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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】プレキャスト気泡混合軽量土
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/18 20060101AFI20240202BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20240202BHJP
   E04C 1/39 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
E02D17/18 A
C04B38/00 302C
E04C1/39 104
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023017193
(22)【出願日】2023-02-07
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】591284092
【氏名又は名称】麻生フオームクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花岡 浩一
(72)【発明者】
【氏名】大川 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 一弘
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-127713(JP,A)
【文献】特開2006-046060(JP,A)
【文献】特開平02-171424(JP,A)
【文献】特開昭63-300114(JP,A)
【文献】特開平10-266212(JP,A)
【文献】特開2004-257191(JP,A)
【文献】特開平10-280414(JP,A)
【文献】特開2008-162746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00-37/00
E04C 1/00- 1/42
C04B 38/00-38/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、骨材、繊維材及び起泡剤を水で混練した混練物を型枠内で養生させて成形したブロック体と、
前記ブロック体の内部に配筋された金属製のメッシュプレートと、
前記ブロック体の吊上げを可能とするため、前記メッシュプレートに連結された状態でブロック体の上部に埋設された複数の吊具用アンカーと、を備え、
前記吊具用アンカーは、前記ブロック体からの引き抜き抵抗力を大きくするため、ブロック体に埋設されるアンカー先端プレートを備えていることを特徴とするプレキャスト気泡混合軽量土。
【請求項2】
前記ブロック体が直方体形状、前記メッシュプレートが前記直方体の一面に相似した四角形状となっており、前記吊具用アンカーは、吊上げの負荷が最も作用しない位置となるように前記メッシュプレートに少なくとも4箇所で連結され、その上部に吊具が着脱可能となっていることを特徴とする請求項1に記載のプレキャスト気泡混合軽量土。
【請求項3】
前記メッシュプレートは、前記ブロック体内部の上下位置に配筋されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレキャスト気泡混合軽量土。
【請求項4】
前記ブロック体の表面に、乾燥ひび割れ抑制のための樹脂エマルジョンが塗布されていることを特徴とする請求項1に記載のプレキャスト気泡混合軽量土。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路盛土等に好適に使用することができるプレキャスト気泡混合軽量土に関する。
【背景技術】
【0002】
道路盛土等を施工するための工法として気泡混合軽量土(FCB)が従来より行われている。一般的なFCB工法は、セメント、骨材、起泡剤、水を施工現場で混練して混練物とし、施工現場で硬化させて盛土を構築するものである。しかしながら混練した気泡混合軽量土は硬化するまで水に弱く、雨天時や帯水箇所への施工ができない問題がある。また、混練した気泡混合軽量土は多くの気泡を含有しており、通常のコンクリートよりも強度が小さく、施工現場で硬化するまでの間に風化、劣化が生じやすい問題がある。さらに、現場での製造及び施工では、多くの人手及び熟練工が必要であり、現場での省力化、効率の改善が求められている。
【0003】
これらの問題を解消するため、特許文献1には、気泡混合軽量土を工場でブロック体に成形し、この気泡混合軽量土のブロック体を施工現場で積み重ねて盛土とする従来技術が開示されている。この方法では、材料の混練、養生、硬化を工場で行うため、品質管理が容易であり、硬化したブロック体となっているため、現場では気候等の影響を受けることがなく、人手を少なくできて省力化ができ、施工を簡単とすることができるメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-280414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
気泡混合軽量土のブロック体によって盛土を施工する場合、ブロック体を施工現場まで移動させたり、施工現場で積み上げ場所まで移動させる必要があり、このためのブロック体の吊上げ作業が行われる。この吊上げに対し、特許文献1記載の従来技術では、ワイヤロープやチェーン等の長尺な吊上げ材をブロック体に巻き付けてクレーン等により吊上げる必要がある。
【0006】
しかしながら、ブロック体はサイズが1000×2000×500mmのように大きく、しかもセメントを多く含んで重たいことから、ワイヤロープやチェーンの巻き付けがしにくく、吊上げ作業の際の大きな支障となっている。また、ブロック体の吊上げの際にブロック体がたわんだり、ひび割れ等の変形が生じることがある。ブロック体の強度が吊上げに耐えられなかったり、吊上げ力がブロック体の全体に均等に作用しないためである。
【0007】
本発明は、以上の問題点を考慮してなされたものであり、ブロック体に成形した気泡混合軽量土であっても、吊上げを容易に行うことができ、しかも吊上げ時に変形が生じることがないプレキャスト気泡混合軽量土を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプレキャスト気泡混合軽量土は、セメント、骨材、繊維材及び起泡剤を水で混練した混練物を型枠内で養生させて成形したブロック体と、前記ブロック体の内部に配筋された金属製のメッシュプレートと、前記ブロック体の吊上げを可能とするため、前記メッシュプレートに連結された状態でブロック体の上部に埋設された複数の吊具用アンカーと、を備え、前記吊具用アンカーは、前記ブロック体からの引き抜き抵抗力を大きくするため、ブロック体に埋設されるアンカー先端プレートを備えていることを特徴とする。
【0009】
前記ブロック体が直方体形状、前記メッシュプレートが前記直方体の一面に相似した四角形状となっており、前記吊具用アンカーは、吊上げの負荷が最も作用しない位置となるように前記メッシュプレートに少なくとも4箇所で連結され、その上部に吊具が着脱可能となっていることを特徴とする。
また、前記メッシュプレートは、前記ブロック体内部の上下位置に配筋されていることを特徴とする。
また、前記ブロック体の表面に、乾燥ひび割れ抑制のための樹脂エマルジョンが塗布されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のプレキャスト気泡混合軽量土によれば、吊具用アンカー4を備えているため、ブロック状に形成しても、吊上げを容易に行うことができる。また、金属製のメッシュプレート3を内部に備えているため、吊上げても曲げやたわみやひび割れ等の変形がなく、確実に吊り上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態のプレキャスト気泡混合軽量土を示す斜視図である。
図2】プレキャスト気泡混合軽量土の平面図である。
図3図2のC-C線断面図である。
図4】(A)は図2のA-A線断面図、(B)はB-B線断面図である。
図5】吊具用アンカーの配置部分を示す断面図である。
図6】吊具用アンカーに吊具を連結した状態を示す断面図である。
図7】別の実施形態のプレキャスト気泡混合軽量土を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1図6は本発明の一実施形態のプレキャスト気泡混合軽量土1である。図1はプレキャスト気泡混合軽量土1の斜視図、図2はプレキャスト気泡混合軽量土1の平面図、図3図2のC-C線断面図、図4(A)は図2のA-A線断面図、(B)はB-B線断面図、図5は吊具用アンカーの配置部分を示す断面図、図6は吊具用アンカーの使用状態を示す正面図である。
【0018】
図1図4に示すように、プレキャスト気泡混合軽量土1は、ブロック体2と、メッシュプレート3と、吊具用アンカー4とを備えている。
【0019】
ブロック体2は外形が直方体形状に形成されている。直方体形状のブロック体2は、例えば、1000×2000×500mmのサイズに形成される。ブロック体2の形状は三角形立体形状、六角形立体形状や八角形立体形状、その他の立体形状に形成でき、大きさも適宜、変更することができる。
【0020】
図2図4に示すように、メッシュプレート3は、防錆処理された金属線材(例えば、ステンレス線材)を網状に組み付けて溶接することにより形成された金属製のメッシュプレートである。メッシュプレート3はブロック体2の外形に相似し、且つブロック体2の外形よりも幾分小さな形状に形成される。図示例では、ブロック体2が直方体となっていることから、この直方体の一面に相似した四角形に形成されている。また、メッシュプレート3は符号3a及び3bで示すように、ブロック体2内部の上側及び下側に配筋される。
【0021】
このようにメッシュプレート3がブロック体2に相似し、しかもメッシュプレート3を上下に配筋することにより、吊上げ時に作用するブロック体2の自重による曲げモーメントに対応することができ、ブロック体2の曲げを抑制することができる。メッシュプレート3はブロック体2内部の上下位置に配筋することが良好であるが、ブロック体2の大きさや重量に合わせて上側だけに配筋しても良い。
【0022】
吊具用アンカー4は、ブロック体2の吊上げを可能とするために用いられる。吊具用アンカー4は上側のメッシュプレート3aに連結された状態でブロック体2の上部に埋設されている。吊具用アンカー4は、ブロック体2の吊上げ時の負荷が最も作用しない位置となるように配置される。このため、この実施形態では、吊具用アンカー4は4個が使用され、それぞれが上側のメッシュプレート3aの内方側における金属線材の交差部分に溶接等により連結されている。
【0023】
吊具用アンカー4はブロック体2に埋設され、この埋設状態で吊具13(図6参照)が吊具用アンカー4に着脱可能に連結される。図5はこの実施形態の吊具用アンカー4を示す。吊具用アンカー4は上下方向に伸びる全長にわたって雄ネジが形成されたボルトからなるアンカー体8と、アンカー体8の長さ方向の下端部に取り付けられたアンカー先端プレート9及び位置決め用ナット10とを備え、全体がブロック体2に埋設される。アンカー先端プレート9は吊具用アンカー4の引き抜き抵抗力を大きくするための部材、位置決め用ナット10はアンカー体8及びアンカー先端プレート9を所定位置に固定するための部材である。
【0024】
この実施形態では、吊具用アンカー4の一部(上端部)はブロック体2の上端面から突出している。すなわち図5に示すように、吊具用アンカー4のアンカー体8の上端部8aがブロック体2の上端面から所定の長さ(例えば、20~30mm)で突出している。このように突出した上端部8aには、図6に示すように、吊具13が着脱可能に連結される。吊具13はアイナットからなり、ワッシャー14及びスプリングワッシャー15を介してアンカー体8の上端部8aに連結されている。吊具13を4箇所の吊具用アンカー4に連結することによりブロック体2の吊上げが可能となる。
【0025】
図3及び図4に示すように、この実施形態では、かぶり厚スペーサ6が配置されている。かぶり厚スペーサ6は上下のメッシュプレート3a、3bをブロック体2の所定の深さ(例えば、40~60mm)に配置するための部材であり、上下のメッシュプレート3a、3bに対し、均等位置に6個が配置されている。かぶり厚スペーサ6を設けることによりメッシュプレート3a、3bを例えば、50mmの深さとなるようにブロック体2に配置することができる。かぶり厚スペーサの材料としては、モルタル等を使用することができる。
【0026】
ブロック体2について説明する。
ブロック体2はセメント、骨材、繊維材及び起泡剤を水で混練することにより作製される。作製されるブロック体2の物性としては、ブロック体2の硬化後における圧縮強度が0.3~2N/mm、単位体積重量が3~1.2kN/m、空気の配合割合が40~70%が良好である。表1はこの物性を満足するためのブロック体2の配合量の一例を示す。
【0027】
【表1】
【0028】
セメントとしては、普通ポルトランドセメント又は高炉セメントB種を使用することができ、骨材としては、川砂、山砂、炭酸カルシウム粉末やガラス粉末を使用することができる。水としては、工業用水、水道水を使用することができる。繊維材としては、合成繊維や鋼繊維を使用することができる。この内、合成繊維としては、例えば、商品名「バルチップ」であるポリプロピレン樹脂を使用することができる。繊維材を混合することにより、ブロック体2の曲げ強度及び引張強度を増大させることができ、運搬時等の衝撃による角欠け、ひび割れを抑制することができる。起泡剤としては、界面活性剤系起泡剤、蛋白質系起泡剤を使用することができる。この内、界面活性剤系起泡剤としては、例えば、商品名「ジオハート」であるアルキル硫酸エステル界面活性剤を使用することができる。
【0029】
表1の右端欄における「樹脂」は、ブロック体2の作製後にブロック体2の表面に塗布される樹脂エマルジョンであり、例えば、商品名「リポテックス」等のアクリル樹脂系エマルジョン、パラフィン系エマルジョンを使用することができる。樹脂エマルジョンをブロック体2の表面の全体に塗布することにより、ブロック体2に耐久性が付与され、保管時におけるブロック体2の風化や劣化を防止することができる。加えて、ブロック体2の耐摩耗性が改善される。
【0030】
この実施形態のプレキャスト気泡混合軽量土1では、吊上げを可能とするための吊具用アンカー4を備えているため、ブロック状に形成しても、吊上げを容易に行うことができる。また、内部には金属製のメッシュプレート3を備えて強度が付与されているため、吊上げても曲げやたわみやひび割れ等の変形がなく、確実に吊り上げることができる。
【0031】
プレキャスト気泡混合軽量土1の製造は、セメント、骨材、水を混練してセメントスラリーを作製し、このセメントスラリーに繊維材を混合し、次に、起泡剤粉体と希釈液で発泡させた起泡剤とを混合して混練する。一方、吊具用アンカーを連結した金属製メッシュプレートを鋼製の型枠内にセットする。そして、混練物を型枠内に充填して養生させてブロック体2を作製する。数日養生を行った後、ブロック体2を型枠から脱型して取り出す。その後、ブロック体2の表面に樹脂を塗布する。
【0032】
以上の工程は、全て工場で行われるため、温度管理ができ、安定した品質管理ができる。また、工場で硬化させてブロック体とするため、現場施工のように雨水等の水の悪影響を回避でき、風化や劣化を防止できる。さらには、効率の向上及び省力化が可能となる。
【0033】
図7は、別の実施形態のプレキャスト気泡混合軽量土1Aを示す。このプレキャスト気泡混合軽量土1Aは、ブロック体2に配置されている吊具用アンカー4がブロック体2に埋没した状態となっており、上端部はブロック体2から突出していない。吊具用アンカー4の内面には、雌ネジ16が形成されており、雌ネジ16を介して吊具(図示省略)が着脱可能に連結される。これによりブロック体1Aの吊上げが可能となる。
【0034】
本発明のプレキャスト気泡混合軽量土の施工方法の一例を説明する。まず、工場で作製したブロック状のプレキャスト気泡混合軽量土1に対し吊具を連結し、吊具を介してプレキャスト気泡混合軽量土1をクレーン等により吊上げて現場に並べる。隣接するプレキャスト気泡混合軽量土1の間に、セメント、骨材、繊維材及び起泡剤を水で混練した混練物を充填して硬化することにより隣接したプレキャスト気泡混合軽量土1を接合する。これにより下段の盛土を形成する。
【0035】
次に、プレキャスト気泡混合軽量土1から吊具を取り外した後、セメント、骨材、繊維材及び気泡剤を水で混練した混練物を下段の盛土の上に打設する。混練物の硬化開始前に、吊具を連結したプレキャスト気泡混合軽量土1を混練物の上に並べ、隣接するプレキャスト気泡混合軽量土1を接合する。これにより上段の盛土を形成する。
【0036】
さらに、以上の上段の盛土の形成作業を繰り返すことにより目的高さの盛土を形成し、最上段の盛土上に道路等を形成する。
【0037】
このような施工方法によれば、ブロック状のプレキャスト気泡混合軽量土の吊上げが容易であるため、盛土の形成を簡単に行うことができる。
【符号の説明】
【0038】
1、1A プレキャスト気泡混合軽量土
2 ブロック体
3 メッシュプレート
3a 上側メッシュプレート
3b 下側メッシュプレート
4 吊具用アンカー
6 かぶり厚スペーサ
8 アンカー体
9 アンカー先端プレート
10 位置決めナット
13 吊具
14 ワッシャー
16 雌ネジ
【要約】
【課題】ブロック体に成形した気泡混合軽量土であっても、吊上げを容易に行うことができ、吊上げ時に変形が生じることがないプレキャスト気泡混合軽量土とする。
【解決手段】セメント、骨材、繊維材及び起泡剤を水で混錬した混練物を型枠内で養生させて成形したブロック体2と、ブロック体2の内部に配筋された金属製のメッシュプレート3と、ブロック体2の吊上げを可能とするため、メッシュプレート3に連結された状態でブロック2体の上部に埋設された複数の吊具用アンカー4と、を備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7