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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】液送安全体感装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/00 20060101AFI20240202BHJP
【FI】
G09B9/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020127410
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2022024687
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-03-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開日:令和2年6月3日広栄化学工業株式会社 千葉工場に納品
(73)【特許権者】
【識別番号】311014417
【氏名又は名称】アジアクリエイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 ▲邦▼男
【審査官】柳 重幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-054008(JP,A)
【文献】特開2013-180253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転中に吸引路から液体を吸い込んで送出路へ液体を送り出すポンプと、
前記吸引路または前記送出路の少なくとも一方が内部に連通する第1容器と、を備え、
前記第1容器は、前記第1容器の内部に連通する前記吸引路または前記送出路の少なくとも一方が接続され、上部に開口部を設けた容器本体と、
前記容器本体のうち前記開口部の周縁に全周に亘って重なるよう前記容器本体に着脱可能に固定される環状体と、
前記容器本体よりも低剛性であって、前記開口部を塞ぐように前記容器本体と前記環状体との間に挟み込まれる脆弱部と、を備え、
前記脆弱部は、気密状態の前記第1容器の内部の液体を前記ポンプにより増加または減少させた場合に変形可能であり、
前記脆弱部の変形や破損を体感者に体感させて安全な作業の重要性を学習させることを特徴とする液送安全体感装置。
【請求項2】
前記容器本体および前記環状体の少なくとも一方は、前記脆弱部を挟み込む部分が自己潤滑性を有する樹脂材料によって形成されていることを特徴とする請求項記載の液送安全体感装置。
【請求項3】
前記容器本体の内部の下方と上方とを連通するバイパス路と、
前記バイパス路に取り付けられて前記バイパス路の液面が上限値以上であることを検出する液面上限センサと、を備え、
前記容器本体に前記吸引路が接続されており、
前記バイパス路は、前記容器本体の外部に配置されることを特徴とする請求項又はに記載の液送安全体感装置。
【請求項4】
前記吸引路は、前記第1容器の内部の下方に連通する第1吸引路と、
前記第1吸引路に設けられて第1操作部の操作によって開閉する第1バルブと、を備え、
前記送出路は、前記第1容器の内部に連通する第1送出路と、
前記第1送出路に設けられて第2操作部の操作によって開閉する第2バルブと、を備えていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の液送安全体感装置。
【請求項5】
液体が溜まる第2容器を備え、
前記吸引路は、前記第1バルブよりも前記ポンプ側で前記第1吸引路から分岐して前記第2容器の内部の下方に連通する第2吸引路と、
前記第2吸引路に設けられて第3操作部の操作によって開閉する第3バルブと、を備え、
前記送出路は、前記第2バルブよりも前記ポンプ側で前記第1送出路から分岐して前記第2容器の内部に連通する第2送出路と、
前記第2送出路に設けられて第4操作部の操作によって開閉する第4バルブと、を備えていることを特徴とする請求項記載の液送安全体感装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液送安全体感装置に関し、特に液体の増加または減少に伴う気密状態の容器の変形や破損を体感者に体感させて安全な作業の重要性を学習させることができる液送安全体感装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬品やオイル等の液体を溜める容器は、液体を給排しない場合に、内部の液体の気化や内部への不純物の混入などを防止するため、気密にされている。このような容器からポンプを用いて液体を排出するときや、ポンプから容器へ液体を供給するときには、液体の増加または減少に伴う容器の内圧の変化によって容器が変形や破損しないように、大気開放バルブを開けて容器の内部を大気に開放する必要がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-216482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、大気開放バルブを開け忘れる等により容器を気密にしたまま、ポンプを用いて液体を容器へ供給または容器から排出してしまった場合に容器の内圧が変化し、容器が変形や破損する。液体の漏洩などの危険が生じる容器の変形や破損を体感者に体感させて安全な作業の重要性を学習させることが重要である。
【0005】
そこで本発明は、液体の増加または減少に伴う気密状態の容器の変形や破損を体感者に体感させて安全な作業の重要性を学習させることができる液送安全体感装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の液送安全体感装置は、運転中に吸引路から液体を吸い込んで送出路へ液体を送り出すポンプと、前記吸引路または前記送出路の少なくとも一方が内部に連通する第1容器と、を備え、前記第1容器は、前記第1容器の内部に連通する前記吸引路または前記送出路の少なくとも一方が接続され、上部に開口部を設けた容器本体と、前記容器本体のうち前記開口部の周縁に全周に亘って重なるよう前記容器本体に着脱可能に固定される環状体と、前記容器本体よりも低剛性であって、前記開口部を塞ぐように前記容器本体と前記環状体との間に挟み込まれる脆弱部と、を備え、前記脆弱部は、気密状態の前記第1容器の内部の液体を前記ポンプにより増加または減少させた場合に変形可能であり、前記脆弱部の変形や破損を体感者に体感させて安全な作業の重要性を学習させる。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の液送安全体感装置によれば、ポンプを運転させると、第1容器の内部の液体が吸引路から排出されたり、第1容器の内部へ送出路から液体が供給されたりする。この排出または供給のいずれか一方のみを行うと、第1容器の内部の液体が増加または減少する。液体の増減時に第1容器が気密状態であると、第1容器の内圧が変化して脆弱部が変形し、そのままポンプを運転させ続けると脆弱部が破損することがある。これにより、体感者は、第1容器が気密状態のままでポンプを運転させてしまった場合に、第1容器が変形や破損してしまうことを体感でき、安全な作業の重要性を学習できる。
【0008】
1容器は、上部に開口部を設けた容器本体と、容器本体のうち開口部の周縁に全周に亘って重なるよう容器本体に着脱可能に固定される環状体と、を備える。容器本体よりも低剛性である脆弱部は、開口部を塞ぐように容器本体と環状体との間に挟み込まれる。これにより、脆弱部の変形や破損を体感した後、第1容器の内部に連通する吸引路または送出路の少なくとも一方が接続される容器本体を交換することなく、脆弱部を容易に交換できる。
【0009】
請求項記載の液送安全体感装置によれば、容器本体および環状体の少なくとも一方は、脆弱部を挟み込む部分が自己潤滑性を有する樹脂材料によって形成されている。これにより、容器の内圧が変化するとき、容器本体と環状体とに挟み込まれた脆弱部の周縁部が内側へ滑るようにして、脆弱部が凹んだり膨らんだりする。そのため、脆弱部の周縁部が滑り難い場合と比べて、容器の内圧の変化が小さくても脆弱部が破損し易い、又は、挟み込まれた脆弱部が外れ易い。よって、請求項の効果に加え、ポンプを運転開始させてから脆弱部が破損または外れるまでの体感時間を短くできる。さらに、脆弱部の周縁部が滑り難い場合と比べて、脆弱部の周縁部が滑り易い方が、脆弱部が破損したときや外れたときの衝撃音や破片の飛び散りを小さくできる。
【0010】
請求項記載の液送安全体感装置によれば、バイパス路が容器本体の内部の下方と上方とを連通するので、バイパス路の液面と第1容器(容器本体)の内部の液面とが同じ位置になる。そのため、液面上限センサによって、バイパス路の液面および第1容器の内部の液面が上限値以上であることが検出される。吸引路を介して第1容器の内部の液体を排出し、脆弱部を凹ませたり破損させたりする場合、液面上限センサが第1容器の内部の上方にあると、変形や破損した脆弱部が液面上限センサに当たって液面上限センサが破損するおそれがある。これに対し、バイパス路が容器本体の外部に配置されているので、そのバイパス路に取り付けた液面上限センサに、変形や破損した脆弱部を当たり難くできる。その結果、請求項又はの効果に加え、液面上限センサを破損し難くできる。
【0011】
請求項記載の液送安全体感装置によれば、吸引路は、第1容器の内部の下方に連通する第1吸引路と、第1吸引路に設けられて第1操作部の操作によって開閉する第1バルブと、を備える。送出路は、第1容器の内部に連通する第1送出路と、第1送出路に設けられて第2操作部の操作によって開閉する第2バルブと、を備える。第1バルブ及び第2バルブを開けてポンプを運転させる循環運転から、体感者が第1操作部または第2操作部を操作して第1バルブ又は第2バルブを閉めた場合、第1容器が気密状態のままだと第1容器の脆弱部が変形や破損してしまうことを体感できる。よって、実際の運転状況に近い操作をして第1容器の変形や破損を体感できるので、請求項1からのいずれかの効果に加え、実際の運転において確認すべき点やタイミングを体感できる。
【0012】
請求項記載の液送安全体感装置によれば、液体が溜まる第2容器を備える。吸引路の第2吸引路は、第1バルブよりもポンプ側で第1吸引路から分岐して第2容器の内部の下方に連通する。第3操作部の操作によって開閉する第3バルブが第2吸引路に設けられる。送出路の第2送出路は、第2バルブよりもポンプ側で第1送出路から分岐して第2容器の内部に連通する。第4操作部の操作によって開閉する第4バルブが第2送出路に設けられる。例えば、第1バルブを開けて第2バルブを閉め、気密状態の第1容器から液体を排出する場合、第3バルブを閉めて第4バルブを開けることで、第1容器から第2容器へ液体を移しながら、脆弱部の変形や破損を体感できる。また、各バルブの状態を逆にすることで、第2容器から第1容器へ液体を戻すことができる。よって、請求項の効果に加え、第1容器と第2容器とで液体を循環させながら、第1容器の変形や破損を体感できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態における液送安全体感装置の斜視図である。
図2】液送安全体感装置の模式図である。
図3】第2実施形態における液送安全体感装置の模式図である。
図4】第3実施形態における液送安全体感装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1及び図2を参照して第1実施形態における液送安全体感装置10(以下「体感装置10」と称す)について説明する。図1は体感装置10の斜視図である。図2は体感装置10の模式図である。なお、各図面では制御盤17と各部のセンサやスイッチとを繋ぐ配線を省略している。
【0015】
体感装置10は、薬品やオイル等の液体が入った第1タンク30等の容器から液体を排出するとき、又は、容器へ液体を供給するときに、容器を気密に保ったままだと容器が変形や破損することを体感者に体感させて安全な作業の重要性を学習させるための装置である。なお、安全性やコストを考慮し、体感装置10で用いる液体は水であることが好ましい。
【0016】
図1に示すように、体感装置10は、体感装置10の各部を制御するための制御盤17と、液体を送り出すポンプ20と、ポンプ20へ液体を送る吸引路21と、ポンプ20から液体が送り出される送出路22と、変形や破損が起こる体感用の第1タンク30(第1容器)と、貯液用の第2タンク40(第2容器)と、を主に備えている。体感装置10は、これらの各部が四角形状のベース11上に配置され固定されている。ベース11上に溜まった水をベース11の下方へ排出するための排出孔15がベース11に貫通形成されている。
【0017】
制御盤17は、体感装置10の各部を制御する機器や、体感装置10の電源スイッチが内部に配置された箱体である。制御盤17の外部には、体感者の操作によってポンプ20の運転を開始させる運転ボタン17aが正面に設けられ、体感装置10の運転状況を表示するための積層表示灯18が上部に設けられる。また図示しないが、制御盤17の正面には、電源オン時に点灯する電源ランプや、ポンプ20の運転を停止させる停止ボタンなどが設けられる。
【0018】
積層表示灯18は、ポンプ20の運転時に緑に点灯し、後述する第1タンク30内を液体が循環する循環運転時に黄色に点灯する。制御盤17は、体感装置10の各部に設けた第1バルブ23、第2バルブ24、第3バルブ25、第4バルブ26、第5バルブ34の開閉状態に応じて、体感装置10が正常に動くかを判断する。制御盤17は、体感装置10に異常がある場合、積層表示灯18を赤に点灯させ、ポンプ20の運転を禁止する。
【0019】
図1及び図2に示すように、ポンプ20は、運転中に吸込口20aから液体を吸い込み、送出口20bから液体を送り出す装置である。吸込口20aに吸引路21が接続され、送出口20bに送出路22が接続される。吸引路21は、第1タンク30の内部の下方に連通する第1吸引路21aと、第2タンク40の内部の下方に連通する第2吸引路21bと、ベース11上へ液体を放出する放出路21cと、を備える。
【0020】
送出路22は、第1タンク30の内部の上方に連通する第1送出路22aと、第2タンク40の内部の上方に連通する第2送出路22bと、を備える。これにより、第1送出路22aや第2送出路22bから出た液体の落ちる音によって、第1タンク30や第2タンク40への液体の供給を確認できる。なお、第1送出路22aや第2送出路22bを第1タンク30や第2タンク40の内部の下方に連通させても良い。
【0021】
第1吸引路21aには、その連通と遮断とを切り換える第1バルブ23が設けられる。第1送出路22aには、その連通と遮断とを切り換える第2バルブ24が設けられる。第2吸引路21bは、第1バルブ23よりもポンプ20側(下流側)で第1吸引路21aから分岐した流路である。第2吸引路21bには、その連通と遮断とを切り換える第3バルブ25が設けられる。第2送出路22bは、第2バルブ24よりもポンプ20側(上流側)で第1送出路22aから分岐した流路である。第2送出路22bには、その連通と遮断とを切り換える第4バルブ26が設けられる。
【0022】
第1バルブ23から第4バルブ26と後述する第5バルブ34(各バルブ23~26,34)は、いずれもボールバルブであり、体感者により手動でそれぞれの第1操作部23aから第5操作部34a(各操作部23a~26a,34a)が操作されることで開閉される。各操作部23a~26a,34aは、90°回転させることで、各バルブ23~26,34を開ける開位置と、各バルブ23~26,34を閉じる閉位置とに切り換わるレバーである。
【0023】
各バルブ23~26,34には、その開閉状態を検出するための第1検出部23bから第5検出部34b(各検出部23b~26b,34b)がそれぞれ取り付けられる。各検出部23b~26b,34bは、各操作部23a~26a,34aが閉位置にあることを検出するリミットスイッチであり、閉位置にあることの信号を制御盤17へ送る。
【0024】
送出路22には、第2バルブ24及び第4バルブ26よりもポンプ20側の水圧を測定する圧力計22cが取り付けられている。この圧力計22cによって液体が送出路22を流れていることを確認できる。
【0025】
放出路21cは、第1バルブ23よりも第1タンク30側(上流側)の第1吸引路21aから分岐した流路である。放出路21cに設けた放出バルブ27を開けることで、第1タンク30や第2タンク40の内部の液体がベース11上へ放出される。
【0026】
第1タンク30は、下端が底面部31aで塞がれて上端が開口した円筒状の金属(例えばステンレス)製の容器本体31と、容器本体31の上端の開口部31bを塞ぐ蓋としての脆弱部36と、脆弱部36を容器本体31に固定するための金属製の環状体37と、を主に備える。容器本体31は、複数の固定具16を介してベース11に浮かせて固定される。
【0027】
容器本体31には、上端から径方向外側へ広がり開口部31bを取り囲む円環状のフランジ31cが形成されている。さらに、容器本体31には、底面部31aに第1吸引路21aが接続され、容器本体31の側壁の上方に第1送出路22a及び開放路33が接続され、容器本体31の内部の下方と上方とを連通するバイパス路35が側壁に接続されている。なお、底面部31aに第1吸引路21aが接続されるので、ポンプ20の出力が弱くても重力によって第1タンク30内の液体を第1吸引路21aへ排出し易くできる。
【0028】
開放路33は、容器本体31の内外を連通する流路である。開放路33には、第5操作部34aの操作によって開閉し、開放路33の連通と遮断と(第1タンク30の大気開放状態と気密状態と)を切り換える第5バルブ34が設けられる。この第1タンク30の内部の気体の圧力を測定する圧力計31gが容器本体31に取り付けられている。
【0029】
バイパス路35は、容器本体31との接続部分を除いて透明な合成樹脂製のチューブによって形成され、容器本体31の外部に配置される。バイパス路35の液面の高さが、第1タンク30の内部の液面の高さである。このバイパス路35に取り付けた液面上限センサ35aは、バイパス路35(第1タンク30の内部)の液面が上限値以上になったことを検出して制御盤17へ信号を送る。制御盤17は、この信号に基づいてポンプ20を停止させる。なお、第1タンク30の内部の液面の上限は、液体が放出路21c等へ流入しないように設定される。
【0030】
容器本体31の内部には、第1タンク30の内部の液面が下限値以下になったことを検出して制御盤17へ信号を送る液面下限センサ31dが取り付けられている。制御盤17は、この信号に基づいてポンプ20を停止させる。第1タンク30の内部の液面の下限は、第1吸引路21aへ空気が流れないように設定される。
【0031】
脆弱部36は、厚さが約0.1mmでアルミニウム合金製の円板である。脆弱部36の直径は、開口部31bの内径よりも大きい。脆弱部36は、容器本体31よりも十分に低剛性に形成されている。そのため、脆弱部36で開口部31bを塞いだ第1タンク30の内圧が変化した場合には、容器本体31の一部が変形や破損する前に、脆弱部36が変形や破損する。
【0032】
環状体37は、容器本体31のフランジ31cと内径および外径が略同一な円環状に形成される。環状体37は、周方向の一部がヒンジ37aによって容器本体31のフランジ31cに取り付けられると共に、ボルト及びナットからなる締結部材37bによって周方向の複数個所でフランジ31cに着脱可能に固定される。締結部材37bの締結方向の両側から環状体37とフランジ31cとで脆弱部36の周縁が挟み込まれる。
【0033】
フランジ31cには、脆弱部36との間を全周に亘ってシールするOリング31eが取り付けられる。また、環状体37には、脆弱部36に当たるOリング37cが取り付けられる。Oリング37cの内径は、Oリング31eの内径よりも大きくOリング31eの外径よりも小さい。Oリング37cによってOリング31eの若干外側の脆弱部36がフランジ31cに押し付けられるので、脆弱部36とフランジ31cとの間の気密性が向上する。
【0034】
フランジ31cの環状体37側の面には、径方向外側に対して径方向内側が凹む段差31fがOリング31e,37cの径方向外側に形成されている。環状体37には、この段差31fに噛み合うように、径方向内側に対して径方向外側が凹む段差37dが形成されている。段差31f,37dの噛み合いによって環状体37をフランジ31cの正しい位置に重ねることができる。また、段差31fを目印に脆弱部36をフランジ31c上に置くことができる。
【0035】
第2タンク40は第1タンク30と同様の容器なので、第1タンク30と共通する部分に同一の符号を付して説明の一部を省略する。第2タンク40は、容器本体31と、容器本体31の開口部31bを塞ぐ金属製の蓋体42と、を主に備え、複数の固定具19を介してベース11に浮かせて固定される。第2タンク40の容器本体31には、第1タンク30における開放路33の代わりに、第2タンク40の内部を常に大気に開放する通気路43が設けられる。また、第2タンク40の内部の液体の上限を検出する液面上限センサ45が第2タンク40の内部に取り付けられる。
【0036】
次に、体感装置10の使用方法について説明する。体感装置10の運転条件には、ポンプ20を運転開始させて第1タンク30内を負圧にする始動負圧と、ポンプ20の運転中に各バルブ23~26,34を操作して第1タンク30内を負圧にする循環負圧と、第2タンク40の内部の液体を第1タンク30へ送るが脆弱部36を変形させない液送とがある。
【0037】
始動負圧および循環負圧で体感装置10を動かす前の準備として、まず、放出バルブ27を閉じた状態で、脆弱部36で塞いでいない開口部31bから第1タンク30の容器本体31の内部へ水道水などの液体を入れる。このとき、第1タンク30の内部の液面を上限値以下にする。その後、環状体37とフランジ31cとで脆弱部36挟み込み、開口部31bを脆弱部36で塞ぐ。また、第2タンク40の内部の液体を十分に排出しておく。体感装置10の使用時、第2タンク40の蓋体42を外しても良い。
【0038】
表1には、各運転条件における各バルブ23~26,34の開閉状態を示す。表1では、運転中に開閉を切り換える場合、先に切り換える方を「→」で示し、後で切り換える方を「⇒」で示している。表1の開閉状態と異なることが、各検出部23b~26b,34bにより検出された場合、制御盤17は、異常があると判断して積層表示灯18を赤に点灯させ、ポンプ20による運転を禁止する。
【0039】
【表1】
始動負圧では、まず、各操作部23a~26a,34aを体感者が操作し、第5バルブ34を閉にして第1タンク30を気密状態にしたまま、第1バルブ23を開、第2バルブ24を閉、第3バルブ25を閉、第4バルブ26を開にする。その後、積層表示灯18が点灯していないことを確認し、体感者が運転ボタン17aを押してポンプ20を運転開始させる。これにより、第1タンク30内の液体が第1吸引路21aを通ってポンプ20へ送られ、液体がポンプ20から第2送出路22bを通って第2タンク40へ送られる。気密状態の第1タンク30の内部の液体が減少するので、第1タンク30の内圧が下がり(負圧になり)、図2に二点鎖線で示したように脆弱部36が凹むように変形していく。このままポンプ20を運転させ続けると、大きな衝撃音と共に脆弱部36が破損する。
【0040】
このようにして体感者は、第1タンク30が気密状態のままで第1タンク30の内部を負圧にした場合に、第1タンク30が変形や破損してしまうことを体感でき、安全な作業の重要性を学習できる。第1タンク30のうち変形や破損する箇所が脆弱部36なので、第1吸引路21aや第1送出路22a、圧力計31g等が取り付けられた容器本体31を交換することなく、脆弱部36を容易に交換できる。
【0041】
特に、脆弱部36は、互いに締結部材37bにより固定された容器本体31と環状体37との間に挟み込まれる板材なので、脆弱部36の交換作業を容易にできる。また、脆弱部36が容器本体31の上部の開口部31bを塞ぐので、脆弱部36の破損時や交換時に開口部31bから液体を漏れ難くできる。
【0042】
体感装置10には、第1タンク30を気密状態と大気開放状態とに切り換える第5バルブ34があるので、体感者は、その第5バルブ34を開けずにポンプ20を運転させた場合に、圧力計31gが負圧を示し、第1タンク30の脆弱部36が変形や破損してしまうことを体感できる。よって、体感者は、圧力計31gを確認することや、第1タンク30の変形や破損の原因となる第5バルブ34の開閉状態を確認することの重要性を体感できる。
【0043】
なお、始動負圧に対し、第5バルブ34を開けてもポンプ20を運転できるようにすることで、第5バルブ34を開けておけば脆弱部36が変形や破損しないことを体感者に体感させることができる。これにより、第5バルブ34の開閉状態を確認することの重要性を体感者に感じさせ易くできる。これに対して本実施形態では、第5バルブ34を開けた状態でポンプ20の運転を禁止するので、ポンプ20の運転時に第1タンク30が気密状態になり、第1タンク30の変形や破損を確実に体感できる。
【0044】
循環負圧では、第5バルブ34を閉にして第1タンク30を気密状態にしたまま、第1バルブ23を開、第2バルブ24を開、第3バルブ25を閉、第4バルブ26を閉にした後、積層表示灯18が黄色に点灯していることを確認し、ポンプ20を運転開始させる。このように第1タンク30内で液体を循環させる循環運転から、第4バルブ26を開け第2バルブ24を閉めることで、気密状態の第1タンク30の内部の液体が排出され、脆弱部36が変形や破損する。
【0045】
実際に薬品などの液体を容器に入れた化学プラント等でも同様に、液体の撹拌や不純物のろ過のために容器内の液体を循環運転させており、液体の排出時に各バルブを開閉する作業を行う。よって、体感装置10の循環負圧では、実際の運転状況に近い操作をして第1タンク30の変形や破損を体感できるので、体感者は実際の運転において確認すべき点やタイミングを体感できる。
【0046】
液送では、第5バルブ34を開にして第1タンク30を大気開放状態にしたまま、第1バルブ23を閉、第2バルブ24を開、第3バルブ25を開、第4バルブ26を閉にした後、運転ボタン17aを押してポンプ20を運転開始させる。これにより、第2タンク40内の液体が第2吸引路21bを通ってポンプ20へ送られ、液体がポンプ20から第1送出路22aを通って第1タンク30へ送られる。このような液送は、始動負圧や循環負圧の準備において、第1タンク30の液体が少なく、第2タンク40の液体が多いときに行われる。
【0047】
始動負圧および循環負圧では第1タンク30から第2タンク40へ液体を送り、液送では第2タンク40から第1タンク30へ液体を送るので、第1タンク30と第2タンク40とで液体を循環させながら、第1タンク30の変形や破損を体感できる。そのため、始動負圧および循環負圧の準備において、毎回新たな液体を第1タンク30へ入れなくても、液送の運転条件で体感装置10のポンプ20を作動させることにより、その準備を行うことができる。
【0048】
バイパス路35を用いることで液面上限センサ35aが第1タンク30の外部に配置されるので、気密状態の第1タンク30の内部を負圧にして凹んだ脆弱部36や、脆弱部36の破片などを液面上限センサ35aに当たり難くできる。よって、脆弱部36を変形や破損させる体感時に液面上限センサ35aを破損し難くできる。
【0049】
次に図3を参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態では、第2タンク40が貯液用のタンクであり、第2タンク40の変形や破損を体感するものではない場合について説明した。これに対して第2実施形態では、第2タンク51の変形や破損を体感できる液送安全体感装置50(以下「体感装置50」と称す)について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図3は、第2実施形態における体感装置50の模式図である。
【0050】
体感装置50では、第1実施形態において各容器の内部に取り付けた液面下限センサ31dに代え、バイパス路35の外部に液面下限センサ35bが取り付けられる。また、体感装置50では、第1実施形態における送出路22の圧力計22cが省略され、液体の流れを体感者に視認させるための3つの水流モニタ21d,22d,22eが吸引路21及び送出路22に設けられる。
【0051】
水流モニタ21dは、第1バルブ23と第2吸引路21bとの間の第1吸引路21aに設けられる。水流モニタ22dは、第1送出路22aと第2送出路22bとの分岐よりもポンプ20側の送出路22に設けられる。水流モニタ22eは、第2バルブ24と第2送出路22bとの間の第1送出路22aに設けられる。
【0052】
第2実施形態における第2タンク51は、樹脂環52,57bを備える点以外は第1タンク30と同一に構成されている。樹脂環52は、フランジ31cと内径および外径が同一の円環状の部材であり、フランジ31cの上面に重ねて皿ねじにより固定される。フランジ31cと樹脂環52との間がOリング31eでシールされ、樹脂環52と脆弱部36との間がOリング52aでシールされる。
【0053】
第2タンク51において、容器本体31の樹脂環52との間に脆弱部36を挟み込む環状体57は、第1タンク30の環状体37と同一の鋼環57aと、鋼環57aの脆弱部36側に重ねて皿ねじにより固定される樹脂環57bとを備える。樹脂環57bは、鋼環57aと内径および外径が同一の円環状の部材である。樹脂環52,57bは、自己潤滑性を有する合成樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリアセタール、ポリアミドなど)によって形成されている。
【0054】
第2タンク51には、第1実施形態における通気路43がなく、第1タンク30における開放路33と同一の開放路53が容器本体31の側壁の上方に接続される。開放路53には、第6操作部54aの操作によって開閉する第6バルブ54が設けられる。第6バルブ54は第1バルブ23等と同一のボールバルブであり、第6操作部54aは第1操作部23a等と同一のレバーである。第1検出部23b等と同一の第6検出部54bが第6バルブ54に取り付けられる。
【0055】
次に、体感装置50の使用方法について説明する。体感装置50の運転条件には、始動第1負圧、始動第1正圧、始動第2負圧、始動第2正圧、第1循環第1負圧、第2循環第1正圧、第2循環第2負圧、第1循環第2正圧がある。
【0056】
表2には、各運転条件における各バルブ23~26,34,54の開閉状態を示す。表2では、運転中に開閉を切り換える場合、先に切り換える方を「→」で示し、後で切り換える方を「⇒」で示している。表2の開閉状態と異なることが、各検出部23b~26b,34b,54bにより検出された場合、制御盤17(図1参照)は、異常があると判断してポンプ20による運転を禁止する。
【0057】
【表2】
始動第1負圧は、第6バルブ54を開にする点以外は、第1実施形態における始動負圧と同一である。始動第2負圧は、始動第1負圧における第1タンク30、第2タンク51、第1バルブ23、第2バルブ24、第3バルブ25、第4バルブ26、第5バルブ34、第6バルブ54をそれぞれ、第2タンク51、第1タンク30、第3バルブ25、第4バルブ26、第1バルブ23、第2バルブ24、第6バルブ54、第5バルブ34に置き換えたものなので、説明を省略する。
【0058】
第1循環第1負圧は、第6バルブ54を開にする点以外は、第1実施形態における循環負圧と同一である。第2循環第2負圧は、始動第1負圧に対する始動第2負圧のように、第1循環第1負圧に対し、第1タンク30側の各部と第2タンク51側の各部とを置き換えたものなので、説明を省略する。
【0059】
始動第1正圧は、ポンプ20を運転開始させて第1タンク30内を正圧にする運転条件である。始動第1正圧では、まず、第1タンク30内の液体を少なく、第2タンク51内の液体を多くしておく。次いで、第5バルブ34を閉にして第1タンク30を気密状態にし、第6バルブ54を開にして第2タンク51を大気開放状態にしたまま、第1バルブ23を閉、第2バルブ24を開、第3バルブ25を開、第4バルブ26を閉にした後、ポンプ20を運転開始させる。これにより、第2タンク51内の液体が第2吸引路21bを通ってポンプ20へ送られ、ポンプ20から第1送出路22aを通って第1タンク30へ送られる。気密状態の第1タンク30の内部の液体が増加するので、第1タンク30の内圧が上がり(正圧になり)、脆弱部36が膨らむように変形していく。このままポンプ20を運転させ続けると、大きな衝撃音と共に脆弱部36が破損する。
【0060】
第2循環第1正圧は、ポンプ20の運転中に各バルブ23~26,34,54を操作して第1タンク30内を正圧にする運転条件である。第2循環第1正圧では、まず、第1タンク30内の液体を少なく、第2タンク51内の液体を多くしておく。次いで、第5バルブ34を閉にして第1タンク30を気密状態にし、第6バルブ54を開にして第2タンク51を大気開放状態にしたまま、第1バルブ23を閉、第2バルブ24を閉、第3バルブ25を開、第4バルブ26を開にした後、ポンプ20を運転開始させる。このように第2タンク51内で液体を循環させる循環運転から、第2バルブ24を開けて第4バルブ26を閉めることで、気密状態の第1タンク30の内部の液体が増加し、脆弱部36が変形や破損する。
【0061】
始動第2正圧は、始動第1正圧に対し、第1タンク30側の各部と第2タンク51側の各部とを置き換えたものなので、説明を省略する。第1循環第2正圧は、第2循環第1正圧に対し、第1タンク30側の各部と第2タンク51側の各部とを置き換えたものなので、説明を省略する。また、脆弱部36を取り付けていない状態や脆弱部36が破損した状態では、始動第1負圧や始動第1正圧、始動第2負圧、始動第2正圧によって、第1タンク30と第2タンク51との間で液体を送り合うことができる。
【0062】
このような体感装置50によれば、体感者は、第1タンク30だけでなく第2タンク51においても、第2タンク51が気密状態のままでポンプ20を運転させた場合に、第2タンク51が変形や破損してしまうことを体感できる。そのため、例えば、第1タンク30の脆弱部36の変形や破損を体感した後、すぐに第2タンク51の脆弱部36の変形や破損を体感できる。
【0063】
また、体感装置50は、気密状態の第1タンク30や第2タンク51に対し、液体の排出または供給のいずれか一方のみを行い、気密状態の第1タンク30や第2タンク51の内圧を下げるだけでなく、それらの内圧を上げることでも、脆弱部36が変形や破損してしまうことを体感者に体感させることができる。
【0064】
第2タンク51は、自己潤滑性を有する合成樹脂製の樹脂環52,57bの間に脆弱部36を挟み込んでいる。これにより、第2タンク51の内圧が変化するとき、樹脂環52,57bの間に挟み込まれた脆弱部36の周縁部が内側へ滑るようにして、脆弱部36が凹んだり膨らんだりする。
【0065】
そのため、第1タンク30のように脆弱部36を挟み込む両側が鋼製であるために、脆弱部36の周縁部が滑り難い場合と比べて、第2タンク51の内圧の変化が小さくても脆弱部36が破損し易い、又は、挟み込まれた脆弱部36が外れ易い。よって、第2タンク51では、ポンプ20を運転開始させてから脆弱部36が破損または外れるまでの体感時間を短くできる。さらに、脆弱部36の周縁部が滑り難い第1タンク30と比べて、脆弱部36の周縁部が滑り易い方が、脆弱部36が破損したときや外れたときの衝撃音や破片の飛び散りを小さくできる。
【0066】
なお、第1タンク30では、ポンプ20を運転開始させてから脆弱部36が破損するまでの体感時間が長いため、脆弱部36が破損するときの第2タンク51の内圧よりも、脆弱部36が破損するときの第1タンク30の内圧が、ポンプ20の運転開始前の内圧に対して大きく変化する。そうすると、脆弱部36の破損時の衝撃音が大きくなり、第1タンク30が破損することの危険性を体感者に理解させ易くできる。
【0067】
次に図4を参照して第3実施形態について説明する。第1,2実施形態では、容器本体31の開口部31bを塞いだ脆弱部36の変形や破損を体感する場合について説明した。これに対して第3実施形態では、一斗缶70やペットボトル80の容器本体の変形や破損を体感する場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図4は、第2実施形態における液送安全体感装置60(以下「体感装置60」と称す)の模式図である。
【0068】
体感装置60は、制御盤17と、コントローラ66の操作によって運転されるポンプ20と、吸引路21と、送出路22と、変形や破損が起こる体感用の第1タンク63(第1容器の1つ)と、貯液用の第2タンク65(第2容器)と、体感用の一斗缶70(第1容器の1つ)と、体感用のペットボトル80(第1容器の1つ)と、を主に備えている。体感装置60は、ベース61上に制御盤17、ポンプ20及び第2タンク65が配置され、ベース61上に設けたテーブル62上に第1タンク63、一斗缶70及びペットボトル80が配置されている。
【0069】
第1タンク63は、脆弱部64がゴム膜である点以外は、第2実施形態における第1タンク30と同一に構成されている。脆弱部64がゴム膜なので、第1タンク63の内圧の変化によって脆弱部64が弾性変形し、第5バルブ34を開けて第1タンク63を大気開放状態にすることで、脆弱部64の弾性変形が容易に元に戻る。よって、第1タンク63が気密状態のままでポンプ20を運転させて内圧を変化させた場合に、第1タンク63が変形してしまうことを、簡易的に体感者に体感させることができる。さらに、脆弱部64を繰り返し変形させても、ゴム膜である脆弱部64の耐久性は高いので、脆弱部64の交換頻度を少なくできる。
【0070】
第2タンク65は、第2吸引路21bに繋がるホース65bと、第2送出路22bに繋がるホース65cとが、上部の開口部65aに挿入された直方体状の容器である。テーブル62上に開口した排出路65dが第2タンク65に繋がり、排出路65dに設けたボールバルブ65eを開けると、テーブル62上の液体が第2タンク65へ排出される。第2タンク65の底面に放出路65fが接続され、放出路65fに設けたボールバルブ65gを開けることで、第2タンク65内の液体が外部へ放出される。
【0071】
一斗缶70は、ブリキ製の直方体状の容器であり、内外を連通する開口部71が形成された容器本体に、開口部71を塞ぐキャップ72が着脱可能に取り付けられて構成される。この容器本体は、キャップ72よりも低剛性である。キャップ72には、第1バルブ23と第2吸引路21bとの間から分岐した第1分岐路73が接続されている。
【0072】
この第1分岐路73には、第7操作部74aの操作によって開閉する第7バルブ74が設けられる。第7バルブ74は、第1バルブ23等と同一のボールバルブであり、第7操作部74aは第1操作部23a等と同一のレバーである。第1検出部23b等と同一の第7検出部74bが第7バルブ74に取り付けられる。
【0073】
一斗缶70に開口部71から液体を入れた後、第1分岐路73が接続されたキャップ72を一斗缶70に取り付け、キャップ72を下方に向けた状態で、テーブル62上に固定した支持具75に一斗缶70を置く。第7バルブ74及び第4バルブ26を開け、その他のバルブを閉めた状態で、ポンプ20を運転させることで、気密状態の一斗缶70から液体が排出され、内圧が下がった一斗缶70の容器本体の側面(脆弱部)が主に凹む。
【0074】
よって、液体が入った容器が気密状態のままでポンプ20により容器の内圧を変化させた場合に、その容器が変形してしまうことを、一斗缶70を用いて、簡易的に体感者に体感させることができる。薬品やオイルが入った実際の容器では、内圧が下がった場合に容器の側面が凹み易いのと同様に、一斗缶70の側面が凹むことを体感できる。また、一斗缶70が変形や破損した後、第1分岐路73が接続されたキャップ72はそのままに、一斗缶70の容器本体を交換することで、一斗缶70を用いた容器の変形や破損の体感を再び実行できる。
【0075】
ペットボトル80は、ポリエチレンテレフタレートに代表される合成樹脂製の容器であり、内外を連通する開口部81が形成された容器本体に、開口部81を塞ぐキャップ82が着脱可能に取り付けられて構成される。この容器本体は、キャップ82よりも低剛性である。キャップ82には、第7バルブ74よりもポンプ20側(下流側)の第1分岐路73から分岐した第2分岐路83が接続されている。
【0076】
この第2分岐路83は、テーブル62上の支持具84に固定されたコネクタ85と、コネクタ85に着脱可能に取り付けられてキャップ82に接続される上流部86と、その上流部86に設けられるボールバルブ87と、コネクタ85から第1分岐路73までを形成する下流部88と、下流部88に設けられる第8バルブ89と、を備える。第8バルブ89は、第1バルブ23等と同一のボールバルブであり、第1操作部23a等と同一のレバーである第8操作部89aの操作によって開閉する。第1検出部23b等と同一の第8検出部89bが第8バルブ89に取り付けられる。
【0077】
ペットボトル80に開口部81から液体を入れた後、上流部86が接続されたキャップ82をペットボトル80に取り付けてボールバルブ87を閉め、キャップ82を下方に向けて上流部86をコネクタ85に取り付ける。ボールバルブ87、第8バルブ89及び第4バルブ26を開け、その他のバルブを閉めた状態で、ポンプ20を運転させることで、気密状態のペットボトル80から液体が排出され、内圧が下がったペットボトル80の一部(脆弱部)が凹む。
【0078】
よって、液体が入った容器が気密状態のままでポンプ20により容器の内圧が変化した場合に、その容器が変形してしまうことを、ペットボトル80を用いて、簡易的に体感者に体感させることができる。ペットボトル80が変形した後、ボールバルブ87を閉めて上流部86をコネクタ85から取り外し、ボールバルブ87を開けることでペットボトル80に空気が入る。これにより、ペットボトル80の変形を容易に元に戻すことができるので、同じペットボトル80を用いて複数回、容器の変形を体感できる。また、ペットボトル80が変形や破損した後、第2分岐路83が接続されたキャップ82はそのままに、ペットボトル80の容器本体を交換することで、ペットボトル80を用いた容器の変形や破損の体感を再び実行できる。
【0079】
第1タンク63内の液体が少ない場合、一斗缶70やペットボトル80を用いた体感時、第4バルブ26の代わりに第2バルブ24を開けることで、一斗缶70やペットボトル80内の液体を第1タンク63へ送ることができる。これにより、第2タンク65から第1タンク63へポンプ20を用いて液体を送る作業を不要にできる。
【0080】
第1バルブ23、第7バルブ74、第8バルブ89のいずれか2以上が開いていることを、第1検出部23b、第7検出部74b及び第8検出部89bによって検出した場合、制御盤17はポンプ20の運転を禁止する。これにより、第1タンク63、一斗缶70、ペットボトル80のいずれか一の容器の変形や破損を体感するとき、その他の容器が予期せずに変形や破損することを防止できる。
【0081】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。液体が入る容器であれば、第1タンク30,63、第2タンク40,51,65、一斗缶70、ペットボトル80以外の容器を用いても良い。
【0082】
上記第1実施形態では、第1タンク30の内圧を下げて脆弱部36を変形や破損させる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1バルブ23を閉、第2バルブ24を開、第3バルブ25を開、第4バルブ26を閉、第5バルブ34を閉にしてポンプ20を運転させ、第1タンク30の内圧を上げて脆弱部36を変形や破損させても良い。
【0083】
また、第1タンク30の脆弱部36を変形や破損させる体感時、第1タンク30内の液体を第2タンク40へ送らなくても良い。例えば、第2タンク40を省略し、第1タンク30の液体(水)を排水口など体感装置10の外部へ放出しても良い。第1タンク30の内圧を下げて脆弱部36を凹ませる場合には、第1バルブ23や第1送出路22aを省略しても良い。第1タンク30の内圧を上げて脆弱部36を膨らませる場合には、第2バルブ24や第1吸引路21aを省略しても良い。
【0084】
上記第1,2実施形態における脆弱部36がアルミニウム合金製の板材である場合、第3実施形態における脆弱部64がゴム膜である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。ゴム膜の脆弱部64を上記第1,2実施形態の容器本体31に取り付けても良く、アルミニウム合金製の脆弱部36を上記第3実施形態の容器本体31に取り付けても良い。また、脆弱部を、アルミニウム合金以外の金属や、熱可塑性エラストマ、合成樹脂などによって形成しても良い。
【0085】
なお、内圧の変化に伴う脆弱部の破損時に破片が細かく散らばり易い素材によって脆弱部が形成されている場合、その破片が吸引路21へ吸い込まれないように、第1タンク30,63や第2タンク51内にアルミメッシュ等のフィルターを設置することが好ましい。なお、厚さが約0.1mmのアルミニウム合金製の脆弱部36は、破損時に細かな破片ができ難いので、破損を伴う脆弱部36には、厚さが約0.1mmのアルミニウム合金製の板材が適している。
【0086】
上記第2実施形態では、第2タンク51のフランジ31cに樹脂環52が固定され、環状体57が鋼環57a及び樹脂環57bを備えている場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。鋼環57aを省略し、自己潤滑性を有する合成樹脂(樹脂環57b)のみによって環状体57を形成しても良い。また、樹脂環52,57bの代わりに、自己潤滑性を有する合成樹脂で、フランジ31cの上面や鋼環57aの下面をコーティングしても良い。また、第2タンク51の容器本体31又は環状体57の一方において、脆弱部36を挟み込む部分が自己潤滑性を有する合成樹脂により形成されていれば、脆弱部36の周縁部を十分に滑り易くできる。また、第1タンク30において、脆弱部36を挟み込む部分の少なくとも一方を、自己潤滑性を有する合成樹脂により形成しても良い。
【0087】
上記形態では、各バルブ23~26,34,54,74,89がそれぞれ同一のボールバルブである場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。各バルブ23~26,34,54,74,89は、各流路の連通と遮断とを切換可能であれば、それらの一部や全部を、ストップバルブやゲートバルブ、バタフライバルブ等により構成しても良い。また、各バルブ23~26,34,54,74,89を電磁弁とし、各操作部23a~26a,34a,54a,74a,89aを、制御盤17やコントローラ66に設けたスイッチとしても良い。
【符号の説明】
【0088】
10,50,60 液送安全体感装置
20 ポンプ
21 吸引路
21a 第1吸引路
21b 第2吸引路
22 送出路
22a 第1送出路
22b 第2送出路
23 第1バルブ
23a 第1操作部
24 第2バルブ
24a 第2操作部
25 第3バルブ
25a 第3操作部
26 第4バルブ
26a 第4操作部
30,63 第1タンク(第1容器)
31 容器本体
31b 開口部
35 バイパス路
35a 液面上限センサ
36,64 脆弱部
37,57 環状体
40,51,65 第2タンク
70 一斗缶(第1容器)
73 第1分岐路(第1吸引路)
80 ペットボトル(第1容器)
83 第2分岐路(第1吸引路)
図1
図2
図3
図4