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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】藻類増殖制御装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20240202BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240202BHJP
   C12M 1/04 20060101ALI20240202BHJP
   C12N 1/12 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
C12M1/00 E
C12M1/04
C12N1/12 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022187005
(22)【出願日】2022-11-24
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】517357826
【氏名又は名称】株式会社シェルタージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196106
【弁理士】
【氏名又は名称】杉田 一直
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】小口 美津夫
(72)【発明者】
【氏名】角田 隆志
【審査官】加藤 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-305703(JP,A)
【文献】特開平7-31466(JP,A)
【文献】特開平5-305800(JP,A)
【文献】特開2008-283946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
C12N 1/
A01K 63/
B44C 5/
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
藻類培養液が貯留される培養容器と、前記培養容器に装着される外気導入ノズルと、前記培養容器に向かって光を照射する光源装置と、を備え、前記光は、前記培養容器を透過して視認することができ、前記外気導入ノズルから前記藻類培養液に吹き込まれる外気は、前記藻類培養液の中を上昇する過程で、前記藻類培養液に存する藻類の光合成の効果によって、二酸化炭素が削減されるとともに酸素に変換されて、前記培養容器に設けられた開口部から排出される二酸化炭素削減インテリアにおける、前記藻類培養液に存する藻類の増殖を制御する藻類増殖制御装置であって、
前記藻類培養液のpH値を測定するpHセンサーと、
前記培養容器から排出される排出気体の酸素濃度を測定する酸素濃度センサーと、
前記藻類培養液のpH値を低減制御するためのpH低減装置と、を備え、
前記pHセンサーの測定値が第1閾値を超えるとともに、前記酸素濃度センサーの測定値が第1閾濃度を超えたと判定されたときpH低減制御を実行し、前記pHセンサーの測定値が前記第1閾値よりも低いpH値である第2閾値を下回ると判定されたとき前記pH低減制御の実行を停止することを特徴とする藻類増殖制御装置。
【請求項2】
前記pH低減装置は、前記藻類培養液を回収する回収容器と、前記藻類培養液のpH値を低減させるための補充液を前記藻類培養液に補充する補充液ボトルと、を有することを特徴とする請求項1に記載の藻類増殖制御装置。
【請求項3】
前記培養容器に充填される前記藻類培養液を備え、
前記補充液のpH値は、前記藻類培養液の初期pH値よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の藻類増殖制御装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻類の光合成の作用によって外気の二酸化炭素を削減するとともに、インテリアとして使用できる二酸化炭素削減インテリアの藻類の増殖を制御する藻類増殖制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明者は、特許文献1で、藻類の一種であるスピルリナを利用して、効果的に空気浄化が行え、かつ良好な外観を得ることができる空気浄化装置を提供している。
【0003】
発明者が以前に提供した空気浄化装置は、スピルリナ、およびスピルリナの培養液を循環する循環系の一部を陳列用容器とし、この循環系に外気を取り込む取込み口、および酸素を分離する酸素分離装置を設けている。陳列用容器内には発光体が挿入されている。取込み口から取り込まれた外気は、当該外気中に含まれる二酸化炭素が酸素に変換されると共に汚染物質が培養液中に溶解する。従って、酸素分離装置から分離される気体は、汚染物質が除去され且つ二酸化炭素が酸素に変換されたものとなる。以前に提案した、空気浄化装置は、空気浄化作用ばかりでなく、発光体が陳列用容器内で発光することにより見た目もきれいなものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-206434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、発明はそれがなされたからといって終わりではなく、よりよいものを求めるために改良がくわえられるべきものである。
【0006】
例えば、光合成の促進に伴ってスピルリナは増殖し続けて、培養液のpH値は上昇する。培養液のpH値の上昇は、スピルリナの増殖に必要な栄養成分の不足を意味し、スピルリナの増殖スピードは次第に低下する。すなわちスピルリナの増殖のコントロールは極めて困難であった。
【0007】
本発明はこれらの問題点に着目してなされたものであり、二酸化炭素削減インテリアの藻類の増殖を制御する藻類増殖制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための発明は、藻類培養液が貯留される培養容器と、培養容器に装着される外気導入ノズルと、培養容器に向かって光を照射する光源装置と、を備え、培養容器に向かって照射される光は、培養容器を透過して視認することができ、外気導入ノズルから藻類培養液に吹き込まれる外気は、藻類培養液の中を上昇する過程で、藻類培養液に存する藻類の光合成の効果によって、二酸化炭素が削減されるとともに酸素に変換されて、培養容器に設けられた開口部から排出される二酸化炭素削減インテリアにおける、藻類培養液に存する藻類の増殖を制御する藻類増殖制御装置であって、藻類培養液のpH値を測定するpHセンサーと、培養容器から排出される排出気体の酸素濃度を測定する酸素濃度センサーと、藻類培養液のpH値を低減制御するためのpH低減装置と、を備え、pHセンサーの測定値が第1閾値を超えるとともに、酸素濃度センサーの測定値が第1閾濃度を超えたと判定されたきpH低減制御を実行し、pHセンサーの測定値が第1閾値よりも低いpH値である第2閾値を下回ると判定されたときpH低減制御の実行を停止することを特徴とする。
【0009】
藻類培養液に存する藻類は、アルカリ性の溶液で増殖が促進される種であり、具体的にはスピルリナが例示される。
【0010】
この構成によれば、pHセンサーの測定値が第1閾値を超えるとともに、酸素濃度センサーの測定値が第1閾濃度を超えたと判定されるときpH低減制御を実行するので、藻類培養液のpH値の上昇を抑制できる。これにより、藻類の増殖スピードを抑制できる。さらに、pHセンサーの測定値が第1閾値よりも低いpH濃度である第2閾値を下回るときpH低減制御の実行を停止するので、藻類の増殖スピードの過度な抑制を防止できる。
【0011】
好ましくは、pH低減装置は、藻類培養液を回収する回収容器と、藻類培養液のpHを低減させるための補充液を藻類培養液に補充する補充液ボトルとを有することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、pH低減装置は、藻類培養液を回収する回収容器と、藻類培養液のpHを低減させるための補充液を藻類培養液に補充する補充液ボトルとを有するので、藻類培養液のpH値を低減するとともに、藻類培養液中の藻類濃度の低減を図ることができる。
【0013】
好ましくは、補充液のpH値は、藻類培養液の初期pH値よりも小さいことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、補充液のpH値は、藻類培養液の初期pH値よりも小さいので、補充液を藻類培養液に補充することで、藻類培養液のpH値の低減効果はより一層大きくなる。
【0015】
好ましくは、pH低減装置は、外気を、外気に比べて高濃度の二酸化炭素を含む高濃度二酸化炭素気体と、外気に比べて低濃度の二酸化炭素を含む低濃度二酸化炭素気体とに分離して、高濃度二酸化炭素気体を、外気導入ノズルを経由して藻類培養液に吹き込むとともに、低濃度二酸化炭素気体を外部に排出することができる二酸化炭素導入装置を有することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、高濃度二酸化炭素気体を藻類培養液に吹き込むことで、藻類培養液のpH値は低下する。また、高濃度二酸化炭素気体は藻類培養液を上昇する過程で、藻類培養液に存する藻類の光合成の効果によって、二酸化炭素が削減されるとともに酸素に変換されて、外部に排出されるとともに、低濃度二酸化炭素気体が外部に放出されるので、外部空気の二酸化炭素濃度を効率的に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態における藻類増殖制御装置のブロック図である。
図2】同、二酸化炭素削減インテリアの部分正面断面図である。
図3】光源装置の平面断面図である。
図4】藻類増殖抑制装置における制御装置の構成を表す図である。
図5】藻類増殖制御の処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1~5を参照して本発明の二酸化炭素削減インテリア1の実施形態を説明したうえで、藻類増殖制御装置2について詳述する。
【0019】
図1に示す通り、藻類培養液L1が貯留される培養容器10は、藻類増殖制御装置2に接続している。藻類増殖制御装置2は、pHセンサーSE1、酸素濃度センサーSE2、pH低減装置3などを有している。pH低減装置3は、第1制御装置30、および第2制御装置40の二つの装置で構成されており、コネクタC1、C2、C3を介して培養容器10に着脱可能に接続されている。
【0020】
本実施形態では、藻類培養液L1中の、藻類はスピルリナが例示される。また、スピルリナを培養するための培養液の成分として、例えば、表1に示すものが例示されるが、これに限られるものではない。
【0021】
【表1】
【0022】
表中のA5-solutionについては、ホウ酸から酸化モリブデンまでの成分を表に示す含有量で含むA5-solutionが、藻類培養液1L中に1mL含まれることを意味する。
【0023】
表1で例示する培養液はアルカリ性であるため、硝酸塩や硫酸塩などの空気中の酸性汚染物質を吸収し易く、汚染物質の除去に効果的である。スピルリナはアルカリ性の培養液で好適に培養されるため、酸性の液中で増殖する他の藻類は生育し難い環境となる。そのため、他の藻類の混入を回避できる。
【0024】
光源装置20から発せられる光は、培養容器10、藻類培養液L1を通過して視認できる構成となっている。藻類培養液L1に照射されることで、藻類の光合成が促進される。また、緑色に発光する藻類培養液L1を視認することで、リラックス効果を高めることができる。
【0025】
第1制御装置30は、回収容器31、補充液ボトル32、を有しており、藻類培養液L1のpH値を測定するpHセンサーSE1が取付けられている。また、藻類培養液L1の温度を所定範囲に維持するためのヒーター(図示略)を設けることが好ましい。これにより、藻類の活性を維持するとともに、適正な生育環境を形成し得る。
【0026】
回収容器31は、所定値を上回るpHの藻類培養液L1を回収するための容器であり、切替バルブV1を介して培養容器10に接続している。切替バルブV1は電磁式の三方弁である。
【0027】
循環ポンプP1を動作すると、培養容器10に貯留されている藻類培養液L1は、貫通管50に取込まれ、コネクタC1、循環ポンプP1、切替バルブV1、コネクタC2を経由して培養液循環ノズル35から藻類培養液L1に噴射される。噴射方向を適宜に選択(例えば周方向に沿って噴射する)することで、培養容器10の中の藻類培養液L1は、渦巻き状の流れが形成される。
【0028】
補充液ボトル32は、補充液L2が貯留されている。補充液L2のpH値は、初期状態の藻類培養液L1のpH値よりも小さいことが好ましい。補充液L2は、送液ポンプP3によって培養容器10に送り込まれる。また、第1制御装置30を循環する藻類培養液L1が補充液ボトル32に逆流しないように逆止弁B1が設けられている。
【0029】
本実施形態では、補充液ボトル32の容量として2リットル、回収容器31の容量として2リットルが例示されるが、これに限定されるわけではない。
【0030】
第2制御装置40は、先端部に外気導入ノズル41が接続している。エアポンプP2を動作することで、エアフィルター42を通過した外気EAは、外気導入ノズル41を経由して、微細な渦巻き状の気泡となって藻類培養液L1に吹き込まれ、拡散し、上昇する。気泡は渦巻き状の流れに沿って上昇する。これにより、気泡が藻類培養液L1に滞留する時間をより長くすることができる。
【0031】
二酸化炭素導入装置80は、外気EAに比べて高濃度の二酸化炭素を含む高濃度二酸化炭素気体A1(以後、高濃度気体A1と呼ぶ。)と、外気EAに比べて低濃度の二酸化炭素を含む低濃度二酸化炭素気体A2(以後、低濃度気体A2と呼ぶ。)に分離して、高濃度気体A1を、エアフィルター42に送り込むとともに、低濃度気体A2を外部に排出する装置である。
【0032】
コンプレッサー81を動作したとき、二酸化炭素分離セラミック膜82に送り込まれた外気EAは、二酸化炭素分離セラミック膜82を通過する過程で、高濃度気体A1と、低濃度気体A2に分離される。低濃度気体A2は外部に放出するとともに、高濃度気体A1は藻類培養液L1に送り込まれる。
【0033】
また、コンプレッサー81を動作しないときは、外気切替バルブV2を切り替えて、取込口43から取込んだ外気EAを外気導入ノズル41に送り込むことができる。
【0034】
図2に示す通り、光源装置20、培養容器10はそれぞれ別々に台座60と嵌合している。培養容器10は、内壁11、外壁12、底板13および上板14を有しており、上端部に上方に向かって開口する開口部15aが設けられている。下端部は、台座60にスライドできる状態で貫入している。内壁11および外壁12は、透明の円筒であり、外壁12は内壁11の外部領域に同心に配置されている。内壁11、外壁12、および底板13で画定される空間に藻類培養液L1が貯留されている。また、上端部は、開口部15aを塞ぐための蓋15が取付けられている。蓋15は、Oリング16を介して培養容器10に着脱可能に接続している。培養容器10の容量として6~8リットルが例示されるが限定されるわけではない。
【0035】
台座60に収容空間60aが設けられ、第1制御装置30(図1参照)、および第2制御装置40(図1参照)が収容されている。すなわち、第1制御装置30、および第2制御装置40は、外部から視認できない構成となっている。これにより、台座60、培養容器10、光源装置20などの外形を適宜に選択することで、二酸化炭素削減インテリア1のデザインバリエーションを決定づけることができる。
【0036】
蓋15は、排出口17が設けられている。外気導入ノズル41から拡散される外気EAは、藻類培養液L1を上昇し、排出口17を経由して外部空間に排出される。排出口17には、排出される気体の酸素濃度を測定する酸素濃度センサーSE2(図1参照)が取付けられている。酸素濃度の計測値は、表示スクリーン(図示略)に表示される。
【0037】
光源装置20は、台座60にスライドできる状態で貫入しており、内部空間10aに配置されている。また、光源装置20は台座60に嵌合接着で固定されていてもよい。ここで内部空間10aとは、台座60、内壁11、および上板14で画定される空間であって、藻類培養液L1は充填されていない空間である。光源装置20から発せられる光は内壁11、藻類培養液L1、および外壁12を透過することで、緑の発光体として視認でき、見た目も美しいものとなる。なお、視認できる緑色は藻類の色であり、緑色は癒し、再生、回復、健康、リラックス、安心という心理効果のある色であるため、心地よい美観を得ることができる。
【0038】
光源装置20は、中空筒21と光源22を有している。中空筒21は、円筒であり、下端部が台座60に貫入した状態で固定されている。また、取付位置は、内壁11、外壁12と同心となっている。光源22は、中空筒21が延びる方向に沿って延びる8個の帯状のLED光源23で構成されている、LED光源23は、中空筒21の周方向に所定の間隔で取り付けられている(図3参照)。LED光源23の個数として、8個が例示されるが、これに限定されるわけではない。
【0039】
貫通管50は、中空筒21の内部を中空筒21が延びる方向に貫通する断面が円環状の管であり、一端は内壁11の上端部に接続して、培養容器10と構造的に一体化している。また、他端はコネクタC1を介して、第1制御装置30に接続している。貫通管50が中空筒21の内部に配置されることで、貫通管50が視認されることはない。これにより、藻類のみの色が視認できる状態を実現できる。
【0040】
循環ポンプP1を動作することで、培養容器10に貯留される藻類培養液L1は、貫通管50を通過し、培養液循環ノズル35を経由して、再び培養容器10に循環する。培養液循環ノズル35は、周方向の水流を発生できるように、周方向に噴射できる角度で底板13に取り付けられている。培養液循環ノズル35から還流される藻類培養液L1が周方向に沿って藻類培養液L1に噴出されることで、培養容器10に貯留される藻類培養液L1に渦巻き状の水流が形成される。この渦巻き流によって藻類培養液L1中に含まれる藻類の均質化と、より効果的な二酸化炭素削減を図ることができる。
【0041】
図1を参照して、本実施形態における二酸化炭素削減インテリア1の外気EAに含まれる二酸化炭素の削減メカニズムを説明する。
【0042】
第1制御装置30を動作することで、藻類培養液L1は培養容器10と第1制御装置30との間を循環する。このとき、培養液循環ノズル35から噴出する藻類培養液L1によって、培養容器10に存する藻類培養液L1は、渦巻き状の水流が形成される。
【0043】
エアポンプP2を動作することで、取込口43から取込まれた外気EAは、エアフィルター42を通過して外気導入ノズル41に圧送される。外気EAがエアフィルター42を通過する過程で、外気EAに含まれるウイルス、花粉等の微細な物質が除去される。すなわち、外気導入ノズル41に圧送される外気EAはウイルス、花粉等の微細な物質が除去されたクリーンなものとなる。
【0044】
圧送された外気EAは、外気導入ノズル41によって気泡となった状態で藻類培養液L1に拡散される。藻類培養液L1に拡散された気泡は、渦巻き状に拡散した状態で、藻類培養液L1の中を上昇する。気泡が渦巻きを描いて上昇していく様子は、外観的に美しいものとなり、装飾効果をより一層高めることができる。
【0045】
藻類培養液L1は、光源装置20から光が照射されている。光の照射によって、藻類の光合成は促進され、気泡に含まれる二酸化炭素は、藻類培養液L1の中を上昇する過程で、藻類に取込まれ、同時に藻類から酸素が発生する。酸素リッチとなった気泡は、排出口17を経由して排出気体A3として外部に放出される。同時に、気泡に含まれる硝酸塩や硫酸塩などの酸性汚染物質は、藻類培養液L1に吸収される。
【0046】
排出口17から排出された排出気体A3の気体中の酸素は、人工的に発生したものではなく、藻類の光合成によって発生したものであることから、森林浴のような良好な環境を形成する一助になり得る。さらに、緑色に発光する藻類培養液L1の中を気泡が渦巻き状に上昇する光景を視認することによって、リラックス効果を得ることができる。
【0047】
光合成が促進され続けると、藻類は増殖する。藻類の増殖によって、藻類培養液L1のpH値は上昇し、pH値の上昇に伴って藻類の増殖はさらに活発となる。藻類が増殖し続けると光源装置20から発せられる光の視認性が悪化し、藻類培養液L1の入れ替え作業が必要となる。藻類培養液L1を頻繁に入れ替えることは使用者に大きな負担を負わせることとなる。このような観点から、所定期間にわたって良好な視認性を確保する目的で、藻類培養液L1のpH値の上昇を抑制するpH低減装置3を装着することも、維持管理上の対策の一つとして考えられる。なお、本実施形態で想定する所定期間は、使用者が藻類培養液L1の入れ替え作業を負担に感じない期間、例えば1か月を想定している。
【0048】
図4は、藻類増殖抑制装置における制御の構成を表している。電子制御ユニット(以下、ECUという。)は、CPU、RAM、ROM、およびI/Oインターフェイス(いずれも図示略)などからなるマイクロコンピューターで構成されている。ECU5には、藻類培養液L1のpH値を検出するpHセンサーSE1、外部空間に放出される気体の酸素濃度を検出する酸素濃度センサーSE2などが接続されており、それらの検出信号が逐次、入力される。ECU5の出力側には、切替バルブV1、送液ポンプP3、コンプレッサー81、外気切替バルブV2などが接続されている。
【0049】
図5は、本実施形態における藻類増殖制御の処理を説明するフローチャートである。本処理はECU5において、継続して繰り返されて実行される。
【0050】
本処理では、ステップ1(「S1」と図示する。以下同じ。)において、酸素濃度センサーSE2で検出された排出気体A3の酸素濃度MOが、第1閾濃度OTHRを超えたか否かを判別するとともに、pHセンサーSE1で検知された藻類培養液のpH値MPが、第1閾値PTHR1を超えたか否かを判別する。具体的には、第1閾濃度OTHRは40~50%であることが好ましい。また、第1閾値PTHR1は、一定要件下(例えば、藻類培養液の温度が所定範囲に維持される環境下)で、藻類の増殖が所定以上に促進しない値、例えば10.5に設定されている。
【0051】
判別結果がYESで、酸素濃度MOが第1閾濃度OTHRを超えたとともに、pH値MPが第1閾値PTHR1を超えた場合は、ステップ2に進む。判別結果がNOの場合は、検出を継続する。
【0052】
pH低減制御が実行されない状況下では、培養容器10に貯留される藻類培養液L1は、貫通管50,流路R1、R2を通過して培養容器10に還流している。また、外気EAは二酸化炭素導入装置80を通過することなく、エアフィルター42を経由して、外気導入ノズル41に吹き込こまれ、藻類培養液L1に噴射される。
【0053】
ステップ2では、pH低減制御を実行する。pH低減制御は、第1制御と、第2制御の二つの制御で構成される。
【0054】
第1制御について説明する。
【0055】
第1制御が実行されると、切替バルブV1が動作して、藻類培養液L1の流通経路が変更される。具体的には、培養容器10に貯留される藻類培養液L1は、貫通管50、流路R1、切替バルブV1、流路R3を経由して回収容器31に貯留される。これにより、培養容器10に貯留される藻類培養液L1の水面高H1は、低下する。
【0056】
レベルセンサーSE3で検知された水面高H1が、一定値以上低下したとき、切替バルブV1を再度、動作して、藻類培養液L1が培養容器10に還流する経路に変更する。同時に、送液ポンプP3を動作して、補充液ボトル32に貯留される補充液L2を培養容器10に送り込む。補充液L2のpH値は、藻類培養液L1の初期pH値よりも小さく設定されている。本実施形態では、藻類培養液L1の初期pH値として8.8~9.2、また補充液L2のpH値として8.5が例示されるが、これに限定されるわけではない。補充液L2を高いpH値となった藻類培養液L1に充填することで、藻類培養液L1のpH値は低下する。なお、藻類培養液L1の回収容器31への回収は、藻類培養液L1を流路R2→流路R3の方向に逆流させて実行してもよい。これにより、回収の効率化を図り得る。また、更なる回収能率の向上を目指して、藻類培養液L1を逆流させるためのポンプを新たに設けてもよい。
【0057】
第2制御について説明する。
【0058】
第2制御が実行されると、コンプレッサー81、外気切替バルブV2が動作する。外気切替バルブV2が動作することで、外気EAは二酸化炭素導入装置80を通過できるようになる。同時に、外気EAが直接に取込まれる経路は閉鎖される。コンプレッサー81の動作によって、外気EAは、二酸化炭素分離セラミック膜82を通過し、その過程で、二酸化炭素が低減された低濃度二酸化炭素気体A2と、二酸化炭素の濃度が高い高濃度二酸化炭素気体A1に分離される。高濃度二酸化炭素気体A1は、外気導入ノズル41から藻類培養液L1に噴射される。また、低濃度二酸化炭素気体A1は、外部に放出される。
【0059】
第1制御、第2制御を継続して実行することで、藻類培養液L1のpH値MPは低減する。pH値MPの低減に伴って、藻類の増殖は抑制される。
【0060】
ステップ3では、pHセンサーSE1で検知された藻類培養液L1のpH値MPが、第2閾値PTHR2を下回ったか否かを判別する。具体的には第2閾値PTHR2は9.0を例示しており、一定要件下、藻類の増殖が所定以下に低下しない値に設定されている。この判別結果がYESで、pH値MPが第2閾値PTHR2を下回る場合は、ステップ4に進み、pH低減制御を停止する。判別結果がNOの場合は、pH低減制御を継続する。
【0061】
本実施形態は例示であり、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で改変できることは勿論である。例えば、本実施形態では、培養容器は、内壁と外壁を有するいわゆるドーナツ形状となっているが、椀形状であってもよい。また、光源装置は内部領域に設けられているが、培養容器の外部領域に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る藻類増殖制御装置は、閉鎖増殖空間において継続的な藻類の光合成が可能となる。そのため、密閉空間を形成する必要がある構造物、例えば核シェルターの内部の空気浄化をする浄化装置としても好適に使用できることから、産業用の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0063】
1 :二酸化炭素削減インテリア
2 :藻類増殖制御装置
3 :pH低減装置
10 :培養容器
15a :開口部
20 :光源装置
30 :第1制御装置
31 :回収容器
32 :補充液ボトル
41 :外気導入ノズル
L1 :藻類培養液
L2 :補充液
EA :外気
A1 :高濃度二酸化炭素気体
A2 :低濃度二酸化炭素気体
A3 :排出気体
SE1 :pHセンサー
SE2 :酸素濃度センサー
PTHR1 :第1閾値
PTHR2 :第2閾値
OTHR :第1閾濃度
MP :pH値
MO :酸素濃度
【要約】      (修正有)
【課題】二酸化炭素削減インテリアの藻類の増殖を制御する藻類増殖制御装置を提供する。
【解決手段】二酸化炭素削減インテリア1における、藻類培養液L1に存する藻類の増殖を制御する藻類増殖制御装置2は、藻類培養液L1のpH値を測定するpHセンサーSE1と、培養容器10から排出される排出気体A3の酸素濃度を測定する酸素濃度センサーSE2と、藻類培養液のpH値を低減制御するためのpH低減装置3を備えている。pHセンサーSE1の測定値が第1閾値を超えるとともに、酸素濃度センサーSE2の測定値が第1閾濃度を超えたと判定されたときpH低減制御を実行し、pHセンサーSE1の測定値が第1閾値よりも低いpH値である第2閾値を下回ると判定されたときpH低減制御の実行を停止する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5