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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】ヒーリングチャンバーを伴うアンカー
(51)【国際特許分類】
   A61C 8/00 20060101AFI20240202BHJP
   A61B 17/86 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
A61B17/86
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021519129
(86)(22)【出願日】2019-10-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 US2019057477
(87)【国際公開番号】W WO2020086611
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】62/748,773
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515134232
【氏名又は名称】ヒューワイス アイピー ホールディング,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒューワイス,サラ
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-507707(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0348073(US,A1)
【文献】特表2012-521232(JP,A)
【文献】国際公開第2017/136801(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0166358(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
A61B 17/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト材に準備された穴にねじ込まれるタイプのアンカーであって、
中心軸に沿って長手方向に延在する本体であって、前記本体は先端領域及び冠状領域を有し、前記本体の中央領域が前記先端領域と前記冠状領域の間に延在する、本体と、
前記本体から突出し、かつ、前記先端領域から前記冠状領域に向かって、連続する巻きで、らせん状に曲がっている少なくとも1つのねじ山形成部であって、前記ねじ山形成部は頂部を有し、前記中央領域はフルートのアレイを含み、前記各フルートは前記中央領域の長さに沿って長手方向に延在する、ねじ山形成部と、を備え、
前記各フルートは、前記ねじ山形成部の前記頂部に形成された、別個のかつ分離した、複数のフルートセグメントから構成され
前記中央領域内で、前記ねじ山形成部は凝縮ランプのアレイを含み、前記各凝縮ランプは、周方向に隣接する2つのフルートセグメントの間の前記ねじ山形成部の前記頂部に沿って配置され、前記各凝縮ランプは、前記アンカーが前記準備された穴にねじ込まれる間、高密度化作用により、局所的な圧縮ひずみを前記ホスト材に付加するように構成され、
前記中央領域内で、前記ねじ山形成部は、前記先端領域に向かって配置された前側フランクと、前記冠状領域に向かって配置された後側フランクとを有し、前記前側フランクは、前記先端領域側で測定された鈍角の前側フランク角度を有し、前記後側フランクは、前記冠状領域側に測定された鋭角の後側フランク角度を有する、アンカー。
【請求項2】
前記フルート内の前記各分離したフルートセグメントは、前記フルートにらせん状ねじれを形成するように、隣接する前記分離したフルートセグメントから周方向にオフセットする、請求項1に記載のアンカー。
【請求項3】
前記各フルートの前記らせん状ねじれは左手方向である、請求項2に記載のアンカー。
【請求項4】
前記各フルートは略一定のフルート深さを有する、請求項2に記載のアンカー。
【請求項5】
前記各凝縮ランプは、右手方向に配置された低い前縁部及び高い後縁部を有し、前記凝縮ランプは接線に対して約10°から30°の間で傾斜している請求項に記載のアンカー。
【請求項6】
記前側フランク角度は、前記先端領域側で測定された約110°から130°の間角度を成し、前記後側フランク角度は、前記冠状領域側に測定された約75°から85°の間角度を成す、請求項1に記載のアンカー。
【請求項7】
前記本体は、前記先端領域全体に先端テーパ部を有し、前記本体は、前記冠状領域全体に冠状テーパ部を有し、前記本体は、前記中央領域全体に中央テーパ部を有し前記先端テーパ部のテーパ形状は前記冠状テーパ部のテーパ形状と実質的に等しい、請求項1に記載のアンカー。
【請求項8】
前記ねじ山形成部は、右手方向に巻かれており、前記ねじ山形成部はピッチを有し、前記ピッチは前記本体の前記長さに沿って略一定である、請求項1に記載のアンカー。
【請求項9】
前記ねじ山形成部は、前記本体によって定められる谷径、及び、前記頂部によって定められる外径を有し、前記ねじ山形成部の隣接する巻き部分の間の前記本体の一部は、前記ねじ山形成部の谷部を含み、前記谷部は軸方向の谷部長さを有し、前記谷部長さは、前記ねじ山形成部の前記長さに沿って略同等であり、前記ねじ山形成部はねじ山厚さを有し、前記中央領域における前記ねじ山厚さは、前記先端領域及び前記冠状領域における厚さよりも厚い、請求項1に記載のアンカー。
【請求項10】
前記ねじ山形成部の前記谷径及び前記外径は、前記冠状領域の端部に隣接する前記ねじ山形成部の終端部において、実質的に等しい、請求項に記載のアンカー。
【請求項11】
ホスト骨に準備された穴にねじ込まれるタイプの骨アンカーであって、
中心軸に沿って長手方向に延在する本体であって、前記本体は先端領域及び冠状領域を有し、前記本体の中央領域が前記先端領域と前記冠状領域との間に延在し、前記本体は、前記先端領域全体に先端テーパ部を有し、前記先端テーパ部は前記中心軸に対して約5°から15°の間であり、前記本体は、前記冠状領域全体に冠状テーパ部を有し、前記冠状テーパ部は前記中心軸に対して約5°から15°の間であり、前記本体は、前記中央領域全体に中央テーパ部を有し、前記中央テーパ部は前記中心軸に対して約0°から5°の間である、本体と、
前記本体から突出し、かつ、前記先端領域から前記冠状領域に向かって、連続する巻きで、らせん状に曲がっている少なくとも1つのねじ山形成部であって、前記ねじ山形成部は、面取りされた頂部を有し、前記中央領域はフルートのアレイを含み、前記各フルートは前記中央領域の長さに沿って長手方向に延在し、前記ねじ山形成部は、前記先端領域に向かって配置された前側フランクと、前記冠状領域に向かって配置された後側フランクを有し、前記前側フランクは、前記先端領域側に測定された約110°から130°の間の前側フランク角度を有し、前記後側フランクは、前記冠状領域側に測定された約75°から85°の間の後側フランク角度を有する、少なくとも1つのねじ山形成部と、備え、
前記各フルートは、前記ねじ山形成部の前記頂部に形成された、別個のかつ分離した、複数のフルートセグメントから構成され
前記中央領域内で、前記ねじ山形成部は凝縮ランプのアレイを含み、前記各凝縮ランプは周方向に隣接する2つのフルートセグメントの間の、前記ねじ山形成部の前記頂部に沿って配置され、前記各凝縮ランプは、前記アンカーが前記準備された穴にねじ込まれる間、高密度化作用により、局所的な圧縮ひずみを前記ホスト骨に付加するように構成される、アンカー。
【請求項12】
前記フルート内の、前記各分離したフルートセグメントは、左手方向のらせん状ねじれを形成するように、隣接する前記分離したフルートセグメントから周方向にオフセットする、請求項11に記載のアンカー。
【請求項13】
前記各凝縮ランプは、右手方向に配置された低い前縁部及び高い後縁部を有し、前記凝縮ランプは接線に対して約10°から30°の間で傾斜している、請求項11に記載のアンカー。
【請求項14】
前記先端テーパ部は前記冠状テーパ部と実質的に等しい、請求項11に記載のアンカー。
【請求項15】
前記ねじ山形成部は、右手方向に巻かれており、前記ねじ山形成部はピッチを有し、前記ピッチは前記本体の前記長さに沿って略一定である、請求項11に記載のアンカー。
【請求項16】
前記ねじ山形成部は、前記本体によって定められる谷径、及び、前記頂部によって定められる外径を有し、前記ねじ山形成部の隣接する巻き部分の間の前記本体の一部は、前記ねじ山形成部の谷部を含み、前記谷部は軸方向の谷部長さを有し、前記谷部長さは、前記ねじ山形成部の長さに沿って略同等であり、前記ねじ山形成部はねじ山厚さを有し、前記中央領域における前記ねじ山厚さは、前記先端領域及び前記冠状領域における厚さよりも厚い、請求項11に記載のアンカー。
【請求項17】
前記ねじ山形成部の前記谷径及び前記外径は、前記冠状領域の端部に隣接する前記ねじ山形成部の終端部において、実質的に等しい、請求項16に記載のアンカー。
【請求項18】
生きた骨に準備された穴にねじ込まれるタイプのアンカーであって、
中心軸に沿って長手方向に延在する本体であって、前記本体は先端領域及び冠状領域を有し、前記本体の中央領域が前記先端領域と前記冠状領域の間に延在する本体であって、前記本体は、前記先端領域全体に先端テーパ部を有し、前記本体は、前記冠状領域全体に冠状テーパ部を有し、前記本体は、前記中央領域全体に中央テーパ部を有し、前記中央テーパ部は前記中心軸に対して1°であり、前記先端テーパ部は前記中心軸に対して10°であり、前記先端テーパ部は前記冠状テーパ部と実質的に等しい、本体と、
前記冠状領域に隣接した前記本体内に配置された内部器具ソケットと、
前記本体から突出し、かつ、前記先端領域から前記冠状領域に向かって、連続する巻きで、らせん状に曲がっている少なくとも1つのねじ山形成部であって、前記ねじ山形成部は、右手方向に巻かれており、前記ねじ山形成部はピッチを有し、前記ピッチは前記本体の前記長さに沿って略一定であり、前記ねじ山形成部は、前記先端領域に向かって配置された前側フランクを有し、前記前側フランクは、前記先端領域側に測定された約120°の前側フランク角度を有し、前記ねじ山形成部は、前記冠状領域に向かって配置された後側フランクを有し、前記後側フランクは、前記冠状領域側に測定された約80°の後側フランク角度を有し、前記ねじ山形成部は面取りされた頂部を有し、前記ねじ山形成部は、前記本体によって定められる谷径、及び、前記頂部によって定められる外径を有し、前記ねじ山形成部の隣接する巻き部分の間の前記本体の一部は谷部を含み、前記谷部は軸方向の谷部長さを有し、前記谷部長さは、前記ねじ山形成部の前記長さに沿って略同等であり、前記ねじ山形成部はねじ山厚さを有し、前記中央領域における前記ねじ山厚さは、前記先端領域及び前記冠状領域における厚さよりも厚い、ねじ山形成部と、を備え、
前記先端領域は、前記ねじ山形成部の複数の巻き部分と軸方向に交差する、少なくとも1つのセルフタッピング用ノッチを有し、
前記中央領域はフルートのアレイを含み、前記各フルートは前記中央領域の長さに沿って長手方向に延在し、前記各フルートは、別個のかつ分離した複数のフルートセグメントから構成され、前記各分離したフルートセグメントは、前記ねじ山形成部の前記頂部に形成され、前記フルート内の前記各分離したフルートセグメントは、前記フルートにらせん状ねじれを形成するように、隣接する前記分離したフルートセグメントから周方向にオフセットし、前記らせん状ねじれは左手方向であり、前記各フルートは略一定のフルート深さを有し、
前記中央領域は凝縮ランプのアレイを含み、前記各凝縮ランプは周方向に隣接する2つのフルートセグメントの間の、前記ねじ山形成部の前記頂部に沿って配置され、前記各凝縮ランプは、右手方向に配置された低い前縁部及び高い後縁部を有し、前記凝縮ランプは接線に対して約20°で傾斜し、前記各凝縮ランプは、前記アンカーが前記準備された穴にねじ込まれる間、高密度化作用により、局所的な圧縮ひずみを前記ホスト骨の内部表面に付加するように構成され、
前記冠状領域は平坦な端部と、前記平坦な端部と前記ねじ山形成部の間に配置された冠状遷移面取り部を有し、前記ねじ山形成部の前記谷径及び前記外径は、前記冠状遷移面取り部との交点において、実質的に等しい、アンカー。
【請求項19】
前記本体は、前記先端領域全体に先端テーパ部を有し、前記本体は、前記冠状領域全体に冠状テーパ部を有し、前記本体は、前記中央領域全体に中央テーパ部を有しており、前記ホスト材が骨であり、且つ、前記中央テーパ部は前記中心軸に対して約0°から5°の間であり、前記先端テーパ部は前記中心軸に対して約5°から15°の間である、請求項1に記載のアンカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は2018年11月22日に出願された米国仮出願番号62/748,773の優先権を主張するものであり、その開示全体が参照することにより本書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明の分野。本発明は、一般的に、ホスト材(母材、host material)に固定を行うことを目的としたアンカーに関し、より具体的には、アンカーが適所にねじ込まれる際、ホスト材に圧縮(締め固め;compaction)を生じさせるように設計されたアンカーに関し、さらに具体的には、骨のような生きた有機材料に配置されるアンカーに関する。
【0003】
関連技術の説明。ねじ込み式アンカーは多様な用途で使用される。例えば、工業及び建設環境では、ホスト材が木材、コンクリート、金属、又はポリマーである場合、別の要素を取り付けるための連結の固定点を提供するために、アンカーが壁又は他の部材に配置されてもよい。ねじ込み式アンカーは医療用途に広く使用され、この場合、ホスト材は骨であり、様々な使用の中でも、金属製プレート、ピン、ロッド、キルシュナー鋼線、及び、キュンチャー釘及びインターロッキングネイルのような髄内装置を提供する。
【0004】
ホスト材が骨の場合、歯科用アンカーは別の形体のねじ込み式アンカーである。骨内インプラント又は固定具としても知られる歯科用アンカーは、歯のクラウン、ブリッジ、義歯、顔面補綴を支援するか、又は歯列矯正用アンカーとして機能するために使用される外科装置である。一般に、かかるアンカーは、周囲の骨がアンカーの隙間及び周囲に成長するときに、時間の経過により完全な安定性(すなわち、二次安定性)を達成するために、設置直後には装着されないねじ山付きのテーパ状インプラントとして設計される。この工程はオッセオインテグレーション(骨結合)として知られる。アンカーが通常使用状態となるのに十分な(二次)安定性を有するまで、骨の内方成長に数か月を要する場合がある。
【0005】
多くの用途において、アンカーの安定性は重要な検討事項である。なぜなら、アンカーは、目的とする装着を支援できなければならないからである。ホスト材が有機材料、生きた組織ではない場合、アンカーの最大安定性は、一般には配置直後に達成される。この状況に関して、アンカーは、一次安定性としても知られる初期安定性を最大化するように設計されなければならない。ホスト材が、例えば骨や木材などの有機性の生きた材料である用途において、アンカーの完全な安定性の達成は、配置後の治癒及び成長にかかる時間の経過を要する場合がある。この後者において、アンカーが十分な二次安定性のレベルに到達するのが速ければ速いほど良いとされる。
【0006】
初期配置時に十分なレベルの安定性を有するアンカーは、極めて高い価値がある。従来技術は、一次(初期時)及び二次(長期間)の両方のアンカーの安定性を改善することを目的とした、多種多様な設計及び構想で構成されているにもかかわらず、いまだ改良に対する止まぬ要望が存在する。具体的には、アンカーの安定性は、容易に改良がおこなわれる分野だが、長年にわたる切実な必要性が残ったままである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある態様によると、本発明は、ホスト材に準備された穴にねじ込まれるタイプのアンカーに関する。アンカーは中心軸に沿って長手方向に延在する本体を備える。本体は、先端領域及び冠状領域を有する。本体の中央領域が先端領域と冠状領域との間に延在する。少なくとも1つのねじ山形成部が本体から突出し、当該ねじ山形成部は、先端領域から冠状領域に向かって、連続する巻きで、らせん状に曲がっている。ねじ山形成部は頂部を有する。中央領域はフルート(溝)のアレイ(配列、群)を含む。各フルートは中央領域の長さに沿って長手方向に延在する。各フルートは、ねじ山形成部の頂部に形成された、別個の、かつ分離した、複数のフルートセグメント(区分)から成る。
【0008】
本発明の第2の態様によると、骨アンカーは、ホスト骨(host bone)に準備された穴にねじ込まれるように構成される。アンカーは、中心軸に沿って長手方向に延在する本体を備える。本体は、先端領域及び冠状領域を有する。本体の中央領域が先端領域と冠状領域との間に延在する。本体は、先端領域全体に先端テーパ部を有する。先端テーパ部は中心軸に対して約5°から15°の間である。本体は、冠状領域全体に冠状テーパ部を有する。冠状テーパ部は中心軸に対して約5°から15°の間である。本体は、中央領域全体に中央テーパ部を有する。中央テーパ部は中心軸に対して約0°から5°の間である。少なくとも1つのねじ山形成部が本体から突出し、当該ねじ山形成部は、先端領域から冠状領域に向かって、連続する巻きで、らせん状に曲がっている。ねじ山形成部は切頂(切断された)頂部を有する。中央領域はフルートのアレイを含む。各フルートは中央領域の長さに沿って長手方向に延在する。ねじ山形成部は先端領域方向に配置された前側フランクと、冠状領域方向に配置された後側フランクを有する。前側フランクは、先端領域側に測定された約110°から130°の間の前側フランク角度を有する。後側フランクは、冠状領域側に測定された約75°から85°の間の後側フランク角度を有する。各フルートは、ねじ山形成部の頂部に形成された、別個の、かつ分離した、複数のフルートセグメントから成る。
【0009】
フルートセグメントは、取り付けられたばかりのアンカー周囲に、分布された一連の空間を創出する。各空間は個別のヒーリングチャンバー(治癒室)を表す。凝縮ランプ(condensing ramps、傾斜部)は、ヒーリングチャンバーに直接隣接するホスト材における応力誘導・超活性化ゾーン(induced stress andsuper-activated zone)を創出することにより、相乗効果をもたらす。ヒーリングチャンバーは、(生きたホスト材における)治癒を助長するように必然的に促進されてきたホスト材を、隣接する応力誘導・超活性化ゾーンから取り出す。ホスト材における反力により、周囲を囲むホスト材が、アンカー周囲を圧縮するとともに、ヒーリングチャンバーを埋める。ヒーリングチャンバーは空間に由来しているため、ホスト材からヒーリングチャンバーへの移動には皆無かそれに近い抵抗しか存在しない。骨内部では、超活性化ゾーンは血流を誘発し、それにより、フルート60の空間に形成する血塊を生じさせる。血塊は骨の自然治癒力を活性化させ、ヒーリングチャンバー内の新しい骨の急速な成長を生じさせる。このように、骨インプラントの用途において、超活性化ゾーンは人体における自然治癒力を促進して回復を加速させるとともに、とりわけ、上記各フルートセグメントに形成されるヒーリングチャンバーへのオッセオインテグレーションを向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明のこれらの、及び他の特徴及び有利点は、以下の詳細な説明及び付随する図面と関連して検討されると、さらに容易に理解されるであろう。
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態に従ったアンカーが完全に取り付けられた、ヒトの下顎骨における骨切り部位(オステオトミー)の断面図である。
【0012】
図2図2は、本発明の一実施形態に従ったアンカーの斜視図である。
【0013】
図3図3は、図2のアンカーの、別の向きによる斜視図である。
【0014】
図4図4は、図2及び図3のアンカーの正面図である。
【0015】
図5図5は、図4の5-5線に概ね沿った冠状端面図である。
【0016】
図6図6は、図4の6-6線に概ね沿った先端端面図である。
【0017】
図7図7は、図4の7-7線に概ね沿った長手方向の断面図である。
【0018】
図8図8は、図4の8-8線に概ね沿った横方向の断面図である。
【0019】
図9図9は、分割したフルートの特徴を明確に示した、先端部から見た等角図である。
【0020】
図10図10は、図1の10-10線に概ね沿った横断面図である。
【0021】
図11A図11Aは、図10の11Cで囲まれた領域の拡大図であるが、取付当初の状態におけるアンカー及び包囲する骨材料を示している。
【0022】
図11B図11Bは、図11Aの図であるが、ヒーリングチャンバーへの血塊の成長により治癒が明らかである時間進行を示している。
【0023】
図11C図11Cは、図10の11Cで囲まれた領域の拡大図であり、図11Bの時間進行をも示している。
【0024】
図12図12は、図1の12で囲まれた領域の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面を参照すると、複数の図面を通して、同様の数字表示は、同様の又は対応する部分を示しており、本発明は歯科の文脈において説明され、骨インプラントを受けるために、骨切り部位の準備が必要である(図1)。本発明は歯科用途のみならず、広範囲における整形外科用途にも適用できることは理解されるであろう。さらに、本発明は骨又は整形外科用途に限定されない。本発明は、生木や他の生きた細胞物質、及び、金属フォームや、様々な産業用途及び商業用途に使用される非生物ホスト材などにアンカーを取り付けるのに使用することができる。ただし、歯科用途は説得力のある例を示していることから、以下の説明は、例示的な目的で、ホスト材として骨を用いた歯科の文脈を使用する。
【0026】
図1では、本発明の1つの実施形態に従ったアンカー20が移植された無歯顎部位が断面図で示されている。アンカー20はホスト材に準備された穴にねじ込まれることが可能なタイプである。ホスト材が骨である場合、準備された穴は骨切り部位(オステオトミー、osteotmy)と呼称される。
【0027】
準備された穴、すなわち骨切り部位は、任意の適切な技術を使用して形成されることができる。かかる技術の1つは、オッセオデンシフィケーション(osseodensification)を実施するように特殊に構成された、漸進的に幅広となる回転式オステオトームの使用を含む。徐々に幅広となる回転式オステオトームを使用した骨切り部位の形成の手順は、全般的に、2016年3月3日に発布された、Huwaisによる米国特許番号9,326,778に説明されており、その開示全体が参照することにより本書に組み込まれる。さらに、2019年1月31日に発行されたHuwaisによる米国特許出願公開番号20190029695A1も参照したい。これらの文書の開示全体が参照することにより本書に組み込まれるとともに、参照することにより本書に組み込まれると認識するすべての法域において依拠される。
【0028】
骨切り部位が準備されると、繰り返しとなるが、任意の適切な技術を用いて、図1に示されるように、アンカー20が右手方向に回転されることにより、適所にねじ込まれる。最終的にアバットメント(図示せず)が内部接続部に挿通され、それによって、その後の修復物、すなわちクラウン(図示せず)を受けるために、適所に固定される。おそらく、アンカー20は骨への配置に理想的に適しているが、先の主張を繰り返すために、骨以外の応用が検討される。繰り返しとなるが、例示される実施形態は、歯科修復のためのインプラント、すなわち受容部(レセプタ、receptor)の形体のアンカー20を表しているものの、アンカー20は、例えば脊柱、臀部、肩、手首、及び、他の整形外科用途で使用されうる、骨スクリュー又は他の骨固定要素として再構成されてもよいことは当然のことである。
【0029】
次に図2から図4を参照すると、アンカー20が、多かれ少なかれテーパ状の外形プロファイル(外側形状)で形成された切頂体を含む1つの実施形態で示されている。アンカー20の本体は中央軸すなわち長手方向軸Aに、長手方向に沿って延在する。本体は先端部22及び冠状端部24を有する。用語「先端」及び「冠状」は主に歯科関連のために選択される。「先端」とは、歯の根端に向かう方向を意味する。「冠状」は歯の歯冠に向かう方向を意味する。出願人による、本文書中のこれらの用語及び、おそらく他の用語の使用は、アンカー20の用途を歯科分野での使用、又は、医療分野での使用に限定するように狭義に解釈されるべきではない。冠状端部24の視点から見たアンカー20の図が、図5に示されている。先端部22の視点から見たアンカー20の図が、図6に示されている。冠状端部24は好適には平坦、又は実質的に平坦であり、歯科修復物、又はアンカー20への後続の他のアタッチメント用プラットフォームとして機能する。先端部22はアンカー20の先頭側端部(leading end)を形成し、使用時には、準備された骨切部位に最初に挿入される。先端部22は、図3に示されるような丸い先端で構成されてもよく、又は、その代わりにドーム型、又は、尖った、又は凹凸のある(くぼんだ)、又は、過度な挿入を防止するのに役立つ、又は、より安全なインプラント配置に貢献する、他の適した形状で設計されてもよい。
【0030】
図7で確認されるように、アンカー20は先端部22に隣接する先端領域26、及び、冠状端部24に隣接する冠状領域28を有する。このように、先端領域26は先端部22から延在する本体の一部を表す。同様に、冠状領域28は冠状端部24から延在する本体の一部を表す。本体の中央領域30は先端領域26と冠状領域28との間に延在する。中央領域30は、図示された例において、端部22から端部24までの3つの領域26から30までが、本体の長手方向の長さ全体を完全に占めるように、いずれの端部においても、先端領域26及び冠状領域28まで連続的である。
【0031】
図4において、本体の外部表面は、テーパ形状を有するものとして容易に識別可能である。特に、別々の領域26から30は、とりわけ本体のテーパ状の特性により、互いに区別することができる。したがって、本体を、先端領域26全体に先端テーパ部32を、冠状領域28全体に冠状テーパ部36を、及び、中央領域30全体に中央テーパ部36を有するとして説明することは道理にかなっている。先端テーパ部32及び冠状テーパ部34はそれぞれが中心軸Aに対して約5°から15°の間である。骨への応用において、これらの範囲は重要な境界を示すものであり、約5°よりも小さい角度は、過小な径方向圧縮をもたらし、一方で約15°よりも大きい角度は、過大な径方向圧縮をもたらす。先端テーパ部32及び冠状テーパ部34は実質的に等しい、すなわち、互いに一致する必要はない。ただし、示されている例では、先端テーパ部32及び冠状テーパ部34は、それぞれ、最適な結果となることが発見された約10°となっている。中央テーパ部36は中心軸Aに対して約0°から5°の間である。骨への応用において、これらの範囲は重要な境界を示すものであり、約0°よりも小さい角度は不良なテーパ条件をもたらし、一方で約5°よりも大きな角度は、中央領域30の長さに沿った径方向圧縮に過大なばらつきをもたらし、及び/又は、先端領域26に隣接して過小な径方向圧縮をもたらす。示された例において、中央テーパ部36は、最適な結果となることが発見された約1°となっている。歯科矯正用途以外では、それよりも幾分大きな範囲が望ましい場合がある。医療用途以外では、さらに大きな範囲が検討されてもよい。
【0032】
実際のところ、先端領域26、冠状領域28及び中央領域30の長手方向の長さは、本体の長手方向の長さ全体に対して変化しうる。例えば、図7の例では、冠状領域28の長手方向の長さが1ユニットとして指定される場合、中央領域30はおよそ2ユニットの長さとなり、先端領域26は、約1と1/2ユニットの長さである。これらの大まかな計測により、本体の長手方向の長さ全体は、約4と1/2ユニットの長さとなる。必然的に、先端領域26、冠状領域28及び中央領域30の相対的な長さは、意図される用途に適する適合性が高い。すなわち、この寸法の関係性は用途に適するように、及び/又は、特定の性能属性を実現するように変更可能である。例えば、先端領域26を相対的に長くする、又は短くすることができ、冠状領域28を相対的に長くする、又は短くすることができ、及び、中央領域30を相対的に長くする、又は短くすることができる。当然のことながら、当業者には更なる多くの代替案が明らかとなろう。それでもなお、本体の可変の相対長さ、外形は、一般的に、冠状端部24に向かって拡大する円錐テーパを維持しなければならない。円錐形状は、より優れた一次安定性、及び、負荷プロトコル(loading protocols)を支持すると考えられる。
【0033】
内部器具ソケット38が本体内に配置され、図5に示されるように、冠状端部24から直接開口している。器具ソケット38の外形全体は図7で見ることができ、冠状領域28を通って、中央領域30にも十分に延在している。これらの例は、補完的形状のドライバヘッド(図示せず)と連結するための六角レセプタクル(hex-point receptacle)の形状をした器具ソケット38を示している。当然のことながら、器具ソケット38の形状は当該用途、及び、関連する使用産業/分野での標準に適していよう。器具ソケット38は、凹型雌ねじ部(recessed threaded section)40へのアクセスを可能にする貫通機構として形成される。この例における雌ねじ部40は中央領域30を通過して延び、先端領域26に侵入する。雌ねじ部40は、埋め込まれたアンカー20にその後取り付けられるアバットメント又は他の機構(図示せず)に接続されるように構成される。
【0034】
複数の図面を通じて示されているように、少なくとも1つのねじ山が本体から突出している。「少なくとも1つ」という表現は、いくつかの予想される実施形態において、アンカー20は二条ねじ又は三条ねじの形体で構成されてもよいことを明確に示すために使用されている。ただし、ここに示される例では、ねじ山形成部は、先端領域から、中央領域30全体を通って、冠状領域28にも十分に、連続して順番にらせん状に曲がっる単一のリードを含む。最も予想される用途においては、ねじ山形成部は、最も一般的な従来技術によると、本体周囲を右手方向に巻かれている(捻れている)。当然のことながら、特定の用途が左手方向を優先する場合、同様の機能を実施するために、アンカー20の完全な左右対称像が想像されよう。
【0035】
図4において、ねじ山形成部のピッチが作図線42で示されている。ピッチ42は任意の適切な低角度であってもよいが、いかなる場合にも本体の長さに沿って略一定である。ここに示される例は、約5°のピッチ42を描いているが、当然のことながら、一例に過ぎない。
【0036】
図7の断面図で最もわかりやすく示されているように、ねじ山形成部は先端領域26に向かって配置された前側フランク44を有する。換言すると、前側フランク44は、先端部22側に向いたねじ山形成部のらせん状表面のことである。前側フランク44は、図7において作図線46で示された、略一定の前側フランク角度LFを維持する。前側フランク角度LFは、挿入を容易にするように鈍角で、中心軸Aから先端部22側で測定される。前側フランク角度LFは、先端領域26に向かって計測されるとき、好適には約110°から130°の間である。示されている例では、前側フランク角度LFは、適切な結果をもたらすことが判明している、約120°で表されている。
【0037】
ねじ山形成部は冠状領域28に向かって配置された後側フランク48を有する。後側フランク48は、冠状端部24側に向いたねじ山形成部のらせん状表面のことである。後側フランク48は、図7において作図線50で示された、略一定の後側フランク角度TFを維持する。後側フランク角度TFは、引き抜きに対してより好ましく抵抗するとともに、引張荷重下でのホスト骨の径方向の負担を回避するために、鋭角で、冠状端部24側の中心軸Aから測定される。後側フランク48は、冠状領域28方向に計測されるとき、好適には約75°から85°の間である。示されている例では、後側フランク角度TFは、最適な結果をもたらすことが判明している、約80°で表されている。後側フランク角度TFの鋭角の背面角に起因するさらなる便益は、図10から図12と関連して説明される。
【0038】
多くのねじ山形成部に共通するように、ねじ山形成部は頂部52を有する。ここでは、頂部52は、図7の作図線46及び50を考慮して最も理解されるように、面取りされている。仮に、前側フランク44及び後側フランク48が完全に延びていたら、刃状の頂部を創出する鋭い端部を成していたであろう。ただし、示されている例では、配置状態において、頂部52は略軸方向、すなわち長手方向の幅を有している。後に説明されるように、頂部52はアンカー20に能動的な機能、及び新しい特性を提供するように特別に構成されている。
【0039】
標準的なスクリューねじ山の用語によると、ねじ山形成部は本体によって定められる谷径、及び、頂部52によって定められる外径を有することが示される。谷径はねじ山形成部のおねじ谷の径と一致する。ねじ山形成部の隣接する巻き部分(turn)の間の本体の一部は谷部を備える。谷部は、一定のピッチと相まって、本体長さに沿って略同等である軸方向の谷部長さを有する。すなわち、ねじ山形成部に沿ったどの地点においても、軸方向の谷部長さは略同一である。ねじ山形成部はねじ山厚さを有する。ねじ山厚さとは、本体において計測された、前側フランク44及び後側フランク48の間の軸方向寸法である。図4及び図7は、中央領域30のねじ山厚さは、先端領域26及び冠状領域28のいずれの厚さよりも大きくてもよいことを示している。特に、ねじ山厚さが先端領域26及び冠状領域28で減少したとしても、軸方向の谷部長さは略一定のままである。略一定の軸方向の谷部長さに起因するさらなる利点が、図10から図12に関連して説明される。
【0040】
ねじ山形成部の終端部は特筆に値する。先端遷移面取り部(apical transitional chamfer)54は、丸みを帯びた先端部22と、ねじ山形成部の開始端部、すなわち前縁部との間に配置される。同様に、冠状遷移面取り部(coronal transitional chamfer)56が平坦な冠状端部24とねじ山形成部との間に配置される。先端遷移面取り部54は、設置時のひび割れ及び引っかかりを回避するのに役立つ。図1で見られるように、冠状遷移面取り部56は、骨(又は他のホスト材)の内方成長を容易にするとともに、アンカー20を機械的に、原位置にロックするのに役立つ。ねじ山形成部の谷径及び外径は、先端遷移面取り部54及び冠状遷移面取り部56の各交点において、実質的に等しい。冠状遷移面取り部56での交点は、図4で見ることができる。図7は、おそらく、先端遷移面取り部54での交点を最もわかりやすく描いている。これらの図において、先端領域26及び冠状領域28のそれぞれにおけるねじ山形成部の径方向突起が、徐々に小さくなるのを見ることができる。各遷移面取り部54、56において、ねじ山形成部はアンカー20の谷部又は本体に向かって、円滑に終結、融合するため、ねじ山形成部の谷径及び外径は合流、すなわち合体する。とりわけ冠状端部24において、ねじ山形成部の小さくなった径方向突起は、硬質な皮質骨の外層に過大な応力を付加しないことが重要な骨インプラント用途において、極めて有益である(図1参照)。
【0041】
図3図4及び図6は、先端領域26が少なくとも1つのセルフタッピング用ノッチ(切り込み)を含みうることを明確に示している。示されている例では、複数(この場合、3つ)の等間隔のセルフタッピング用ノッチ58が採用されている。各セルフタッピング用ノッチ58は、ねじ山形成部の複数の巻き部分と軸方向に交差し、本体に貫通し、ねじ込み工程の間に骨片(又は他のホスト材の破片)用ポケットを創出する。各ノッチ58は、アンカー20が準備された穴に進路を取ることにより前進するとき、ねじ山形成部のための経路を作るためにホスト材を彫る、略平坦な切削面を有する。
【0042】
アンカー20の中央領域30は、フルート(溝、flute)60のアレイを含む。フルート60の数は任意でよい。図8の断面図は、示されている例のアンカー20に10本のフルート60が形成されていることを示している。フルート60は、周方向に互いに等間隔であることが好ましい。アンカー20が10本のフルートを含むこの例(図8)では、各フルート60は36°(0.2πrad)で、次の隣接するフルートから周方向にオフセットして(ずれて)いる。おそらく図3に最もわかりやすく示されているように、それぞれのフルート60は、その数に関係なく、中央領域30の長さに沿って、長手方向に延在する。すなわち、フルート60は、おそらく最小限の侵入を除いて、主に中央領域30の範囲内に限定され、フルート60は先端領域26又は冠状領域28のいずれにも延在しない。
【0043】
フルート60は、連続する、途切れることのない谷部ではない。その代わりに、各フルート60は、ねじ山形成部のらせん部の間の隙間によって互いに離れた、複数の異なる、及び、分離したフルートセグメントで構成されている。つまり、各フルート60は、実際には、おそらく歩道のようないくつかの独立型のフルートセグメントの整列によって形成され、別個の手段の連なりによって形成されうる。先述のらせん状谷部は各回転によりフルート60と交差し、それによって、各フルート60を複数の整列したセグメントに分割する。このことは、図9の視点から容易に理解される。したがって、フルートセグメントの集合が、1つのフルート60を確立する。それぞれの分離したフルートセグメントは、ねじ山形成部の頂部52におけるスカラップとして形成される。便宜上、各フルート60が平均7つのフルートセグメントで構成され、及び、アンカー20が10のフルート60を有すると仮定すると、フルートセグメントの合計は約70となり、アンカー20の中央領域30の外側周囲に均一に分布される。
【0044】
共通のフルート60内の、それぞれの分離したフルートセグメントは、らせん状ねじれを形成するように、隣接する分離したフルートセグメントから円周方向にオフセットする。らせん状ねじれは、図4で作図線62によって示されている。例えば、各フルートセグメントが、-10°で隣接する分離したフルートセグメントから円周方向にオフセットしている場合、各フルート60のらせん状ねじれは-10°となる。らせん状ねじれの負の値(例えば-10°)は左手方向を意味する。つまり、フルート60は、準備した穴にアンカー20をねじ込むのに必要な回転方向とは反対の方向に進み、または伝搬(propagate)する。
【0045】
フルート60の左手方向のねじれの1つの有利点は、アンカー20の除去の状況において認められる。多くのホスト材、特に、ホスト材が生きた骨である場合に、ホスト材は配置の後にフルート60に向かって移動するであろう。この移動は、ホスト材に発生した応力により、また、骨や木などの生きたホスト材の場合、おそらく内方成長により、弾性及び半弾性材料における回復(スプリングバック)によって引き起こされうる。フルート60に進入するホスト材は、アンカー20を機械的に適所にロックする。アンカー20をねじって外そうとしても、左手方向のねじれにより、むしろアンカー20をより深くねじ込むであろうフルート60内のホスト材により、抵抗を受ける。
【0046】
示されている例では、各フルート60は略一定のフルート深さ、及び、略一定のフルート幅/距離を有する。すなわち、各フルートセグメントのサイズ及び形状は略同一である。ただし、そのことは必須事項ではない。予期されるいくつかの実施形態では、フルート60は様々な深さ及び/又は幅、及び/又は可変のらせん状ねじれ62によって形成されてもよい。
【0047】
また、中央領域30は凝縮ランプ(傾斜部分)64のアレイも含む。各凝縮ランプ64は、周方向に隣接する2つのフルートセグメントの間のねじ山形成部の頂部52に沿って配置される。つまり、凝縮ランプ64は、中央領域30内の、隣接するフルート60間の頂部52上に位置する。各凝縮ランプ64は、右手方向に配置された低い前縁部66及び高い後縁部68を有する。すなわち、「前側(または先導側、leading)」及び「後側(または背向側、trailing)」という形容詞は、右手方向のアンカー20が準備された穴にねじ込まれるときの回転に基づいている。低い前縁部66は、ランプすなわちくさびのように、回転において高い後縁部68よりも先行する。図8に最もわかりやすく示されているように、凝縮ランプ64は、接線に対して約10°から30°の間の角度Pで傾斜している。示されている例では、ピッチ角Pは、最適な結果をもたらすことが判明している約20°である。
【0048】
各凝縮ランプ64は、アンカー20が準備された穴にねじ込まれる間、高密度化(圧縮)作用(densifying action)により、局所的な圧縮ひずみをホスト材の内部表面に付加するように構成される。より具体的には、ねじ山形成部と一致するホスト材のらせん状部分が、凝縮ランプ64によって直接影響を受け、ねじ山形成部間の隙間は直接影響を受けない。図11Aは、2つの凝縮ランプ64が、仮想位置から開始して、実線で示される最終静止位置まで時計回りに回転されるフルートセグメントをまたいでいる様子を表している。凝縮ランプ64が穴の内部表面にわたって引きずるとき、凝縮ランプ64は、高度に攪拌され高度に圧縮された骨材(又は他のホスト材)の局所的な領域を生成し、以下、その領域を超活性化ゾーン70と称する。また、凝縮ランプ64は、包囲するホスト材において応力Iを誘発する。誘発された応力Iは、凝縮ランプ64の拭い取り動作によって骨材(又は他のホスト材)が押しのけられる方向を示した方向矢印によって示されている。よって、図11Aは、アンカー20が配置のタイミングで全深さに到達して静止する時点を極めて単純化して描くことを目的としている。各フルートセグメントが静止する位置には、わずかな空間72が予想される。
【0049】
図11B図11Aと似ているが、おそらく図11Aの後の時点、又はおそらく数日後、あるいは数週間後の時間経過後の描写である。2つの動機付け要因が、ホスト材でフルート60の空間72を埋め始めさせるように影響し、それにより空間をヒーリングチャンバー72とみなすことが可能となる。ヒーリングチャンバー72は、二次安定性を急速に達成するための培養部位として機能する。1つの動機付け要因は、先述の誘発された応力I(図11A)に対する、ホスト材の反力Rである。反力Rは、アンカー20が回転を停止した後で、骨(又は他のホスト材)が弾性的に移動する方向を示すための方向矢印によって示されている。弾性的に変形するホスト材の性質の範囲内で誘発された応力Iは、それ自体を反力Rに反転し、応力Iが除去されると、非変形状態に戻るであろう。したがって、反力Rは、包囲する骨材又はホスト材に、アンカー20周囲を圧縮させ、フルート60の空間72を埋めるよう作用するであろう。空間72におけるホスト材の非存在は、抵抗が皆無か、それに等しいことを意味し、ヒーリングチャンバー72への、反応する骨の動きを受け入れることを意味する。すなわち、ヒーリングチャンバー72は骨材(又は他のホスト材)を効果的に引き寄せるであろう。自然は真空を嫌う、とはこれまで言われてきたことである。ヒーリングチャンバー72は空間を埋めるために、骨の流入を促進、助長させると類推されよう。
【0050】
もう1つの動機付け要因は、超活性化ゾーン70によるものである。例えば骨などの生きたホスト材において、誘発された応力Iが、骨の弾性的に変形する性質を超えた場合に、骨は変形し、塑性変形により恒久的に形状を変えることになる。骨において、形状の恒久的変化は、微小クラックと関連づけられることができ、該微小クラックは、エネルギー開放、すなわち、完全な破砕に対する自然防護である漏出(compromise)を可能にする。上記は、フルート60の空間に形成される血栓を導く血流を創出する。この攪拌は、すべて、フルート60内への新しい骨の急速な成長を導く骨の自然治癒特性を活性化する。したがって、超活性化ゾーン70は、アンカー20が完全に設置されると、とりわけ、各フルートセグメントが静止する個所に形成されるヒーリングチャンバー72への、オッセオインテグレーションの回復及び強化を加速するために、人体における自然治癒特性を促進する。
【0051】
図11C図11Bと似ているが、図11Bから何週間も後、あるいは数か月後の、かなりの時間経過後の描写である。図11Cは、アンカー20全体を断面図で描写した図10から取られている。アンカー20を包囲しているのは、超活性化ゾーン70及び反力Rによって促進される新しい骨の成長の、強力で高密度な層である。この時点で、ヒーリングチャンバー72は、アンカー20を適所にロックする硬質な新しい骨で埋められている。先の記述では、示されているアンカー20は、合計で約70のフルートセグメントを有しうることが見積もられる。これは、中央領域30の外部全体に均等に分布された、70の個別のヒーリングチャンバー72を意味し、オッセオインテグレーションプロセスを加速するための新しい骨の成長が同時に培養される。この分離したヒーリングチャンバー72の広範かつ均等な分布が、治癒プロセスを高度に加速させる。
【0052】
図12は、埋め込まれたアンカー20のねじ山形成部の2つの巻き部分を示した、長手方向の断面図の一部である。この図は、アンカー20が適所にねじ込まれるときに、ねじ山形成部の巻き部分間の隙間に捕えられたホスト材が全般に撹乱されないままであることを可視化するのに役立っている。具体的には、略一定の軸方向の谷部長さと組み合わされた、ねじ山形成部の略一定のピッチ42は、ねじ山形成部の巻き部分間のホスト材部分が、アンカー20の設置によって直接妨害されることはないことを意味する。反対に、ねじ山形成部の頂部52とかみ合うホスト材のらせんバンド(helical band)は、凝縮ランプ64に起因して、適所へとアンカー20をねじ込むことによって高度に攪拌及び撹乱される。ただし、この高度に攪拌及び撹乱されたホスト材のバンド(帯)は、ねじ山形成部の巻き部分間の隙間に位置するホスト材には直接影響しない。結果として、ホスト材の自然的構造的完全性は、ねじ山形成部の巻き部分間の隙間で、大部分が失われないまま残る。
【0053】
よって、図12は、アンカー20が最初に配置されるとき(例えば図11A及び図11B)、ねじ山形成部の巻き部分間の隙間に捕らえられたホスト材が、アンカー20に対して、有利に高度な初期の安定性、すなわち一次安定性をもたらす役割を果たすことを理解するのに役立つ。これらの期間、及び、アンカー20の配置から数日の間、ヒーリングチャンバー72は、それ自体が埋まり、オッセオインテグレーションを実現するのに十分な時間を有していない。ねじ山形成部の巻き部分間の隙間のホスト材が、一次的にアンカー20を適所に固定するのがこの段階である。とりわけ、アンカー20の配置後の最初期段階の間に利益をもたらす、先述の後側フランク角度TFの鋭角の背面角が見られる。
【0054】
図12は、アンカー20をホスト材から押し出す引き抜き力(張力)を示している。この状況下で、後側フランク48の鋭角は、ホスト材に対して、アンカー20の本体(谷部)からできるだけ離れるよう応力集中74を課す。応力集中は、図12で、破線円74の同心円のアレイで示されている。さらに、この応力集中74の位置は、超活性化ゾーン70から形成することが可能であったと考えられる新しい骨成長と(空間的に)より一致しやすく、それゆえ、引き抜き力に対する最大限の抵抗を可能にする。後側フランク角度TFが、一般的なアクメねじのねじ山形成部に見られるような鈍角であったと想像すると、引張(引き抜き)荷重下での応力集中74は、アンカー20の本体(谷部)に直接隣接して発生するであろう。想像される構造において、アンカー20は引き抜き力に抵抗するのにはあまり適さないであろう。
【0055】
ただし、超活性化ゾーン70及びヒーリングチャンバー72を介して、新しい骨成長に十分な時間が充てられれば、新しい骨成長は、すべての標準状態において完全な装着を可能にする、実質的に増強された二次安定性をもたらす。完全なるオッセオインテグレーション後においても、後側フランク48の鋭角は、二次安定性をもたらすらせん状の返し(barb)のように機能する。
【0056】
図7に戻ると、制御された圧縮ゾーン76を示すために、アンカー20の左側に網目状エリアが表されている。制御された圧縮ゾーン76は、先端部22から冠状端部24までのアンカー20の本体(すなわち、ねじ山形成部の谷部)とねじ山形成部の頂部52との間で画定される。本発明の当該設計は、ホスト材のこのゾーン76における効果を利用するための細心の注意を明らかにしている。先端領域26において、制御された圧縮ゾーン76は、ねじ山形成部の谷部及び頂部52の両方で、徐々にかつ漸進的にホスト材を押しのける。上記は、ねじ山形成部の谷径及び外径の間の差分によって示される。先述のとおり、これらの径は先端遷移面取り部54との交点では実質的に等しい。ただし、ねじ山形成部の径方向突起が、谷部に対して大きくなるにつれ、ねじ山形成部の頂部52によって影響をうけるらせんバンドにおいて、相対的なホスト材の押しのけ量(移動量、displacement)は変化する。換言すると、ねじ山形成部の谷部及び頂部52の両方が、制御された圧縮ゾーン76の先端領域26において、ホスト材を外側方向に押圧しているにも関わらず、頂部52の作用はさらに大きい。
【0057】
制御された圧縮ゾーン76の中央領域30において、ねじ山形成部の谷部及び頂部52の両方は、中央テーパ部36(図4)によって決定づけられるのとほぼ同一の割合(rate)で、ホスト材を外側方向に押圧している。このように、先端領域26は、制御された圧縮ゾーン76で積極的/迅速な拡張(expansion)を開始するが、中央領域30全体を通して、ホスト材の継続的な押しのけ量は比較的穏やかである。制御された圧縮ゾーン76の冠状領域28に進むと、圧縮の逆転が起こり、冠状遷移面取り部56で相対的な骨の移動がゼロになるまで、頂部52に起因する拡張が減少することにより、谷部に起因する拡張が急速に増加する。この構造の1つの目的は、冠状遷移面取り部56のホスト材における径方向応力を等しくすることである。例えばヒトの骨では、一般的に、皮質骨の硬質な層が表面に設けられ、柔らかい海面骨が内部に設けられる。図1を参照のこと。硬質な皮質骨の領域において径方向応力を等しくすることにより、埋め込まれたアンカー20周囲での疲労骨折が起こりにくくなる。
【0058】
先述の発明は関連する法的基準を順守して説明されており、よって、本説明は事実上、限定ではなく例示を意味する。ここに開示される実施形態の変更及び修正は、当業者にとって明白であると思われ、本発明の特許請求の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12