(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】口腔内カメラシステム及び画像表示方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/247 20060101AFI20240202BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20240202BHJP
A61B 1/045 20060101ALI20240202BHJP
A61C 19/04 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
A61B1/247
A61B1/00 552
A61B1/045 622
A61B1/045 618
A61C19/04 Z
(21)【出願番号】P 2023500919
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2022006364
(87)【国際公開番号】W WO2022176943
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2021026041
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】大塚 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 正人
(72)【発明者】
【氏名】小川 智輝
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】粟飯原 雅之
(72)【発明者】
【氏名】船本 和宏
(72)【発明者】
【氏名】三木 匡
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/108276(WO,A1)
【文献】特開2019-141582(JP,A)
【文献】特表2018-534086(JP,A)
【文献】特開2012-143484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
A61C 1/00 - 5/00
A61C 5/40 - 5/68
A61C 5/90 - 7/36
A61C 19/00 -19/10
A61G 15/14 -15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル部と、画像データを生成する撮像素子を含むヘッド部と、前記ハンドル部と前記ヘッド部とを接続するネック部とを含み、口腔内の歯牙を撮影して画像データを生成する撮影部と、
前記撮影部の姿勢を検出するセンサと、
前記センサで検出された前記撮影部の姿勢に基づき、前記画像データを画像処理する画像処理部と、
前記画像処理を行った後の前記画像データを表示する表示部と、を備え、
前記画像処理部は、
前記撮影部の光軸に垂直な撮像面と、鉛直軸に沿う鉛直上向きの第1方向とがなす第1角度が予め定められた第2角度未満の場合、
前記ハンドル部から前記ヘッド部に向かう第2方向と、前記第1方向とがなす第3角度だけ前記画像データを回転することで、前記鉛直軸に対して鉛直上側が画像の上側になるように前記画像データを回転する
口腔内カメラシステム。
【請求項2】
前記画像処理部は、
前記第1角度が前記第2角度以上の場合、
前記画像データの内の前記ヘッド部側に対応する側が画像の上側になるように前記画像データを回転する
請求項1記載の口腔内カメラシステム。
【請求項3】
前記画像処理部は、
前記第1角度が前記第2角度未満の場合には、前記表示部に表示されている画像が、前記撮影部がユーザの口腔内において歯牙の側面を撮影した画像であることを前記表示部に表示し、
前記第1角度が前記第2角度以上の場合には、前記表示部に表示されている画像が、前記撮影部がユーザの口腔内において歯牙を歯冠側から撮影した画像であることを前記表示部に表示する
請求項1又は2記載の口腔内カメラシステム。
【請求項4】
前記画像処理部は、
前記第1角度と前記第2角度との差が予め定められた値未満の場合、前記画像データから歯牙領域と、前記歯牙領域に沿った歯茎領域を検出し、
前記歯茎領域が前記歯牙領域に対して頬側と舌側の両側に検出された場合には、前記画像データの内の前記ヘッド部側に対応する側が画像の上側になるように前記画像データを回転し、
前記歯茎領域が前記歯牙領域に対して頬側または舌側の一方の側のみ検出された場合には、
前記第1方向と、前記撮影部の光軸に沿い前記撮影部から被写体に向かう第3方向とがなす第4角度の余弦を算出し、
算出した余弦の値が正の場合、前記画像データにおいて前記歯茎領域より前記歯牙領域が下になるように前記画像データを回転し、
前記余弦の値が負の場合、前記画像データにおいて前記歯茎領域より前記歯牙領域が上になるように前記画像データを回転する
請求項1~3のいずれか1項に記載の口腔内カメラシステム。
【請求項5】
前記画像処理部は、さらに前記画像データの左右を反転し、
前記表示部は、回転及び反転後の前記画像データを表示する
請求項1~4のいずれか1項に記載の口腔内カメラシステム。
【請求項6】
前記画像処理部は、さらに、前記表示部の姿勢に基づき、前記画像データを回転する
請求項1~5のいずれか1項に記載の口腔内カメラシステム。
【請求項7】
前記撮影部の所定の姿勢である初期姿勢を取得し、
前記初期姿勢を用いて前記第1方向を補正する
請求項1~6のいずれか1項に記載の口腔内カメラシステム。
【請求項8】
前記所定の姿勢は、ユーザの姿勢と前記撮影部の姿勢とが予め定められた関係となる前記撮影部の姿勢である
請求項7記載の口腔内カメラシステム。
【請求項9】
前記所定の姿勢は、前記ユーザの前額面と前記撮影部の前記撮像面とが平行であり、かつ、前記撮像面における平面視において前記ユーザの垂直軸と前記第2方向とが一致又は直交する状態である
請求項8記載の口腔内カメラシステム。
【請求項10】
前記所定の姿勢は、予め定められた歯牙と前記撮影部の前記撮像面とを平行に正対させ、かつ、前記撮像面における平面視において前記第2方向と前記予め定められた歯牙の高さ方向とが一致又は直交する状態である
請求項7記載の口腔内カメラシステム。
【請求項11】
ハンドル部と、画像データを生成する撮像素子を含むヘッド部と、前記ハンドル部と前記ヘッド部とを接続するネック部とを含む撮影部が、口腔内の歯牙を撮影して画像データを生成し、
前記撮影部の姿勢を検出し、
検出された前記撮影部の姿勢に基づき、前記画像データを画像処理し、
前記画像処理を行った後の前記画像データを表示し、
前記画像処理では、
前記撮影部の光軸に垂直な撮像面と、鉛直軸に沿う鉛直上向きの第1方向とがなす第1角度が予め定められた第2角度未満の場合、
前記ハンドル部から前記ヘッド部に向かう第2方向と、前記第1方向とがなす第3角度だけ前記画像データを回転することで、前記鉛直軸に対して鉛直上側が画像の上側になるように前記画像データを回転する
画像表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、口腔内カメラシステム及び画像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内の歯牙の画像を撮影する口腔内カメラシステムが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような、口腔内カメラシステムでは、撮影された歯牙の画像を適切に表示できることが望まれている。
【0005】
そこで、本開示は、撮影された歯牙の画像を適切に表示できる口腔内カメラシステム及び画像表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る口腔内カメラシステムは、ハンドル部と、画像データを生成する撮像素子を含むヘッド部と、前記ハンドル部と前記ヘッド部とを接続するネック部とを含み、口腔内の歯牙を撮影して画像データを生成する撮影部と、前記撮影部の姿勢を検出するセンサと、前記センサで検出された前記撮影部の姿勢に基づき、前記画像データを画像処理する画像処理部と、前記画像処理を行った後の前記画像データを表示する表示部と、を備え、前記画像処理部は、前記撮影部の光軸に垂直な撮像面と、鉛直軸に沿う鉛直上向きの第1方向とがなす第1角度が予め定められた第2角度未満の場合、前記ハンドル部から前記ヘッド部に向かう第2方向と、前記第1方向とがなす第3角度だけ前記画像データを回転することで、前記鉛直軸に対して鉛直上側が画像の上側になるように前記画像データを回転する。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、撮影された歯牙の画像を適切に表示できる口腔内カメラシステム及び画像表示方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る口腔内カメラシステムにおける口腔内カメラの斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る口腔内カメラシステムの概略的構成図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る口腔内カメラシステムにおける口腔内撮影動作の流れを示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る携帯端末の機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る画像処理のフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施の形態に係る口腔内カメラと撮像面との関係を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る鉛直軸と撮像面との角度αの例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施の形態に係る鉛直軸と撮像面との角度αの例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施の形態に係る口腔内カメラの軸方向LBの例を示す図である。
【
図10】
図10は、実施の形態に係る方向LBと方向LSの例を示す図である。
【
図11】
図11は、実施の形態に係る方向LBと方向LSの例を示す図である。
【
図14】
図14は、実施の形態に係る回転処理の別の具体例のフローチャートである。
【
図15】
図15は、実施の形態に係る携帯端末の傾きを示す図である。
【
図16】
図16は、実施の形態の変形例1に係る画像処理のフローチャートである。
【
図17】
図17は、実施の形態の変形例1に係る表示例を示すである。
【
図18】
図18は、実施の形態の変形例1に係る表示例を示すである。
【
図19】
図19は、実施の形態の変形例2に係る画像処理のフローチャートである。
【
図20】
図20は、実施の形態の変形例2に係る撮影された画像の例を示す図である。
【
図21】
図21は、実施の形態の変形例2に係る撮影された画像の例を示す図である。
【
図22】
図22は、実施の形態の変形例2に係る角度γの例を示す図である
【
図23】
図23は、実施の形態の変形例2に係る角度γの例を示す図である
【
図24】
図24は、実施の形態の変形例3に係る、起立した状態のユーザに対する射影面の関係を示す図である。
【
図25】
図25は、実施の形態の変形例3に係る、口腔内カメラの使用時におけるユーザの姿勢の例を示す図である。
【
図26】
図26は、実施の形態の変形例3に係る、口腔内カメラの使用時におけるユーザの姿勢の例を示す図である。
【
図27】
図27は、実施の形態の変形例3に係る画像処理のフローチャートである。
【
図28】
図28は、実施の形態の変形例3に係る初期姿勢の例を示す図である。
【
図29】
図29は、実施の形態の変形例3に係る初期姿勢の設定画面の一例を示す図である。
【
図30】
図30は、実施の形態の変形例3に係る初期姿勢の設定画面の一例を示す図である。
【
図31】
図31は、実施の形態の変形例3に係る初期姿勢の例を示す図である。
【
図32】
図32は、実施の形態の変形例3に係る姿勢の補正の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一態様に係る口腔内カメラシステムは、ハンドル部と、画像データを生成する撮像素子を含むヘッド部と、前記ハンドル部と前記ヘッド部とを接続するネック部とを含み、口腔内の歯牙を撮影して画像データを生成する撮影部と、前記撮影部の姿勢を検出するセンサと、前記センサで検出された前記撮影部の姿勢に基づき、前記画像データを画像処理する画像処理部と、前記画像データを表示する表示部と、を備え、前記画像処理部は、前記撮影部の光軸に垂直な撮像面と、鉛直軸に沿う鉛直上向きの第1方向とがなす第1角度が予め定められた第2角度未満の場合、前記ハンドル部から前記ヘッド部に向かう第2方向と、前記第1方向とがなす第3角度だけ前記画像データを回転することで、前記鉛直軸に対して鉛直上側が画像の上側になるように前記画像データを回転する。
【0010】
これによれば、当該口腔内カメラシステムは、撮影された歯牙の画像を適切に表示できる。例えば、ユーザは、上下の関係が実際と同じ画像を確認できるので、直感的に歯牙の状態を把握できる。
【0011】
例えば、前記画像処理部は、前記第1角度が前記第2角度以上の場合、前記画像データの内の前記ヘッド部側に対応する側が画像の上側になるように前記画像データを回転してもよい。
【0012】
例えば、前記画像処理部は、前記第1角度が前記第2角度未満の場合には、前記表示部に表示されている画像が、前記撮影部がユーザの口腔内において歯牙の側面を撮影した画像であることを前記表示部に表示し、前記第1角度が前記第2角度以上の場合には、前記表示部に表示されている画像が、前記撮影部がユーザの口腔内において歯牙を歯冠側から撮影した画像であることを前記表示部に表示してもよい。
【0013】
これによれば、当該口腔内カメラシステムは、歯牙の撮影方向を表示する。これにより、ユーザは、現在撮影中の歯牙の撮影方向を容易に認識できるので、ユーザの利便性を向上できる。
【0014】
例えば、前記画像処理部は、前記第1角度と前記第2角度との差が予め定められた値未満の場合、前記画像データから歯牙領域と、前記歯牙領域に沿った歯茎領域を検出し、前記歯茎領域が前記歯牙領域に対して頬側と舌側の両側に検出された場合には、前記画像データの内の前記ヘッド部側に対応する側が画像の上側になるように前記画像データを回転し、前記歯茎領域が前記歯牙領域に対して頬側または舌側の一方の側のみ検出された場合には、前記第1方向と、前記撮影部の光軸に沿い前記撮影部から被写体に向かう第3方向とがなす第4角度の余弦を算出し、算出した余弦の値が正の場合、前記画像データにおいて前記歯茎領域より前記歯牙領域が下になるように前記画像データを回転し、前記余弦の値が負の場合、前記画像データにおいて前記歯茎領域より前記歯牙領域が上になるように前記画像データを回転してもよい。
【0015】
これによれば、当該口腔内カメラシステムは、第1角度が第2角度付近の場合には、歯茎領域と歯牙領域との関係と、第4角度の余弦とに基づき、画像データを回転する。これにより、当該口腔内カメラシステムは、第1角度が第2角度付近の場合における判定精度を向上できる。
【0016】
例えば、前記画像処理部は、さらに前記画像データの左右を反転し、前記表示部は、回転及び反転後の前記画像データを表示してもよい。
【0017】
これによれば、例えば、ユーザは、鏡に映した場合と同じ状態で、自身の歯牙を確認できるので、直感的に歯牙の状態を把握できる。
【0018】
例えば、前記画像処理部は、さらに、前記表示部の姿勢に基づき、前記画像データを回転してもよい。
【0019】
これによれば、例えば、ユーザは、上下の関係が実際と同じ画像を確認できるので、直感的に歯牙の状態を把握できる。
【0020】
例えば、前記撮影部の所定の姿勢である初期姿勢を取得し、前記初期姿勢を用いて前記第1方向を補正してもよい。
【0021】
これによれば、当該口腔内カメラシステムは、ユーザの姿勢に応じて撮影部の姿勢を補正することで、処理の精度を向上できる。
【0022】
例えば、前記所定の姿勢は、ユーザの姿勢と前記撮影部の姿勢とが予め定められた関係となる前記撮影部の姿勢であってもよい。
【0023】
例えば、前記所定の姿勢は、前記ユーザの前額面と前記撮影部の前記撮像面とが平行であり、かつ、前記撮像面における平面視において前記ユーザの垂直軸と前記第2方向とが一致又は直交する状態であってもよい。
【0024】
例えば、前記所定の姿勢は、予め定められた歯牙と前記撮影部の前記撮像面とを平行に正対させ、かつ、前記撮像面における平面視において前記第2方向と前記予め定められた歯牙の高さ方向とが一致又は直交する状態であってもよい。
【0025】
これによれば、ユーザは初期姿勢の取得を容易に行える。また、初期姿勢の精度が向上することで補正の精度を向上できる。
【0026】
また、本開示の一態様に係る画像表示方法は、ハンドル部と、画像データを生成する撮像素子を含むヘッド部と、前記ハンドル部と前記ヘッド部とを接続するネック部とを含む撮影部が、口腔内の歯牙を撮影して画像データを生成し、前記撮影部の姿勢を検出し、検出された前記撮影部の姿勢に基づき、前記画像データを画像処理し、前記画像データを表示し、前記画像処理では、前記撮影部の光軸に垂直な撮像面と、鉛直軸に沿う鉛直上向きの第1方向とがなす第1角度が予め定められた第2角度未満の場合、前記ハンドル部から前記ヘッド部に向かう第2方向と、前記第1方向とがなす第3角度だけ前記画像データを回転することで、前記鉛直軸に対して鉛直上側が画像の上側になるように前記画像データを回転する。
【0027】
これによれば、当該画像表示方法は、撮影された歯牙の画像を適切に表示できる。例えば、ユーザは、上下の関係が実際と同じ画像を確認できるので、直感的に歯牙の状態を把握できる。
【0028】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0029】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0030】
なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面及び以下の説明を提供するものであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0031】
(実施の形態)
図1は、本実施の形態に係る口腔内カメラシステムにおける口腔内カメラの斜視図である。
図1に示すように、口腔内カメラ10は、片手で取り扱うことが可能な歯ブラシ状の筺体を備え、その筺体は、歯列撮影時にユーザの口腔内に配置されるヘッド部10aと、ユーザが把持するハンドル部10bと、ヘッド部10aとハンドル部10bとを接続するネック部10cとを含んでいる。
【0032】
撮影光学系12は、ヘッド部10aとネック部10cとに組み込まれている。撮影光学系12は、その光軸LA上に配置された撮像素子14とレンズとを含んでいる(
図1には図示せず)。
【0033】
撮像素子14は、例えばC-MOSセンサまたはCCD素子などの撮影デバイスであって、レンズによって歯牙の像が結像される。その結像した像に対応する信号(画像データ)を、撮像素子14は外部に出力する。
【0034】
また、口腔内カメラ10は、撮影時に撮影対象の歯牙に対して光を照射する照明デバイスとして、複数の第1~第4のLED26A~26Dを搭載している。第1~第4のLED26A~26Dは、例えば白色LEDである。
【0035】
図2は、本実施の形態に係る口腔内カメラシステムの概略的構成図である。
図2に示すように、本実施の形態に係る口腔内カメラシステムは、概略的には、口腔内カメラ10を用いて歯列を撮影し、その撮影画像に対して画像処理を実行するように構成されている。
【0036】
図2に示すように、口腔内カメラシステムは、口腔内カメラ10と、携帯端末70と、クラウドサーバ80とを含んでいる。携帯端末70は、例えば、無線通信可能なスマートフォン又はタブレット端末等である。携帯端末70は、入力デバイス及び出力デバイスとして、例えば歯列画像を表示可能なタッチスクリーン72を備える。携帯端末70は、口腔内カメラシステムのユーザインタフェースとして機能する。
【0037】
クラウドサーバ80は、携帯端末70に対してインターネットなどを介して通信可能なサーバであって、携帯端末70に口腔内カメラ10を使用するためのアプリケーションを提供する。例えば、ユーザがアプリケーションをクラウドサーバ80からダウンロードして携帯端末70にインストールする。また、クラウドサーバ80は、口腔内カメラ10によって撮影された歯列画像を携帯端末70を介して取得する。
【0038】
口腔内カメラシステムは、システムの制御を行う主要部分として中央制御部50と、撮像素子14からの歯列画像を画像処理する画像処理部52と、複数のLED26A~26Dを制御するLED制御部54と、構図調節機構のアクチュエータ36と焦点調節機構のアクチュエータ40を制御するレンズドライバ56と、位置センサ90とを含んでいる。
【0039】
また、口腔内カメラシステムは、携帯端末70と無線通信を行う無線通信モジュール58と、中央制御部50などに電力供給を行う電源制御部60とを有する。
【0040】
口腔内カメラシステムの中央制御部50は、例えば、口腔内カメラ10のハンドル部10bに搭載されている。例えば、また、中央制御部50は、後述する様々な処理を実行するCPUやMPUなどのコントローラ62と、コントローラ62に様々な処理を実行させるためのプログラムを記憶するRAMやROMなどのメモリ64とを含んでいる。なお、メモリ64には、プログラム以外に、撮像素子14によって撮影された歯列画像(画像データ)や種々の設定データなどが記憶される。
【0041】
画像処理部52は、例えば、口腔内カメラ10のハンドル部10bに搭載され、中央制御部50のコントローラ62からの制御信号に基づいて、撮像素子14が撮影した歯列画像(画像データ)を取得し、その取得した歯列画像に対して画像処理を実行し、その画像処理後の歯列画像を中央制御部50に出力する。画像処理部52は、例えば回路で構成され、例えば歯列画像に対してノイズ除去、AWB(Automatic White Balance)処理などの画像処理を実行する。画像処理部52から出力された歯列画像を、コントローラ62は、無線通信モジュール58を介して携帯端末70に送信する。携帯端末70は、その送信された歯列画像をタッチスクリーン72に表示し、それによりユーザに歯列画像を提示する。
【0042】
LED制御部54は、例えば、口腔内カメラ10のハンドル部10bに搭載され、コントローラ62からの制御信号に基づいて、第1~第4のLED26A~26Dの点灯および消灯を実行する。LED制御部54は、例えば回路で構成される。例えば、ユーザが携帯端末70のタッチスクリーン72に対して口腔内カメラ10を起動させる操作を実行すると、携帯端末70から対応する信号が無線通信モジュール58を介してコントローラ62に送信される。コントローラ62は、受信した信号に基づいて、第1~第4のLED26A~26Dを点灯させるようにLED制御部54に制御信号を送信する。
【0043】
レンズドライバ56は、例えば、口腔内カメラ10のハンドル部10bに搭載され、中央制御部50のコントローラ62からの制御信号に基づいて、構図調節機構のアクチュエータ36と焦点調節機構のアクチュエータ40を制御する。レンズドライバ56は、例えば回路で構成される。例えば、ユーザが携帯端末70のタッチスクリーン72に対して構図調節やピント調節に関する操作を実行すると、携帯端末70から対応する信号が無線通信モジュール58を介して中央制御部50に送信される。中央制御部50のコントローラ62は、受信した信号に基づいて、構図調節やピント調節を実行するようにレンズドライバ56に制御信号を送信する。また例えば、コントローラ62が画像処理部52からの歯列画像に基づいて構図調節やピント調節に必要なアクチュエータ36、40の制御量を演算し、その演算された制御量に対応する制御信号がレンズドライバ56に送信される。
【0044】
無線通信モジュール58は、例えば、口腔内カメラ10のハンドル部10bに搭載され、コントローラ62からの制御信号に基づいて、携帯端末70と無線通信を行う。無線通信モジュール58は、例えばWiFi(登録商標)やBluetooth(登録商標)などの既存の通信規格に準拠した無線通信を携帯端末70との間で実行する。無線通信モジュール58を介して、口腔内カメラ10から歯牙Dが写る歯列画像が携帯端末70に送信されたり、携帯端末70から口腔内カメラ10に操作信号が送信される。
【0045】
電源制御部60は、本実施の形態の場合、口腔内カメラ10のハンドル部10bに搭載され、中央制御部50、画像処理部52、LED制御部54、レンズドライバ56、および無線通信モジュール58に、電池66の電力を分配する。電源制御部60は、例えば回路で構成される。なお、本実施の形態の場合、電池66は、充電可能な二次電池であって、口腔内カメラ10に搭載されたコイル68を介して、商用電源に接続された外部の充電器69によってワイヤレス充電される。
【0046】
位置センサ90は、口腔内カメラ10の姿勢及び位置を検出するためのセンサであり、例えば、多軸(ここではx,y,zの三軸)の加速度センサである。例えば、位置センサ90は、三軸の加速度センサと三軸のジャイロセンサとを有する六軸センサであってもよい。例えば、
図1に示すように、z軸は光軸LAに一致する。y軸は、撮像面と平行であり、かつ口腔内カメラ10の長手方向に延びる。また、x軸は、撮像面と平行であり、y軸と直交する。位置センサ90の各軸の出力(センサデータ)は、中央制御部50及び無線通信モジュール58を介して、携帯端末70に送信される。
【0047】
位置センサ90としては、ピエゾ抵抗タイプ、静電容量タイプ、もしくは熱検知タイプのMEMSセンサが用いられてもよい。また特に図示しないが、各軸のセンサの感度のバランス、感度の温度特性、温度ドリフトなどを補正するための補正回路を設けるとよい。また、動加速度成分やノイズを除去するためのバンドパスフィルタ(ローパスフィルタ)を設けてもよい。また、加速度センサの出力波形を平滑化することによりノイズを低減してもよい。
【0048】
次に、口腔内カメラシステムにおける口腔内撮影動作について説明する。
図3は、口腔内カメラシステムにおける口腔内撮影動作の流れを示す図である。なお、
図3に示す処理は、例えば、リアルタイムに行われる処理であり、1フレーム又は複数フレームの画像データが得られる毎に行われる。
【0049】
ユーザが口腔内カメラ10を用いて、自身の口腔内の歯牙及び歯茎を撮影することで画像データが生成される(S101)。次に、口腔内カメラ10は、撮影された画像データと、撮影時において位置センサ90で得られたセンサデータとを携帯端末70に送信する(S102)。なお、ここで、画像データは、動画であってもよいし、1又は複数の静止画であってもよい。また、画像データが動画又は複数の静止画である場合には、動画のフレーム毎、又は静止画毎に、センサデータが送信される。なお、画像データが動画である場合において複数フレーム毎にセンサデータが送信されてもよい。
【0050】
また、画像データ及びセンサデータの送信は、リアルタイムで行われてもよいし、一連の撮影(例えば口腔内の全ての歯牙の撮影)が行われた後にまとめて送信されてもよい。
【0051】
携帯端末70は、受信したセンサデータに基づき、受信した画像データを回転し(S103)、回転後の画像データを表示する(S104)。
【0052】
このような、口腔内カメラシステムを用いることで、ユーザは、口腔内カメラ10でユーザ自身の口腔内の画像を撮影し、携帯端末70に表示された口腔内の状態を確認できる。これにより、ユーザは自身の歯牙の健康状態の確認などを容易に行うことができる。
【0053】
また、携帯端末70は、例えば、撮影された複数の画像データから、口腔内の複数の歯牙の三次元モデルを生成してもよい。また、携帯端末70は、生成された三次元モデルに基づく画像を表示してもよい。
【0054】
なお、ここでは、携帯端末70が歯牙の画像の回転を行う例を述べるが、この処理の一部又は全てを口腔内カメラ10が行ってもよい。
【0055】
図4は、携帯端末70の機能ブロック図である。携帯端末70は、位置センサ101と、画像処理部102と、表示部103とを備える。
【0056】
位置センサ101は、携帯端末70の姿勢及び位置を検出するためのセンサであり、例えば、多軸(例えば三軸)の加速度センサである。
【0057】
画像処理部102は、口腔内カメラ10から送信されたセンサデータと、位置センサ101で得られたセンサデータとに基づき、画像データを回転する回転処理を含む画像処理を行う。画像処理部102の機能は、例えば、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現される。
【0058】
表示部103は、携帯端末70が備える表示デバイスであり、画像処理部102で画像処理が行われた後の画像データを表示する。
【0059】
図5は、画像処理部102における画像処理のフローチャートである。まず、画像処理部102は、実空間における鉛直軸LVと撮像面Sとの角度αは0度以上45度未満であるかを判定する(S151)。ここで、撮像面Sの姿勢は口腔内カメラ10で得られたセンサデータから算出される。
【0060】
図6は、口腔内カメラ10と撮像面Sとの関係を模式的に示す図である。撮像面Sは光軸LAに垂直な面である。
【0061】
図7及び
図8は、鉛直軸LVと撮像面Sとの角度αの例を示す図である。ここで、角度αは、0~90度の範囲である。また、角度αは、90度-(鉛直軸LVと光軸LAとのなす角)とも表される。
【0062】
図7は、角度αが45度未満の例であり、撮像面Sが垂直に近い角度になっている。
図8は、角度αが45度以上の例であり、撮像面Sが水平に近い角度になっている。ここで、歯牙を側面(頬側又は舌側)から撮影している場合には、
図7に示すように、撮像面Sが垂直に近い角度になり、歯牙を歯冠側(咬合面)から撮影している場合には、撮像面Sは水平に近い角度になる。よって、画像処理部102は、角度αが45度未満の場合には(S151でYes)、歯牙が側面から撮影されていると判定し、角度αが45度以上の場合には(S151でNo)、歯牙が歯冠側から撮影されていると判定する。
【0063】
なお、ここでは、歯牙の撮影方向を判定するための閾値として45度を用いる例を示しているが、閾値の値は45度に限定されない。例えば、この閾値は、40度~50度の範囲内であってもよいし、30度から60度の範囲内であってもよい。
【0064】
まず、角度αが45度未満の場合には(S151でYes)の場合について説明する。角度αが45度未満の場合には(S151でYes)、画像処理部102は、ユーザが頬側あるいは舌側から歯牙を撮影していると判定する。画像処理部102は、鉛直上側が画像の上側になるように画像データを回転する(S152)。以下、この処理の具体例を説明する。
【0065】
図9は、口腔内カメラ10の軸方向LBの例を示す図である。方向LBは、口腔内カメラ10において、口腔内カメラ10の長手方向の中心を通り、ハンドル部10bからヘッド部10aへ向かう方向である。また、この例では、撮像面S(画像データ)の垂直方向(列方向)の中心を通る方向である。言い換えると、口腔内カメラ10で生成される画像データの上側は、口腔内カメラ10の先端側(ヘッド部10a側)であり、画像データの下側は、口腔内カメラ10の根本側(ハンドル部10b側)である。また、方向LBは、口腔内カメラ10で得られたセンサデータから算出される。
【0066】
図10及び
図11は、方向LBと方向LSの例を示す図である。方向LSは鉛直軸に沿う鉛直上向きの方向である。また、
図10及び
図11に示す角度θは、方向LBと方向LSとのなす角度であり、0~180度の範囲である。画像処理部102は、鉛直上側が画像の上側になるように、画像データを角度θ回転する。なお、
図9に示すように、元々画像データの上側が口腔内カメラ10の先端側と一致している場合には、画像処理部102は、画像データの回転を行わない。
【0067】
一例として、ユーザが上顎の前歯(中切歯、側切歯)を撮影している場合に、画像処理部102が実施する動作を説明する。
【0068】
図12Aは、ユーザが口腔内カメラ10を垂直に把持した状態で上顎の前歯を頬側(唇側)から撮影している状態を示す図である。
図12Aでは、方向LBと方向LSは平行になる。
【0069】
図12Bは、
図12Aに示した状態で撮影した前歯の画像の一例を示す図である。口腔内カメラ10の
先端側(ヘッド部10a側)が画像の上側になるように画像データが表示される。方向LBと方向LSは平行なので、
図12Bで確認できるように、歯茎(歯肉とも呼ぶ)を含む歯茎領域(歯肉領域とも呼ぶ)が
歯牙領域より上に表示されており、ユーザは、直感的に歯牙の状態を把握できる。
【0070】
一方、
図13Aは、ユーザが口腔内カメラ10を水平に保持した状態で上顎の前歯を頬側(唇側)から撮影している状態を示す図である。
図13Aでは、方向LBと方向LSとのなす角度θは90度であるとする。
【0071】
図13Bは、
図13Aに示した状態で撮影した前歯の画像の一例を示す図である。口腔内カメラ10の
先端側(ヘッド部10a側)が画像の上側になるように画像データが表示されるので、右側に歯茎領域が、左側に歯牙領域が表示される。
【0072】
図13Cは、画像処理部102の処理後の前歯の画像を示す図である。画像処理部102は、鉛直上側が画像の上側になるように、画像データを角度90回転して表示する。これにより、歯茎を含む歯茎領域が
歯牙領域より上に表示されており、ユーザは、直感的に歯牙の状態を把握できる。
【0073】
なお、この回転処理の具体例として、以下の方法が用いられてもよい。
図14は、回転処理の別の具体例のフローチャートである。まず、画像処理部102は、画像データから歯牙を含む歯牙領域と、歯茎を含む歯茎領域とを判定する(S161)。例えば、画像処理部102は、特徴量を用いた画像解析等により、画像データ内の歯牙領域と歯茎領域とを判定する。
【0074】
次に、画像処理部102は、現在の撮影対象が上顎であるか下顎であるかを判定する(S162)。例えば、口腔内カメラ10を唇又は頬肉の干渉を受けながら口腔内で歯列に沿って操作するため、上顎の歯列を撮影するときは撮像面Sが少なからず上向きになり、下顎の歯列を撮影するときは撮像面Sが少なからず下向きになる。よって、画像処理部102は、撮像面Sの方向(光軸LAの方向)が水平よりも上向きである場合には、撮影対象が上顎であると判定し、撮像面Sの方向(光軸LAの方向)が水平よりも下向きである場合には、撮影対象が下顎であると判定する。
【0075】
なお、画像処理部102は、撮影面Sの方向(光軸LAの方向)で撮影対象が上顎であるか下顎であるかを判断することに替えて、例えば、ユーザが携帯端末70から撮影対象が上顎であるか下顎であるかを入力するようにしてもよい。ユーザが携帯端末70で入力した撮影対象となる部位は画像処理部102に入力される。
【0076】
撮影対象が上顎である場合(S162でYes)、画像処理部102は、歯茎領域より歯牙領域が下になるように画像データを回転する(S163)。一方、撮影対象が下顎である場合(S162でNo)、画像処理部102は、歯茎領域より歯牙領域が上になるように画像データを回転する(S164)。これにより、画像処理部102は、鉛直上側が画像の上側になるように画像データを回転できる。
【0077】
なお、ステップS152における、鉛直上側が画像の上側になるように画像データを回転するとは、鉛直上側が画像の上側と完全に一致するように画像データを回転することに限らず、所定のずれを含んでもよい。また、当該処理は、回転前の画像データよりも鉛直上側が画像の上側に近づくように画像データを回転することを含んでもよい。
【0078】
このように、画像処理部102は、側面から歯牙が撮影されている場合には、鉛直上側が画像の上側になるように画像データを回転する。これにより、ユーザは、上下の関係が実際と同じ画像を携帯端末70上で確認できる。よって、ユーザは、直感的に歯牙の状態を把握できるので、ユーザの利便性を向上できる。
【0079】
再度、
図5を用いて説明を行う。次に、角度αが45度以上の場合(S151でNo)について説明する。角度αが45度以上の場合(S151でNo)、画像処理部102は、ユーザが歯冠側から歯牙を撮影していると判定する。画像処理部102は、口腔内カメラ10の先端側が画像の上側になるように画像データを回転する(S153)。
【0080】
ここで、歯冠側から撮影が行われている場合には、鉛直方向との傾きは影響が少ないため、ステップS152のような鉛直方向からの傾きに基づく回転は行われない。一方で、口腔内カメラ10の先端側が画像の上側になる画像データを表示することで、口腔の外部から歯牙の歯冠側を見たような画像を表示できる。よって、ユーザは、直感的に歯牙の状態を把握できるので、ユーザの利便性を向上できる。
【0081】
なお、ステップS153における、口腔内カメラ10の先端側が画像の上側になるように画像データを回転するとは、口腔内カメラ10の先端側が画像の上側と完全に一致するように画像データを回転することに限らず、所定のずれを含んでもよい。
【0082】
ステップS152又はS153の後、画像処理部102は、表示部103の姿勢(携帯端末70の姿勢)に基づき、画像データを回転する(S154)。具体的には、画像処理部102は、表示部103(携帯端末70)の姿勢に関わらず、表示される画像の上側が実空間の上側になるように画像データを回転する。
【0083】
図15は、携帯端末70の傾きを示す図である。
図15に示すように、携帯端末70が鉛直上向きの方向LSに対して角度β傾いている場合には、画像処理部102は、画像データを角度β回転する。なお、
図15に示す方向LCは、携帯端末70の長手方向に延びる方向であり、通常使用時における下側から上側に向かう方向である。例えば、角度βは、方向LSと方向LCとがなす角度である。
【0084】
これによれば、例えば、ユーザが一方の手で携帯端末70を持ちながら、他方の手で口腔内カメラ10により自身の歯牙を撮影する場合において、携帯端末70が傾いている場合においても、ユーザは、上下の関係が実際と同じ画像を携帯端末70上で確認できる。よって、ユーザは、直感的に歯牙の状態を把握できるので、ユーザの利便性を向上できる。
【0085】
画像処理部102は、画像データの左右を反転する(S155)。これにより、ユーザは、鏡に映した場合と同じ状態で、自身の歯牙を確認できる。よって、ユーザは、直感的に歯牙の状態を把握できるので、ユーザの利便性を向上できる。
【0086】
なお、上記では、位置センサ90及び位置センサ101が有する三軸の加速度センサを用いて口腔内カメラ10及び携帯端末70の姿勢、並びに、撮影方向を判定する例を説明したが、三軸のジャイロセンサを用いて口腔内カメラ10及び携帯端末70の姿勢、並びに、撮影方向を判定してもよい。三軸のジャイロセンサは、例えば、それぞれx軸周りの移動による角度の変化量、y軸周りの移動による角度の変化量、及びz軸周りの移動による角度の変化量を出力する。すなわち、三軸のジャイロセンサの場合には、x軸、y軸及びz軸の初期状態を任意に設定した状態で、それぞれの軸の変化量を加算していき、口腔内カメラ10及び携帯端末70の姿勢、並びに、撮影方向を判定する。
【0087】
なお、三軸の加速度センサと三軸のジャイロセンサとを両方組合せることで、口腔内カメラ10及び携帯端末70の姿勢、並びに、撮影方向を判定してもよい。
【0088】
以上のように、口腔内カメラシステムは、ユーザの口腔内の歯牙を手動により撮影することで画像データを生成する撮影部(例えば口腔内カメラ10)と、撮影部(例えば口腔内カメラ10)の姿勢を検出する位置センサ90と、位置センサ90で検出された撮影部(例えば口腔内カメラ10)の姿勢に基づき、画像データを回転する画像処理部102と、回転後の画像データを表示する表示部103とを備える。これによれば、当該口腔内カメラシステムは、撮影された歯牙の画像を適切に表示できる。
【0089】
例えば、画像処理部102は、撮影部(例えば口腔内カメラ10)の姿勢に基づき、実空間における鉛直上側が画像の上側になるように画像データを回転する。これによれば、例えば、ユーザは、上下の関係が実際と同じ画像を確認できるので、直感的に歯牙の状態を把握できる。
【0090】
例えば、画像処理部102は、撮影部(例えば口腔内カメラ10)の撮像面Sと鉛直軸LVとがなす第1角度αが、予め定められた第2角度(例えば45度)未満の場合、撮影部(例えば口腔内カメラ10)の姿勢に基づき、実空間における鉛直上側が画像の上側になるように画像データを回転する。
【0091】
例えば、撮影部(例えば口腔内カメラ10)は、ユーザが把持するハンドル部10bと、画像データを生成する撮像素子を含むヘッド部10aと、ハンドル部10bとヘッド部10aとを接続するネック部10cとを含み、画像処理部102は、第1角度αが第2角度以上の場合、撮影部(例えば口腔内カメラ10)におけるヘッド部10a側が画像の上側になるように画像データを回転する。
【0092】
例えば、撮影部(例えば口腔内カメラ10)は、ユーザが把持するハンドル部10bと、画像データを生成する撮像素子を含むヘッド部10aと、ハンドル部10bとヘッド部10aとを接続するネック部10cとを含み、画像処理部102は、ハンドル部10bからヘッド部10aに向かう第1方向LBと、鉛直上向きの第2方向LVとがなす第3角度θだけ画像データを回転する。
【0093】
例えば、
図14に示すように、画像処理部102は、撮影部(例えば口腔内カメラ10)の姿勢に基づき、画像データに上顎の画像が含まれるか、下顎の画像が含まれるかを判定し(S162)、画像データに上顎の画像が含まれる場合、画像データにおいて歯茎領域より歯牙領域が下になるように画像データを回転し(S163)、画像データに下顎の画像が含まれる場合、画像データにおいて歯茎領域より歯牙領域が上になるように画像データを回転する(S164)。
【0094】
例えば、画像処理部102は、さらに、画像データの左右を反転し(S155)、表示部103は、回転及び反転後の画像データを表示する。これによれば、例えば、ユーザは、鏡に映した場合と同じ状態で、自身の歯牙を確認できるので、直感的に歯牙の状態を把握できる。
【0095】
例えば、画像処理部102は、さらに、表示部103の姿勢に基づき、画像データを回転する(S154)。これによれば、例えば、ユーザは、上下の関係が実際と同じ画像を確認できるので、直感的に歯牙の状態を把握できる。
【0096】
以下、上述した実施の形態の変形例について説明する。
【0097】
(変形例1)
表示部103は、上述した口腔内カメラ10の姿勢に基づく歯牙の撮影方向の判定結果を表示してもよい。
図16は、この場合の画像処理部102における画像処理のフローチャートである。なお、画像処理部102は、
図16に示す処理のみを行ってもよいし、上述した処理(例えば
図5に示す処理)に加えて
図16に示す処理を行ってもよい。
【0098】
まず、画像処理部102は、実空間における鉛直軸LVと撮像面Sとの角度αは0度以上45度未満であるかを判定する(S201)。ここで、撮像面Sの姿勢は口腔内カメラ10で得られたセンサデータから算出される。なお、この処理の詳細は、
図5に示すS151と同様である。
【0099】
画像処理部102は、角度αが45度未満の場合には(S201でYes)、歯牙が側面(頬側又は舌側)から撮影されていると判定し、撮影中(表示中)の画像が、ユーザの口腔内において歯牙の側面を撮影した画像であることを表示部103に表示する(S202)。
図17は、この場合の表示例を示す図である。
図17に示すように、例えば、表示部103は、撮影中の画像と、歯牙の側面を撮影中である旨とを表示する。
【0100】
一方、画像処理部102は、角度αが45度以上の場合には(S201でNo)、歯牙が歯冠側から撮影されていると判定し、撮影中(表示中)の画像が、ユーザの口腔内において歯牙を歯冠側から撮影した画像であることを表示部103に表示する(S203)。
図18は、この場合の表示例を示す図である。
図18に示すように、例えば、表示部103は、撮影中の画像と、歯牙の歯冠側を撮影中である旨とを表示する。
【0101】
なお、ここでは歯牙の撮影方向を文字(メッセージ)で表す例を示したが、文字、イラスト、アイコン及び記号等が用いられてもよいし、これらの組み合わせが用いられてよい。
【0102】
このように、歯牙の撮影方向を表示することで、ユーザは、現在撮影中の歯牙の撮影方向を容易に認識できるので、ユーザの利便性を向上できる。
【0103】
(変形例2)
上記では、角度αが予め定められた角度(例えば45度)未満であるか否かに基づき、歯牙の撮影方向等を判定する例を述べたが、角度αが当該予め定められた角度付近の場合には、判定の精度が低下する可能性がある。例えば、口腔内奥の大臼歯を撮影する場合等に角度αが45度付近なる可能性がある。よって、画像処理部102は、角度αが当該予め定められた角度付近の場合には、さらに別の判定処理を行ってもよい。
【0104】
図19は、この場合の画像処理部102における画像処理のフローチャートである。まず、画像処理部102は、実空間における鉛直軸LVと撮像面Sとの角度αは45度付近であるか否かを判定する(S211)。なお、45度付近とは、例えば、40度から50度であってもよいし、それよりも狭い又は広い範囲であってもよい。言い換えると、画像処理部102は、角度αと45度との差分が予め定められた値未満の場合に角度αは45度付近と判定する。
【0105】
角度αが45度付近でない場合(S211でNo)、画像処理部102は、
図5と同様の処理を行う(S218~S222)。つまり、画像処理部102は、角度αは0度以上45度未満であるかを判定する(S218)。
【0106】
角度αが45度未満の場合には(S218でYes)、画像処理部102は、ユーザが頬側あるいは舌側から歯牙を撮影していると判定し、鉛直上側が画像の上側になるように画像データを回転する(S219)。一方、角度αが45度以上の場合(S218でNo)、画像処理部102は、ユーザが歯冠側から歯牙を撮影していると判定し、口腔内カメラ10の先端側が画像の上側になるように画像データを回転する(S220)。
【0107】
次に、画像処理部102は、表示部103の姿勢(携帯端末70の姿勢)に基づき、画像データを回転する(S221)。具体的には、画像処理部102は、表示部103(携帯端末70)の姿勢に関わらず、表示される画像の上側が実空間の上側になるように画像データを回転する。次に、画像処理部102は、画像データの左右を反転する(S222)。これにより、ユーザは、鏡に映した場合と同じ状態で、自身の歯牙を確認できる。
【0108】
一方、角度αが45度付近である場合(S211でYes)、画像処理部102は、画像データから歯牙を含む歯牙領域と、歯茎を含む歯茎領域とを判定する(S212)。例えば、画像処理部102は、特徴量を用いた画像解析等により、画像データ内の歯牙領域と歯茎領域とを判定する。
【0109】
次に、画像処理部102は、歯茎領域が歯牙領域の両側にあるか、片側のみにあるかを判定する(S213)。歯茎領域が歯牙領域の両側にある場合(S213でYes)、画像処理部102は、ユーザが歯冠側から歯牙を撮影していると判定し、口腔内カメラ10の先端側が画像の上側になるように画像データを回転する(S220)。
【0110】
図20は、歯冠側から撮影された歯牙の画像の例を示す図である。
図20に示すように歯冠側から撮影された画像では、歯牙領域(歯牙列)の両側に歯茎領域が存在する。
【0111】
一方、歯茎領域が歯牙領域の片側のみにある場合(S213でNo)、画像処理部102は、ユーザが頬側あるいは舌側から歯牙を撮影していると判定する。
図21は、頬側から撮影された下顎の歯牙の画像の例を示す図である。
図21に示すように頬側から撮影された画像では、歯牙領域(歯牙列)の方側のみに歯茎領域が存在する。
【0112】
次に、画像処理部102は、cosγを算出する(S214)。
図22及び
図23は、角度γの例を示す図である。角度γは、光軸LAと鉛直上方向LSとがなす角度であり、0~180度の範囲である。次に、画像処理部102は、cosγの値が正であるか負であるか判定する(S215)。なお、ここでは、cosγの値が正であるか負であるかを判定するが、この処理は、光軸LAに沿って撮像素子14から被写体に向かう方向の任意の値を有する第1ベクトルと、鉛直上方向LSの任意の値を有する第2ベクトルとの内積が正であるか負であるかを判定することと等価である。
【0113】
cosγの値が正である場合(S215でYes)、つまり、γが0~90度である場合(例えば
図22)、画像処理部102は、上顎の歯牙を撮影していると判定し、歯茎領域より歯牙領域が下になるように画像データを回転する(S216)。一方、cosγの値が負である場合(S215でNo)、つまり、γが90~180度である場合(例えば
図23)、画像処理部102は、下顎の歯牙を撮影していると判定し、歯茎領域より歯牙領域が上になるように画像データを回転する(S217)。例えば、
図21に示すように歯茎領域より歯牙領域が上になるように画像データが回転される。
【0114】
ステップS216又はS217の後、画像処理部102は、表示部103の姿勢(携帯端末70の姿勢)に基づき、画像データを回転する(S221)。次に、画像処理部102は、画像データの左右を反転する(S222)。
【0115】
以上により、画像処理部102は、角度αが45度付近の場合には、歯茎領域と歯牙領域との関係に基づき、撮影方向(側面、歯冠側)を判定し、cosγに基づき上顎か下顎かを判定する。これにより、画像処理部102は、角度αが45度付近の場合における判定精度を向上できる。
【0116】
(変形例3)
上述した口腔内カメラ10の姿勢に基づく歯牙の撮影方向等の判定は、ユーザが直立した状態又は椅子に座った状態等のユーザが前を向いている状態を想定している。一方で、歯科医等が患者の歯牙を撮影する場合には、ユーザ(患者)が仰向けになっている状態で撮影が行われる場合がある。このような場合には、鉛直軸と歯牙との関係がユーザが前を向いている状態と異なるため正しく判定を行うことができない可能性がある。以下では、このような場合にも正しく判定を行うことができる方法を説明する。
【0117】
図24は、起立した状態のユーザBDに対する射影面の関係を示す図である。ここで、射影面は、ユーザBDを基準とした仮想の平面であり、前額面110、矢状面111、水平面112の3つからなる。前額面110は、ユーザBDの身体を前後に二分し、かつ床面に垂直な面である。矢状面111は、ユーザBDの身体を前から後ろに通り、ユーザBDの身体を左右に二分し、かつ床面と垂直な面である。水平面112は、床面と平行な面であり、ユーザBDの身体を上下に二分する面であり、前額面110および矢状面111の双方に垂直な面である。
【0118】
また、運動軸は垂直軸、矢状-水平軸、前額-水平軸に分けられる。
図24に示すx軸は「前額‐水平軸」である。
前額-水平軸は、左右方向の軸であり、矢状面111での前後屈、及び屈曲伸展等の運動の回転軸である。
図24に示すy軸は「矢状‐水平軸」である。矢状‐水平軸は、前後方向の軸であり、前額面110での側屈、及び内外転等の運動の回転軸である。
図24に示すz軸は「垂直軸」である。垂直軸は、垂直方向の軸であり、水平面112での回旋等の運動の回転軸である。
【0119】
図25及び
図26は、口腔内カメラ10の使用時におけるユーザBDの姿勢の例を示す図である。
【0120】
図25に示すように、ユーザBDが口腔内カメラ10を直立した状態または椅子に座った姿勢で使用する場合、ユーザは起立した状態と見做すことができる。このとき、ユーザBDの身体の垂直軸Z0(z軸)は床面に対して垂直であり、ユーザBDの身体の垂直軸Z0と重力加速度の作用方向は一致している。
【0121】
一方、
図26に示すように、例えば、ユーザBDが歯科治療台に載った状態で歯科医が口腔内カメラ10を使用する場合、ユーザBDの身体の上半身の前額面110は、治療台の背凭れに沿って傾く。すなわち、ユーザBDの前額面110が傾斜したことで、ユーザBDが直立した状態での身体の垂直軸Z0に対して、背凭れに沿って上半身を傾けた状態のユーザの垂直軸Z1は傾くことになる。
【0122】
図27は、このようにユーザBDの姿勢が変化する場合の画像処理部102における画像処理のフローチャートである。まず、画像処理部102は、口腔内カメラ10の初期姿勢を取得し、保持する(S231)。具体的には、ユーザの操作に基づき、ユーザの操作が行われた状態における口腔内カメラ10の姿勢が初期姿勢として取得される。例えば、携帯端末70に対するユーザの操作に基づき初期姿勢が取得される。または、口腔内カメラ10に設けられたボタン等が押下されることで初期姿勢が取得される。
図28は、初期姿勢の例を示す図である。例えば、
図28に示すように、六軸センサである位置センサ90で得られた、鉛直方向LVを基準とした三軸の姿勢情報が初期姿勢として取得される。この初期姿勢は、携帯端末70又は口腔内カメラ10に保持される。
【0123】
図29は、携帯端末70における初期姿勢の設定画面の一例を示す図である。
図29に示すように、例えば、初期姿勢として、歯牙と口腔内カメラ10との関係が予め定められた関係となってる状態における口腔内カメラ10の姿勢が取得される。
図29に示す例では、初期姿勢は、口腔内カメラ10の撮像面Sが前歯の前面と平行となり、かつ、撮像面Sにおける平面視において口腔内カメラ10の軸方向LBが前歯の高さ方向と一致する状態である。なお、初期姿勢が取得される状態は、この例に限定されず、いずれか1以上歯牙を基準とした任意の状態でよい。例えば、前歯以外の歯牙が用いられてもよい。また、ここでは、「口腔内カメラ10の軸方向LBが前歯の高さ(縦)方向と一致する状態」が指定されているが、「口腔内カメラ10の軸方向LBが前歯の高さ方向とが直交する状態(口腔内カメラ10の軸方向が前歯の幅(横)方向とが一致する状態)」が用いられてもよい。
【0124】
また、ここの述べる平行、一致、及び直交とは、厳密なものである必要はなく、略平行、略一致、及び略直交であってもよい。言い換えると、携帯端末70は上記の状態をとるようにユーザに指示し、初期姿勢に用いられる状態は、当該指示に基づきユーザがとった口腔内カメラ10の姿勢であってもよい。
【0125】
図30は、携帯端末70における初期姿勢の設定画面の別の例を示す図である。
図30に示すように、例えば、初期姿勢として、ユーザの姿勢と口腔内カメラ10の姿勢との関係が予め定められた関係となってる状態における口腔内カメラ10の姿勢が取得される。
図30に示す例では、初期姿勢は、ユーザBDの前額面110と撮影部の撮像面Sとが平行であり、かつ、撮像面Sにおける平面視においてユーザBDの垂直軸Z1と第2方向LBとが一致する状態である。
【0126】
なお、初期姿勢が取得される状態は、この例に限定されず、ユーザBDの姿勢と口腔内カメラ10の姿勢とを対応付け可能な任意の姿勢であってもよい。また、ユーザBDの姿勢は、前額面110、矢状面111、水平面112、垂直軸、矢状-水平軸、及び、前額-水平軸のうちの1つ又は複数を用いて定義されてもよい。例えば、ここでは、「口腔内カメラ10の軸方向LBが垂直軸Z1と一致する状態」が指定されているが、「口腔内カメラ10の軸方向LBが垂直軸Z1とが直交する状態(軸方向LBが前額‐水平軸とが一致する状態)」が用いられてもよい。
【0127】
次に、上述した歯牙の撮影が行われる。具体的には、画像処理部102は、歯牙の撮影中に得られた口腔内カメラ10の姿勢を、初期姿勢を用いて補正する(S232)。つまり、画像処理部102は、初期姿勢を用いて、口腔内カメラ10の姿勢がユーザが前を向いている状態と同じになるように口腔内カメラ10の姿勢を補正する。
【0128】
図31は、初期姿勢の例を示す図である。
図32は、姿勢の補正の例を示す図である。なお、ここではy軸の情報を補正する例を示すが、他の軸の情報を補正する場合も同様である。
図31に示すように初期姿勢として鉛直方向LVとy軸との角度δが得られた場合、画像処理部102は、
図32に示すように、鉛直方向LVを鉛直方向LV0に補正する。また、鉛直方向LVの代わりに補正後の鉛直方向LV0を用いて、撮影方向の判定処理等を行う。例えば、
図32に示すように角度αとして、補正後の鉛直方向LV0と撮像面Sとの角度が算出される。
【0129】
なお、画像処理部102は、鉛直方向LVを補正するのではなく、位置センサ90で得られた姿勢そのものを補正してもよいし、演算中の値(判定にも用いる角度等)を補正してもよい。また、この補正処理の一部又は全ては、画像処理部102(携帯端末70)で行われてもよいし、口腔内カメラ10内で行われてもよい。
【0130】
最後に、画像処理部102は、補正後の姿勢に基づき、画像データの回転等の処理を行う(S233)。具体的には、画像処理部102は、補正後の姿勢を用いて、
図5、
図14、
図16又は
図19に示す処理を行う。
【0131】
以上により、画像処理部102は、ユーザの姿勢に応じて口腔内カメラ10の姿勢を補正することで、判定の精度を向上できる。
【0132】
以上のように、
図1、2及び4等に示すように、口腔内カメラシステムは、ハンドル部10bと、画像データを生成する撮像素子を含むヘッド部10aと、ハンドル部10bとヘッド部10aとを接続するネック部10cとを含み、口腔内の歯牙を撮影して画像データを生成する撮影部(例えば口腔内カメラ10)と、撮影部(例えば口腔内カメラ10)の姿勢を検出する位置センサ90と、位置センサ90で検出された撮影部(例えば口腔内カメラ10)の姿勢に基づき、画像データを画像処理する画像処理部102と、画像データを表示する表示部103と、を備える。例えば、
図5~
図13C等に示すように、画像処理部102は、撮影部(例えば口腔内カメラ10)の光軸LAに垂直な撮像面Sと、鉛直軸に沿う鉛直上向きの第1方向LV(又はLS)とがなす第1角度αが予め定められた第2角度未満(例えば45度)の場合(S151でYes)、ハンドル部10bからヘッド部10aに向かう第2方向LBと、第1方向LSとがなす第3角度θだけ画像データを回転することで、鉛直軸に対して鉛直上側が画像の上側になるように画像データを回転する(S152)。
【0133】
これによれば、当該口腔内カメラシステムは、撮影された歯牙の画像を適切に表示できる。例えば、ユーザは、上下の関係が実際と同じ画像を確認できるので、直感的に歯牙の状態を把握できる。
【0134】
例えば、
図5~
図13C等に示すように、画像処理部102は、第1角度αが第2角度(例えば45度)以上の場合、画像データの内のヘッド部側に対応する側が画像の上側になるように画像データを回転する(S153)。
【0135】
例えば、
図16~
図18等に示すように、画像処理部102は、第1角度αが第2角度(例えば45度)未満の場合には(S201でYes)、表示部103に表示されている画像が、撮影部(例えば口腔内カメラ10)がユーザの口腔内において歯牙の側面を撮影した画像であることを表示部103に表示し(S202)、第1角度αが第2角度(例えば45度)以上の場合には(S201でNo)、表示部103に表示されている画像が、撮影部(例えば口腔内カメラ10)がユーザの口腔内において歯牙を歯冠側から撮影した画像であることを表示部103に表示する(S203)。
【0136】
これによれば、当該口腔内カメラシステムは、歯牙の撮影方向を表示する。これにより、ユーザは、現在撮影中の歯牙の撮影方向を容易に認識できるので、ユーザの利便性を向上できる。
【0137】
例えば、
図19~
図23等に示すように、画像処理部102は、第1角度αと第2角度(例えば45度)との差が予め定められた値未満の場合(S211でYes)、画像データから歯牙領域と、歯牙領域に沿った歯茎領域を検出し(S212)、歯茎領域が歯牙領域に対して頬側と舌側の両側に検出された場合には(S213でYes)、画像データの内のヘッド部10a側に対応する側が画像の上側になるように画像データを回転する(S220)。画像処理部102は、歯茎領域が歯牙領域に対して頬側または舌側の一方の側のみ検出された場合には(S213でNo)、第1方向LSと、撮影部の光軸LAに沿い撮影部から被写体に向かう第3方向とがなす第4角度γの余弦(cosγ)を算出し(S214)、算出した余弦の値が正の場合(S215でYes)、画像データにおいて歯茎領域より歯牙領域が下になるように画像データを回転し(S216)、余弦の値が負の場合(S215でNo)、画像データにおいて歯茎領域より歯牙領域が上になるように画像データを回転する(S217)。
【0138】
これによれば、当該口腔内カメラシステムは、第1角度αが第2角度(例えば45度)付近の場合には、歯茎領域と歯牙領域との関係と、第4角度γの余弦(cosγ)とに基づき、画像データを回転する。これにより、当該口腔内カメラシステムは、第1角度αが第2角度(例えば45度)付近の場合における判定精度を向上できる。
【0139】
例えば、
図5等に示すように、画像処理部102は、さらに画像データの左右を反転し、表示部103は、回転及び反転後の画像データを表示する(S155)。これによれば、例えば、ユーザは、鏡に映した場合と同じ状態で、自身の歯牙を確認できるので、直感的に歯牙の状態を把握できる。
【0140】
例えば、
図5等に示すように、画像処理部102は、さらに、表示部103の姿勢に基づき、画像データを回転する(S154)。これによれば、例えば、ユーザは、上下の関係が実際と同じ画像を確認できるので、直感的に歯牙の状態を把握できる。
【0141】
例えば、
図24~
図32に示すように、撮影部の所定の姿勢である初期姿勢を取得し(S231)、初期姿勢を用いて第1方向LV(又はLS)を補正する(S232)。
【0142】
これによれば、当該口腔内カメラシステムは、ユーザの姿勢に応じて撮影部の姿勢を補正することで、処理の精度を向上できる。
【0143】
例えば、所定の姿勢は、ユーザBDの姿勢と撮影部の姿勢とが予め定められた関係となる撮影部の姿勢である。
【0144】
例えば、所定の姿勢は、ユーザBDの前額面110と撮影部の撮像面Sとが平行であり、かつ、撮像面Sにおける平面視においてユーザBDの垂直軸Z1と第2方向LBとが一致又は直交する状態である。
【0145】
例えば、所定の姿勢は、予め定められた歯牙(例えば前歯)と撮影部の撮像面Sとを平行に正対させ、かつ、撮像面Sにおける平面視において第2方向LBと予め定められた歯牙の高さ方向とが一致又は直交する状態である。
【0146】
これによれば、ユーザは初期姿勢の取得を容易に行える。また、初期姿勢の精度が向上することで補正の精度を向上できる。
【0147】
以上、本開示の実施の形態に係る口腔内カメラシステムについて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0148】
例えば、上記説明では、歯牙を撮影することを主目的とした口腔内カメラ10を用いる例を説明したが、口腔内カメラ10は、カメラを備える口腔内ケア機器であってもよい。例えば、口腔内カメラ10は、カメラを備える口腔内洗浄機等であってもよい。
【0149】
また、上記実施の形態に係る口腔内カメラシステムに含まれる各処理部は典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。
【0150】
また、集積回路化はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0151】
また、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0152】
また、本開示は、口腔内カメラシステムにより実行される画像表示方法等として実現されてもよい。また、本開示は、口腔内カメラシステムに含まれる口腔内カメラ、携帯端末、又はクラウドサーバとして実現されてもよい。
【0153】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0154】
また、フローチャートにおける各ステップが実行される順序は、本開示を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が、他のステップと同時(並列)に実行されてもよい。
【0155】
以上、一つまたは複数の態様に係る口腔内カメラシステム等について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本開示は、口腔内カメラシステムに適用できる。
【符号の説明】
【0157】
10 口腔内カメラ
10a ヘッド部
10b ハンドル部
10c ネック部
12 撮影光学系
14 撮像素子
26A 第1のLED
26B 第2のLED
26C 第3のLED
26D 第4のLED
36、40 アクチュエータ
50 中央制御部
52 画像処理部
54 LED制御部
56 レンズドライバ
58 無線通信モジュール
60 電源制御部
62 コントローラ
64 メモリ
66 電池
68 コイル
69 充電器
70 携帯端末
72 タッチスクリーン
80 クラウドサーバ
90 位置センサ
101 位置センサ
102 画像処理部
103 表示部
110 前額面
111 矢状面
112 水平面