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特許7429995エネルギー生産タービンを含む回転機械に用いる受動型磁気ベアリング、及び、当該ベアリングが組み込まれた回転機械
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  • 特許-エネルギー生産タービンを含む回転機械に用いる受動型磁気ベアリング、及び、当該ベアリングが組み込まれた回転機械 図1A
  • 特許-エネルギー生産タービンを含む回転機械に用いる受動型磁気ベアリング、及び、当該ベアリングが組み込まれた回転機械 図1B
  • 特許-エネルギー生産タービンを含む回転機械に用いる受動型磁気ベアリング、及び、当該ベアリングが組み込まれた回転機械 図2
  • 特許-エネルギー生産タービンを含む回転機械に用いる受動型磁気ベアリング、及び、当該ベアリングが組み込まれた回転機械 図3
  • 特許-エネルギー生産タービンを含む回転機械に用いる受動型磁気ベアリング、及び、当該ベアリングが組み込まれた回転機械 図4
  • 特許-エネルギー生産タービンを含む回転機械に用いる受動型磁気ベアリング、及び、当該ベアリングが組み込まれた回転機械 図5
  • 特許-エネルギー生産タービンを含む回転機械に用いる受動型磁気ベアリング、及び、当該ベアリングが組み込まれた回転機械 図6
  • 特許-エネルギー生産タービンを含む回転機械に用いる受動型磁気ベアリング、及び、当該ベアリングが組み込まれた回転機械 図7A
  • 特許-エネルギー生産タービンを含む回転機械に用いる受動型磁気ベアリング、及び、当該ベアリングが組み込まれた回転機械 図7B
  • 特許-エネルギー生産タービンを含む回転機械に用いる受動型磁気ベアリング、及び、当該ベアリングが組み込まれた回転機械 図8A
  • 特許-エネルギー生産タービンを含む回転機械に用いる受動型磁気ベアリング、及び、当該ベアリングが組み込まれた回転機械 図8B
  • 特許-エネルギー生産タービンを含む回転機械に用いる受動型磁気ベアリング、及び、当該ベアリングが組み込まれた回転機械 図9
  • 特許-エネルギー生産タービンを含む回転機械に用いる受動型磁気ベアリング、及び、当該ベアリングが組み込まれた回転機械 図10
  • 特許-エネルギー生産タービンを含む回転機械に用いる受動型磁気ベアリング、及び、当該ベアリングが組み込まれた回転機械 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】エネルギー生産タービンを含む回転機械に用いる受動型磁気ベアリング、及び、当該ベアリングが組み込まれた回転機械
(51)【国際特許分類】
   F16C 32/04 20060101AFI20240202BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20240202BHJP
   F01D 25/16 20060101ALI20240202BHJP
   F02C 7/06 20060101ALI20240202BHJP
   F03B 11/06 20060101ALI20240202BHJP
   F03D 80/70 20160101ALI20240202BHJP
【FI】
F16C32/04 Z
F01D25/00 F
F01D25/16 A
F02C7/06 Z
F03B11/06
F03D80/70
【請求項の数】 39
(21)【出願番号】P 2021541077
(86)(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-08
(86)【国際出願番号】 CA2020050049
(87)【国際公開番号】W WO2020146950
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】62/794,164
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521311609
【氏名又は名称】テレシステム エナジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TELESYSTEM ENERGY LTD.
【住所又は居所原語表記】460 McGill St, 5th Floor Montreal, Quebec H2Y 2H2 (CA)
(74)【代理人】
【識別番号】100185878
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 晋一
(72)【発明者】
【氏名】ハマッド イマド
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-509535(JP,A)
【文献】特開昭57-116933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 32/00-32/06
F01D 13/00-15/12
F01D 23/00-25/36
F02C 7/06
F03B 11/06
F03D 1/00-80/80
F04D 1/00-13/16
F04D 17/00-19/02
F04D 21/00-25/16
F04D 29/00-35/00
H02K 7/00- 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の深さを有し、磁性材料で形成された第1リング要素であって、前記第1リング要素は、ハルバッハ配列をさらに有し、前記ハルバッハ配列は、前記第1リング要素の円周において一定である、第1リング要素と、
軸方向の深さを有し、磁性材料で形成された第2リング要素であって、前記第2リング要素は、前記第1リング要素と実質的に同心であり、軸方向に定められた動作範囲内において前記第1リング要素を基準にして配置される、第2リング要素と、を備える、受動型磁気ベアリングであって、
前記第2リング要素は、
前記第2リング要素の少なくとも1つの角度領域の第1セットにわたり角度方向に延在する第1ハルバッハ配列、および、
前記第2リング要素の少なくとも1つの角度領域の第2セットにわたり角度方向に延在する第2ハルバッハ配列と、を備え、
前記第1リング要素は、前記第2リング要素に対して回転可能であって、
前記第1リング要素と前記第2リング要素とが軸方向において定められた前記動作範囲内で相互に関連して配置される場合には、前記第2リング要素の前記第1および第2ハルバッハ配列による磁気相互作用によって、前記第1リング要素のハルバッハ配列における合力曲線が定められ、
前記合力曲線は、
所定の目標軸方向力曲線と実質的に一致する軸方向成分と、
所定の角度位置における径方向成分であって、所定の目標径方向力曲線と実質的に一致する成分と、を備える、受動型磁気ベアリング。
【請求項2】
請求項1に記載の受動型磁気ベアリングにおいて、前記合力曲線の軸方向成分は、前記動作範囲内における軸方向における前記第1リング要素と前記第2リング要素の相対的な位置に応じて変化する、受動型磁気ベアリング。
【請求項3】
請求項1または2に記載の受動型磁気ベアリングにおいて、前記合力曲線の径方向成分は、前記動作範囲内の軸方向における前記第1リング要素と前記第2リング要素の相対的な位置に対して、実質的に一定である、受動型磁気ベアリング。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の受動型磁気ベアリングにおいて、前記第1リング要素のハルバッハ配列の磁場特性は、軸方向において可変である、受動型磁気ベアリング。
【請求項5】
請求項4に記載の受動型磁気ベアリングにおいて、前記第1リング要素のハルバッハ配列は、軸方向に配置された複数の個々の磁石で形成され、前記個々の磁石は異なる磁石特性を有する、受動型磁気ベアリング。
【請求項6】
請求項5に記載の受動型磁気ベアリングにおいて、前記第1リング要素のハルバッハ配列を形成する複数の個々の磁石の異なる磁石特性は、磁性材料、磁場方向、磁場強度、磁石高さ、磁石幅、および、磁石深さのうちの1つ以上からなる、受動型磁気ベアリング。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の受動型磁気ベアリングにおいて、前記第2リング要素の第1ハルバッハ配列の磁場特性は、軸方向において可変であり、
前記第2リング要素の第2ハルバッハ配列の磁場特性は、軸方向において可変である、受動型磁気ベアリング。
【請求項8】
請求項7に記載の受動型磁気ベアリングにおいて、前記第2リング要素の第1ハルバッハ配列は、軸方向に配置された複数の個々の磁石で形成され、前記個々の磁石は異なる磁石特性を有し、
前記第2リング要素の第2ハルバッハ配列は、軸方向に配置された複数の個々の磁石で形成され、前記個々の磁石は異なる磁石特性を有する、受動型磁気ベアリング。
【請求項9】
請求項8に記載の受動型磁気ベアリングにおいて、前記第2リング要素の第1ハルバッハ配列の異なる磁石特性は、磁性材料、磁場方向、磁場強度、磁石高さ、磁石幅、および、磁石深さのうちの1つ以上からなり、
前記第2リング要素の第2ハルバッハ配列の異なる磁石特性は、磁性材料、磁場方向、磁場強度、磁石高さ、磁石幅、および、磁石深さのうちの1つ以上からなる、受動型磁気ベアリング。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の受動型磁気ベアリングにおいて、前記第1リング要素と前記第2リング要素は、軸方向における前記第1リング要素と前記第2リング要素の第1相対位置と対応する第1の実質的に安定した磁気相互作用を有し、
前記第1リング要素と前記第2リング要素は、軸方向における前記第1リング要素と前記第2リング要素の第2相対位置と対応する第2の実質的に安定した磁気相互作用を有する、受動型磁気ベアリング。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の受動型磁気ベアリングにおいて、前記第1リング要素は、前記第2リング要素との間の径方向の動作ギャップを維持しながら、前記第2リング要素に対して回転可能である、受動型磁気ベアリング。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか1項に記載の受動型磁気ベアリングにおいて、前記第1リング要素は、前記第2リング要素との機械的接触から解放された状態で回転可能である、受動型磁気ベアリング。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の受動型磁気ベアリングにおいて、前記第1リング要素が外リングであり、前記第2リング要素が内リングである、受動型磁気ベアリング。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の受動型磁気ベアリングにおいて、前記第1リング要素のハルバッハ配列と前記第2リング要素の第1ハルバッハ配列との間の磁気相互作用により、前記第1リング要素において反発力が生じる、受動型磁気ベアリング。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の受動型磁気ベアリングにおいて、前記第1リング要素のハルバッハ配列と前記第2リング要素の第2ハルバッハ配列との間の磁気相互作用により、前記第1リング要素において引力が生じる、受動型磁気ベアリング。
【請求項16】
軸方向の深さを有し、磁性材料で形成された第1リング要素であって、前記第1リング要素は、ハルバッハ配列をさらに有し、前記ハルバッハ配列の配置は、前記第1リング要素の円周において一定である、第1リング要素と、
軸方向の深さを有し、磁性材料で形成された第2リング要素であって、前記第2リング要素は、前記第1リング要素と実質的に同心であり、前記第1リング要素に対して軸方向において実質的に整列している第2リング要素と、を備える、受動型磁気ベアリングであって、
前記第2リング要素は、
前記第2リング要素の少なくとも1つの角度領域の第1セットにわたり角度方向に延在する第1ハルバッハ配列、および、
前記第2リング要素の少なくとも1つの角度領域の第2セットにわたり角度方向に延在する第2ハルバッハ配列と、を備え、
前記第1リング要素は、前記第2リング要素に対して回転可能であって、
前記第1リング要素と前記第2リング要素とが実質的に整列している場合には、前記第2リング要素の前記第1および第2の変化するハルバッハ配列による磁気相互作用によって、前記第1リング要素の変化するハルバッハ配列における合力が定められ、
前記合力は、
所定の目標軸方向力と実質的に一致する軸方向成分と、
所定の角度位置における径方向成分であって、所定の目標径方向力と実質的に一致する成分と、を備える、受動型磁気ベアリング。
【請求項17】
請求項16に記載の受動型磁気ベアリングにおいて、前記第1リング要素は、前記第2リング要素との間の径方向の動作ギャップを維持しながら、前記第2リング要素に対して回転可能である、受動型磁気ベアリング。
【請求項18】
請求項16または17に記載の受動型磁気ベアリングにおいて、前記第1リング要素は、前記第2リング要素との機械的接触から解放された状態で回転可能である、受動型磁気ベアリング。
【請求項19】
請求項16から18のいずれか1項に記載の受動型磁気ベアリングにおいて、前記第1リング要素が外リングであり、前記第2リング要素が内リングである、受動型磁気ベアリング。
【請求項20】
請求項16から19のいずれか1項に記載の受動型磁気ベアリングにおいて、前記第1リング要素のハルバッハ配列の磁場特性は、軸方向に可変である、受動型磁気ベアリング。
【請求項21】
請求項20に記載の受動型磁気ベアリングにおいて、前記第1リング要素のハルバッハ配列は、軸方向に配置された複数の個々の磁石で形成され、前記個々の磁石は異なる磁石特性を有する、受動型磁気ベアリング。
【請求項22】
請求項21に記載の受動型磁気ベアリングにおいて、前記第1リング要素のハルバッハ配列を形成する複数の個々の磁石の異なる磁石特性は、磁性材料、磁場方向、磁場強度、磁石高さ、磁石幅、および、磁石深さのうちの1つ以上からなる、受動型磁気ベアリング。
【請求項23】
請求項16から22のいずれか1項に記載の受動型磁気ベアリングにおいて、前記第2リング要素の第1ハルバッハ配列の磁場特性は、軸方向において可変であり、
前記第2リング要素の第2ハルバッハ配列の磁場特性は、軸方向において可変である、受動型磁気ベアリング。
【請求項24】
請求項23に記載の受動型磁気ベアリングにおいて、前記第2リング要素の第1ハルバッハ配列は、軸方向に配置された複数の個々の磁石で形成され、前記個々の磁石は異なる磁石特性を有し、
前記第2リング要素の第2ハルバッハ配列は、軸方向に配置された複数の個々の磁石で形成され、前記個々の磁石は異なる磁石特性を有する、受動型磁気ベアリング。
【請求項25】
請求項23に記載の受動型磁気ベアリングにおいて、前記第2リング要素の第1ハルバッハ配列の異なる磁石特性は、磁性材料、磁場方向、磁場強度、磁石高さ、磁石幅、および、磁石深さのうちの1つ以上からなり、
前記第2リング要素の第2ハルバッハ配列の異なる磁石特性は、磁性材料、磁場方向、磁場強度、磁石高さ、磁石幅、および、磁石深さのうちの1つ以上からなる、受動型磁気ベアリング。
【請求項26】
トルクを発生させる流体の流れを有する動作環境内に配置されるタービンであって、前記タービンは、
ステータと、
前記ステータに対して回転可能なロータと、
少なくとも1つの請求項1から15のいずれか1項に記載の受動型磁気ベアリングのセットであって、前記セットの受動型磁気ベアリングの前記第1リング要素は、前記ロータ内に取り付けられ、前記セットの受動型磁気ベアリングの前記第2リング要素は、前記ステータ内に取り付けられる、タービン。
【請求項27】
請求項26に記載のタービンにおいて、前記少なくとも1つの受動型磁気ベアリングのセットの前記合力曲線の和の軸方向成分は、前記動作環境内の軸方向の外力と実質的に一致する、タービン。
【請求項28】
請求項26または27に記載のタービンにおいて、流体の流れは、トルク発生方向において定められる流れ力を有し、
前記ロータは、軸方向が前記トルク発生方向と整列し、
前記動作環境における軸方向の外力には、前記トルク発生方向の流れ力が含まれる、タービン。
【請求項29】
請求項28に記載のタービンにおいて、前記トルク発生方向において定められる前記流れ力は、流れ力下限値と流れ力上限値との間において定められ、
前記タービンの運転中において、軸方向に定められる前記動作範囲内での前記第1リング要素と前記第2リング要素の相対位置は、前記トルク発生方向の前記流れ力の前記流れ力下限値と前記流れ力上限値との間の変動に応じて変化する、タービン。
【請求項30】
請求項26から29のいずれか1項に記載のタービンであって、前記少なくとも1つの受動型磁気ベアリングのセットの前記合力の和の径方向成分は、前記動作環境内の所定の角度位置において、径方向の外力と実質的に一致する、タービン。
【請求項31】
請求項30に記載のタービンにおいて、前記ロータは、前記動作環境内において所定の質量を有し、前記動作環境内における径方向の外力は、前記動作環境内に配置されたときの前記ロータの重量を含む、タービン。
【請求項32】
請求項26から31のいずれか1項に記載のタービンにおいて、前記タービンは、水車、風車、ガスタービンのいずれかである、タービン。
【請求項33】
トルクを発生させる流体の流れを有する動作環境内に配置されるタービンであって、前記タービンは、
ステータと、
前記ステータに対して回転可能なロータと、
少なくとも1つの請求項16から25のいずれか1項に記載の受動型磁気ベアリングのセットであって、前記セットの受動型磁気ベアリングの前記第1リング要素は、前記ロータ内に取り付けられ、前記セットの受動型磁気ベアリングの前記第2リング要素は、前記ステータ内に取り付けられる、タービン。
【請求項34】
請求項33に記載のタービンにおいて、前記少なくとも1つの受動型磁気ベアリングのセットの前記合力の和の軸方向成分は、前記動作環境内の軸方向の外力と実質的に一致する、タービン。
【請求項35】
請求項33または34に記載のタービンにおいて、流体の流れは、トルク発生方向において定められる流れ力を有し、
前記ロータは、軸方向が前記トルク発生方向と整列し、
前記動作環境における軸方向の外力には、前記トルク発生方向の流れ力が含まれる、タービン。
【請求項36】
請求項35に記載のタービンにおいて、前記トルク発生方向において定められる前記流れ力は、流れ力下限値と流れ力上限値の間において定められ、
前記タービンの運転中において、前記トルク発生方向の流れ力が前記流れ力下限値と前記流れ力上限値との間で変化する間、前記第1リング要素と前記第2リング要素との実質的な軸方向の配置が維持される、タービン。
【請求項37】
請求項33から36のいずれか1項に記載のタービンであって、前記少なくとも1つの受動型磁気ベアリングのセットの前記合力の和の径方向成分は、前記動作環境内の所定の角度位置において、径方向の外力と実質的に一致する、タービン。
【請求項38】
請求項37に記載のタービンにおいて、前記ロータは、前記動作環境内において所定の質量を有し、前記動作環境内における径方向の外力は、前記動作環境内に配置されたときの前記ロータの重量を含む、タービン。
【請求項39】
請求項33から38のいずれか1項に記載のタービンにおいて、前記タービンは、水車、風車、ガスタービンのいずれかである、タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願
本出願は、2019年1月18日に出願され「エネルギー生産タービンを含む回転機械に用いる受動型磁気ベアリング、及び、当該ベアリングが組み込まれた回転機械」と題された米国仮特許出願番号62/794,164の優先権を主張し、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、ベアリングが組み込まれた回転機械、及び、回転機械に用いる受動型磁気ベアリングに関する。具体的には、受動型磁気ベアリング及び回転機械は、流体の流れまたはベアリング及び回転機械に加えられる他の力に起因する負荷にさらされる。受動型磁気ベアリング及び回転機械は、それらに加えられる3方向の力が含まれるうる3つの状態次元力を打ち消すように構成されている。受動型磁気ベアリング及び回転機械は、主にあらゆる種類の流体を使用するエネルギー生産タービン、特に受動型磁気ベアリングを使用することで恩恵を受けうるタービンに適用できる。受動型磁気ベアリングは、他の特徴の中でも多軸特性を備えるリング要素のセットを備える。
【背景技術】
【0003】
3つの状態次元の受動型磁気ベアリング(PMB: Passive Magnetic Bearing)の設計は、1800年代初頭にさかのぼり、アーンショーの定理により説明される物理原理により制限される。この定理によれば、PMBにより構成されるもののように、所定の電荷または磁極のみを用いて安定して非接触の静電または静磁気浮上システムを構築することは不可能である。したがって、1軸の単純なPMB設計では、他の2軸を安定させるために追加的な能動的磁気ベアリング(AMB: Active Magnetic Bearing)が必要である。単純なPMBを回転機械で使用する場合には、そのような機械には、安定させるために常に3つの軸がある。i)1つは重量である垂直方向の軸(vertical axis、Y軸)であり、ii)1つは時には推力となる軸方向の軸(axial axis、Z軸)であり、iii)3つ目は垂直方向及び軸方向の軸に垂直な幅方向軸(side-to-side axis、X軸)である。したがって、アーンショーの定理は、当該技術分野で知られている電荷の静電相互作用のみにより維持される構成である最新技術を用いても、回転機械を安定して定常平衡に維持できないことを示唆している。
【0004】
静場におけるマクスウェル方程式はラプラス方程式を導出する。ラプラス方程式は次式の通りであり、ポテンシャルU(r)に起因する電気的な力F(r)は常に発散がないことを示している。
【数1】
【0005】
x、y、zのデカルト座標では、すべての力の和が次式のように導出される。
【数2】
【0006】
特定の位置に荷電粒子を含めておくには、この位置におけるすべての力の合計がゼロに等しく、かつ、平衡位置からの変位が反対方向の復元力によって打ち消される必要がある。
【数3】
【0007】
ラプラス方程式は、剛性定数「k」が3つの方向すべてで負の符号を持つことはできないこと、すなわち、電荷をすべての方向に含めることはできないことを直接的に示している。
【0008】
アーンショーの定理により課せられる制約のために、現在商用的に利用可能なほとんどすべての磁気ベアリングシステムは電子増幅器を動力源とする電磁石を用いたAMB型であり、その入力は、ベアリングシステム環境内およびその周辺に埋め込まれ、回転機械の他の2つの軸をモニタするフィールドセンサーとトランスデューサーから受け付けられる。
【0009】
これらのセンサーとトランスデューサーは、増幅器に組み込まれたアナログおよび/またはデジタルの調整PIDシステムを使用して比較的高い周波数で動作するフィードバック閉ループシステムを形成し、ベアリングの浮上回転機械部品をそれぞれの軸の中心に安定して配置する。
【0010】
このようなシステムは複雑であるため、AMBは、i)高価となり、ii)定期的なメンテナンスが必要となり、iii)増幅器、電磁石、センサー、トランスデューサーに電力を供給するため継続的に電力を消費し、iv)これらの複合的要因により信頼性が低下して障害の可能性とそれに伴う欠点が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許出願公開第2011/0001379号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
アーンショーの定理を克服するためにAMBを使用する最新技術の考察とそのような取り組みの例は、特許文献1で説明されている。特許文献1の例では、1つの軸がPMBによって安定化され、2つ目の軸がAMBを使用して軸方向の回転位置を制御することが示されている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ある態様によれば、軸方向の深さを有し、磁性材料で形成された第1リング要素であって、第1リング要素は、ハルバッハ配列をさらに有し、ハルバッハ配列は、第1リング要素の円周において一定である、第1リング要素と、軸方向の深さを有し、磁性材料で形成された第2リング要素であって、第2リング要素は、第1リング要素と実質的に同心であり、軸方向に定められた動作範囲内において第1リング要素を基準にして配置される、第2リング要素と、を備える、受動型磁気ベアリングであって、第2リング要素は、第2リング要素の少なくとも1つの角度領域の第1セットにわたり角度方向に延在する第1ハルバッハ配列、および、第2リング要素の少なくとも1つの角度領域の第2セットにわたり角度方向に延在する第2ハルバッハ配列と、を備え、第1リング要素は、第2リング要素に対して回転可能であって、第1リング要素と第2リング要素とが軸方向において定められた動作範囲内で相互に関連して配置される場合には、第2リング要素の第1および第2ハルバッハ配列による磁気相互作用によって、第1リング要素のハルバッハ配列における合力曲線が定められ、合力曲線は、所定の目標軸方向力曲線と実質的に一致する軸方向成分と、所定の角度位置における径方向成分であって、所定の目標径方向力曲線と実質的に一致する成分と、を備える、受動型磁気ベアリングが提供される。
【0014】
ある態様によれば、軸方向の深さを有し、磁性材料で形成された第1リング要素であって、第1リング要素は、ハルバッハ配列をさらに有し、ハルバッハ配列の配置は、第1リング要素の円周において一定である、第1リング要素と、軸方向の深さを有し、磁性材料で形成された第2リング要素であって、第2リング要素は、第1リング要素と実質的に同心であり、第1リング要素に対して軸方向において実質的に整列している第2リング要素と、を備える、受動型磁気ベアリングであって、第2リング要素は、第2リング要素の少なくとも1つの角度領域の第1セットにわたり角度方向に延在する第1ハルバッハ配列、および、第2リング要素の少なくとも1つの角度領域の第2セットにわたり角度方向に延在する第2ハルバッハ配列と、を備え、第1リング要素は、第2リング要素に対して回転可能であって、第1リング要素と第2リング要素とが実質的に整列している場合には、第2リング要素の第1および第2の変化するハルバッハ配列による磁気相互作用によって、第1リング要素の変化するハルバッハ配列における合力が定められ、合力は、所定の目標軸方向力と実質的に一致する軸方向成分と、所定の角度位置における径方向成分であって、所定の目標径方向力と実質的に一致する成分と、を備える、受動型磁気ベアリングが提供される。
【0015】
他の態様によれば、トルクを発生させる流体の流れを有する動作環境内に配置されるタービンであって、タービンは、ステータと、ステータに対して回転可能なロータと、少なくとも1つの請求項1から15のいずれか1項に記載の受動型磁気ベアリングのセットであって、セットの受動型磁気ベアリングの第1リング要素は、ロータ内に取り付けられ、セットの受動型磁気ベアリングの第2リング要素は、ステータ内に取り付けられる、タービンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本明細書に記載の実施形態をよりよく理解し、それらがどのように実施されて効果を奏するかをより明確に示すために、例として少なくとも1つの実施形態例が示された以下の図面を参照して説明する。
図1A図1Aは、1つの実施形態例における改良型PMBの斜視図を示す。
図1B図1Bは、1つの実施形態例における改良型PMBの分解図を示す。
図2図2は、1つの実施形態例における改良型PMBの第1角度位置での線A-Aに沿った断面図を示す。
図3図3は、1つの実施形態例における改良型PMBの第2角度位置での線B-Bに沿った断面図を示す。
図4図4は、1つの実施形態例におけるシングルモードで表示されるグラフである。軸方向における、第2磁気リング要素に対する第1磁気リング要素の位置の関数として、第1磁気リング要素に加えられる合力の特定の角度位置での軸方向成分および径方向成分が示されている。
図5図5は、他の例の実施形態におけるPMBの斜視図を示す。
図6図6は、他の例の実施形態におけるシングルモードで表示されるグラフである。軸方向における第2磁気リング要素に対する第1磁気リング要素の位置の関数として、第1磁気リング要素に加えられる合力の特定の角度位置での軸方向成分および径方向成分が示されている。
図7A図7Aは、マルチモードで表示されるグラフである。軸方向における第2磁気リング要素の第1ハルバッハ配列の物理的セグメントに対する第1磁気リング要素の物理的セグメントの位置の関数として、試験ベンチを用いて測定された軸方向成分および径方向成分が示されている。
図7B図7Bは、1つの実施形態例における第1リング要素と第2リング要素の第1ハルバッハ配列との部分的な重なりを示す断面図を示す。
図8A図8Aは、マルチモードで表示されるグラフである。軸方向における、第2磁気リング要素の第2ハルバッハ配列の物理的セグメントに対する第1磁気リング要素の物理的セグメントの位置の関数として、試験ベンチを用いて測定された軸方向成分および径方向成分が示されている。
図8B図8Bは、1つの実施形態例における第1リング要素と第2リング要素の第2ハルバッハ配列との部分的な重なりを示す断面図を示す。
図9図9は、1つの実施形態例における改良型受動型磁気ベアリングのセグメントの斜視図を示す。
図10図10は、1つの実施形態例における改良型受動型磁気ベアリングのセグメントの斜視図であって、透明なハウジングが示されている。
図11図11は、1つの実施形態例における改良型受動型磁気ベアリングのセットが組み込まれた回転機械を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態の単純化および明確の目的のために適切であると考えられる場合には、対応するまたは類似の要素またはステップを示すために参照符号が各図の間で繰り返されうることが理解されよう。さらに、本明細書に記載の例示的な実施形態の全体が理解されるように、多数の特定の詳細が示されている。しかしながら、これらの特定の詳細なしで本明細書に記載の実施形態が実施されうることが当業者によって理解されるであろう。他の例では、本明細書に記載の実施形態が不明瞭にならないように、周知の方法、手順、および構成要素は詳細に記載されていない。さらに、本説明は、本明細書に記載の実施形態の範囲を何らかの方法で限定するものと見なされるべきではなく、むしろ、本明細書に記載の様々な実施形態の実施を単に説明するものと見なされるべきである。
【0018】
特許請求の範囲および/または明細書において「含まれる(comprising)」という用語と併せて使用される場合の「単数(a)、(an)」という単語は、「1つ」を意味する場合があるが、内容に明確な指示がない限り、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、「1つまたは複数」の意味とも一致する。同様に、「別の」という言葉は、内容に別段の明確な指示がない限り、少なくとも2つ以上を意味することがある。
【0019】
本明細書で使用される「結合された(coupled)」または「結合(coupling)」という用語は、これらの用語が使用される文脈に応じて、いくつかの異なる意味を有することができる。例えば、結合された、または、結合という用語は、機械的または電気的または磁気的な意味合い、または上記の組み合わせを有することができる。例えば、本明細書で使用される場合、結合された、または、結合という用語は、2つの要素またはデバイスが互いに直接接続されているか、または、個々の状況に応じて電気要素、電気信号、磁場、または機械要素を介して、1つまたは複数の中間要素またはデバイスを介して相互に接続されます。
【0020】
概して言えば、本明細書に示される実施形態は、改良型PMBを対象としている。改良型PMBは、それぞれが少なくとも1つのハルバッハ配列をそれぞれに有する実質的に同心の磁気リング要素を備える。磁気リング要素の1つは、その様々な角度範囲にわたり異なるハルバッハ配列を有する。磁気リング要素の1つは、動作中に外力を同時に受けながら、固定されず、また、実質的に浮上するように構成される。これらの磁気リング要素の間の磁気相互作用は、固定されていない磁気リング要素が動作中に自由に回転可能な状態で位置範囲内に維持されるように、固定されていない磁気リング要素に対して力を作用させる。この特性は、アーンショーの定理の抜け穴を利用したもので、例えば、動作中に固定されていない磁気リング要素への反作用力となる内/外の環境力を利用することで得られる。
【0021】
1つの実施形態例によれば、固定されていない磁気リング要素は、動作中に実質的に静止することができる。例えば、垂直方向の軸(Y軸)、軸方向の軸(Z軸)、および幅方向の軸(X軸)によって目標位置を定めることができる。目標位置からのズレ量は許容される。このようなズレは、動作環境内における流体の流れの変化や、通常の動作に関与する力への追加的な力と同様の力など、改良型PMBに作用する外力の変化によって生じることがある。ズレは、X軸、Y軸方向の移動のほか、Z軸方向の移動も含まれる。このシングルモードの実施形態による改良型PMBは、そのような位置ズレが生じたときに固定されていない磁気リングが目標位置に戻るように構成されうる。
【0022】
別の実施形態例によれば、固定されていない磁気リング要素を動作範囲内に配置することができる。特に、動作範囲は軸方向であるZ軸において定められる。目標位置はY軸とX軸において定められてもよい。Y軸及びX軸方向においても、いくらかのズレが許容される。これにより、固定されていない磁気リング要素は、動作時には動作範囲内でZ軸方向に移動可能となる。固定されていない磁気リング要素は、少なくとも2つの動作モードを備えることができ、各モードは、動作範囲内においてそれぞれ定義される動作位置に対応する。このマルチモードの実施形態による改良型PMBは、動作環境内の流体の力の変化や、通常の動作に関する力に対する追加的な力と同様の力などに応じて、固定されていない磁気リングが定められる動作位置内の複数の位置(例えば、Z軸に沿って)で動作するように構成することができる。改良型PMBは、Y軸およびX軸で定義された目標位置からのズレがある場合に、固定されていない磁気リングが目標位置に戻るように構成してもよい。
【0023】
図1Aを参照すると、1つの実施形態例による改良型PMB1の斜視図が示されている。改良型PMB1は、その「上」、「下」、「前」、「後」の部分により概念的に表現される。これらは、図の状況においてのみ解釈されるべきであり、限定事項として考慮されるものではない。より具体的には、これらは、現実世界で動作される状態である場合の改良型PMBの位置と方向に対応する。下部とは接地面に最も近い部分を指し、上部は下部の反対側にある。前とは、流体の流れやその他の方法で生成される外力に面するような、外力と対向する改良型PMB1の表面または方向を示す。改良型受動型磁気ベアリング1の後ろは、その前の反対側である。
【0024】
改良型PMB1は、3軸(互いに直交する3つの軸)表記を用いて示すことができ、軸方向32は、第1軸(Z軸)を示す。第2(鉛直)軸は、上下軸80に対応する。現実世界の動作では、この軸は、重力方向(Y軸)と対応する。第3(幅方向)軸88は、軸方向32および鉛直軸80の両者に垂直である。第3軸88(X軸)は、改良型PMB1の幅方向と対応していることが理解されるであろう。
【0025】
改良型PMB1は、第1磁気リング要素(部材)8と第2磁気リング要素(部材)16を含む。図1Aは、第1磁気リング8と第2磁気リング要素16とが軸方向であるZ軸に沿って重なっている状態を示し、動作中の構成に相当する。図1Bは、各リング要素8および16の個々の特性をよりよく説明するために示された改良型PMB1の分解図である。第1磁気リング要素8および第2磁気リング要素16は、互いに実質的に同心円状であってもよく、これは、X軸およびY軸における目標位置に対応する。しかしながら、X軸および/またはY軸においていくらかのズレは許容され、これにより、第1磁気リング要素8および第2磁気リング要素16は、わずかに中心がずれた状態の相対位置で動作する可能性がある。第1磁気リング要素8および第2磁気リング要素16は、それらの間に径方向の動作ギャップ24が規定されるように、互いに径方向に間隔をあけて配置されている。ギャップ24は、改良型PMB1の径方向28に拡大されている。第1磁気リング要素8および第2磁気リング要素16は、動作中に目標位置からのズレにより中心がずれることはありえるため、ギャップ24が動作中に変化し得ることが理解されるであろう。
【0026】
一方の磁気リング要素は、他方の磁気リング要素に対して、リング要素の共通軸32を中心に自由に回転可能である。同心円状のリング要素8および16の間に適切なギャップ24(実質的に固定されたギャップだが、いくらかの変動はある)が維持されることにより、自由に回転可能な(固定されていない)リング要素の回転を、他のPMBリング要素に対して実質的に摩擦のない状態で実現できることが理解されるだろう。すなわち、自由に回転可能な磁気リング要素は、他のリング要素と摩擦的に接触することなく、共通軸32を中心に回転することができる。図示された例では、第1磁気リング要素8は外側のリングであり、内側のリング要素である第2磁気リング要素16に対して自由に回転可能である。
【0027】
改良型PMB1が、流体、水、風、空気、ガス、蒸気または任意のトルク発生源を使用する回転機械などの動作装置に適用される場合、自由に回転可能なリング要素が動作装置の回転部に取り付けられる。この回転部はロータであってもよい。他方のリング要素は、動作装置の回転しない部分に取り付けられる。この回転しない部分はステータであってもよい。より具体的には、動作装置は、動作装置の構造を介して、地面などの外部ボディに固定された一組の要素(ステータおよびそれに取り付けられたリング要素のようなもの)を有する。また、動作装置は外部ボディに固定されていない別の一組の要素(ロータおよび自由に回転可能なリング要素のようなもの)を有する。
【0028】
他の例では、動作装置は、改良型PMB1の第1および第2のリング要素が組み込まれた単純なベアリング(電気を生成しない)であり得ることが理解されよう。
【0029】
第1磁気リング要素8および第2磁気リング要素16のそれぞれは、軸方向の深さ(すなわち、軸方向32における深さ(または長さ/寸法))を有する。第1磁気リング要素8および第2磁気リング要素16のそれぞれは、さらに、少なくとも1つのハルバッハ配列をそれぞれ有する。第1および第2磁気リング要素8および16のハルバッハ配列は、それぞれ、配列を形成する永久磁石の配置を変化させ、そして、それらによって生成される磁場が、改良型PMB1の軸32を含む3つの軸の3つの状態座標方向に変化する。
【0030】
第1角度位置にある第1磁気リング要素8の変化するハルバッハ配列と、第2磁気リング要素16の変化するハルバッハ配列とは、磁気相互作用を及ぼす。第1角度位置は、改良型PMB1の上部(top-wise)にあってもよい。磁気リング要素8および16の変化するハルバッハ配列による具体的な相互作用により、磁気リング要素8および16の間の第1角度位置に反発力が生み出される。この反発力は、自由に回転可能な第1磁気リング要素8に影響を与える。
【0031】
磁気リング要素8および16の変化するハルバッハ配列によって引き起こされる第1角度位置での具体的な磁気相互作用は、第1磁気リング要素8に加えられる第1の力F60(図2)として特徴付けることができる。この力は、第1磁気リング要素8の剛性モデルに寄与する。磁気リング要素8および16の変化するハルバッハ配列の磁気パターンによる第1角度位置での具体的な磁気相互作用により、改良型PMB1の軸方向32の第1の力成分61、および、径方向28の第2の力成分62を有する力F60が第1磁気リング要素8に発生することが観察された。第1の成分61は、改良型PMB1の想定上の前面に向かっている。径方向の成分62は、第2リング要素16から離れる方向に向かっており、第1角度位置において第1リング要素8が第2リング要素16と反発していることを示している。径方向成分62は、改良型PMB1の想定上の上部に向かう方向に配向されている。径方向成分62は、鉛直である改良型PMB1のY軸に沿っていてもよい。
【0032】
いくつかの実施形態例においては、軸方向32の第1の力成分61は可変であってもよい。この力成分61は、軸方向であるZ軸における第2リング要素16に対する第1リング要素8の相対位置に応じて変化しうる。第1および第2リング要素8および16の相対位置の変化は、それらの間の磁気相互作用に影響を与え、これにより、Z軸32における力成分61も変化させることができる。力成分61の変化は、流体の流れの力の変化に起因する動きの調整に有用である。
【0033】
いくつかの実施形態例においては、径方向28の第2の力成分62は可変であってもよい。したがって、自由に回転可能な第1磁気リング要素8が受ける反発力を可変とすることができる。この力成分62もまた、軸方向であるZ軸における第2リング要素16に対する第1リング要素8の相対位置に応じて変化し得る。第1および第2リング要素8および16の相対位置の変化は、それらの間の磁気相互作用に影響を与え、これにより、Y軸80における成分62も変化し得る。力成分62の変化は、静流体圧の変化など、固定されていないリング要素に加えられる外力の変化による動きの調整に有用である。
【0034】
もちろん、第1リング要素8および第2リング要素16がZ軸方向において実質的に一定の相対位置に維持される場合には、リング要素8と16の間の磁気相互作用が一定のままであるため、力F60、並びに、その軸方向成分61および径方向成分62も実質的に一定となる。
【0035】
図1Aおよび1Bを再び参照すれば、第1磁気リング要素8のハルバッハ配列は、第1磁気リング要素8の全周にわたって一定としてもよい。これは、図1では、第1磁気リング要素8がその円周において同じ濃淡で示されている(図1Aおよび1Bでは、第1磁気リング要素には濃淡のパターンがない)。第1磁気リング要素のハルバッハ配列が全周にわたって一定であることが理解されよう。これは、軸32の周りの任意の角度位置の断面においては、同じハルバッハ配列の特徴、すなわち、第1磁気リング要素8の永久磁石素子の同じハルバッハ配列を示しうることになる。
【0036】
他の実施形態では、第1磁気リング要素8のハルバッハ配列は、3つの方向すべてにおいてある態様から他の態様に変化可能であってもよいが、円周おいて一定である。
【0037】
第2磁気リング要素16の変化するハルバッハ配列は、第2磁気リング要素16の円周において一定ではない。第2磁気リング要素16は、リング要素16の縁が第1濃淡パターンで示されるように、少なくとも1つの角度領域の第1セットにわたって延設される第1の変化するハルバッハ配列と、リング要素16の縁が第2濃淡パターンで示されるように、少なくとも1つの角度領域の第2セットにわたって延設される第2の変化するハルバッハ配列とを有する。第1の変化するハルバッハ配列の変化する磁気パターンは、第2の変化するハルバッハ配列の変化する磁気パターンとは異なる。これは、図1Aおよび1Bにおいて、第2磁気リング要素16が異なる濃淡で示される角度領域を有し、それぞれの領域が変化するハルバッハ配列の1つと対応することによって示されている。
【0038】
第2角度位置における第1磁気リング要素8の変化するハルバッハ配列と、第2磁気リング要素16の第2の変化するハルバッハ配列とは、磁気相互作用を及ぼす。第2角度位置は、改良型PMB1の下部(bottom-wise)であってもよい。第2角度位置において第2磁気リング要素16の第2の変化するハルバッハ配列が異なるため、第1および第2磁気リング要素8および16の間の具体的な相互作用も第2角度位置において異なる。第2角度位置におけるリング要素8および16の変化するハルバッハ配列の相互作用は、リング要素8および16の間における引力となる。
【0039】
リング要素8および16の変化するハルバッハ配列によって引き起こされる第2角度位置での具体的な磁気相互作用は、第1磁気リング要素8に加えられる第2の力F72(図3)として特徴付けることができる。この力は、第1磁気リング要素8の剛性モデルに寄与する。リング要素8および16の変化するハルバッハ配列の磁気パターンによる第2角度位置での具体的な磁気相互作用により、改良型PMB1の軸方向32の第1の力成分73および径方向28の第2の力成分74を有する第1磁気リング要素8における第2の力F72が引き起こされることが観察された。第1の力成分73は、改良型PMB1の想定上の前方に向かっている。径方向の力成分74は、第2リング要素16に近づく方向に向かっている、これは、第1リング要素8が、第2角度領域64内の第2角度位置で第2リング要素16により引き付けられていることを示す。第1リング要素8の下部で発生する可変の引力のために、径方向成分74は、改良型PMB1の想定上の上部に向かう方向に配向している。径方向成分74は、改良型PMB1の鉛直のY軸に沿っていてもよい。
【0040】
いくつかの実施形態例においては、軸方向32の第1の力成分73は可変であってもよい。この力成分73は、軸方向であるZ軸における第2リング要素16に対する第1リング要素8の相対位置に応じて変化しうる。第1および第2リング要素8および16の相対位置の変化は、それらの間の磁気相互作用に影響を与え、これにより、Z軸32における力成分73も変化させることができる。力成分73の変化は、流体の流れの力の変化や、通常の動作に関与する力への追加的な力と同様の力などに起因する動きの調整に有用である。
【0041】
いくつかの実施形態例においては、径方向28の第2の力成分74は可変であってもよい。したがって、自由に回転可能な第1磁気リング要素8に生じる引力を可変とすることができる。この力成分74もまた、軸方向であるZ軸における第2リング要素16に対する第1リング要素8の相対位置に応じて変化し得る。第1および第2リング要素8および16の相対位置の変化は、それらの間の磁気相互作用に影響を与え、これにより、Y軸80における力成分74も変化し得る。力成分74の変化は、静流体圧の変化など、固定されていないリング要素に加えられる外力の変化による動きの調整に有用である。
【0042】
もちろん、第1リング要素8および第2リング要素16がZ軸方向において実質的に一定の相対位置に維持される場合には、リング要素8と16の間の磁気相互作用が一定のままであるため、力F72、並びに、その軸方向成分73および径方向成分74も実質的に一定となる。
【0043】
図1Aに示された実施形態例では、第2磁気リング要素16の第1の変化するハルバッハ配列は、第2磁気リング要素16の上部に対応する、1つの軸方向領域にわたって延設される。示された例では、第1の変化するハルバッハ配列は、上部の角度領域82にわたって延設されている。この上部の角度領域82は、第1角度領域40を含む。示された例では、この上部の領域82は、第2磁気リング要素16における約280度の円弧にわたって延設されている。この上部の角度領域82内では、第1磁気リング要素8は、図2に示された磁気リング要素8および16の変化するハルバッハ配列の磁気パターンの組み合わせからわかるように、第2磁気リング要素16と反発する磁気相互作用を有し得る。上記にかかわらず、上部の領域82は、280度の円弧とは異なる領域であってもよい。
【0044】
図1Aに引き続き、第2磁気リング要素16の第2の変化するハルバッハ配列は、第2磁気リング要素16の下部に対応する、1つの軸方向領域にわたって延設される。示された例では、第2セットの第2の変化するハルバッハ配列は、下部の角度領域84にわたって延設されている。この下部の角度領域84内における第2の変化するハルバッハ配列は、上部の角度領域82の第1の変化するハルバッハ配列とは異なる。下部の角度領域は、第2角度位置64を含む。示された例では、この下部の領域は、第2磁気リング要素16における約80度の円弧にわたって延設されている。この下部の角度領域84内で、第1磁気リング要素8は、図3に示される磁気リング要素8および16の変化するハルバッハ配列の磁気パターンの組み合わせからわかるように、第2磁気リング要素16と引き合う磁気相互作用を有し得る。上記にかかわらず、下部の領域84は、80度の円弧とは異なる領域であってもよい。
【0045】
改良型PMB1は、その「左」側がその「右」側と一致するように、上下軸80に関して対称としてもよい。改良型PMB1が対称的であることにより、X軸における左右のいずれの方向にも力が生じない。
【0046】
他の実施形態例では、改良型PMB1は、上下軸80に関して非対称であって、その「左」側がその「右」側と一致しなくてもよい。改良型PMB1が非対称であることにより、X軸において左右にゼロではない力が生じ、その結果、(例えば、外部の流体の流れの力に横成分がある場合などには)外力に抗するために有用となり得る。
【0047】
本明細書の他の箇所で説明されるように、Z軸32における第1リング要素8と第2リング要素16とが所定の相対位置である場合には、第1の力F60(図2)は、改良型PMB1の想定上の前面に向かう方向の軸方向32の第1の成分61と、(反発力に起因する)改良型PMB1の想定上の上部に向かう方向に上下軸80に沿った第2の力成分62とを有する。Z軸32における所定の相対位置において、正確な向きは詳細な角度位置に応じて変化するが、この第1の力F60は第1角度領域82に沿った任意の点にて生じることが理解されるであろう。
【0048】
また、Z軸において第2リング要素16に対して第1リング要素8が所定の相対位置である場合には、可変な第2の力F72(図3)には、改良型PMB1の想定上の前方に向かう方向の軸方向32の第1の力成分73と、改良型PMB1の想定上の上部に向かう方向に(引力に起因する)上下軸80に沿った第2の力成分74が含まれる。Z軸32における所定の相対位置において、正確な向きは詳細な角度位置に応じて変化するが、この第2の力F72は第2角度領域84に沿った任意の点にて生じることが理解されるであろう。
【0049】
さらに、Z軸において第2リング要素16に対して第1リング要素8が所定の相対位置である場合には、第1磁気リング要素8の上部の角度領域82に沿った力F60の和と、第2磁気リング要素16の下部の角度領域82に沿った力F72の和とが合わさることにより、第1磁気リング要素8の全体と第2磁気リング要素16の全体との磁気相互作用に起因する第1磁気リング要素8に作用する合力が定まる。第1磁気リング要素8の角度が一定のハルバッハ配列、および、第2磁気リング要素16の第1および第2ハルバッハ配列が適切に設計されている場合には、第1磁気リング要素8および第2磁気リング要素16の磁気相互作用により、改良型PMB1の軸32に沿って定まる軸方向成分と、改良型PMB1の上下軸80に沿って定まる径方向成分とを有する合力が定められうることが観察および測定された。この径方向成分は、上下のY軸80に対応する特定の角度位置において定まる。合力のこれらの成分は、軸32に沿って第1磁気リング要素8にかかる力と、上下軸80に沿って第1磁気リング要素8にかかる力とを代表しているものである。
【0050】
1つの実施形態例によれば、本明細書の他の箇所に記載されているように、改良型PMB1は、その第1および第2リング要素8および16が目標位置において動作するように設計されており、この目標位置には、第2リング要素16に対する第1リング要素8のZ軸方向における目標位置が含まれる。また、目標位置は、リング要素8および16が実質的に同心円になるように定めることもできる。目標位置を定める際に、第1リング要素8および第2リング要素16は、軸方向に実質的に整列することが望ましく、この整列が軸方向であるZ軸における目標位置と対応することが理解されよう。この整列は、前の数段落で述べたZ軸における所定の相対位置にも対応している。本明細書の他の箇所でさらに説明されたように、目標位置からのいくらかの偏差、例えば、軸方向であるZ軸に沿ったいくらかの相対的な移動は許容される。
【0051】
さらに、第1磁気リング要素8および第2磁気リング要素16に関するパラメータは、第1リング要素8および第2リング要素16が目標位置に維持される(軸方向に実質的に整列している場合を含む)ときに、定められる合力の軸方向成分が所定の目標軸方向力と実質的に一致し、特定の角度位置における定められる径方向成分が所定の目標径方向力と一致するように、(例えば、改良型PMB1の設計において)適切に選択できることが観察および測定された。
【0052】
別の実施形態例によれば、本明細書の他の箇所で説明されるように、改良型PMB1は、その第1および第2リング要素8および16が動作範囲内で動作するように設計される。特に、動作範囲は、軸方向であるZ軸において定められてもよい。また、動作範囲により、第1および第2リング要素8および16が実質的に同心であるような、X軸およびY軸における目標位置を定めてもよい。動作範囲を定義する際に、第1リング要素8および第2リング要素16は、軸方向であるZ軸に沿った複数の相対的な位置(上述のいくつかの段落で述べたような位置)となることができることが理解されるであろう。すなわち、第2リング要素16に対する第1リング要素8のZ軸に沿った相対的な移動は、動作範囲内で許容される。
【0053】
したがって、動作範囲内のZ軸に沿った第1リング要素8および第2リング要素16のいくつかの所定の相対位置のそれぞれにおいて、第1の力F60には、軸方向32におけるそれぞれの第1の成分61と、上下軸80におけるそれぞれの第2の力成分62とが含まれる。同様に、動作範囲内のZ軸に沿った第1リング要素8および第2リング要素16のいくつかの所定の相対位置のそれぞれにおいて、第2の力F72には、軸方向32におけるそれぞれの第1の力成分73と、上下軸80におけるそれぞれの第2の力成分74とが含まれる。第1リング要素8と第2リング要素16との間の磁気相互作用は、Z軸における相対位置が異なると、異なることになるので、第1の力F60(およびその成分61、62)と第2の力F72(およびその成分73、74)とは、実際の相対的な位置に応じて変化することになる。したがって、軸方向であるZ軸に沿って定められる動作範囲内では、第1の力F60と第2の力F72の合力により、合力曲線が定められる。
【0054】
さらに、第1磁気リング要素8および第2磁気リング要素16のパラメータは、第1リング要素8および第2リング要素16が軸方向であるZ軸において定められる動作範囲内で互いに相対的に配置されたときに、合力曲線が、所定の目標軸方向力曲線に実質的に一致する軸方向における軸方向成分と、所定の目標径方向曲線に実質的に一致する径方向成分とを有するように、(例えば、改良型PMB1の設計時に)適切に選択できることが観察および測定された。
【0055】
1つの実施形態例では、所定の目標軸方向力曲線は、第1および第2リング要素8および16の相対的な位置に対して可変としてもよい。所定の目標軸方向力曲線は、動作中に改良型PMB1に加わる外力の予想範囲に応じて設定してもよい。
【0056】
1つの実施形態例では、所定の目標径方向力曲線は、第1および第2リング要素8および16の相対的な位置に対して実質的に一定(すなわち、平坦な曲線)としてもよい。
【0057】
Z軸に沿った第1および第2リング要素8および16の相対的な位置の定められる動作範囲内に、少なくとも2つの安定した相対的な位置がさらに存在してもよい。他の実施形態としては、2つ以上の安定した相対的な位置が存在してもよい。軸方向における第1リング要素と第2リング要素の第1の安定相対位置では、第1および第2リング要素8および16は、実質的に安定した磁気相互作用を有する。安定した磁気相互作用とは、そのような相互作用に起因する合力が実質的に一定であることを意味する。同様に、軸方向における第1リング要素と第2リング要素の第2の安定相対位置においては、第1および第2リング要素8および16は、別の実質的に安定した磁気相互作用を有し、これは別の合力と対応する。
【0058】
本明細書で説明する様々な実施形態例によれば、第1リング要素8のハルバッハ配列の磁場特性は、Z軸方向32において変化可能である。例えば、第1リング要素のハルバッハ配列は、軸方向に配置された複数の個々の磁石で形成されており、個々の磁石は異なる磁石特性を有する。このような複数の個々の磁石の磁石特性には、磁性材料、磁場方向、磁場強度、磁石高さ、磁石幅、および、磁石深さが含まれる。
【0059】
第2リング要素16の第1ハルバッハ配列の磁場特性および第2ハルバッハ配列の磁場特性もまた、Z軸方向32において変化可能であってもよい。例えば、第2リング要素の第1ハルバッハ配列は、軸方向に配置される複数の個々の磁石で形成され、第2リング要素の第2ハルバッハ配列は、軸方向に配置される他の複数の個々の磁石で形成される。個々の磁石のセットのそれぞれは、磁性材料、磁場方向、磁場強度、磁石高さ、磁石幅、および、磁石深さのうちの1つ以上で示されるような、異なる磁石特性を有することができる。
【0060】
ここで図2を参照すると、そこには、1つの実施形態例における改良型PMB1の第1角度位置における線A-A(図1の40)に沿った断面図が示されている。第1角度位置は、改良型PMB1の上部の角度領域82に対応する。図2には、この実施形態例の第1角度位置について、第1磁気リング要素8の変化するハルバッハ配列と、第1角度位置における第2磁気リング要素16の変化するハルバッハ配列が、A-A断面図についてのみ示されている。
【0061】
変化するハルバッハ配列のそれぞれは、隣接して配置される永久磁石のグループであって、それぞれが磁場を示す所定の磁気方向を有するようにモデル化されて、図示されている。永久磁石は、Z軸方向に並設されている。図2に示される例においては、第1磁気リング要素8の変化するハルバッハ配列は、9個の永久磁石の要素が「図2の左から右へ:→↓←↑→↓←↑→」の磁気方向パターンを有する。第2磁気リング要素16の変化するハルバッハ配列は、8個の永久磁石素子が「図2の左から右へ:→↑←↓→↑←↓」の磁気方向パターンを有する。なお、図2に示されたハルバッハ配列では、第1磁気リング要素8が軸方向により多くの永久磁石素子を有することに起因して、第2磁気リング要素16の軸方向の深さ56よりも長い軸方向の深さ48を有しうる。上記にかかわらず、図2に示される例では、第1磁気リング要素8の変化するハルバッハ配列は、9以外の任意の数の永久磁石素子によるパターンを備えてもよい。同様に、第2磁気リング要素16の変化するハルバッハ配列は、8以外の任意の数の永久磁石素子によるパターンを備えてもよい。
【0062】
図2は、第2リング要素16に対する第1リング要素8の所定の相対位置を示している。これは、Z軸方向に沿った目標位置に相当しうる。あるいは、この相対位置は、第1および第2リング要素8および16の相対位置の動作範囲内における、安定した相対位置に相当しうる。
【0063】
第1および第2リング要素のこの相対位置の中においては、第1角度位置40におけるそれらの磁気相互作用は、第1の軸方向の力成分61および第2の径方向の力成分62を有する力F60によって特徴付けることができる。
【0064】
次に、図3を参照すれば、そこには、1つの実施形態例における改良型PMB1の第2角度位置における線B-B(図1の64)に沿った断面図が示されている。第2角度位置は、PMB1の下部の領域84に対応する。第2角度位置における第1磁気リング要素8の変化するハルバッハ配列と、第2の角度位置における第2磁気リング要素16の変化するハルバッハ配列とは、いずれも図3に示されている。
【0065】
図2と同様に、第2角度位置における変化するハルバッハ配列のそれぞれは、隣接して配置される永久磁石のグループであって、それぞれが磁場を示す所定の磁気方向を有するようにモデル化され、図示されている。図3に示される例では、第1磁気リング要素8の変化するハルバッハ配列は、9個の永久磁石の要素が「図3の左から右へ:→↑←↓→↑←↓→」の磁気方向パターンを有する。これは、第1の角度位置でのパターン(図2に示されている)と実質的に同じパターンであるが、第1磁気リング要素8が下部の領域64に近いため、反転(軸32に対して反転)していることが理解されるであろう。
【0066】
第2の角度位置において、第2磁気リング要素16の変化するハルバッハ配列は、8個の永久磁石の要素が「図3の左から右へ:↑→↓←↑→↓←」の磁気方向パターンを有する。このパターンは、第1角度位置にある第2磁気リング要素16の変化するハルバッハ配列の磁気パターンとは異なることを理解できるであろう。上記の図3に示された例にかかわらず、第1磁気リング要素8の変化するハルバッハ配列は、9以外の任意の数の永久磁石によるパターンを有してもよい。同様に、第2磁気リング要素16の変化するハルバッハ配列は、8以外の任意の数の永久磁石素子のパターンを有してもよい。
【0067】
第2磁気リング要素16の第2ハルバッハ配列が、Z軸方向32に沿って変化する磁場特性を有することも理解できるであろう。
【0068】
図3は、図2の例と同様に、第2リング要素16に対する第1リング要素8の相対位置を示している。これは、Z軸方向に沿った目標位置に相当しうる。あるいは、この相対位置は、第1および第2リング要素8および16の相対位置の動作範囲内における、安定した相対位置に相当しうる。
【0069】
第1および第2のリング要素のこの相対位置の中においては、第2角度位置64におけるそれらの磁気相互作用は、第1の軸方向の力成分74および第2の径方向の力成分73を有する力F72によって特徴付けることができる。
【0070】
以下のパラメータを可変的に選択し、また、可変的に重み付け/値付けすることで、合力または合力曲線に影響を与えることができることが理解されるであろう。
・第1磁気リング要素8の一定角度の変化可能なハルバッハ配列内の磁気要素のパターン
・第2磁気リング要素16の少なくとも1つの角度領域の第1セット内の変化可能な第1ハルバッハ配列の磁気要素のパターン
・第2磁気リング要素16内において、変化可能な第1ハルバッハ配列を有する少なくとも1つの角度領域の第1セットの位置およびサイズ(例:角度)
・第2磁気リング要素16の少なくとも1つの角度領域の第2セット内の変化可能な第2ハルバッハ配列の磁気要素のパターン
・第2磁気リング要素16内において、変化可能な第2ハルバッハ配列を有する少なくとも1つの角度領域の第2セットの位置およびサイズ(例:角度)、および/または
・第1および第2磁気リング要素8および16を形成する磁性材料
なお、全ての軸における要素8と要素16の動作位置は、設計により変化および/または固定することも可能である。
【0071】
可変な合力に影響を与える他の要因としては、以下のものがある。
・ハルバッハ配列を形成する個々の磁石の大きさ
・磁石、合金、大きさを収納する二重構造の材質
・第1および第2磁気リング要素8および16内で時間的な性能に影響を与えうる流体または外部媒体から磁石を隔離および絶縁するために使用される方法
・第1および第2磁気リング要素8および16の筐体および構造の磁石を隔離するために使用される材料
【0072】
したがって、図1A、2、3および関連する説明は、1つの可能な構成例による改良型PMB1を示していることが理解されるであろう。改良型PMB1の他の構成が考慮され、これにより、第1および第2磁気リング要素8および16の相対的な軸方向位置の目標位置または動作範囲内で、PMB1が所定の3つの軸方向の力または力曲線を有するようにすることができる。より詳細には、図2、3および関連する説明は、磁気リング要素8および16の変化するハルバッハ配列の磁気パターンの特定の構成を示しているが、配列の他の磁気パターンを実現可能であることが理解されるであろう。例えば、磁気パターンは、任意の方向において複製または同じものを複数設けることができる(すなわち、第1リング要素8の9個の磁石要素と、第2リング要素16の8個の磁石要素の全部または一部が繰り返される)。あるいは、異なる磁気パターンが使用されてもよい。
【0073】
同様に、図1Aおよび関連する説明は、第1の変化するハルバッハ配列を有する第2磁気リング要素16の少なくとも1つの角度領域の第1セット、および、第2の変化するハルバッハ配列を有する第2磁気リング要素16の少なくとも1つの角度領域の第2セットの特定の構成を示しており、ハルバッハ配列の他の角度配置が実現可能であることが理解されるであろう(例えば、図5は他の可能な構成を示す)。より詳細には、第1セット内の第1ハルバッハ配列を有する角度領域の数と、第2セット内の第2ハルバッハ配列を有する角度領域の数とを変化させることができる。また、各角度領域の角度位置および角度幅も変化させることができる。他の構成では、第2磁気リング要素は、2より多くの変化するハルバッハ配列のパターンを有してもよい。
【0074】
次に図4を参照すれば、そこには、実施形態例における第2磁気リング要素16に対する軸方向32における第1磁気リング要素8の位置の関数として、特定の角度位置において第1磁気リング要素8に作用する可変な合力の可変な軸方向成分および径方向成分を示すグラフが示されている。このグラフは、図2および図3の変化可能なハルバッハ配列を有する図1に示される改良型PMB1をモデル化することによって生成された。図示された例では、所定の目標軸方向力96が50000N(目標Fz)に設定されている。所定の角度位置における目標径方向力104は、22500N(目標Fy)に設定されている。第1の曲線112は、軸方向32における(すなわち、第2磁気リング要素16に対する)第1磁気リング要素の位置の関数として、磁気リング要素8および16の磁気相互作用に起因する可変な合力の可変な軸方向成分を示している。第2の曲線116は、軸方向32における第1磁気リング要素8の位置の関数として、磁気リング要素8および16の磁気相互作用に起因する所定の角度部分における可変な合力の可変な径方向成分を示している。注目すべきは、動作点120(z=0)において、合力の軸方向成分112は、所定の目標軸方向力96と実質的に一致し、かつ、合力の径方向成分116は、所定の目標径方向力104と実質的に一致する。
【0075】
図4の性能グラフには、目標点120(z=0)で得られる目標軸方向力96および目標径方向力104を示されているが、図4にはまた、動作点120(z=0)の両側に広がる動作範囲における可変な合力曲線が示されている。第1の曲線112および第2の曲線116の両方が、点zに応じて大きく変化することが容易に理解されるであろう。しかしながら、点z=0の近傍(例えば、z=±2mm)では、曲線112および116は有利な特性を有する。したがって、図示されたな実施形態例によれば、動作範囲をz=±2mmと定めることができる。この動作範囲内では、可変な軸方向成分を示す力曲線112は大きくなっている。動作において、軸方向における外力が小さくなると、第1リング要素8は負の範囲に向かってシフトし、そして、小さくなる軸方向の外力に抗する力曲線に応じた軸方向の力成分が得られる。同様に、軸方向における外力が大きくなると、第1リング要素16は正の範囲に向かってシフトし、そして、大きくなる軸方向の外力に抗する力曲線に応じた軸方向の力成分が得られる。
【0076】
そのリング要素8,16の磁気相互作用の合力の軸方向および径方向の可変な力成分が、目標軸方向力96および目標径方向力116と実質的に一致するように、改良型PMB1のパラメータおよびパラメータの値を適切に選択することで、アーンショーの定理の抜け穴を利用することができることが理解されるであろう。より詳細には、改良型PMB1は、目標軸方向力96または目標軸方向力曲線に抗する軸方向成分と、目標径方向力104に抗する径方向成分とを有し、さらに、第3軸88の幅方向に比較的小さな力を有するような特徴を備えうる外力が作用するように、動作環境内に配置することができる。この動作環境に配置されると、第1磁気リング要素8は、外力の軸方向成分が改良型PMB1内の磁気相互作用の可変な合力の軸方向成分112を打ち消し、外力の径方向成分が改良型PMB1内の磁気相互作用の合力の可変な径方向成分116を打ち消すことから、第2磁気リング要素16に対して実質的に静止した状態になることがさらに理解されるであろう。あるいは、第1磁気リング要素8は、動作範囲内での第2磁気リング要素16に対して軸方向に移動し、それにより、外力の軸方向成分が変化すると、第1磁気リング要素8はZ軸方向に移動するので、外力を打ち消す力曲線に従った合力を得ることになる。
【0077】
ここで図5を参照すると、そこには、他の実施形態例によるPMB1’の斜視図が示されている。他の改良型PMB1’は、その第1セットの角度領域にわたって延設された第1の変化するハルバッハ配列と、その第2セットの角度領域にわたって延設された第2の変化するハルバッハ配列とを有する第2磁気リング要素16’を備える。第1セットの角度領域および第2セットの角度領域は、上下軸80に関して対称または非対称でありながら、交互の配置とすることができる。第1の変化するハルバッハ配列は、第2の変化するハルバッハ配列とは異なる。第2磁気リング要素16の第1の変化するハルバッハ配列は、図2に示されるような磁気パターンを有し得、第2磁気リング要素16の第2の変化するハルバッハ配列は、図3に図示されているような磁気パターンを有し得る。他のPMB1’の第1磁気リング要素8は、その全周について一定の態様で変化するハルバッハ配列を有してもよい。第1磁気リング要素8の変化するハルバッハ配列は、図2および図3に図示されているような磁気パターンを有してもよい。したがって、他のPMB1’の第1セットの角度領域は、反発する磁気相互作用を有し、第2の角度領域のセットは、引き合う磁気相互作用を有する。
【0078】
図5の説明を続ければ、変化する第1ハルバッハ配列を備える第2磁気リング要素16’の第1セットの角度領域は、上側の部分82a(例:130度の円弧または他の任意角)、および、2つの下側の部分82b、82c(例:それぞれ25度の円弧または他の任意角)にわたって延設されている。変化する第2ハルバッハ配列を有する第2磁気リング要素16’の第2セットの角度領域は、下部の部分84a(例:80度の円弧または他の任意角)、および、2つの側方の部分84b、84c(それぞれ50度の円弧または他の任意角)にわたって延設されている。
【0079】
ここで図6を参照すると、そこには、他のPMB1’内において第2磁気リング要素16’に対する軸方向32における第1磁気リング要素8の位置の関数として、第1磁気リング要素8に加えられる可変な合力の可変な軸方向力成分および特定の角度位置における可変な径方向力成分を示すグラフが示されている。このグラフは、図5に示され、図2および図3の変化可能なハルバッハ配列を有するPMB1’をモデル化することによって生成された。図4のグラフと同じ目標軸方向力96(目標Fz=50000N)と、特定の角度位置における目標径方向力104(目標Fy=22500N)が定義されている。第1曲線112’は、軸方向32における第1磁気リング要素8の位置の関数として、磁気リング要素8および16’の磁気相互作用(すなわち、第2磁気リング要素16’との相対的関係)による可変な合力の可変な軸方向成分を示している。
【0080】
第2の曲線116’は、軸方向32における第1磁気リング要素8の位置の関数として、磁気リング要素8および16’の磁気相互作用からの可変な合力の特定の角度部分における可変な径方向成分を示している。注目すべきは、動作点120(z=0)において、他の改良型PMB1’内の可変な合力の可変な軸方向成分112’は、所定の目標軸方向力96と実質的に一致し、可変な合力の可変な径方向成分116’は、所定の目標径方向力104と実質的に一致することである。したがって、他の改良型PMB1’の特性により、図1に示され改良型PMB1の例と同様に、アーンショーの定理の抜け穴を利用することができる。これはまた、他のPMB1’を、本明細書で説明したのと同じ動作環境に配置することを可能にする。この配置では、第1磁気リング要素8は、第2磁気リング要素16’との間に運用上の径方向のギャップ24を維持しながら自由に回転可能な状態で、第2磁気リング要素16’に対して実質的に静止する。
【0081】
ロータを実質的に静止させた状態で1つ以上のPMBを配置し、ロータとステータの間で3つの座標で浮遊させ、ロータを実質的に摩擦なく回転させることができることを検証およびさらなる最適化するために、スーパーコンピューター(多数の実行セルを備えるCRAYコンピューター)で多くの計算を行った。この計算モデルでは、1)PMBの種々の設計(種々の変化するハルバッハ配列とリング要素の種々の角度領域)から得られる磁気相互作用、2)ステータ/ロータと動作環境について計算する流体力学、3)表面処理による静流体圧効果を組み合わせて検討した。図4及び図6は、こうしたシミュレーション結果を示したものである。
【0082】
さらに、このようなシミュレーションを検証するために、校正された磁気ベアリング試験(MBTB-1)を実施した。テストベンチには、第1リング要素8の物理的な25度のセグメントと、第2リング要素16の物理的な25度のセグメント(第1角度領域40とされる第1ハルバッハ配列に対応する1つのセグメントと、第2角度領域64とされる第2ハルバッハ配列に対応する別のセグメント)が含まれている。可変な力の測定は、3つの力の成分のそれぞれに対する3つのロードセル、5つのLASER機器、1つのリニアマジェントストリクション装置、1つの多軸数値軸モーションコントロールシステム、1つのレゾルバを持つ1つのサーボモーター、および、高精度の平行移動テーブルを使用して行った。
【0083】
MBTB-1を用いた最初の試験では、第1リング要素8の物理的なセグメントは、第2リング要素16の第1セグメント(第1角度領域40(断面A-A)に見られるような第1ハルバッハ配列に対応するセグメント)に対してZ軸方向に変位される。セグメントの変位に応じて、2つのセグメントの磁気相互作用によって引き起こされる力の測定値が得られる。セグメントは、最初は重なっていない位置から完全に重なった位置まで、そしてそれ以降も変位する。
【0084】
図7Aは、第1リング要素のセグメントが第2リング要素の第1セグメントに対してZ軸方向に変位したときの、Y軸方向およびZ軸方向において第1リング要素のセグメントに作用する力を測定したグラフである。測定されたグラフには、セグメントの変位中における複数の山と谷が示されている。比較的小さい山/谷を有するサイクル132は、第1安定動作モードの存在を示す。このモードは、第1範囲のより弱い外力を打ち消すのに有用であることが理解されるであろう。比較的小さい山/谷を有するこのサイクルは、z軸方向のセグメントが部分的に重なり、第1および第2リング要素8および16のハルバッハ配列の一部が相互に作用することにより、引き起こされる。この部分的な重なりは、図7Bの断面図に表されている。比較的大きな山と谷を持つ他のサイクルは、さらなる安定した動作モードの存在を示している。
【0085】
図8Aは、第1リング要素のセグメントが第2リング要素の物理的な第2のセグメントに対してZ軸方向に変位したときの、Y軸方向およびZ軸方向において第1リング要素のセグメントに作用する力を測定したグラフである。測定されたグラフは、セグメントの変位中における複数の山と谷を示す。比較的小さい山/谷を有するサイクル140は、第1安定動作モードの存在を示す。このモードは、第1範囲のより弱い外力を打ち消すのに有用であることが理解されるであろう。比較的小さい山/谷を有するこのサイクルは、z軸方向のセグメントが部分的に重なり、第1および第2リング要素8および16のハルバッハ配列の一部が磁気的に相互に作用することにより、引き起こされる。この部分的な重なりは、図8Bの断面図に表されている。比較的大きな山と谷を有する他のサイクルは、さらなる安定した動作モードの存在を示している。
【0086】
図4および図6に示すように、サイクル132および140はZ軸方向においてオフセットされており、PMBの全周にわたる磁気相互作用の和に起因する合力が滑らかな力曲線を生成することが理解されるであろう。
【0087】
次に、図9および図10を参照すれば、ある実施形態例による改良型PMB1のセグメントの三次元透過図が示されている。第1および第2リング要素8および16のハルバッハ配列を形成する永久磁石が示されている。各リング要素の永久磁石は、それぞれ隔離媒体148、156によって支持されている。隔離媒体は、ステンレス鋼の媒体であってもよい。動作環境に置かれたときに、媒体は永久磁石を外部流体から隔離する。媒体は、少なくとも、それぞれのリング要素の周方向の表面を覆う。図示された例では、第1リング要素8の内周面が覆われ、第2リング要素16の外周面が覆われている。
【0088】
図10に示されるように、隔離媒体は、第1および第2のリング要素のそれぞれを収容するハウジング(透過して示されている)をさらに含んでもよい。ハウジングは、第1および第2のリング要素を形成する永久磁石の露出面のそれぞれを覆ってもよい。
【0089】
様々な実施形態例として本明細書に記載された改良型PMBの1つの適用例によれば、少なくとも1つの改良型PMBは、回転要素を有するいかなる回転機械内に組み込むことができ、例えば、水、蒸気、ガスまたは風などのエネルギーを生成する流体を備えるタービンに組み込むことができる。タービンは、ステータと、ステータに対して回転可能なロータとを備える。少なくとも1つのPMBの第1リング要素8は、ロータ内に組み込まれ、少なくとも1つのPMBの第2リング要素16は、ステータ内に組み込まれる。水車または風車内に組み込まれたPMBの第1リング要素8および第2リング要素16は、軸32、80および88において、ロータとステータとの間の磁気浮上インターフェースを提供することが理解されるであろう。より詳細には、PMBの第1および第2のリング要素の間の相互作用により、ロータとステータの間が無摩擦で回転できる関係が実現される。
【0090】
水、風、またはガスを用いたタービンは、水、風、またはガスの流れを備える水体または風体などの動作環境内に配置されるように構成される。水体または風体は、河川または大気であってもよく、水または風が通るパイプの内部などのオープンな流路であってもよく、これらは自然のものでも人工のものでもよい。動作環境は、水、風、またはガスのタービン、および、それらの中に組み込まれたPMB1(複数てあってもよい)に様々な外力を及ぼすことが理解されるであろう。水、風、またはガスのタービンは、動作環境に応じて適切に設計され、改良型PMB1(複数であってもよい)の磁気リング要素8および16の磁気相互作用による可変な合力の和の軸方向成分が、動作環境内の軸方向の外力と実質的に一致する。1つの改良型PMBが取り付けられる場合は、改良型PMB1内の磁気相互作用による合力または合力曲線の軸方向成分は、軸方向32の外力と一致しなければならない。複数のPMBが取り付けられる場合には、すべてのPMB1からの合力を合わせた軸方向成分(すなわち、合力または合力曲線の和)は、軸方向の外力と一致しなければならない。
【0091】
水、風、またはガスの流れを有する動作環境に展開されると、(第1磁気リング要素を有する)ロータは、水、風、またはガスの流れのトルク発生方向と軸方向に一致するように配置される。軸方向32の外力は、(例えば、必須の構成である)トルク発生方向の流れ力を含む。ロータのブレードに作用する流体の流れ力は、ロータにトルクを発生させる。この流体の流れは、第1リング要素8に軸方向の力を作用させ、改良型PMB1(複数であってもよい)の合力の総和の軸方向の力成分を打ち消す。
【0092】
流体の流れの力が可変である場合、改良型PMB1(複数であってもよい)の合力曲線によって、合力の和の軸方向力成分により可変的に打ち消される。例えば、既知の流れ特性を有する特定の水体(例:河川)などの特定の動作環境内では、PMB1(複数であってもよい)は、既知の流れ特性を打ち消すために軸方向に特定の合力曲線を提供するように構成および/または選択される。例えば、トルク発生方向の流体の流れに対して、流力下限値と流力上限値を定義することができ、所定のタービンの改良型PMB1(複数であってもよい)は、改良型PMB(複数であってもよい)の第1および第2リング要素が軸方向の相対位置の動作範囲内にある間、下限値での流力、上限値での流力、およびそれらの間の任意の流力を含みうる軸方向の合力曲線を有するように詳細に設計される。
【0093】
また、水、蒸気、空気、風、またはガスのタービンは、改良型PMB1(複数であってもよい)の磁気リング要素8および16の磁気相互作用に起因する特定の角度位置での径方向成分が、動作環境内の径方向の外力と実質的に一致するように、動作環境に応じて適切に設計される。1つの改良型PMB1が取り付けられる場合には、PMB1内の磁気相互作用による可変な合力の可変な径方向成分は、径方向の外力と一致しなければならない。複数の改良型PMB1が取り付けられる場合には、すべての改良型PMB1の全体からの可変な合力(すなわち、可変な合力の和)の径方向の成分と一致しなければならない。
【0094】
現実世界の動作環境に適用すると、ロータは重力により動作環境内で所定の重量を有す。この重量は径方向の力として作用し、上下軸80と対応する特定の角度位置において、改良型PMB1(複数であってもよい)の合力の和の径方向成分により打ち消される。
【0095】
図11は、ロータ/ステータの長手方向に沿って2つの改良型PMBが取り付けられたタービンの例の斜視図である。
【0096】
他の外力には、ロータの回転内において展開される流体(例:水または任意の流体)フィルムの動的効果が含まれ、改良型PMB1(複数であってもよい)と連動する静流体力(hydrostatic forces)が生じる。この静流体力は、ロータとステータの表面インターフェースで特に顕著になる。静流体力は、さらに、接触表面の表面処理にも依存する。一例によれば、高速酸素燃料(HVOF)と高性能半結晶性熱の可塑性ポリエーテルエーテルケトンまたは同様の材料の機能を使って堆積させた粒子を回転機械の表面インターフェースに組み込むことで、これらの接触表面を強化することができる。
【0097】
また、発電機との電磁的な相互作用による付加的な力も考慮して、目標とする動作範囲内で安定性を実現するように改良型PMBは設計される。
【0098】
要するに、ロータ、すなわち自由に回転可能な第1リング要素8に外力を生じさせる環境要因には、以下のものが含まれる。
・第1磁気リング要素8に対する重力、すなわち、特定の角度位置(上下軸80)における径方向の可変的な外力
・ロータのブレードに対して流れる水、蒸気、空気、風、ガス、または回転を引き起こすための機械的トルクを発生させるその他の手段、すなわち、軸方向32の外力
・ロータやステータなどの非回転体との間の表面インターフェースに作用する静流体力
・発電機の電磁力
【0099】
これらの外力は、第1磁気リング要素8を第2リング要素16に対して静止位置または所定の動作範囲内に維持するために、水、風、ガスなどを用いたトルク発生タービンに組み込まれた改良型PMB1(複数であってもよい)の磁気リング要素8および16の磁気相互作用によって生じる合力または合力曲線の軸方向、径方向、および幅方向の力成分によって相殺されなければならず、これにより、ロータの異なる設計態様の動作での安定動作を保証する3つの座標状態の浮揚が可能となる。すなわち、ロータは、その動作環境において、一種の浮遊状態になる。したがって、改良型PMBの目標軸方向の力または力曲線、目標径方向の力または力の曲線、および、目標横方向の力または力曲線は、動作環境内で予想される外力に応じて予め定められる。
【0100】
上記の説明は、実施形態の例を提供するものであるが、説明された実施形態のいくつかの特徴および/または機能は、説明された実施形態の精神および動作原理から逸脱することなく変更することが可能であることが理解されるであろう。したがって、上述の内容は、例示的かつ非限定的であることを意図しており、添付の特許請求の範囲で定義された本発明の範囲から逸脱することなく、他の変形および修正を行うことができることが当業者には理解されるであろう。

図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11