(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】保護板
(51)【国際特許分類】
H02G 9/02 20060101AFI20240202BHJP
H02G 1/06 20060101ALI20240202BHJP
F16B 5/07 20060101ALI20240202BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
H02G9/02 050
H02G1/06
F16B5/07 L
F16L57/00 A
(21)【出願番号】P 2020097014
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】505091167
【氏名又は名称】北勢工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】北山 秀晴
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-141577(JP,A)
【文献】特開平11-210931(JP,A)
【文献】特開2004-183803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 9/02
H02G 1/06
F16B 5/07
F16L 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、前記本体部の一方から外方に向かって突出した半円形状の突出部と、前記本体部の他方において前記突出部に対応する円弧形状に陥入した陥入部と、を備えた保護板であって、
一の保護板の前記陥入部に他の保護板の前記突出部が嵌まり込むようにして複数の保護板が敷設されるとき、
前記突出部は、隣接する保護板の陥入部と係合する係合爪を有し、
前記陥入部は、前記係合爪が係合する係合溝を有することを特徴とする保護板。
【請求項2】
前記係合爪は、基端側において前記突出部の下面側と連続するように突出し、先端側において上方に屈曲した形状に形成され、
前記係合溝は、前記陥入部の下面側に掘り込み形成されていることを特徴とする請求項1に記載の保護板。
【請求項3】
前記突出部は、該突出部の下面側においてその外周縁に沿って掘り込み形成された掘り込み部を有し、
前記陥入部は、該陥入部の両端部において下面と連続面を成すようにして内方に延伸された一対の支持片と、を有し、
一の保護板の前記支持片は、隣接する他の保護板の前記掘り込み部を支持することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の保護板。
【請求項4】
前記本体部及び突出部の上面側に凹設された肉抜き部を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の保護板。
【請求項5】
前記肉抜き部は、前記突出部の突出方向に沿って伸びる補強部により複数の領域に隔てられていることを特徴とする請求項4に記載の保護板。
【請求項6】
前記肉抜き部には、上面側から下面側に貫通した貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の保護板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設された埋設資材を保護する保護板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、街の景観向上や災害時における電線の垂れ下がり事故を防止するために、電線を地中に埋設して電柱を無くす無電柱化が全国的に推進されている。また、地中には、電線の他にも情報通信ケーブルやガス管等も埋設されている。これらの埋設資材は、埋設工事のコスト減縮及び工期短縮の観点から、一般的に地面から比較的浅い箇所に埋設される。
【0003】
そのため、
図6に示すように、例えば、道路工事により地面を掘り起こす場合に、アスファルトカッターAにより埋設資材Lを誤って切断してしまう事故や、バックホーBにより埋設資材Lを誤って掘り返してしまう事故が発生することがある。そこで、これらの埋設資材Lの上方にセラミックスや鋼板等から成る保護板Pを敷設することにより、埋設資材Lを上記のような事故から保護している(例えば、特許文献1参照)。このような保護板Pは、一般的に、埋設資材Lに沿って列状に複数敷設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような保護板では、複数の保護板が互いに隣接して敷設されているだけなので、各々の保護板は位置ずれしやすい。そのため、例えば、アスファルトカッターAが保護板に接触した場合には、その保護板が移動して、隣り合う保護板との間隔が空き、埋設資材Lを適切に保護できない状態となる虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであって、複数の保護板を互いに隣接させて敷設した場合に、位置ずれし難い保護板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、本体部と、前記本体部の一方から外方に向かって突出した半円形状の突出部と、前記本体部の他方において前記突出部に対応する円弧形状に陥入した陥入部と、を備えた保護板であって、一の保護板の前記陥入部に他の保護板の前記突出部が嵌まり込むようにして複数の保護板が敷設されるとき、前記突出部は、隣接する保護板の陥入部と係合する係合爪を有し、前記陥入部は、前記係合爪が係合する係合溝を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、係合爪が係合溝に係合することで隣り合う保護板同士が互いに繋ぎ止められるので、一の保護板に力が加わっても、隣接する保護板によって移動が制限されるので、保護板の位置ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)は、本発明の実施形態に係る保護板を上方から見たときの斜視図、(b)は、同保護板を下方から見たときの斜視図、(c)は、(b)とは異なる下方から見たときの斜視図。
【
図2】(a)は、上記保護板の上面図、(b)は、(a)のI-I線断面図。
【
図3】(a)は、互いに接続された2つの上記保護板の上面図、(b)は、(a)のII-II線断面図。
【
図4】一の保護板に他の保護板を接続する際の動作を示す断面図。
【
図5】互いに接続された複数の上記保護板において、各々の保護板の相対角度を調整した状態を示す上面図。
【
図6】アスファルトカッターによる埋設資材の切断事故やバックホーによる埋設資材の掘り返し事故を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る保護板について
図1乃至
図5を参照して説明する。本保護板は、地中に埋設された電線、情報通信ケーブル、ガス管等の埋設資材の上方に敷設され、道路工事等の際に、アスファルトカッターによる埋設資材の切断事故やバックホーによる埋設資材の掘り返し事故を防止するものである。
【0011】
図1(a)乃至(c)及び
図2(a)(b)に示すように、保護板1は、全体として平板状に形成され、下面11が埋設資材と相対するようにして敷設される。平面視において保護板1は、本体部2と、本体部2の一方から外方に向かって突出した半円形状の突出部3と、本体部2の他方において突出部3に対応する円弧形状に陥入した陥入部4と、を備える。陥入部4の外周縁41は、突出部3の外周縁31と同じ曲率を有するように構成され、突出部3の突出方向(以下、X方向という)に沿って平行移動させると外周縁31と重なる。本体部2は、X方向に沿って伸びる一対の辺21、22を有する。
【0012】
また、保護板1は、本体部2及び突出部3の上面12側に凹設された肉抜き部5を備える。このような肉抜き部5を設けることで、保護板1を軽量化すると共に、材料費を削減して低コスト化を図ることができる。肉抜き部5は、X方向に沿って伸びる補強部51により複数の領域に隔てられており、図例では、本体部2及び突出部3の中央に設けられた1つの補強部51により2つの領域に隔てられている。このような補強部51を設けることで、肉抜き部5により保護板1の軽量化及び低コスト化を可能としつつ、保護板1の強度低下を抑制することができる。
【0013】
肉抜き部5には、上面12側から下面11側に貫通した貫通孔52が設けられ、図例では、補強部51のX方向における両端部直下にそれぞれ1箇所ずつ、そして、X方向に直交するY方向における陥入部4側の両端部直下にそれぞれ1箇所ずつの計4箇所に、長穴状の貫通孔52が設けられている(
図2(a)参照)。このような貫通孔52を設けることで、地中に埋設された保護板1において肉抜き部5に雨水等が溜まったとしても、貫通孔52から排水することができる。
【0014】
図3(a)(b)に示すように、保護板1では、陥入部4の外周縁41が突出部3の外周縁31と同じ曲率を有する円弧形状に形成されているので、一の保護板1aの陥入部4に他の保護板1bの突出部3が嵌まり込んだときに、突出部3と陥入部4とが互いにぴったりと嵌り合う。そして、突出部3は、隣接する保護板1の陥入部4と係合する係合爪32を有し、陥入部4は、係合爪32が係合する係合溝42を有する(
図1(c)も参照)。
【0015】
係合爪32は、突出部3の下面11側と連続して外周縁31の中央から外方に向かって凸設された基端33と、基端33の外端部から上方に屈曲するように形成された先端34と、を有する(
図1(a)も参照)。係合溝42は、陥入部4の下面11側において外周縁41に沿って掘り込み形成された円弧形状の凹溝43と、凹溝43の外周縁41側において下方へと伸びるように形成された円弧形状の凸縁44と、を有する(
図1(b)(c)も参照)。凸縁44の下端部45は、下方に凸となった曲面により形成されている(
図3(b)参照)。
【0016】
また、突出部3は、突出部3の下面11側において外周縁31に沿って掘り込み形成された円弧形状の掘り込み部35を有し、陥入部4は、陥入部4のY方向における両端部において下面11と連続面を成すように設けられた一対の支持片46を有する(
図1(b)も参照)。一対の支持片46は、互いに対向するようにして内方に延伸され、一の保護板1aの陥入部4に他の保護板1bの突出部3が嵌まり込んだときに、掘り込み部35を下面11側から支持する。
【0017】
保護板1は、鋼板の3倍以上の硬度を持つ高硬度合金鉄(例えば、ブリネル硬さが450HBW以上の白鋳鉄)により構成されている。これにより、保護板1は、アスファルトカッターに対して十分な耐切断性能を持つ。また、保護板1は、例えば、X方向における長さが450mm、Y方向における長さが300mm、厚さが40mmの大きさで、且つ15kg程度の重さを持つように形成される。このような大きさ及び重さとすることにより、作業員が一人でも保護板1の運搬及び敷設を行うことができる。
【0018】
保護板1は、その内部まで全てが白鋳鉄でなくても、少なくともその表層(例えば、表面から5~15mmの厚みにかけての層)が白鋳鉄により構成されていればよい。表層を白鋳鉄とする方法としては、例えば、溶けた鉄を、保護板1の形状の型に流し込み、急冷させることが挙げられる。なお、表層の10mm程度が白鋳鉄化していれば、保護板1として、上述した強度を確保することができ、必要な耐切削性の効果を得ることができる。
【0019】
図4に示すように、一の保護板1aに他の保護板1bを接続するには、保護板1bの係合爪32の先端34が保護板1aの凸縁44を通り越して凹溝43に入り込むようにして、保護板1aの陥入部4に保護板1bの突出部3を斜め上方から接近させる。このとき、凸縁44の下端部45が曲面により構成され、且つ係合爪32の先端34が上方に屈曲するように形成されているので、先端34をスムーズに凹溝43に入り込ませることができる。そして、保護板1bを保護板1aに対して平行にすると、先端34が凹溝43に入り込むと共に凸縁44に引っかかり、保護板1a、1bが互いに接続される。また、このとき、保護板1aの支持片46が、保護板1bの掘り込み部35を下面11側から支持する(
図3(b)参照)。このようにして、保護板1a、1bの接続は、工具不要且つワンタッチに行うことができる。
【0020】
上記構成によれば、複数の保護板1を互いに隣接させて敷設したときに、係合爪32と係合溝42との係合により一の保護板1と他の保護板1とが互いに接続される。そのため、仮に、道路工事等の際にアスファルトカッターやバックホーのショベルが一の保護板1に接触したとしても、一の保護板1は、他の保護板1により繋ぎ止められて移動が制限されるので、位置ずれを抑制することができる。
【0021】
具体的には、例えば、一の保護板1bがアスファルトカッターにより上方から押さえつけられた場合(
図3(b)参照)、隣接する保護板1aの支持片46が、押さえつけられた保護板1bの掘り込み部35を下面11側から支持しているので、保護板1bの下方向への移動は規制され、隣り合う保護板1a、1bは互いに平行な状態で保持される。
【0022】
また、一の保護板1bがバックホーのショベルによって持ち上げられた場合には、その保護板1bの係合爪32が隣接する保護板1aの係合溝42に係合しているので、保護板1bの上方向への移動は規制され、隣り合う保護板1a、1bは互いに平行な状態で保持される。また、隣り合う保護板1a、1bは、突出部3と陥入部4とが噛み合った状態で接続され、それらの接続境界が直線状ではなく円弧形状になっているので、この接続境界に直線状に切削を行うアスファルトカッターの歯の進入を遮断することができる(
図5参照)。
【0023】
更に、
図5に示すように、突出部3の外周縁31と陥入部4の外周縁41とが互いに同じ曲率を有するように形成され、且つ外周縁41に沿って設けられた円弧形状の係合溝42に係合爪32が係合しているので、係合溝42に係合爪32が係合している範囲で、一の保護板1aに対する他の保護板1bの相対角度θを、例えば、±30°の範囲で変更することができる。このようなフレキシブルな接続構造を利用して各々の保護板1の相対角度を調整することにより、仮に埋設資材が曲線状に敷設されている場合であっても、埋設資材に沿って複数の保護板1を敷設することができる。
【0024】
なお、本発明に係る保護板は、上記実施形態に限定されず種々の変形が可能である。例えば、保護板は、掘り込み部及び支持片を有さない構成とされてもよい。また、保護板は、必ずしも肉抜き部を備えていなくてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1、1a、1b 保護板
11 下面
2 本体部
3 突出部
32 係合爪
31 突出部の外周縁
33 係合爪の基端
34 係合爪の先端
35 掘り込み部
4 陥入部
42 係合溝
46 一対の支持片
5 肉抜き部
51 補強部
52 貫通孔
X 突出部の突出方向