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特許7429957平板化竹材の製造方法および板化竹材の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】平板化竹材の製造方法および板化竹材の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B27J 1/00 20060101AFI20240202BHJP
   B27K 9/00 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
B27J1/00 M
B27K9/00 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020040996
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021142656
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】308010871
【氏名又は名称】株式会社ウッドスタイル
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】西村 幸平
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-156806(JP,A)
【文献】特許第177008(JP,C2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27J 1/00
B27K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
竹を割って節を含む割竹とし、
前記割竹の表皮上に形状変形可能な導電部材を載置させ、
前記導電部材を載置させた前記割竹を第1及び第2の電極で挟むとともにこの第1及び第2の電極に高周波電力を供給することによって前記割竹を高周波加熱し、
前記高周波加熱した前記割竹を前記第1及び第2の電極によってホットプレスして前記割竹を平板化することを特徴とする平板化竹材の製造方法。
【請求項2】
請求項記載の平板化竹材の製造方法において、前記割竹を複数準備し、前記高周波加熱及び前記平板化を前記複数の割竹に対して同時に行うことを特徴とする平板化竹材の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の平板化竹材の製造方法において、前記高周波加熱後に、前記第1及び第2の電極を予熱し、前記ホットプレスして前記割竹を平板化することを特徴とする平板化竹材の製造方法。
【請求項4】
複数の割竹を同時に挟むことが可能な大きさの第1及び第2の電極と、
前記複数の割竹の表皮上に載置させる形状変形可能な導電部材と、
前記第1及び第2の電極に高周波電力を供給する高周波電力供給装置と、
前記第1及び第2の電極を加熱する加熱装置と、
前記第1及び第2の電極間に圧力をかけて前記複数の割竹を同時に平坦化するプレス機構と、
を有することを特徴とする平坦化された平板化竹材の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平板化竹材、平板化竹材の製造方法及び平板化竹材の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
竹は、常緑性の多年生植物であり、毎年地下茎の節にある芽子から新しい竹を発生させ、数ヶ月で成竹になる。我が国における竹林面積は、平成24(2012)年には約16万ha(全森林の0.6%)であるが、竹の成長力は大きいことから、山林への侵食が日々進んでおり、放置竹林や拡大竹林が問題となっている。そこで、伐採した竹を有効利用することが望まれている。
【0003】
これまで、竹を加工して平板状の竹材として利用する試みがなされてきた。特許文献1~4には割竹を高周波加熱した後に加熱及び加圧して平板状整形する例が記載されている。竹素材の特徴は独特な質感の表皮と独特な形状の節の存在にあるが、これらの例はいずれも表皮や節を除去してから高周波加熱する例である。特許文献5には節を除去せずに残したままで高周波加熱する例が記載されている。特許文献6及び7は節については言及されていないが高周波加熱する例が記載されている。本出願人による従前の割竹の平板状整形の例(以下、「比較例」として引用する。)は、特許文献8に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-67902号公報
【文献】特開平6-320504号公報
【文献】特開平7-108507号公報
【文献】特開2008-120058号公報
【文献】特許177008号日本政府特許發明明細書
【文献】特開昭63-31704号公報
【文献】特開平6-182712号公報
【文献】特開2012-148527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、竹を加工して平板状の竹材とする際に高周波加熱をしたうえで加熱及び加圧して平板状整形すると、竹はその性質上形状が一定していないことから、加熱にむらが生じ、表面が炭化して黒く変色してしまうという問題があった。これは節を除去せずに残したままで高周波加熱した場合に顕著である。そこで、平坦化した竹材に塗装を施して表面の炭化部分を隠すことが試みられたが、竹の自然の表皮色感を利用できないし、竹材を利用した製品(家具、オブジェ、オーナメント等)において竹の経時劣化による表皮色変化を楽しむことができず、竹特有の消臭・抗菌効果を享受することができない、という問題があった。例えば特許文献6に記載の発明においては表皮の変色を防止するために塗布シールを用いており、特許文献7に記載の発明においては平板化した竹材を集成材として用いている。
【0006】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、竹の自然の表皮色感を利用でき、竹材を利用した製品(家具、オブジェ、オーナメント等)において竹の経時劣化による表皮色変化を楽しむことができ、竹特有の消臭・抗菌効果を享受することのできる平板化竹材を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、このような平板化竹材を生産性良く製造することが可能な製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態においては、節を含み、平坦化され、かつ表皮付の竹材であって、CIEL*a*b*色空間におけるL*値が40以上であることを特徴とする平板化竹材を提供する。
【0009】
この平板化竹材においては、さらに、CIEL*a*b*色空間におけるa*値が5以下であることが望ましい。また、表皮が露出していることが望ましい。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態においては、竹を割って節を含む割竹とし、割竹の表皮上に形状変形可能な導電部材を載置させ、導電部材を載置させた割竹を第1及び第2の電極で挟むとともにこの第1及び第2の電極に高周波電力を供給することによって割竹を高周波加熱し、高周波加熱した割竹を第1及び第2の電極によってホットプレスして割竹を平板化することを特徴とする平板化竹材の製造方法を提供する。
【0011】
この製造方法においては、割竹を複数準備し、高周波加熱及び平板化を複数の割竹に対して同時に行うことが望ましい。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態においては、竹を割って節を含む割竹とし、割竹を第1及び第2の電極で挟むとともにこの第1及び第2の電極に高周波電力を供給することによって割竹を高周波加熱し、高周波加熱後に、第1及び第2の電極を予熱し、予熱に引き続いて割竹を第1及び第2の電極によってホットプレスして割竹を平板化することを特徴とする平板化竹材の製造方法を提供する。
【0013】
この製造方法においては、割竹を複数準備し、高周波加熱、予熱及び平板化を複数の割竹に対して同時に行うことが望ましい。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態においては、複数の割竹を同時に挟むことが可能な大きさの第1及び第2の電極と、第1及び第2の電極に高周波電力を供給する高周波電力供給装置と、第1及び第2の電極を加熱する加熱装置と、第1及び第2の電極間に圧力をかけて複数の割竹を同時に平坦化するプレス機構とを有することを特徴とする平坦化された平板化竹材の製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施形態を用いることにより、竹の自然の表皮色感を利用でき、竹材を利用した製品(家具、オブジェ、オーナメント等)において竹の経時劣化による表皮色変化を楽しむことができ、竹特有の消臭・抗菌効果を享受することのできる平板化竹材を提供できる。
【0016】
また、本発明の一実施形態を用いることにより、節を含み、平坦化され、かつ表皮付の竹材を、加熱の均一性を高め、炭化を防止して竹の自然の表皮色感を維持し、歩留まりを高く、したがって生産性良く、製造することが可能となる。オートクレーブ処理が不要になるため、いちだんと生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(A)は、本発明の実施形態にかかる、節を含みかつ表皮付の割竹を示す図である。(B)は、節を含み、平坦化され、かつ表皮付の平板化竹材を示す図である。
図2】(A)は比較例である平板化竹材の製造方法を示したフロー図である。(B)は本発明の一実施形態にかかる平板化竹材の製造方法の概略を示した図である。(C)は本発明の他の実施形態にかかる平板化竹材の製造方法の概略を示した図である。
図3】本発明の実施形態にかかる平板化竹材の製造装置の側面図である。
図4】本発明の実施形態にかかる平板化竹材の製造装置の平面図である。
図5】本発明の実施形態にかかる平板化竹材の製造工程においてスチールウールを割竹の表皮上に載置させた状態を示した図である。
図6】(A)及び(B)はいずれも本発明の実施形態にかかる平板化竹材の製造工程において複数の割竹を同時に平坦化する例を示した図である。
図7】(A)は試料A(比較例)の表面の写真である。(B)は試料C1(スチールウール使用高周波加熱+予熱ありホットプレス)の平板化竹材の表面の写真である。
図8】試料A(比較例)と試料C1(スチールウール使用高周波加熱+予熱ありホットプレス)についてCIELAB測定を行った結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる形態で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、構成の一部が図面から省略されたりする場合がある。その他、本発明の属する分野における通常に知識を有する者であれば認識できるものである場合、特段の説明を行わないものとする。
【0019】
<割竹及び竹材>
図1(A)は、本発明の実施形態にかかる、節を含みかつ表皮付の割竹10を示す図である。長尺の竹材を所定長さ、例えば100cm~300cm程度に切断し、直径の大きさに応じて断面が180度の円弧状又は120度の円弧状になるように2つ又は3つに割って割竹10を準備する。割竹10は節11と節間12を交互に有する。節間12と比べて節11は直径が大きく、また竹の長手方向の太さ(直径)の違いによって割竹の左右高さも微妙に異なる。図1(B)は、節を含み、平坦化され、かつ表皮付の平板化竹材(製品)13を示す図である。割竹に対して後述する工程を施すことによって、平板化竹材(製品)13としたものである。平板化竹材(製品)13は平坦化された節11と平坦化された節間12を交互に有する。
【0020】
<製造方法:比較例>
図2(A)は特開2012-148527号公報に記載された比較例である平板化竹材の製造方法を示したフロー図である。はじめに伐採した竹を準備する(20)。11月から2月にかけて伐採した竹を用いることが望ましい。続いて、竹割りを行う(21)。竹は、竹の直径の大きさに応じて断面が180度の円弧状となるように2等分に分割するか、断面が120度の円弧状になるように3等分に分割することが望ましい。続いて、節11の内壁部の隔壁を削る(22)。続いて、竹の煮沸を行う(23)。割竹10を炭酸ナトリウム水溶液に浸漬し、15分~60分程度煮沸してアクを抜くとともに油を抜く。保管を要する割竹11は水につけて保管する(24)。続いて、オートクレーブ装置内で水蒸気加熱する(25)。オートクレーブの内部温度は120℃~180℃に設定し、60分~120分間煮沸する。続いて、ホットプレス装置を用いてホットプレスする(26)。70℃~150℃に加熱した平坦なステージと平坦なプレス板の間に割竹11を挟み、30分~1時間30分程度の時間をかけてゆっくりとプレスする。このようにして、図1(B)に示すような、節を含み、平坦化され、かつ表皮付の平板化竹材(製品)13が完成する。
【0021】
しかしながら、図2(A)の製造フローによって平板化竹材(製品)13を製造すると、加熱にばらつきが生じることから表面の炭化が発生し竹の自然な表皮色感が消失する。また、頻繁に竹材が破損し、破損しなかった部分のみを切り出して製品化するとして、歩留まりが低い。さらに、時間のかかるオートクレーブ処理(25)が必要となるために、生産性が低い。そこで、竹の自然の表皮色感を残し、歩留まりと生産性を高めた製造フローが本発明の実施形態にかかる製造フローである。
【0022】
<製造方法:実施形態1>
図2(B)は本発明の実施形態にかかる平板化竹材の製造方法を示したフロー図である。図2(A)と同様に、はじめに伐採した竹を準備する(20)。11月から2月にかけて伐採した竹を用いることが望ましい。続いて、竹割りを行う(21)。竹は、竹の直径の大きさに応じて断面が180度の円弧状となるように2等分に分割するか、断面が120度の円弧状になるように3等分に分割することが望ましい。続いて、節11の内壁部の隔壁を削る(22)。続いて、竹の煮沸を行う(23)。割竹10を炭酸ナトリウム水溶液に浸漬し、15分~60分程度煮沸してアクを抜くとともに油を抜く。図示しないが、保管を要する割竹11は水につけて保管する。
【0023】
続いて、高周波加熱を行う(27)。後述するところの、高周波加熱とホットプレスの双方を同一の電極間で行うことのできる装置を用いる。生産性を向上するために、割竹10を下電極と上電極の間に複数本並べて高周波加熱する。後述するとおり、高周波加熱における加熱ばらつきを抑えるため、形状変形可能な導電部材(スチールウール)を割竹の上に挿入する。並べる本数はステージの大きさにもよるが3本~5本が望ましい。電磁波の周波数は13MHz、27MHz又は40MHzであることが望ましい。この周波数であれば電力半減深度が深いので、割竹10の厚さにばらつきがあっても比較的均一な加熱が可能である。割竹10を3本並べる場合は、電流値を0.3A~1.0A程度に設定し、5分~10分程度高周波電力を供給する。
【0024】
続いて、同一の装置でホットプレスをする(28)。後述するように、下電極(平坦なステージ)と上電極(平坦なプレス板)の間に割竹11を挟み(スチールウールは除去する。)、加熱温度は70℃~150℃、30分~1時間30分程度の時間をかけてゆっくりとプレスする。加熱はボイラーの熱を利用してもよいしカーボンヒーターによる発熱を利用してもよい。このようにして、図1(B)に示すような、節を含み、平坦化され、かつ表皮付の平板化竹材(製品)13が完成する。
【0025】
図2(B)の製造フローによって平板化竹材(製品)13を製造すると、(形状変形可能な導電部材を用いること、および/または、予熱工程を経ることから)加熱にばらつきが生じにくく、表面の炭化がおこりにくい。したがって、竹の自然の表皮色感を維持することができる。また、加熱のばらつきに伴う水分の部分的蒸発を防ぐことができるので竹材が破損しにくくなり、歩留まりが高い。さらに、時間のかかるオートクレーブ処理(25)が不要となるために、生産性が高い。このようにして、竹の自然の表皮色感を残し、歩留まりと生産性を高めた製造フローを提供することができる。
【0026】
実施例は後述するが、この実施形態1の製造方法によって、節を含み、平坦化され、かつ表皮付の竹材であって、CIEL*a*b*色空間におけるL*値が40以上である、つまり明度が高い平板化竹材を製造することができる。さらに、CIEL*a*b*色空間におけるa*値が5以下である、つまり緑色の補色である赤色の成分が少ない平板化竹材を製造することができる。この平板化竹材は竹の自然の表皮色感(やや青味掛かった表皮色感)を有してなり、塗装をすることなく、表皮が露出している状態で、建材や家具の材料に用いれば、その竹の自然の表皮色感を活かすことができる。
【0027】
<製造方法:実施形態2>
図2(C)は本発明の別の実施形態にかかる平板化竹材の製造方法を示したフロー図である。竹の煮沸(23)までは図2(B)と同様の工程を経る。続いて、高周波加熱とホットプレスを並行して行う(29)。後述するところの、高周波加熱とホットプレスの双方を同一の電極間で同時に行うことのできる装置を用いる。生産性を向上するために、割竹10を下電極と上電極の間に複数本並べて高周波加熱する。スチールウールは挿入しない。並べる本数はステージの大きさにもよるが3本~5本が望ましい。電磁波の周波数は13MHz、27MHz又は40MHzであることが望ましい。この周波数であれば電力半減深度が深いので、割竹10の厚さにばらつきがあっても比較的均一な加熱が可能である。割竹10を3本並べる場合は、電流値を0.3A~1.0A程度に設定し、5分~10分程度高周波電力を供給する。
【0028】
同時に、ホットプレスをする(28)。高周波加熱をしつつ、ボイラーの熱やカーボンヒーターの発熱を利用して70℃~150℃の状態を維持しながら、30分程度の時間をかけてゆっくりとプレスする。このようにして、図1(B)に示すような、節を含み、平坦化され、かつ表皮付の平板化竹材(製品)13が完成する。
【0029】
図2(C)の製造フローによって平板化竹材(製品)13を製造すると、時間のかかるオートクレーブ処理(25)が不要となるために、比較例と比べて生産性が高い。そして、高周波加熱とホットプレスを同時に行うことから、さらに製造にかかる時間を短縮でき、いちだんと生産性が高くなる。
【0030】
<製造装置>
図3は本発明の実施形態にかかる平板化竹材の製造装置30の側面図であり、図4はその平面図である。図3によれば、基台31と天井38の間の下電極(平坦ステージ)32と上電極(平坦プレス板)33との間の空間34に割竹を挿入する。下電極(平坦ステージ)32は絶縁体である耐熱エポキシブロック35を介して上下可動ステージ36と接続されている。上下可動ステージ36は複数の油圧シリンダ37を介して基台31と接続されている。
【0031】
図4は平板化竹材の製造装置30の空間34の高さの平面図である。図4によれば、下電極32及び図示しない上電極33は高周波発生回路391が高周波配線390を介して接続されている。高周波発生回路391は制御装置392によって制御される。高周波配線390は電磁波の周波数が13MHz、27MHz又は40MHzであるときはストリップ状の銅線路であるが、周波数がさらに高い2.45GHzや915MHzといったマイクロ波を用いる場合は導波管が用いられる。このようにして高周波電力が下電極32及び図示しない上電極33に供給される。
【0032】
図4に示すとおり下電極32及び図示しない上電極33は長方形状をしている。具体的には、幅470mm、長さ4100mmである。この下電極(平坦ステージ)32上に、例えば、3本の割竹を並べることができる。割竹の幅を100mm以内とすれば、50mm程度のマージンを維持して3本の割竹を並べて配置することが可能になる。
【0033】
図4に示すとおり下電極32及び図示しない上電極33にはボイラー40と配管41が接続されている。ボイラー40は高温の高圧水蒸気を生成し、この高圧水蒸気は配管41を経由して下電極32及び図示しない上電極33に供給される。下電極32及び図示しない上電極33の内部には空洞があり、その空洞に高圧水蒸気が供給されることによって、下電極32及び図示しない上電極33が加熱される。下電極32は、複数の油圧シリンダ37によって上下可動ステージ36を動かすことによって上下可動である。このため製造装置30は、下電極32及び上電極33を加熱しながら、下電極32及び上電極33の距離を縮めることができる(つまりホットプレスをすることができる。)。
【0034】
高周波電力の供給とホットプレスは独立して動作させることができる。したがって、高周波電力の供給とホットプレスを順次動作させることもできれば、同時に動作させることもできる。(1)高周波電力の供給をし、続いてホットプレスをする、(2)高周波電力の供給をし、予熱をし、ホットプレスをする、(3)高周波電力の供給をするとともに同時に予熱をする、続いてホットプレスをする、(4)高周波電力の供給とホットプレスを同時に行う、という具合にさまざまなモードで動作させることが可能となる。
【0035】
<製造装置(変形例)>
図4においては下電極32及び図示しない上電極33の加熱はボイラー40から供給される高温の高圧水蒸気で行ったが、ボイラー40及び配管41の代わりに下電極32及び図示しない上電極33の内部に組み込まれた電気ヒーター(例えば、抵抗加熱方式のカーボンヒーター)を用いても良い。電気ヒーターを用いる場合は、ボイラーを用いる場合と比較して、高速に加熱することが可能となる。したがって、上述した予熱動作が不要となる。
【0036】
<形状変更可能な導電部材の載置>
図5に製造方法の実施形態1にかかる平板化竹材の製造工程においてスチールウール50(形状変更可能な導電部材)を下電極32上に配置された割竹10の表皮上に載置させた状態を示した図を示す。凸状に湾曲した割竹の表皮側短手方向中央部を長手方向に連続してスチールウール50を配置する。このような位置関係でスチールウール50を高周波加熱の際に配置することによって、スチールウール50が竹の長手方向の太さ(直径)の違いによって割竹の長手方向における高さ位置の差、及び複数本並べた各割竹10の高さ位置の差を吸収する。長手方向にまんべんなく、ばらつきの発生を防止しつつ、高周波加熱をすることが可能となる。なお、スチールウール50は節11の近傍のみに局所的に配置することで足りる場合がある。このスチールウール50は高周波加熱の直前に挿入し、加熱処理が終了した後に取り出される。
【0037】
形状変更可能な導電部材はスチールウールであることが望ましいが、形状変形可能な導電性樹脂(ポーラス状のポリアセチレン、導電性ゴム等)、導電性カーボン粉を含有した樹脂、導電性糸によるパンチングを施した導電性シート(金属泊又は金属メッシュ等)又は非導電性シート(樹脂シート又はグラスウール等)などでもよい。
【0038】
形状変更可能な導電部材は、凸状に湾曲した割竹の表皮側短手方向中央部を長手方向に連続して配置することが望ましいが、節間12のみ、または、節11の近傍のみに局所的に配置してもよい。いずれの載置方法でも、導電部材を載置しない場合と比較して、電界集中が起こりにくく、部分的な乾燥がおこりにくくなって割れの発生が抑止され歩留まりが向上する。同時に、部分的な炭化を防止でき竹の自然の表皮色感を残すことができる。
【0039】
図6(A)及び(B)はいずれも本発明の実施形態にかかる平板化竹材の製造工程において複数の割竹を同時に平坦化する例を示した図である。いずれも、下電極32上に配置された複数の割竹10上を一枚のスチールウール50で覆う例である。図6(B)に示したとおり、割竹の高さにばらつきが存在してもスチールウール50が弾性変形して高さの差を吸収する。その結果、電界集中が起こりにくく、部分的な乾燥がおこりにくくなって割れの発生が抑止され歩留まりが向上する。同時に、部分的な炭化を防止でき竹の自然の表皮色感を残すことができる。
【0040】
<平板化竹材を利用した応用製品>
上記した平板化竹材は、竹の自然の表皮色感を残した状態で提供される。仮に生の青竹感を持たせたければ従来のように塗装を施しても良いが、その竹の自然の表皮色感を活かしたければ無塗装で使用することも可能である。もちろん、防水用に透明樹脂によってコーティングしても構わない。
【0041】
本発明の平板化竹材は、家具、オブジェ、オーナメント等に利用することができる。また、防火耐火処理(竹の組織中に含まれる空孔に耐火樹脂を導入する)を施すことによって建材としても利用することができる。そして、このような応用製品に無塗装で表皮が露出している上記実施態様の平板化竹材を用いると、竹特有の消臭・抗菌効果を享受することのでき、より商品価値が高まる。
【実施例
【0042】
<割竹の準備>
11月に島根県にて伐採した竹(直径約10cm)を約3mに切り出し(そのなかに多数の節が含まれる)、鋸を利用して2等分に竹割りをし、平坦化しやすいように節部11の内壁部の隔壁をノミで削った。引き続いて、このようにして得られた割竹を炭酸ナトリウム水溶液に浸漬し、30分煮沸してアクを抜くとともに油を抜いた。
【0043】
<試料A(比較例)>
準備した割竹をオートクレーブに入れ、内部温度を150℃に設定し120分間煮沸した。引き続いて約30分かけて約100℃でホットプレスを行った。この条件では、一部の節間で割れが観測されたが残部の節間では割が観測されないもの等が混在した。素材取りをした竹材表面は一様に炭化の痕跡がみられ、やや褐色化していた。
【0044】
<試料B1~B4(高周波加熱+ホットプレス)>
準備した竹材に、前述した、高周波加熱とホットプレスの双方を同一の電極間で行うことのできる装置を用いて高周波加熱を行った。電磁波の周波数は13MHz、電流値は0.3A~0.4Aとした。試料Aはスチールウールを割竹上に載置することなく約20分の間高周波電力を供給した。引き続いて約30分かけて約100℃でホットプレスを行った。この条件で4回実施したところ、ほぼ破裂してしまったもの(B4)、一部の節間で割れが観測されたが残部の節間では割れが観測されないもの(B1~B3)、等が混在した。素材取りをした竹材表面は一様に炭化の痕跡がみられ、やや褐色化していた。
【0045】
<試料C1~C4(スチールウール使用高周波加熱+予熱ありホットプレス)>
準備した割竹にスチールウールを載置して約8分の間高周波電力を供給した。高周波電力の供給条件(周波数および電流値)は試料Aと同様である。高周波電力の供給を止めた後にスチールウールを取り出し、引き続いて、約10分上下電極を予熱して120℃程度まで上昇させた。さらに引き続いて、約30分かけて約100℃でホットプレスを行った。この条件で4回実施したところ、すべての試料サンプル(B1~B4)で割れが観測されることのない平板化された竹材が得られた。素材取りをした竹材表面には炭化の痕跡が確認されず、竹の自然の表皮色感が維持されていた。
【0046】
<試料D1、D2(スチールウール使用高周波加熱+予熱なしホットプレス)>
試料Dは、準備した割竹にスチールウールを使用して約8分の間高周波電力を供給した。高周波電力の供給条件(周波数および電流値)は試料Aと同様である。高周波電力の供給を止めた後にスチールウールを取り出し、引き続いて、予熱を経ることなく、約20分かけて約100℃でホットプレスを行った。その結果、一部の節間で割れが観測されたもの、残部には割れが発生せず、一定面積の平板化された竹材が得られた。素材取りをした竹材表面はわずかに褐色化していたが、竹の自然の表皮色感も残っていた。
【0047】
<比較例と実施例との対比>
以上の実施例より、高周波加熱を利用することによってオートクレーブにかかる時間を除くことができ生産性が大幅に向上することが確認された。高周波加熱をするもののなかで比較すると、高周波加熱時のスチールウールの使用及びホットプレス前の予熱はいずれも独立に炭化の抑止と歩留まり向上に寄与することが確認できた。また、高周波加熱時のスチールウールを使用し、かつ、ホットプレス前の予熱を行うと、より高い歩留まり及び竹の自然の表皮色感が維持できることが確認できた。
【0048】
図7(A)は試料A(比較例)にかかる表皮付きの平板化竹材(サンプルサイズ80×80mm)の表面の写真である。(B)は試料C1(スチールウール使用高周波加熱+予熱ありホットプレス)にかかる表皮付きの平板化竹材(サンプルサイズ80×80mm)の表面の写真である。試料C1は試料Aと比べても竹の自然の表皮色感が維持できている。
【0049】
図8は試料A(比較例)と試料C1(スチールウール使用高周波加熱+予熱ありホットプレス)についてCIELAB測定を行った結果である。測定は島根県産業技術センターにて行った。測定装置は有限会社東京電色の分光型測色計TC-1800(D7)を用いた。測定方法として反射光測定を用い、表色系はCIELAB(CIEL*a*b*色空間)、光学条件はD-7°、標準光源としてD65(昼光光源)を用いた。試料は書く測定スポット毎に5回測定し、その平均値を試料の測定値とした。
【0050】
CIEL*a*b*色空間におけるL*値は明るさ(明度)に対応している。試料A(比較例)においてはL*値は33.01~37.38に分布しており40には遠く及ばない。これに対して、試料C1(スチールウール使用高周波加熱+予熱ありホットプレス)においては、L*値は41.28~46.70に分布しており40以上の明度を実現できている。本実施形態の一部であるスチールウール使用の高周波加熱と予熱ありホットプレスとを組み合わせると、従来にない竹の自然の表皮色感を有する平板化竹材を提供することができる。
【0051】
CIEL*a*b*色空間におけるa*値は赤色の強さに対応している。赤色は緑色の補色であるため、a*が小さいと外見上青々としていることを意味している。試料A(比較例)においてはa*値は5を超える5.12~5.84に分布しており赤色がかなり強い。したがって、青々としたニュアンスが感じられない。これに対して、試料C1(スチールウール使用高周波加熱+予熱ありホットプレス)においては、a*値は2.58~3.82に分布しており5以下であることから外見上竹の自然の表皮色のニュアンスが感じられる。
【符号の説明】
【0052】
10 割竹
11 節
12 節間
13 平板化竹材
30 平板化竹材の製造装置
31 基台
32 下電極(平坦ステージ)
33 上電極(平坦プレス板)
35 耐熱エポキシブロック
36 上下可動ステージ
37 油圧シリンダ
38 天井
391 高周波発生回路
40 ボイラー
50 導電部材(スチールウール)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8