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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】解析装置、解析方法及び解析プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240202BHJP
   G06V 10/70 20220101ALI20240202BHJP
【FI】
G06T7/00 640
G06T7/00 350B
G06V10/70
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022507096
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2020010654
(87)【国際公開番号】W WO2021181585
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】519125689
【氏名又は名称】株式会社Synspective
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】根本 佳介
(72)【発明者】
【氏名】野嶋 大輝
【審査官】▲広▼島 明芳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/120724(WO,A1)
【文献】特開2004-020235(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0078590(US,A1)
【文献】三島 駿祐,外1名,植物のスペクトル反射特性を用いたRGB画像からの近赤外画像の推定,情報処理学会 研究報告 コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) 2019-CVIM-21,日本,情報処理学会,2019年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 - 20/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星によって熱赤外以下の波長帯で対象物を観測した衛星データ及び前記対象物が存在する地域の気象データを取得する取得部と、
前記衛星データのうち熱赤外以外の波長帯で観測されたデータ及び前記気象データに基づいて、前記衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されると予測される予測データを生成する生成部と、
前記衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されたデータと、前記予測データとの比較に基づいて、前記対象物に関する変化を検出する検出部と、
を備える解析装置。
【請求項2】
前記生成部は、過去に観測された前記衛星データ及び前記気象データを学習用データとする教師有り学習によって生成された学習済みモデルを用いて、前記予測データを生成する、
請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
前記学習用データを用いた教師有り学習によって、前記学習済みモデルを生成する学習部をさらに備える、
請求項2に記載の解析装置。
【請求項4】
前記学習部は、前記対象物毎に、前記学習済みモデルを生成する、
請求項3に記載の解析装置。
【請求項5】
前記対象物が工場の場合、前記検出部は、前記予測データの値から、前記衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されたデータの値を引いた値が閾値より大きい場合に、前記工場の少なくとも一部の稼働停止を検出する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項6】
前記地域を複数の区画に分割して、前記複数の区画に関する前記衛星データの特徴量を算出する算出部をさらに備え、
前記検出部は、前記特徴量に基づいて、前記複数の区画における前記対象物に関する変化を検出する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項7】
前記検出部は、基準時以前の前記特徴量の平均と、前記基準時以後の前記特徴量の平均との差に基づいて、前記対象物に関する変化が起きた時を検出する、
請求項6に記載の解析装置。
【請求項8】
解析装置が実行する解析方法であって、
衛星によって熱赤外以下の波長帯で対象物を観測した衛星データ及び前記対象物が存在する地域の気象データを取得することと、
前記衛星データのうち熱赤外以外の波長帯で観測されたデータ及び前記気象データに基づいて、前記衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されると予測される予測データを生成することと、
前記衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されたデータと、前記予測データとの比較に基づいて、前記対象物に関する変化を検出することと、
を含む解析方法。
【請求項9】
解析装置に備えられた演算部を、
衛星によって熱赤外以下の波長帯で対象物を観測した衛星データ及び前記対象物が存在する地域の気象データを取得する取得部、
前記衛星データのうち熱赤外以外の波長帯で観測されたデータ及び前記気象データに基づいて、前記衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されると予測される予測データを生成する生成部、及び
前記衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されたデータと、前記予測データとの比較に基づいて、前記対象物に関する変化を検出する検出部、
として機能させる解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析装置、解析方法及び解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人工衛星によって撮影した画像に基づいて、地上に建てられた建物の解析が行われている。例えば、下記特許文献1には、衛星によって撮影した画像からパラメータベクトルを抽出し、対象物の高さおよび幅を決定して、対象物の理想化された画像を生成する方法が記載されている。特許文献1では、対象物の画像を理想化された画像と照合して、対象物の充填容積を決定している。なお、特許文献1における対象物とは、主として、浮き屋根構造を有する円筒コンテナである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-514123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば工場のような対象物の稼働状況を解析する場合、衛星によって対象物の画像を長期間にわたって撮影し、その時系列変化を解析することがある。しかしながら、対象物の稼働状況は、外観から判別しづらいことがあり、稼働状況を精度良く解析することは困難だった。
【0005】
そこで、本発明は、より高精度に対象物の稼働状況を解析することができる解析装置、解析方法及び解析プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る解析装置は、衛星によって熱赤外以下の波長帯で対象物を観測した衛星データ及び対象物が存在する地域の気象データを取得する取得部と、衛星データのうち熱赤外以外の波長帯で観測されたデータ及び気象データに基づいて、衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されると予測される予測データを生成する生成部と、衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されたデータと、予測データとの比較に基づいて、対象物に関する変化を検出する検出部と、を備える。
【0007】
この態様によれば、衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されたデータは、対象物の外観に関する変化がない場合であっても、対象物の表面温度や排気温度に応じて変化する。そのため、予測データと、衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されたデータとの比較によって、外観から捉えきれない対象物の稼働状況をより高精度に解析することができる。
【0008】
上記態様において、生成部は、過去に観測された衛星データ及び気象データを学習用データとする教師有り学習によって生成された学習済みモデルを用いて、予測データを生成してもよい。
【0009】
この態様によれば、対象物に関する変化がない平常時の場合における熱赤外の波長帯で観測されたデータを再現するように予測データを生成し、熱赤外の波長帯で観測されたデータとの乖離によって対象物に関する変化を検出することができるようになる。
【0010】
上記態様において、学習用データを用いた教師有り学習によって、学習済みモデルを生成する学習部をさらに備えてもよい。
【0011】
この態様によれば、対象物に関する変化がない平常時の場合における熱赤外の波長帯で観測されたデータを再現する学習済みモデルを生成することができる。
【0012】
上記態様において、学習部は、対象物毎に、学習済みモデルを生成してもよい。
【0013】
この態様によれば、対象物が存在する地域の気象特性に応じた学習済みモデルを生成することができる。
【0014】
上記態様において、対象物が工場の場合、検出部は、予測データの値から、衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されたデータの値を引いた値が閾値より大きい場合に、工場の少なくとも一部の稼働停止を検出してもよい。
【0015】
この態様によれば、平常時よりも工場からの熱放出量が小さくなっていることを捉え、工場の少なくとも一部の稼働停止を検出することができる。
【0016】
上記態様において、地域を複数の区画に分割して、複数の区画に関する衛星データの特徴量を算出する算出部をさらに備え、検出部は、特徴量に基づいて、複数の区画における対象物に関する変化を検出してもよい。
【0017】
この態様によれば、対象物に関する局所的な変化を検出することができ、変化が起きた箇所を特定することができる。
【0018】
上記態様において、検出部は、基準時以前の特徴量の平均と、基準時以後の特徴量の平均との差に基づいて、対象物に関する変化が起きた時を検出してもよい。
【0019】
この態様によれば、対象物に関する変化が起きた時を検出することができる。
【0020】
本発明の他の態様に係る解析方法は、衛星によって熱赤外以下の波長帯で対象物を観測した衛星データ及び対象物が存在する地域の気象データを取得することと、衛星データのうち熱赤外以外の波長帯で観測されたデータ及び気象データに基づいて、衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されると予測される予測データを生成することと、衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されたデータと、予測データとの比較に基づいて、対象物に関する変化を検出することと、を含む。
【0021】
この態様によれば、衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されたデータは、対象物の外観に関する変化がない場合であっても、対象物の表面温度や排気温度に応じて変化する。そのため、予測データと、衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されたデータとの比較によって、外観から捉えきれない対象物の稼働状況をより高精度に解析することができる。
【0022】
本発明の他の態様に係る解析プログラムは、解析装置に備えられた演算部を、衛星によって熱赤外以下の波長帯で対象物を観測した衛星データ及び対象物が存在する地域の気象データを取得する取得部、衛星データのうち熱赤外以外の波長帯で観測されたデータ及び気象データに基づいて、衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されると予測される予測データを生成する生成部、及び衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されたデータと、予測データとの比較に基づいて、対象物に関する変化を検出する検出部、として機能させる。
【0023】
この態様によれば、衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されたデータは、対象物の外観に関する変化がない場合であっても、対象物の表面温度や排気温度に応じて変化する。そのため、予測データと、衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されたデータとの比較によって、外観から捉えきれない対象物の稼働状況をより高精度に解析することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、より高精度に対象物の稼働状況を解析することができる解析装置、解析方法及び解析プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る解析システムのネットワーク構成を示す図である。
図2】本実施形態に係る解析装置の機能ブロックを示す図である。
図3】本実施形態に係る解析装置の物理的構成を示す図である。
図4】本実施形態に係る解析装置により生成された予測データと、熱赤外の波長帯で観測されたデータとを示す図である。
図5】本実施形態に係る解析装置により生成された予測データと、熱赤外の波長帯で観測されたデータとの差を示す図である。
図6】本実施形態に係る解析装置により算出された基準時以前の衛星データの特徴量の平均と、基準時以後の衛星データの特徴量の平均とを示す図である。
図7】本実施形態に係る解析装置により実行される第1処理のフローチャートである。
図8】本実施形態に係る解析装置により実行される第2処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る解析システム100のネットワーク構成を示す図である。解析システム100は、宇宙の衛星軌道を飛行する衛星Sから、衛星データを受信する衛星基地局50と、衛星データを記録するデータベースDBと、衛星データを解析する解析装置10とを備える。
【0028】
衛星Sは、光学センサを備え、光学センサで撮影した地上の画像を含む衛星データを衛星基地局50に送信する。衛星データは、少なくとも、熱赤外以下の波長帯で地上を撮影した画像を含む。ここで、熱赤外の波長帯とは、8~15μmであってよいが、隣接する波長帯を含んでもよい。衛星データは、例えば、400nmから15μmに含まれる複数の波長帯で撮影された画像を含んでよい。
【0029】
衛星基地局50は、衛星Sから衛星データを受信し、データベースDBに記録する。データベースDBは、インターネット等の通信ネットワークNに接続される。解析装置10は、通信ネットワークNを介して、データベースDBに保存された衛星データを取得する。
【0030】
図2は、本実施形態に係る解析装置10の機能ブロックを示す図である。解析装置10は、取得部11、生成部12、検出部13、学習部14及び算出部15を備える。
【0031】
取得部11は、衛星Sによって熱赤外以下の波長帯で対象物を観測した衛星データ及び対象物が存在する地域の気象データを取得する。ここで、対象物とは、工場、円筒や矩形コンテナ、原油等のタンク、ビル等の建物、遊園地や動物園等の商業施設及び同一経路上を移動する飛行機等の移動体であってよいが、隣接する建物等を含んでもよい。気象データは、通信ネットワークNを介して取得されてよく、例えば、積算降水量、日射量、上層雲量、中層雲量、下層雲量、地上気圧、海面更正気圧、相対湿度、全雲量、気温、東西風及び南北風等を含む。
【0032】
生成部12は、衛星データのうち熱赤外以外の波長帯で観測されたデータ及び気象データに基づいて、衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されると予測される予測データを生成する。熱赤外以外の波長帯で観測されたデータは、対象物の外観を測定したデータであり、熱赤外の波長帯で観測されるデータは、対象物の表面温度や対象物からの排気の温度を測定したデータである。生成部12は、対象物の外観を測定したデータ及び気象データに基づいて、対象物の表面温度や対象物からの排気の温度を予測した予測データを生成する。
【0033】
生成部12は、過去に観測された衛星データ及び気象データを学習用データとする教師有り学習によって生成された学習済みモデル12aを用いて、予測データを生成する。学習済みモデル12aは、例えば、勾配ブースティング決定木やニューラルネットワークにより構成されてよく、学習用データのうち熱赤外以外の波長帯で観測されたデータ及び気象データを入力として、学習用データのうち熱赤外の波長帯で観測されたデータを再現するように、教師有り学習によって生成される。このようにして、対象物に関する変化がない平常時の場合における熱赤外の波長帯で観測されたデータを再現するように予測データを生成し、熱赤外の波長帯で観測されたデータとの乖離によって対象物に関する変化を検出することができるようになる。
【0034】
検出部13は、衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されたデータと、予測データとの比較に基づいて、対象物に関する変化を検出する。衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されたデータは、対象物の外観に関する変化がない場合であっても、対象物の表面温度や排気温度に応じて変化する。そのため、予測データと、衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されたデータとの比較によって、外観から捉えきれない対象物の稼働状況をより高精度に解析することができる。
【0035】
学習部14は、学習用データを用いた教師有り学習によって、学習済みモデル12aを生成する。例えば、学習済みモデル12aを勾配ブースティング決定木によって構成する場合、学習部14は、学習用データのうち熱赤外以外の波長帯で観測されたデータ及び気象データを入力として、予測データと学習用データのうち熱赤外の波長帯で観測されたデータとの差を測る損失関数の値が小さくなるように、勾配ブースティングにより決定木を構成してよい。また、学習済みモデル12aをニューラルネットワークによって構成する場合、学習部14は、学習用データのうち熱赤外以外の波長帯で観測されたデータ及び気象データを入力として、学習用データのうち熱赤外の波長帯で観測されたデータを出力するように、ニューラルネットワークのパラメータを誤差逆伝播法等によって最適化することで学習済みモデル12aを生成する。このようにして、対象物に関する変化がない平常時の場合における熱赤外の波長帯で観測されたデータを再現する学習済みモデル12aを生成することができる。ここでは、教師有り学習は、上記記載したアルゴリズムに限定されず、他の機械学習アルゴリズムを用いてもよい。
【0036】
学習部14は、対象物毎に、学習済みモデル12aを生成してもよい。その場合、学習用データは、対象物毎に用意される。対象物が存在する地域によって気象条件が異なり得るため、対象物毎に学習済みモデル12aを生成することで、対象物が存在する地域の気象特性に応じた学習済みモデル12aを生成することができる。
【0037】
算出部15は、対象物が存在する地域を複数の区画に分割して、複数の区画に関する衛星データの特徴量を算出する。そして、検出部13は、特徴量に基づいて、複数の区画における対象物に関する変化を検出する。これにより、対象物に関する局所的な変化を検出することができ、変化が起きた箇所を特定することができる。
【0038】
図3は、本実施形態に係る解析装置10の物理的構成を示す図である。解析装置10は、演算部に相当するCPU(Central Processing Unit)10aと、記憶部に相当するRAM(Random Access Memory)10bと、記憶部に相当するROM(Read Only Memory)10cと、通信部10dと、入力部10eと、表示部10fと、を有する。これらの各構成は、バスを介して相互にデータ送受信可能に接続される。なお、本例では解析装置10が一台のコンピュータで構成される場合について説明するが、解析装置10は、複数のコンピュータが組み合わされて実現されてもよい。また、図3で示す構成は一例であり、解析装置10はこれら以外の構成を有してもよいし、これらの構成のうち一部を有さなくてもよい。
【0039】
CPU10aは、RAM10b又はROM10cに記憶された解析プログラムの実行に関する制御やデータの演算、加工を行う制御部である。CPU10aは、衛星データ及び気象データに基づいて、対象物に関する変化を検出するプログラム(解析プログラム)を実行する演算部である。CPU10aは、入力部10eや通信部10dから種々のデータを受け取り、データの演算結果を表示部10fに表示したり、RAM10bに格納したりする。
【0040】
RAM10bは、記憶部のうちデータの書き換えが可能なものであり、例えば半導体記憶素子で構成されてよい。RAM10bは、CPU10aが実行する解析プログラム、衛星データ、気象データといったデータを記憶してよい。なお、これらは例示であって、RAM10bには、これら以外のデータが記憶されていてもよいし、これらの一部が記憶されていなくてもよい。
【0041】
ROM10cは、記憶部のうちデータの読み出しが可能なものであり、例えば半導体記憶素子で構成されてよい。ROM10cは、例えば解析プログラムや、書き換えが行われないデータを記憶してよい。
【0042】
通信部10dは、解析装置10を他の機器に接続するインターフェースである。通信部10dは、インターネット等の通信ネットワークNに接続されてよい。
【0043】
入力部10eは、ユーザからデータの入力を受け付けるものであり、例えば、キーボード及びタッチパネルを含んでよい。
【0044】
表示部10fは、CPU10aによる演算結果を視覚的に表示するものであり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)により構成されてよい。表示部10fは、衛星データを表示してよい。
【0045】
解析プログラムは、RAM10bやROM10c等のコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよいし、通信部10dにより接続される通信ネットワークを介して提供されてもよい。解析装置10では、CPU10aが解析プログラムを実行することにより、図2を用いて説明した様々な動作が実現される。なお、これらの物理的な構成は例示であって、必ずしも独立した構成でなくてもよい。例えば、解析装置10は、CPU10aとRAM10bやROM10cが一体化したLSI(Large-Scale Integration)を備えていてもよい。
【0046】
図4は、本実施形態に係る解析装置10により生成された予測データと、熱赤外の波長帯で観測されたデータとを示す図である。同図では、縦軸にTIR(Thermal Infra-Red、熱赤外)の波長帯で観測されたデータの一画素の値を示し、横軸に日付を示している。本例で用いている衛星データは、対象物として工場を撮影した場合の衛星データであり、縦軸に示す値は、熱赤外の波長帯で撮影された画像のうち、工場の温度変化を反映する画素の値であり、より具体的には、工場が存在する領域に相当する画素の値である。工場の領域内には、排気口や特定の熱を発する装置等を含んでいる。
【0047】
同図では、衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されたデータDを実線で示し、衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されると予測される予測データPを破線で示している。両データは、ほとんど一致しているが、2017年中頃のタイミングT1において、比較的大きく乖離している。
【0048】
図5は、本実施形態に係る解析装置10により生成された予測データPと、熱赤外の波長帯で観測されたデータDとの差Diffを示す図である。同図では、縦軸に差Diffを表すスコア(diff_score(TIR))を示し、横軸に日付を示している。差Diffを表すスコアは、予測データPから実測されたデータDを引いた値である。
【0049】
予測データPから実測されたデータDを引いた差Diffは、タイミングT1において比較的大きくなっており、タイミングT1に対象物に関する変化が起きていることが読み取れる。対象物が工場の場合、検出部13は、予測データPの値から、衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されたデータDの値を引いた差Diffの値が閾値より大きい場合に、工場の少なくとも一部の稼働停止を検出してよい。このようにして、平常時よりも工場からの熱放出量が小さくなっていることを捉え、工場の少なくとも一部の稼働停止を検出することができる。更に、本実施形態で工場が存在する領域に相当する画素の値のデータを例に記載したが、ビルや家屋等が存在する領域には、空調室外機等の排熱を行う装置等に相当する画素の値でも本実施形態と同様の観測ができ、使用状況を検出することができる。
【0050】
図6は、本実施形態に係る解析装置10により算出された基準時以前の衛星データの特徴量の平均と、基準時以後の衛星データの特徴量の平均とを示す図である。解析装置10は、ある地域を所定の波長帯(例えば可視光の波長帯)で観測した画像IMGを取得する。ここで、画像IMGは、時系列順に複数枚撮影される。解析装置10は、画像IMGを複数の区画に分割して、複数の部分画像IMG_1~IMG_Nを得る。ここで、複数の部分画像IMG_1~IMG_Nは、それぞれ時系列順に並んだ複数の部分画像を含む。そして、解析装置10は、複数の部分画像IMG_1~IMG_Nから特徴量を算出することで、複数の区画に関する衛星データの特徴量を算出する。解析装置10は、時系列順に並んだ複数の部分画像IMG_1~IMG_Nそれぞれについて特徴量を算出し、特徴量の時系列変化を算出する。解析装置10は、変分オートエンコーダ(Variational AutoEncoder)や敵対的生成ネットワーク(Generative Adversarial Network)を用いて、複数の部分画像IMG_1~IMG_Nから特徴量を算出してよい。
【0051】
検出部13は、基準時以前の特徴量fの平均と、基準時以後の特徴量fの平均との差diffに基づいて、対象物に関する変化が起きた時を検出してよい。図6では、基準時以前の特徴量fの平均が0.2であり、基準時以後の特徴量fの平均が-1.1である場合を示している。検出部13は、準時以前の特徴量fの平均と、基準時以後の特徴量fの平均との差の絶対値が最大になるタイミングを、対象物に関する変化が起きたタイミングとして検出してよい。このようにして、対象物に関する変化が起きた時を検出することができる。
【0052】
図7は、本実施形態に係る解析装置10により実行される第1処理のフローチャートである。第1処理は、熱赤外以下の波長帯で観測された衛星データを用いて、対象物に関する変化を検出する処理である。
【0053】
はじめに、解析装置10は、対象物が存在する地域について衛星によって熱赤外以下の波長帯で観測された衛星データ及び気象データを取得する(S10)。そして、解析装置10は、衛星データのうち熱赤外以外の波長帯で観測されたデータ及び気象データに基づいて、衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されると予測される予測データを生成する(S11)。
【0054】
そして、解析装置10は、衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されたデータと、予測データとの比較に基づいて、対象物に関する変化を検出する(S12)。
【0055】
図8は、本実施形態に係る解析装置10により実行される第2処理のフローチャートである。第2処理は、近赤外以下の波長帯で観測された衛星データを用いて、対象物に関する局所的な変化を検出する処理である。
【0056】
はじめに、解析装置10は、対象物が存在する地域について衛星によって熱赤外以外の波長帯で観測された衛星データを取得する(S20)。その後、解析装置10は、地域を複数の区画に分割して、複数の区画に関する衛星データの特徴量を算出する(S21)。
【0057】
そして、解析装置10は、特徴量に基づいて、複数の区画における対象物に関する変化を検出する(S22)。
【0058】
本実施形態にかかる変形例として、活火山を対象物として監視を行う際、該対象物が存在する地域を複数の区画に分割して、複数の区画に関する衛星データのうち熱赤外以外の波長帯で観測されたデータ及び気象データに基づいて、衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されると予測される予測データを生成し、生成した予測データと、衛星データのうち熱赤外の波長帯で観測されたデータとの比較によって、噴火口付近の温度上昇、地表面の温度上昇、高温ガスの噴射及び水温上昇の兆候があると判断し、警戒レベルを上げ、登山客や対象物周辺の住人に警戒通知を行う。また、監視を行う対象物として、スターリングエンジン等の太陽熱発電及び原油採掘施設のフレアスタック等にも適応可能である。
【0059】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8