(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】パイプ抱持バンド用仮止め片
(51)【国際特許分類】
F16B 2/08 20060101AFI20240202BHJP
E04D 13/08 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
F16B2/08 A
F16B2/08 F
F16B2/08 H
E04D13/08 311B
(21)【出願番号】P 2020060082
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】593178409
【氏名又は名称】株式会社オーティス
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】上西窪 照明
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-084850(JP,A)
【文献】実開昭62-121415(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/08
E04D 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプを抱持するパイプ抱持部と、該パイプ抱持部の基端部から延出し、厚さ方向に貫通する挿通孔を有した取付部とを備えた抱持部材を有したパイプ抱持バンドにおいて、前記挿通孔に挿通した固着具に用いられるパイプ抱持バンド用仮止め片であって、
該パイプ抱持バンド用仮止め片は、弾性板材よりなり、厚さ方向に貫通し、相互に平行な対向辺縁部を少なくとも一組備えた孔部を備え、
一組の前記対向辺縁部のそれぞれには切込み部が形成されており、
一組の該切込み部は、それぞれ対向した位置に形成されて
おり、
前記切込み部は、前記対向辺縁部の中心位置に設けられており、
前記切込み部が形成された前記対向辺縁部間の離隔距離は、前記挿通孔の径よりも小さい寸法であり、
前記切込み部が形成された前記対向辺縁部の長さ寸法は、前記挿通孔の径よりも大きい寸法であることを特徴とするパイプ抱持バンド用仮止め片。
【請求項2】
請求項1において、
前記孔部には、前記切込み部が一組の前記対向辺縁部のそれぞれの中心位置のみに設けられていることを特徴とするパイプ抱持バンド用仮止め片。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記孔部は長孔に形成され、
前記切込み部は、長辺側の前記対向辺縁部に形成されていることを特徴とするパイプ抱持バンド用仮止め片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ抱持バンドの挿通孔に挿通した固着具に用いられるパイプ抱持バンド用仮止め片に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、梱包の際や組立時のパイプ抱持バンドに挿通されているボルト等の固着具を仮止めするのに用いられるパイプ抱持バンド用仮止め片が知られている(例えば、特許文献1)。このようなパイプ抱持バンド用仮止め片が用いられることによって、パイプ抱持バンドの梱包の際においてはナットを締結せずとも各部材がばらけることを防ぐ。そして、パイプ抱持バンドの組立時においてはナットを緩めて外すような手間がないので迅速に作業を行うことができる。さらに、高所などでのパイプ抱持バンドの取付作業において、固着具の脱落を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のようなパイプ抱持バンド用仮止め片は、円形の孔部に多数の切込み部が放射状に配されて設けられている。そのため、切込み部の構造が複雑であり、製作しにくいものである。また、固着具により取り付けやすい改良が求められている。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は容易に製作でき、また固着具に取り付けやすいパイプ抱持バンド用仮止め片を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のパイプ抱持バンド用仮止め片は、パイプを抱持するパイプ抱持部と、該パイプ抱持部の基端部から延出し、厚さ方向に貫通する挿通孔を有した取付部とを備えた抱持部材を有したパイプ抱持バンドにおいて、前記挿通孔に挿通した固着具に用いられるパイプ抱持バンド用仮止め片であって、該パイプ抱持バンド用仮止め片は、弾性板材よりなり、厚さ方向に貫通し、相互に平行な対向辺縁部を少なくとも一組備えた孔部を備え、一組の前記対向辺縁部のそれぞれには切込み部が形成されており、一組の該切込み部は、それぞれ対向した位置に形成されており、前記切込み部は、前記対向辺縁部の中心位置に設けられており、前記切込み部が形成された前記対向辺縁部間の離隔距離は、前記挿通孔の径よりも小さい寸法であり、前記切込み部が形成された前記対向辺縁部の長さ寸法は、前記挿通孔の径よりも大きい寸法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のパイプ抱持バンド用仮止め片は上述した構成とされているため、製作が容易となり、また固着具が取り付けやすくなっている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(a)は、パイプ抱持バンドの挿通孔に挿通された固着具に係止されている状態の本発明の一実施形態に係るパイプ抱持バンド用仮止め片の模式的平面図、(b)はパイプ抱持バンド用仮止め片の模式的正面図である。
【
図2】(a)は、パイプ抱持バンドの取付部の模式的側面図、(b)は、
図1(a)のX-X線矢視における模式的断面図である。
【
図3】(a)は、パイプ抱持バンドがパイプを抱持している状態の模式的平面図、(b)は、(a)の模式的分解斜視図である。
【
図4】(a)~(f)は、それぞれパイプ抱持バンド用仮止め片の変形例の模式的正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。まず、パイプ抱持用バンド仮止め片の基本構成について説明する。なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
【0010】
本実施形態のパイプ抱持バンド用仮止め片(以下「仮止め片10」という。)について説明する。
仮止め片10は、パイプ8を抱持するパイプ抱持部2と、パイプ抱持部2の基端部21から延出し、厚さ方向に貫通する挿通孔31を有した取付部3とを備えた抱持部材4を有したパイプ抱持バンド1において、挿通孔31に挿通した固着具5に用いられる。仮止め片10は、弾性板材よりなり、厚さ方向に貫通し、相互に平行な対向辺縁部12を少なくとも一組備えた孔部11を備え、一組の対向辺縁部12のそれぞれには切込み部13が形成されており、一組の切込み部13は、それぞれ対向した位置に形成されている。
以下、詳しく説明する。
【0011】
パイプ抱持バンド1について説明する。
図1(a)に示すように、パイプ抱持バンド1は、帯板材が半円形に形成されているパイプ抱持部2と、パイプ抱持部2の基端部21から外方に直線的に延出している取付部3とを備えた抱持部材4を1組有している。1組のパイプ抱持部2の他端部22同士が連結されることで、パイプ抱持バンド1は他端部22を軸にして開閉可能となっている。
図2(a)に示すように、取付部3には、円状の挿通孔31が長手方向に並んで2つ形成されている。
【0012】
次に、仮止め片10について説明する。
仮止め片10は、長方形状の弾性板材よりなっている。弾性板材は可撓性を有する金属材料であってもよく、可撓性を有する樹脂材料であってもよい。仮止め片10は、取付部3よりも長手方向の寸法が小さく形成されており、取付部3の挿通孔31に挿通しているボルト等の固着具5に係止された際に、仮止め片10全体が取付部3に重なる大きさ・形状に形成されている(
図2(b)参照)。仮止め片10は、長手方向に並んだ2つの長方形状の孔部11を有している。孔部11は、仮止め片10の厚さ方向に貫通している。そして、孔部11は、相互に平行な対向辺縁部12を有している。孔部11の長辺側の対向辺縁部12は12A、孔部11の短辺側の対向辺縁部12は12Bと符号を付す。長辺側の対向辺縁部12Aは、仮止め片10の長手方向に延び、短辺側の対向辺縁部12Bは、仮止め片10の短手方向に延びて形成されている。このうち長辺側の対向辺縁部12Aのそれぞれには、対向辺縁部12Aから遠ざかるように仮止め片10の短手方向に延びた切込み部13が形成されている。つまり、仮止め片10は、長方形状(長孔)に形成された孔部11と、一組(2つ)の切込み部13とを有している。一組の切込み部13は、固着具5を安定して固定することができるように、それぞれ対向した位置に形成されている。また、切込み部13,13の外側端部13a,13a間の距離W3は、取付部3の挿通孔31の径よりも大きく形成されている。切込み部13は、それぞれ対向辺縁部12の中心位置に設けられるのが望ましい。
【0013】
図2(a)の取付部3の側面図において、仮止め片10の孔部11及び切込み部13を二点鎖線で示している。孔部11の長辺側の対向辺縁部12A,12A間の離隔距離W1は、取付部3の挿通孔31の径よりも小さく形成されている。そして、孔部11の短辺側の対向辺縁部12B,12B間の離隔距離W2は、取付部3の挿通孔31の径よりも大きく形成されている。取付部3の厚さ方向において、孔部11,11は取付部3の挿通孔31,31と重なる位置に形成されている。
【0014】
次に仮止め片10の使用方法について説明する。
固着具5は、一方の取付部3の挿通孔31に挿通される。これにより、固着具5の先端部51がパイプ抱持バンド1の取付部3の内方へ突出する。そして、固着具5が先端部51から仮止め片10の孔部11に圧入することで、
図1(a)のX-X線矢視断面図である
図2(b)に示すように、仮止め片10は固着具5に係止される。
【0015】
仮止め片10は弾性板材よりなっているので、長辺側の対向辺縁部12Aやその周辺部が固着具5を挟み込むように弾性付勢力が働く。これにより、仮止め片10は固着具5から脱落しにくくなる。また、固着具5がネジ溝を有するボルト等であれば、ネジ溝に対向辺縁部12Aの一部がはまるので、仮止め片10は固着具5からより脱落しにくくなる。そして、固着具5の頭部52と仮止め片10との間に一方の取付部3が介在する態様となるので、固着具5は、パイプ抱持バンド1から脱落しにくくなる。このような仮止め片10の使用は、パイプ抱持バンド1の梱包時やパイプ抱持バンド1の使用時に、固着具5をパイプ抱持バンド1に仮止めさせる場合に有効である。固着具5は、予め仮止め片10によって取付部3に仮止め状態(
図1(a)参照)で梱包することが可能なので、パイプ抱持バンド1は、梱包からといてすぐに使用することが可能となる。そして、仮止め片10によって固着具5が固定されているので、作業中の固着具5の落下が防止され、また、作業中に固着具5が落下しないように手で押さえる必要がないので、迅速にパイプ抱持バンド1の取付作業を行うことができる。
【0016】
本実施形態の仮止め片10は、矩形状の孔部11と1組の切込み部13とが形成されたものであるので、特許文献1に記載されたものと比べて容易に製作できコストの低減化が可能となる。また、孔部11は、長辺側の対向辺縁部12A,12A間の離隔距離W1が取付部3の挿通孔31の径よりも小さく形成されているので、固着具5を強固に挟み込むような弾性付勢力が働きやすくなっている。さらに、長辺側の対向辺縁部12Aの長さでもある短辺側の対向辺縁部12B,12B間の離隔距離W2が取付部3の挿通孔31の径よりも大きく形成されている。そのため、孔部11に固着具5が挿通された際に、孔部11の周辺部が変形しやすくなり、固着具5が孔部11に挿通しやすくなっている。
【0017】
次にパイプ抱持バンド1をパイプ8に抱持する方法について、
図3を参照して説明する。なお、ここではパイプ8は住宅等の外壁に取り付けられている足部材7によって固定される竪樋を想定している。
抱持部材4,4をパイプ抱持部2,2の他端部22,22を軸にして開く。そして、パイプ8がパイプ抱持部2,2内に位置するようにパイプ抱持バンド1を移動させる。パイプ8がパイプ抱持部2,2内に位置したら、抱持部材4,4をパイプ抱持部2,2の他端部22,22を軸にして閉じる。そして、
図3(a)に示すように、一方の取付部3の挿通孔31、仮止め片10の孔部11、足部材7の長孔71、他方の取付部3の挿通孔31の順に固着具5を挿通し、固着具5の先端部51をナット6によって締結させる(取付部3の挿通孔31、仮止め片10の孔部11、足部材7の長孔71については
図3(b)参照)。以上のようにして、パイプ抱持バンド1はパイプ抱持部2,2によりパイプ8を抱持する。
【0018】
次に、仮止め片10の各変形例について
図4(a)~(f)を参照して説明する。なお、上述した実施形態と共通する部分の説明は省略する。
図4(a)及び
図4(b)の仮止め片10A,10Bでは、上述した実施形態における短辺側の対向辺縁部12Bに相当する部位である辺縁部12Cの構成が上述した実施形態の対向辺縁部12Bと異なっている。辺縁部12Cは、長辺側の対向辺縁部12A,12A間を接続するように設けられており、
図4(a)の仮止め片10Aではそれぞれの孔部11から遠ざかるように湾曲状に形成され、
図4(b)の仮止め片10Bではそれぞれ孔部11から遠ざかるようにやじり状に形成されている。
【0019】
図4(c)では、仮止め片10Cに孔部11が1つ形成されている。孔部11は、仮止め片10Cの長手方向の広範囲に延びた長孔状に形成されている。そして、孔部11の長辺側の各対向辺縁部12A,12Aには、それぞれ2つの切込み部13が形成されている。つまり、仮止め片10Cは、切込み部13を二組(4つ)有する構成となっている。各組の切込み部13はそれぞれ対向した位置に形成されている。仮止め片10Cは、1つの孔部11に複数の固着具5を圧入させることが可能となっている。
【0020】
図4(d)では、仮止め片10Dの孔部11が、
図1~
図3に示している上述した実施形態の孔部11が90
度回転した形状の構成となっている。具体的に説明すると、仮止め片10Dにおいて、孔部11の長辺側の対向辺縁部12Aが仮止め片10Dの短手方向に延びて形成され、孔部11の短辺側の対向辺縁部12Bが長手方向に延びて形成されている。切込み部13は、長辺側の対向辺縁部12Aから遠ざかるように、長手方向に延びて形成されている。このような仮止め片10Dでは、仮止め片10Dの長手方向における孔部11が占める割合を小さくすることができる。そのため、取付部3の複数の挿通孔31同士の間隔が狭く形成されていても、仮止め片10Dに取付部3の各挿通孔31に対応する数の孔部11を形成しやすくなっている。このような孔部11が形成された仮止め片10Dであっても長辺側の対向辺縁部12Aにより、孔部11とその周辺部が、固着具5が挿通された際に変形しやすくなっている。
【0021】
図4(e)の仮止め片10Eでは、孔部11が正方形状に形成されている。そして、4つの対向辺縁部12のそれぞれに、切込み部13が外方に延びて形成されている。各対向辺縁部12の一片の長さは、取付部3の挿通孔31の径よりも小さく形成されている。このような仮止め片10Eでは、孔部11に固着具5が挿通される際に、固着具5は4つの対向辺縁部12に接触しながら圧入される。そのため仮止め片10は、強固に固着具5に仮止めされる。
【0022】
図4(f)の仮止め片10Fは、略正方形状の弾性板材からなっており、中心に
図1~
図3に示している上述した実施形態と略同じ孔部11を1つ有している。切込み部13は、孔部11の長辺側の対向辺縁部12Aにそれぞれ1つずつ形成されている。仮止め片10Fは、取付部3に挿通孔31を1つだけ有しているようなパイプ抱持バンド1に好適に用いることができる。
【0023】
仮止め片10は、上述した各実施形態(変形例)に限定されることはなく、上述した各実施形態の特徴的事項が組み合わされたものであってもよい。また、仮止め片10の形状も図面に示されているものに限定されることはない。たとえば、仮止め片10は、全体の形状が、取付部3よりも大きいものであってもよい。また、上述した各実施形態では、切込み部13は、短辺側の対向辺縁部12Bに形成されていないが、短辺側の対向辺縁部12Bに切込み部13が形成されてもよい。また、
図1等の孔部11が2つ形成されている仮止め片10では、長辺側の各対向辺縁部12Aに切込み部13が一つ形成されているが、複数形成されてよい。また、上述した各実施形態において、孔部11は一つまたは二つ形成されているが、これに限定されることはなく、取付部3に設けられている挿通孔31の数に合わせて孔部11の数が適宜選択されればよい。また、仮止め片10に複数の孔部11が設けられている場合において、各孔部11の形状がそれぞれ異なっていてもよい。
【0024】
仮止め片10が用いられるパイプ抱持バンド1は、図面に示されているようなものに限定されることはない。例えば、特許文献1に記載されているような他端部22の結合を解除して分離可能なパイプ抱持バンド1であってもよい。そのようなものであれば、他方の抱持部材4を反転させて一方の抱持部材4に重ね合わせた状態で、一方の取付部3の挿通孔31から固着具5を挿入し、他方の取付部3の挿通孔31から露出した固着具5の先端部51に、
図4(f)の仮止め片10Fを圧入して係止させてもよい。この際、一方の取付部3と他方の取付部3との間に、仮止め片10が介在しているのが好適である。
【符号の説明】
【0025】
1 パイプ抱持バンド
2 パイプ抱持部
21 基端部
3 取付部
31 挿通孔
4 抱持部材
5 固着具
8 パイプ
10,10A~10F パイプ抱持バンド用仮止め片(仮止め片)
11 孔部
12,12A,12B 対向辺縁部
13 切込み部
W1,W2 離隔距離