5中の正孔を安定化させうる。
【0070】
支持電解質の例は、アンモニウム塩、及びアルカリ金属塩である。アンモニウム塩の例は、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、六フッ化リン酸テトラエチルアンモニウム、イミダゾリウム塩、及びピリジニウム塩である。アルカリ金属塩の例は、LiN(SO2n2n+12、LiPF6、LiBF4、過塩素酸リチウム、及び四フッ化ホウ素カリウムである。
【0071】
正孔輸送層5に含まれうる溶媒は、高いイオン伝導性を有していてもよい。当該溶媒は、水系溶媒及び有機溶媒のいずれであってもよい。溶質の安定化の観点からは、当該溶媒は有機溶媒であってもよい。有機溶媒の例は、tert-ブチルピリジン、ピリジン、n-メチルピロリドンのような複素環化合物である。
【0072】
正孔輸送層5に含まれうる溶媒は、イオン液体であってもよい。イオン液体は、単独で、又は他の溶媒と混合されて用いられうる。イオン液体のメリットは、低い揮発性及び高い難燃性である。
【0073】
イオン液体の例は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノボレートのようなイミダゾリウム化合物、ピリジン化合物、脂環式アミン化合物、脂肪族アミン化合物、及びアゾニウムアミン化合物である。
【0074】
本開示の太陽電池は、本開示の作用効果が達成される限り、上述した以外の他の層を備えうる。
【0075】
太陽電池100は、例えば、以下の方法により作製される。
【0076】
まず、第1電極2が、基板1の表面に形成される。第1電極2の形成には、化学気相蒸着(以下、「CVD」と記載される)法、又はスパッタ法が採用可能である。
【0077】
次に、第2電子輸送層3bが、第1電極2の上に形成される。第2電子輸送層3bの形成には、スピンコート法のような塗布法、又はスパッタ法が採用可能である。塗布法により第2電子輸送層3bを形成する場合、例えば、酸化ニオブ原料を所定の割合で溶媒に溶解させた溶液が、スピンコート法のような塗布手法によって、第1電極2の上に塗布される。形成された塗布膜は、所定の温度にて空気中で焼成されうる。所定の温度は、例えば、30℃以上1500℃以下である。所定の温度は300℃を超えていてもよい。酸化ニオブ原料の例は、(i)フッ化ニオブ、塩化ニオブ、臭化ニオブ、及びヨウ化ニオブのようなハロゲン化ニオブ、(ii)酸塩化ニオブ、酸臭化ニオブ、及び酸ヨウ化ニオブのような酸ハロゲン化ニオブ、(iii)ニオブエトキシドのようなニオブアルコキシド、並びに(iv)シュウ酸ニオブアンモニウム、及びシュウ酸水素ニオブである。溶媒の例は、イソプロピルアルコール及びエチルアルコールである。
【0078】
次に、第1電子輸送層3aが、第2電子輸送層3bの上に形成される。第1電子輸送層3aの形成には、スピンコート法のような塗布法、又はスパッタ法が採用可能である。塗布法により第1電子輸送層3aを形成する場合、例えば、酸ハロゲン化ニオブ原料を所定の割合で溶媒に溶解させた溶液が、スピンコート法のような塗布手法によって、第2電子輸送層3bの上に塗布される。形成された塗布膜は、所定の温度にて空気中で焼成されうる。所定の温度は、例えば、30℃以上300℃以下である。ニオブ原料の例は、(i)フッ化ニオブ、塩化ニオブ、臭化ニオブ、及びヨウ化ニオブのようなハロゲン化ニオブ、または(ii)酸塩化ニオブ、酸臭化ニオブ、及び酸ヨウ化ニオブのような酸ハロゲン化ニオブである。溶媒の例は、イソプロピルアルコール及びエチルアルコールである。
【0079】
次に、光電変換層4が、第1電子輸送層3aの上に形成される。ペロブスカイト化合物を光電変換材料として含む光電変換層4の形成には、スピンコート法のような塗布法が採用可能である。光電変換層4を形成する方法の具体的な一例が、以下に示される。当該一例では、化学式(HC(NH221-y-z(C65CH2CH2NH3y(CH63zSnI3で示されるスズ系ペロブスカイト化合物を含む光電変換層が形成される。上記式において、y及びzは、0<y、0<z、及び0<y+z<1を満たす。
【0080】
原料であるSnI2、HC(NH22I(以下、「FAI」と記載される)、C65CH2CH2NH3I(以下、「PEAI」と記載される)、及びCH63I(以下、「GAI」と記載される)が有機溶媒に添加される。有機溶媒の例は、ジメチルスルホキシド(以下、「DMSO」と記載される)及びN,N-ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と記載される)の混合溶媒である。混合溶媒におけるDMSO及びDMFの混合比は、体積比にして、例えば1:1である。SnI2の添加量は、0.8mol/L以上2.0mol/L以下であってもよく、0.8mol/L以上1.5mol/L以下であってもよい。FAIの添加量は、0.8mol/L以上2.0mol/L以下であってもよく、0.8mol/L以上1.5mol/L以下であってもよい。塗布液におけるPEAIのモル濃度は、0.1mol/L以上0.6mol/L以下であってもよく、0.3mol/L以上0.5mol/L以下であってもよい。塗布液におけるGAIのモル濃度は、0.1mol/L以上0.6mol/L以下であってもよく、0.3mol/L以上0.5mol/L以下であってもよい。
【0081】
次に、SnI2、FAI、PEAI及びGAIを含む塗布液が、40℃以上180℃以下の範囲の温度に加熱される。これにより、SnI2、FAI、PEAI及びGAIが混合溶媒に溶解して、塗布液を形成する。得られた塗布液は、室温で放置されうる。
【0082】
次に、塗布液が、スピンコート法により第1電子輸送層3a上に塗布される。次に、第1電子輸送層3a上の塗布膜が焼成される。これにより、光電変換層4が形成される。塗布膜の焼成温度は、例えば40℃以上100℃以下である。塗布膜の焼成時間は、例えば15分以上1時間以下である。スピンコート法による塗布においては、スピンコート中に貧溶媒が滴下されうる。貧溶媒の例は、トルエン、クロロベンゼン及びジエチルエーテルである。
【0083】
塗布液は、フッ化スズのようなクエンチャー物質を0.05mol/L以上0.4mol/L以下の範囲で含んでいてもよい。クエンチャー物質を含む塗布液の使用により、欠陥の少ない光電変換層4が形成可能である。光電変換層4の欠陥の例は、Sn4+の増加に起因するSn空孔の増大である。
【0084】
次に、正孔輸送層5が、光電変換層4の上に形成される。正孔輸送層5の形成には、塗布法、又は印刷法が採用可能である。塗布法の例は、ドクターブレード法、バーコート法、スプレー法、ディップコーティング法、及びスピンコート法である。印刷法の例は、スクリーン印刷法である。複数の材料を混合して膜を形成し、次いで、加圧又は焼成して正孔輸送層5が形成されてもよい。有機の低分子物質、又は無機半導体から構成される正孔輸送層5は、真空蒸着法によって形成されてもよい。
【0085】
次に、第2電極6が、正孔輸送層5の上に形成される。第2電極6の形成には、CVD法又はスパッタ方が採用可能である。
【0086】
このようにして、太陽電池100が得られる。ただし、太陽電池100の作製方法は、上記例に限定されない。
【0087】
(実施例)
以下、本開示の太陽電池が、実施例を参照しながらより詳細に説明される。ただし、本開示の太陽電池は、以下の実施例に示される各態様に限定されない。
【0088】
(実施例1)
図3に示される太陽電池100と同じ構成を有するスズ系ペロブスカイト太陽電池が、作製された。実施例1の太陽電池を構成する各要素は、以下のとおりである。
基板1:ガラス基板
第1電極2:インジウムドープSnO2層(表面抵抗率10Ω/sq)
第2電子輸送層3b:酸化ニオブ層(厚さ10nm)
第1電子輸送層3a:酸フッ化ニオブ層(厚さ8nm)
光電変換層4:HC(NH22SnI3を主として含む層
正孔輸送層5:PTAA層(厚さ10nm)
第2電極6:金層(厚さ120nm)
【0089】
具体的な作製方法が、以下に示される。
【0090】
最初に、基板1及び第1電極2として、インジウムドープSnO2層が表面に形成された導電性ガラス基板(日本板硝子製、厚み:1mm)が準備された。
【0091】
次に、第1電極2の上に、第2電子輸送層3bである酸化ニオブ層が形成された。酸化ニオブ層の形成には、スパッタ法が採用された。酸化ニオブ層の形成に使用された成膜材料は、ジオマテック製であった。
【0092】
次に、第2電子輸送層3bの上に、第1電子輸送層3aである酸フッ化ニオブ層が形成された。酸フッ化ニオブ層の形成には、スピンコート法が採用された。具体的な形成方法は、以下のとおりである。
【0093】
フッ化ニオブ(NbF5、シグマアルドリッチ製)を含むエタノール溶液が調製された。溶液におけるフッ化ニオブの濃度は、0.05mol/Lであった。次に、第2電子輸送層3bの上に、上記溶液80μLがスピンコートにより塗布されて、塗布膜を形成した。次に、塗布膜が、乾燥雰囲気下にて80℃及び120分の条件で焼成されて、酸フッ化ニオブ層を形成した。焼成には、ホットプレートが使用された。
【0094】
次に、第1電子輸送層3aの上に、スズ系ペロブスカイト化合物を含む光電変換層4が形成された。光電変換層4の形成には、スピンコート法が採用された。具体的な形成方法は、以下のとおりである。
【0095】
SnI2、SnF2及びFAI(いずれもシグマアルドリッチ製)を含む塗布液が調製された。塗布液の溶媒は、DMSO及びDMFの混合溶媒とした。溶媒におけるDMSO及びDMFの混合比は、1:1(体積比)であった。塗布液におけるSnI2の濃度は、1.2mol/Lであった。塗布液におけるSnF2の濃度は、1.2mol/Lであった。塗布液におけるFAIの濃度は、1.2mol/Lであった。次に、第1電子輸送層3aの上に、塗布液80μLがスピンコートにより塗布されて、塗布膜を形成した。塗布膜の形成は、窒素雰囲気に保たれたグローブボックスの内部で実施された。塗布膜の厚さは500nmであった。次に、塗布膜が、120℃及び30分の条件で焼成されて、光電変換層4を形成した。焼成には、ホットプレートが使用された。形成された光電変換層4は、化学式HC(NH22SnI3(以下、「FASnI3」と記載される)で示されるスズ系ペロブスカイト化合物を主として含んでいた。化学式FASnI3で示されるペロブスカイト化合物の伝導帯下端のエネルギー準位は、-3.57eVであった。ペロブスカイト化合物の伝導帯下端のエネルギー準位は、項目[エネルギーオフセットの測定]において後述する、電子輸送材料の伝導帯下端のエネルギー準位の測定方法と同様の方法により測定された。ただし、太陽電池の作製過程における、光電変換層4が形成されているが正孔輸送層5が形成される前の状態の積層体が、評価用サンプルとして選択された。
【0096】
次に、光電変換層4の上に、PTAA(シグマアルドリッチ製)を濃度10mg/mLで含む80μLのトルエン溶液がスピンコートにより塗布されて、正孔輸送層5を形成した。正孔輸送層5の形成は、グローブボックスの内部で実施された。走査型電子顕微鏡(FEI製Helios G3)を用いた断面分析により、正孔輸送層5の厚さが確認された。
【0097】
最後に、正孔輸送層5の上に、厚さ120nmの金層が蒸着により堆積されて、第2電極6を形成した。このようにして、実施例1の太陽電池が得られた。
【0098】
(実施例2)
第1電子輸送層3aを形成する際の塗布膜の焼成温度が100℃に変更されたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の太陽電池が得られた。
【0099】
(実施例3)
第1電子輸送層3aを形成する際の塗布膜の焼成温度が120℃に変更されたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の太陽電池が得られた。
【0100】
(実施例4)
第1電子輸送層3aを形成する際の塗布膜の焼成温度が140℃に変更されたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の太陽電池が得られた。
【0101】
(実施例5)
第1電子輸送層3aを形成する際の塗布膜の焼成温度が160℃に変更されたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5の太陽電池が得られた。
【0102】
(実施例6)
第1電子輸送層3aの形成に使用する溶液が、フッ化ニオブを含むエタノール溶液から、塩化ニオブ(NbCl5、シグマアルドリッチ製)を含むDMF溶液に変更されたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例6の太陽電池が得られた。DMF溶液における塩化ニオブの濃度は、0.05mol/Lであった。
【0103】
(実施例7)
第1電子輸送層3aを形成する際の塗布膜の焼成温度が120℃に変更された。また、第1電子輸送層3aの形成に使用する溶液が、フッ化ニオブを含むエタノール溶液から、実施例6にて使用された塩化ニオブを含むDMF溶液に変更された。これらの点以外は、実施例1と同様にして、実施例7の太陽電池が得られた。
【0104】
(比較例1)
第1電子輸送層3aの形成が実施されなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1の太陽電池が得られた。
【0105】
(比較例2)
FASnI3ではなく、化学式HC(NH22PbI3(以下、「FAPbI3」と記載される)で示される鉛系ペロブスカイト化合物を主として含む光電変換層が形成されたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の太陽電池が得られた。比較例2の光電変換層は、SnI2の代わりにPbI2を含み、かつSnF2を含まない塗布液を用いた以外は、実施例1の光電変換層と同様にして形成された。
【0106】
(比較例3)
第1電子輸送層3aの形成に使用する溶液が、フッ化ニオブを含むエタノール溶液から、実施例6にて使用された塩化ニオブを含むDMF溶液に変更されたこと以外は、比較例2と同様にして、比較例3の太陽電池が得られた。
【0107】
[組成の評価]
XPSにより、第1電子輸送層3aの光電変換層側の表面におけるニオブに対するハロゲン元素の組成比X/Nbが評価された。がXPS測定装置(アルバック・ファイ製、商品名:PHI 5000 VersaProbe)を用いて、第1電子輸送層3aの光電変換層側の表面におけるニオブに対するハロゲン元素の組成比X/Nbが評価された。評価は、以下のように実施された。
【0108】
実施例及び比較例の各太陽電池が、第2電極6側の主面から厚さ方向にエッチングされた。エッチングは一定のエッチングレートにて実施され、エッチングサイクルごとに、露出面の元素組成分析がXPSにより実施された。エッチングは、アルゴンを用いたスパッタリングにより実施された。第1電子輸送層3aを構成しているニオブを第1元素として、ニオブ及びスズがほぼ同じモル量で検出された露出面が、第1電子輸送層3aの表面として決定された。第1電子輸送層3aの当該表面は、第1電子輸送層3a及び光電変換層の間の界面でもある。決定された表面における組成比X/Nbが、XPSにより評価された。エッチング及び元素組成分析は、太陽電池を大気に曝露することなく実施された。太陽電池の搬送は、窒素雰囲気下で実施された。
【0109】
[エネルギーオフセットの測定]
第1電子輸送層3aを構成する電子輸送材料と、光電変換層を構成する光電変換材料との間のエネルギーオフセットは、紫外電子分光測定及び透過率測定により評価された。評価は、以下のように実施された。
【0110】
実施例及び比較例の各太陽電池の作製過程における、第1電子輸送層3aが形成されているが光電変換層が形成される前の状態の積層体が、評価用サンプルとして選択された。次に、評価用サンプルに対して、上記XPS測定装置を用いて紫外電子分光測定が実施されて、電子輸送材料の価電子帯上端のエネルギー準位が測定された。また、評価用サンプルに対して、透過率測定装置(島津製作所製、商品名:SlidSpec-3700)を用いて透過率測定が実施されて、測定された透過率から電子輸送材料のバンドギャップが算出された。次に、求められた価電子帯上端のエネルギー準位及びバンドギャップから、電子輸送材料の価電子帯下端のエネルギー準位が算出された。算出された価電子帯下端のエネルギー準位から、光電変換材料であるFASnI3の伝導帯下端のエネルギー準位である-3.5eV、又はFAPbI3の伝導帯下端のエネルギー準位である-4.0eVが差し引かれて、エネルギーオフセットが算出された。
【0111】
[ハロゲンの確認]
TOF-SIMSにより、第1電子輸送層3aにおけるハロゲンの分布が確認された。TOF-SIMS測定装置には、ION-TOF製、TOF.SIMS5-200が使用された。評価は、以下のように実施された。
【0112】
実施例及び比較例の各太陽電池が、第2電極6側の主面から第1電極2に向かう厚さ方向にエッチングされた。エッチングは一定のエッチングレートにて実施され、エッチングサイクルごとに、露出面の元素の分布がTOF-SIMSにより確認された。エッチングは、スパッタリングにより実施された。スパッタイオン源には、GCIB(Gas Cluster Ion Beam)が使用された。エッチング及びTOF-SIMSは、太陽電池を大気に曝露することなく実施された。太陽電池の搬送は、窒素雰囲気下で実施された。
【0113】
図4は、比較例1の太陽電池における光電変換層及び第2電子輸送層3bを含む領域のTOF-SIMSスペクトルを示す。図5は、実施例3の太陽電池における光電変換層4、第1電子輸送層3a及び第2電子輸送層3bを含む領域のTOF-SIMSスペクトルを示す。図4及び図5の横軸に示される数値はエッチングサイクル数であり、評価した露出面の厚さ方向の位置に対応する。なお、測定されたF(すなわち、フッ素)の強度は、他の元素の強度に比べて非常に大きかった。このため、図4及び図5では、Fの強度についてのみ、実測値を10分の1に換算した値が示されている。図4に示されるように、比較例1では、光電変換層4及び第2電子輸送層3bの全域にわたって、非常に弱いFの分布のみが確認された。比較例1において分布しているFは、光電変換層に添加されたSnF2に由来すると考えられた。なお、図4における光電変換層の領域とは、三角形のマーカーで示されるSn25の強度が比較的高い領域(つまり、サイクル数5から70程度)である。また、第2電子輸送層3bの領域とは、菱形のマーカーで示されるNb25の強度が比較的高い領域(つまり、サイクル数70以上)である。一方、図5に示されるように、実施例3では、第1電子輸送層3aにおける光電変換層4側の表面の近傍に、強いFの偏析が確認された。第1電子輸送層3aにおける光電変換層4側の表面におけるFの濃度は、第2電子輸送層3b側の表面におけるFの濃度に比べて高かった。第1電子輸送層3aにおけるFの濃度は、光電変換層4側の表面の近傍においてピークを迎えた後、第2電子輸送層3bの方向に向かって徐々に低下する濃度勾配を有していた。なお、図5において、第1電子輸送層3aにおける光電変換層4側の表面は、サイクル数の増加に伴い、三角形のマーカーで示されるSn25の強度が減少している領域と、菱形のマーカーで示されるNb25の強度が増加している領域とが重なるところ(つまり、サイクル数60から80程度の間)にある。また、第1電子輸送層3aにおける第2電子輸送層3b側の表面は、サイクル数100から150の間にあると推定される。
【0114】
[太陽電池特性の評価]
実施例及び比較例の各太陽電池の変換効率が、ソーラーシミュレータ(分光計器製、商品名:BPS X300BA)により評価された。評価は、照度100mW/cm2の疑似太陽光を使用して実施された。
【0115】
実施例及び比較例の各太陽電池における光電変換材料、光電変換層に接する電子輸送層を構成する電子輸送材料、及びエネルギーオフセットが、以下の表1に示される。
【0116】
【表1】
【0117】
表1に示されるように、スズ系ペロブスカイト化合物であるFASnI3の光電変換材料と、酸フッ化ニオブ又は酸塩化ニオブの電子輸送材料との組み合わせでは、-0.1eVの小さなエネルギーオフセットが達成された。なお、上述のように、電子輸送材料がTiO2である場合、エネルギーオフセットは-0.5eVである。また、酸フッ化ニオブ又は酸塩化ニオブの伝導帯下端のエネルギー準位は、FASnI3の伝導帯下端のエネルギー準位に比べてエネルギー的に深い位置にあった。一方、FASnI3の光電変換材料と、酸化ニオブの電子輸送材料との組み合わせでは、エネルギーオフセットは、より大きく、+0.2eVとなった。また、鉛系ペロブスカイト化合物であるFAPbI3の光電変換材料と、酸フッ化ニオブ又は酸塩化ニオブの電子輸送材料との組み合わせでは、エネルギーオフセットは、さらに大きく、+0.4eVとなった。
【0118】
実施例及び比較例の各太陽電池における、光電変換材料、光電変換層に接する電子輸送層を構成する電子輸送材料、光電変換層との界面における電子輸送層の組成比F/Nb比(モル比)、光電変換層との界面における電子輸送層の組成比Cl/Nb比(モル比)、及び変換効率が、以下の表2に示される。
【0119】
【表2】
【0120】
表2に示されるように、実施例の太陽電池は、比較例の太陽電池に比べて高い変換効率を示した。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本開示の太陽電池は、従来の太陽電池の用途を含む種々の用途に使用できる。
【符号の説明】
【0122】
1 基板
2 第1電極
3 電子輸送層
3a 第1電子輸送層
3b 第2電子輸送層
4 光電変換層
5 正孔輸送層
6 第2電極
100 太陽電池
図1
図2
図3
図4
図5