(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】スペーサ
(51)【国際特許分類】
F02F 1/10 20060101AFI20240202BHJP
F01P 3/02 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
F02F1/10 D
F01P3/02 A
(21)【出願番号】P 2019207660
(22)【出願日】2019-11-18
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】牧野 耕治
【審査官】藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-128256(JP,A)
【文献】特開2019-044744(JP,A)
【文献】特開2019-007398(JP,A)
【文献】米国特許第10190529(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00 - 1/42
F01P 3/02
F02F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のシリンダブロックにシリンダボアを取り囲む状態で形成された冷却水流路内
に配置されるスペーサであって、
樹脂からなる支持体と、
前記支持体に取り付けられる第1多孔質体と、
前記支持体において前記第1多孔質体が取り付けられる側とは反対側でかつ前記第1多孔質体と重なる位置に設けられた、前記支持体の射出成形時における溶融樹脂の導入部位である樹脂導入部と、
前記支持体との間に前記第1多孔質体が介在する重なり部を構成する状態で前記支持体に取り付けられる第2多孔質体と、
を備え、
前記第2多孔質体の露出面側から見て、前記重なり部における前記第2多孔質体の端縁が前記第1多孔質体に囲まれていることを特徴とするスペーサ。
【請求項2】
請求項1に記載のスペーサにおいて、
前記第2多孔質体の露出面側から見て、前記樹脂導入部は、前記重なり部と並ぶ状態で設けられていることを特徴とするスペーサ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のスペーサにおいて、
前記第2多孔質体の露出面側から見て、前記第2多孔質体の一方端全体が前記重なり部を構成するとともに、当該重なり部以外の前記第2多孔質体が、前記第2多孔質体の外周縁及び前記第1多孔質体の端縁が交差する交点と、前記樹脂導入部とを接続する仮想線に挟まれる範囲内に収まる状態で形成されていることを特徴とするスペーサ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のスペーサにおいて、
互いに独立した複数の前記第1多孔質体に対して、1つの前記第2多孔質体が取り付けられることを特徴とするスペーサ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のスペーサ
において、
前記シリンダブロックに設けられているシリンダボアは、複数であり、
前記支持体は、前記シリンダボアそれぞれに対応する複数の円弧部と、隣り合う円弧部を接続する接続部とを備え、
前記第1多孔質体は、前記複数の円弧部のそれぞれに対応する前記支持体に取り付けられ、
前記第2多孔質体は、前記接続部に対応する前記支持体に取り付けられていることを特徴とするスペーサ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のスペーサ
において、
前記第1多孔質体及び前記第2多孔質体は、所定の外的要因が付加されたことを契機として膨大化する特性を有することを特徴とするスペーサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のシリンダブロックにシリンダボアを取り囲む状態で形成された冷
却水流路内に配置されるスペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の冷却水流路には、流通する冷却水の流量や流速等を規制するためのスペーサ
が開口部から挿入されて配置される(例えば、特許文献1、2参照)。例えば、特許文献
1、2に開示されたスペーサでは、合成樹脂等の剛体製の支持体(スペーサ本体)のシリ
ンダボア側の面に、冷却水と接触すると膨大化して、冷却水流路のシリンダボア側の壁面
に接触する多孔質体が取り付けられている。このようにスペーサ本体に取り付けられる多
孔質体は、膨大化する前は厚みが薄いため、当該スペーサを冷却水流路内に挿入する際に
は挿入抵抗を小さくして円滑に挿入することができるとともに、冷却水流路内に配置した
後は膨大化して、冷却水の流通を規制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-128256号公報
【文献】特開2019-007398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のようなスペーサは、金型内に多孔質体を配置した状態で、当該金型に
溶融樹脂を導入することで一体成型される。しかしながら、上述のようなスペーサにおい
て冷却水の流れを規制する部位が細かく設定されている場合には、多孔質体の形状が複雑
になりやすい。そして多孔質体は、原反から切り出されることになるが、複雑な形状の多
孔質体を切り出そうとすると、廃棄部分が多くなり、必然的に、材料歩留まり(取り数)
が低下してしまう。
【0005】
このような課題は、例えば、特許文献2が開示するような、多孔質体を、比較的単純な
形状の複数の部材で構成することで解決できる可能性がある。しかしながら、多孔質体を
単に複数の部材で構成した場合、上述の製造過程で溶融樹脂を導入したときに、溶融樹脂
が多孔質体の端縁を通って多孔質体の領域に到達する経路をたどると、溶融樹脂が多孔質
体の端縁を直接押圧することになる。すると、多孔質体の位置ずれが発生したり、複数の
部材の境界を通じた露出面側への溶融樹脂の回り込みが発生したりする可能性がある。こ
のような現象は、スペーサ製品の品質を著しく低下させるため、極めて好ましくない。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、材料歩留りの改善及び品質の向上が
図られたスペーサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明は以下の技術的手段を採用している。まず、本発
明は、内燃機関のシリンダブロックにシリンダボアを取り囲む状態で形成された冷却水流
路内に配置されるスペーサを前提としている。そして、本発明に係るスペーサは、樹脂か
らなる支持体、第1多孔質体、樹脂導入部、及び第2多孔質体を備える。第1多孔質体は
、支持体に取り付けられる。樹脂導入部は、支持体において第1多孔質体が取り付けられ
る側とは反対側でかつ第1多孔質体と重なる位置に設けられる。当該樹脂導入部は、支持
体の射出成形時における溶融樹脂の導入部位である。第2多孔質体は、支持体との間に第
1多孔質体が介在する重なり部を構成する状態で支持体に取り付けられる。以上の構成に
おいて、本発明に係るスペーサは、第2多孔質体の露出面側から見て、重なり部における
第2多孔質体の端縁が第1多孔質体に囲まれている。
【0008】
このスペーサでは、支持体の射出成形時に、樹脂導入部に対応する金型のゲートから溶
融樹脂が導入されると、溶融樹脂が第1多孔質体の領域から第2多孔質体の領域に流れ込
む。この際、溶融樹脂は、第2多孔質体の端縁を経由せずに第2多孔質体の領域に流れ込
むため、溶融樹脂が第2多孔質体の端縁を直接押圧することを抑制できる。したがって、
溶融樹脂の樹脂圧によって第2多孔質体の位置がずれることや、溶融樹脂が第2多孔質体
の露出面に回り込むことを抑制でき、多孔質体を備えるスペーサの品質を向上させること
ができる。
【0009】
このスペーサでは、第2多孔質体の露出面側から見て、樹脂導入部が、第2多孔質体の
重なり部と並ぶ状態で設けられている構成を採用することができる。この構成では、導入
部位から射出された溶融樹脂は、第2多孔質体の外周縁を経由せずに第2多孔質体の領域
に流れ込み易い。したがって、第2多孔質体の位置がずれたり、溶融樹脂が第2多孔質体
の露出面に回り込んだりすることを抑制できる。
【0010】
以上のスペーサにおいて、第2多孔質体の露出面側から見て、第2多孔質体の一方端全
体が重なり部を構成するとともに、当該重なり部以外の第2多孔質体が、第2多孔質体の
外周縁及び第1多孔質体の端縁が交差する交点と、樹脂導入部とを接続する仮想線に挟ま
れる範囲内に収まる状態で形成された構成を採用することもできる。この構成では、導入
部位から導入された溶融樹脂により、重なり部以外の第2多孔質体の外周縁が押されるこ
とをより抑制できる。
【0011】
以上のスペーサにおいて、互いに独立した複数の第1多孔質体に対して、1つの第2多
孔質体が取り付けられる構成を採用することもできる。この構成では、要求される多孔質
体の取り付け領域の形状が複雑でも、例えば、比較的単純な形状の第1多孔質体と第2多
孔質体とに分割することで、第1多孔質体及び第2多孔質体を原反から切り出すときの歩
留まりをより向上させることができる。
【0012】
以上のスペーサを、複数のシリンダボアを備えるシリンダブロックに適用する場合、支
持体は、シリンダボアそれぞれに対応する複数の円弧部と、隣り合う円弧部を接続する接
続部とを備える構成を採用することができる。この場合、第1多孔質体は、複数の円弧部
のそれぞれに対応する支持体に取り付けられ、第2多孔質体は、接続部に対応する支持体
に取り付けられている構成を採用することができる。この構成では、第1多孔質体をシリ
ンダボアに求められる形状に形成し、第2多孔質体をシリンダボア間部位に求められる形
状に形成することができる。つまり、第1多孔質体及び第2多孔質体をシリンダブロック
の各部位にとって望ましい形状とすることで、第1多孔質体及び第2多孔質体の機能を十
分に発揮させることができる。
【0013】
以上の構成において、第1多孔質体及び第2多孔質体は、所定の外的要因が付加された
ことを契機として膨大化する特性を有する構成を採用することができる。この構成では、
第1多孔質体及び第2多孔質体が圧縮された状態でスペーサを冷却水流路内に配置するこ
とができるため、冷却水流路の側壁等に干渉することなく円滑に配置することができる。
また、復元時に第2多孔質体の重なり部は支持体に固定されていなくとも、支持体に固定
された第1多孔質体の部分及び第2多孔質体の部分に囲われるため、冷却水の水圧を直接
受けることがなく、破損し難くなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、材料歩留りの改善及び品質の向上が図られたスペーサを提供すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスペーサの一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るスペーサの一例を模式的に示す横断面図である。
【
図3】(a)は、本発明の一実施形態に係るスペーサの一例を模式的に示す正面図(多孔質体側から見た図)であり、(b)は、本発明の一実施形態に係るスペーサの一例を模式的に示す背面図(支持体側から見た図)である。
【
図4】(a)は、本発明の一実施形態に係るスペーサの製造時の溶融樹脂の流れを模式的に示す背面図であり、(b)は、不具合が発生し易い構成に係るスペーサの製造時の溶融樹脂の流れを模式的に示す背面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るスペーサの使用状態における重なり部の状態を模式的に示す縦断面図である。(a)は、多孔質体が膨大化する前の状態を示し、(b)は、多孔質体が膨大化した後の状態を示している。
【
図6】(a)から(c)は、本発明の一実施形態に係るスペーサにおける、第1多孔質体、第2多孔質体、樹脂導入部の位置関係を模式的に示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るスペーサにおける、第1多孔質体、第2多孔質体、樹脂導入部の位置関係を模式的に示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るスペーサにおける、第1多孔質体、第2多孔質体、樹脂導入部の位置関係を模式的に示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るスペーサにおける、第1多孔質体、第2多孔質体、樹脂導入部の位置関係を模式的に示す図である。
【
図10】(a)から(c)は、本発明の一実施形態に係るスペーサにおける、第1多孔質体、第2多孔質体、樹脂導入部の位置関係を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。
図1は、
本発明の一実施形態におけるスペーサの一例を模式的に示す斜視図である。
図2は、本発
明の一実施形態におけるスペーサの一例を模式的に示す断面図である。
図2は、
図1に示
すスペーサの横断面図に対応する。また、
図3(a)、(b)は、本発明の一実施形態に
係るスペーサの一例を模式的に示す正面図及び背面図である。以下で詳述するように、本
実施形態のスペーサは、支持体の一方側に第1多孔質体及び第2多孔質体が配置されてい
る。ここでは、スペーサにおいて第1多孔質体及び第2多孔質体が配置されている面を正
面と定義している。なお、本実施形態では、説明のため、2つのシリンダボアが直列に配
置されたシリンダブロックにおいて、シリンダボアの周囲に配置されるオープンデッキタ
イプの溝形状の冷却水流路内に配置されるスペーサを例示している。また、本明細書では
、適宜、スペーサにおいて、シリンダボアの軸方向に対応する方向を上下方向といい、シ
リンダボアの配列方向に対応する方向を左右方向という。
【0017】
図1、
図2及び
図3に示すように本実施形態のスペーサ1は、樹脂からなる支持体2と
、支持体2に取り付けられる複数(2つ)の第1多孔質体3及び第2多孔質体4を備える
。支持体2は、それぞれが部分円筒面を構成する2つの円弧部21と、当該隣り合う2つ
の円弧部21を接続する接続部22を備える。当該形状は、上述のシリンダブロックが備
える冷却水流路に整合する形状であり、円弧部21の凹面側(以下、凹面部21aという
。)が、シリンダボアと対向する状態で上述の冷却水流路に配置される。また、接続部2
2の凸面側(以下、凸面部22aという。)がシリンダブロックにおいて直列に配置され
たシリンダボアの間のシリンダブロック(シリンダボア間部位)と対向する状態で上述の
冷却水流路に配置される。なお、本実施形態では、2つのスペーサ1を、それぞれのスペ
ーサ1が備える凹曲面21a同士及び凸曲面22a同士が対向する状態で連結することで
、シリンダブロックの冷却水流路の全体形状に対応する形状が構成される。当該連結され
た2つのスペーサ1が、シリンダブロックの冷却水流路内に配置される。
【0018】
第1多孔質体3及び第2多孔質体4は支持体2の一方側に取り付けられている。第2多
孔質体4は、支持体2との間に第1多孔質体3が介在する重なり部41を構成する状態で
支持体2に取り付けられる。第2多孔質体4の重なり部41は、第1多孔質体3よりも表
面側(上述の正面側)に配置されている。そのため、第2多孔質体4の重なり部41は、
第1多孔質体3を部分的に被覆している。また、第2多孔質体4の露出面側(上述の正面
側)から見て、重なり部41の端縁41a、41b、41cは、第1多孔質体3に囲まれ
ている。なお、重なり部41の端縁41a、41b、41cは、第1多孔質体3に当接し
ている。
【0019】
特に限定されないが、本実施形態では、第1多孔質体3及び第2多孔質体4は、いずれ
も矩形状のシート部材からなる多孔質体により構成されている。各第1多孔質体3は、凸
曲面22a以外の、各凹曲面21aの一部を被覆する状態で支持体2に取り付けられてい
る。また、第2多孔質体4は、凸曲面22aの上下方向の一部を被覆するとともに、左方
向の端部及び右方向の端部それぞれが各凹曲面21aに配置された第1多孔質体3に重な
る状態で支持体2に取り付けられている。ここでは、凹曲面21aを構成する部分円筒面
の軸方向(上下方向)において、第2多孔質体4の長さは第1多孔質体3の長さよりも小
さくなっており、第2多孔質体4の両端部それぞれの全体が各第1多孔質体3と重なる重
なり部41を構成している。本実施形態では、第2多孔質体4は、第1多孔質体3の上下
方向の概ね中央に配置されている。したがって、上述のとおり、第2多孔質体4の露出面
側から見て、重なり部41の端縁41a、41b、41cは、第1多孔質体3に囲まれて
いる。なお、端縁41aは上下方向に沿う端縁であり、端縁41b、41cは左右方向に
沿う端縁である。
【0020】
上述の構成において、支持体2を構成する樹脂の材質は、射出成形が可能であれば特に
限定されない。例えば、ポリアミド系等の硬質合成樹脂を使用することができる。また、
第1多孔質体3及び第2多孔質体4を構成する材質は、上述の冷却水流路内で支持体2と
一体で冷却水の流路を規制可能であれば特に限定されない。例えば、セルロース系スポン
ジ、水膨潤性スポンジや、水可溶性のバインダーあるいは所定温度以上の温度で溶解又は
融解するバインダーによって、圧縮状態に維持され、所定の外的要因が付加されたことを
契機として膨大化する特性を有する発泡体又は非発泡性の多孔質体のような材料を使用す
ることができる。
【0021】
第1多孔質体3の材質と第2多孔質体4の材質とが同一であることは必須ではないが、
本実施形態では、特に好適な材質として、第1多孔質体3及び第2多孔質体4の材質に圧
縮状態のセルロース系スポンジを使用している。当該セルロース系スポンジは圧縮状態に
維持されている。そして、圧縮された状態のセルロース系スポンジは、水に接触すると、
水との接触が外的要因の付加となり、当該外的要因の付加を契機として圧縮前の状態に膨
大化する特性を有する。さらに具体的には、セルロース系スポンジとは、パルプ由来のセ
ルロースと、補強繊維として加えられた天然繊維(例えば、綿等)とからなる天然素材で
ある。セルロースは、親水基(OH)を有しており、化学的に水分になじみ易い性質を有
する。また、セルロース系スポンジは、多孔質の素材であり、加圧した状態で乾燥させる
とセルロース分子間が水素結合して圧縮状態に維持される一方、この状態から水分に晒さ
れると水分子がセルロース分子間の水素結合を解離して圧縮状態から復元する特性を有す
る。
【0022】
本実施形態では、第1多孔質体3及び第2多孔質体4は、インサート成形により支持体
2と一体化される。すなわち、個別に圧縮された状態の第1多孔質体3及び第2多孔質体
4を準備し、スペーサ1を成形するための金型内にそれらを配置した状態で金型内に支持
体2を構成する溶融樹脂が導入される。そして、第1多孔質体3又は第2多孔質体4と支
持体2とが直接接触している部分では、溶融樹脂が第1多孔質体3又は第2多孔質体4に
含浸することで、第1多孔質体3及び第2多孔質体4が支持体2に固着される。一方、第
2多孔質体4が支持体2に直接接触していない部分、すなわち、第2多孔質体4の重なり
部41は支持体2と固着されていないことになる。しかし、第2多孔質体4の重なり部4
1は、重なり部41が重ねられる第1多孔質体3の領域である被覆部32とともに、支持
体2を構成する溶融樹脂の圧力を受けて、第2多孔質体4の重なり部41と第1多孔質体
3の被覆部32とが水素結合により互いに付着する(
図2参照)。その結果、第1多孔質
体3と第2多孔質体4とは、一体の部材として取り扱うことが可能となる。
【0023】
上述の溶融樹脂は、金型のゲートから射出される。その結果として、支持体2には、金
型のゲートに対応する位置に、溶融樹脂の導入部位である樹脂導入部5が形成される。樹
脂導入部5は、支持体2において第1多孔質体3が取り付けられる側とは反対側でかつ第
1多孔質体3と重なる位置に設けられる。なお、
図3(a)に示す正面図では、第1多孔
質体3の図中手前側に第2多孔質体4が存在することになるが、位置関係の理解を容易と
するため、当該第2多孔質体4により被覆されている第1多孔質体3の端縁31を破線で
示している。また、
図3(b)に示す背面図では、支持体2のみが視認可能であり、第1
多孔質体3及び第2多孔質体4は、支持体2の反対側の面に存在することになるが、位置
関係の理解を容易とするため、支持体2に固着している第1多孔質体3の端縁及び第2多
孔質体4の端縁を破線で示し、第1多孔質体3よりも図中奥側に存在する第2多孔質体4
の端縁41a、41b、41cを一点鎖線で示している。
【0024】
なお、
図3(b)に示すように、本実施形態では、より好ましい形態として、第2多孔
質体の露出面側から見て、樹脂導入部5は、重なり部41と異なる位置(重なり部41と
重なることがない位置)に重なり部41と並ぶ状態で設けられている。本実施形態では、
特に、射出された溶融樹脂の移動距離が均一となるように、樹脂導入部5は、
図2におい
て、接続部22の凸曲面22aの頂部22b(凸曲面22aにおいて最も突出する部分)
から円弧部21の左右方向の遠方側の端部22cまでの距離の中央位置に設定されている
。また、重なり部41以外の第2多孔質体4が、第2多孔質体4の外周縁42と第1多孔
質体3の端縁31とが交差する交点52と、樹脂導入部5(樹脂導入部5の中心)とを接
続する仮想線51(図中に二点鎖線で示す)に挟まれる範囲内に収まるように形成されて
いる。第2多孔質体4の外周縁42は、仮想線51の傾きよりも小さい直線状に形成され
ている。ここで、仮想線51の傾きより小さい直線状とは、仮想線51の傾きよりも左右
方向に沿う直線の傾きに近い直線を意味する。また、第2多孔質体4の外周縁42は、交
点52から重なり部41の外方に延びる第2多孔質体42の外周部分である。
図3(b)
に示す実施形態では、第2多孔質体4の外周縁42は、左右方向に沿う直線状に形成され
ている。
【0025】
ここで、スペーサ1の製造時の溶融樹脂の流れについて説明する。
図4(a)は、スペ
ーサ1の製造時の溶融樹脂の流れを模式的に示す背面図である。また、
図4(b)は、不
具合が発生し易い構成に係るスペーサ(比較例)の製造時の溶融樹脂の流れを模式的に示
す背面図である。なお、
図4(a)では、
図3(b)において示した一点鎖線の記載を省
略している。
【0026】
図4(a)に示すように、本実施形態のスペーサ1では、樹脂導入部5に対応する金型
のゲートから溶融樹脂が射出されると、射出された溶融樹脂は金型内に広がっていく。上
述のように、本実施形態のスペーサ1では、樹脂導入部5が第1多孔質体3と重なる位置
に設けられているため、射出された溶融樹脂は、金型のゲートと対向する位置に存在する
第1多孔質体3に衝突した後、第1多孔質体3の背面に沿ってゲートから放射状に広がる
ことになる。
【0027】
また、上述のように、第2多孔質体4の重なり部41と支持体2との間には第1多孔質
体3の被覆部32が介在している。そのため、
図4(a)に示すように、第1多孔質体3
の溶融樹脂が進行する側の面(第1多孔質体3の背面)に第2多孔質体4の端縁41a、
41b、41c(
図3(a)、
図3(b)参照)は存在していない。したがって、溶融樹
脂は、第2多孔質体4の端縁41a、41b、41cに衝突することなく、金型内を円滑
に広がることになる。
【0028】
一方、
図4(b)に示す比較例のスペーサ20では、第2多孔質体4の端部と第1多孔
質体3とが重なっている順序が逆になっている。すなわち、第1多孔質体3と支持体2と
の間に第2多孔質体4の端部が介在する構成になっている。
【0029】
このような構成では、樹脂導入部5に対応する金型のゲートから溶融樹脂が射出される
と、
図4(a)に示す事例と同様に、射出された溶融樹脂は、第1多孔質体3に衝突した
後、第1多孔質体3の背面に沿ってゲートから放射状に広がっていく。
【0030】
しかしながら、比較例において、第1多孔質体3と第2多孔質体4とが重なる部分では
、第1多孔質体3と支持体2との間に第2多孔質体4の端部が介在しているため、
図4(
b)に示すように、第1多孔質体3の溶融樹脂が進行する側の面に第2多孔質体4の端縁
41a、41b、41cが露出している。したがって、溶融樹脂は、少なくとも、第2多
孔質体4の端縁41aに衝突することになる(
図4(b)では、端縁41aを太線で示し
ている。)。このような衝突が発生すると、第2多孔質体4の位置がずれたり、第1多孔
質体3と第2多孔質体4とが重なる部分において、第2多孔質体4と第1多孔質体3との
間に溶融樹脂が侵入する結果、第2多孔質体4の露出面側に溶融樹脂が回り込んだりする
可能性がある。このような現象が生じると、スペーサ20の品質が著しく低下してしまう
。
【0031】
これに対し、本実施形態のスペーサ1では、支持体2の射出成形時に、第2多孔質体4
の端縁41a、41b、41cを経由せずに第2多孔質体4の領域に流れ込むため、溶融
樹脂が第2多孔質体4の端縁41a、41b、41cを直接押圧することを抑制できる。
したがって、溶融樹脂の樹脂圧によって第2多孔質体4の位置がずれることや、溶融樹脂
が第2多孔質体4の露出面に回り込むことを抑制でき、多孔質体を備えるスペーサの品質
を向上させることができる。また、溶融樹脂は、樹脂導入部5から射出されると、第1多
孔質体3の背面側から第2多孔質体4の背面側に流れる。このとき、溶融樹脂が、一旦、
第2多孔質体4の外周縁42を経由して第2多孔質体4の背面領域外に出た後、再度、第
2多孔質体4の外周縁42を経由して第2多孔質体4の背面側に戻る虞は低くなっている
。したがって、第2多孔質体4の外周縁42が、溶融樹脂によって押されることは抑制さ
れる。
【0032】
加えて、本実施形態のスペーサ1では、樹脂導入部5を、第2多孔質体4の露出面側か
ら見て、重なり部41と並ぶ状態で配置する構成を採用しているため、溶融樹脂は、第2
多孔質体4の外周縁42を経由せずに第2多孔質体4の背面により向い易い。したがって
、第2多孔質体4の位置がずれたり、溶融樹脂が第2多孔質体4の露出面に回り込んだり
することをより抑制することができる。
【0033】
また、第1多孔質体3及び第2多孔質体4という形状の異なる複数の多孔質体を使用し
て支持体2に固着される多孔質体の全体形状を実現しているため、全体を1枚の多孔質体
で形成する場合に比べて、第1多孔質体3及び第2多孔質体4の形状を単純にすることが
できる。そのため、原反から多孔質体を切り出す際の廃棄部分を少なくすることができ、
材料歩留まり(取り数)を向上させることができる。特に、互いに独立した複数の第1多
孔質体3に対して、1つの第2多孔質体4が取り付けられる構成を採用する場合には、要
求される多孔質体の取付領域の形状が複雑でも、より単純な形状の第1多孔質体3と第2
多孔質体4とに分割することが可能となる。その結果、第1多孔質体3及び第2多孔質体
4を原反から切り出すときの歩留まりをより向上させることができる。
【0034】
以上のようなスペーサ1は、シリンダブロックにおける冷却水流路内に、その開口部か
ら挿入されて配置される。
図5(a)、
図5(b)は、本発明の一実施形態に係るスペー
サ1の使用状態における重なり部41の状態を模式的に示す縦断面図である。なお、
図5
(a)、
図5(b)は、シリンダブロックのシリンダボアの中心軸を含み、かつスペーサ
1が備える第2多孔質体4の重なり部41を通過する面に沿う部分縦断面図である。
【0035】
図5(a)は、スペーサ1がシリンダブロック10の冷却水流路6内に配置された状態
を示している。
図5(a)に示すように、スペーサ1は、第1多孔質体3及び第2多孔質
体4がシリンダボア11と対向する状態で冷却水流路6内に配置される。スペーサ1は、
冷却水流路6の開口部61を通じて冷却水流路6内に配置される。このとき、第1多孔質
体3及び第2多孔質体4が圧縮状態に維持されているため、第1多孔質体3及び第2多孔
質体4が冷却水流路6のシリンダボア11側の内側内壁部6aに干渉し難く、円滑に挿入
できる。そして、
図5(b)に示すように、シリンダブロック10の上面にシリンダヘッ
ド12がヘッドガスケット13を介して締結一体とされ、その後冷却水流路6内に図示し
ない冷却水導入口から冷却水14が導入される。
【0036】
上述のように、冷却水流路6内に冷却水14が導入されると、セルロース系スポンジか
らなる第1多孔質体3及び第2多孔質体4に冷却水14が接触し、第1多孔質体3及び第
2多孔質体4がシリンダボア11側に膨大化する。第1多孔質体3及び第2多孔質体4の
膨大化に伴って、第2多孔質体4の重なり部41の露出面(支持体2と反対側の面)4a
が冷却水流路6の内側内壁面6aに当接する。また、第1多孔質体3の露出面(支持体2
と反対側の面)3aが冷却水流路6の内側内壁面6aに当接する。このとき、
図5(b)
に示すように、第2多孔質体4の重なり部41の周囲は第1多孔質体3に囲まれた状態に
なる。
【0037】
上述のように、第2多孔質体4の重なり部41は、支持体2と直接接触していないため
支持体2に固着していない。圧縮状態にある場合、第2多孔質体4の重なり部41は、第
1多孔質体3と上述の水素結合により互いに付着した状態が維持されるが、冷却水流路6
内で膨大化が発生すると、当該水素結合による付着も解消されてしまう。その結果、第2
多孔質体4の重なり部41は、固着されていない遊端部になる。このような遊端部に冷却
水が衝突すると、遊端部が破損して離脱してしまう可能性がある。
【0038】
しかしながら、本実施形態の第2多孔質体4の重なり部41では、上述のとおり、重な
り部41の端縁41a、41b、41cが支持体2に固着された第1多孔質体3に囲まれ
ている。また、第2多孔質体4において、第1多孔質体3に囲まれていない重なり部41
以外の部分は、支持体2との間に第1多孔質体3が介在していないため、支持体2に直接
固着されている。そのため、膨大化時に遊端部となる重なり部41は、支持体2に固着さ
れた第1多孔質体3及び第2多孔質体4に囲まれることになる。すなわち、第2多孔質体
4の重なり部41は、支持体2に固定された第1多孔質体3の部分及び第2多孔質体4の
部分に囲まれるため、冷却水の水圧を直接受けることがなく、破損し難くなる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態のスペーサ1によれば、支持体2の射出成形時に、溶
融樹脂が第2多孔質体4の端縁を直接押圧することを抑制できる結果、溶融樹脂の樹脂圧
によって、第2多孔質体4の位置がずれることや、溶融樹脂が第2多孔質体4の露出面に
回り込むことを抑制でき、多孔質体を備えるスペーサの品質を向上させることができる。
また、本実施形態のスペーサ1では、第1多孔質体3と第2多孔質体4とを一部を重ねて
配置する構成を採用しているため、それぞれの多孔質体の形状を単純化することができる
結果、全体を1枚の多孔質体によって構成する場合に比べて材料歩留まりを向上させるこ
とができる。さらに、支持体の凹面や凸面に亘って1枚の多孔質体を取り付けるには、金
型の凹面や凸面に亘って1枚の多孔質体を設置する必要があるため、多孔質体の位置がず
れるおそれがあるが、本実施形態のスペーサ1では、第1多孔質体3と第2多孔質体4の
それぞれを凹面及び凸面に対応するように設置することもできる。したがって、第1多孔
質体3及び第2多孔質体4の位置ずれを抑えつつ、凹面や凸面を有するスペーサに第1多
孔質体3及び第2多孔質体4を取り付けることができる。
【0040】
そして、スペーサ1のように第1多孔質体3を円弧部21の凹曲面21aに取り付けるとともに、第2多孔質体4を接続部22の凸曲面22aに取り付ける構成を採用することで、第1多孔質体3をシリンダボアに求められる形状に形成し、第2多孔質体4をシリンダボア間部位に求められる形状に形成することができる。つまり、第1多孔質体3及び第2多孔質体4をシリンダブロックの各部位にとって望ましい形状とすることで、第1多孔質体3及び第2多孔質体4の機能を十分に発揮させることができる。
【0041】
続いて、
図6(a)から(c)、
図7から
図9、
図10(a)から(c)に基づいて、
本発明において採用し得る、第1多孔質体、第2多孔質体、樹脂導入部の他の事例につい
て説明する。なお、
図6(a)から(c)、
図7から
図9、
図10(a)から(c)は、
図3(a)と同様に、スペーサを正面側(第2多孔質体の露出面側)から見た図である。各
図では、各図中の第1多孔質体3及び第2多孔質体4の配置領域の全体を包含する支持体
2の図示を省略するとともに、樹脂導入部5を破線で示している。また、異なる形状を有
しているが、上述のスペーサ1の第1多孔質体3及び第2多孔質体4のそれぞれと同様の
機能を有する多孔質体には、同一の名称及び符号を用いている。
【0042】
上記実施形態では、好ましい形態として、
図3(b)に示す形態を説明したが、樹脂導
入部5は、第1多孔質体3と重なる位置であれば任意の位置に設定してもよい。例えば、
図6(a)に示すように、樹脂導入部5は、第1多孔質体3の上下方向及び左右方向の中
央部に対応する位置に設定されてもよい。また、
図6(b)に示すように、樹脂導入部5
は、第1多孔質体3と重なる位置であれば、重なり部41と重なる位置に設定することも
可能である。また、
図6(c)に示すように、樹脂導入部5は、第1多孔質体3において
重なり部41が位置する端部と左右方向反対側の端部に対応する位置に設定されてもよい
。これらの構成であっても、射出された溶融樹脂は、第2多孔質体4の端縁に衝突するこ
とはないため、上述の実施形態と同様に、第2多孔質体4の位置がずれることや、溶融樹
脂が第2多孔質体4の露出面に回り込むことを抑制することができる。
【0043】
また、上記実施形態では、重なり部41が矩形状の第1多孔質体3の短辺側に設定され
る構成について説明したが、重なり部41は、例えば、
図7に示すように、矩形状の第1
多孔質体3の長辺側に設定されてもよい。さらに、上記実施形態では、第1多孔質体3ご
とに1つの樹脂導入部5を設ける構成について説明したが、樹脂導入部5の数は、特に限
定されず、
図7に示すように、第1多孔質体3ごとに複数の樹脂導入部5が設けられても
よい。このような構成であっても、スペーサ1と同様の効果を得ることができる。
【0044】
さらに、上記実施形態では、1つの第1多孔質体3に対して1つの第2多孔質体4が重
ねられる構成について説明したが、
図8に示すように、1つの第1多孔質体3に対して複
数の第2多孔質体4(
図8では、3つ)が重ねられる構成であってもよい。なお、この例
では、樹脂導入部5を、それぞれの第2多孔質体4の重なり部41と重なることのない第
1多孔質体3の上下方向及び左右方向の中央部に対応する位置に設定している。ただし、
上述のとおり、第1多孔質体3と重なる位置であれば樹脂導入部5の数や位置は、任意に
設定することができる。
【0045】
また、上記実施形態では、第2多孔質体4の一方端全体が重なり部41になる構成、す
なわち、第2多孔質体4と支持体2とが直接接触する領域が重なり部41から見て1方向
のみに存在する構成について説明したが、第2多孔質体4の一方端全体が重なり部41に
なることは必須ではない。例えば、
図9に示すように、第2多孔質体4と支持体2とが直
接接触する領域が、重なり部41から見て互いに異なる2方向に存在する構成であっても
よい。このような構成であっても、樹脂導入部5が、第1多孔質体3と重なる位置に設定
されていれば、上述のスペーサ1と同様の効果を得ることができる。
【0046】
加えて、上記実施形態では、第1多孔質体3及び第2多孔質体4がいずれも矩形状のシ
ートである事例について説明したが、第1多孔質体3及び第2多孔質体4の形状は矩形状
に限定されない。例えば、
図10(a)に示すような、第2多孔質体4の形状が重なり部
41から離れるにしたがって、上下方向の幅が次第に細くなる台形状のシート状部材を第
2多孔質体4として採用することができる。より具体的には、第2多孔質体4は、上下方
向における幅が、重なり部41から離れる程、減少するように形成されている。そして、
上下方向における第2多孔質体4の最大寸法w1は、第1多孔質体3の最小寸法w2より
も小さく設定されている。この構成では、導入部位から導入された溶融樹脂は、第1多孔
質体3の背面側から第2多孔質体4の背面側に向った後、第2多孔質体4の外周縁42を
経由して再度第2多孔質体4の背面側に向うような流れを減らすことができる。したがっ
て、溶融樹脂により、第2多孔質体4の外周縁が押されることを抑制できる。また、
図1
0(b)に示すような、第2多孔質体4の形状が重なり部41から離れるにしたがって、
上下方向の幅が次第に細くなる半楕円状のシート状部材を第2多孔質体4として採用する
ことができる。
【0047】
さらには、
図10(c)に示すような、第2多孔質体4の形状が重なり部41から離れ
るにしたがって、上下方向の幅が次第に増大する台形状のシート状部材を第2多孔質体4
として採用することができる。しかしながら、第2多孔質体4の一方端全体が重なり部4
1を構成する場合、
図10(c)に示すような、重なり部41以外の第2多孔質体4が、
第2多孔質体4の外周縁42及び第1多孔質体3の端縁31が交差する交点52と、樹脂
導入部5とを接続する仮想線51に挟まれる範囲内に収まる状態で形成されていることが
より好ましい。この場合、第2多孔質体4の外周縁42は、仮想線51の傾きよりも小さ
い直線状に形成されていることがより好ましい。なお、ここでは、第2多孔質体4の形状
が重なり部41から離れるにしたがって連続的に変化する事例を示しているが、例えば、
ステップ状のように、第2多孔質体4の形状が重なり部41から離れるにしたがって上下
方向の幅が不連続に変化する構成であってもよい。また、
図10(c)に示す事例では、
第2多孔質体4の重なり部41が構成される側の第1多孔質体3の端縁は円弧状になって
いる。
【0048】
以上説明したように、本発明によれば、材料歩留りの改善及び品質の向上が図られたス
ペーサを提供することができる。
【0049】
なお、上述の実施形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したも
の以外でも、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。例えば、上述のセルロー
ス系スポンジには、気泡の大きさが非常に小さい微粒品、気泡の大きさが小程度の小粒品
、気泡の大きさが中程度の中粒品のいずれを用いてもよい。また、セルロース系スポンジ
は、セルロースと補強繊維とからなるものが好ましいが、これに限らず、セルロース単独
で構成されるものであってもよい。また、セルロース系スポンジとは、セルロース自体か
らなるスポンジの他、圧縮状態を保持できる程度にセルロースの水酸基を残したセルロー
ス誘導体、例えば、セルロースエ-テル類、セルロースエステル類等からなるスポンジ、
あるいは、これらの混合物からなるスポンジのいずれかから選ばれるものであってもよい
。さらには、第1多孔質体3及び第2多孔質体4は、多孔質体からなるものであれば、上
記以外の素材から構成することも排除されない。
【0050】
さらに、第1多孔質体3と第2多孔質体4との重なり合い部分の態様は、上述の実施形
態で例示したものに限らず、他の形成態様も可能である。また、本発明のスペーサとして
2気筒の内燃機関に適用されるスペーサを例示したが、これに限らず他の気筒数の内燃機
関にも適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 スペーサ
2 支持体
3 第1多孔質体
4 第2多孔質体
5 樹脂導入部
6 冷却水流路
10 シリンダブロック
11 シリンダボア
21 円弧部
22 接続部
31 第1多孔質体の端縁
41 重なり部
41a、41b、41c 重なり部における第2多孔質体の端縁
42 外周縁
51 仮想線
52 第2多孔質体の外周縁と第1多孔質体の端縁との交点