(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】通電鍼システム、通電鍼システムの動作方法及び通電鍼装置
(51)【国際特許分類】
A61H 39/08 20060101AFI20240202BHJP
A61H 39/00 20060101ALI20240202BHJP
A61N 1/04 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
A61H39/08 R
A61H39/00 K
A61N1/04
(21)【出願番号】P 2022209723
(22)【出願日】2022-12-27
(62)【分割の表示】P 2018240658の分割
【原出願日】2018-12-25
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】道関 隆国
(72)【発明者】
【氏名】田中 亜実
(72)【発明者】
【氏名】西川 久
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05094242(US,A)
【文献】特開昭51-148994(JP,A)
【文献】特開昭54-102087(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0071661(KR,A)
【文献】国際公開第2018/083845(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 39/08
A61H 39/00
A61N 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電鍼システムであって、
電力を伝送するための
マイクロ波を空間に放射する送電アンテナを備える通電鍼システム用送電装置と、
通電鍼装置と、
を備え、
前記通電鍼装置は、
前記送電アンテナから放射された前記
マイクロ波を受信する
マイクロ波受電アンテナ、及び、
マイクロ波受電アンテナに接続され
た整流器によって構成された
マイクロ波受電用レクティナと、
身体へ電気刺激を与える第1電極として構成された第1鍼と、
を備え、
前記第1鍼は、前記
マイクロ波から前記レクティナによって変換された電流が流れるように前
記整流器に接続され、
前記通電鍼システム用送電装置は、前記
マイクロ波として、
マイクロ波搬送波を身体へ通電されるパルスによってパルス変調したパルス変調
マイクロ波を送信する
よう構成され、
前記第1鍼は、前記パルス変調
マイクロ波から前記レクティナによって変換されたパルス状の電流が流れるよう構成され
、
前記マイクロ波受電アンテナは、マイクロ波を受信するためのアンテナ長を有するモノポールアンテナ、又は、マイクロ波を受信するためのアンテナ長を有するダイポールアンテナである
通電鍼システム。
【請求項2】
前記マイクロ波受電アンテナは、マイクロ波を受信するためのアンテナ長を有するモノポールアンテナであり、
前記第1鍼は、前記整流器を介して、前記モノポールアンテナの一端側に直列接続されている
請求項1に記載の通電鍼システム。
【請求項3】
前記マイクロ波受電アンテナは、マイクロ波を受信するためのアンテナ長を有するダイポールアンテナであり、
前記ダイポールアンテナは、第1アンテナ素子及び第2アンテナ素子を有し、
前記整流器は、前記第1アンテナ素子と前記第2アンテナ素子との間に設けられている
請求項1に記載の通電鍼システム。
【請求項4】
前記第1鍼の長さは、前記アンテナ長の1/2以下である
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の通電鍼システム。
【請求項5】
前記通電鍼装置は、前記整流器に接続された発光素子を更に備える
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の通電鍼システム。
【請求項6】
請求項1
から請求項5のいずれか1項に記載の通電鍼システムの動作方法であって、
前記受電アンテナによって前記パルス変調
マイクロ波を受信させるために、前記通電鍼システム用送電装置によって、前記パルス変調
マイクロ波を送信する
ことを含む通電鍼システムの動作方法。
【請求項7】
マイクロ波を受信するマイクロ波受電アンテナと、前記マイクロ波受電アンテナに接続された整流器と、を備えるマイクロ波受電用レクティナと、
前記整流器に接続され、身体へ電気刺激を与える第1電極として構成された第1鍼と、
を備え
前記マイクロ波受電アンテナは、マイクロ波を受信するためのアンテナ長を有するモノポールアンテナ、又は、マイクロ波を受信するためのアンテナ長を有するダイポールアンテナである、通電鍼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通電鍼装置、通電鍼システム、及び、通電鍼装置の動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通電鍼では、正負極2対の鍼に対して鍼通電装置からの電力供給線を接続して患部に刺し、電気治療用の電力を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、鍼に通電して電気治療を行うためには鍼に配線が必要であり、その作業が煩雑であるという問題があった。そのため、配線なく電気治療が可能な通電鍼が望まれる。ここで、特許文献1は、空間中の電磁波を受信するアンテナ鍼を有する電磁波治療器を開示している。しかし、特許文献1のアンテナ鍼は、単に、通常の鍼状の部材をアンテナとして利用したものにすぎず、受信した電磁波がほぼ熱に変換され、アンテナ鍼の温度が上昇することによるお灸効果を得るためのものである。したがって、受信した電磁波は、主に熱に変換され、身体への通電にはほとんど用いられないと考えられる。このため、特許文献1の技術では、通電による電気治療機能を期待できない。
【0005】
通電鍼に対する電力線の配線を不要としつつ、通電による電気治療機能を発揮させることが望まれる。
【0006】
ある実施の形態に従うと、通電鍼装置は、受電アンテナと、受電アンテナに接続された整流器と、整流器に接続され、身体へ電気刺激を与える第1電極として構成された第1鍼とを備える。
【0007】
他の実施の形態に従うと、通電鍼システムは、上記の通電鍼装置と、通電装置へ電力をワイヤレスで送信する送電装置と、を備える。
【0008】
他の実施の形態に従うと、通電鍼装置の動作方法は、上記の通電鍼システムの動作方法であって、受電アンテナによって電力を受信させるために、送電装置によって、電力をワイヤレスで送信する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る通電鍼システム(以下、システム)の構成の具体例を示した図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態に係る通電鍼装置の構造の概略図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態に係る通電鍼装置での、電流の流れ方を説明するための図である。
【
図4】
図4は、第2の実施の形態に係る通電鍼装置の構造の概略図である。
【
図5】
図5は、第2の実施の形態に係る通電鍼装置での、電流の流れ方を説明するための図である。
【
図6】
図6は、発明者らによる実験結果のグラフである。
【
図7】
図7は、第2の実施の形態に係る通電鍼装置の構造の概略図である。
【
図8】
図8は、第2の実施の形態に係る通電鍼装置での、電流の流れ方を説明するための図である。
【
図9】
図9は、各実施の形態に係る通電鍼装置の実装例を表した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1.通電鍼装置、通電鍼システム、及び、通電鍼装置の動作方法の概要]
【0011】
(1)本実施の形態に含まれる通電鍼装置は、受電アンテナと、受電アンテナに接続された整流器と、整流器に接続され、身体へ電気刺激を与える第1電極として構成された第1鍼とを備える。
【0012】
整流器は、例えば、ダイオードである。受電アンテナを有することで、通電鍼装置は、送電装置からワイヤレスで電力供給を受けることができる。そのため、通電鍼に対する電力線の配線を不要とすることができる。しかも、受電アンテナと整流器とはいわゆるレクティナとして機能し、受信した高周波を電流に効率良く変換することができる。この結果、通電による電気治療機能を発揮させることができる。
【0013】
(2)好ましくは、受電アンテナは、モノポールアンテナである。この場合、構造を簡素化することができ、通電鍼装置の小型化に寄与する。
【0014】
(3)好ましくは、第1鍼は、整流器におけるアノード端子及びカソード端子のうちのいずれか一方である第1端子に接続され、モノポールアンテナは、アノード端子及びカソード端子のうちの他方である第2端子に接続されている。この場合、第2端子側に接続されたモノポールアンテナによって受信した高周波は、第1端子に接続された第1鍼において、身体に流れる電流として出力される。
【0015】
(4)好ましくは、通電鍼装置は、第1鍼の対向電極を有さず、第1鍼単体によって身体へ電気刺激が与えられるよう構成されている。第1鍼の対向電極を有しないことで、構造を簡素化することができ、通電鍼装置の小型化に寄与する。
【0016】
(5)好ましくは、第1鍼は、整流器におけるアノード端子及びカソード端子のうちのいずれか一方である第1端子に接続され、通電鍼装置は、アノード端子及びカソード端子のうちの他方である第2端子に接続され、第1鍼との間で身体へ電気刺激を与える第2電極として構成された第2鍼をさらに備える。電極間においては電流が流れやすいため、第1電極と第2電極とを有していることで、電極間においてより大きな電気刺激が得られる。
【0017】
(6)好ましくは、受電アンテナは、第2端子に接続されたモノポールアンテナである。この場合、構造を簡素化することができ、通電鍼装置の小型化に寄与する。
【0018】
(7)好ましくは、通電鍼装置は、第2端子と第2鍼との間に設けられた高周波遮断インダクタをさらに備える。この場合、高周波インダクタにより、効率的に通電をすることができる。
【0019】
(8)好ましくは、受電アンテナは、第1アンテナ素子及び第2アンテナ素子を有するダイポールアンテナであり、整流器は、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子との間に設けられている。この場合、電磁波を効率的に受信し、効率的に通電をすることができる。
【0020】
(9)好ましくは、第1鍼は、整流器におけるアノード端子及びカソード端子のうちのいずれか一方である第1端子に接続され、通電鍼装置は、アノード端子及びカソード端子のうちの他方である第2端子に接続され、第1鍼との間で身体へ電気刺激を与える第2電極として構成された第2鍼をさらに備える。これにより、整流器から出力された電流を、第1電極と第2電極との間に流すことができる。
【0021】
(10)好ましくは、通電鍼装置は、整流器に接続された発光素子をさらに備える。この場合、鍼への通電を発光素子による発光により視覚的に確認することができる。
【0022】
(11)好ましくは、第1鍼は、受電アンテナのアンテナ長よりも短い。この場合、第1鍼がアンテナとして機能することを抑制することができる。
【0023】
(12)好ましくは、第2鍼は、受電アンテナのアンテナ長よりも短い。この場合、第2鍼がアンテナとして機能することを抑制することができる。
【0024】
(13)好ましくは、通電鍼装置は、受電アンテナ及び整流器を保持する保持具を更に備え、第1鍼は、保持具から突出するように設けられている。この場合、通電鍼装置の取り扱いが容易となる。
【0025】
(14)本実施の形態に含まれる通電鍼システムは、上記の通電鍼装置と、通電装置へ電力をワイヤレスで送信する送電装置と、を備える。これにより、通電鍼システムに含まれる通電鍼装置は(1)~(13)の通電鍼装置として機能する。そのため、通電鍼装置の動作方法は、(1)~(13)の通電鍼装置と同じ効果を奏する。
【0026】
(15)好ましくは、送電装置は、搬送波を身体へ通電されるパルスによって変調した変調波を送信する。これにより、通電鍼装置を装着した患部に対してパルス状の電気刺激が与えられる。
【0027】
(16)本実施の形態に含まれる通電鍼装置の動作方法は、上記の通電鍼システムの動作方法であって、受電アンテナによって電力を受信させるために、送電装置によって、電力をワイヤレスで送信する。これにより、通電鍼システムに含まれる通電鍼装置は(1)~(13)の通電鍼装置として機能する。そのため、通電鍼装置の動作方法は、(1)~(13)の通電鍼装置と同じ効果を奏する。
【0028】
[2.通電鍼装置、通電鍼システム、及び、通電鍼装置の動作方法の例]
【0029】
[2.1 第1の実施の形態]
【0030】
図1に示された本実施の形態にかかる通電鍼システム(以下、システムと略する)100は、通電鍼装置10と送電装置20とを含む。送電装置20は、通電鍼装置10に対して無線(ワイヤレス)による電力供給を行うことが可能である。これにより、通電鍼に対する電力線の配線を不要とすることができ、配線作業をなくすことができる。また、通電鍼の配置の自由度も向上する。
【0031】
通電鍼装置10は、身体に接触させることで身体へ電気刺激を与えることが可能な通電鍼装置であって、受電アンテナ(以下、アンテナ)11と整流器(レクティファイヤとも呼ばれる)12とを含むレクティナ13、及び、電極である鍼14を備える。通電鍼装置10は、アンテナ11及び整流器12からなるレクティナ13に鍼14が接続された構造を有する。鍼14の身体への接触は、皮下への侵襲及び非侵襲での表皮への接触を含む。整流器12は、例えば、ダイオード12Aである。ダイオード12Aは、高周波用の整流ダイオードであって、例えばSBD(Schottky Barrier Diode)が用いられる。
【0032】
アンテナ11は、送電装置20から放射される、後述のようにパルス状に変調された電磁波(マイクロ波)PWを受信する。放射される電磁波PWは、例えば、2.45GHzのマイクロ波である。整流器(例えばダイオード)12は、電磁波を直流電流に変換し、鍼14に電力を供給する。アンテナ11が受信する電磁波がパルス状であることから、鍼14に供給される電力もパルス状となる。アンテナ11の長さL1は、2.45GHzの電磁波を受信するのに適した長さに設定される。
【0033】
鍼14は、少なくとも第1電極として構成される。後の実施の形態に示されるように、鍼14は、第1電極及び第2電極として構成される2つの鍼を含んでもよい。なお、第1電極及び第2電極は、陽極(正極)と陰極(負極)とからなる電極対の一方ずつを指す。以降の説明では、第1電極に対する第2電極、又は、第2電極に対する第1電極を対向電極とも称する。
【0034】
アンテナ11及び鍼14は、いずれも、アルミや銅などの金属であってよい。また、これらは同一の素材で構成されてもよい。その場合、鍼14の長さL2はアンテナ11の長さL1よりも短い。これにより、鍼14がアンテナとして作用することを抑制することができる。なお、鍼14の長さL2は、好ましくは、アンテナ11の長さL1の1/2以下、さらに好ましくは、1/3以下、さらに好ましくは1/4以下、さらに好ましくは、1/5以下である。
【0035】
送電装置20は、高周波電源21及び送電アンテナ22を備える。高周波電源21は、例えばマグネトロン、半導体発振器であって、電力を伝送するための電磁波を発生させる。
【0036】
送電アンテナ22は、例えばヘリカルアンテナ、ダイポールアンテナであって、高周波電源21で発生した電磁波PWを空間に放射する。放射する電磁波PWは、例えば、2.45GHzのマイクロ波であり、身体へ通電される周期Pのパルスによって変調したパルス波(変調波)である。つまり、送電装置20は、搬送波を身体へ通電されるパルスによって変調した変調波を通電鍼装置10に送信する。なお、上述した送電装置20の構成は一例であって、電磁波による無線給電が可能であれば適宜変更されてもよい。他の例として、放射する電磁波PWは、交流波形で変調した交流変調波であってもよい。
【0037】
図2に示されたように、第1の実施の形態に係る通電鍼装置10Aでは、アンテナ11はモノポールアンテナである。モノポールアンテナを用いることで、通電鍼装置10Aの構造を簡素化することができ、小型化に寄与する。また、通電鍼装置10Aでは、鍼14は、第1電極として構成される第1鍼14-1のみを有し、第2電極として構成される第2鍼は有しない。つまり、通電鍼装置10Aは、第1鍼14-1の対向電極を有さず、第1鍼14-1単体によって身体へ電気刺激が与えられるよう構成されている。第1鍼14-1の対向電極を有しないことでも通電鍼装置10Aの構造を簡素化することができ、小型化に寄与する。
【0038】
第1鍼14-1は、整流器12であるダイオード12Aのアノード端子及びカソード端子のうちのいずれか一方である第1端子T1に接続されている。アンテナ11は、アノード端子及びカソード端子のうちの他方である第2端子T2に接続されている。
図2の例では、第1端子T1はカソード端子、第2端子T2はアノード端子であるが、逆であってもよい。なお、ここでの接続は、端子に直接(他の素子を介在せずに)接続することと、コンデンサなどの他の素子を介在して接続することと、を含む。以降の説明においても、接続は同様の接続を意味する。
【0039】
図3に示されたように、通電鍼装置10Aでは、ダイオード12Aが、アンテナ11で受信した送電装置20から電磁波を電流に変換し、矢印Aの方向に第1鍼14-1に与える。第1鍼14-1が身体に接触しているとき、身体が抵抗Rp1を含む導線及びグランド電極として機能して、電流Iが身体を経て仮想的なグランド電極に流れることができる。
【0040】
図2に示されたように第1端子T1がカソード端子、第2端子T2がアノード端子である場合、
図3に示されたように、通電鍼装置10Aでは、アンテナ11によって受電された電力がダイオード12Aに対して順バイアスである場合に電流Iが矢印Aの方向に流れて第1鍼14-1に与えられ、逆バイアスである場合には第1鍼14-1に電流が流れない。
【0041】
なお、アンテナ11で受信した送電装置20から電磁波PWがパルス変調波である場合、ダイオード12Aによって整流され、第1鍼14-1に供給される電力は、
図1に示されたようなパルス状となる。この場合、第1鍼14-1は身体に接触することで身体へパルス状の電気刺激を与える。身体へパルス状の電気刺激を与えると、身体に対して電気鍼の効果を与えることができる。
【0042】
[2.2 第2の実施の形態]
【0043】
図4に示されたように、第2の実施の形態に係る通電鍼装置10Bでもまた、アンテナ11はモノポールアンテナである。通電鍼装置10Bは、第1鍼14-1と第2鍼14-2とからなる鍼14を有する。第1鍼14-1は、第1電極として構成される。第2鍼14-2は、第1鍼14-1との間で身体へ電気刺激を与える第2電極として構成される。
【0044】
なお、この場合、上記の鍼14の長さL2は、第1鍼14-1の長さも第2鍼14-2の長さも指す。すなわち、第1鍼14-1の長さも第2鍼14-2の長さも、アンテナ11の長さL1よりも短い。これにより、第1鍼14-1と第2鍼14-2とのいずれもがアンテナとして作用することを抑制できる。
【0045】
第1鍼14-1は第1端子T1に接続され、アンテナ11は第2端子T2に接続されている。さらに、通電鍼装置10Bでは、第2端子T2に第2鍼14-2が接続されている。なお、
図4の例でも、第1端子T1はカソード端子、第2端子T2はアノード端子であるが、逆であってもよい。
【0046】
通電鍼装置10Bでは、第2鍼14-2は、第2端子T2にインダクタ(コイル)19を介して接続されている。インダクタ19は、高周波遮断フィルタとして機能する高周波遮断インダクタ19である。言い換えると、通電鍼装置10Bは、第2端子T2と第2鍼14-2との間に設けられた高周波遮断インダクタ19を有する。そのため、
図4に示されたように、通電鍼装置10Bでは、アンテナ11によって受電された電力がダイオード12Aに対して順バイアスである場合、アンテナ11からの電流がインダクタ19側には流れず、カソード端子から第1鍼14-1に与えられる。ダイオード12Aが順バイアスである場合、第1鍼14-1が身体に接触した通電鍼装置10Bの等価回路は、
図3に示す通電鍼装置10Aと等しくなる。この場合、電流Iは第1鍼14-1から身体を経て仮想的なグランド電極に流れることができる。
【0047】
アンテナ11によって受電された電力がダイオード12Aに対して逆バイアスである場合、
図5に示されたように、第2鍼14-2の電位はアノード端子側の電位と等しくなる。この場合、第1鍼14-1が陽極、第2鍼14-2が陰極となる。そのため、第1鍼14-1及び第2鍼14-2の双方が身体に接触される場合、身体が抵抗Rp2を含む導線として機能して、
図5に示されたように、電流Iが身体を経て矢印Bの方向に第1鍼14-1から第2鍼14-2に流れる。
【0048】
通電鍼装置10Bでは、送電装置20から供給される電力がパルス状であることから、鍼14は身体へパルス状の電気刺激を与える。身体へパルス状の電気刺激を与えると、身体に対して電気鍼の効果を与えることができる。なお、通電鍼装置10Bでは、第2端子T2に第2鍼14-2がインダクタ19を介して接続されているため、アンテナ11によって受電された電力がダイオード12Aに対して順バイアスの場合でも逆バイアスの場合でも、鍼14から身体に電流Iを流すことができる。したがって、この場合、通電鍼装置10Aよりもエネルギー効率を向上させることができる。
【0049】
[2.3 実験例]
【0050】
発明者らは、通電鍼装置10Bを用いて、送電装置20からパルス状の電力をワイヤレスで供給した通電鍼装置10Bが模擬的な身体にパルス状の電気刺激を与えることを確認する実験を行った。
【0051】
実験では、身体に模擬した生理食塩水を満たした水槽に第1鍼14-1及び第2鍼14-2を入れ、また、水槽にグランド電極として機能させる金属板も入れた。送電装置20では、2.45GHz帯の電磁波PWで、パルス状の電力をワイヤレスで供給した。電磁波PWは、周期Pが400ms、パルス幅が40msのパルス変調波とした。そして、通電鍼装置10Bに対して送電装置20から電力中に、金属板とカソード端子との間の電位差を、オシロスコープを用いて測定した。この電位差は、グランド電極と第1端子T1との間の電位差に相当する。
【0052】
図6に示されたとおり、実験の結果、得られた波形は、周期Pが400ms、パルス幅が概ね40msである。そのため、通電鍼装置10Bによって、送電装置20からの送電に従って身体へ電気刺激が与えられることが確認された。
【0053】
[2.4 第3の実施の形態]
【0054】
なお、アンテナ11は、モノポールアンテナに限定されずダイポールアンテナであってもよい。
図7に示されたように、第3の実施の形態に係る通電鍼装置10Cでは、アンテナ11は、第1アンテナ素子11-1及び第2アンテナ素子11-2を有するダイポールアンテナである。整流器12であるダイオード12Aは、第1アンテナ素子11-1と第2アンテナ素子11-2との間に設けられている。これにより、電磁波を効率的に受信し、効率的に通電をすることができる。
【0055】
また、
図7に示されたように、通電鍼装置10Cもまた、第1鍼14-1と第2鍼14-2とからなる鍼14を有する。第1鍼14-1は、第1電極として構成される。第2鍼14-2は、第1鍼14-1との間で身体へ電気刺激を与える第2電極として構成される。
【0056】
通電鍼装置10Cにおいて、整流器12である整流回路12Bは、
図7に示されたように、ダイオード12Aに加えて、コンデンサ152と共振回路151とを含む。コンデンサ152と共振回路151とは平滑回路として機能する。つまり、整流器12は、ダイオード12Aと平滑回路と含んでもよい。なお、この整流器12の構成は、第1の実施の形態に係る通電鍼装置10A及び第2の実施の形態に係る通電鍼装置10Bでも同等の構成であってよい。
【0057】
コンデンサ152は、平滑用のコンデンサであって、例えば積層セラミックコンデンサが用いられる。コンデンサ152の容量は例えば0.1μFである。
【0058】
共振回路151は、コイルとコンデンサとが並列に接続された並列LC回路であって、BEF(Band Elimination Filter)として機能する。共振回路151は、コンデンサ152により平滑される電流波形のリップルを低減することが可能である。
【0059】
第1アンテナ素子11-1は第1端子T1に接続され、第2アンテナ素子11-2は第2端子T2に接続されている。コンデンサ152は、第1アンテナ素子11-1と第2アンテナ素子11-2との間にダイオード12Aと並列に接続されている。第1鍼14-1は第1端子T1に接続され、第2鍼14-2は第2端子T2に接続されている。共振回路151は、第1端子T1とコンデンサ152との間に接続されている。
【0060】
通電鍼装置10Cは、さらに、発光素子16を含んでもよい。発光素子16は、例えばLED(light emitting diode:発光ダイオード)である。発光素子16は、整流回路12Bに接続されている。これにより、整流回路12Bに通電時に発光することができる。なお、第1の実施の形態に係る通電鍼装置10A及び第2の実施の形態に係る通電鍼装置10Bにも発光素子16が含まれていてもよい。
【0061】
通電鍼装置10Cでは、
図7に示されたように第1端子T1がカソード端子、第2端子T2がアノード端子である場合、第1鍼14-1が陽極、第2鍼14-2が陰極となる。そのため、第1鍼14-1及び第2鍼14-2の双方が身体に接触される場合、身体が抵抗Rp2を含む導線として機能して、
図8に示されたように、電流Iが身体を経て矢印Bの方向に第1鍼14-1から第2鍼14-2に流れる。
【0062】
通電鍼装置10Cでも、送電装置20から供給される電力がパルス状であることから、鍼14は身体へパルス状の電気刺激を与える。身体へパルス状の電気刺激を与えると、身体に対して電気鍼の効果を与えることができる。
【0063】
[2.5 実装例]
【0064】
通電鍼装置10をユーザの身体に装着して用いるため、
図9の(A)に示されたように、整流器12は基板状の保持具17上に保持される構成であってもよい。これにより、通電鍼装置10全体がモジュール化され、取り扱いが容易になる。
【0065】
鍼14は、保持具17の下面17aから下方に向けて突出するように設けられている。また、アンテナ11は、保持具17の上面17bから上方に向けて突出するように設けられていてもよい。
【0066】
保持具17の上面17b及び下面17aの少なくとも一方は、保護材18によって保護されている。保護材18は、例えば樹脂モールドである。好ましくは、上面17b及び下面17aの両面が保護材18によって保護されている。
【0067】
好ましくは、保持具17上に保持された整流器12の一方の端子にアンテナ11が接続され、上方に向けてアンテナ11が延設されている。これにより、アンテナ11は保持具17の上面17bから上方に突出している。保持具17の周囲には金属帯17cが設けられて、整流器12の上記一方の端子がインダクタ23を介して金属帯17cに接続されている。金属帯17cは保護材18に覆われていない。また、整流器12の他方端子には鍼14が接続され、下方に向けて鍼14が延設されている。これにより、鍼14は保持具17の下面17aから下方に突出している。
【0068】
通電鍼装置10が
図9の(A)に示されたように金属帯17cを有し、整流器12の上記一方の端子がインダクタ23を介して金属帯17cに接続されている構成とすることによって、
図9の(A)に示されたように、通常の鍼24を通電鍼装置10に接続することができる。詳しくは、
図9の(A)を参照して、通電鍼装置10に通常の鍼24を接続する場合、保護材18の周辺に設けられた金属帯17cと通常の鍼24とを、導線25で結線されたクリップ等で挟む。これにより、通電鍼装置10の鍼14と通常の鍼24とを身体に接触すると陽極及び陰極として機能し、より確実に身体に電流を流すことができる。また、導線25の長さを可変とすることで、被験者の電流を流す身体の範囲を自由に変化させることができる。
【0069】
なお、通電鍼装置10は、下面17aを患部の皮膚側に向け、下面17aが皮膚に密着するように配置する。これにより、鍼14は患部に接触する。
【0070】
なお、
図9の(A)に示されたような、アンテナ11が保持具17の上面から突出している構造は必須ではない。通電鍼装置10の構造の他の例として、(B)や(C)に示されたような、アンテナ11が保持具17の上面から突出していない構造であってもよい。
【0071】
例えば、第2の実施の形態に係る通電鍼装置10Bの場合、(B)に示されたように、アンテナ11全体が保持具17の上面17b内に配置され、第1鍼14-1及び第2鍼14-2のみが保持具17の下面17aから突出していてもよい。また、第3の実施の形態に係る通電鍼装置10Cの場合、(C)に示されたように、第1アンテナ素子11-1及び第2アンテナ素子11-2の両方が保持具17の上面17b内に配置され、第1鍼14-1及び第2鍼14-2のみが保持具17の下面17aから突出していてもよい。
【0072】
これにより、通電鍼装置10からの突出が少なくなるために扱いやすくなるとともに、小型化にもつながる。
【0073】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0074】
10 :通電鍼装置
10A :通電鍼装置
10B :通電鍼装置
10C :通電鍼装置
11 :アンテナ
11-1 :第1アンテナ素子
11-2 :第2アンテナ素子
12 :整流器(ダイオード)
12A :ダイオード
12B :整流回路
13 :レクティナ
14 :鍼
14-1 :第1鍼
14-2 :第2鍼
16 :発光素子
17 :保持具
17a :下面
17b :上面
17c :金属帯
18 :保護材
19 :高周波遮断インダクタ
20 :送電装置
21 :高周波電源
22 :送電アンテナ
23 :インダクタ
24 :鍼
25 :導線
151 :共振回路
152 :コンデンサ
I :電流
LC :並列
P :周期
PW :電磁波
Rp1 :抵抗
Rp2 :抵抗
T1 :第1端子
T2 :第2端子