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特許74299983―アリールオキシル―3―5員ヘテロアリール―プロピルアミン化合物およびその結晶形態ならびに用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】3―アリールオキシル―3―5員ヘテロアリール―プロピルアミン化合物およびその結晶形態ならびに用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 409/12 20060101AFI20240202BHJP
   A61K 31/381 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
C07D409/12 CSP
A61K31/381
A61P43/00 111
A61P25/02
A61P1/04
A61P11/00
A61P11/06
A61P13/02
A61P17/04
A61P29/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021568281
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-19
(86)【国際出願番号】 CN2020090354
(87)【国際公開番号】W WO2020228789
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/100846
(32)【優先日】2019-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010093736.3
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910411311.X
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521069397
【氏名又は名称】シャンハイ リード ファーマテック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI LEADO PHARMATECH CO.LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 301,Building 12,No.999 Jiangyue Road,Minhang District,Shanghai 201114,China
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヨウシン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,リンリン
(72)【発明者】
【氏名】ディン,チャン
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-185946(JP,A)
【文献】特表2004-534037(JP,A)
【文献】特表2011-525497(JP,A)
【文献】特表2021-534248(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0171887(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03339304(EP,A1)
【文献】国際公開第2020/035070(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/115069(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/060962(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107840845(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107625762(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108947989(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105497019(CN,A)
【文献】Kuo, F.; Gillespie et al.,Synthesis and biological activity of some known and putative duloxetine metabolites,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2004年,14(13),,3481-3486
【文献】REGISTRY (STN) [online],2009.09.09[検索日 2022.10.14]CAS登録番号 1181660-13-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K 31/
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶形態Aを有する式I-1の化合物の塩酸塩であって、
【化1】
前記式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態AのX線粉末回折パターンは、18.173±0.2°、22.084±0.2°および22.794±0.2°の2θ角度で特性ピークを有することを特徴とする、前記式I-1の化合物の塩酸塩。
【請求項2】
前記式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aは、10.003±0.2°、11.171±0.2°、15.987±0.2°、16.734±0.2°、17.092±0.2°、18.849±0.2°、20.681±0.2°、21.156±0.2°、21.649±0.2°、23.761±0.2°、25.298±0.2°、25.967±0.2°、26.640±0.2°、27.273±0.2°、28.099±0.2°、28.615±0.2°、28.813±0.2°、29.501±0.2°、30.118±0.2°、30.513±0.2°、32.522±0.2°、33.274±0.2°、34.081±0.2°、35.815±0.2°、37.553±0.2°、40.018±0.2°、42.927±0.2°、44.129±0.2からなる群から選択される一つまたは複数の2θ値で特性ピークをさらに有することを特徴とする
請求項1に記載の式I-1の化合物の塩酸塩。
【請求項3】
前記塩酸塩結晶形態AのX線粉末回折パターンは、以下の群から選択される2θ値での特性ピークおよびピーク強度を有することを特徴とする
請求項に記載の式I-1の化合物の塩酸塩。
【表1】
【請求項4】
前記式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aは、以下の群から選択される一つまたは複数の特徴を含む:
(i)前記式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aの示差走査熱量測定チャートは、142.30℃±1℃に加熱されると、吸収ピークを示し始め、および、
(ii)前記式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aの熱重量分析チャートは、168.01℃に加熱した時に0.9827%±0.5%の重量損失を有することを特徴とする
請求項に記載の式I-1の化合物の塩酸塩。
【請求項5】
求項1~4のいずれか一項に記載の結晶形態Aを有する式I-1の化合物の塩酸塩の使用方法であって、
(a)一過性受容体電位型チャンネルタンパク質阻害剤の調製、および(b)一過性受容体電位型チャンネルタンパク質に関連する疾患を予防および/または治療するための薬物の調製に使用されることを特徴とする、前記使用方法。
【請求項6】
一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRP)に関連する疾患は、疼痛、癲癇、炎症、呼吸障害、そう痒症、尿路障害、炎症性腸疾患、またはその組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする
請求項に記載の使用方法。
【請求項7】
前記疼痛は、急性疼痛、炎症性疼痛、内蔵痛、神経性疼痛、筋線維痛、頭痛、神経疼痛、混合性疼痛、癌によって引き起こされる疼痛、またはその組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする
請求項に記載の使用方法。
【請求項8】
前記急性疼痛は、損傷性疼痛または術後疼痛であり、および/または
前記炎症性疼痛は、変形性関節症疼痛または関節リウマチ疼痛であることを特徴とする
請求項に記載の使用方法。
【請求項9】
求項1~4のいずれか一項に記載の結晶形態Aを有する式I-1の化合物の塩酸塩、および薬学的に許容される担体を含むことを特徴とする、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品化学および薬物療法学の分野に関し、具体的には、3―アリールオキシル―3―5員ヘテロアリール―プロピルアミン化合物およびその結晶形態ならびに用途に関する。
【背景技術】
【0002】
疼痛は、5番目のバイタルサインとして知られており、体組織への損傷の警告サインである。疼痛は、患者が治療を求める最も一般的な理由の一つであり、持続時間に応じて急性疼痛(突然に発症し、持続時間が短く、持続的な状態にすることができる)および慢性疼痛(発症が遅いか、または急性疼痛から変化し、持続時間が長く、断続的に発症することができ、多くの慢性疼痛は、明らかな損傷を検出できない)。急性疼痛は、術後疼痛、外傷、火傷後疼痛、出産時の疼痛、アンギナ、胆石発作、腎疝痛等の内蔵痛、骨折痛、歯痛、癌性疼痛等を含む、主に組織の外傷によって引き起こされる侵害受容性疼痛である。手術および外傷後疼痛は、最も一般的な臨床的急性疼痛であり、最も緊急に必要な治療法である。慢性疼痛は、主に神経障害性疼痛、痛みを伴う変形性関節症、慢性的な腰痛および血管性疼痛等を含む。三叉神経痛、糖尿病性疼痛、坐骨神経痛または帯状疱疹後神経痛は、神経障害性疼痛の主なタイプである。神経障害性疼痛の世界的な有病率は、約10%であり、発生率が高く、患者の人数が多い。米国では、10%~30%の人が慢性疼痛に苦しんでおり、その結果、年間社会的支出は、約6350億米ドルに上がり、癌および心臓病の合計を上回る。慢性疼痛には複雑な病因があり、難治性の病気であり、薬物治療によって効果的な鎮痛を達成できるのは50%未満のみである。2026年の中国における神経痛薬の総市場規模は、260億元に近く、イオンチャネル神経痛薬の市場規模は、200億元を超えると推定される。
【0003】
従来の鎮痛薬は、主にオピオイドおよび非ステロイド性抗炎症薬を含む。オピオイドは、強力な鎮痛効果を有するが、長期間使用すると耐性、依存症および和耽溺性になりやすく、呼吸抑制、中枢性鎮静等の副作用がある。非ステロイド性抗炎症薬は、中程度の鎮痛効果を発揮するだけでなく、胃腸出血および心毒性等の反応もある。最近、米国国家安全保障会議は、予防可能な死亡に関連する報告を発表し、米国の歴史上はじめて、オピオイドの過剰摂取による死亡が自動車事故による死亡の割合を上回ったことを示す。委員会は、2017年の事故死データの分析によると、アメリカ人の96人に一人がオピオイドの過剰摂取で死亡し、自動車事故で死亡者数は、アメリカ人の103人に一人である。オピオイドの乱用は、今日米国を席巻する深刻な社会的危機を引き起こしているため、市場は鎮痛剤の新しいメカニズムを必要としている。
【0004】
TRPA1は、TRPイオンチャネルスーパーファミリーのメンバーであり、TRPAサブファミリーの唯一のメンバーであり、非選択的陽イオンチャネルであり、Na、K、Ca2+およびMg2+に浸透することができる、TRPA1は、主に後根神経(DRG)、三叉神経(TG)および迷走神経(VG)の一次感覚ニューロンに分布している。分布された人体系から、TRPA1は、末梢神経系、呼吸器系、胃腸系および泌尿系デ高度に発現しており、これらの臓器や組織が異常な機能を有する場合、TRPA1チャネルの発現および機能は、通常同時に異常である。TRPA1は、冷刺激、化学的刺激、機械的刺激を内向き電流に変換し、一連の生理学的機能を引き起こし、様々な痛覚の形成に関与することができる。炎症性疼痛は、特定の慢性疾患に共通の問題であり、臨床的にはまだ効果的な治療法が不足している。動物実験では、TRPA1が炎症反応に関与し、炎症性疼痛に収容な役割を果たしていることが示されており、TRPA1特異的遮断剤を使用することにより、ラットの炎症性疼痛反応を大幅に軽減できる。現在の研究から、TRPA1は、喘息および咳の発生に重要な役割を果たし、喘息および咳を誘発する化合物は、細胞の内因性因子であろうと外因性因子であろうと、TRPA1を活性化することができる。TRPA1の拮抗剤は、喘息の症状を軽減し、気道過敏症をブロックすることができる。大腸炎、直腸拡張またはストレス等の内蔵過敏症の様々な動物モデルを通じて、TRPA1が内蔵過敏症の調節に関与し、内蔵痛に重要な役割を果たしていることが確認される。神経性疼痛は、中枢神経系または末梢神経系の損傷または疾患によって引き起こされる疼痛症候群であり、主に痛覚過敏、異痛症および自発痛等として現れる。近年、ますます多くの研究は、TRPA1チャネルが糖尿病性ニューロパシーおよび化学療法薬によって引き起こされるニューロパシー等の異なる神経性疼痛において重要な役割を果たすことを示す。最近の研究では、TRPA1は、歯痛、片頭痛等の疼痛にも媒介効果があり、TRPA1の拮抗剤の投与により、疼痛の症状を大幅に緩和することができることを示す。
【0005】
TRPA1が人体系に広く分布および発現し、以上のTRPA1が関与する生理学的機能に加えて、現在、報告されたTRPA1阻害剤の適応症の開発は、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患、鎮咳、鎮痒、過敏性鼻炎、耳の疾患、抗糖尿病、尿失禁等にも関与される。TRPA1は、多くの疾患の治療のための証明された新しい標的である。
従って、疼痛治療に対する現在の満たされていない臨床的ニーズおよび既存の治療薬に存在する多くの問題を考慮すると、疾患の治療効果を改善するために、当技術分野において、TRP標的(特にTRPA1標的)のための治療薬を開発することが緊急に必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、TRPチャネルを標的(特にTRPA1標的)とする構造が新しい化合物および結晶形態ならびにその用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、(a)一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRPA1)阻害剤の調製、および(b)一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRPA1)に関連する疾患を予防および/または治療するための薬物の調製に使用される、化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグの用途を提供し、
ここで、前記化合物は、式Zの構造を有し、
【化1】
式において、
【0008】
環Aは、置換または非置換の5~7員炭素環、置換または非置換の5~7員複素環、置換または非置換の5~7員ヘテロ芳香族環(Heteroaromatic ring)であり、
およびRは、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC~Cアルキル基、置換または非置換のC~Cシクロアルキル基であり、
Xは、酸素原子、硫黄原子または窒素原子であり、
は、水素、ハロゲン、置換または非置換のC~Cアルキル基、置換または非置換のC~Cシクロアルキル基であり、
nは、1、2または3であり、
「*」は、化合物の配置がラセミ化合物であることを示し、
【0009】
ここで、前記「置換」のいずれかとは、基上の1~4個(好ましくは1、2、3または4個)の水素原子が、それぞれ独立して、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、C~Cハロアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、C~Cカルボキシル基、C~Cエステル基、C~Cアミド基、C~Cアルコキシ基、C~Cハロアルコキシ基、ベンジル基、6員のアリール基、5員または6員のヘテロアリール基(好ましくはC5ヘテロアリール基)からなる群から選択される置換基によって置換されることを指し、
【0010】
ここで、前記複素環、ヘテロ芳香族環およびヘテロアリール基は、それぞれ独立して、N、OおよびSから選択される1~3個(好ましくは1、2または3個)のヘテロ原子を有する。
【0011】
別の好ましい例において、前記式Zの構造の化合物は、式Z-1の構造を有する。
【化2】
別の好ましい例において、環Aは、置換または非置換の5~7員炭素環および5~7員ヘテロ芳香族環である。
【0012】
別の好ましい例において、Xは、SまたはOである。
別の好ましい例において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または置換または非置換のC~Cアルキル基である。
別の好ましい例において、Rは、水素、ハロゲン、置換または非置換のC~Cアルキル基である。
別の好ましい例において、Rは、水素、ハロゲン、置換または非置換のC~Cアルキル基である。
別の好ましい例において、前記ハロゲンは、F、Cl、BrまたはIである。
別の好ましい例において、n≧2の場合、各Rは、同じまたは異なる。
【0013】
別の好ましい例において、環Aは、置換または非置換の5員炭素環、置換または非置換の6員炭素環または置換または非置換のフラン環である。
別の好ましい例において、環Aは、ベンゼン環ではない。
別の好ましい例において、環Aは、
【化3】
である。
【0014】
別の好ましい例において、環Aと隣接するベンゼン環との接続構造は、
【化4】
である。
別の好ましい例において、前記
【化5】
の構造は、
【化6】
である。
【0015】
別の好ましい例において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、メチル基またはエチル基である。
別の好ましい例において、Rは、水素原子、塩素原子またはメチル基である。
別の好ましい例において、nは、1である。
別の好ましい例において、Aは、5員炭素環、6員炭素環またはフラン環である。
【0016】
別の好ましい例において、nは、1、2または3である。
別の好ましい例において、Xは、Sである。
別の好ましい例において、環Aは、フラン環である。
別の好ましい例において、Xを含む環は、チオフェン環である。
別の好ましい例において、前記チオフェン環の構造は、
【化7】
である。
【0017】
別の好ましい例において、環Aアセン環の構造は、
【化8】
である。
本発明において、
【化9】
は、基の接続部位である。
【0018】
別の好ましい例において、前記式Zの化合物は、
【化10】
からなる群から選択される。
【0019】
別の好ましい例において、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRPA1)に関連する疾患は、疼痛、癲癇、炎症、呼吸障害、そう痒症、尿路障害、炎症性腸疾患、またはその組み合わせからなる群から選択される。別の好ましい例において、前記疼痛は、急性疼痛、炎症性疼痛、内蔵痛、神経性疼痛、筋線維痛、頭痛、神経疼痛、混合性疼痛、癌によって引き起こされる疼痛、またはその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記疼痛は、術後疼痛である。
別の好ましい例において、前記術後疼痛は、外科手術後の術後疼痛である。
【0020】
別の好ましい例において、前記術後疼痛は、創傷の術後疼痛である。
別の好ましい例において、前記創傷の術後疼痛は、皮膚創傷の術後疼痛、筋肉創傷の術後疼痛、またはその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記創傷の術後疼痛は、皮膚および筋肉の創傷の術後疼痛である。
別の好ましい例において、前記急性疼痛は、損傷性疼痛または術後疼痛である。
別の好ましい例において、前記炎症性疼痛は、慢性炎症性疼痛である。
別の好ましい例において、前記炎症性疼痛は、変形性関節症疼痛または関節リウマチ疼痛である。
【0021】
別の好ましい例において、前記頭痛は、片頭痛または筋肉緊張性疼痛である。
別の好ましい例において、前記神経痛は、三叉神経痛、糖尿病性疼痛、坐骨神経痛または帯状疱疹後神経痛である。
別の好ましい例において、前記急性疼痛は、損傷性疼痛または術後疼痛である。
【0022】
本発明の第2の態様は、(a)一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRP)阻害剤の調製、および(b)一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRP)に関連する疾患を予防および/または治療するための薬物の調製に使用される、化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグの用途を提供し、
ここで、前記化合物は、式Iの構造を有し、
【化11】
式において、
【0023】
環Aは、置換または非置換の5~7員炭素環、置換または非置換の5~7員複素環、置換または非置換の5~7員ヘテロ芳香族環であり、
およびRは、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC~Cアルキル基、置換または非置換のC~Cシクロアルキル基であり、
Xは、酸素原子、硫黄原子または窒素原子であり、
は、水素、ハロゲン、置換または非置換のC~Cアルキル基、置換または非置換のC~Cシクロアルキル基であり、
nは、1、2または3であり、
【0024】
ここで、前記「置換」のいずれかとは、基上の1~4個(好ましくは1、2、3または4個)の水素原子が、それぞれ独立して、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、C~Cハロアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、C~Cカルボキシル基、C~Cエステル基、C~Cアミド基、C~Cアルコキシ基、C~Cハロアルコキシ基、ベンジル基、6員のアリール基、5員または6員のヘテロアリール基(好ましくはCヘテロアリール基)からなる群から選択される置換基によって置換されることを指し、
【0025】
ここで、前記複素環、ヘテロ芳香族環およびヘテロアリール基は、それぞれ独立して、N、OおよびSから選択される1~3個(好ましくは1、2または3個)のヘテロ原子を有する。
別の好ましい例において、前記式Iの構造の化合物は、式I-1の構造を有する。
【化12】
【0026】
別の好ましい例において、環Aは、置換または非置換の5~7員炭素環および5~7員ヘテロ芳香族環である。
別の好ましい例において、Xは、SまたはOである。
別の好ましい例において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または置換または非置換のC~Cアルキル基である。
別の好ましい例において、Rは、水素、ハロゲン、置換または非置換のC~Cアルキル基である。
【0027】
別の好ましい例において、Rは、水素、ハロゲン、置換または非置換のC~Cアルキル基である。
別の好ましい例において、前記ハロゲンは、F、Cl、BrまたはIである。
別の好ましい例において、n≧2の場合、各Rは、同じまたは異なる。
【0028】
別の好ましい例において、環Aは、置換または非置換の5員炭素環、置換または非置換の6員炭素環または置換または非置換のフラン環である。
別の好ましい例において、環Aは、ベンゼン環ではない。
別の好ましい例において、環Aは、
【化13】
である。
【0029】
別の好ましい例において、環Aと隣接するベンゼン環との接続構造は、
【化14】
である。
別の好ましい例において、前記
【化15】
の構造は、
【化16】
である。
【0030】
別の好ましい例において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、メチル基またはエチル基である。
別の好ましい例において、Rは、水素原子、塩素原子またはメチル基である。
別の好ましい例において、nは、1である。
別の好ましい例において、Aは、5員炭素環、6員炭素環またはフラン環である。
別の好ましい例において、nは、1、2または3である。
別の好ましい例において、Xは、Sである。
【0031】
別の好ましい例において、環Aは、フラン環である。
別の好ましい例において、Xを含む環は、チオフェン環である。
別の好ましい例において、前記チオフェン環の構造は、
【化17】
である。

別の好ましい例において、環Aアセン環の構造は、
【化18】
である。
別の好ましい例において、前記化合物は、
【化19】
からなる群から選択される。
【0032】
別の好ましい例において、前記一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRP)は、TRPA1である。
別の好ましい例において、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRP)に関連する疾患は、疼痛、癲癇、炎症、呼吸障害、そう痒症、尿路障害、炎症性腸疾患、またはその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記疼痛は、急性疼痛、炎症性疼痛、内蔵痛、神経性疼痛、筋線維痛、頭痛、神経疼痛、混合性疼痛、癌によって引き起こされる疼痛、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0033】
別の好ましい例において、前記急性疼痛は、損傷性疼痛または術後疼痛である。
別の好ましい例において、前記術後疼痛は、外科手術後の術後疼痛である。
別の好ましい例において、前記術後疼痛は、創傷の術後疼痛である。
【0034】
別の好ましい例において、前記創傷の術後疼痛は、皮膚創傷の術後疼痛、筋肉創傷の術後疼痛、またはその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記創傷の術後疼痛は、皮膚および筋肉の創傷の術後疼痛である。
別の好ましい例において、前記炎症性疼痛は、慢性炎症性疼痛である。
【0035】
別の好ましい例において、前記炎症性疼痛は、変形性関節症疼痛または関節リウマチ疼痛である。
別の好ましい例において、前記頭痛は、片頭痛または筋肉緊張性疼痛である。
別の好ましい例において、前記神経痛は、三叉神経痛、糖尿病性疼痛、坐骨神経痛または帯状疱疹後神経痛である。
別の好ましい例において、前記急性疼痛は、損傷性疼痛または術後疼痛である。
【0036】
本発明の第3の態様は、化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグを提供し、前記化合物は、式Zの構造を有し、
【化20】
式において、
環Aは、置換または非置換の5~7員炭素環、置換または非置換の5~7員複素環、置換または非置換の5~7員ヘテロ芳香族環であり、
およびRは、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC~Cアルキル基、置換または非置換のC~Cシクロアルキル基であり、
Xは、酸素原子、硫黄原子または窒素原子であり、
は、水素、ハロゲン、置換または非置換のC~Cアルキル基、置換または非置換のC~Cシクロアルキル基であり、
nは、1、2または3であり、
「*」は、化合物の配置がラセミ化合物であることを示し、
【0037】
ここで、前記「置換」のいずれかとは、基上の1~4個(好ましくは1、2、3または4個)の水素原子が、それぞれ独立して、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、C~Cハロアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、C~Cカルボキシル基、C~Cエステル基、C~Cアミド基、C~Cアルコキシ基、C~Cハロアルコキシ基、ベンジル基、6員のアリール基、5員または6員のヘテロアリール基(好ましくはC5ヘテロアリール基)からなる群から選択される置換基によって置換されることを指し、
【0038】
ここで、前記複素環、ヘテロ芳香族環およびヘテロアリール基は、それぞれ独立して、N、OおよびSから選択される1~3個(好ましくは1、2または3個)のヘテロ原子を有する。
別の好ましい例において、式Zの化合物の薬学的に許容される塩は、式Zの化合物と塩酸、粘液酸、D-グルクロン酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、またはその組み合わせからなる群から選択される酸とによって形成される塩である。
【0039】
別の好ましい例において、前記式Zの構造の化合物は、式Z-1の構造を有する。
【化21】
別の好ましい例において、環Aは、置換または非置換の5~7員炭素環および5~7員ヘテロ芳香族環である。
【0040】
別の好ましい例において、Xは、SまたはOである。
別の好ましい例において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または置換または非置換のC~Cアルキル基である。
別の好ましい例において、Rは、水素、ハロゲン、置換または非置換のC~Cアルキル基である。
別の好ましい例において、Rは、水素、ハロゲン、置換または非置換のC~Cアルキル基である。
別の好ましい例において、前記ハロゲンは、F、Cl、BrまたはIである。
【0041】
別の好ましい例において、n≧2の場合、各Rは、同じまたは異なる。
別の好ましい例において、環Aは、置換または非置換の5員炭素環、置換または非置換の6員炭素環または置換または非置換のフラン環である。
別の好ましい例において、環Aは、ベンゼン環ではない。
別の好ましい例において、環Aは、
【化22】
である。
【0042】
別の好ましい例において、環Aと隣接するベンゼン環との接続構造は、
【化23】
である。
別の好ましい例において、前記
【化24】
の構造は、
【化25】
である。
【0043】
別の好ましい例において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、メチル基またはエチル基である。
別の好ましい例において、Rは、水素原子、塩素原子またはメチル基である。
別の好ましい例において、nは、1である。
別の好ましい例において、Aは、5員炭素環、6員炭素環またはフラン環である。
別の好ましい例において、nは、1、2または3である。
【0044】
別の好ましい例において、Xは、Sである。
別の好ましい例において、環Aは、フラン環である。
別の好ましい例において、Xを含む環は、チオフェン環である。
別の好ましい例において、前記チオフェン環の構造は、
【化26】
である。
【0045】
別の好ましい例において、環Aアセン環の構造は、
【化27】
である。
本発明において、
【化28】
は、基の接続部位である。
【0046】
別の好ましい例において、前記化合物は、
【化29】
からなる群から選択される。
【0047】
本発明の第4の態様は、化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグを提供し、前記化合物は、式Iの構造を有し、
【化30】
式において、
環Aは、置換または非置換の5~7員炭素環、置換または非置換の5~7員複素環、置換または非置換の5~7員ヘテロ芳香族環であり、
およびRは、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC~Cアルキル基、置換または非置換のC~Cシクロアルキル基であり、
Xは、酸素原子、硫黄原子または窒素原子であり、
は、水素、ハロゲン、置換または非置換のC~Cアルキル基、置換または非置換のC~Cシクロアルキル基であり、
nは、1、2または3であり、
【0048】
ここで、前記「置換」のいずれかとは、基上の1~4個(好ましくは1、2、3または4個)の水素原子が、それぞれ独立して、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、C~Cハロアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、C~Cカルボキシル基、C~Cエステル基、C~Cアミド基、C~Cアルコキシ基、C~Cハロアルコキシ基、ベンジル基、6員のアリール基、5員または6員のヘテロアリール基(好ましくはCヘテロアリール基)からなる群から選択される置換基によって置換されることを指し、
【0049】
ここで、前記複素環、ヘテロ芳香族環およびヘテロアリール基は、それぞれ独立して、N、OおよびSから選択される1~3個(好ましくは1、2または3個)のヘテロ原子を有する。
別の好ましい例において、式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、式Iの化合物と、塩酸、粘液酸、D-グルクロン酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、またはその組み合わせからなる群から選択される酸とによって形成される塩である。
【0050】
別の好ましい例において、前記式Iの構造の化合物は、式I-1の構造を有する。
【化31】
別の好ましい例において、Aは、置換または非置換の5~7員炭素環および5~7員ヘテロ芳香族環である。
別の好ましい例において、Xは、SまたはOである。
別の好ましい例において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または置換または非置換のC~Cアルキル基である。
【0051】
別の好ましい例において、Rは、水素、ハロゲン、置換または非置換のC~Cアルキル基である。
別の好ましい例において、Rは、水素、ハロゲン、置換または非置換のC~Cアルキル基である。
【0052】
別の好ましい例において、前記ハロゲンは、F、Cl、BrまたはIである。
別の好ましい例において、n≧2の場合、各Rは、同じまたは異なる。
別の好ましい例において、Aは、置換または非置換の5員炭素環、置換または非置換の6員炭素環または置換または非置換のフラン環である。
【0053】
別の好ましい例において、環Aは、ベンゼン環ではない。
別の好ましい例において、環Aは、
【化32】
である。
別の好ましい例において、環Aと隣接するベンゼン環との接続構造は、
【化33】
である。
別の好ましい例において、前記
【化34】
の構造は、
【化35】
である。
【0054】
別の好ましい例において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、メチル基またはエチル基である。
別の好ましい例において、Rは、水素原子、塩素原子またはメチル基である。
別の好ましい例において、nは、1である。
別の好ましい例において、Aは、5員炭素環、6員炭素環またはフラン環である。
別の好ましい例において、nは、1、2または3である。
【0055】
別の好ましい例において、Xは、Sである。
別の好ましい例において、環Aは、フラン環である。
別の好ましい例において、Xを含む環は、チオフェン環である。
別の好ましい例において、前記チオフェン環の構造は、
【化36】
である。
別の好ましい例において、環Aアセン環の構造は、
【化37】
である。
本発明において、
【化38】
は、基の接続部位である。
【0056】
別の好ましい例において、前記化合物は、
【化39】
からなる群から選択される。
【0057】
本発明の第5の態様は、式Aの化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグを提供し、
【化40】
式において、
環Aは、置換または非置換の5~7員炭素環、置換または非置換の5~7員複素環、置換または非置換の5~7員ヘテロ芳香族環であり、
およびRは、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC~Cアルキル基、置換または非置換のC~Cシクロアルキル基であり、
Xは、酸素原子、硫黄原子または窒素原子であり、
Wは、OまたはSであり、
は、水素、ハロゲン、置換または非置換のC~Cアルキル基、置換または非置換のC~Cシクロアルキル基であり、
、R、R、R、R、RおよびR10は、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC~Cアルキル基、置換または非置換のC~Cシクロアルキル基であり、
nは、1、2または3であり、
【0058】
「*」は、化合物の配置がラセミ化合物であることを示し、
ここで、前記「置換」のいずれかとは、基上の1~4個(好ましくは1、2、3または4個)の水素原子が、それぞれ独立して、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、C~Cハロアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、C~Cカルボキシル基、C~Cエステル基、C~Cアミド基、C~Cアルコキシ基、C~Cハロアルコキシ基、ベンジル基、6員のアリール基、5員または6員のヘテロアリール基(好ましくはCヘテロアリール基)からなる群から選択される置換基によって置換されることを指し、
ここで、前記複素環、ヘテロ芳香族環およびヘテロアリール基は、それぞれ独立して、N、OおよびSから選択される1~3個(好ましくは1、2または3個)のヘテロ原子を有する。
別の好ましい例において、式Aの化合物的薬学的に許容される塩は、式Aの化合物と、塩酸、粘液酸、D-グルクロン酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、またはその組み合わせからなる群から選択される酸とによって形成される塩である。
【0059】
別の好ましい例において、式Aの化合物において、環A、R、R、R、X、nは、それぞれ独立して、本発明の第3の態様に記載されるとおりである。
別の好ましい例において、Wは、Oである。
別の好ましい例において、R、R、R、R、R、RおよびR10は、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC~Cアルキル基、置換または非置換のC~Cシクロアルキル基である。
別の好ましい例において、R、R、R、R、R、RおよびR10は、それぞれ独立して、水素である。
【0060】
別の好ましい例において、環Aと隣接するベンゼン環との接続構造は、
【化41】
である。
別の好ましい例において、前記式Aの化合物は、式Zの構造の化合物である。
【化42】
別の好ましい例において、前記式Zの化合物は、本発明の第3の態様に記載されるとおりである。
【0061】
本発明の第6の態様は、式Bの化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグを提供し、
【化43】
式において、
環Aは、置換または非置換の5~7員炭素環、置換または非置換の5~7員複素環、置換または非置換の5~7員ヘテロ芳香族環であり、
およびRは、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC~Cアルキル基、置換または非置換のC~Cシクロアルキル基であり、
Xは、酸素原子、硫黄原子または窒素原子であり、
Wは、OまたはSであり、
は、水素、ハロゲン、置換または非置換のC~Cアルキル基、置換または非置換のC~Cシクロアルキル基であり、
、R、R、R、R、RおよびR10は、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC~Cアルキル基、置換または非置換のC~Cシクロアルキル基であり、
nは、1、2または3であり、
【0062】
「*」は、化合物の配置がラセミ化合物であることを示し、
ここで、前記「置換」のいずれかとは、基上の1~4個(好ましくは1、2、3または4個)の水素原子が、それぞれ独立して、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、C~Cハロアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、C~Cカルボキシル基、C~Cエステル基、C~Cアミド基、C~Cアルコキシ基、C~Cハロアルコキシ基、ベンジル基、6員のアリール基、5員または6員のヘテロアリール基(好ましくはC5ヘテロアリール基)からなる群から選択される置換基によって置換されることを指し、
【0063】
ここで、前記複素環、ヘテロ芳香族環およびヘテロアリール基は、それぞれ独立して、N、OおよびSから選択される1~3個(好ましくは1、2または3個)のヘテロ原子を有する。
別の好ましい例において、式Bの化合物的薬学的に許容される塩は、式Bの化合物と、塩酸、粘液酸、D-グルクロン酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、またはその組み合わせからなる群から選択される酸とによって形成される塩である。
【0064】
別の好ましい例において、式Aの化合物において、環A、R、R、R、X、nは、それぞれ独立して、本発明の第4の態様に記載されるとおりである。
別の好ましい例において、Wは、Oである。
別の好ましい例において、R、R、R、R、R、RおよびR10は、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC~Cアルキル基、置換または非置換のC~Cシクロアルキル基である。
【0065】
別の好ましい例において、R、R、R、R、R、RおよびR10は、それぞれ独立して、水素である。
別の好ましい例において、環Aと隣接するベンゼン環との接続構造は、
【化44】
である。
【0066】
別の好ましい例において、前記式Bの化合物は、式Iの構造の化合物である。
【化45】
別の好ましい例において、前記式Iの化合物は、本発明の第4の態様に記載されるとおりである。
【0067】
本発明の第7の態様は、医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、本発明の第3の態様に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグおよび/または本発明の第4の態様に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグ、および薬学的に許容されるベクターを含む。

本発明の第8の態様は、医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、本発明の第5の態様に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグおよび/または本発明の第6の態様に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグ、および薬学的に許容されるベクターを含む。
【0068】
本発明の第9の態様は、(a)一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRPA1)阻害剤の調製、および(b)一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRPA1)に関連する疾患を予防および/または治療するための薬物の調製に使用される、本発明の第5の態様に記載の式Aの化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグの用途、または本発明の第6の態様に記載の式Bの化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグの用途を提供する。
【0069】
別の好ましい例において、前記一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRP)は、TRPA1である。
別の好ましい例において、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRP)に関連する疾患は、本発明の第2の態様に記載されるとおりである。
【0070】
本発明の第10の態様は、本発明の第4の態様に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグを調製するための方法を提供し、前記方法は、中間体IIを不活性溶媒中でR-NH-R化合物と反応させて、前記化合物を形成する段階を含み、
【化46】
ここで、X、A、R、R、Rおよびnの定義は、本発明の第4の態様に記載されるとおりである。
【0071】
別の好ましい例において、前記方法は、以下の段階を含み、
【化47-1】
ここで、X、A、R、R、Rおよびnの定義は、本発明の第4の態様に記載されるとおりであり、
(a)不活性溶媒中で、縮合剤の存在下で、化合物
【化47-2】
を(S)-1-((R)-5員ヘテロアリール)-3-クロロ-プロパノールと反応させ、中間体IIを形成し、
(b)以下の群から選択される反応を実行して、化合物Iを形成し、
(b-1)中間体IIを不活性溶媒中でR-NH-Rと反応させて、化合物Iを形成し、または
(b-2)不活性溶媒中で、中間体IIをフタルイミドカリウムと反応させて、中間体IIIを形成し、中間体IIIをヒドラジン分解反応させて、化合物Iを形成する。
【0072】
本発明の第11の態様は、中間体を提供し、前記中間体は、式IIまたは式IIIに示されるような構造を有し、
【化48】
ここで、X、A、Rおよびnの定義は、本発明の第4の態様に記載されるとおりである。
【0073】
本発明の第12の態様は、本発明の第7の態様に記載の中間体を調製するための方法を提供し、
【化49】
ここで、X、A、Rおよびnの定義は、本発明の第4の態様に記載されるとおりであり、
(1)前記方法は、以下の段階を含み、
(i)不活性溶媒中で、縮合剤の存在下で、化合物
【化50】
を(S)-1-((R)-5員ヘテロアリール)-3-クロロ-プロパノールと反応させて、中間体IIを形成し、
または(2)に記載の方法は、以下の段階を含み、
(i)不活性溶媒中で、縮合剤の存在下で、化合物
【化51】
を(S)-1-((R)-5員ヘテロアリール)-3-クロロ-プロパノールと反応させて、中間体IIを形成し、および
(ii)不活性溶媒中で、中間体IIをフタルイミドカリウムと反応させて、中間体IIIを形成する。
【0074】
別の好ましい例において、前記中間体は、
【化52】
からなる群から選択される。
【0075】
本発明の第13の態様は、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質活性を阻害するためのインビトロ非治療的および非診断的方法を提供し、前記方法は、インビトロ培養システムにおいて、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質または前記タンパク質を発現する細胞を、本発明の第3の態様、第4の態様、第5の態様および/または第6の態様に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグと接触させることにより、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質の活性を阻害する段階を含む。
【0076】
本発明の第14の態様は、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質を阻害するための、または一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRP)に関連する疾患を予防および/または治療するための方法を提供し、前記方法は、必要とする対象に本発明の第3の態様、第4の態様、第5の態様および/または第6の態様に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグを投与する段階を含む。
別の好ましい例において、前記対象は、ヒトおよびヒト以外の哺乳動物(齧歯類動物、ウサギ、サル、家畜、イヌ、ネコ等)を含む。
【0077】
本発明の第15の態様は、化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグを提供し、前記化合物は、式Gの構造を有し、
【化53】
式において、
は、
【化54】
の基であり、ここで、環Bは、置換または非置換の5~7員炭素環、置換または非置換の5~7員複素環、置換または非置換の5~7員ヘテロアリール基、置換または非置換のC~C12アリール基であり、環Dは、置換または非置換の5~7員ヘテロアリール基、置換または非置換のC~C12アリール基であり、また、Aが置換または非置換の芳香族構造である場合、Aは、N、OおよびSから選択される1~3個のヘテロ原子を含み、
【0078】
ここで、前記複素環またはヘテロアリール基は、N、OおよびSから選択される1~3個のヘテロ原子を含み、
およびRは、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC~Cアルキル基、置換または非置換のC~Cシクロアルキル基、置換または非置換のC~Cアシル基、置換または非置換のC~Cエステル基であるか、またはR、Rと接続されたN原子とは、置換または非置換のC~Cヘテロシクロアルキル基を形成し、ここで、前記ヘテロシクロアルキル基は、1~2個N原子および0~1個のOまたはS原子を含み、
は、炭素原子、酸素原子、硫黄原子または窒素原子であり、
は、炭素原子または窒素原子であり、
とYとのうちの少なくとも一つは、ヘテロ原子であり、
は、水素、ハロゲン、置換または非置換のC~Cアルキル基、置換または非置換のC~Cシクロアルキル基であり、
mは、1、2、3、4または5であり、
「*」は、キラル炭素原子を表し、前記キラル炭素原子の絶対配置は、R型およびS型であり、
【0079】
ここで、前記「置換」のいずれかとは、基上の1~4個(好ましくは1、2、3個)の水素原子が、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、C~Cハロアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、C~Cカルボキシル基、C~Cエステル基、C~Cアミド基、C~Cアルコキシ基、C~Cハロアルコキシ基、ベンジル基、5員または6員のアリール基またはヘテロアリール基(好ましくはCアリール基またはC5ヘテロアリール基)からなる群から選択される置換基によって置換されることを指す。
本発明において、式Gの構造の化合物において、「*」は、キラル炭素原子を表し、前記キラル炭素原子の絶対配置がR型およびS型であることとは、ラセミ化合物の形態を指すことを理解されたい。
【0080】
別の好ましい例において、Aは、
【化55】
である。
別の好ましい例において、Aは、ナフタレン環ではない。
別の好ましい例において、Aは、置換または非置換のC~C12二環式式ヘテロアリール基、置換または非置換の5~6員複素環式フェニル基、置換または非置換の5~6員複素環5~6員ヘテロアリール基、または置換または非置換のC~C12ベンゾ脂肪族環基である。
【0081】
別の好ましい例において、前記C~C12二環式式ヘテロアリール基は、キノリニル基、イソキノリニル基、フタルイミド、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、イミダゾピリジル基またはベンズイミダゾロン基である。
別の好ましい例において、前記C~C12ベンゾ脂肪族環基は、インダニル基、テトラヒドロナフチル基またはジヒドロナフチル基を含む。
別の好ましい例において、Aは、置換または非置換のベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、またはインダニル基である。
【0082】
別の好ましい例において、XとYとのうちの少なくとも一つは、ヘテロ原子である。
別の好ましい例において、Xは、SまたはOである。
別の好ましい例において、Xは、Sである。
別の好ましい例において、前記ヘテロアリール基は、N、OまたはSからなる群から選択される1~3個のヘテロ原子を含む。
【0083】
別の好ましい例において、前記置換とは、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、C~Cハロアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、C~Cエステル基、C~Cアミド基、C~Cアルコキシ基、C~Cハロアルコキシ基、ベンジル基、5員または6員のアリール基またはヘテロアリール基(好ましくはCアリール基またはC5ヘテロアリール基)からなる群から選択される1~4個の置換基(好ましくは1、2、3個)によって置換されることを指す。
【0084】
別の好ましい例において、Aは、置換または非置換のC~C12二環式式ヘテロアリール基、置換または非置換の5~6員複素環式フェニル基、置換または非置換の5~6員複素環5~6員ヘテロアリール基、または置換または非置換のC~C12ベンゾ脂肪族環基である。
別の好ましい例において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、C~Cアルキル基、C~Cアシル基であるか、またはR、Rと接続されたN原子とは、カルボキシル基またはC~Cエステル基によって置換されたテトラヒドロピロリル基を形成する。
【0085】
別の好ましい例において、Rは、水素原子、ハロゲン、置換または非置換のC~Cアルキル基である。
別の好ましい例において、Aは、キノリニル基、イソキノリニル基、フタルイミド、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、イミダゾピリジル基、ベンズイミダゾロン基、インダニル基、テトラヒドロナフチル基またはジヒドロナフチル基である。
【0086】
別の好ましい例において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、アセチル基であるか、またはR、RとN原子とは、プロリン基またはプロリンメチルエステル基を形成する。
別の好ましい例において、Rは、水素原子、塩素原子またはメチル基である。
【0087】
別の好ましい例において、前記式Gの構造の化合物は、
【化56】
からなる群から選択される。

本発明の第16の態様は、(a)一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRP)阻害剤の調製、および(b)一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRP)に関連する疾患を予防および/または治療するための薬物の調製に使用される、本発明の第15の態様に記載の式Gに記載の化合物の用途を提供する。
【0088】
別の好ましい例において、前記一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRP)は、TRPA1である。
別の好ましい例において、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRP)に関連する疾患は、疼痛、癲癇、炎症、呼吸障害、そう痒症、尿路障害または炎症性腸疾患からなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記疼痛は、急性炎症性疼痛、慢性炎症性疼痛、内蔵痛、神経性疼痛、筋線維痛、頭痛、神経痛または癌によって引き起こされる疼痛を含む。
【0089】
別の好ましい例において、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRP)に関連する疾患は、疼痛、癲癇、炎症、呼吸障害、そう痒症、尿路障害、炎症性腸疾患、またはその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記疼痛は、急性疼痛、炎症性疼痛、内蔵痛、神経性疼痛、筋線維痛、頭痛、神経疼痛、混合性疼痛、癌によって引き起こされる疼痛、またはその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記急性疼痛は、損傷性疼痛または術後疼痛である。
別の好ましい例において、前記術後疼痛は、外科手術後の術後疼痛である。
別の好ましい例において、前記術後疼痛は、創傷の術後疼痛である。
【0090】
別の好ましい例において、前記創傷の術後疼痛は、皮膚創傷の術後疼痛、筋肉創傷の術後疼痛、またはその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記創傷の術後疼痛は、皮膚および筋肉の創傷の術後疼痛である。
別の好ましい例において、前記炎症性疼痛は、慢性炎症性疼痛である。
別の好ましい例において、前記炎症性疼痛は、変形性関節症疼痛または関節リウマチ疼痛である。
別の好ましい例において、前記頭痛は、片頭痛または筋肉緊張性疼痛である。
別の好ましい例において、前記神経痛は、三叉神経痛、糖尿病性疼痛、坐骨神経痛または帯状疱疹後神経痛である。
【0091】
本発明の第17の態様は、本発明の第15の態様に記載の式Gに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグを調製するための方法を提供し、前記方法は、不活性溶媒中で、中間体G-1をR-NH-R化合物と反応させて、前記化合物を形成する段階を含み、
【化57】
ここで、X、Y、A、R、R、Rおよび「*」の定義は、本発明の第15の態様に記載されるとおりである。
【0092】
本発明の第18の態様は、式I-1の化合物の塩酸塩または塩酸塩結晶形態Aを提供する。
【化58】
【0093】
別の好ましい例において、I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aにおいて、前記式I-1の化合物と塩酸との分子モル比は、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3または4:1である。
別の好ましい例において、前記式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aは、無水結晶形態である。
別の好ましい例において、前記式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態AのX線粉末回折パターンは、18.173±0.2°、22.084±0.2°および22.794±0.2°の2θ角度で特性ピークを有する。
【0094】
別の好ましい例において、前記式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aは、16.734±0.2°、21.156±0.2°、23.761±0.2°からなる群から選択される一つまたは複数の2θ値で特性ピークをさらに有する。
別の好ましい例において、前記式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aは、17.092±0.2°、21.649±0.2°、25.298±0.2°、28.099±0.2°からなる群から選択される一つまたは複数の2θ値で特性ピークをさらに有する。
【0095】
別の好ましい例において、前記式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aは、10.003±0.2°、26.640±0.2°、28.615±0.2°、28.813±0.2°からなる群から選択される一つまたは複数の2θ値で特性ピークをさらに有する。
別の好ましい例において、前記式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aは、10.003±0.2°、16.734±0.2°、17.092±0.2°、18.173±0.2°、21.156±0.2°、21.649±0.2°、22.084±0.2°、26.640±0.2°からなる群から選択される一つまたは複数の2θ値で特性ピークをさらに有する。
【0096】
別の好ましい例において、前記式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aは、11.171±0.2°、15.987±0.2°、18.849±0.2°、20.681±0.2°、25.967±0.2°、27.273±0.2°、29.501±0.2°、30.118±0.2°、30.513±0.2°、32.522±0.2°、33.274±0.2°、34.081±0.2°、35.815±0.2°、37.553±0.2°、40.018±0.2°、42.927±0.2°、44.129±0.2からなる群から選択される一つまたは複数の2θ値で特性ピークをさらに有する。
【0097】
別の好ましい例において、前記式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aは、10.003±0.2°、11.171±0.2°、15.987±0.2°、16.734±0.2°、17.092±0.2°、18.849±0.2°、20.681±0.2°、21.156±0.2°、21.649±0.2°、23.761±0.2°、25.298±0.2°、25.967±0.2°、26.640±0.2°、27.273±0.2°、28.099±0.2°、28.615±0.2°、28.813±0.2°、29.501±0.2°、30.118±0.2°、30.513±0.2°、32.522±0.2°、33.274±0.2°、34.081±0.2°、35.815±0.2°、37.553±0.2°、40.018±0.2°、42.927±0.2°、44.129±0.2からなる群から選択される一つまたは複数の2θ値で特性ピークをさらに有する。
【0098】
別の好ましい例において、前記式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aは、10.003±0.2°、11.171±0.2°、15.987±0.2°、16.734±0.2°、17.092±0.2°、18.173±0.2°、18.849±0.2°、20.681±0.2°、21.156±0.2°、21.649±0.2°、22.084±0.2°、22.794±0.2°、23.761±0.2°、25.298±0.2°、25.967±0.2°、26.640±0.2°、27.273±0.2°、28.099±0.2°、28.615±0.2°、28.813±0.2°、29.501±0.2°、30.118±0.2°、30.513±0.2°、32.522±0.2°、33.274±0.2°、34.081±0.2°、35.815±0.2°、37.553±0.2°、40.018±0.2°、42.927±0.2°、44.129±0.2からなる群から選択される一つまたは複数の2θ値で特性ピークを有する。
別の好ましい例において、前記塩酸塩結晶形態AのX線粉末回折パターンは、以下の群から選択される2θ値での一つまたは複数の特性ピークおよびピーク強度を有する。
【0099】
【表1】
【0100】
別の好ましい例において、前記式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aは、基本的に図7に示されるようなX線粉末回折の特性ピークを有する。
別の好ましい例において、前記式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aの示差走査熱量測定(DSC)チャートは、142.30℃(好ましくは±4℃、±3℃、±2℃または±1℃)に加熱されるときに吸収ピークを示し始める。
別の好ましい例において、前記式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aの示差走査熱量測定(DSC)チャートは、基本的に図8に示されるようである。
別の好ましい例において、前記式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aの熱重量分析(TGA)チャートは、168.01℃に加熱されるときに約0.9827%(好ましくは±0.1%、±0.2%、±0.3%、±0.4%、または±0.5%)の重量損失を有する。
別の好ましい例において、前記塩酸塩結晶形態Aの熱重量分析(TGA)チャートは、基本的に図9に示されるようである。
【0101】
本発明の第19の態様は、本発明の第18の態様に記載の式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aの調製方法を提供し、前記方法は、以下の段階を含み、
(a)式I-1の化合物を有機溶媒と混合した後、5~15℃下で塩酸を滴加し、システムのpHを6~8に調節し、反応させて固体を析出し、ろ過して、式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aを得る。
別の好ましい例において、前記ステップ(a)において、前記有機溶媒は、酢酸エチルを含む。
別の好ましい例において、前記ステップ(a)において、前記塩酸は、濃塩酸である。
別の好ましい例において、前記ステップ(a)において、システムのpHは、6.5~7.5、好ましくは7.0である。
別の好ましい例において、前記ステップ(a)において、反応時間は、3~8分、好ましくは5分である。
【0102】
別の好ましい例において、前記ステップ(a)において、前記反応は、攪拌条件下で実施される。
別の好ましい例において、前記ステップ(a)において、前記塩酸は、ゆっくりと加えられる。
別の好ましい例において、前記ステップ(a)において、式I-1の化合物と有機溶媒との重量対体積(kg:L)比は、0.2~2:2~30、好ましくは0.4~1.0:5~18、より好ましくは0.5~0.9:8~15である。
別の好ましい例において、前記ステップ(a)において、固体が析出された後、40~45℃条件下で乾燥して、式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aを得る。
【0103】
本発明の第20の態様は、医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、本発明の第18の態様に記載の式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態A、および薬学的に許容されるベクターを含む。

本発明の第21の態様は、(a)一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRP)阻害剤の調製、および(b)一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRP)に関連する疾患を予防および/または治療するための薬物の調製に使用される、本発明の第18の態様に記載の式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aの用途を提供する。
別の好ましい例において、前記一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRP)は、TRPA1である。
【0104】
別の好ましい例において、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRP)に関連する疾患は、疼痛、癲癇、炎症、呼吸障害、そう痒症、尿路障害、炎症性腸疾患、またはその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記疼痛は、急性疼痛、炎症性疼痛、内蔵痛、神経性疼痛、筋線維痛、頭痛、神経疼痛、混合性疼痛、癌によって引き起こされる疼痛、またはその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記急性疼痛は、損傷性疼痛または術後疼痛である。
別の好ましい例において、前記術後疼痛は、外科手術後の術後疼痛である。
別の好ましい例において、前記術後疼痛は、創傷の術後疼痛である。
【0105】
別の好ましい例において、前記創傷の術後疼痛は、皮膚創傷の術後疼痛、筋肉創傷の術後疼痛、またはその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記創傷の術後疼痛は、皮膚および筋肉の創傷の術後疼痛である。
別の好ましい例において、前記炎症性疼痛は、慢性炎症性疼痛である。
別の好ましい例において、前記炎症性疼痛は、変形性関節症疼痛または関節リウマチ疼痛である。
別の好ましい例において、前記頭痛は、片頭痛または筋肉緊張性疼痛である。
別の好ましい例において、前記神経痛は、三叉神経痛、糖尿病性疼痛、坐骨神経痛または帯状疱疹後神経痛である。
別の好ましい例において、前記急性疼痛は、損傷性疼痛または術後疼痛である。
【0106】
本発明の第22の態様は、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質または前記タンパク質を発現する細胞を、本発明の第3の態様に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグ、本発明の第4の態様に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグ、本発明の第5の態様に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグ、本発明の第6の態様に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグ、または本発明の第18の態様に記載の式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aと接触されることにより、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質の活性を阻害する段階を含む、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質活性を阻害するためのインビトロ非治療的および非診断的方法を提供する。
【0107】
本発明の第23の態様は、必要とする対象に本発明の第3の態様に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグ、本発明の第4の態様に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグ、本発明の第5の態様に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグ、本発明の第6の態様に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグ、または本発明の第18の態様に記載の式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aを投与する段階を含む、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質を阻害するための、または一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRP)に関連する疾患を予防および/または治療するための方法を提供する。
【発明の効果】
【0108】
本発明の範囲内で、本発明の上記の各技術的特徴と以下(例えば、実施例)に具体的に説明される各技術的特徴との間を、互いに組み合わせることにより、新しいまたは好ましい技術的解決策を構成することができることに理解されたい。スペースに限りがあるため、ここでは繰り返さない。
【図面の簡単な説明】
【0109】
図1】自動パッチクランプ試験における化合物I-1のTRPA1阻害活性IC50を示す。
図2】手動パッチクランプ試験における化合物I-1のTRPA1阻害活性IC50を示す。
図3】マウスホルマリン疼痛モデルにおける本発明の化合物I-1、S-デュロキセチンおよび比較化合物のCのED50の計算結果を示す。
図4】異なる時点でのラットホットプレート疼痛モデルにおける本発明の化合物I-1、S-デュロキセチン、比較化合物のCおよびガバペンチンのMPE%の統計図を示す。
図5】マウス醋酸の身もだえ痛のモデルにおける本発明の化合物I-1、S-デュロキセチン、インドメタシンおよびアニソダミンの鎮痛活性の結果を示す。
図6】ラットSNLモデルにおける本発明の化合物I-1、S-デュロキセチンおよびガバペンチンの鎮痛活性の結果を示す。
図7】I-1化合物の塩酸塩結晶形態AのX線粉末回折パターンを示す。
図8】I-1化合物の塩酸塩結晶形態Aの示差走査熱量測定(DSC)チャート回折パターンを示す。
図9】I-1化合物の塩酸塩結晶形態Aの熱重量分析(TGA)チャートを示す。
図10】ラット術後疼痛モデルにおける本発明の化合物I-1の鎮痛活性の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0110】
本発明者らは、広範かつ詳細な研究を通じて、初めて、化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグを予期せずに開発し、前記化合物は、式I、式Z、式G、式Aまたは式Bの構造を有する。実験は、本発明の化合物がTRPチャネルに対して有意な阻害効果を有することを示す。本発明の化合物は、TRP(特にTRPA1)標的に関連する疼痛等を効果的に治療することができる。さらに、本発明は、固体形態の式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aを提供し、前記式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aは、貯蔵、輸送に便利であり、強力な成薬可能性 および強力な安定性を有する(特に優れた熱安定性および高湿度安定性を有する)。これに基づいて、本発明を完成した。
【0111】
用語
本明細書に使用されるように、「含む」、「包括」、「含有」という用語は、交換して使用することができ、閉鎖式定義だけでなく、半閉鎖式および開放式の定義をさらに含む。言い換えれば、前記用語は、「からなる」および「基本的にからなる」を含む。
本明細書に使用されるように、「R」、「R」および「R1」は、同じ意味を有し、互い置き換えることができ、他の類似な定義は、同じ意味を有する。
【0112】
本明細書に使用されるように、「C-Cアルキル基」、「C-Cアルキル基」または「C-Cアルキル基」という用語は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(propyl group)、イソプロピル基(isopropyl group)、ブチル基(butyl group)、イソブチル基(isobutyl group)、sec-イソブチル基(sec-butyl group)、tert-ブチル基(tert-butyl group)、または類似の基(similar group)等の1~6個、1~3個または1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を指す。
本明細書に使用されるように、「C-Cアルコキシ基」という用語は、例えば、メトキシ基(methoxy group)、エトキシ基(ethoxy group)、プロポキシ基(propoxy group)、イソプロポキシ基(isopropoxy group)、ブトキシ基(butoxy group)、イソブトキシ基(isobutoxy group)、sec‐ブトキシ基(sec-butoxy group)、tert‐ブトキシ基(tert-butoxy group)、ペントキシ基(pentoxy group)、ヘキシルオキシ基(hexoxy group)、または類似の基等の1~6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルコキシ基を指す。
【0113】
本明細書に使用されるように、「C-C12ベンゾ脂肪族環基」という用語は、インダニル基、テトラヒドロナフチル基またはジヒドロナフチル基等の類似の基を含む6~12個の炭素原子を有する基を指す。
本明細書に使用されるように、「C-Cハロアルコキシ基」という用語は、例えば、モノクロロメトキシ(monochloromethoxy group)、モノクロロエトキシ(monochloroethoxy group)、または類似の基等の1~6炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルコキシ基の一つまたは多数の水素原子がハロゲン基によって置換されることを指す。
本明細書に使用されるように、「C-Cシクロアルキル基」および「C~Cシクロアルキル基」という用語は、例えば、シクロプロピル基(cyclopropyl group)、シクロブチル基(cyclobutyl group)、メチルシクロブチル基(methylcyclobutyl group)、シクロペンチル基(cyclopentyl group)、シクロへプチル基(cycloheptyl group)または類似の基等の3~7個または3~6個の炭素原子を有するシクロアルキル基(単環、二環または多環式環系を含む)を指す。
【0114】
本明細書に使用されるように、「C-Cエステル基」という用語は、CHCOO-、CCOO-、CCOO-、(CHCHCOO-、-COOCH、-COOC、-COOC、または類似の基等のC-Cアルキル基-OC(O)-構造を有する基または-OC(O)-C~Cアルキル基構造を有する基を指し、ここで、アルキル基は、直鎖または分岐鎖であり得る。
本明細書に使用されるように、「C-Cアミド基」という用語は、例えば、CH-CO-NH-、C-CO-NH-、C-CO-NH-、-COOCH、-CO-NH-C、-CO-NH-C、または類似の基等のC-Cアルキル基-CO-NH-構造を有する基または-NH-CO-C-Cアルキル基構造を有する基を指し、ここで、アルキル基は、直鎖または分岐鎖であり得る。
【0115】
本明細書に使用されるように、「C-Cアシル基」という用語は、例えば、CH-CO-、C-CO-、C-CO-、または類似の基等のC-Cアルキル基-CO-構造を有する基を指し、ここで、アルキル基は、直鎖または分岐鎖であり得る。
本明細書に使用されるように、「C-Cヘテロシクロアルキル基」という用語は、例えば、ピペリジン基、テトラヒドロピロリル基、または類似の基等の3-7個のシクロ炭素原子および1~3個のヘテロ原子(好ましくは、一つの窒素原子、すなわち、RおよびRに共同に隣接する窒素原子を含み)を有する単環和多環式複素環(好ましくは、単環複素環)を指す。
【0116】
本明細書に使用されるように、「5-7員炭素環」という用語は、任意の安定的な5、6または7員単環、二環または多環であり、炭素環は、飽和、部分的飽和および不飽和の環であることができるが、芳香族の環であることはできない。前記炭素環の例は、シクロプロピル環(cyclopropyl ring)、シクロブチル環(cyclobutyl ring)、シクロブテン環(cyclobutene ring)、シクロペンチル環(cyclopentyl ring)、シクロペンテン環(cyclopentene ring)、シクロヘキシル環(cyclohexyl ring)、シクロヘキセン環(cyclohexene ring)、シクロへプチル環(cycloheptyl ring)、シクロヘプテン環(cycloheptene ring)、または類似の基を含むが、これらに限定されない。
【0117】
本明細書に使用されるように、「5-7員複素環」という用語は、任意の安定的な単環、二環または多環であり、複素環は、N、OおよびSから選択される一つまたは複数(好ましくは、1、2または3個)のヘテロ原子を含み、複素環における環原子の数は、5~7個であり、複素環は、飽和、部分的飽和、または不飽和の環であることができるが、芳香族の環であることはできない。複数のヘテロ原子を含む場合、ヘテロ原子は同じであるか、部分的に同じであるか、または完全に異なる可能性があることを理解されたい。
【0118】
本明細書に使用されるように、「C-Cハロアルキル基」という用語は、 1~3個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基の一つまたは複数の水素原子が、モノクロロメチル基(monochloromethyl group)、ジクロロエチル基(dichloroethyl group)、トリクロロプロピル基(trichloropropyl group)、または類似の基等のハロゲン基によって置換されることを指す。
本明細書に使用されるように、「C-Cカルボキシ基」という用語は、例えば、CHCOOH、CCOOH、CCOOH、(CHCHCOOH、または類似の基等のC-Cアルキル基-COOH構造の基を指し、ここで、アルキル基は、直鎖または分岐鎖であり得る。
本明細書に使用されるように、用語「C-C12アリール基」という用語は、例えば、フェニル基(phenyl group)、ナフタ基(naphthyl group)、ビフェニル基(biphenyl group)、または類似の基等の環部分に6から12個の炭素原子を有する単環または二環芳香族炭化水素基を指す。
【0119】
本明細書に使用されるように、「5-7員複素芳香族環」という用語は、N、OおよびSから選択される一つから複数(好ましくは、1、2または3個)のヘテロ原子を有し、5~7個の環原子を有する芳香族複素環系を指す。複数のヘテロ原子を含む場合、ヘテロ原子は、同じであるか、部分的に同じであるか、または完全に異なる可能性があることを理解されたい。例えば、5員複素芳香族環の例は、ピロール環(pyrrole ring)、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環(imidazole ring)、オキサゾール環(oxazole ring)、チアゾール環(thiazole ring)を含むが、これらに限定されなく、6員複素芳香族環の例は、ピリジン環(pyridine ring)、ピラジン環(pyrazine ring)、ピリダジン環(pyridazine ring)、ピリミジン環(pyrimidine ring)、または類似の基を含むが、これらに限定されない。
【0120】
本明細書に使用されるように、「5員または6員ヘテロアリール基」という用語は、N、OおよびSから選択される一つから複数(好ましくは、1、2または3個)のヘテロ原子を有し、5または6個の環原子を有する芳香族基を指す。複数のヘテロ原子を含む場合、ヘテロ原子は、同じであるか、部分的に同じであるか、または完全に異なる可能性があることを理解されたい。例えば、5員ヘテロアリール基の例は、ピロリル基(pyrrolyl group)、フリル基(furyl group)、チエニル基(thienyl group)、イミダゾリル基(imidazolyl group)、オキサゾリル基(oxazolyl group)、チアゾリル(thiazolyl group)、または類似の基を含むが、これらに限定されない。
本明細書に使用されるように、「6員アリール基」という用語は、6個の環原子有する芳香族基を指し、環原子は、例えば、フェニル基、または類似の基等のすべての炭素原子である。
【0121】
本明細書に使用されるように、「ハロゲン」という用語は、F、Cl、BrおよびIを指す。
本明細書に使用されるように、
【化59】
とは、同じ意味を指し、両方とも、非置換または1-5個(好ましくは、1~3個)のR置換基を有するテロアリール基を指す。
本明細書に使用されるように、「置換」という用語は、基上の水素原子が非水素原子基によって置換されるが、原子価要件が満たされ、化学的に安定な化合物が置換によって形成される。本明細書において、本明細書で「置換された」と明示的に記載されていない限り、すべての置換基は、非置換であると解釈されるべきである。好ましくは例において、前記「置換」のいずれか一つは、基上の1~4個(好ましくは、1、2、3または4個)の水素原子がそれぞれ独立して、例えば、C-Cアルキル基、C-Cシクロアルキル基、C-Cハロアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、C-Cカルボキシ基、C-Cエステル基、C-Cアミド基、C-Cアルコキシ基、C-Cハロアルコキシ基、ベンジル基、6員アリール基、5員または6員ヘテロアリール基(好ましくはCヘテロアリール基)からなる群から選択される置換基によって置換される。
【0122】
本発明において、置換基は、結合が原子価要件に違反しない限り、任意の原子上で親基または基質に結合することができ、同じまたは異なる置換基は、同じ原子にあることができ、異なる原子にあることもできることを理解されたい。
同様に、当業者は、本発明の化合物の置換基および置換基パターンを選択して、化学的に安定的な化合物を生産することができ、前記化合物は、当技術分に知られている技術および以下に記載の方法によって合成することができることを理解されたい。複数の置換基によって置換される場合、安定的な構造が生産される限り、この複数の基が同じ炭素または異なる炭素にあることができることを理解されたい。
【0123】
本発明において、R-デュロキセチンおよびS-デュロキセチンの構造は、次のとおりである。
【化60】
活性成分
本明細書に使用されるように、本発明の式Iの化合物は、式Iの構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグを指す。当該用語は、前述成分の混合物をさらに含むことを理解されたい。
本明細書に使用されるように、本発明の式Zの化合物は、式Zの構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグを指す。当該用語は、前述成分の混合物をさらに含むことを理解されたい。
本明細書に使用されるように、本発明の式Gの化合物は、式Gの構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグを指す。当該用語は、前述成分の混合物をさらに含むことを理解されたい。
【0124】
本発明の化合物は、TRPA1に対して阻害効果を有するだけでなく、TRPファミリーの他のメンバーに対しても一定の阻害効果を有する。
「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物と薬物として使用に適した酸または塩基によって形成される塩を指す。薬学的に許容される塩は、無機塩と有機塩とを含む。好ましいタイプの塩は、本発明の化合物と酸とによって形成される塩であり、塩の形成に適した酸は、例えば、塩酸(hydrochloric acid)、臭化水素酸(hydrobromic acid)、フッ化水素酸(hydrofluoric acid)、硫酸(sulfuric acid)、硝酸(itric acid)およびリン酸(phosphoric acid)等の無機酸、ギ酸(formic acid)、酢酸(acetic acid)、プロピオン酸(propionic acid)、シュウ酸(oxalic acid)、マロン酸(malonic acid)、コハク酸(succinic acid)、フマル酸(fumaric acid)、マレイン酸(maleic acid)、乳酸(lactic acid)、リンゴ酸(malic acid)、酒石酸(tartaric acid)、クエン酸(citric acid)、ピクリン酸(picric acid)、メタンスルホン酸(methanesulfonic acid)、トルエンスルホン酸(toluenesulfonic acid)およびベンゼンスルホン酸(benzenesulfonic acid)等の有機酸、および例えば、アスパラギン酸(aspartic acid)およびグルタミン酸(glutamic acid)等の酸性アミノ酸を含むが、これらに限定されない。好ましいタイプの塩は、本発明の化合物と塩基によって形成される金属塩であり、塩の形成に適した塩基は、例えば、水酸化ナトリウム(sodium hydroxide)、水酸化カリウム(potassium hydroxide)、炭酸ナトリウム(sodium carbonate)、重炭酸ナトリウム(sodium bicarbonate)およびリン酸ナトリウム(sodium phosphate)等の無機塩基、例えば、アンモニア(ammonia)、トリエチルアミン(triethylamine)およびジエチルアミン(diethylamine)等の有機塩基を含むが、これらに限定されない。
【0125】
本発明において、式Zの化合物、式Iの化合物、式Aの化合物または式Bの化合物の薬学的に許容される塩の好ましい例は、式Zの化合物、式Iの化合物、式Aの化合物または式Bの化合物と、塩酸、粘液酸、D-グルクロン酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、またはその組み合わせからなる群から選択される酸とによって形成される塩である。
好ましくは、式Zの化合物、式Iの化合物、式Aの化合物または式Bの化合物の薬学的に許容される塩は、式Zの化合物、式Iの化合物、式Aの化合物または式Bの化合物と、塩酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、粘液酸塩、フマル酸塩、D-グルクロン酸塩、またはその組み合わせからなる群から選択される酸とによって形成される塩である。

本発明の好ましい化合物は、以下の表1から選択される任意の化合物を含む。
【0126】
【表2-1】
【表2-2】
【0127】
調製方法
本発明は、本発明式Iに示される(R)-3―アリールオキシル―3―5員ヘテロアリール―プロピルアミン化合物の調製方法を提供する。
本発明は、上記化合物を調製するための中間体II~IIIの調製方法をさらに提供する。
具体的な合成策略は、それぞれ次のとおりである。
【0128】
【化61】
【0129】
式において、A、X、R、R、Rおよびnは、上記で定義されたとおりである。
1)縮合フラン環フェノールまたは縮合脂肪環フェノール、(S)-1-((R)-5員ヘテロアリール)-3-クロロ-プロパノールおよびトリフェニルホスフィンを、無水テトラヒドロフランに溶解し、氷浴条件下でアゾジカルボン酸ジイソプロピルをゆっくりとシステムに滴下し、滴下完了後、システムを20~25℃に移して一晩反応させる。反応完了後、システムを直接スピン乾燥し、残留物をカラムクロマトグラフィーで分離および精製して、中間体IIを得る。
2)中間体IIを飽和ヨウ化ナトリウムのアセトン溶液に溶解し、50~70℃の温度下で一晩反応させる。反応完了後、溶媒をスピン乾燥し、システムに水を加え、酢酸エチルで3回抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮し、残留物をテトラヒドロフラン溶液に溶解し、アミン水溶液またはアルコール溶液を加え、20~25℃で一晩反応させる。反応完了後、溶媒をスピン乾燥し、システムに水酸化ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで3回抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィーで分離して、化合物Iを得る。
3)中間体II、フタルイミドカリウムおよびヨウ化ナトリウムをN,N-ジメチルホルムアミド溶液に溶解し、70-90℃で一晩反応させる。反応完了後、システムに水を加え、酢酸エチルで3回抽出し、水で洗浄し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィーで分離して、中間体IIIを得る。
4)中間体IIIをメタノール溶液に溶解し、ヒドラジン水和物を加え、20~25℃で一晩反応させる。反応完了後、溶媒をスピン乾燥し、残留物をカラムクロマトグラフィーで分離して、化合物Iを得る。
【0130】
化合物塩的合成
本発明に記載の式I、式Z、式G、式Aまたは式Bに示された化合物は、従来の方法により、その薬学的に許容される塩に変換することができ、例えば、上記化合物の溶液に対応する酸の溶液を加え、塩の形成が完了した後、溶媒を減圧下で除去して、本発明に記載の化合物に対応する塩を得ることができる。
【0131】
一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRP)
一過性受容体電位型チャンネルタンパク質は、細胞フィルム上に存在する重要な陽イオンチャネルで構成されるタイプのタンパク質スーパーファミリーである。一過性受容体電位型チャンネルタンパク質は、例えば、TRPA、TRPC、TRPM、TRPV、TRPMLおよびTRPPサブファミリー等の複数のサブファミリーを含む。
TRPA1は、TRPAサブファミリーのメンバーであり、TRPA1は、一過性受容体電位アンキリン1とも呼ばれる。研究によると、TRPA1チャネルタンパク質は、疼痛、癲癇、炎症、呼吸障害、そう痒症、尿路障害および炎症性腸疾患等の疾患に関連し、TRPA1は、疼痛、癲癇、炎症、呼吸障害、そう痒症、尿路障害および炎症性腸疾患等の疾患を治療する標的である。
【0132】
代表的には、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRP)に関連する疾患は、疼痛である。本発明の上記式I、式Z、式G化合物または式Iの化合物の塩酸塩結晶形態Aは、疼痛に対して効果的な治療効果を有する。
代表的には、前記疼痛は、急性疼痛、炎症性疼痛、内蔵痛、神経性疼痛、筋線維痛、頭痛、神経疼痛、混合性疼痛、癌によって引き起こされる疼痛、炎症疼痛、またはその組み合わせを含む(これらに限定されない)。
典型的には、前記急性疼痛は、損傷性疼痛または術後疼痛である。
本明細書に使用されるように、「術後疼痛」と「手術後疼痛」という用語は、交換可能に使用される。
代表的には、前記術後疼痛は、外科手術後の術後疼痛である。
代表的には、前記術後疼痛は、創傷の術後疼痛である。
代表的には、前記創傷の術後疼痛は、皮膚創傷の術後疼痛、筋肉創傷の術後疼痛、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0133】
代表的には、前記創傷の術後疼痛は、皮膚および筋肉の創傷の術後疼痛である。
典型的には、前記炎症性疼痛は、慢性炎症性疼痛である。
典型的には、前記炎症性疼痛は、変形性関節症疼痛または関節リウマチ疼痛である。
典型的には、前記頭痛は、片頭痛または筋肉緊張性疼痛である。
典型的には、前記神経痛は、三叉神経痛、糖尿病性疼痛、坐骨神経痛または帯状疱疹後神経痛である。
別の好ましい例において、前記急性疼痛は、損傷性疼痛または術後疼痛である。
【0134】
用途
本発明は、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TPR)を阻害する方法、および一過性受容体電位型チャンネルタンパク質に関連する疾患を治療する方法をさらに提供する。
本発明の上記式I、式Z、式G化合物または式Iの化合物の塩酸塩結晶形態Aは、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質を阻害することにより、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質に関連する疾患を予防または治療することができる。
本発明は、(a)一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRPA1)阻害剤の調製、および(b)一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TRPA1)に関連する疾患を予防および/または治療するための薬物の調製に使用される、本発明に記載の式Zの化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグ、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグ、式G化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグ、または式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aの用途を提供する。
【0135】
本発明において、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質(TPR)は、TPR1である。
本発明において、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質に関連する疾患の例としては、疼痛、癲癇、炎症、呼吸障害、そう痒症、尿路障害、炎症性腸疾患、またはその組み合わせを含む(これらに限定されない)。代表的には、前記疼痛は、急性炎症性疼痛、炎症性疼痛(例えば、慢性炎症性疼痛、変形性関節症疼痛または関節リウマチ疼痛)、内蔵痛、神経性疼痛、筋線維痛、頭痛(例えば、片頭痛、筋肉緊張性疼痛等)、神経疼痛(例えば、三叉神経痛、糖尿病性疼痛、帯状疱疹後神経痛等)、または癌によって引き起こされる疼痛を含む(これらに限定されない)。
【0136】
好ましい実施例において、本発明は、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質活性を阻害するためのインビトロ非治療的および非診断的方法を提供し、例えば、インビトロ培養システムにおいて、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質または前記タンパク質を発現する細胞を、本発明に記載の式I、式Zまたは式G化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグ、または式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aと接触させることにより、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質の活性を阻害する段階を含む。
【0137】
本発明において、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質活性を阻害するためのインビトロ非治療的および非診断的方法は、薬物スクリーニング、品質管理等の用途に使用することができる。例えば、インビトロ培養システムにおいて、本発明に記載の式I、式Zまたは式G化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグ、または式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aを、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質または前記タンパク質を発現する細胞と接触させることにより、候補薬として一過性受容体電位型チャンネルタンパク質を阻害する化合物を使用することができ、次に、動物実験、臨床試験を通じて、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質および関連疾患に対する候補化合物の治療効果を研究することができる。
【0138】
本発明は、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質を阻害するための方法を提供し、当該方法は、治療性的または非治療的であり得る。通常、当該方法は、必要とする対象に本発明に記載の式I、式Z、式G、式Aまたは式Bの化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグ、または式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aを投与する段階を含む。
好ましくは、前記対象は、ヒトおよびヒト以外の哺乳動物(齧歯類動物、ウサギ、サル、家畜、イヌ、ネコ等)を含む。
【0139】
結晶形態
本発明は、式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aをさらに提供する。
【化62】
本発明に記載の式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aは、固体形態であり、遊離された式I-1の化合物の油状物と比較して、固体形態のI-1化合物の塩結晶形態は、強力な貯蔵、輸送および成薬可能性を有する。本発明に記載の式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aは、優れた安定性、特に優れた熱安定性および高湿度安定性を有する。
本明細書に使用されるように、「式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態A」、「塩酸塩結晶形態A」および「結晶形態A」は、交換可能に使用される。
【0140】
本発明に記載の式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aは、10.003±0.2°、11.171±0.2°、15.987±0.2°、16.734±0.2°、17.092±0.2°、18.173±0.2°、18.849±0.2°、20.681±0.2°、21.156±0.2°、21.649±0.2°、22.084±0.2°、22.794±0.2°、23.761±0.2°、25.298±0.2°、25.967±0.2°、26.640±0.2°、27.273±0.2°、28.099±0.2°、28.615±0.2°、28.813±0.2°、29.501±0.2°、30.118±0.2°、30.513±0.2°、32.522±0.2°、33.274±0.2°、34.081±0.2°、35.815±0.2°、37.553±0.2°、40.018±0.2°、42.927±0.2°、44.129±0.2からなる群から選択される一つまたは複数の2θ値で特性ピークを有する。
【0141】
代表的には、本発明に記載の式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aは、基本的に図7に示されるようなX線粉末回折の特性ピークを有する。
本発明の好ましい例において、前記式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aの示差走査熱量測定(DSC)チャートは、142.30℃(好ましくは±4℃、±3℃、±2℃または±1℃)に加熱されるときに吸収ピークを示し始める。
代表的には、前記式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aの示差走査熱量測定(DSC)チャートは、基本的に図8に示されるようである。
本発明の好ましくは例において、前記式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aの熱重量分析(TGA)チャートは、168.01℃に加熱されるときに約0.9827%(好ましくは±0.1%、±0.2%、±0.3%、±0.4%、または±0.5%)の重量損失を有する。
代表的には、前記式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aの熱重量分析(TGA)チャート基は、図9に示される。
【0142】
好ましくは、本発明に記載の式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aの調製方法は、以下の段階を含む。
(a)式I-1の化合物を酢酸エチルと混合した後、5~15℃下で塩酸を滴加し、システムのpHを6~8に調節し、反応させて固体を析出し、ろ過して、式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aを得る。
別の好ましい例において、前記ステップ(a)において、反応時間は、3~8分、好ましくは5分である。
別の好ましい例において、前記ステップ(a)において、式I-1の化合物と有機溶媒との重量対体積(kg:L)比は、0.2~2:2~30、好ましくは0.4~1.0:5~18、より好ましくは0.5~0.9:8~15である。
本発明に記載の式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aは、TRPA1を阻害することができる。
【0143】
組成物および投与方法
本発明は、一過性受容体電位型チャンネルタンパク質の活性を阻害するための組成物を提供する。前記組成物は、薬物組成物、食品組成物、栄養補助食品および飲料組成物等を含むが、これらに限定されない。
典型的には、前記組成物は、医薬組成物であり、前記医薬組成物は、本発明に記載の式I、式Z、式G、式Aまたは式Bの化合物、または式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態A、および薬学的に許容されるベクターを含む。
【0144】
本発明において、医薬組成物の剤形は、経口製剤、注射剤、外用製剤を含む(これらに限定されない)。
代表的には、錠剤、カプセル、注射剤、輸液剤、軟膏剤、ゲル剤、溶液剤、ミクロスフェアおよびフィルム剤を含む(これらに限定されない)。
「薬学的に許容される担体」という用語は、ヒトまたは動物の使用に適しており、必ず十分な純度および十分に低い毒性を有する、一つまたは複数の相容性固体、半固体、液体またはグル充填剤を指す。「相容性」とは、薬物の効力を著しく低下させることなく、薬物組成物中の各成分および薬物の有効成分、ならびにそれらの相互混合を指す。
【0145】
本発明において、前記担体は、特に限定されず、本技術分野で一般的に使用される材料を選択するか、または従来の方法で調製するか、または市場から購入することができることを理解されたい。薬学的に許容される担体の部分的例は、セルロース(cellulose)およびその誘導体(例えば、メチルセルロース(methyl cellulose)、エチルセルロース(ethyl cellulose)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropyl methyl cellulose)およびナトリウムカルボキシメチルセルロース(sodium carboxymethyl cellulose)等)、ゼラチン(gelatin)、タルク(talc)、固形潤滑剤(例えば、ステアリン酸(stearic acid)およびステアリン酸マグネシウム(magnesium stearate))、硫酸カルシウム(calcium sulfate)、植物油(例えば、大豆油、ごま油、落花生油およびオリーブ油等)、ポリオール(polyol)(例えば、プロピレングリコール(propylene glycol)、グリセリン(glycerin)、マンニトール(mannitol)およびソルビトール(sorbitol)等)、乳化剤(例えば、トゥイーン(Tween))、湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate))、緩衝剤、キレート剤、増粘剤、pH調整剤、浸透促進剤、着色剤、香料、安定剤、抗酸化剤、防腐剤、抗菌剤およびパイロジェンフリー水等を含む。
【0146】
代表的に、薬物の有効成分に加えて、液体剤型は、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤等の当技術分野で従来から使用されている不活性希釈剤を含むことができ、例えば、エタノール(ethanol)、イソプロパノール(isopropanol)、炭酸エチル(ethyl carbonate)、酢酸エチル、プロピレングリコール(propylene glycol)、1,3-ブタンジオール(1,3-butanediol)、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide)および油、特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、蓖麻子油およびごま油またはこれらの物質の混合物等を含む。これらの不活性希釈剤に加えて、組成物は、例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤等の補助剤も含むことができる。
薬物製剤は、投与方法と一致する必要がある。本発明の薬剤は、他の併用治療剤とともに使用(使用前、使用中または使用後を含み)することができる。薬物組成物または製剤を使用する場合、安全かつ有効な量の薬物を、所望の対象(例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳動物)に投与される。具体的投与量は、投与経路、患者の健康状態等の要因も考慮する必要があり、これらのすべては、熟練した医師のスキル範囲内にある。
【0147】
本発明の主な利点は、次のとおりである。
(a)本発明は、構造が新規で、優れたTRPチャネル(特に、TRPA1)阻害活性を有する式I、式Z、式G、式Aまたは式Bの化合物を提供する。
(b)本発明の化合物は、様々な動物モデルにおいて強力な鎮痛薬物効果を示す。
(c)本発明の化合物は、毒性が低く、活性が高いため、安全ウィンドウがもっと大きい。
(d)本発明の化合物は、良好な創薬可能性を有する。
(e)本発明の化合物は、優れた薬物動態特性を有する。
(f)本発明の化合物は、経口投与に適する。
(g)本発明は、式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aをさらに提供し、前記式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aは、固体形態であり、遊離された式I-1の化合物の油状物と比較して、固体形態のI-1化合物の塩結晶形態は、貯蔵、輸送に便利であり、強力な成薬可能性および安定性を有する(特に、優れた熱安定性および高湿度安定性を有する)。
【0148】
以下、本発明は、具体的実施例と併せてさらに説明される。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下の実施例において、具体的条件を示さない実験方法は、通常従来の条件または製造業者によって提案された条件に従う。特に明記されない限り、パーセンテージと部数とは、重量で計算される。
【0149】
実施例1
(R)-7-(3-クロロ-1-(チオフェン-2-イル)プロポキシ基)ベンゾフラン(中間体II-1)
【化63】
528mgの(S)-3-クロロ-1-(チオフェン-2-イル)プロプ-1-オール、400mgの7-ヒドロキシベンゾフランおよび862mgのトリフェニルホスフィンを、30mlの無水テトラヒドロフランに溶解し、氷浴条件下で667mgのアゾジカルボン酸ジイソプロピルをゆっくりとシステムに滴下し、滴下完了後、システムを室温に移し、一晩反応させる。反応完了後、システムを直接スピン乾燥し、残留物をカラムクロマトグラフィーで分離および精製して、685mgの中間体II-1化合物を無色の油状で得、収率は、78.46%である。
【0150】
HNMR(500MHz、HNMR)δ 7.62(t、J=3.2hz、1H)、7.41(dd、J=1.8、0.6hz、1H)、7.24(dt、J=8.1、1.8hz、1H)、7.15-7.11(m、1H)、6.91(d、J=7.7hz、1H)、6.77(dd、J=8.0、2.2hz、1H)、6.35(d、J=3.3hz、1H)、6.33(dd、J=3.3、1.9hz、1H)、5.75(dd、J=8.4、5.1hz、1H)、3.93(dd、J=11.1、8.2、5.4hz、1H)、3.77-3.70(m、1H)、2.85-2.74(m、1H)、2.54-2.48(m、1H).MS(ESI、m/z):292.93(M+H)
【0151】
実施例2
(R)-3-(ベンゾフラン-7-イルオキシ)-N-メチル-3-(チオフェン-2-イル)プロプ-1-アミン(化合物I-1)
【化64】
685mgの中間体II-1を飽和ヨウ化ナトリウムのアセトン溶液に溶解し、一晩還流する。反応完了後、溶媒をスピン乾燥し、システムに水を加え、酢酸エチルで3回抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮し、残留物を30mlのテトラヒドロフラン溶液に溶解し、3mlの40%のメチルアミン水溶液を加え、一晩反応させる。反応完了後、溶媒をスピン乾燥し、システムに水酸化ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで3回抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィーで分離して(メタノール/ジクロロメタン=1:15)、336mgのI-1化合物を無色の油状物で得、収率は、49.97%である。
【0152】
HNMR(500MHz、DMSO)δ 7.97(d、J=2.1hz、1H)、7.49(dd、J=5.0、1.1hz、1H)、7.25-7.18(m、2H)、7.08(t、J=7.9hz、1H)、6.99(dd、J=5.0、3.5hz、1H)、6.96(d、J=7.9hz、1H)、6.94(d、J=2.1hz、1H)、6.05(dd、J=7.9、5.2hz、1H)、3.15-2.96(m、2H)、2.57(s、3H)、2.49-2.43(m、1H)、2.33-2.25(m、1H).MS(ESI、m/z):288.0(M+H)
【0153】
実施例3
(R)-2-(3-(ベンゾフラン-7-イルオキシ)-3-(チオフェン-2-イル)プロピル)イソインドリン-1,3-ジオン(中間体III)
【化65】
425mgの中間体II-1、807mgのフタルイミドカリウムおよび100mgのヨウ化ナトリウムを、15mlのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、窒素保護条件下で90℃で一晩反応させる。反応完了後、システムに水を加え、酢酸エチルで3回抽出し、水で洗浄し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィーで分離して(酢酸エチル/石油エーテル=1:5)、412mgの中間体III化合物を黄色の固体で得、収率は、70.35%である。
【0154】
HNMR(500MHz、HNMR)δ 7.84-7.80(m、2H)、7.70(dd、J=5.4、3.1hz、2H)、7.50(d、J=2.0hz、1H)、7.21(dd、J=5.1、1.4hz、1H)、7.18(dd、J=7.9、0.9hz、1H)、7.09(d、J=3.1hz、1H)、7.08-7.03(m、1H)、6.91(dd、J=10.1、5.1hz、1H)、6.82(d、J=7.3hz、1H)、6.71(d、J=2.2hz、1H)、5.85(dd、J=7.7、5.4hz、1H)、4.11-3.92(m、2H)、2.68(dd、J=14.4、7.3hz、1H)、2.53-2.39(m、1H).MS(ESI、m/z):403.99(M+H)
【0155】
実施例4
(R)-3-(ベンゾフラン-7-イルオキシ)-3-(チオフェン-2-イル)プロプ-1-アミン(化合物I-2)
【化66】
412mgの中間体IIIおよび270mgのヒドラジン水和物を15mlのメタノール溶液に溶解し、室温一晩反応させる。反応完了後、溶媒をスピン乾燥し、残留物をカラムクロマトグラフィーで分離して(メタノール/ジクロロメタン=1:15)、124mgのI-2化合物を無色の油状物で得、収率は、44.42%である。
【0156】
HNMR(500MHz、DMSO)δ 7.87(d、J=2.3hz、1H)、7.40(dd、J=5.5、1.6hz、1H)、7.19-7.15(m、2H)、7.07(t、J=7.9hz、1H)、6.94(dd、J=5.5、3.8hz、1H)、6.91(d、J=7.7hz、1H)、6.87(d、J=2.4hz、1H)、6.04(m、1H)、2.94-2.80(m、2H)、2.37-2.30(m、1H)、2.18(dtd、J=11.8、9.8、5.1hz、1H).MS(ESI、m/z):273.98(M+H)
【0157】
実施例5
(R)-3-(ベンゾフラン-7-イルオキシ)-N,N-ジメチル-3-(チオフェン-2-イル)プロプ-1-アミン(化合物I-3)
【化67】
メチルアミン水溶液をジメチルアミンに置き換えたことを除いて、他の必要な原料、試薬および調製方法は実施例2と同じであり、327mgのI-3化合物を無色の油状物で得、収率は、44.76%である。
【0158】
HNMR(500MHz、HNMR)δ 7.74(d、J=2.5hz、1H)、7.31(dt、J=12.8、6.4hz、1H)、7.19(dd、J=7.8、0.9hz、1H)、7.05-7.01(m、2H)、6.91(dd、J=5.0、3.5hz、1H)、6.83(dd、J=6.8、6.1hz、1H)、6.73(d、J=4.2hz、1H)、5.85-5.77(m、1H)、2.53-2.48(m、2H)、2.48-2.40(m、1H)、2.26(s、6H)、2.16(dt、J=10.1、4.9hz、1H).MS(ESI、m/z):302.01(M+H)
【0159】
実施例6
(R)-3-(ベンゾフラン-7-イルオキシ)-N-エチル-3-(チオフェン-2-イル)プロプ-1-アミン(化合物I-4)
【化68】
メチルアミン水溶液をエチルアミンに置き換えたことを除いて、他の必要な原料、試薬および調製方法は実施例2と同じであり、478mgのI-4化合物を無色の油状物で得、収率は、45.90%である。
【0160】
HNMR(500MHz、HNMR)δ 7.67(d、J=2.4hz、1H)、7.25(t、J=7.6hz、2H)、7.15-6.89(m、2H)、6.85(dd、J=5.5、3.9hz、1H)、6.74(d、J=8.4hz、1H)、6.66(d、J=1.8hz、1H)、5.81(dd、J=9.2、6.4hz、1H)、3.25(t、J=8.7hz、2H)、3.15(q、J=7.3hz、2H)、2.78-2.66(m、1H)、2.60-2.49(m、1H)、1.51(t、J=7.3hz、3H).MS(ESI、m/z):302.10(M+H)
【0161】
実施例7
(R)-3-(ベンゾフラン-7-イルオキシ)-N-メチル-3-(チオフェン-3-イル)プロプ-1-アミン(化合物I-5)
【化69】
(S)-3-クロロ-1-(チオフェン-2-イル)プロプ-1-オールを(S)-3-クロロ-1-(チオフェン-3-イル)プロプ-1-オールに置き換えたことを除いて、他の必要な原料、試薬および調製方法は実施例1~2と同じであり、313mgのI-5化合物を無色の油状物で得、収率は、32.71%である。
【0162】
HNMR(500MHz、HNMR)δ 7.63(d、J=2.7hz、1H)、7.31(dd、J=5.5、3.1hz、1H)、7.27(d、J=2.7hz、1H)、7.20-7.14(m、2H)、7.07(t、J=8.4hz、1H)、6.76(t、J=4.2hz、1H)、6.73(d、J=8.1hz、1H)、5.66(dd、J=7.7、5.6hz、1H)、2.95-2.83(m、2H)、2.50(s、3H)、2.44-2.33(m、1H)、2.26-2.14(m、1H).MS(ESI、m/z):287.97(M+H)
【0163】
実施例8
(R)-3-(ベンゾフラン-7-イルオキシ)-N-メチル-3-(5-メチルチオフェン-2-イル)プロプ-1-アミン(化合物I-6)
【化70】
(S)-3-クロロ-1-(チオフェン-2-イル)プロプ-1-オールを(S)-3-クロロ-1-(5-メチルチオフェン-2-イル)プロプ-1-オールに置き換えたことを除いて、他の必要な原料、試薬および調製方法は実施例1~2と同じであり、222mgのI-6化合物を無色の油状物で得、収率は、26.42%。
【0164】
HNMR(500MHz、HNMR)δ 7.61(d、J=2.0hz、1H)、7.16(dt、J=10.7、5.4hz、1H)、7.09(d、J=7.9hz、1H)、6.87(d、J=7.7hz、1H)、6.81(d、J=4.4hz、1H)、6.77(dd、J=7.0、2.2hz、1H)、6.60-6.53(m、1H)、5.74(dd、J=7.7、5.6hz、1H)、2.94-2.80(m、2H)、2.55(s、3H)、2.46-2.37(m、4H)、2.26-2.17(m、1H).MS(ESI、m/z):302.01(M+H)
【0165】
実施例9
(R)-3-(ベンゾフラン-7-イルオキシ)-3-(5-クロロチオフェン-2-イル)-N-メチルプロプ-1-アミン(化合物I-7)
【化71】
(S)-3-クロロ-1-(チオフェン-2-イル)プロプ-1-オールを(S)-3-クロロ-1-(5-クロロチオフェン-2-イル)プロプ-1-オールに置き換えたことを除いて、他の必要な原料、試薬および調製方法は実施例1~2と同じであり、275mgのI-7化合物を無色の油状物で得、収率は、30.15%である。
【0166】
HNMR(500MHz、HNMR)δ 7.63(d、J=2.1hz、1H)、7.22(d、J=8.1hz、1H)、7.11(d、J=7.7hz、1H)、6.91(dd、J=13.4、6.4hz、2H)、6.82(d、J=4.2hz、1H)、6.76(d、J=4.3hz、1H)、5.70(dd、J=8.7、6.0hz、1H)、3.11-3.02(m、2H)、2.53(s、3H)、2.48(dt、J=21.6、7.2hz、1H)、2.27(ddd、J=13.7、12.0、6.7hz、1H).MS(ESI、m/z):321.96(M+H)
【0167】
実施例10
(R)-3-(ベンゾフラン-7-イルオキシ)-3-(フラン-2-イル)-N-メチルプロプ-1-アミン(化合物I-8)
【化72】
(S)-3-クロロ-1-(チオフェン-2-イル)プロプ-1-オールを(S)-3-クロロ-1-(フラン-2-イル)プロプ-1-オールに置き換えたことを除いて、他の必要な原料、試薬および調製方法は実施例1~2と同じであり、167mgのI-8化合物を無色の油状物で得、収率は、15.55%である。
【0168】
HNMR(500MHz、HNMR)δ 7.56(d、J=2.8hz、1H)、7.33(d、J=1.9hz、1H)、7.17(d、J=8.7hz、1H)、7.01(dd、J=11.5、6.3hz、1H)、6.74(d、J=7.9hz、1H)、6.67(d、J=2.5hz、1H)、6.26(d、J=4.3hz、1H)、6.15(dd、J=4.2、2.1hz、1H)、5.56(dd、J=8.4、6.7hz、1H)、3.11-2.96(m、2H)、2.64-2.55(m、4H)、2.40(dd、J=12.4、7.0hz、1H).MS(ESI、m/z):272.02(M+H)
【0169】
実施例11
(R)-3-((2,3-ジヒドロ-1H-インデン-4-イル)オキシ)-N-メチル-3-(チオフェン-2-イル)プロプ-1-アミン(化合物I-9)
【化73】
7-ヒドロキシベンゾフランを4-インダノールに置き換えたことを除いて、他の必要な原料、試薬および調製方法は実施例1~2と同じであり、116mgのI-9化合物を無色の油状で得、収率は、20.75%である。
【0170】
HNMR(500MHz、HNMR)δ 7.27(dd、J=4.0、2.1hz、1H)、7.19-7.16(m、2H)、6.99(t、J=8.4hz、1H)、6.88(d、J=7.7hz、1H)、6.69(d、J=8.5hz、1H)、5.68(dd、J=7.9、4.8hz、1H)、2.94(dd、J=18.69、9.1hz、4H)、2.87(ddd、J=10.0、8.5hz、4.0hz、2H)、2.47(s、3H)、2.35-2.240(m、1H)、2.22-2.16(m、1H)、2.12-2.04(m、2H).MS(ESI、m/z):288.03(M+H)
【0171】
実施例12
(R)-N-メチル-3-((5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)オキシ)-3-(チオフェン-2-イル)プロプ-1-アミン(化合物I-10)
【化74】
7-ヒドロキシベンゾフランをテトラヒドロナフトールに置き換えたことを除いて、他の必要な原料、試薬および調製方法は実施例1~2と同じであり、103mgのI-10化合物を無色の油状で得、収率は、25.17%である。
【0172】
HNMR(500MHz、HNMR)δ 7.32(d、J=2.2hz、1H)、7.22-7.18(m、1H)、6.99-6.95(m、2H)、6.74(d、J=8.5hz、1H)、6.63(d、J=8.8Hz、1H)、4.88(dd、J=12.9、4.4hz、1H)、2.98-2.74(m、5H)、2.66-2.43(m、5H)、2.15-2.09(m、1H)、1.91-1.76(m、4H).MS(ESI、m/z):302.0(M+H)
【0173】
実施例13
(R)-3-(ベンゾフラン-4-イルオキシ)-N-メチル-3-(チオフェン-2-イル)プロプ-1-アミン(化合物I-11)
【化75】
7-ヒドロキシベンゾフランを4-ヒドロキシベンゾフランに置き換えたことを除いて、他の必要な原料、試薬および調製方法は実施例1~2と同じであり、95mgのI-11化合物を無色の油状物で得、収率は、14.06%である。
【0174】
HNMR(500MHz、HNMR)δ 7.49(d、J=2.8hz、1H)、7.16(d、J=5.0、1H)、7.11-7.04(m、3H)、6.89(dd、J=5.2、3.2hz、2H)、6.74-6.65(m、1H)、5.81(dd、J=7.5、5.0hz、1H)、3.16(t、J=7.4hz、2H)、2.76-2.67(m、1H)、2.65(s、3H)、2.62-2.51(m、1H).MS(ESI、m/z):287.97(M+H)
【0175】
比較例1
(S)-3-(ベンゾフラン-7-イルオキシ)-N-メチル-3-(チオフェン-2-イル)プロプ-1-アミン(化合物のC1)
【化76】
(S)-3-クロロ-1-(チオフェン-2-イル)プロパン-1-オールを(R)-3-クロロ-1-(チオフェン-2-イル)プロパン-1-オールに置き換えたことを除いて、他の必要な原料、試薬および調製方法は実施例1~2と同じであり、199mgの化合物C1を得、収率は、39.96%である。
【0176】
HNMR(400MHz、HNMR)δ 7.63(d、J=2.0hz、1H)、7.20(t、J=6.6hz、2H)、7.08-6.99(m、2H)、6.88(dd、J=4.9、3.6hz、1H)、6.80(d、J=7.9hz、1H)、6.75(d、J=2.0hz、1H)、5.93(dd、J=8.2、4.4hz、1H)、3.30(t、J=7.0hz、2H)、2.82-2.69(m、4H)、2.65-2.54(m、1H).MS(ESI、m/z):287.87(M+H)
【0177】
比較例2
(R)-3-(ベンゾフラン-7-イルオキシ)-N-メチル-3-フェニルプロプ-1-アミン(化合物C2)
【化77】
(S)-3-クロロ-1-(チオフェン-2-イル)プロパン-1-オールを(S)-3-クロロ-1-フェニルプロパン-1-オールに置き換えたことを除いて、他の必要な原料、試薬および調製方法は実施例1~2と同じであり、147mgの化合物C2を得、収率は、24.42%である。
【0178】
HNMR(500MHz、HNMR)δ 7.64(d、J=2.1hz、1H)、7.45-7.40(m、2H)、7.32(dd、J=10.3、4.8hz、2H)、7.24(dt、J=2.4、1.6hz、1H)、7.12(dd、J=7.8、0.8hz、1H)、6.96(dd、J=10.4、5.3hz、1H)、6.74(d、J=2.1hz、1H)、6.63(d、J=7.7hz、1H)、5.49(dd、J=8.3、4.8hz、1H)、2.90-2.80(m、2H)、2.46(s、3H)、2.39-2.29(m、1H)、2.16-2.06(m、1H).MS(ESI、m/z):282.26(M+H)
【0179】
実施例14
TRPA1の阻害活性試験
本実施例において、一過性受容体電位型チャネルタンパク質TRPA1に対する本発明のいくつかの実施例で調製された化合物(表1に示される)の阻害活性を試験する。ここで、陽性対照化合物は、式Aの化合物(WO2010075353)を採用する。
式Aの化合物:
【化78】
【0180】
方法は次のとおりである。
IonWorks Barracuda (IWB)自動パッチクランプ検出による試験方法:TRPA1を安定的に発現するHEK293細胞を、15μg/mLのブラストサイジン(Blasticidin) S HCl、200μg/mLのハイグロマイシン(Hygromycin) Bおよび10%のFBS血清を含むDMEM培地を使用し、T175の培養瓶に入れ、37℃、5%のCOのインキュベーターに入れて培養し、細胞密度が~80%に達したら、培養液を取り除き、カルシウムとマグネシウムを含まないリン酸緩衝液(PBS)で1回リンスし、3mLのトリプシン(Trypsin)を加えて2分間消化し、7mLの培養液を加えて消化を終了する。15mLの遠心チューブに細胞を集め、800rpmで3分間遠心し、上澄みを除去した後、細胞を適量の細胞外液に再懸濁し、細胞密度を2~3×10/mLに制御し、IWB実験に使用する。細胞外液処方(in mM):140 NaCl、5 KCl、1 MgCl、10 HEPES、0.5 EGTA、10Glucose (pH 7.4)、細胞内液処方(in mM):140 CsCl、10 HEPES、5 EGTA、0.1 CaCl、1 MgCl(pH 7.2)。アンホテリシンBと実験当日用DMSOを使用して28mg/mLを調製し、次に細胞内液を使用して最終濃度0.1mg/mLを調製する。
【0181】
IWB実験において、ポピュレーションパッチクランプ(population patch clamp、PPC)プレートを使用し、すべての検出プロセスは、機器によって自動的に完了し、即ち、PPCプレートの384ウェルに細胞外液を追加し、PPCプレート下、即ち、プレナム(plenum)に細胞内液を加えた後、6Lの細胞液を加えて密封試験を行い、最後にプレナムの細胞内液を、アンホテリシンBを含む細胞内液に置き換え、密封された細胞に穴を開けた後、細胞全体の記録モードを形成する。TPRA1電流を記録するためのサンプリング周波数は、10kHzであり、細胞は、0mVでクランプされ、電圧刺激コマンド(チャネルプロトコル(channel protocol))は、-100mVから+100mVまでの300msのランプ(ramp)電圧であり、この電圧刺激は、10秒ごとに与えられ、mTRPA1電流は、300M AITCによって誘導される。
【0182】
データ記録および電流振幅測定の導出は、IWBソフトウェア完成(version 2.5.3、Molecular Devices Corporation、Union City、CA)によって完了する。密封インピーダンスが20MΩ未満のウェルは、記録データに統計されない。元の電流データは、ソフトウェアによってリーク低減の修正が行なわれ、TRPA1電流振幅は、+100mVで測定される。実験の各PPCプレートには、陽性対照としてHC030031の投与量効果データがあり、例えば、HC030031のIC50値は、過去に各プレートで得られたIC50の平均値の3倍を超えた場合、再測定される。化合物の投与量効果曲線とIC50とは、GraphPad Prism 5.02(GraphPad Software、San Diego、CA)によってフィッティング計算される。
【0183】
実験結果
本発明の実施例で調製されたいくつかの化合物は、IonWorks Barracuda (IWB)自動パッチクランプ検出の試験方法により、IC50阻害活性試験を行い、活性データは、表2に示される。
【0184】
【表3】
【0185】
結果によると、本発明の化合物がTRPA1に対して強力な阻害活性を示し、そのうち5個の化合物がTRPA1に対して1~5μMの間に半分の有效阻害濃度IC50を有し、4個の化合物がTRPA1に対して6~10μMの間に半分の有效阻害濃度IC50有する。図1に示されたように、本発明の化合物I-1がTRPA1に対して2.06μMの阻害活性IC50を有する。したがって、本発明の式I-1の化合物は、TRPA1に対して津より阻害活性を有すると結論付けることができる。
【0186】
なお、化合物I-1(ヘテロアリール基含有)と比較化合物C(フェニル基含有)との活性比(化合物C2のIC50/化合物I-1のIC50)は、約6.3であり、これは、ヘテロアリール基含有の本発明の化合物(例えば、I-1)は、TRPA1に対する阻害活性がより高いことを示す。
【0187】
A基がナフタレン環である化合物(例えば、R-デュロキセチン)と比較して、化合物I-1、化合物I-3、化合物I-4、化合物I-5、化合物I-8および化合物I-9のIC50値は、大幅に減少する。化合物I-1、化合物I-3、化合物I-4、化合物I-5、化合物I-8および化合物I-9のいずれか一つの化合物のIC50に対しるR-デュロキセチンのIC50の比例は、約9.3~23.5である。これは、A基が脂肪式環またはヘテロアリール基である本発明の化合物がTRPA1に対する阻害活性がより高いことを示す。
【0188】
本発明者らは、手動パッチクランプ試験法により、化合物I-1のTRPA1阻害活性をさらに測定し、図2に示されたように、自動パッチクランプ試験法の試験結果と同様に、手動パッチクランプ試験法において、化合物I-1のIC50は、0.42μMであり、TRPA1に対して非常に強い阻害活性を示す。
【0189】
実施例15
細胞毒性試験
本実施例において、I-1化合物およびS-デュロキセチンの肝臓細胞毒性および神経細胞毒性を測定する実験
1.I-1化合物の肝臓細胞毒性および神経細胞毒性の実験
HepG-2およびSH-SY5Y細胞を用意し、37℃、5%のCO細胞インキュベーター内で10cmdishで培養し、トリプシンで細胞を消化して再懸濁し、カウントし、100μl/ウェルのシステムで、8000cellsの量で、96ウェルプレートに細胞を移す。37℃、5%のCO細胞インキュベーター内で24時間培養し、I-1化合物(本発明の実施例2で調製される)グラジエント濃度システムを用意し、2倍希釈し、システムは、100μl/ウェルである。第1日目に96ウェルプレート細胞培養システムの上清を除去し、新しく構成された薬物濃度システムを、培養細胞の培養プレートウェル内(二重の複数のウェルを設定)に対応追加する。37℃、5%のCO細胞インキュベーター内で72時間培養する。細胞培養が完了した後、96ウェルプレートの細胞培養システムの上清を除去し、100μlの検出溶液(10%のCCK-8を含む培地)を各ウェルに加え、37℃、5%のCO細胞インキュベーター内で1時間インキュベートし、完了後、取り出し、Enzyme-labeled instrumentで450nmの吸光度を測定する。データを処理し、細胞毒性を計算し、GraphPad PrismでIC50を計算し、細胞毒性の計算公式は、次のとおりである。細胞毒性(%)=[A(0投与)-A(投与)]/[A(0投与)-A(空白)]×100
A(投与):細胞、CCK-8溶液および薬物溶液を有するウェルの吸光度
A(空白):培地およびCCK-8溶液を有するが、細胞を有さないウェルの吸光度
A(0投与):細胞およびCCK-8溶液を有するが、薬物溶液を有さないウェルの吸光度
【0190】
2.S-デュロキセチンの肝臓細胞毒性および神経細胞毒性の実験
測定方法は、上記I-1化合物の肝臓細胞毒性および神経細胞毒性の実験と同様であるが、異なることは、I-1化合物の代わりにS-デュロキセチンを使用する。
【0191】
実験結果
I-1化合物の肝臓細胞毒性(HepG2細胞)および神経細胞(SH-SY5Y)毒性の結果は以下の通りである:
S-デュロキセチンは、肝臓細胞毒性および神経細胞毒性(IC50、μM)に対してそれぞれ33.33μMおよび28.59μMであるが、本発明のI-1化合物は、肝臓細胞毒性および神経細胞毒性(IC50、μM)に対して、約113.80μMおよび100.70μMであり、これは、本発明の化合物の毒性副作用が有意に低く、優れた安全性を有することを示す。
【0192】
実施例16
マウスホルマリン疼痛モデルを介しての急性疼痛および炎症疼痛に対する化合物I-1の治療効果の観察
実験方法
150匹のC57BL/6マウス(雄、9週間)を選択し、10匹のマウスの各群をランダムに15の群に分け、マウスホルマリン疼痛モデルにおける三つの化合物の鎮痛活性試験に使用し、それぞれ、化合物I-1群(実施例2で調製された化合物I-1であり、その塩酸塩を実験に使用する)、S-デュロキセチン群(その塩酸塩を実験に使用する)および化合物C1群(比較例1で調製された化合物C1であり、その塩酸塩を実験に使用する)である。実験を開始する前に、マウスを絶食させる必要なく72時間実験環境に適応させる。被験薬は、腹腔内注射によって与えられ、投与量の設定は、次のとおりである。
【0193】
化合物I-1群:空白ビヒクル(空白生理食塩水対照)、0.1mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、5mg/kgおよび10mg/kg
S-デュロキセチン群:空白ビヒクル(空白生理食塩水対照)、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kgおよび20mg/kg
化合物C1群:空白ビヒクル(空白生理食塩水対照)、0.1mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、5mg/kgおよび10mg/kg
【0194】
投与後、マウスを透明で換気されるプレキシガラスシリンダーに1時間置いた後、マイクロインジェクターで各群のマウスの左後足底に20μlの4%ホルマリン溶液を注射し、ミニカメラでマウスの足の疼痛反応をリアルタイムで記録する。疼痛反応の指標として左足を舐める時間の長さをとり、それぞれ0~10分間(フェーズI)および10~60分間(フェーズII)の二つの期間での足舐め時間を観察および記録し、統計分析を行い、三つの化合物の半分の有效投与量(ED50)を計算し、ED50とは、空白対照群と比較して、足舐め時間が半分に短縮する薬物投与量を指す。ED50値が小さいほど、化合物の鎮痛有效投与量が低くなり、その鎮痛效果がよくなることを表す。
【0195】
実験結果
マウスホルマリン疼痛モデルの試験結果は、表3および図3に示される。表3および図3から、3個の化合物の鎮痛活性は、すべて投与量依存性を示したことが分かる。0.5mg/kgの投与で、本発明の化合物I-1のフェーズII(10~60分間)の足舐め時間は、空白ビヒクルと比較して、50%以上低下し、フェーズIIの疼痛における鎮痛薬物効果ED50は、0.26mg/kgである。フェーズII疼痛におけるS-デュロキセチンのED50は、8.00mg/kgであり、フェーズII疼痛における比較化合物C1のED50は、2.22mg/kgである。上記のデータから、本発明の化合物I-1は、マウスホルマリン疼痛モデルおいて非常に強い鎮痛活性を示し、そのED50は、S-デュロキセチンよりも30.8倍強く、同時に、C1化合物より8.5倍強い、マウスホルマリンモデルは、急性疼痛および炎症疼痛の薬物効果を評価する評価するための古典的なモデルであり、したがって、本発明の化合物I-1は、急性疼痛および炎症疼痛に優れた治療効果を有する。
【0196】
【表4】
【0197】
実施例17
ラットホットプレート疼痛モデルを介しての急性疼痛に対する化合物I-1の治療効果の観察

実験方法:
雄の成熟した未交配のSprague-Dawley健康ラットを選択し、コールドホットプレート(製品モデル:PE34、米国IITC)の温度を53±0.1℃で一定になるように調整し、5~10秒内に足舐め、足震えまたは微弱なスキップ等の疼痛反応があるラット(回避およびジャンプするラットを放棄する)をスクリーニングする。スクリーニングされた50匹の動物の体重を測定し、動物を各群に10匹ずつランダムに五つの群に分け、それぞれ生理食塩水対照群(ビヒクル、空白対照)、S-デュロキセチン群(その塩酸塩を実験に使用する)、ガバペンチン群、比較化合物C群(比較例1で調製された化合物C1であり、その塩酸塩を実験に使用する)および化合物I-1群(実施例2で調製された化合物I-1をであり、その塩酸塩を実験に使用する)に分ける。被験化合物は、投与当日に新たに調製する。用意した溶媒として0.9%のNaCl生理食塩水溶液を配置し、必要量の生理食塩水に適量の被験化合物を加え、完全に懸濁させて、濃度が1mg/mLである薬物を調製する。ラットの投与量の標準は、10mL/kgであり、腹腔内投与し、動物は、投与前に絶食絶水させる必要ない。S-デュロキセチン、化合物C、化合物I-1の投与量は、30mg/kgであり、ガバペンチンの投与量は、100mg/kgである。投与後、潜伏時間をそれぞれ0.5時間、1時間および2時間測定される。動物がホットプレートでやけどするのを防ぐために、最大の潜伏時間を30秒に設定する。最大可能鎮痛効果%(maximum possible effect、MPE)を使用して、各化合物の鎮痛効果を評価し、即ち、MPE%=[(Post drug latency-baseline latency)/(30-baseline latency)] ×100である。異なる時点でのMPE%を統計する。MPE%の数値が大きいほど、化合物の鎮痛薬物効果強くなる。
【0198】
実験結果
ラットホットプレート疼痛モデルにおける化合物の鎮痛活性の結果を表4および図4に示される。表4および図4の結果から、生理食塩水対照群と比較して、本発明の化合物I-1は、30mg/kgの投与量で非常に強い鎮痛效果を示し、有意な差を有することが分かる。陽性対照群と比較して、本発明の化合物I-1の鎮痛活性は、2時間以内に100mg/kgのガバペンチンよりも顕著に優れ、30mg/kgのS-デュロキセチンおよび比較化合物Cの鎮痛效果よりも優れる。ラットホットプレート疼痛モデルは、急性疼痛に対する薬物の有効性を評価するための典型的なモデルであるため、本発明の化合物I-1は、急性疼痛に対して優れた治療効果を有する。
【0199】
【表5】
【0200】
実施例18
マウス酢酸身もだえ痛モデルを介しての内臓痛および炎症疼痛に対する化合物I-1の治療効果の観察
実験方法
22~25gの雄のICRマウスを取り、投与前に2時間絶食し、絶水しない。すべてのICRマウスの体重を測定し、ランダムに群に分け、各群の動物数は、10匹である。陰性対照群は、生理食塩水群(ビヒクル、空白対照)であり、陽性対照群は、10mg/kgの投与量のインドメタシン(非ステロイド性抗炎症薬)、10mg/kgのアニソダミン(臨床的に鎮痛活性を有する鎮痙薬)、10mg/kgの投与量のS-デュロキセチン(その塩酸塩を実験に使用する)および20mg/kgの投与量のS-デュロキセチン(その塩酸塩を実験に使用する)である。化合物I-1(実施例2で調製された化合物I-1およびその塩酸塩を実験に使用し、投与量は、5mg/kgおよび10mg/kgに設定する)を試験する。マウスの体重に応じて、経口方法で投与する。投与1時間後、1.5%酢酸溶液(0.1ml/10g)を腹腔内に注射し、その後の30分以内に各群のマウスの内臓痛の回数を観察し、マウスに腹部のくぼみ、体幹と後ろ脚の伸びおよび臀部の上りを1回として記録し、最後に30分以内に上記現象の回数を統計する。投与後、マウスに観察される内臓痛の回数が少ないほど、化合物の鎮痛効力がより強いことを示す。
【0201】
実験結果
マウス酢酸身もだえ痛モデルの試験は、図5に示され、図5から、本発明の化合物I-1(5mg/kgおよび10mg/kg)は、単回経口投与で酢酸による引き起こされるマウス身もだえの反応回数を有意に減少させ、生理食塩水群(ビヒクル、空白対照)(49回)に比較して、有意な差があることが分かる。5mg/kgの投与量の化合物I-1において、マウス内臓痛の回数は、19回であり、生理食塩水対照群の49回の50%より少なく、このモデルにおける化合物I-1の半分の有效投与量(ED50)は、5mg/kg未満である。10mg/kgの投与量での化合物I-1の鎮痛效果(16回)は、同じ投与量での陽性薬であるインドメタシン(28回)、アニソダミン(27回)およびS-デュロキセチン(27回)の鎮痛効果より優れ、5mg/kgの投与量での化合物I-1の鎮痛效果(19回)は、20mg/kgのS-デュロキセチンの鎮痛效果(21回)と同様である。この実験によると、マウス酢酸身もだえ痛モデルにおいて、本発明の化合物I-1の鎮痛活性は、陽性対照薬物より有意に優れる。マウス酢酸身もだえ痛モデルは、内臓痛および炎症疼痛の治療における薬物の効力を評価するための典型的なモデルであり、従って、本発明の化合物I-1は、内臓痛および炎症疼痛に対して、優れた治療效果を有する。
【0202】
実施例19
ラットSNLモデルを介しての神経痛に対する化合物I-1の治療効果の観察
実験方法
1.手術
体重が150g~180gのSPFグレードの雄のSDラットを選択して手術する。手術中は、無菌操作で行う。動物をペントバルビタールナトリウム(50mg/kg、腹腔内注射)で麻酔する。動物の腰部位の手術エリアを剃り、ヨードフォアと70%のエタノールとで皮膚を3回消毒する。皮膚が乾いたら、手術を開始する。メスを使用して動物の腰部位の仙骨の後ろを縦に切り、左傍脊柱筋を暴露し、ストレッチャーを使用して筋肉組織を分離して脊椎を暴露する。左脊髄神経L5とL6とを分離し、6~0の絹糸を結紮し、傷口を縫合する。手術後、動物を電気毛布上に置き、脱水を防ぐために5mLの生理食塩水を皮下注射する。動物が完全に目覚めたら(自由に動き回る)、動物を籠に戻す。
【0203】
2.群化および機械的痛覚過敏試験
手術後、動物を実験環境に15分/日で三日間適応させる。投与1日前に、ラットに対して機械的痛覚過敏のベースライン試験を行い、機械的痛覚過敏を示さなかった動物(足の引き抜き閾値が5gを超える)を排除し、ランダムに一つの対照群および三つの実験群に分ける。
【0204】
投与
動物の体重を測定し、投与量で計算し、三つの実験群には、それぞれ100mg/kgのガバペンチン、10mg/kgのS-デュロキセチン(その塩酸塩を実験に使用する)および10mg/kgの化合物I-1(実施例2で調製された化合物I-1、その塩酸塩を実験に使用する)を経口投与し、対照群には、同量の生理食塩水を経口投与する。投与後、機械的痛覚過敏試験を行う。ラットを個別にプレキシガラスボックスに入れ、ボックスの底部は、ラットの足を試験できるようにするためのメッシュである。試験前に、ラットを15分間適応させる。適応が完了した後、試験繊維を使用してラットの左足の足裏の中心部位を試験する。試験繊維は、3.61(0.4g)、3.84(0.6g)、4.08(1g)、4.31(2g)、4.56(4g)、4.74(6g)、4.93(8g)および5.18(15g)の八つの試験強度を含む。試験時に、試験繊維を皮膚に対して垂直に押し、力を加えて繊維を6~8秒間曲げ、毎回の試験の間隔は、5秒である。試験時に、動物の急速な足の引き抜きは、疼痛反応と記録する。試験繊維が動物の皮膚から離れるとき動物の足の引き抜きも、疼痛反応と記録する。動物が動いたり歩いたりした場合、疼痛反応と記録されなく、試験を繰り返す必要がある。試験時に、まず4.31(2g)を使用し、動物に疼痛反応がある場合、次の試験でより低い強度の試験繊維を使用し、動物に疼痛反応がない場合、次の試験でより高い強度の試験繊維を使用する。試験繊維の最大強度は、5.18(15g)である。
【0205】
機械的痛覚過敏は、ラットの行動学試験において足の引き抜き閾値(PWT)として表され、以下の式に従って計算される。
50%反応値(g)=(10(Xf+kδ))/10000
Xf=試験で使用される最終試験繊維値
k=テーブル値
δ=平均差
Excelソフトウェアを使用してデータを収集し、Prism 6.01(Graph pad software、Inc.)ソフトウェアを使用してデータを分析する。足の引き抜き閾値(PWT)が大きいほど、化合物の鎮痛効力がより強いことを示す。
【0206】
実験結果
ラットSNLモデルにおける鎮痛活性の結果は、表5および図6に示される。表5および図6の結果ら、生理食塩水の対照群と比較して、本発明の化合物I-1は、10mg/kgの投与量で非常に強力な鎮痛效果を示し、有意な差があることが分かる。陽性対照群と比較して、本発明の化合物I-1の鎮痛活性は、投与1時間後の100mg/kgのガバペンチンおよび10mg/kgのS-デュロキセチンの鎮痛效果より優れる。ラットSNLモデルは、神経痛の治療における薬物の有効性を評価するための典型的なモデルであり、従って、本発明の化合物I-1は、神経痛に対して優れた治療效果を有する。
【0207】
【表6】
【0208】
実施例20
本発明の式I-1の化合物の塩酸塩Aの調製およびその特性化。
XRPD:X線粉末回折、DSC:示差走査熱量測定、TGA:熱重量分析、DVS:動的水分吸着、
X線粉末回折分析方法は、次のとおりである。PANalyticalX線粉末回折分析装置、動作電圧:40kV、動作電流:40mA、Cu標的を使用して、X線粉末回折パターンを取得する。
示差走査熱量測定(DSC)分析:機器は、DSC Q2000であり、スキャン速度:10℃/分であり、保護ガスは、窒素ガスである。
【0209】
熱重量分析(TGA):機器は、TGA Q500であり、スキャン速度:10℃/分であり、保護ガスは、窒素ガスである。
式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aの調製方法:
実施例2で調製された0.73kgの式I-1の化合物の遊離塩基を秤量し、11Lの酢酸エチル溶液に加え、攪拌し、氷水浴で5~15℃に冷却し、37%の濃塩酸をゆっくりと滴加し、システムのpHを7に調節し、5分間攪拌しながら反応させ、固体が析出され、ろ過し、フィルターケーキを酢酸エチルで洗浄し、フィルターケーキをオーブン(40~45℃)に入れて一定重量まで乾燥させて、0.45kgの式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aを得、収率は、54.70%である。
【0210】
式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aの同定
式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態AのX線粉末回折データは、表6に示されるようであり、XRPDパターンは、図7に示されるようであり、10.003、11.171、15.987、16.734、17.092、18.173、18.849、20.681、21.156、21.649、22.084、22.794、23.761、25.298、25.967、26.640、27.273、28.099、28.615、28.813、29.501、30.118、30.513、32.522、33.274、34.081、35.815、37.553、40.018、42.927および44.129等の角度2θで表される特性ピークを有する。
【0211】
【表7】
【0212】

塩酸塩結晶形態Aの示差走査熱量測定(DSC)チャートは、基本的に図8に示されるようであり、142.30℃に加熱されるときに吸収ピークが示し始める。
塩酸塩結晶形態Aの熱重量分析(TGA)チャートは、基本的に図9に示されるようであり、168.01℃に加熱されるときに約0.9827%の重量損失を有する。

式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aの特性に関する観察
(1)式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aの吸湿性実験:
動的水分吸着(DVS)装置を使用して、その吸湿性を試験紙、式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aは、25℃/80RH条件下で重量変化が0.2%未満であり、いずれも吸湿性がなく、優れた高湿度安定性を有することにより、過酷な乾燥条件下での保管および輸送が不要であるため、保管および輸送コストを削減することができる(中国薬典2015年版(薬物吸湿性試験の指導原則))。

(2)式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aの安定性に関する研究:
約10mgの式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aを秤量してHPLCバイアルに加え、バイアルの口をパラフィルムで密閉し、フィルムに10個の穴を開け、バイアルを25℃/60%RHおよび40℃/75%のRH環境に4週間置き、それぞれ第1週および第4週にサンプルを採集し、サンプルの純度(HPLC分析を使用する)および結晶形態(X線粉末回折分析による分析)を調査し、結果は、表7に示されるようである。表7から、式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態A放は、1週間および4週間放置した後、HPLC(高速液体クロマトグラフィー法)純度の有意な低下および結晶形態の変化はないことが分かり、式I-1の化合物の塩酸塩結晶形態Aは、良好な熱的等の物理的および化学的安定性を有することを示す。
【0213】
【表8】
【0214】
実施例21
ラットの術後疼痛モデルを介しての術後疼痛に対する化合物I-1の治療効果の観察
【0215】
実験方法
1.薬物の調製
化合物I-1注射液:実施例2で調製された36.13mgの化合物I-1を秤量し、3.140mlの生理食塩水を加え、完全に混合されるまでボルテックスする。
ブピバカイン(Bupivacaine)注射液:上海朝暉薬業株式会社から購入する。

被験化合物I-1の溶媒は、生理食塩水であり、投与量は、10mg/kgであり、投与方法は、筋肉注射である。36.13mgの化合物I-1を秤量して、3.140mlの生理食塩水を加え、完全に混合するまでボルテックスする。実験で設定された参照化合物は、ブピバカイン注射液であり、上海朝暉薬業株式会社から購入し、投与量は、10mg/kgであり、投与方法は、筋肉注射である。
【0216】
2.手術
手術中に無菌操作を行い、手術器具(ハサミ、ピンセット、メス、手術用綿、縫合糸)は、手術前に滅菌される。ペントバルビタールナトリウム(50mg/kg、腹腔内注射)を使用してラットを麻酔し、ラットのつま先を絞って、手術前に動物が完全に麻酔されたことを確認する。動物の目に目軟膏を塗布して、動物の角膜が乾燥しないように防ぐ。ヨードフォアおよび70%エタノールを使用して、左後足の裏の手術部位の皮膚を3回消毒し、皮膚が乾いたら手術を開始する。踵からの0.5cmから初めて、つま先に向かって縦方向に約1cmの長さの切開を実施し、皮膚を切開した後、短趾屈筋を持ち上げて縦方向の鈍的外傷を引き起こし、押して出血を止めた後、傷口を縫合する。手術器具を洗浄し、ホットビーズ滅菌器で滅菌する。手術後、電気毛布の上に動物を置き、脱水を防ぐために5mlの生理食塩水を皮下注射する。動物が完全に目覚めたら(自由に動き回ることができる)、動物をケージに戻す。
【0217】
3.群化および投与
手術の24時間後、ラットに対して機械的痛覚過敏のベースライン試験を行い、機械的痛覚過敏(5gを超えるPWT)を示さなかった動物を排除し、PWTに従ってランダムに群化する。実験は、三つの群に分け、それぞれモデル対照群(生理食塩水群、生理食塩水の胃内投与)、ブピバカイン群(ブピバカイン筋肉内注射の投与量は、10mg/kgである)および化合物I-1群(化合物I-1の筋肉内注射の投与量は、10mg/kgである)。各群のラットは、投与の1時間後および2時間後に機械的痛覚過敏について試験する。
【0218】
4.機械的痛覚過敏試験
ラットの足を試験できることを確認するために、ボックスの底にグリッドが付いた有機ガラスボックスにラットだけを置く。ラットは、試験前に15分間順応する。順応が完了した後、試験線維を使用して、ラットの左後足の中心を試験する。試験線維は、3.61(0.4g)、3.84(0.6g)、4.08(1g)、4.31(2g)、4.56(4g)、4.74(6g)、4.93(8g)および5.18(15g)等の8個の試験強度を含む。試験中に、試験線維を皮膚に対して垂直に押し、力を加えて線維を6~8秒環曲げ、各試験間隔は、5秒である。試験中に、動物の足の急速な引き抜きは、疼痛反応として記録される。試験線維が動物の皮膚を離れる時の足の引っ込めも、疼痛反応として記録される。動物が動いたり歩いたりした場合、疼痛反応と記録されず、試験を繰り返す必要がある。試験中に、最初に4.31(2g)を使用し、動物に疼痛反応がある場合、次の試験で強度が低い試験線維を使用し、動物に疼痛反応がない場合、次の試験のためにより強力な試験線維を使用する。試験線維の最大強度は、5.18(15g)である。試験結果は、表に記録され、疼痛反応があるのをxと記録し、疼痛反応がないのをoと記録する。
【0219】
【表9】
【0220】
§機械的痛覚過敏は、ラットの行動試験で離脱閾値(PWT)として表され、次の式に従って計算される。
50%反応値(g)=(10(Xf+k))/10000
Xf=試験中に使用される最終試験線維値
k=テーブル値(Chaplan et al.1994、page 62)
d=平均鎖
【0221】
5、データの収集および分析
Excelソフトウェアを使用してデータを収集する。Prism 6.01(Graph padsoftware、Inc.)ソフトウェアを使用して、データ(二元配置分散分析およびボンフェローニ(Bonferroni)多重比較検定)を分析する。
【0222】
実験結果
ラットの術後疼痛モデルにおける化合物I-1の鎮痛活性の結果は、表8および図10に示されるようである。表8および図10の結果から、生理食塩水対照群と比較して、10mg/kgの投与量下で、本発明の化合物I-1は、投与後1時間および2時間で非常に強い鎮痛効果を示し、有意差があることが分かる。陽性薬物ブピバカインと比較して、ブピバカインは、投与後1時間で強い鎮痛効果を示すが、投与後2時間では有意な鎮痛効果はなく、化合物I-1が術後疼痛モデルにおいてより長い鎮痛効果を有することを示唆する。ラットの術後疼痛モデルは、術後疼痛の治療における薬物の有効性を評価するための古典的なモデルであり、従って、本発明の化合物I-1は、術後疼痛に対して優れた治療効果を有する。
【0223】
【表10】
【0224】

本発明で言及されたすべての文書は、あたかも各文書が個別に参照として引用されたかのように、本出願における参照として引用される。さらに、本発明の上記教示内容を読んだ後、当業者は本発明に様々な変更または修正を加えることができ、これらの同等の形態もまた添付の本出願の特許請求の範囲によって定義される範囲内にあることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10