(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】磁性物選別機構
(51)【国際特許分類】
B03C 1/22 20060101AFI20240202BHJP
B03C 1/00 20060101ALI20240202BHJP
B03C 1/02 20060101ALI20240202BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
B03C1/22
B03C1/00 B
B03C1/00 F
B03C1/02 A
B09B5/00 C ZAB
B09B5/00 F
(21)【出願番号】P 2020165950
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000150291
【氏名又は名称】株式会社中山ホールディングス
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】中山 弘志
(72)【発明者】
【氏名】立石 房雄
(72)【発明者】
【氏名】一丸 知浩
(72)【発明者】
【氏名】副島 達也
(72)【発明者】
【氏名】團 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】有江 暢亮
(72)【発明者】
【氏名】比嘉 基
(72)【発明者】
【氏名】掛谷 誠
(72)【発明者】
【氏名】大野 慎也
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆寛
(72)【発明者】
【氏名】青木 守
(72)【発明者】
【氏名】村上 悠也
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-132552(JP,U)
【文献】特開2005-074360(JP,A)
【文献】特開平08-168690(JP,A)
【文献】実公昭38-023682(JP,Y1)
【文献】実開昭61-055941(JP,U)
【文献】実開昭61-025949(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 1/00-1/32
B09B 1/00-5/00
B09C 1/00-1/10
B02C 9/00-11/08;19/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性物を含む対象物を搬送するベルトコンベアと、
前記ベルトコンベアの搬送終端部の近傍に対向して配設され、前記ベルトコンベアから放出された対象物中に含まれる磁性物を吸着する磁石とを備え、
前記ベルトコンベアは、コンクリート廃棄物を破砕して前記対象物を生成する移動式破砕機の架台から延出して取付けられ、前記磁石が先端部分に取り付けられた駆動アームが、前記移動式破砕機の架台に固着されており、前記駆動アームは、回動により前記磁石を前記ベルトコンベアの搬送終端部近傍から離反した位置へ移動させ、且つ前記搬送終端部近傍へ復帰させ、前記磁石により吸着された磁性物を対象物から分離することを特徴とする磁性物選別機構。
【請求項2】
磁性物を含む対象物を搬送するベルトコンベアと、
前記ベルトコンベアの搬送終端部の近傍に対向して配設され、前記ベルトコンベアから放出された対象物中に含まれる磁性物を吸着する電磁石と、
前記電磁石が搬送終端部に位置する場合と搬送終端部から離反する場合との動作をコンクリート廃棄物の破砕状態に基づいて制御すると共に、前記電磁石をベルトコンベアの搬送終端部に位置する場合に励磁状態に維持すると共に、前記搬送終端部から離反して位置する場合に非励磁状態に制御する制御部とを備え、
前記電磁石により吸着された磁性物を対象物から分離することを特徴とする磁性物選別機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の磁性物選別機構において、
前記ベルトコンベアの進行方向断面が、搬送の途中位置において凹溝状に形成されており、前記対象物の放出直前に平坦に形成される磁性物選別機構。
【請求項4】
請求項
1に記載の磁性物選別機構において、
前記ベルトコンベアで搬送される対象物の状態に応じて、前記磁石の表面と前記ベルトコンベアの表面との距離を200mm~1000mmに調整する調整手段を備える磁性物選別機構。
【請求項5】
請求項1
又は4に記載の磁性物選別機構において、
前記ベルトコンベアから放出される前記対象物の放物線の接線と前記磁石の表面とがなす角度を0度~45度に調整する調整手段を備える磁性物選別機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物から磁性物を分離する磁性物選別機構に関し、特に対象物を搬送するコンベアの搬送終端部近傍に放出された対象物から磁性物を吸着して分離する磁性物選別機構に関する。
【背景技術】
【0002】
砕石処理において、砕石の対象となる原料に含まれる磁性物(例えば、磁性体金属等)を除去する技術が知られている(例えば、特許文献1、2を参照)。特許文献1に示す技術は、ベルト上を搬送される搬送物中に磁性物があるか否かを検出する磁気検出機の出力信号に基づいてマグネットを励磁し、これによって磁性物の選別を行うと共に、前記ベルトの残留磁気を減衰させるための減磁用マグネットを前記ベルトに近接して設けた磁性物選別装置において、前記減磁用マグネットの近傍から前記ベルトに沿って前記磁気検出機の検出領域に至る距離に対応する前記ベルトの走行時間が予めタイマ時間として設定され、かつ、前記ベルトの起動直後から計時動作を行い前記タイマ時間が経過するまでは前記磁気検出器の出力信号を禁止状態にする磁気検知信号禁止手段を具備するものである。
【0003】
特許文献2に示す技術は、ベルトコンベア上を搬送される搬送物の中から、懸吊されたマグネットによって磁性物を吸着し、さらに、前記マグネットを移動することによって前記磁性物を所望の場所へ移送する磁性物選別装置において、前記マグネットの移送方向端部下面に取り付けられ、前記マグネットが吸引位置にある時は前記ベルトコンベアの一方の側縁の上方に沿う第1の側壁と、前記マグネットが吸引位置にある時の前記第1の側壁に対向するように前記ベルトコンベアの他方の側縁の上方に沿って固定配置される第2の側壁とを具備するものである。
【0004】
また、例えば特許文献3に示すように、ビルの解体工事などで発生するコンクリートなどの廃棄材料を砕石に加工する自走式の砕石装置が知られている。ビルの解体現場などは狭い通路を移動したり限られたスペースで廃棄材料を砕石する必要がある。そのため特許文献3に示すような原料の投入から排出までに必要な装置を一体化しつつ、自走することが可能な自走式の砕石装置が重宝される。このような自走式破砕機においては、ベルトコンベアの途中位置に永磁式又は電磁式の磁選機を備え、ベルトコンベアにより対象物が搬送される方向に対して直交する方向に配設されたヒレ付きベルトで、吸着した磁性物をベルトコンベアの側部に排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭61-55940号公報
【文献】実公昭63-23965号公報
【文献】特開2014-151268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記いずれの特許文献においても、ベルトコンベアの途中位置で金属などの磁性物を磁石で吸着する構成となっている。ベルトコンベアで破砕対象物を搬送する際は、対象物と磁性物とが混合して積層された状態となっており、特に対象物の下の方にある磁性物などはうまく吸着できない場合があるという課題を有する。
【0007】
また、特許文献1(明確に記載されていないものの第2図から推察される)及び特許文献2では、吸着した磁性物を排出するためにレールが必要となるためにシステムが大掛かりになり、上述したビルの解体現場などでの使用には不向きであるという課題を有する。
【0008】
さらに、特許文献3に示すような自走式破砕機においては、上述したように吸着した磁性物を排出するためにベルトコンベアの駆動方向に対して直交する方向にヒレ付きベルトを配設することがあり、この場合磁性物と磁石との間の距離が長くなり十分に吸着できない場合があると共に、磁性物を吸着したとしてもベルトコンベアと排出ベルトとの間が狭いためベルトコンベアを傷つけてしまう可能性があるという課題を有する。
【0009】
本発明は、ベルトコンベアの搬送終端部の近傍で当該ベルトコンベアから放出された状態の磁性物を空中で吸着することで対象物に混合されている磁性物を確実に分離することができる磁性物選別機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る磁性物選別機構は、磁性物を含む対象物を搬送するベルトコンベアと、前記ベルトコンベアの搬送終端部の近傍に対向して配設され、前記ベルトコンベアから放出された対象物中に含まれる磁性物を吸着する磁石とを備え、前記磁石により吸着された磁性物を対象物から分離するものである。
【0011】
このように、本発明に係る磁性物選別機構においては、磁性物を含む対象物を搬送するベルトコンベアの搬送終端部の近傍に対向して配設される磁石で、前記ベルトコンベアから放出された対象物中に含まれる磁性物を吸着するため、搬送時は対象物と磁性物とが混合して積層された状態になっていた場合であっても、ベルトコンベアから放出された空中において対象物と磁性物とを離散させ、且つ空中の無接触状態で磁性物を吸着することで、対象物と磁性物とを確実に分離することができるという効果を奏する。
【0012】
本発明に係る磁性物選別機構は、前記ベルトコンベアは、コンクリート廃棄物を破砕して前記対象物を生成する移動式破砕機の架台から延出して取付けられ、前記磁石が先端部分に取り付けられた駆動アームが、前記移動式破砕機の架台に固着されており、前記駆動アームは、回動により前記磁石を前記ベルトコンベアの搬送終端部近傍から離反した位置へ移動させ、且つ前記搬送終端部近傍へ復帰させるものである。
【0013】
このように、本発明に係る磁性物選別機構においては、前記ベルトコンベアが、コンクリート廃棄物を破砕して前記対象物を生成する移動式破砕機の架台から延出して取付けられ、前記磁石が先端部分に取り付けられた駆動アームが、前記移動式破砕機の架台に固着されており、前記駆動アームは、回動により前記磁石を前記ベルトコンベアの搬送終端部近傍から離反した位置へ移動させ、且つ前記搬送終端部近傍へ復帰させるため、ベルトコンベアの先端部である搬送終端近傍での磁石による対象物中の金属を吸着・分離する機構を安定した荷重分布の構造とすることができ、対象物の搬送と共に、この対象物中の金属を分離・排出という機能をも移動式破砕機に付与することができるという効果を奏する。
【0014】
また、吸着した金属を排出するために別途ベルトコンベア等を用意する必要がなく、原料の供給から対象物の生成、搬送、及び金属の分離・排出までを1つの移動式破砕機で完結して行うことが可能となり、特に狭い環境で使用する場合や街中で使用する場合には作業効率を格段に向上させることができるという効果を奏する。
【0015】
本発明に係る磁性物選別機構は、前記ベルトコンベアの進行方向断面が、搬送の途中位置において凹溝状に形成されており、前記対象物の放出直前に平坦に形成されるものである。
【0016】
このように、本発明に係る磁性物選別機構においては、前記ベルトコンベアの進行方向断面が搬送の途中位置において凹溝状に形成されており、対象物の放出直前に平坦に形成されるため、搬送中は凹溝状で外部に溢れることなく多くの対象物を搬送することができると共に、放出直前に底面が平坦になることで積層状態にあった磁性物が二次元平面上に広がって放出されるため、対象物と磁性物とを確実に離散させ磁性物を確実に吸着することができるという効果を奏する。
【0017】
本発明に係る磁性物選別機構は、前記磁石が電磁石であり、当該磁石をベルトコンベアの搬送終端部に位置する場合に励磁状態に維持すると共に、前記搬送終端部から離反して位置する場合に非励磁状態に制御する制御部を備えるものである。
【0018】
このように、本発明に係る磁性物選別機構においては、前記磁石が電磁石であり、当該磁石をベルトコンベアの搬送終端部に位置する場合に励磁状態に維持すると共に、前記搬送終端部から離反して位置する場合に非励磁状態に制御する制御部を備えるため、磁石をベルトコンベア等の他の駆動部分と連動制御することが可能となり、対象物中の金属をより簡単で確実に分離、排出できるという効果を奏する。
【0019】
本発明に係る磁性物選別機構は、前記制御部が、前記磁石が搬送終端部に位置する場合と搬送終端部から離反する場合との動作をコンクリート廃棄物の破砕状態に基づいて制御するものである。
【0020】
このように、本発明に係る磁性物選別機構においては、前記制御部が、前記磁石が搬送終端部に位置する場合と搬送終端部から離反する場合との動作をコンクリート廃棄物の破砕状態(例えば、後述するような破砕の進み具合に応じた破砕量やベルトコンベアで搬送された対象物の量等)に基づいて制御するため、適正なタイミングで磁石の位置を動作させ処理を効率的に行うことができるという効果を奏する。
【0021】
本発明に係る磁性物選別機構は、前記ベルトコンベアで搬送される対象物の状態に応じて、前記磁石の表面と前記ベルトコンベアの表面との距離を200mm~1000mmに調整する調整手段を備えるものである。
【0022】
このように、本発明に係る磁性物選別機構においては、ベルトコンベアで搬送される対象物の状態に応じて、前記磁石の表面と前記ベルトコンベアの表面との距離を200mm~1000mmに調整するため、ベルトコンベアと磁石とが近すぎることで生じる搬送の停滞やベルトコンベアと磁石とが遠すぎることで生じる吸着力の低下による磁性物の残留といった問題を排除して、最適な配置で磁性物を効率良く吸着することが可能になるという効果を奏する。
【0023】
本発明に係る磁性物選別機構は、前記ベルトコンベアから放出される前記対象物の放物線の接線と前記磁石の表面とがなす角度を0度~45度に調整する調整手段を備えるものである。
【0024】
このように、本発明に係る磁性物選別機構においては、ベルトコンベアから放出される前記対象物の放物線の接線と前記磁石の表面とがなす角度を0度~45度に調整するため、搬送される対象物の進行を邪魔せずにスムーズに搬送することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1の実施形態に係る磁性物選別機構が具備された移動式破砕機の側面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る磁性物選別機構が具備された移動式破砕機の上面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る磁性物選別機構におけるベルトコンベア先端部の拡大概略図である。
【
図4】第1の実施形態に係る磁性物選別機構が具備された移動式破砕機のベルトコンベアの長手方向断面を示す模式図である。
【
図5】第1の実施形態に係る磁性物選別機構の駆動制御を行う制御部の構成を示す機能ブロック図である。
【
図6】第1の実施形態に係る磁性物選別機構を備える移動式破砕機の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(本発明の実施形態)
本実施形態に係る磁性物選別機構について、
図1ないし
図6を用いて説明する。本実施形態に係る磁性物選別機構は、コンクリートの廃棄材料などを破砕する破砕装置に具備される機構であり、破砕された対象物を搬送するベルトコンベアの搬送終端部の近傍で対象物に混在している金属などの磁性物を磁石で吸着して分離するものである。本実施形態においては、特に都心部の解体現場など限られた敷地条件の中で作業する際に使用される移動式破砕機の磁性物選別機構について説明する。
【0027】
図1は、本実施形態に係る磁性物選別機構が具備された移動式破砕機の側面図、
図2は、本実施形態に係る磁性物選別機構が具備された移動式破砕機の上面図である。移動式破砕機1は、破砕対象となるコンクリート廃棄材料などの原料が投入されるホッパー2と、ホッパーに投入された原料を破砕するクラッシャ3(クラッシャ3の破砕歯を駆動するモータ3a)と、クラッシャ3の下方に設置される、破砕された対象物を受けて搬送するためのベルトコンベア4とを有する。クラッシャ3の種類は、例えばジョークラッシャ、ロールクラッシャ、コーンクラッシャ、インパクトクラッシャ、竪型破砕機等であり、投入される原料の種類や目的とする生成物に応じて適正なクラッシャを選択することが可能である。ベルトコンベア4は伸縮又は折り畳み可能になっており、破砕時には移動式破砕機1の前方に向かって延出しており、移動時には折り畳まれた状態となっている。
【0028】
クラッシャ3の前方にはホッパー2のゲートの開閉、ベルトコンベア4のフレームの折り畳みの他、後述するクローラ5の駆動、アーム13の旋回、上下移動、折り畳み、及びマグネット14の角度調節等を駆動する油圧ユニット6と、油圧ユニット6、クラッシャ3及びベルトコンベア4等の様々な駆動部分の駆動状態を制御する制御盤7と、クラッシャ3のモータ3aを駆動するための外部電源を引き込むための引き込みボックス7aとを備える。
【0029】
上記の各構成は、移動のためのクローラ5に固定された架台10により支持されており、本実施形態に係る磁性物選別機構11も架台10に支持された状態で設置される。磁性物選別機構11は、架台10に垂直に立設される支柱12と、支柱12の上端部から水平方向に延出するアーム13と、当該アーム13の先端部に配設されるマグネット14とからなる。アーム13は支柱12の上端部に当該支柱12を中心として水平方向に回動自在に連結しており、アーム13の先端部のマグネット14は、吸着面の向き(角度)が3次元的に自在に可変できるようになっている。移動式破砕機1の破砕動作が駆動しており、破砕物がベルトコンベア4を搬送されているときは、マグネット14がベルトコンベア4の搬送終端部分T1の近傍で当該ベルトコンベア4に対向する角度で配置される。
【0030】
ベルトコンベア4上の磁性物を含む破砕された対象物は、当該ベルトコンベア4の駆動に伴って搬送終端部分T1まで搬送され、そのまま慣性力により空中に放出される。放出された対象物には、コンクリートのモルタルや骨材などに混ざって磁性物が含まれている場合があり、空中に放出された瞬間にそれらが離散状態となる。搬送終端部分T1近傍に配置されたマグネット14は、モルタルや骨材などから離散した磁性物を吸着して原料から分離する。
【0031】
破砕処理が進むに連れてマグネット14が吸着する磁性物が増えていき、吸着された磁性物が次第に下方に垂れ下がる状態となる。ある程度吸着された磁性物が増加した時点で破砕作業を一旦停止し、アーム13をベルトコンベア4から離隔するように回動する。マグネット14が電磁式である場合は、電磁石をOFFにすることで吸着していた磁性物を落下させて排出する。マグネット14が永磁式である場合は、例えば磁石の周りを一周するヒレ付きベルトを備え、当該ベルトを回転させることでヒレにより磁性物を磁石から分離し落下させて排出する。なお、磁性物の排出制御については詳細を後述する。
【0032】
なお、ベルトコンベア4のベルト面とマグネット14の吸着面との距離は、近過ぎると吸着した磁性物が対象物の搬送を邪魔してしまい、遠過ぎると磁力が有効に作用しなくなるため、
図3に示すように、破砕対象物や混合される磁性物の状況に応じて200mm~1000mm程度空けて配置されるようにアーム13の長さやマグネット14の位置が設定されることが望ましく、その距離を可変して調整する調整手段を有する構成であってもよい。また、マグネット14の設置角度は、対象物がベルトコンベア4から放出されて描く放物線の接線とマグネット14の表面(吸着面)とがなす角度αを0度(平行)≦α≦45度(対象物の搬送方向に対してマグネット14の表面を搬送方向側に向けた45度)とするのが望ましく、その角度を可変して調整する調整手段を有する構成であってもよい。そうすることで搬送物の進行を邪魔せずにスムーズに搬送することが可能となる。
【0033】
また、
図3に示すように、ベルトコンベア4の駆動速度が変われば対象物が放出される放物線も変わる。つまり、例えばベルトコンベア4の速度が速いほど放物線はベルトコンベア4の延出方向に伸びる。このようにベルトコンベア4の駆動速度や対象物の大きさ(重量、体積、長さ等)に応じて変化する放物線に合わせて最適なマグネット14の吸着面の角度を求めて設定することで、より効率よく対象物から磁性物を分離することが可能となる。
【0034】
図4は、ベルトコンベアの長手方向断面を示す模式図であり、
図4(A)が搬送の途中位置におけるB-B切断線の断面形状であり、
図4(B)が搬送終端部分T1の対象物の放出直前におけるA-A切断線の断面形状である。なお、
図4に示す断面形状はベルトコンベア4の構成のみを記載したものである。
図4(A)に示すように、搬送の途中位置においてはベルトコンベア4のコンベアゴム8の断面がローラ9a~9cに沿って凹溝状になっており、凹み部分に対象物であるモルタルや骨材などに混ざって磁性物が積層されるように載置されて搬送される。搬送終端部分T1になるとコンベアゴム8を巻き付けるドラム15でベルトが巻き取られ、対象物の放出直前の位置では断面が平坦になっている。対象物の放出直前でコンベアゴム8の断面が断面凹溝状から断面平坦に遷移することで積層されていた対象物が二次元的にばらけて離散状態となり、この状態でベルトコンベア4から放出されることで、放出後のマグネット14による磁性物の吸着をスムーズに行うことが可能となる。
【0035】
(本発明の実施形態に係る駆動制御部の構成)
次に、本実施形態に係る磁性物選別機構11の駆動制御について詳細に説明する。
図5は、本実施形態に係る磁性物選別機構11の駆動制御を行う制御部の構成を示す機能ブロック図である。なお、この制御部は、例えばCPUがプログラムを実行することで実現されるものであり、移動式破砕機1の制御盤7に配設されている。
【0036】
制御盤7の制御部20は、磁性物選別機構11を制御するために外部から取得する入力情報21を入力する入力部22と、入力された入力情報21、及び演算に必要なパラメータや設定値を予め記憶するパラメータ情報記憶部23に基づいてアーム13やマグネット14を駆動するための駆動情報を演算する演算部24と、演算部24が演算した駆動情報に基づいてクラッシャ3の駆動を制御するクラッシャ制御部25と、演算部24が演算した駆動情報に基づいてアーム13を駆動するアーム駆動部26と、演算部24が演算した駆動情報に基づいてマグネット14を駆動する磁石駆動部27とを備える。
【0037】
ここで、本実施形態に係る磁性物選別機構11はいくつかの制御方法で駆動制御することが可能である。以下、具体例を挙げて個別に説明する。まず、タイマにより予め設定された経過時間が経過した場合に吸着した磁性物を排出する。この場合、例えば原料が投入されるホッパーのゲートが開閉された時点からタイマーを起動し(例えば、手動によるタイマー起動でもよいし、ゲートに設置されたセンサからのセンシング情報に基づくタイマー起動でもよい)、入力部22がタイマー情報を入力情報21として定期的に取得する。
【0038】
パラメータ情報記憶部23には予め設定された経過時間や磁性物を排出する際のアーム13やマグネット14の駆動情報等が記憶されており、演算部24が、入力部21で取得されたタイマー情報とパラメータ情報記憶部23に記憶された経過時間とを比較する。演算部24は、タイマー情報が経過時間を超えた場合にクラッシャ3を停止するための制御情報、アーム13を磁性物排出位置に回動させるための駆動情報、及び電磁石をOFFするための駆動情報を取得し、クラッシャ3を停止するための制御情報をクラッシャ制御部25に、アーム13の駆動情報をアーム駆動部26に、電磁式のマグネット14を制御するための駆動情報を磁石駆動部27にそれぞれ渡す。
【0039】
クラッシャ制御部25は、クラッシャ3を停止するための制御情報に基づいてクラッシャ3の駆動を停止する。なお、クラッシャ3を停止することで必要に応じて連動する他の駆動部(例えば、フィーダを備える場合は当該フィーダやベルトコンベア4等)も停止されるものとする。クラッシャ3が停止されると、アーム駆動部26が、取得した駆動情報に基づいてアーム13を磁性物の排出位置まで回動させる。排出位置までの情報は、パラメータ情報記憶部23に予め記憶されたものであり、作業現場などに応じて適宜設定されるものとする。所定の位置までアーム13が駆動したら、磁石駆動部27が、取得した駆動情報に基づいて電磁式のマグネット14をOFFにし、吸着した磁性物を落下して排出する。磁性物を排出した後は、アーム駆動部26がアーム13を元の吸着位置まで戻し、磁石駆動部27がマグネット14を励磁状態にし、クラッシャ制御部25がクラッシャ3及びその他の駆動を再起動して破砕処理を再開する。
【0040】
このようなタイマによる制御以外に、破砕量に基づいて磁性物選別機構11を駆動制御することも可能である。破砕量に基づく駆動制御を行う場合は、例えばクラッシャ3の破砕室内にカメラを設置し、カメラで撮像した画像を入力情報21として入力する。演算部24は、取得した画像情報を解析し破砕量を演算する。パラメータ情報記憶部23には、予め所定の破砕量が設定されており、演算した破砕量が予め設定された所定の破砕量を超えた場合にクラッシャ3を停止するための制御情報、アーム13を磁性物排出位置に回動させるための駆動情報、及び電磁石をOFFするための駆動情報を取得する。以降の各制御処理は上述したタイマによる制御処理の場合と同じである。なお、カメラによる画像処理以外にも、例えば超音波センサ等の各種センサにより破砕室内の原料の量をセンシングして入力情報21として入力するようにしてもよい。
【0041】
また、クラッシャ3の駆動モータの電気的特性に基づいて磁性物選別機構11を駆動制御することも可能である。例えばクラッシャ3の駆動モータの電流値を入力情報21として常時入力する。演算部24は、駆動モータが負荷状態から無負荷状態に変化したタイミングを検出し、このタイミングでクラッシャ3を停止するための制御情報、アーム13を磁性物排出位置に回動させるための駆動情報、及び電磁石をOFFするための駆動情報を取得する。以降の各制御処理は上述したタイマによる制御処理の場合と同じである。なお、駆動モータが負荷状態から無負荷状態に変化したかどうかの判断においては、パラメータ情報記憶部23に負荷状態の電流値の範囲と、無負荷状態の電流値の範囲とを予め設定しておき、入力された電流値と比較することで判断するようにしてもよい。
【0042】
さらに、ベルトコンベア4で搬送された対象物の量に基づいて磁性物選別機構11を駆動制御することも可能である。例えばベルトコンベア4に設置したベルトスケールの値を入力情報21として入力する。演算部24は、ベルトスケールから得られる対象物の搬送量を演算し、予めパラメータ情報記憶部23に設定された搬送量と比較する。ベルトスケールで検出された搬送量が、予め設定された搬送量を超えた場合にクラッシャ3を停止するための制御情報、アーム13を磁性物排出位置に回動させるための駆動情報、及び電磁石をOFFするための駆動情報を取得する。以降の各制御処理は上述したタイマによる制御処理の場合と同じである。なお、ベルトコンベア4で搬送された対象物の量は上記ベルトスケールによる測定以外にも、例えばベルトコンベア4の搬送終端部の先に受けホッパを設置し、堆積する対象物の量や重量を入力情報21として入力するようにしてもよい。
【0043】
なお、
図5においては磁石駆動部27が電磁式のマグネット14を駆動する場合について説明したが、上述したように永磁式のマグネット14を駆動するようにしてもよい。その場合、磁石駆動部27は、磁石の周りを一周するヒレ付きベルトを1回転又は複数回転させるように駆動する。
【0044】
また、移動式破砕機1への原料の供給がフィーダで行われる場合がある。この場合は、フィーダのON/OFF状態や供給速度などを入力情報21として入力することで破砕量を演算するようにしてもよい。
【0045】
さらに、安全性を確保するために各制御の段階に応じて作業者や周囲の人に警告等を発する報知手段(図示しない)を備えるようにしてもよい。例えば、クラッシャ3やフィーダが停止され、マグネット14に吸着した磁性物を排出する場合は、オペレータや周囲の作業者にその旨を通知するために音(例えば音声、警告音等)や光(例えばパトライト(登録商標)、点滅等)、およびそれらの組合せにより報知するようにしてもよい。
【0046】
(本発明の実施形態に係る移動式破砕機の動作のフローチャート)
図6は、本実施形態に係る磁性物選別機構を備える移動式破砕機の動作の一例を示すフローチャートである。まず、移動式破砕機1で作業現場まで自走し、当該作業現場において停止した状態でクラッシャ3を起動する(S1)。ホッパー2にコンクリートの廃棄材料等の原料が投入される(S2)。コンクリートの廃棄材料には骨材、モルタル、金属や磁性物等が含まれる。投入された原料がクラッシャ3で破砕処理される(S3)。制御部20の演算部24が磁性物を排出するタイミングであるかどうかを判定し(S4)、磁性物を排出するタイミングではない場合はS2に戻って、引き続き原料を投入して破砕処理を継続する。
【0047】
ステップS4で、演算部24が磁性物を排出するタイミングであると判定した場合は、クラッシャ制御部25がクラッシャ3の駆動を停止する(S5)。クラッシャ3の停止に伴いベルトコンベア4の駆動も停止する。ベルトコンベア4が停止した状態で、アーム駆動部26がアーム13を回動させてマグネット14を磁性物の排出ポイントの位置まで移動する(S6)。磁石駆動部27がマグネット14から磁性物を分離して排出する(S7)。磁性物が排出されるとアーム駆動部26がアーム13を元の位置に戻し(S8)、ステップS1に戻ってクラッシャ制御部25がクラッシャ3を再起動して破砕処理を継続する。全ての原料について破砕処理が完了するまでステップS1~S8の処理が繰り返して行われる。
【符号の説明】
【0048】
1 移動式破砕機
2 ホッパー
3 クラッシャ
3a モータ
4 ベルトコンベア
5 クローラ
6 油圧ユニット
7 制御盤
7a 引き込みボックス
8 コンベアゴム
9a~9c ローラ
10 架台
11 磁性物選別機構
12 支柱
13 アーム
14 マグネット
15 ドラム
20 制御部
21 入力情報
22 入力部
23 パラメータ情報記憶部
24 演算部
25 クラッシャ制御部
26 アーム駆動部
27 磁石駆動部