(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】隅角切開術のための手術器具、使用方法、および製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20240202BHJP
【FI】
A61F9/007 160
(21)【出願番号】P 2021540819
(86)(22)【出願日】2019-07-03
(86)【国際出願番号】 US2019040538
(87)【国際公開番号】W WO2020149877
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-09-30
(32)【優先日】2019-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521309204
【氏名又は名称】ライコ インターナショナル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨコヤマ,ミツノブ
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-523550(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0282348(US,A1)
【文献】米国特許第05921998(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0151769(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の線維柱帯網を優しくこするための手術器具(10、10B、10C)であって、
細長い形状を有し、近位端および遠位端を有するハンドグリップ部分(12、12B、12C)、および
前記ハンドグリップ部分(12、12B、12C)の前記遠位端から延在する先端部分(14、14B、14C)、を含み、
前記先端部分(14、14B、14C)は、前記ハンドグリップ部分(12、12B、12C)の前記遠位端に固定された基部(20、20B、20C)および前記基部(20、20B、20C)から延在する自由端(18、18B、18C)を有するエラストマー要素(16、16B、16C)を含み、前記自由端(18、18B、18C)は、研磨面を有し、前記研磨面は、前記線維柱帯網の組織を除去することなく非破壊的に、前記眼の線維柱帯網を優しくこするように構成され
、前記エラストマー要素16Bが、(i)実質的に如何なる研磨面も粗面化面もない滑らかな上部凹部40B、および(ii)反対側に、前記研磨面を含む下部凸部50Bを含み、前記上部凹部(40B)は、前記エラストマー要素(16B)の中心軸(22B)に直交する方向において、前記下部凸部(50B)の上にあることを特徴とする手術器具。
【請求項2】
前記自由端(18、18B、18C)が、中心軸(22、22B、22C)に向かって前記基部(20、20B、20C)から離れる方向に内向きにテーパー状になっている、請求項1に記載の手術器具(10、10B、10C)。
【請求項3】
前記自由端(18)が円錐台形状を有する、請求項2に記載の手術器具(10)。
【請求項4】
前記エラストマー要素(16)の前記基部(20)が円筒形であり、非研磨性の表面を有する、請求項3に記載の手術器具(10)。
【請求項5】
前記自由端(18、18B、18C)の前記研磨面が、埋め込まれた研磨剤構成物を含む、請求項1に記載の手術器具(10、10B、10C)。
【請求項6】
前記研磨剤構成物がダイアモンド粒子を含む、請求項5に記載の手術器具(10、10B、10C)。
【請求項7】
前記自由端(18、18B、18C)の前記研磨面が粗面化表面を含む、請求項1に記載の手術器具(10、10B、10C)。
【請求項8】
前記ハンドグリップ部分(12、12B、12C)が、互いに鈍角(α)に配置された近位部および遠位部を含む、請求項1に記載の手術器具(10、10B、10C)。
【請求項9】
前記鈍角(α)が約120度~約140度である、請求項8に記載の手術器具(10、10B、10C)。
【請求項10】
エラストマー要素(16、16B、16C)がシリコーンである、請求項1に記載の手術器具(10、10B、10C)。
【請求項11】
眼の線維柱帯網を優しくこするための手術器具(10、10B、10C)であって、
細長い形状を有し、近位端および遠位端を有するハンドグリップ部分(12、12B、12C)、および
前記ハンドグリップ部分(12、12B、12C)の前記遠位端から延在する先端部分(14、14B、14C)、を含み、
前記先端部分(14、14B、14C)は、前記ハンドグリップ部分(12、12B、12C)の前記遠位端に固定された基部(20、20B、20C)および前記基部(20、20B、20C)から延在する自由端(18、18B、18C)を有するエラストマー要素(16、16B、16C)を含み、前記自由端(18、18B、18C)は、研磨面を有し、前記研磨面は、前記線維柱帯網の組織を除去することなく非破壊的に、前記眼の線維柱帯網を優しくこするように構成され、前記研磨面が、前記自由端(18C)の相対する両側面(60C)に限定されることを特徴とする手術器具。
【請求項12】
眼の線維柱帯網を優しくこするための手術器具(10、10B、10C)であって、
細長い形状を有し、近位端および遠位端を有するハンドグリップ部分(12、12B、12C)、および
前記ハンドグリップ部分(12、12B、12C)の前記遠位端から延在する先端部分(14、14B、14C)、を含み、
前記先端部分(14、14B、14C)は、前記ハンドグリップ部分(12、12B、12C)の前記遠位端に固定された基部(20、20B、20C)および前記基部(20、20B、20C)から延在する自由端(18、18B、18C)を有するエラストマー要素(16、16B、16C)を含み、前記自由端(18、18B、18C)は、研磨面を有し、前記研磨面は、前記線維柱帯網の組織を除去することなく非破壊的に、前記眼の線維柱帯網を優しくこするように構成され、前記自由端(18C)が矩形のピラミッド形状を有することを特徴とする手術器具。
【請求項13】
眼の線維柱帯網を優しくこするための手術器具(10、10B、10C)の製造方法であって、
近位端および遠位端を有する細長い形状を有するハンドグリップ部分(12、12B、12C)を形成する工程、
前記ハンドグリップ部分(12、12B、12C)の前記遠位端から延在するように先端部分(14、14B、14C)を固定する工程、ここで前記先端部分(14、12B、12C)は、前記ハンドグリップ部分(12、12B、12C)の前記遠位端に固定された基部(20、20B、20C)、および前記基部(20、20B、20C)から延在する自由端(18、18B、18C)を有する、エラストマー要素(16、16B、16C)を含み、および
前記自由端(18、18B、18C)に研磨面を設け、前記研磨面は、前記線維柱帯網の組織を除去することなく非破壊的に、前記眼の線維柱帯網を優しくこするように構成され
、前記エラストマー要素16Bが、(i)実質的に如何なる研磨面も粗面化面もない滑らかな上部凹部40B、および(ii)反対側に、前記研磨面を含む下部凸部50Bを含み、前記上部凹部(40B)は、前記エラストマー要素(16B)の中心軸(22B)に直交する方向において、前記下部凸部(50B)の上にあるように構成される工程、を含む製造方法。
【請求項14】
前記研磨面を設ける前記工程が、
前記エラストマー要素(16、16B、16C)の前記自由端(18、18B、18C)の少なくとも一部の表面を粗面化することを含む、又は、
前記自由端(18、18B、18C)に研磨剤粒子を埋め込むことを含む、又は、
前記自由端(18、18B、18C)の側面部分のみを粗面化することを含む、請求項
13に記載の手術器具(10、10B、10C)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑内障などの眼疾患の治療のための眼科的処置を実施するための手術器具、より具体的には粗面化された研磨性の表面であるがタッチの柔らかい、エラストマー要素の先端部分を有する隅角切開手術器具に関する。
【背景技術】
【0002】
隅角切開術は、主に先天性緑内障の治療に使用される外科的処置である。これは、目の前方(正面)部分内のいくつかの構造の発達停止によって引き起こされる。これらの構造には、虹彩と目の健全性を維持するために必要な房水を生成する毛様体が含まれる。これらの構造は、孤発性先天性緑内障の患者の目においては正常に発達しない。それどころか、それらは重なり合って、房水のための主要な排水システムである線維柱帯網の目詰まりを起こす。この目詰まりの結果として、線維柱帯網自体が厚くなり、網内の排水穴が狭くなる。これらの変化により、眼の水分が過剰になり、圧力が上昇して眼の内部構造が損傷し、緑内障を引き起こし得る。
【0003】
隅角切開術の目的は、眼からの水の流出の障害を取り除くことであり、これにより眼圧(IOP)が低下する。IOPを下げると、先天性緑内障でよく発生する角膜の拡張および眼の膨張と伸張の安定が促進される。ただし、目の大きさは正常に戻らない。最も重要なことは、水の流出が改善されると、視神経への損傷が停止または好転することである。患者の視力は、手術後に改善する可能性がある。
【0004】
隅角切開術は、線維柱帯網の全層セグメントを除去することにより、眼からの房水の正常な排液を回復することができ、したがって、房水は、線維柱帯網の小片が除去された開放領域を通って排出される。隅角切開術およびそのような処置を実施するために使用可能な特定の先行技術器具は、特許文献1および特許文献2に記述されており、それぞれは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0005】
現在、当技術分野では、眼の線維柱帯網を研削および/または掻き取る処置の実施に使用できる、簡素、安価、精密な器具開発の必要性が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第6,979,328号
【文献】米国特許出願公開番号US2018/0289544 A1
【発明の概要】
【0007】
本発明によれば、緑内障の治療などに隅角切開術を実施することを容易にするよう、特に構成された手術器具が開示される。器具は、近位端および遠位端を備えた細長い形状を有するハンドグリップ部分を含む。器具は、ハンドグリップ部分の遠位端から延在し、操作可能に接続されている先端部分をさらに含む。先端部分は、ハンドグリップ部分の遠位端に固定された基部と、基部から延在する片持ちの自由端とを有するエラストマー要素の構成を有する。自由端は、目を扱うために相対的研磨面を有する。
【0008】
本発明の別の態様では、エラストマー要素は中心軸を規定し、自由端は、基部から離れる方向に、中心軸に向かって内向きにテーパー状になるように構成される。
【0009】
本発明の別の態様では、自由端は、円錐台形状を有する。
【0010】
本発明のさらに別の態様では、エラストマー要素の基部は実質的に円筒形であり、非研磨性の表面を有する。
【0011】
本発明の一態様では、自由端の相対的研磨面は、埋め込まれた研磨剤構成物を含む。本発明の現在好ましい形態の1つでは、研磨剤構成物はダイアモンド粒子を含む。本発明の別の好ましい形態では、自由端の相対的研磨面は、粗面化表面の形態を有する。
【0012】
本発明のさらに別の形態では、ハンドグリップ部分は、互いに対して鈍角(α)、好ましくは約120度~約140度で配置された近位部および遠位部を含む。
【0013】
本発明の別の態様では、エラストマー要素はシリコーンである。好ましくは、シリコーンは、ショア00スケールで約60~約90のデュロメータ硬さを有する。
【0014】
本発明の別の態様によれば、自由端の相対的研磨面は、自由端の相反する両側面に実質的に限定される。好ましくは、一形態では、自由端は矩形のピラミッド形状である。
【0015】
本発明のさらに別の形態では、エラストマー要素は、(i)実質的に滑らかな上部凹部、および(ii)反対側に、相対的研磨面を含む下部凸部を含む。
【0016】
本発明の別の広い形態では、手術器具の製造方法が開示されている。この方法は、近位端および遠位端を備えた細長い形状を有するハンドグリップ部分を形成する工程を含む。この方法は、ハンドグリップ部分の遠位端から延在するように先端部分を固定する工程を含む。先端部分は、ハンドグリップ部分の遠位端に固定された基部と、基部から延在する自由端とを有するエラストマー要素である。この方法は、自由端に相対的研磨面を設ける工程を含む。
【0017】
本発明の別の態様によれば、相対的研磨面を設ける工程は、エラストマー要素の自由端の少なくとも一部の表面粗面化を含む。
【0018】
本発明の別の態様によれば、相対的研磨面を設ける工程は、自由端に研磨剤粒子を埋め込むことを含む。
【0019】
本発明のさらに別の形態では、相対的研磨面を設ける工程は、自由端の側面部分または側面のみを粗面化することを含む。
【0020】
本発明の別の態様によれば、この方法は、自由端を、円錐台形状、ピラミッド形状、またはアーチ形状のうちの1つで形成する工程をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
明細書の一部を構成する添付の図面において、全体を通して、同じ数字が同様の部品を示すために使用されている。
【0022】
【
図1】
図1は、本発明による手術器具の第1の実施態様の部分側面図であり、
図1は器具の遠位部分のみを示す。
【
図2】
図2は、
図1における器具の円で囲まれた部分の拡大詳細側面図であり、
図2は器具の作用する遠位端を示す。
【
図3】
図3は、本発明による手術器具の第2の実施態様の拡大部分側面図であり、
図5は器具の遠位の手術部分のみを示す。
【
図4】
図4は、
図3に示した器具の部分の上から見た拡大部分斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明による手術器具の第3の実施態様の部分側面図である。
【
図6】
図6は、
図5における器具の円で囲まれた部分の拡大詳細側面図であり、
図6は器具の作用する遠位端を示す。
【
図7】
図7は、
図5における器具の円で囲まれた部分の拡大詳細底面図である。
【
図8】
図8は、
図6に示した器具の部分の上から見た拡大部分斜視図である。
【
図9】
図9は、
図6に示した器具の部分の正面から見た拡大部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は多くの異なる形態の実施態様が可能であるが、本明細書および添付の図面は、本発明の例として特定の形態のみを開示している。本発明は、そのように記載された実施態様のみに限定されることを意図するものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲で示される。
【0024】
本発明の隅角切開手術器具の第1実施態様を
図1および
図2に示す。ここで、器具は、通常、参照番号10で示される。器具10の第1の図示した実施態様は、器具10のユーザが把持するための細長いハンドグリップ部分12を含み、これは、図に示すように丸みを帯びた形状、または扁平、多角形、または不規則な形状(図示せず)で提供することも可能である。ハンドグリップ部分12は、近位端および遠位端を有する。
【0025】
図1によると、ハンドグリップ部分12の近位セクション(又は部分)と遠位セクション(又は部分)とは、互いに対して約120度~約140度の鈍角(α)で配置される。
【0026】
器具10は、ハンドグリップ部分12の遠位端から延在する、特別に構成された掻き取りまたは研削の先端部分14を含み、これは、線維柱帯網の掻き取りを容易にして、房水の排出を可能にし、患者の視力を高める。
【0027】
特に、先端部分14は、ハンドグリップ部分12の遠位端に固定される基部20と、基部20から延在する自由端18とを有するエラストマー要素16を備える。本発明によれば、自由端18は、相対的研磨面を有する。
【0028】
図2によると、自由端18は、中心軸22に向かって基部20から離れる方向に内向きにテーパー状(例えば、狭くなっている)になっていることが分かる。エラストマー要素16の自由端18は、円錐台形状を有し、一方、エラストマー要素16の基部20は、円筒形状を有する。円筒形基部20は、自由端18上または自由端18内に設けられた研磨面を有さずに構成される。
【0029】
器具10の第1の実施態様の1つの好ましい形態では、エラストマー要素16は、ハンドル12から中心軸22に沿った方向に延在する約1.7mmの全長を有し、基部20は約0.7mmの長さを有し、自由端18は約1.0mmの長さを有する。
【0030】
器具10の第1の実施態様の別の目下の好ましい形態では、エラストマー要素16は、ハンドル12から中心軸22に沿った方向に延在する約1.2mmの全長を有し、基部20は約0.5mmの長さを有し、自由端18は約0.7mmの長さを有する。
【0031】
器具10の所望の掻き取り/研削機能を実現するために、自由端18の相対的研磨面は、埋め込まれた研磨剤構成物を含む。埋め込まれた研磨剤構成物は、ダイアモンド粒子または粒状研磨剤または粉末粒子を含むことができる。あるいは、研磨面は、エラストマー要素16に第2のコーティングプロセスを施すことによって設けることが可能である。さらに別の代替案では、自由端18の相対的研磨面は、要素16のエラストマー材料の表面粗面化またはテクスチャリングによって形成される。
【0032】
本発明の現在好ましい形態の1つでは、器具の自由端18は、ISO1302粗さ等級番号による約N8~N12の表面粗さを有する。好ましい形態では、先端部分14の自由端18は、エラストマー要素16が形成されるときに、円錐台形状に設けられる。好ましくは、エラストマー要素16は、ショア00スケールで約60~約90のデュロメータ硬さを有する医療グレードのシリコーン材料で形成され、一方、器具のハンドグリップ部分12は、金属または十分に剛性のあるプラスチックまたは複合材料で形成される。
【0033】
器具10のハンドル部分12は、好ましくは、可鍛性ニチノールまたは他の可鍛性合金または金属などの材料でできており、ハンドグリップ部分12の遠位端に固定された基部20と、基部20から延在する自由端18とを有するエラストマー要素16の形態の先端部分14を備える。特に、自由端20はエラストマー要素16の材料と比較して、相対的研磨面を備えている。エラストマー要素16は、機械的嵌合、オーバーモールドまたはバイインジェクション成形、接着剤、溶接、または他の任意の適切な手段によって、器具10のハンドル部分12に固定することができる。
【0034】
本発明の発明者は、相対的研磨面を有する本明細書に記載の器具を使用することで、眼の詰まったまたは塞がれた領域を研削して、線維柱帯網を通過する正常または十分な排液を充分に回復し得ることを見出した。
【0035】
器具10の好ましい操作方法の1つでは、ユーザは、眼の中に2つの切開部またはポートを作成するであろう。ポートは、器具10の挿入がなされるために使用され、そして、例えば洗浄器具/吸引器具による、眼からの粘弾性物質(OVD)の移植および除去がなされるために使用される。ポートは、前眼房に粘弾性物質を満たし適切な粘度にするために使用され得る。器具10を、約120度で、第1のポートに挿入して、線維柱帯網の領域を自由端18で約3~5回優しくこすり、沈着物を除去する。モリ ゴニオトミーレンズを使用して、こすっている領域を観察することができる。ポートは、前眼房から粘弾性物質を除去するために使用され得る。前眼房を平衡塩類溶液(BSS)で満たし、所望の眼内圧に到達することができる。この方法の1つの好ましい形態では、12時および3時の位置に眼のサイドポートを形成する。器具10の使用方法の別の好ましい形態では、10時および3時の位置に眼のサイドポートを形成し、第3のポートを12時の位置に形成して、眼内レンズ(IOL)の挿入を受け入れる。
【0036】
本発明の隅角切開手術器具の第2実施態様を
図3および
図4に示す。ここで、器具は、通常、参照番号10Bで示される。
図3および
図4に示される器具10Bの第3実施態様の符号がふられた特徴は、通常、接尾辞「B」が指定され、同じ番号(接尾辞「B」なしで)を共有する器具10の第1実施態様の特徴に類似している。
【0037】
図示された第2実施態様の器具10Bは、本質的に、図示された第1実施態様の器具10と類似し、近位端および遠位端を有するハンドグリップ部分12Bを含み、ハンドグリップ部分12Bの遠位端から延在する先端部分14Bを有する。先端部分14Bは、ハンドグリップ部分12Bの遠位端に固定された基部20Bと、中心軸22Bに沿って基部20Bから延在する自由端18Bとを有するエラストマー要素16Bを備える。
【0038】
図3によると、器具10Bは器具10の前述の実施態様とは異なり、器具10Bは、シュレム管の内側および外側によりよく適合すると現在のところ理解されている異なるテーパー形状のエラストマー要素16Bを有する。具体的には、エラストマー要素16Bは、研磨性のまたは粗面化された表面が実質的にない上部凹部40Bを含む。エラストマー要素16Bは、研磨性のまたは粗面化された表面を有する反対側の下部凸部50Bをさらに含む。
【0039】
図4によると、研磨面は、概ねエラストマー要素16Bの側面および底部の周りに延在するバンドを形成する。バンドを越えた上面は、粗面化されたまたは研磨性の表面を実質的に含まない。
【0040】
発明者は、エラストマー要素16Bの側面および底部の表面に実質的に沿って延在する研磨面を有する器具10Bが、内皮に対しては非研磨性の表面のみを向けながら、眼の詰まったまたは塞がれた領域を研削して、線維柱帯網を通過する正常または十分な排液を回復するのに特に適していることを見出した。
【0041】
図示した本発明の第2実施態様の器具10Bの1つの好ましい形態では、エラストマー要素16Bは、ハンドル12Bから中心軸22Bに沿った方向に延在する約1.0mmの全長を有し、基部20Bは、約0.23mmの直径または幅を有し、自由端18Bは、約0.1mmの直径または幅を有する。研磨性のまたは粗面化された表面を実質的に含まない上部凹部40Bは約2.56mmの範囲を有する。下部凸部50Bは約3.0mmの範囲を有する。
【0042】
本発明の隅角切開手術器具の第3実施態様を、
図5~
図9に示す。ここで、器具は、通常、参照番号10Cで示される。
図5~
図9に示される器具10Cの第3実施態様の符号がふられた特徴は、通常、接尾辞「C」が指定され、同じ番号(接尾辞「C」なしで)を共有する器具10の第1実施態様の特徴に類似している。
【0043】
図示された第3実施態様の器具10Cは、本質的に、図示された第1実施態様の器具10と類似し、近位端および遠位端を有するハンドグリップ部分12Cを含み、ハンドグリップ部分12Cの遠位端から延在する先端部分14Bを有する。先端部分14Cは、ハンドグリップ部分12Cの遠位端に固定された基部20Cと、中心軸22Cに沿って基部20Cから延在する自由端18Cとを有するエラストマー要素16Cを備える。
【0044】
図6によると、器具10Cは器具10の前述の実施態様とは異なり、器具10Cは、シュレム管の内側および外側寸法に適合すると現在のところ理解されている異なるテーパー形状のエラストマー要素16Cを有する。具体的には、エラストマー要素16Cは、それぞれが研磨性のまたは粗面化された表面を有する、相対する両側面60Cを備えたピラミッド形状を含む。他の側面(上部、底部、および/または端部)は、研磨性のまたは粗面化された表面を実質的に含まない。
【0045】
発明者は、エラストマー要素16Cの側面に沿ってのみ延在する研磨面を有する器具10Cが、内皮に対しては非研磨性の表面のみを向けながら、眼の詰まったまたは塞がれた領域を研削して、線維柱帯網を通過する正常または十分な排液を回復するのに特に適していることを見出した。
【0046】
図示した第3実施態様の器具10Cの1つの好ましい形態では、エラストマー要素16Cは、ハンドル12Cから中心軸22Cに沿った方向に延在する約1.0mmの全長を有し、基部20Cは、幅(軸22Cに直角に)約0.33mm、軸22Cに沿った長さ約0.39mmである。自由端18Cは、幅約0.2mm、軸22Cに沿った長さ約0.6mmを有する。器具ハンドル12Cの内角αは、好ましくは約120度である。
【0047】
本発明者は、本明細書に開示した器具のうちのいずれか1つを、洗浄システムおよび吸引システムと組み合わせることがさらに有利であることをさらに見出した。例えば、器具の使用中に眼内で除去された粒子を洗浄し吸引することを助けるために、器具は、眼に洗浄液を供給するための吸引/洗浄ハンドピースに組み込まれ得る。
【0048】
本明細書に開示した器具は、より大きな機械または装置に組み込まれることができ、それによって、ハンドグリップ部分がそのような機械または装置に接続され、そのような機械または装置によって制御、作動、または操作され、必ずしも人手によらないことがさらに理解されるであろう。
【0049】
他の特徴および利点は、以下の添付の図面および添付の特許請求の範囲から容易に明らかになるであろう。