(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】レーザー地図に基づく作業領域の拡張方法、チップおよびロボット
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240202BHJP
G01S 17/89 20200101ALI20240202BHJP
G01C 21/32 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
G05D1/02 H
G01S17/89
G01C21/32
(21)【出願番号】P 2022539044
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(86)【国際出願番号】 CN2020131196
(87)【国際公開番号】W WO2021243978
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】202010480433.7
(32)【優先日】2020-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520347351
【氏名又は名称】珠海一微半導体股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】AMICRO SEMICONDUCTOR CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 2706,3000 Huandao East Road,Hengqin New District,Zhuhai,Guangdong 519000(CN)
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【氏名又は名称】白井 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】周 和文
(72)【発明者】
【氏名】黄 恵保
(72)【発明者】
【氏名】王 馳
(72)【発明者】
【氏名】陳 卓標
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110412619(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0094870(US,A1)
【文献】特表2020-501282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー地図に基づく作業領域の拡張方法であって、
リアルタイムに構築されたレーザー地図の座標軸方向に沿って、各座標軸方向に延びる領域が、対応して設定された決定待ち境界線によって分割されるように決定待ち境界線を設定するステップ1
であって、各前記座標軸方向は、ロボットの予め設定された位置における検出方向と見なされ、各前記検出方向にリアルタイムに構築されたレーザー地図の画像の画素点集計情報を処理することにより、前記決定待ち境界線の位置を特定し、前記決定待ち境界線が交差して、前記レーザー地図上で隣接する作業領域を形成し、各座標軸方向における前記領域の地図画像の分割が完了するステップ1と、
ロボットが室内作業領域の予め設定された位置に移動すると、各座標軸方向に、予め設定された位置に最も近い決定待ち境界線を選択し、矩形の初期作業領域を画定するステップ2と、
予め設定された拡張優先度条件に従って、優先的に拡張される座標軸方向を1つ選択し、初期作業領域のうち、対応する座標軸方向に垂直に設定された決定待ち境界線を削除してから、拡張後の初期作業領域が、初期作業領域を画定する残りの決定待ち境界線と、削除された決定待ち境界線に最も近い決定待ち境界線とにより画定されて、新たな矩形の作業領域となるように、初期作業領域の拡張を当該座標軸方向に沿って行うステップ3と、
拡張前の初期作業領域の対角線の長さに対する拡張後の初期作業領域の対角線の長さの増加量が、予め設定された重なり寸法誤差値よりも小さいか否かを判断し、小さい場合、拡張を停止するステップ4と、を含むことを特徴とする作業領域の拡張方法。
【請求項2】
拡張前の初期作業領域の対角線の長さに対する拡張後の初期作業領域の対角線の長さの増加量が、予め設定された重なり寸法誤差値よりも小さい場合、前記ステップ3で現在選択された座標軸方向への拡張を停止し、ステップ3に戻って、1つ下の拡張優先度の座標軸方向を選択する、ことを特徴とする請求項1に記載の作業領域の拡張方法。
【請求項3】
拡張前の初期作業領域の対角線の長さに対する拡張後の初期作業領域の対角線の長さの増加量が、前記予め設定された重なり寸法誤差値以上であると判断された場合、拡張後の初期作業領域のうち、前記ステップ3で選択された座標軸方向に垂直な決定待ち境界線を削除してから、再拡張された初期作業領域が、現在削除された決定待ち境界線のある位置から、現在削除された決定待ち境界線に最も近い決定待ち境界線まで拡張されるように、当該拡張後の初期作業領域を当該座標軸方向に沿って拡張し続け、前記ステップ4に戻る、ことを特徴とする請求項2に記載の作業領域の拡張方法。
【請求項4】
前記決定待ち境界線の位置特定およびマーキング方法は、
X軸方向に沿って、縦座標が同じである黒の画素点の数が予め設定された境界閾値を超えると集計されるたびに、当該縦座標が同じである黒の画素点を結ぶことによって形成される前記決定待ち境界線をマーキングし、X軸方向に延びる領域が対応する決定待ち境界線によって分割されるようにするステップと、
Y軸方向に沿って、横座標が同じである黒の画素点の数が予め設定された境界閾値を超えると集計されるたびに、当該横座標が同じである黒の画素点を結ぶことによって形成される前記決定待ち境界線をマーキングし、Y軸方向に延びる領域が対応する決定待ち境界線によって分割されるようにするステップと、を含む、ことを特徴とする請求項3に記載の作業領域の拡張方法。
【請求項5】
前記拡張後の初期作業領域の対角線の長さと前記拡張前の初期作業領域の対角線の長さは、いずれも、画定された矩形の作業領域における、X軸方向に垂直に設定された決定待ち境界線に対応する線分の長さと、Y軸方向に垂直に設定された決定待ち境界線に対応する線分の長さとをピタゴラスの定理に従って二乗和したもの
の平方根である、ことを特徴とする請求項4に記載の作業領域の拡張方法。
【請求項6】
前記予め設定された拡張優先度条件に従って、優先的に拡張される座標軸方向を1つ選択する方法は、
前記初期作業領域を画定する各前記決定待ち境界線に対応する線分上の白の画素点の数を比較し、白の画素点の数が多いほど、前記決定待ち境界線に対して設定される拡張優先度が高くなり、当該決定待ち境界線と直交する座標軸方向を前記優先的に拡張される座標軸方向として優先的に選択するステップを含む、ことを特徴とする請求項4または5に記載の作業領域の拡張方法。
【請求項7】
前記初期作業領域を画定する決定待ち境界線がいずれも非壁境界線分ではなく、かつ前記初期作業領域の内部の孤立障害物線分の長さが、第3の所定数の画素点の数に対応する線分の長さ、及び前記初期作業領域のいずれかの辺の長さの予め設定された比率の長さのうち小さい数値よりも小さい場合、前記初期作業領域を閉領域であると決定し、
前記初期作業領域を画定する前記決定待ち境界線の1つが非壁境界線分である場合、あるいは、前記初期作業領域の内部の孤立障害物線分の長さが、第3の所定数の画素点の数に対応する線分の長さ以上であるか、または、前記初期作業領域の内部の孤立障害物線分の長さが、前記初期作業領域の一辺の長さの予め設定された比率の長さ以上である場合、前記初期作業領域を閉領域ではないと決定し、
前記決定待ち境界線は、白の画素点の数に応じて、非壁境界線分と壁境界線分とに分けられ、非壁境界線分における白の画素点の数は、前記予め設定された境界閾値よりも大きい所定の閾値以上であり、壁境界線分の場合は、所定の閾値未満であり、
レーザー地図には、さらに、走査された孤立障害物線分が存在し、前記孤立障害物線分の長さが、前記初期作業領域の一辺の長さの予め設定された比率の長さ、及び、第3の所定数の画素点の数に対応する線分の長さのうちのいずれか以上であれば、前記孤立障害物線分は、前記初期作業領域内の壁であると判定され、前記壁境界線分としてマーキングされて、他の前記決定待ち境界線と合わせて新たな矩形の作業領域を画定する、ことを特徴とする請求項6に記載の作業領域の拡張方法。
【請求項8】
制御プログラムが内蔵されているチップであって、前記制御プログラムは、請求項1~7のいずれか1項に記載の作業領域の拡張方法を実行するように移動ロボットを制御する、ことを特徴とするチップ。
【請求項9】
レーザーセンサが搭載されたロボットであって、レーザーセンサがリアルタイムで走査したレーザーデータを処理してレーザー地図を構築するための請求項8に記載のチップが内蔵されている、ことを特徴とするロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットのレーザーによる位置特定と地図作成の同時実行の技術分野に関し、特に、レーザー地図に基づく作業領域の拡張方法、チップおよびロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットが室内床面を自律的にナビゲーション移動する過程において、室内床面の輪郭の境界(壁で囲まれた閉領域の環境輪郭)を検出し、検出結果に基づいて室内地図を作成して記憶することにより、後で、記憶された室内地図に基づいて、室内床面の清掃を容易にすることができる。関連技術では、移動ロボットは、障害物(壁または非壁障害物)の位置を検出し、障害物の位置を壁の位置として、少なくとも1つの壁で囲まれた閉領域を室内作業領域とすることができるが、適切な大きさの室内作業領域を拡張することは困難であり、大きな空き地図領域が複数の小領域に分割されて、ロボットの室内作業領域での作業効率が低下することになりやすく、画定された輪郭の境界に沿って縁沿い走行を行って目標位置をサーチするようにロボットを制御することにも不利である。
【発明の概要】
【0003】
上記技術的課題を解決するために、本発明は以下の具体的な構成を開示する。
レーザー地図に基づく作業領域の拡張方法であって、リアルタイムに構築されたレーザー地図の座標軸方向に沿って、各座標軸方向に延びる領域が対応して設定された決定待ち境界線によって分割されるように決定待ち境界線を設定するステップ1と、ロボットが室内作業領域の予め設定された位置に移動すると、各座標軸方向に、予め設定された位置に最も近い決定待ち境界線を選択し、矩形の初期作業領域を画定するステップ2と、予め設定された拡張優先度条件に従って、優先的に拡張される座標軸方向を1つ選択し、初期作業領域のうち、対応する座標軸方向に垂直に設定された決定待ち境界線を削除してから、拡張後の初期作業領域が、初期作業領域を画定する残りの決定待ち境界線と、削除された決定待ち境界線に最も近い決定待ち境界線とにより画定されて、新たな矩形の作業領域となるように、初期作業領域の拡張を当該座標軸方向に沿って行うステップ3と、拡張前の初期作業領域の対角線の長さに対する拡張後の初期作業領域の対角線の長さの増加量が、予め設定された重なり寸法誤差値よりも小さいか否かを判断し、小さい場合、拡張を停止するステップ4と、を含む。
【0004】
制御プログラムが内蔵されているチップであって、前記制御プログラムは、前記作業領域の拡張方法を実行するように移動ロボットを制御する。
【0005】
レーザーセンサが搭載されたロボットであって、レーザーセンサがリアルタイムで走査したレーザーデータを処理してレーザー地図を構築するための上記のチップが内蔵されている。
【0006】
従来技術に比べて、上記構成では、レーザー走査により取得された地図画像の画素情報を用いて、予め決定待ち境界線の位置を特定し、決定待ち境界線で画定された矩形の作業領域の対角線の長さの、現在の拡張過程における増加量に応じて、矩形の作業領域に対する次回の拡張様子を決定し、このようにして、拡張前後の対角線の長さの増加量が重なり閾値条件に達すると、ロボットによる矩形の作業領域の拡張を停止することを実現する。また、適切な大きさの室内作業領域を画定するように拡張を停止することで、部屋領域を分割する過程で、大きくつながっている領域が多すぎる小領域に分割されて、室内作業領域におけるロボットの作業効率が低下することを回避し、さらに、ロボットが作業領域を画定するための演算資源を節約でき、これら孤立した部屋の隅領域の画定分割処理にソフトウェア資源を使うことを回避し、室内床面に画定された作業領域の輪郭の境界位置がすべて壁となることを確保する必要もなくなるため、ロボットの縁沿いナビゲーションの効率を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施例によるレーザー地図上で初期作業領域#1を画定した場合の効果図である。
【
図2】
図1のレーザー地図上で決定待ち境界線L1を削除し、矩形の作業領域#2を画定した場合の効果図である。
【
図3】
図2のレーザー地図上で決定待ち境界線L2を削除し、矩形の作業領域#3を画定した場合の効果図である。
【
図4】
図3のレーザー地図上で決定待ち境界線L3を削除し、矩形の作業領域#4を画定した場合の効果図である。
【
図5】
図4のレーザー地図上で決定待ち境界線M1を削除し、矩形の作業領域#5を画定した場合の効果図である。
【
図6】本発明の実施例によるレーザー地図に基づく作業領域の拡張方法のフローチャートである。
【
図7】本発明の実施例による決定待ち境界線で画定された黒の画素点からなる部屋領域の輪郭を示す白黒地図の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例の構成について、本発明の実施例の図面を参照しながら詳細に説明する。各実施例をさらに説明するために、本発明には図面が提供されている。これらの図面は、本発明の開示の一部であり、主に実施例を説明するために使用され、明細書の関連する説明と合わせて実施例の動作原理を説明することができる。これらの内容を参照することにより、当業者は、他の可能な実施形態および本発明の利点を理解することができるであろう。図中のレーザー地図の画像サイズは、縮尺に合わせて描画されていない。本発明の実施例の方法プログラムの実行主体は、レーザーナビゲーションロボットであり、このレーザーナビゲーションロボットには、障害物を検出可能なレーザーセンサが設けられてもよい。一般的なシーンでは、レーザーナビゲーションロボットは、室内を移動中に、このレーザーナビゲーションロボットに設けられたレーザーセンサにより周囲に障害物が存在するか否かを検出することができ、壁障害物が検出されると、ロボットはこの壁障害物に沿って縁沿い走行行動を実行して目標位置までナビゲーションする。
【0009】
本発明の実施例は、レーザー地図に基づく作業領域の拡張方法を開示し、
図6に示すように、この作業領域の拡張方法は、以下のステップS1~S5を含む。
【0010】
ステップS1では、リアルタイムに構築されたレーザー地図において、予め設定された位置がある局所環境の各座標軸方向に孤立して延びる領域が、対応して設定された決定待ち境界線によって分割されるように、各座標軸方向に垂直な決定待ち境界線を設定し、その後、ステップS2に進む。ここで、各座標軸方向は、レーザーナビゲーションロボットの予め設定された位置における検出方向と見なすことができ、各検出方向にリアルタイムに構築されたレーザー地図の画像の画素点集計情報を処理することにより、決定待ち境界線の位置を特定するとともに、ターゲットオブジェクト又はその部屋領域の輪郭の位置を探し、これらの決定待ち境界線が交差して、レーザー地図上で隣接する作業領域を形成し、各座標軸方向における領域地図画像の分割が完了する。
図1に示すように、縦横に分布する白い境界線は、レーザー地図上で水平方向及び垂直方向に並ぶ白い線に対応しており、それらが交差してレーザー地図上の矩形の領域を形成し、すなわち、これらの決定待ち境界線は、各座標軸方向に延びる領域(
図1の白い枝状の領域)がいずれも対応して設定された決定待ち境界線によって分割されるように、通行可能領域の座標軸方向に広範囲にわたる作業領域(例えば、
図1の回廊を持つ局所領域)を貫通し、壁および非壁領域を仕切るようになる。なお、上記の座標軸方向は、ロボットの現在の移動方向の変化に追従して変化せず、上記の座標軸方向は、ロボットが現在位置している予め設定された位置のみに関連する。
【0011】
ステップS1では、ロボットがリアルタイムに構築したレーザー地図の画像上に、
図1に示すように、前記予め設定された位置Pから、第1の所定数の画素点を距離間隔として、4つの座標軸方向に沿って障害物のヒストグラム集計を行い、対応する方向における画素点と予め設定された位置Pとの相対位置情報を取得し、前記レーザー地図の画像上に、各座標軸方向に決定待ち境界線および孤立障害物線分をマーキングし位置特定を行う。前記孤立障害物線分は、
図1中に散在している小さな白の画素点の集合である、短い障害物線分である。なお、前記障害物のヒストグラム集計方法は、以下を含む。すなわち、ロボットのレーザーセンサーの走査範囲内で、前記第1の所定数の画素点の数を距離間隔として、前記予め設定された位置Pから4つの座標軸方向に沿って順に検出区間を区分し、各座標軸方向の検出区間の大きさは、第1の所定数の画素点の数に対応する線分長距離であり、各前記検出区間内の階調レベルごとに画素点の出現個数を集計し、各検出区間が隣接している。具体的には、前記予め設定された位置Pから、レーザー地図のX軸の正方向、X軸の負方向、Y軸の正方向、Y軸の負方向のそれぞれにおいて画素点集計を行い、各座標軸方向において、15個の画素点からなる距離間隔(等価長さ距離75cm)で障害物のヒストグラム集計を行う。ここで、各画素点に対応する等価長さ距離は5cmであり、第1の所定数は、好ましくは15であり、第1の所定数の画素点の数に対応する距離間隔は75cmである。本実施例では、前記障害物のヒストグラムを用いて、予め設定された位置Pからの距離が異なる前記検出区間内の階調レベルごとに画素点の出現個数を集計することにより、対応する階調レベルの画素点で形成される障害物線分のレーザー地図上での位置特定も実現する。階調レベルは、画素点の階調値を表し、階調値とは、2値化処理されたレーザー地図の階調化対象をRGBに変換するときの、各対象の色値であり、白の画素点と黒の画素点との間を対数関係に応じていくつかのレベルに分け、これを「階調レベル」と呼び、その範囲が一般的に0~255であり、合わせて256階調である。白の画素点の階調値が255となり、黒の画素点の階調値が0となるため、白黒写真はグレースケール画像とも呼ばれる。
【0012】
図7に示すように、部屋領域の輪郭の境界はいずれも黒の画素点からなり、部屋の内部の作業領域は、白の画素点で埋められた空き領域であり、他の地図領域は、他の階調値の画素点からなる。
図1~
図5の実施例では、中央の白色領域および離散的に分布する白色領域を除いた地図領域は、他の階調値の画素点からなり、図示したものは黒であるが、実際には階調値1~254の画素点からなり、部屋の輪郭の境界のみが黒の画素点となる。前記決定待ち境界線の位置特定およびマーキング方法は、以下を含む。すなわち、X軸方向に沿って、縦座標が同じである黒の画素点の数が予め設定された境界閾値を超えると集計されるたびに、これらの縦座標が同じである黒の画素点を結ぶことによって形成される前記決定待ち境界線をマーキングし、X軸方向に延びる領域が対応する決定待ち境界線によって分割されるようにする。実際には、後続のステップでは、この決定待ち境界線が壁ではないと判断されて削除される可能性があり、その場合、領域の過度分割を回避するために対応する分割領域を併合するが、それにしてもX軸方向における局所領域の輪郭特徴を記述することができる。X軸方向に沿って、縦座標が同じである黒の画素点の数が予め設定された境界閾値を超えないと集計されるたびに、前記決定待ち境界線を現在の方向に沿ってマーキングはしない。Y軸方向に沿って、横座標が同じである黒の画素点の数が予め設定された境界閾値を超えると集計されるたびに、これらの横座標が同じである黒の画素点を結ぶことによって形成される前記決定待ち境界線をマーキングし、Y軸方向に延びる領域が対応する決定待ち境界線によって分割されるようにし、そうでなければ、前記決定待ち境界線を現在の方向に沿ってマーキングはしない。これにより、Y軸方向における局所領域の輪郭特徴を記述することができ、後続のステップでは、その方向に決定された決定待ち境界線が壁ではなく、領域を分割する機能を果たすことができないと判断される可能性があり、次の決定待ち境界線をサーチし続けて部屋領域を適切な大きさで画定する必要がある。なお、予め設定された境界閾値は、ロボットの機体のサイズの大きさおよび部屋の通行可能領域の長さと幅の大きさに関連し、実際のニーズに応じて調整することができるが、本実施例では、予め設定された境界閾値を5mとし、これは、500個の縦座標値が同じである画素点または500個の横座標値が同じである画素点に対応する。ここで、各画素点に対応する等価長さ距離は5cmである。
【0013】
図1に示すように、予め設定された位置Pが位置する局所環境の各座標軸方向の延在領域(
図1では放射状に分布する白の凸領域)は、いずれも対応する座標軸方向に垂直に設定された決定待ち境界線によって分割される。ここで、同一の座標軸方向に分布する孤立延在領域が多いほど、この座標軸方向に垂直な決定待ち境界線によって分割されやすくなり、通過可能領域(
図1では白の画素点からなる連続領域)は、同一の座標軸方向のカバー範囲が大きいほど、この座標軸方向に平行に分布する決定待ち境界線によって分割されやすくなる。前記決定待ち境界線は、
図1および
図7においてY軸方向に平行に位置特定されマーキングされた決定待ち境界線M2、決定待ち境界線M1および決定待ち境界線M0と、X軸方向に平行に連続して位置特定されマーキングされた決定待ち境界線L0,L1,L2,L3,L4とを含む。本実施例では、同一の座標軸方向に連続的および/または離散的に分布する黒の画素点の数に応じて、部屋領域内において、ある程度の通行可能性を持つ領域を選択して決定待ち境界線をマーキングし、領域分割がより規則的で適切なものとなり、また、マーキングされた決定待ち境界線により、ロボットが縁沿い走行を行うための矩形の作業領域を画定することができることを確保するように、前記初期作業領域を囲む前記決定待ち境界線を互いに位置合わせしてもよい。
【0014】
ステップS2では、ロボットが部屋領域内の予め設定された位置に移動すると、各座標軸方向に、予め設定された位置に最も近い決定待ち境界線を選択し、予め設定された位置を囲む矩形の初期作業領域を画定し、
図1のレーザー地図における予め設定された位置Pを囲む破線の矩形枠#1を形成すると同時に、矩形の初期作業領域の対角線の長さを算出し、その後、ステップS3に進む。前記ステップS2では、グローバル座標系のX軸の正方向、X軸の負方向、Y軸の正方向およびY軸の負方向のそれぞれにおいて、予め設定された位置Pに最も近い前記決定待ち境界線を選択し、予め設定された位置Pを囲む矩形の作業領域を画定し、
図2に示すように、予め設定された位置Pの左側に最も近い決定待ち境界線M1、予め設定された位置Pの右側に最も近い決定待ち境界線M2、予め設定された位置Pの上側に最も近い決定待ち境界線L0、および予め設定された位置Pの下側に最も近い決定待ち境界線L1により、矩形の初期作業領域#1が画定される。このステップでは、予め設定された位置とそれに最も近い決定待ち境界線との相対位置関係に基づいて、拡張可能な初期作業領域を設定する。
【0015】
ステップS3では、予め設定された拡張優先度条件に従って、優先的に拡張される座標軸方向を1つ選択し、初期作業領域のうち、対応する優先的に拡張される座標軸方向に垂直な決定待ち境界線を削除してから、同一の優先的に拡張される座標軸方向に沿って初期作業領域の拡張を開始し、それによって、拡張後の初期作業領域が、初期作業領域を画定する残りの決定待ち境界線と、削除された決定待ち境界線に最も近い決定待ち境界線とにより画定されて、新たな矩形の作業領域となり、その後、ステップS4に進む。ステップS3で拡張して形成された前記初期作業領域は、前記ステップS2で画定された初期作業領域をカバーする。ステップS2で算出された初期作業領域の対角線の長さは、初期作業領域のうち対応する優先的に拡張される座標軸方向に垂直な決定待ち境界線を削除するまでに保持する。新たな矩形の作業領域を拡張した後、拡張後の初期作業領域の対角線の長さを算出する。好ましくは、前記拡張後の初期作業領域の対角線の長さと前記拡張前の初期作業領域の対角線の長さは、いずれも、画定された矩形の作業領域における、X軸方向に垂直に設定された決定待ち境界線に対応する線分の長さと、Y軸方向に垂直に設定された決定待ち境界線に対応する線分の長さとをピタゴラスの定理に従って二乗和したものであり、すなわち、まず1つの前記矩形の作業領域を囲む長さと幅の二乗和を求め、それから、この二乗和の平方根を求めて、この矩形の作業領域の対角線の長さを得る。本実施例では、後続のステップで拡張前後の矩形の作業領域の重なり程度を判断するために、前記矩形の作業領域の対角線の長さの大きさを用いて、前記決定待ち境界線で画定された作業領域の寸法の大きさを表す。
【0016】
好ましくは、前記ステップS3で選択された優先的に拡張される座標軸方向は、X軸方向であっても、Y軸方向であってもよく、Y軸方向の拡張優先度をX軸方向の拡張優先度よりも高く設定してもよい。前記予め設定された拡張優先度条件に従って、優先的に拡張される座標軸方向を1つ選択する方法は、前記初期作業領域を画定する各前記決定待ち境界線に対応する線分上の白の画素点の数を比較し、白の画素点の数が多いほど、前記決定待ち境界線に対して設定される拡張優先度が高くなり、この決定待ち境界線と直交する座標軸方向を前記優先的に拡張される座標軸方向として優先的に選択するステップを含む。本実施例では、前記初期作業領域を、通行可能領域の面積がより大きい閉領域となるように拡張することを実現し、ロボットの領域境界に沿ったナビゲーションの効率を向上させる。
【0017】
ステップS4では、拡張前の初期作業領域の対角線の長さに対する拡張後の初期作業領域の対角線の長さの増加量が、予め設定された重なり寸法誤差値よりも小さいか否かを判断し、小さい場合、前記ステップS3で現在選択された座標軸方向への拡張を停止し、ステップS3に戻って、1つ下の拡張優先度の座標軸方向を選択して領域の拡張を継続し、そうでなければ、ステップS5に進む。予め設定された重なり寸法誤差値は、長さ試験の経験値である0.2cm~1.6cmに設定される。ステップS4において、比較対象である2つの対角線の長さ間の増加量が予め設定された重なり寸法誤差値よりも小さい場合、重なっていると見なすことができ、これは、先に拡張された座標軸方向に垂直な決定待ち境界線の分布密度を反映し、対角線の長さの増加量が小さいほど、対応する決定待ち境界線の分布が密になり、さらに、この決定待ち境界線が離散的に分布する複数の部屋の隅領域を繋ぐ壁境界に近接することを反映する。
【0018】
ステップS5では、拡張後の初期作業領域のうち、前記ステップS3で選択決定された優先的に拡張される座標軸方向に垂直に設定された決定待ち境界線を削除してから、再拡張された初期作業領域のうち同一の座標軸方向に垂直に設定された決定待ち境界線が、現在削除された決定待ち境界線から、現在削除された決定待ち境界線に最も近い決定待ち境界線まで拡張されるように、当該拡張後の初期作業領域を同一の座標軸方向に沿って拡張し続け、前記ステップS4に戻る。このとき削除された決定待ち境界線は壁境界ではなく、他の決定待ち境界線と合わせて適切な寸法の作業領域を画定することができず、部屋の全体的な輪郭特徴を比較的完全に記述することができず、やはり、優先的に拡張される座標軸方向に沿ってステップS3で拡張された初期作業領域に対して更なる領域拡張を行う必要がある。
【0019】
本実施例のステップでは、拡張後の初期作業領域を、引き続き、ステップS3で選択された優先的に拡張される座標軸方向に拡張する。具体的には、まず、拡張後の初期作業領域のうち、対応する優先的に拡張される座標軸方向に垂直な決定待ち境界線を削除し、つまり、最近の拡張で使用された決定待ち境界線を削除し、次に、この一度拡張された初期作業領域を、同一の優先的に拡張される座標軸方向に沿って再拡張し、それによって、さらに再拡張後の初期作業領域が、今回の拡張前にすでに決定待ち境界線が削除された作業領域の残りの決定待ち境界線と、現在削除された決定待ち境界線に最も近い決定待ち境界線とにより画定されて、新たな矩形の作業領域となり、その後、ステップS4に戻る。上述したステップを繰り返し、今回の作業領域の拡張において、拡張前の矩形の作業領域の対角線の長さに対する拡張後の矩形の作業領域の対角線の長さの増加量が、前記予め設定された重なり寸法誤差値よりも小さくなるまでに、前記ステップS3で現在選択された拡張優先度が最も高い優先的に拡張される座標軸方向の拡張作業を停止しない。このとき、ちょうど適切な室内作業領域が拡張され画定されるようになり、室内床面に形成される閉領域の輪郭の境界位置がすべて壁となることを確保する必要はなく、ロボットの地図演算資源を節約することができる。
【0020】
好ましくは、今回の作業領域の拡張において、拡張前の矩形の作業領域の対角線の長さに対する拡張後の矩形の作業領域の対角線の長さの増加量が、前記予め設定された重なり寸法誤差値よりも小さくなると、ステップS3に戻って、予め設定された拡張優先度条件に従って、1つ下の拡張優先度の座標軸方向を選択して領域の拡張を継続する。本実施例では、前記初期作業領域を、カバー範囲がより広範囲の作業領域となるように拡張することを実現するため、ロボットは、絶えずに修正して拡張される決定待ち境界線に沿って壁境界上の目標位置までナビゲーションすることができ、ロボットの壁境界に沿ったナビゲーションの効率をさらに向上させる。
【0021】
なお、前記矩形の作業領域(1回または複数回の拡張後の前記初期作業領域)を画定するための決定待ち境界線が、部屋内で離散的に分布する孤立隅領域に近いか、或いは部屋の壁境界に近い場合、拡張前後の矩形の作業領域の対角線の長さの増加量が小さくなり、拡張前後の対角線の長さの増加量が、上記の予め設定された重なり寸法誤差値に達すると、前記優先的に拡張される座標軸方向に垂直な決定待ち境界線は、部屋の孤立隅領域に到達したか、或いは部屋の壁境界に更に近づくようになり、この決定待ち境界線が位置する局所領域において、前記優先的に拡張される座標軸方向に位置特定されマーキングされた前記決定待ち境界線が比較的密に分布し、ほぼ重なり合うようになり、このとき、ちょうど部屋の作業領域が適切な大きさで拡張され画定されるようになる。上記の実施例から分かるように、拡張方向に垂直な決定待ち境界線は、すでに複数の部屋の孤立隅領域を繋ぐ境界に到達している。このような領域に位置特定された前記決定待ち境界線は密集しているとともに、部屋の壁境界には達していないが、部屋の壁境界に近づき、このとき、ちょうど部屋内の全体的な作業領域が画定され分割されるようになり、これらの孤立隅領域は、ロボットが部屋内で縁沿い走行したり辺に沿って充電台を探し充電したりすることに影響を与えずに無視されている。
【0022】
従来技術に比べて、上述した実施例では、レーザー走査により取得された地図画像の画素情報を用いて、予め決定待ち境界線の位置を特定し、決定待ち境界線で画定された矩形の作業領域の対角線の長さの、現在の拡張過程における増加量に応じて、矩形の作業領域に対する次回の拡張様子を決定し、このようにして、拡張前後の対角線の長さの増加量が重なり閾値条件に達する(対角線の長さの増加量が上記予め設定された重なり寸法誤差値に達する)と、ロボットによる矩形の作業領域の拡張を停止することを実現する。また、適切な大きさの室内作業領域を画定するように拡張を停止することで、部屋領域を分割する過程で、大きくつながっている領域が多すぎる小領域に分割されて、室内作業領域におけるロボットの作業効率が低下することを回避し、さらに、ロボットが作業領域を画定するための演算資源を節約でき、これら孤立した部屋の隅領域の画定分割処理にソフトウェア資源を使うことを回避し、室内床面に画定された作業領域の輪郭の境界位置がすべて壁となることを確保する必要もなくなるため、ロボットの縁沿いナビゲーションの効率を向上させる。
【0023】
図1と
図2とを比較して分かるように、
図1中の初期作業領域#1は、決定待ち境界線L1上に対応する線分の白の画素点の数が最も多いため、決定待ち境界線L1に対して拡張優先度が高く設定され、この決定待ち境界線L1と直交する座標軸方向であるY軸の正方向を、拡張優先度が最も高い優先的に拡張される座標軸方向として優先的に選択し、それによって、決定待ち境界線L1が優先的に削除されるようになるので、
図2のレーザー地図には、
図1の、予め設定された位置Pの下方に最も近い決定待ち境界線L1は現れないことになる。その後、初期作業領域#1の決定待ち境界線L1に垂直に設定されたY軸の正方向に沿って初期作業領域#1を拡張し、前記ステップS1で位置特定された、削除された決定待ち境界線L1に隣接する決定待ち境界線L2をY軸の正方向にサーチし、
図2に示すように、ステップS3では、決定待ち境界線L2と、決定待ち境界線L1が削除された矩形の作業領域#1の決定待ち境界線M1,M2,L0とを交差させて、拡張後の前記初期作業領域#2を画定し形成し、実際には、ステップS2の初期作業領域#1を、拡張後の前記初期作業領域#2で覆うようにしており、削除された決定待ち境界線が、壁を表しているわけではない。一方、
図2から分かるように、矩形の作業領域#1の対角線と矩形の作業領域#2の対角線との間には、第1の角度が形成され、これら2つの対角線がX軸方向に投影された線分は重なっており、幾何学的三角関数関係によれば、矩形の作業領域#2の対角線の長さは、矩形の作業領域#1の対角線の長さよりも明らかに大きく、2つの対角線の長さの間には、予め設定された重なり寸法誤差値よりも大きい増加量が存在するため、矩形の作業領域#2は依然としてY軸の正方向に拡張し続ける必要がある。本実施例および以下の実施例では、予め設定された重なり寸法誤差値を0.5cmとする。
【0024】
図2と
図3とを比較して分かるように、
図2において、拡張後の初期作業領域で画定された矩形の作業領域#2は、決定待ち境界線L2上に対応する線分の白の画素点の数が相対的に多いため、決定待ち境界線L2に対して拡張優先度が相対的に高く設定され、矩形の作業領域#2に対して新たな拡張が始まる前に、この決定待ち境界線L2と直交する座標軸方向であるY軸の正方向を、現在の優先的に拡張される座標軸方向として優先的に選択し、決定待ち境界線L2を優先的に削除するので、
図3のレーザー地図には、
図2の、Y軸の正方向において予め設定された位置Pに最も近い決定待ち境界線L2は現れないことになる。本実施例における拡張後の初期作業領域は、1回目に拡張された初期作業領域によって形成された矩形の作業領域#2と見なすことができる。次に、矩形の作業領域#2を、矩形の作業領域#2の決定待ち境界線L2に垂直に設定されたY軸の正方向に沿って拡張し、前記ステップS1で位置特定された、削除された決定待ち境界線L2に最も近い決定待ち境界線L3をY軸の正方向にサーチし、
図3に示すように、ステップS5では、決定待ち境界線L3と、決定待ち境界線L2が削除された矩形の作業領域#2の決定待ち境界線M1,M2,L0とを交差させて、2回目に拡張された初期作業領域で形成される矩形の作業領域#3を画定し形成し、実際には、矩形の作業領域#2を、矩形の作業領域#3で覆うようにしており、削除された決定待ち境界線が、壁を表しているわけではない。一方、
図3から分かるように、矩形の作業領域#3の対角線と矩形の作業領域#2の対角線との間には、第2の角度が形成され、これら2つの対角線がX軸方向に投影された線分は重なっている。ここで、第2の角度は、第1の角度よりも小さい。これにより、矩形の作業領域#2の対角線に対して矩形の作業領域#3の対角線がずれる程度は、矩形の作業領域#1の対角線に対して矩形の作業領域#2の対角線がずれる程度よりも小さくなり、幾何学的三角関数関係によれば、矩形の作業領域#2の対角線の長さに対する矩形の作業領域#3の対角線の長さの増加量は、矩形の作業領域#1の対角線の長さに対する矩形の作業領域#2の対角線の長さの増加量よりも小さく(なお、依然として前記予め設定された重なり寸法誤差値よりも大きい)、決定待ち境界線L3は部屋の隅や壁の境界領域に達しておらず、矩形の作業領域#3は部屋の全体領域を画定する程度には達していないので、矩形の作業領域#3は依然としてY軸の正方向に拡張し続ける必要がある。
【0025】
図3と
図4とを比較して分かるように、
図3中の矩形の作業領域#3は、決定待ち境界線L3上に対応する線分の白の画素点の数が多いため、決定待ち境界線L3に対して拡張優先度が相対的に高く設定され、矩形の作業領域#3に対して新たな拡張が始まる前に、この決定待ち境界線L3と直交する座標軸方向であるY軸の正方向を、現在の優先的に拡張される座標軸方向として優先的に選択し、決定待ち境界線L3を優先的に削除するので、
図4のレーザー地図には、
図3の、Y軸の正方向において予め設定された位置Pに最も近い決定待ち境界線L3は現れないことになる。その後、引き続きY軸の正方向に沿って矩形の作業領域#3を拡張するとともに、前記ステップS1で位置特定された、削除された決定待ち境界線L3に最も近い決定待ち境界線L4をY軸の正方向にサーチし、
図4に示すように、ステップS5では、決定待ち境界線L4と、決定待ち境界線L3が削除された矩形の作業領域#3の決定待ち境界線M1,M2,L0とを交差させて、3回目の拡張後の初期作業領域である矩形の作業領域#4を画定し形成し、削除された決定待ち境界線が、壁を表しているわけではない。一方、
図4から分かるように、矩形の作業領域#3の対角線と矩形の作業領域#4の対角線との間には、第3の角度が形成され、これら2つの対角線がX軸方向に投影された線分は重なっている。ここで、第3の角度は、第2の角度よりも小さい。これにより、矩形の作業領域#3の対角線に対して矩形の作業領域#4の対角線がずれる程度は、矩形の作業領域#2の対角線に対して矩形の作業領域#3の対角線がずれる程度よりも小さくなり、幾何学的三角関数関係によれば、矩形の作業領域#3の対角線の長さに対する矩形の作業領域#4の対角線の長さの増加量は、予め設定された重なり寸法誤差値よりも小さく、矩形の作業領域#4の対角線と矩形の作業領域#3の対角線とが誤差許容範囲内で重なるようになることから、決定待ち境界線L3と決定待ち境界線L4が比較的密に分布することを示唆し、部屋の壁境界には達していないが、重なり合っていると見なすことができる。このとき、ちょうど部屋内の適切な寸法の作業領域が拡張及び画定されて分割され、同一の決定待ち境界線の方向に繋がるかまたは孤立して分布する領域は、ロボットが、画定された矩形の作業領域に従って部屋内で縁沿い走行したり辺に沿って充電台を探し充電したりすることに影響を与えることなく無視されてもよく、この場合、上述した実施例で選択されたY軸の正方向への継続拡張を停止し、ステップS3に戻り、1つ下の拡張優先度の座標軸方向、すなわち
図5のX軸の負方向を選択する。
【0026】
図4と
図5とを比較して分かるように、
図4中の矩形の作業領域#4は、決定待ち境界線M1上に対応する線分の白の画素点の数が相対的に多いため、決定待ち境界線M1に対して拡張優先度が相対的に高く設定され、矩形の作業領域#4に対して新たな拡張が始まる前に、この決定待ち境界線M1と直交する座標軸方向であるX軸の負方向を、現在の優先的に拡張される座標軸方向として優先的に選択し、決定待ち境界線M1を優先的に削除するので、
図5のレーザー地図には、
図4の、X軸の負方向において予め設定された位置Pに最も近い決定待ち境界線M1は現れないことになる。その後、矩形の作業領域#4をX軸の負方向に沿って拡張するとともに、前記ステップS1で位置特定された、削除された決定待ち境界線M1に最も近い決定待ち境界線M0をX軸の負方向にサーチし、
図5に示すように、ステップS3では、決定待ち境界線M0と、決定待ち境界線M1が削除された矩形の作業領域#4の決定待ち境界線L4,M2,L0とを交差させて、4回目の拡張後の初期作業領域である矩形の作業領域#5を画定し形成し、削除された決定待ち境界線M1が、壁を表しているわけではない。一方、
図5から分かるように、矩形の作業領域#5の対角線と矩形の作業領域#4の対角線との間には、第4の角度が形成され、第4の角度と第3の角度とが接近し、いずれも小さく、矩形の作業領域#5の対角線と矩形の作業領域#4の対角線とがY軸方向に投影された線分は重なっており、幾何学的三角関数関係によれば、矩形の作業領域#4の対角線の長さに対する矩形の作業領域#5の対角線の長さの増加量は、前記予め設定された重なり寸法誤差値よりも小さく、矩形の作業領域#5の対角線と矩形の作業領域#4の対角線とが誤差許容範囲内で重なるようになることから、決定待ち境界線M0と決定待ち境界線M1が比較的密に分布することを示唆し、部屋の壁境界のすぐ近くで重なり合っていると見なすことができる。このとき、ちょうど部屋の全体的な作業領域が拡張され画定され、決定待ち境界線M0に繋がる離散的に分布する部屋の隅領域は、ロボットが、画定された矩形の作業領域に従って部屋内で縁沿い走行したり辺に沿って充電台を探し充電したりすることに影響を与えることなく無視されてもよく、この場合、上述した実施例で選択されたX軸の負方向への継続拡張を停止する。
【0027】
なお、
図1の前記初期作業領域#1から
図5の矩形の作業領域#5へ拡張する過程において、予め設定された拡張優先度条件に従って、優先的に拡張される座標軸方向を1つ選択し、この座標軸方向へ前記初期作業領域が1回拡張される毎に、当該座標軸方向に垂直となり拡張前の矩形の作業領域を画定する前記決定待ち境界線を1本削除するだけで、拡張前後の矩形の作業領域の対角線の長さの変化量に合わせて拡張停止条件を制御する。
図1~
図5の実施例では、中央の白色領域および離散的に分布する白色領域を除いた地図領域は、他の階調値の画素点からなり、地図画像の輝度が黒に近いように模式的に図示されているが、実際には、1から254までの階調値の画素点からなり、部屋の輪郭の境界のみが黒の画素点となり、
図7の白黒図との比較により、部屋の輪郭の境界及び前記決定待ち境界線が分かる。
【0028】
好ましくは、前記ステップS3を1回目に実行する過程において、前記初期作業領域を画定する決定待ち境界線がいずれも非壁境界線分ではなく、かつ前記初期作業領域の内部の孤立障害物線分の長さが、第3の所定数の画素点の数に対応する線分の長さ、及び前記初期作業領域のいずれかの辺の長さの予め設定された比率の長さのうち小さい数値よりも小さい場合、前記初期作業領域を閉領域であると決定する。前記初期作業領域を画定する前記決定待ち境界線の1つが非壁境界線分である場合、あるいは、前記初期作業領域の内部の孤立障害物線分の長さが、第3の所定数の画素点の数に対応する線分の長さ以上であるか、または、前記初期作業領域の内部の孤立障害物線分の長さが、前記初期作業領域の一辺の長さの予め設定された比率の長さ以上である場合、前記初期作業領域を閉領域ではないと決定する。なお、前記決定待ち境界線は、白の画素点の数に応じて、非壁境界線分と壁境界線分とに分けられ、非壁境界線分における白の画素点の数は、前記予め設定された境界閾値よりも大きい所定の閾値以上であり、壁境界線分の場合は、所定の閾値未満である。レーザー地図には、さらに、走査された孤立障害物線分が存在し、前記孤立障害物線分の長さが、前記初期作業領域の一辺の長さの予め設定された比率の長さ、及び第3の所定数の画素点の数に対応する線分の長さのうちのいずれか以上であれば、前記孤立障害物線分は、前記初期作業領域内の壁であると判定され、さらに、前記壁境界線分としてマーキングされて、他の前記決定待ち境界線と合わせて新たな矩形の作業領域を画定し、この新たな矩形の作業領域は、前記初期作業領域または拡張後の前記初期作業領域と重複する領域を有する可能性がある。本実施例では、現在の作業領域を囲む障害境界線分の性質および現在の作業領域の内部の孤立障害物線分の長さによって、閉領域の環境特性を決定する。ここで、閉領域を構成する線分が壁であるか否かを判断することで、他の領域の障害物直線および内部の孤立障害物による干渉作用を排除することができ、一方、現在の作業領域の内部の前記孤立障害物線分の長さが、第3の所定数の画素点の数に対応する線分の長さ、及びこの現在の作業領域の一辺の長さの予め設定された比率の長さの両方よりも小さいか否かを判断することで、壁による干渉作用との誤判断を回避し、閉領域との判断の正確さを高める。現在の作業領域が前記初期作業領域である場合、第3の所定数の画素点に対応する線分の長さは50cmとすることが好ましく、前記予め設定された比率は1/3である。
【0029】
制御プログラムが内蔵されているチップであって、前記制御プログラムは、前記作業領域の拡張方法を実行するように移動ロボットを制御する。本明細書に記載された実施例は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、またはそれらの任意の組み合わせによって実現され得ることが理解されるであろう。ハードウェアによる実現の場合、処理ユニットは、1つ又は複数の特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、本明細書に記載の機能を実行するように設計された他の電子ユニット、またはそれらの組み合わせで実現されてもよい。実施例が、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェアまたはマイクロコード、プログラムコードまたはコードスニペットで実現される場合、それらは、記憶コンポーネントのような機械読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。
【0030】
レーザーセンサが搭載されたロボットであって、レーザーセンサがリアルタイムで走査したレーザーデータを処理してレーザー地図を構築するための上述したチップが内蔵されている。
【0031】
フローチャートに示され、または本明細書で別の方法で説明されている論理および/またはステップは、例えば、論理機能を実現するために用いられる実行可能な命令の順序付きリストと読み替えてもよく、命令実行システム、装置、またはデバイス(例えば、コンピュータベースのシステム、プロセッサを含むシステム、または命令実行システム、装置、またはデバイスから命令をフェッチし、実行することができる他のシステム)の使用のために、またはそれらに合わせて使用するために、任意のコンピュータ読み取り可能な媒体で具現化され得る。本明細書の場合、「コンピュータ読み取り可能な媒体」は、命令実行システム、装置、または装置のために、またはそれらに合わせて使用するために、プログラムを含む、記憶する、通信する、伝播する、または伝送することができる任意の装置であってもよい。コンピュータ読み取り可能な媒体のより具体的な例(非網羅的リスト)としては、1つ又は複数の配線を有する電気的接続部(電子装置)、ポータブルコンピュータディスクカートリッジ(磁気装置)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、光ファイバ装置、およびポータブル光ディスクリードオンリーメモリ(CDROM)が挙げられる。さらに、コンピュータ読み取り可能な媒体は、プログラムを印刷することができる紙または他の適宜な媒体であってもよく、これは、前記プログラムが、例えば、紙または他の媒体を光学的に走査し、次いで編集、翻訳、または必要に応じて他の適宜な方法で処理することによって、電子的に取得され、コンピュータメモリに記憶されることができるからである。
【0032】
上述した実施例は、本発明の技術的思想及び特徴を説明するためのものに過ぎず、その目的は、当業者が本発明の内容を理解し、適宜に実施できるようにすることであり、これによって本発明の保護範囲が制限されることはない。本発明の精神や本質に基づいて行われた均等な変形又は変更は、すべて本発明の保護の範囲に含まれるものとする。