(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】放射線治療装置
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20240202BHJP
【FI】
A61N5/10 Q
(21)【出願番号】P 2019168554
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々井 健蔵
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2018/003179(JP,A1)
【文献】特開2011-129353(JP,A)
【文献】特開2014-124206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療計画に基づいて荷電粒子線を出射する加速器と、
前記加速器の前記荷電粒子線の出射時間を計測する時間計測部と、
前記時間計測部に計測された前記出射時間に基づいて前記加速器を制御する第1制御部と、
前記第1制御部が前記加速器を制御している間において、前記加速器が前記荷電粒子線を出射しているか否かを判定する出射判定部と、を備え、
前記時間計測部は、前記出射判定部により前記加速器が
前記治療計画に沿って必要な出力に設定された前記荷電粒子線を出射していると判定されている時間を前記加速器の前記荷電粒子線の前記出射時間に合算し、前記出射判定部により前記加速器が前記荷電粒子線を出射していないと判定されている時間を前記加速器の前記荷電粒子線の前記出射時間に合算
せず、
前記出射判定部により前記加速器が前記荷電粒子線を出射していないと判定されている時間は、前記荷電粒子線の出力が前記治療計画に基づく出力に沿わない時間を含む、
放射線治療装置。
【請求項2】
前記出射判定部は、
前記加速器が前記荷電粒子線を出射しているか否かの判定として、前記加速器における前記荷電粒子線の生成状態を示す情報に基づいて前記荷電粒子線
の出射が正常か否かを判定する、請求項1に記載の放射線治療装置。
【請求項3】
前記出射判定部は、前記加速器における前記荷電粒子線の生成状態を示す情報に基づいて前記荷電粒子線を出射しているか否かを判定し、
前記荷電粒子線の生成状態を示す情報とは、前記加速器に含まれる構成を監視し、当該構成の動作状況を検出することで得られる情報である、請求項1又は2に記載の放射線治療装置。
【請求項4】
前記加速器は、荷電粒子を生成する生成源を有し、
前記出射判定部は、前記生成源での前記荷電粒子の生成状態を示す情報に基づいて前記加速器が前記荷電粒子線を出射しているか否かを判定する、請求項2
又は3に記載の放射線治療装置。
【請求項5】
前記加速器は、前記荷電粒子線が通過する軌道上に設けられ、開閉により前記荷電粒子線の通過及び遮蔽を制御するストッパを有し、
前記出射判定部は、前記ストッパの開閉状態を示す情報に基づいて前記加速器が前記荷電粒子線を出射しているか否かを判定する、請求項2
~4の何れか一項に記載の放射線治療装置。
【請求項6】
前記加速器は、高周波電力を出力する信号源を有し、
前記出射判定部は、前記高周波電力の状態を示す情報に基づいて前記加速器が前記荷電粒子線を出射しているか否かを判定する、請求項2~
5の何れか一項に記載の放射線治療装置。
【請求項7】
前記荷電粒子線のビーム経路に設けられ、前記荷電粒子線の状態を測定する複数の荷電粒子線計測部と、
前記複数の荷電粒子線計測部の測定結果に基づき、前記加速器を制御する複数の第2制御部と、
を備え、
前記第1制御部及び前記複数の第2制御部のそれぞれは、それぞれ互いに独立して前記加速器を制御する、請求項1~
6の何れか一項に記載の放射線治療装置。
【請求項8】
前記加速器は、前記荷電粒子線の出射を規制するインターロックを有し、
前記時間計測部は、前記インターロックが前記荷電粒子線の出射を規制していない場合には前記出射時間の計測を継続し、前記インターロックが前記荷電粒子線の出射を規制している場合には前記出射時間の計測を終了する、
請求項1~
7の何れか一項に記載の放射線治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線を照射してがん細胞を死滅させる療法で用いられる装置として、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載された中性子捕捉療法装置は、中性子を照射してがん細胞を死滅させる中性子捕捉療法で用いられる。この中性子捕捉療法装置は、荷電粒子線の電流を測定する第1の電流測定部と、第1の電流測定部よりも下流側で荷電粒子線の電流を測定する第2の電流測定部と、測定された電流値に基づいて加速器を制御する制御部と、を備えている。この中性子捕捉療法装置は、第1の電流測定部と第2の電流測定部により荷電粒子線の輸送中に電流値の低下を測定し、その電流値の低下に応じた制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の中性子捕捉療法装置において、制御部による電流値に基づく加速器の制御手段に加えて、制御部とは独立したタイマーを含む制御系統による加速器の制御手段が考えられる。タイマーを含む制御系統は、例えば、計測開始から経過した時間が予め定められた照射完了時間に達する場合に加速器を制御し、放射線治療を終了する。このため、一時的に当初の治療計画に沿わない荷電粒子線の照射があった場合(例えば、一時的な出射の停止)、タイマーを含む制御系統は、制御部により更新された治療計画によらず荷電粒子線の照射を終了してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、荷電粒子線の出射を適切なタイミングで終了させることができる放射線治療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る放射線治療装置は、荷電粒子線を出射する加速器と、加速器の荷電粒子線の出射時間を計測する時間計測部と、時間計測部に計測された出射時間に基づいて加速器を制御する第1制御部と、第1制御部が加速器を制御している間において、加速器が荷電粒子線を出射しているか否かを判定する出射判定部と、を備え、時間計測部は、出射判定部により加速器が荷電粒子線を出射していると判定されている時間を加速器の荷電粒子線の出射時間に合算し、出射判定部により加速器が荷電粒子線を出射していないと判定されている時間を加速器の荷電粒子線の出射時間に合算しない。
【0007】
この放射線治療装置は、出射判定部により加速器が荷電粒子線を出射していると判定されている時間を荷電粒子線の出射時間に合算する時間計測部と、時間計測部により計測された出射時間に基づいて加速器を制御する第1制御部と、を備えている。このような構成によれば、出射時間には加速器が荷電粒子線を出射していないと判定されている時間が合算されないため、第1制御部は、荷電粒子線の出射状況に応じた制御を行うことができる。以上より、この放射線治療装置は、荷電粒子線の出射を適切なタイミングで終了させることができる。
【0008】
一実施形態においては、出射判定部は、加速器における荷電粒子線の生成状態を示す情報に基づいて荷電粒子線を出射しているか否かを判定してもよい。時間計測部は、出射判定部における荷電粒子線の生成状態を示す情報に基づく判定により、荷電粒子線の出射時間を計測することができる。これにより、この放射線治療装置は、荷電粒子線の出射時間を適切に計測することができる。
【0009】
一実施形態においては、加速器は、荷電粒子を生成する生成源を有し、出射判定部は、生成源での荷電粒子線の生成状態を示す情報に基づいて加速器が荷電粒子線を出射しているか否かを判定してもよい。時間計測部は、出射判定部における生成源での荷電粒子線の生成状態を示す情報に基づく判定により、荷電粒子線の出射時間を計測することができる。これにより、この放射線治療装置は、加速器における荷電粒子線の出射時間を適切に計測することができる。
【0010】
一実施形態においては、加速器は、荷電粒子線が通過する軌道上に設けられ、開閉により荷電粒子線の通過及び遮蔽を制御するストッパを有し、出射判定部は、ストッパの開閉状態を示す情報に基づいて加速器が荷電粒子線を出射しているか否かを判定してもよい。時間計測部は、出射判定部におけるストッパの開閉状態を示す情報に基づく判定により、荷電粒子線の出射時間を計測することができる。これにより、この放射線治療装置は、加速器内のストッパの開閉状態を示す情報に基づき、加速器における荷電粒子線の出射時間を適切に計測することができる。
【0011】
一実施形態においては、加速器は、高周波電力を出力する信号源を有し、出射判定部は、高周波電力の状態を示す情報に基づいて加速器が荷電粒子線を出射しているか否かを判定してもよい。時間計測部は、出射判定部における信号源の高周波電力の状態を示す情報に基づく判定により、荷電粒子線の出射時間を計測することができる。これにより、この放射線治療装置は、加速器内の信号源の高周波電力の状態を示す情報に基づき、加速器における荷電粒子線の出射時間を適切に計測することができる。
【0012】
荷電粒子線のビーム経路に設けられ、荷電粒子線の状態を測定する複数の荷電粒子線計測部と、複数の荷電粒子線計測部の測定結果に基づき、加速器を制御する複数の第2制御部と、を備え、第1制御部及び複数の第2制御部のそれぞれは、それぞれ互いに独立して加速器を制御してもよい。この場合、時間計測部における出射時間及び複数の信号計測部における測定結果に基づき、第1制御部及び複数の第2制御部は加速器を制御することができる。第1制御部及び複数の第2制御部は加速器はそれぞれ独立しているため、この放射線治療装置は、複数の条件に基づき荷電粒子線の出射を適切なタイミングで終了させることができる。
【0013】
一実施形態においては、加速器は、荷電粒子線の出射を規制するインターロックを有し、時間計測部は、インターロックが荷電粒子線の出射を規制していない場合には出射時間の計測を継続し、インターロックが荷電粒子線の出射を規制している場合には出射時間の計測を終了してもよい。インターロックが荷電粒子線の出射を規制していない場合は、荷電粒子線の出射が停止したとしても、例えば自動復旧が可能な一時的な停止と見なすことができる。従って、時間計測部は、出射時間の計測を継続し、上述の一時的な停止を、出射時間に合算しない時間として取り扱うことができる。一方、インターロックが荷電粒子線の出射を規制した場合、その解除に時間を要するおそれがある。従って、時間計測部は、インターロックが荷電粒子線の出射を規制している場合には出射時間の計測を終了する。これにより、時間計測部が不要に長時間の計測を行うことを抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、荷電粒子線の出射を適切なタイミングで終了させることができる放射線治療装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係る放射線治療装置の一例である中性子捕捉療法システムを示す概略図である。
【
図2】一実施形態に係る放射線治療装置の荷電粒子線の出射状況を示すグラフである。
【
図3】一実施形態に係る放射線治療装置の制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
放射線治療装置は、放射線療法によるがん治療等に利用される装置である。放射線治療装置は、例えば、荷電粒子線治療装置又は中性子捕捉療法装置等である。荷電粒子線治療装置は、イオン源装置で生成した荷電粒子を加速して荷電粒子線として出射する。荷電粒子線とは、電荷を持った粒子を高速に加速した物であり、例えば、陽子線、中性子線、重粒子(重イオン)線、電子線等が挙げられる。また、中性子捕捉療法装置は、荷電粒子線をターゲットに照射することによって中性子線を発生させる。放射線治療装置は、患者の体内の腫瘍(被照射体)に対し、荷電粒子線又は中性子線を照射するものである。
【0018】
本実施形態では、放射線治療装置の一例である中性子捕捉療法装置を用いて説明する。
図1に示される放射線治療装置の一例である中性子捕捉療法装置1は、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)を用いたがん治療を行う装置である。中性子捕捉療法装置1では、例えばホウ素(
10B)が投与された患者(被照射体)100の腫瘍に中性子線Nを照射する。患者100は、診療台101上に配置されている。
【0019】
中性子捕捉療法装置1は、加速器2を備えている。加速器2は、負イオン等の荷電粒子を加速して、荷電粒子線Kを形成させ、予め設定されたエネルギーの荷電粒子線Rを出射する装置である。本実施形態では加速器2としてサイクロトロンが採用されている。なお、加速器2として、サイクロトロンに代えて、他の円形加速器(例えば、シンクロトロン)、線形加速器(例えば、ライナック)、又は静電加速器等の他の加速器を用いてもよい。本実施形態において、荷電粒子線Kと荷電粒子線Rとは異なる荷電粒子で構成されていてもよいし、同一の荷電粒子で構成されていてもよい。本実施形態では、荷電粒子線Kは加速した負イオンPにより生成されたビームであり、荷電粒子線Rは荷電粒子線Kを構成する負イオンPから電荷を剥ぎ取って生成された陽子ビームである。この加速器2は、例えば、ビーム半径40mm、60kW(=30MeV×2mA)の荷電粒子線Rを生成する能力を有している。
【0020】
詳細には、加速器2は、負イオンPが周回する真空箱21と、負イオンPを発生させるイオン源装置22(生成源の一例)と、イオン源装置22から真空箱21に負イオンを供給するイオン供給口23と、を有している。また、加速器2は、一対の磁極(不図示)の間に配置された一対の加速電極24と、加速電極24に高周波電力を供給する信号源25と、負イオンPを捕捉するストッパ26と、を有している。さらに、加速器2は、負イオンPから電子を剥ぎ取るフォイルストリッパー27と、フォイルストリッパー27によって軌道変更された陽子を取り出す出射口28と、インターロック29と、有している。
【0021】
真空箱21は、その内部において負イオンが供給され、加速した負イオンを出射する。真空箱21には、真空排気用の排気口(不図示)が設けられている。この排気口には真空ポンプ(不図示)が接続されている。真空箱21の内部は、真空ポンプによって真空化される。真空箱21には、円環状のコイルに囲われた一対の磁極(不図示)が互いに対向して配置されている。一対の磁極のそれぞれの形状は、円柱状を呈する。一対の磁極は、円盤面を向かい合わせている。磁極を囲むコイルに電流を供給することにより、一方の磁極から他方の磁極へ向かう磁束が発生する。すなわち、真空箱21の内部において、円環状のコイルに囲われた一対の磁極により電磁石が形成されている。真空箱21の内部は、一対の磁極の円盤面と略同径の円盤を上面又は底面とした円柱状を呈する。
【0022】
真空箱21には、その内部にイオン源装置22で生成された負イオンPを供給するイオン供給口23が設けられている。イオン源装置22は、水素ガスなどの原材料中でアーク放電を行って負イオンPを生成する装置である。イオン源装置22は加速器2の外部に配置されていてもよいし、加速器2の内部に設けられていてもよい。イオン源装置22で生成された負イオンPは、イオン供給口23を介して真空箱21内に引き込まれるように供給される。
【0023】
イオン源装置22は、イオン源モニタ(不図示)を含む。イオン源モニタは、アーク放電に使用する電流値又は電圧値等の信号をリアルタイムで検出する。イオン源モニタは、例えば、電流計、電圧計、流量計、又はファラデーカップなどである。イオン源モニタは、検出結果をイオン源装置22での負イオンPの生成状態を示す情報(荷電粒子線の生成状態を示す情報の一例)として、後述する出射判定部40のイオン源判定部に出力する。なお、このような情報をイオン源情報と称する場合がある。
【0024】
真空箱21内に供給された負イオンPは、高周波の電圧がかけられている加速電極24によって周回しながら加速する。加速電極24は、高周波電力を出力する信号源25と接続している。加速電極24は、信号源25から供給された高周波電力により作動し、負イオンPを加速させる。加速電極24により加速した負イオンPは、次第にエネルギーを増す。エネルギーが増せば負イオンPの回転半径は大きくなり、螺旋運動をしているような周回軌道を描く。このとき、加速した負イオンPは荷電粒子線Kを形成する。
【0025】
信号源25は、信号源モニタ(不図示)を含む。信号源モニタは、高周波電力を出力する場合の高周波電力、高周波電力の電流値又は高周波電力の電圧値等の信号をリアルタイムで検出する。信号源モニタは、例えば、電流計、電圧計、又は温度計などである。信号源モニタは、検出結果を高周波電力の状態を示す情報(荷電粒子線の生成状態を示す情報の一例)として、後述する出射判定部40の信号源判定部に出力する。なお、このような情報を高周波電力情報と称する場合がある。
【0026】
ストッパ26は、真空箱21内の荷電粒子線Kが通過する軌道上に設けられ、開閉により荷電粒子線Kの通過及び遮蔽を制御する。すなわち、ストッパ26が荷電粒子線Kの軌道を開放している場合、ストッパ26は、荷電粒子線Kを通過させる。ストッパ26が荷電粒子線Kの軌道を閉塞している場合、ストッパ26は、荷電粒子線Kを遮蔽する。ストッパ26は、例えばファラデーカップである。ストッパ26が荷電粒子線Kの軌道を閉塞している場合、ストッパ26は、例えば、イオン供給口23を介して真空箱21内に供給された負イオンPの捕捉をする。
【0027】
ストッパ26は、ストッパモニタ(不図示)を含む。ストッパモニタは、ストッパ26の開閉をリアルタイムで検出する。ストッパモニタは、例えば、ストッパ26の開放及び閉塞のそれぞれに定められた開閉信号を取得する。ストッパモニタは、例えば、ストッパ26が荷電粒子線を通過させている状態に「OFF」の開閉信号を取得する。ストッパモニタは、例えば、ストッパ26が荷電粒子線を遮蔽させている状態に「ON」の開閉信号を取得する。ストッパモニタは、開閉信号をストッパ26の開閉状態を示す情報(荷電粒子線の生成状態を示す情報の一例)として、出射判定部40のストッパ判定部に出力する。なお、このような情報を開閉情報と称する場合がある。
【0028】
フォイルストリッパー27は、荷電粒子線Kを構成する負イオンPから電子を奪い、陽子を出射口28まで誘導する。フォイルストリッパー27は、加速器2の径方向に沿って延在するストリッパー駆動軸27aと、ストリッパー駆動軸27aの先端に設けられたフォイル27bと、ストリッパー駆動軸27aを一対の磁極の径方向に沿って進退自在に駆動させるフォイル駆動部27cと、を備えている。フォイル駆動部27cは、高精度のモータ等を備えており、フォイル駆動部27cの駆動制御によってストリッパー駆動軸27aは10-2mm~10-1mmの単位で進退し、その結果、フォイル27bが負イオンP(荷電粒子線K)の周回軌道を交差するように進退自在となる。
【0029】
フォイル27bは、例えば炭素製の薄膜からなる。フォイル27bは、周回する負イオンP(荷電粒子線K)の周回軌道上に侵入して負イオンPに接触すると、その負イオンPから電子を剥ぎ取る。電子を剥奪されて負電荷から正電荷となった陽子(加速粒子)は、周回軌道の曲率が反転し、その軌道が周回軌道の外側に飛び出す方向に向けて変更される。反転後の陽子の軌道上には、陽子を真空箱21内から取り出すための出射口28が設けられている。すなわち、真空箱21は、フォイルストリッパー27によって軌道が変更される陽子の軌道上に出射口28を設けている。したがって、フォイル27bは、負イオンPから電子を奪うことで、結果的に陽子を出射口28まで誘導することになる。以上により、誘導された陽子により形成された荷電粒子線Rは、フォイルストリッパー27から出射口28を介して加速器2から出射される。なお、加速器2は、フォイル27bの周辺に磁束を発生させる空芯コイルを含む磁束調整部をさらに有している。
【0030】
フォイルストリッパー27は、負イオンPから剥ぎ取る電子の電子量を計測する(荷電粒子線計測部の一例)。計測された電子量(つまり、電荷、照射線量率)をリアルタイムで検出するものである。フォイルストリッパー27は、検出結果を後述する第2制御部70に出力する。なお、「線量率」とは、単位時間当たりの線量を意味する。
【0031】
インターロック29は、加速器2による荷電粒子線K,Rの出射を制御する。すなわち、インターロック29が作動しないことで、加速器2は荷電粒子線K及び荷電粒子線Rを出射することができる。インターロック29は、例えば、イオン源装置22、信号源25又はストッパ26に備えられるハード構成でもよく、加速器2に備えられるハード構成及びソフト構成の少なくとも一方であってもよい。システムによる指示に基づき、又は、オペレータ等の指示に基づき、インターロック29が作動する場合、インターロック29は加速器2による荷電粒子線K,Rの出射を禁止する。インターロック29が作動し、加速器2による荷電粒子線K,Rの出射を禁止している場合、中性子捕捉療法装置1は、自動的に復旧しない。すなわち、インターロック29が加速器2による荷電粒子線K,Rの出射を禁止している場合、オペレータの操作等の外部からの介入がない限り、中性子捕捉療法装置1による患者100への中性子線Nの照射は実行されない。例えば、オペレータによってインターロック29のリセットキーが回されることにより、インターロック29は手動復旧される。インターロック29が荷電粒子線K,Rの出射を禁止している場合、インターロック29は、自動復旧不可である情報を出射判定部40に出力する。
【0032】
加速器2から出射された荷電粒子線Rは、中性子線生成部Mへ送られる。中性子線生成部Mは、ビームダクト3とターゲット7とを含む。加速器2から出射された荷電粒子線Rは、ビームダクト3を通り、ビームダクト3の端部に配置されたターゲット7へ向かって進行する。このビームダクト3に沿って複数の四極電磁石4、電流モニタ5(荷電粒子線計測部の一例)、及び走査電磁石6が設けられている。複数の四極電磁石4は、例えば電磁石を用いて荷電粒子線Rのビーム軸調整を行うものである。
【0033】
電流モニタ5は、ターゲット7に照射される荷電粒子線Rの電流値(つまり、電荷、照射線量率)をリアルタイムで検出するものである(信号計測部の一例)。電流モニタ5は、荷電粒子線Rに影響を与えずに電流測定可能な非破壊型のDCCT(DC Current Transformer)が用いられている。電流モニタ5は、検出結果を後述する第2制御部71に出力する。
【0034】
具体的には、電流モニタ5は、ターゲット7に照射される荷電粒子線Rの電流値を精度よく検出するため、四極電磁石4による影響を排除すべく、四極電磁石4より下流側(荷電粒子線Rの下流側)で走査電磁石6の直前に設けられている。すなわち、走査電磁石6はターゲット7に対して常時同じところに荷電粒子線Rが照射されないように走査するため、電流モニタ5を走査電磁石6よりも下流側に配設するには大型の電流モニタ5が必要となる。これに対し、電流モニタ5を走査電磁石6よりも上流側に設けることで、電流モニタ5を小型化することができる。
【0035】
走査電磁石6は、荷電粒子線Rを走査し、ターゲット7に対する荷電粒子線Rの照射制御を行うものである。この走査電磁石6は、荷電粒子線Rのターゲット7に対する照射位置を制御する。
【0036】
中性子捕捉療法装置1は、荷電粒子線Rをターゲット7に照射することにより中性子線Nを発生させ、患者100に向かって中性子線Nを出射する。中性子捕捉療法装置1は、ターゲット7と、遮蔽体9と、減速材8と、コリメータ10と、ガンマ線検出部11と、を備えている。
【0037】
また、中性子捕捉療法装置1は、コントローラ30を備えている。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read OnlyMemory)、RAM(Random Access Memory)等から構成されており、中性子捕捉療法装置1を総合的に制御する電子制御ユニットである。コントローラ30は、例えば、中性子捕捉療法装置1の自動復旧を実施する。
【0038】
ターゲット7は、荷電粒子線Rの照射を受けて中性子線Nを生成するものである。ここでのターゲット7は、例えば、ベリリウム(Be)やリチウム(Li)、タンタル(Ta)、タングステン(W)により形成され、例えば直径160mmの円板状を成している。なお、ターゲット7は、円板状に限らず、他の形状であってもよい。また、ターゲット7は固体状に限らず液体状であってもよい。
【0039】
減速材8は、ターゲット7で生成された中性子線Nのエネルギーを減速させるものである。減速材8は、中性子線Nに含まれる速中性子を主に減速させる第1の減速材8Aと、中性子線Nに含まれる熱外中性子を主に減速させる第2の減速材8Bと、からなる積層構造を有している。
【0040】
遮蔽体9は、発生させた中性子線N、及び当該中性子線Nの発生に伴って生じたガンマ線等を外部へ放出されないよう遮蔽するものである。遮蔽体9は、減速材8を囲むように設けられている。遮蔽体9の上部及び下部は、減速材8より荷電粒子線Rの上流側に延在しており、これらの延在部にガンマ線検出部11が設けられている。
【0041】
コリメータ10は、中性子線Nの照射野を整形するものであり、中性子線Nが通過する開口10aを有する。コリメータ10は、例えば中央に開口10aを有するブロック状の部材である。
【0042】
ガンマ線検出部11は、荷電粒子線Rの照射により中性子線生成部Mから発生するガンマ線をリアルタイムで検出するものである。ガンマ線検出部11としては、シンチレータや電離箱、その他様々なガンマ線検出機器を採用することができる。本実施形態において、ガンマ線検出部11は、ターゲット7の周囲で減速材8より荷電粒子線Rの上流側に設けられている。
【0043】
ガンマ線検出部11は、荷電粒子線Rの上流側に延在する遮蔽体9の上部及び下部の内側にそれぞれ配置されている。なお、ガンマ線検出部11の数は特に限定されず、一つであってもよく、三つ以上であってもよい。ガンマ線検出部11を三つ以上設けるときは、ターゲット7の外周を囲むように所定間隔で設けることができる。ガンマ線検出部11は、例えば、ガンマ線の検出結果をコントローラ30に出力する。このガンマ線検出部11を備えていない構成でもよい。
【0044】
本実施形態における荷電粒子線Rのビーム経路は、荷電粒子線Rが生成される地点から患者100に照射される地点までを指す。すなわち、荷電粒子線Rのビーム経路は、加速器2内のフォイルストリッパー27を始点とし、患者100を終点とする。荷電粒子線Rのビーム経路は、加速器2、ビームダクト3、ターゲット7、減速材8及びコリメータ10の各内部を指す。荷電粒子線Rのビーム経路は、ターゲット7を終点としてもよい。
【0045】
中性子捕捉療法装置1は、加速器2における荷電粒子線Kの出射を制御する電子制御ユニット31を備えている。電子制御ユニット31は、例えば、コントローラ30と同一の構成を有する。電子制御ユニット31は、出射判定部40と、時間計測部50と、第1制御部60と、を有する。なお、出射判定部40、時間計測部50、及び、第1制御部60は、1つの電子制御ユニット31に含まれることなく、互いに独立した電子制御ユニット内に設けられていてもよい。
【0046】
出射判定部40は、加速器2が荷電粒子線K,Rを出射しているか否かを判定する。出射判定部40は、加速器2における荷電粒子線K,Rの生成状態を示す情報に基づいて荷電粒子線K,Rを出射しているか否かを判定する。出射判定部40は、イオン源装置22のイオン源モニタからのイオン源情報に基づき、加速器2が荷電粒子線K,Rを出射しているか否かを判定するイオン源判定部を有する。また、出射判定部40は、信号源25の信号源モニタからの高周波電力情報に基づき、加速器2が荷電粒子線K,Rを出射しているか否かを判定する信号源判定部を有する。さらに、出射判定部40は、ストッパ26のストッパモニタからの開閉情報に基づき、加速器2が荷電粒子線K,Rを出射しているか否かを判定するストッパ判定部を有する。
【0047】
出射判定部40のイオン源判定部は、イオン源装置22のイオン源モニタからのイオン源情報を用いて判定する場合、予め定められた閾値であるイオン源閾値とイオン源情報とを比較して加速器2が荷電粒子線K,Rを出射しているか否かを判定する。イオン源閾値は、イオン源情報の単位に応じて、電流値又は電圧値等が定められる。イオン源情報がイオン源閾値を下回った場合、出射判定部40のイオン源判定部は、イオン源装置22が負イオンPを生成する際に必要な電力が供給されておらず、加速器2が荷電粒子線K,Rを所定の出力で出射していないと判定する。すなわち、イオン源情報がイオン源閾値を下回った場合、出射判定部40のイオン源判定部は、加速器2が荷電粒子線Rを出射していないと判定する。イオン源情報がイオン源閾値以上の場合、出射判定部40のイオン源判定部は、加速器2が荷電粒子線Rを出射していると判定する。
【0048】
出射判定部40の信号源判定部は、信号源25の信号源モニタからの高周波電力情報を用いて判定する場合、予め定められた閾値である信号源閾値と高周波電力情報とを比較して加速器2が荷電粒子線K,Rを出射しているか否かを判定する。信号源閾値は、高周波電力情報の単位に応じて、電力、電流値又は電圧値等が定められる。高周波電力情報が信号源閾値を下回った場合、出射判定部40の信号源判定部は、信号源25が加速電極24に必要な高周波電力が供給されておらず、加速器2が荷電粒子線K,Rを所定の出力で出射していないと判定する。すなわち、高周波電力情報が信号源閾値を下回った場合、出射判定部40の信号源判定部は、加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していないと判定する。高周波電力情報が信号源閾値以上の場合、出射判定部40の信号源判定部は、加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していると判定する。
【0049】
出射判定部40のストッパ判定部は、ストッパ26のストッパモニタからの開閉情報を用いて判定する場合、開閉情報の内容に応じて加速器2が荷電粒子線K,Rを出射しているか否かを判定する。開閉情報である開閉信号が「ON」である場合、出射判定部40のストッパ判定部は、ストッパ26が負イオンPを捕捉又は遮蔽しており、加速器2が荷電粒子線K,Rを所定の出力で出射していないと判定する。すなわち、開閉情報である開閉信号が「ON」である場合、出射判定部40のストッパ判定部は、加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していないと判定する。開閉情報である開閉信号が「OFF」である場合、出射判定部40のストッパ判定部は、加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していると判定する。
【0050】
出射判定部40において、イオン源情報に基づく判定、高周波電力情報に基づく判定及び開閉情報に基づく判定のうち、1又は複数の判定が実施される。出射判定部40は、実施される全ての判定において加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していると判定された場合に、加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していると判定する。すなわち、出射判定部40は、上記複数の判定のうち、1つ以上の判定において加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していないと判定された場合、加速器2は荷電粒子線K,Rを出射していないと判定する。出射判定部40は、判定結果を時間計測部50に送信する。
【0051】
なお、上記の判定によって荷電粒子線K,Rが出射されていないと判断された場合、出射判定部40は、インターロック29により加速器2は荷電粒子線K,Rを出射しておらず、且つ、自動復旧可であると判定してもよい。出射判定部40は、該判定結果を時間計測部50に送信してもよい。また、上記の判定によって荷電粒子線K,Rが出射されていないと判断された場合、中性子捕捉療法装置1はコントローラ30により自動的に復旧する自動復旧がなされる。
【0052】
出射判定部40のイオン源判定部によりイオン源情報がイオン源閾値を下回ったと判定された場合、コントローラ30は、例えば、イオン源装置22におけるアーク放電に使用する電流値又は電圧値を所定の値まで引き上げる自動復旧を実行する。出射判定部40の信号源判定部により高周波電力情報が信号源閾値を下回ったと判定された場合、コントローラ30は、例えば、信号源25における高周波電力、高周波電力の電流値又は高周波電力の電圧値を所定の値まで引き上げる自動復旧を実行する。出射判定部40のストッパ判定部により開閉情報における開閉信号が「ON」であると判定された場合、コントローラ30は、例えば、ストッパ26が作動した原因を解決し、ストッパ26が負イオンPを通過させる自動復旧を実行する。
【0053】
時間計測部50は、加速器2の荷電粒子線Rの出射時間を計測する。出射時間とは、加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していると出射判定部40により判定された条件下での時間である。出射時間は、患者100に中性子線Nを照射している時間に換算することができる。時間計測部50は、出射判定部40により加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していると判定されている時間を加速器2の荷電粒子線Rの出射時間に合算する。時間計測部50は、出射判定部40により加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していないと判定されている時間を加速器2の荷電粒子線K,Rの出射時間に合算しない。時間計測部50は、出射判定部40の判定結果を受信しない場合、出射時間の計測を終了する。
【0054】
時間計測部50は、インターロック29が荷電粒子線K,Rの出射を規制していない場合には出射時間の計測を継続する。時間計測部50は、インターロック29が荷電粒子線K,Rの出射を規制している場合には出射時間の計測を終了する。時間計測部50は、インターロック29による荷電粒子線K,Rの出射の規制に関する信号を直接受信してもよく、出射判定部40を介して受信してもよい。
【0055】
時間計測部50が出射判定部40を介してインターロック29による荷電粒子線K,Rの出射の規制に関する信号を受信する場合を説明する。インターロック29が作動した場合、出射判定部40は自動復旧不可である情報を受信し、出射判定部40は自動復旧不可であると判定する。すなわち、インターロック29が作動した場合、出射判定部40は、インターロック29により加速器2は荷電粒子線K,Rを出射していないと判定する。
【0056】
イオン源情報に基づく判定、高周波電力情報に基づく判定及び開閉情報に基づく判定のうち、1又は複数の判定が実施された場合を想定する。実施されている全ての判定において加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していると判定された場合であっても、インターロック29が作動した場合、出射判定部40は、インターロック29により加速器2は荷電粒子線K,Rを出射しておらず、且つ、自動復旧不可であると判定する。時間計測部50は、インターロック29が荷電粒子線K,Rの出射を規制している場合には出射時間の計測を終了する。
【0057】
出射判定部40がインターロック29から自動復旧不可である情報を受信していない場合、出射判定部40は、上記の1又は複数の判定に基づき、加速器2の荷電粒子線K,Rの出射状況を判定する。時間計測部50は、インターロック29が荷電粒子線K,Rの出射を規制していない場合には出射時間の計測を継続する。
【0058】
第1制御部60は、時間計測部50に計測された出射時間に基づいて加速器2を制御する。第1制御部60は、患者100に対する治療計画に基づき、中性子線Nを照射する予定の時間である予定出射時間を定める。第1制御部60は、時間計測部50に計測された出射時間が予定出射時間になった場合、加速器2における荷電粒子線K,Rの出射を禁止する。第1制御部60は、加速器2による荷電粒子線K,Rの出射を禁止した後、加速器2の制御を終了する。すなわち、時間計測部50に計測された出射時間が予定出射時間に到達しない限りは、第1制御部60は、加速器2の制御を継続する。なお、出射判定部40は、第1制御部60が加速器2を制御している間において加速器2が荷電粒子線Rを出射しているか否かを判定する。
【0059】
中性子捕捉療法装置1は、加速器2における荷電粒子線Rの出射を制御する複数の電子制御ユニット32,33を備えている。複数の電子制御ユニット32,33のそれぞれは、例えば、電子制御ユニット31と同一の構成を有する。電子制御ユニット32は、加速器2における荷電粒子線Rの出射を制御する第2制御部70を備えている。電子制御ユニット33は、加速器2における荷電粒子線Rの出射を制御する第2制御部71を備えている。第1制御部60、第2制御部70及び第2制御部71は、例えば、それぞれ独立した電子制御ユニットである。第1制御部60、第2制御部70及び第2制御部71は、それぞれ互いに独立して加速器2を制御する。
【0060】
第2制御部70は、フォイルストリッパー27に計測された電子量に基づいて加速器2を制御する。第2制御部70は、患者100に対する治療計画に基づき、中性子線Nを照射する際の予定の出力である予定出力と、予定出力に対して許容される誤差範囲である許容誤差範囲と、を予め定める。第2制御部70は、フォイルストリッパー27に計測された電子量から中性子線Nの出力である電子換算出力を算出する。
【0061】
第2制御部70は、電子換算出力が予定出力に対して許容誤差範囲内に収まっている場合、加速器2による荷電粒子線Rの出射を維持する。第2制御部70は、電子換算出力が予定出力に対して許容誤差範囲内に収まっていない場合、電子換算出力が予定出力に対して許容誤差範囲内収まるように加速器2を制御する。第2制御部70は、例えば、電子換算出力が所定の時間維持された場合に、加速器2における荷電粒子線K,Rの出射を禁止する。第2制御部70は、加速器2による荷電粒子線K,Rの出射を禁止した後、加速器2の制御を終了する。
【0062】
第2制御部71は、電流モニタ5に計測された検出結果に基づいて加速器2を制御する。第2制御部71は、電流モニタ5に計測された検出結果から中性子線Nの出力である電流換算出力を算出する。
【0063】
第2制御部71は、電流換算出力が予定出力に対して許容誤差範囲内に収まっている場合、加速器2による荷電粒子線Rの出射を維持する。第2制御部71は、電流換算出力が予定出力に対して許容誤差範囲内に収まっていない場合、電流換算出力が予定出力に対して許容誤差範囲内収まるように加速器2を制御する。第2制御部71は、例えば、電流換算出力が所定の時間維持された場合に、加速器2における荷電粒子線K,Rの出射を禁止する。第2制御部71は、加速器2による荷電粒子線K,Rの出射を禁止した後、加速器2の制御を終了する。
【0064】
第2制御部70又は第2制御部71が加速器2における荷電粒子線K,Rの出射を禁止させた場合、第1制御部60は、出射判定部40における判定を終了させ、時間計測部50による出射時間T0の計測を終了させ、加速器2の制御を終了する。
【0065】
次に、時間計測部50による出射時間の計測方法について説明する。
図2に示すように、時間計測部50は出射時間を計測する。
図2の(a)は、出射判定部40により加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していると判定され続けた場合の加速器2における荷電粒子線Rの出射状況と時間との関係を示す。
【0066】
出射判定部40により加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していると判定された場合(
図2中の「OK」)、時間計測部50は、出射時間T
0を計測し、合算する。時間計測部50によって計測された出射時間T
0が予定出射時間T
1に到達した場合、第1制御部60は、加速器2による荷電粒子線K,Rの出射を終了させる。第1制御部60は、加速器2の制御を終了する。これにより、出射判定部40は、加速器2が荷電粒子線K,Rを出射しているか否かの判定を終了する。時間計測部50は、出射判定部40の判定結果を受信しないため、出射時間T
0の計測を終了する。なお、予定出射時間T
1は、治療計画に基づき定められる。
【0067】
図2の(b)は、出射判定部40により加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していると判定された場合と出射判定部40により加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していないと判定された場合とがそれぞれ発生した場合の加速器2における荷電粒子線K,Rの出射状況と時間との関係を示す。
図2の(b)は、時間計測部50の出射時間T
0が予定出射時間T
1に到達するまで、出射判定部40により加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していないとn-1(nは2以上の整数)回だけ判定された場合を示している。
【0068】
まず、出射判定部40により加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していると判定された場合(
図2中の「OK」)、時間計測部50は、出射時間T
0を計測し続ける。出射判定部40により加速器2が荷電粒子線Rを出射していないと判定された場合(
図2中の「NG(自動復旧可)」)、時間計測部50は、出射時間T
0の計測を一時的に中止する。出射判定部40により加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していないと判定され続けている場合(
図2中の「NG(自動復旧可)」)、時間計測部50の出射時間T
0は変化しない。コントローラ30により自動復旧がなされ、出射判定部40により加速器2が荷電粒子線Rを出射していると判定された場合(
図2中の「OK」)、時間計測部50は、出射時間T
0の計測を再開する。
【0069】
時間計測部50が計測を開始又は再開することにより出射時間T0を計測し始めた回数がp回目のとき(pは1以上n以下の整数)、時間計測部50は、加速器が荷電粒子線を出射していると判定されている時間を計測時間tpとする。時間計測部50は、すべての計測時間(t1,t2,・・・tn-1,tn)を合算し、合計の出射時間T0を計測する。すなわち、時間計測部50は、出射判定部40により加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していないと判定され続けている時間は、出射時間T0に合算しない。
【0070】
計測した出射時間が予定出射時間T1に到達した場合、第1制御部60は、加速器2による荷電粒子線K,Rの出射を終了させる。第1制御部60は、加速器2の制御を終了する。これにより、出射判定部40は、加速器2が荷電粒子線K,Rを出射しているか否かの判定を終了する。時間計測部50は、出射判定部40の判定結果を受信しないため、出射時間T0の計測を終了する。なお、時間計測部50が計測を開始してから計測を終了するまでの時間T2が予定出射時間T1を超えていたとしても、第1制御部60は、加速器2の制御を終了しない。
【0071】
図2の(c)は、出射判定部40により加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していると判定された場合と出射判定部40により加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していないと判定された場合とがそれぞれ発生し、インターロック29が作動した場合の加速器2における荷電粒子線K,Rの出射状況と時間との関係を示す。
図2の(c)は、時間計測部50の出射時間T
0が予定出射時間T
1に到達する前、且つ、インターロック29が作動する前において、出射判定部40により加速器2が荷電粒子線Rを出射していないとm-1(mは2以上の整数)回だけ判定された場合を示している。
【0072】
出射判定部40により加速器2が荷電粒子線Rを出射していると判定された場合(
図2中の「OK」)、時間計測部50は、出射時間T
0を計測し続ける。出射判定部40により加速器2が荷電粒子線Rを出射していないと判定された場合(
図2中の「NG(自動復旧可)」)、時間計測部50は、出射時間T
0の計測を一時的に中止する。出射判定部40により加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していないと判定され続けている場合(
図2中の「NG(自動復旧可)」)、時間計測部50の出射時間T
0は変化しない。コントローラ30により自動復旧がなされ、出射判定部40により加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していると判定された場合(
図2中の「OK」)、時間計測部50は、出射時間T
0の計測を再開する。
【0073】
出射判定部40において、インターロック29により加速器2は荷電粒子線K,Rを出射しておらず、且つ、自動復旧不可であると判定された場合(
図2中の「NG(自動復旧不可)」)、時間計測部50は、出射時間T
0の計測を終了する。なお、ここでの「計測を終了する」とは、出射時間T
0の計測のために行われる電子制御ユニット31による制御処理自体を終了する。一方、「出射時間T
0の計測を一時的に中止する」とは、出射時間T
0の計測のために行われる電子制御ユニット31による制御処理は継続し、計測時間の計測のみを終了する。このとき、コントローラ30により自動復旧した場合は、すぐに計測時間の計測を再開する。
【0074】
時間計測部50は、すべての計測時間(t1,t2,・・・tm-1,tm)を合算し、合計の出射時間T0を計測する。計測した出射時間T0が予定出射時間T1に到達した場合、第1制御部60は、加速器2の制御を終了する。計測した出射時間が予定出射時間T1に到達しておらず、且つ、インターロック29が作動した場合においても、第1制御部60は、加速器2の制御を終了する。これにより、出射判定部40は、加速器2が荷電粒子線Rを出射しているか否かの判定を終了する。時間計測部50は、出射判定部40の判定結果を受信しないため、出射時間T0の計測を終了する。なお、時間計測部50が計測を開始してから計測を終了するまでの時間T3が予定出射時間T1以上か否かに関わらず、インターロック29が作動した時点で第1制御部60は、加速器2の制御を終了する。
【0075】
次に、
図3を参照して、本実施形態における中性子捕捉療法装置1の制御の手順について説明する。まず、コントローラ30は、荷電粒子線K,Rを出射する(ステップS110:出射開始処理)。次に、出射判定部40は、加速器2における荷電粒子線K,Rの出射が正常か否かを判定する(ステップS120:出射判定処理)。出射判定部40においては、イオン源情報に基づく判定、高周波電力情報に基づく判定及び開閉情報に基づく判定のうち、1又は複数の判定が用いられる。
【0076】
出射判定部40は、全ての判定において加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していると判定された場合に、加速器2における荷電粒子線K,Rの出射が正常と判定する。すなわち、出射判定部40は、加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していると判定する。この場合、次に、時間計測部50は、出射時間の合算を行う(ステップS130:合算処理)。時間計測部50は、計測時間tpを出射時間T0に合算する。
【0077】
出射判定部40は、上記の判定のうち、いずれか1つの判定において加速器2が荷電粒子線Rを出射していないと判定された場合に、加速器2における荷電粒子線K,Rの出射が正常ではないと判定する。すなわち、出射判定部40は、加速器2が荷電粒子線Rを出射していないと判定する。この場合、次に、出射判定部40は、加速器2における荷電粒子線Rの出射状況が自動復旧不可か否かを判定する(ステップS150:復旧判定処理)。出射判定部40において、加速器2における荷電粒子線K,Rの出射状況が自動復旧不可ではない(自動復旧が可能である)と判定された場合、出射判定部40、時間計測部50及び第1制御部60は、出射判定処理(S120)から一連の処理を再び行う。このとき、コントローラ30は、中性子捕捉療法装置1の自動復旧を行う。
【0078】
出射判定部40において、インターロック29により加速器2における荷電粒子線K,Rの出射状況が自動復旧不可である(自動復旧が不可能である)と判定された場合、第1制御部60は、自動復旧不可対応処理を実行する(ステップS160:自動復旧不可対応処理)。第1制御部60は、加速器2の制御を終了する。時間計測部50は、出射時間T0の計測を終了する。オペレータ等の操作により中性子捕捉療法装置1を再稼働する場合は、コントローラ30は、出射開始処理(S110)から開始する。
【0079】
時間計測部50により合算処理(S130)が行われた場合、次に、第1制御部60は、合算した出射時間T0が予定出射時間T1に達したか否かを判定する(ステップS140:完了判定処理)。合算した出射時間T0が予定出射時間T1に達していない場合は、出射判定部40、時間計測部50及び第1制御部60は、出射判定処理(S120)から一連の処理を再び行う。合算した出射時間T0が予定出射時間T1に達した場合は、第1制御部60は、加速器2による荷電粒子線K,Rの出射を終了させる。第1制御部60は、加速器2の制御を終了する。以上により、中性子捕捉療法装置1の制御が終了する。
【0080】
次に、本実施形態に係る中性子捕捉療法装置1の作用及び効果について説明する。
【0081】
本実施形態に係る中性子捕捉療法装置1は、荷電粒子線K,Rを出射する加速器2と、加速器2の荷電粒子線K,Rの出射時間を計測する時間計測部50と、時間計測部50に計測された出射時間T0に基づいて加速器2を制御する第1制御部60と、第1制御部60が加速器2を制御している間において、加速器2が荷電粒子線K,Rを出射しているか否かを判定する出射判定部40と、を備え、時間計測部50は、出射判定部40により加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していると判定されている時間を加速器2の荷電粒子線K,Rの出射時間T0に合算し、出射判定部40により加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していないと判定されている時間を加速器2の荷電粒子線K,Rの出射時間T0に合算しない。
【0082】
この中性子捕捉療法装置1は、出射判定部40により加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していると判定されている時間を荷電粒子線K,Rの出射時間T0に合算する時間計測部50と、時間計測部50により計測された出射時間T0に基づいて加速器2を制御する第1制御部60と、を備えている。このような構成によれば、出射時間T0には加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していないと判定されている時間が合算されないため、第1制御部は、荷電粒子線K,Rの出射状況に応じた制御を行うことができる。以上より、この中性子捕捉療法装置1は、荷電粒子線K,Rの出射を適切なタイミングで終了させることができる。
【0083】
中性子捕捉療法においては、その治療時間が他の放射線治療方法に比べて長いため、荷電粒子線K,R又は中性子線Nの出力が治療計画に基づく出力に沿わない時間が生じうる可能性があった。すなわち、長い治療時間が経過する間に、荷電粒子線K,Rの出射が一時的に停止するような時間が介在してしまう。また、従来のタイマーを含む制御系統を中性子捕捉療法装置に適用した場合、タイマーは計測し始めてから経過した時間を計測するので、治療計画に沿わない時間も計測する。このため、実際に適切な出力で出射された荷電粒子線K,R又は中性子線Nの出射時間が必要な予定出射時間T1に満たない場合であっても、計測し始めてから経過した時間が予定出射時間T1に達した場合は終了するおそれがあった。
【0084】
本実施形態の中性子捕捉療法装置1の時間計測部50によれば、治療計画に沿って必要な出力に設定された荷電粒子線K,Rが出射された時間を計測することができる。このため、第1制御部60は、時間計測部50により計測された時間に基づき、治療計画に沿った適切な時間で荷電粒子線K,Rの出射を終了することができる。これにより、他の放射線治療方法と比べて治療時間が長時間である中性子捕捉療法であっても、治療計画に沿った必要な時間だけ荷電粒子線K,R又は中性子線Nを出射させ、治療計画に沿った時間で終了させることができる。
【0085】
一実施形態においては、出射判定部40は、加速器2における荷電粒子線K,Rの生成に関する信号に基づいて荷電粒子線K,Rを出射しているか否かを判定してもよい。時間計測部50は、出射判定部40における荷電粒子線K,Rの生成に関する信号に基づく判定により、荷電粒子線K,Rの出射時間T0を計測することができる。これにより、この中性子捕捉療法装置1は、荷電粒子線K,Rの出射時間T0を適切に計測することができる。
【0086】
一実施形態においては、加速器2は、荷電粒子を生成するイオン源装置22を有し、出射判定部40は、イオン源装置22のイオン源情報に基づいて加速器2が荷電粒子線K,Rを出射しているか否かを判定してもよい。時間計測部50は、出射判定部40におけるイオン源装置22のイオン源情報に基づく判定により、荷電粒子線K,Rの出射時間T0を計測することができる。これにより、この中性子捕捉療法装置1は、加速器2における荷電粒子線K,Rの出射時間T0を適切に計測することができる。
【0087】
一実施形態においては、加速器2は、荷電粒子線Kが通過する軌道上に設けられ、開閉により荷電粒子線Kの通過及び遮蔽を制御するストッパ26を有し、出射判定部40は、ストッパ26の開閉に基づいて加速器2が荷電粒子線K,Rを出射しているか否かを判定してもよい。時間計測部50は、出射判定部40におけるストッパ26の開閉に基づく判定により、荷電粒子線K,Rの出射時間を計測することができる。これにより、この中性子捕捉療法装置1は、加速器2内のストッパ26の開閉に基づき、加速器2における荷電粒子線K,Rの出射時間T0を適切に計測することができる。
【0088】
一実施形態においては、加速器2は、高周波電力を出力する信号源25を有し、出射判定部40は、高周波電力に基づいて加速器2が荷電粒子線K,Rを出射しているか否かを判定してもよい。時間計測部50は、出射判定部40における信号源25の高周波電力に基づく判定により、荷電粒子線K,Rの出射時間T0を計測することができる。これにより、この中性子捕捉療法装置1は、加速器2内の信号源25の高周波電力に基づき、加速器2における荷電粒子線K,Rの出射時間T0を適切に計測することができる。
【0089】
一実施形態においては、加速器2から出射された荷電粒子線Rを輸送するビームダクト3と、ビームダクト3に設けられ、荷電粒子線Rの信号を測定する複数の信号計測部(電流モニタ5及びフォイルストリッパー27)と、複数の信号計測部の測定結果に基づき、加速器2を制御する複数の第2制御部70,71と、を備え、第1制御部60及び複数の第2制御部70,71のそれぞれは、それぞれ互いに独立して加速器2を制御してもよい。この場合、時間計測部50における出射時間T0及び複数の信号計測部における測定結果に基づき、第1制御部60及び複数の第2制御部70,71は加速器2を制御することができる。第1制御部及び複数の第2制御部は加速器はそれぞれ独立しているため、この中性子捕捉療法装置1は、複数の条件に基づき荷電粒子線の出射を適切なタイミングで終了させることができる。
【0090】
一実施形態においては、加速器2は、荷電粒子線K,Rの出射を規制するインターロック29を有し、第1制御部60は、インターロック29が荷電粒子線K,Rの出射を規制していない場合には加速器2を制御し、インターロック29が荷電粒子線K,Rの出射を規制している場合には加速器2を制御しなくてもよい。インターロック29が荷電粒子線K,Rの出射を規制した場合、その解除に時間を要するおそれがある。インターロック29による規制中は、第1制御部60が加速器2を制御しないため、出射判定部40は、荷電粒子線K,Rが出射している時間か否かを判定しない。このため、時間計測部50は、荷電粒子線K,Rの出射時間T0の合算を行わない。インターロック29による規制がない場合に、第1制御部60は出射時間T0による制御は行う。このため、第1制御部60は、インターロック29による規制中に中性子線捕捉療法を終了することを抑制することができる。
【0091】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0092】
出射判定部40において、インターロック29により加速器2は荷電粒子線Rを出射しておらず、且つ、自動復旧不可であると判定された場合(
図2中の「NG(自動復旧不可)」)、時間計測部50は、出射時間T
0の計測を中止しなくてもよい。この場合、オペレータ等の操作に基づきインターロック29が解除され、復旧した場合は、時間計測部50は、出射時間T
0の計測を再度始め、復旧前の出射時間T
0に新たに復旧後の出射時間T
0を合算してもよい。
【0093】
時間計測部50は、出射判定部40により加速器2が荷電粒子線K,Rを出射していないと判定され続けている時間(
図2中の「NG(自動復旧可)」及び「NG(自動復旧不可)」)を延長時間として計測してもよい。この場合、時間計測部50は、計測された延長時間を元々の予定出射時間T
1に逐次合算し、更新する。時間計測部50は、計測を開始した時点からの経過時間が更新されている予定出射時間T
1になった時点で終了するようにしてもよい。
【0094】
本実施形態では第2制御部70,71として2種類の制御部を説明したが、3以上の制御部を含む構成であってもよい。中性子捕捉療法装置1は、電流モニタ5において算出された荷電粒子線Rの線量、ガンマ線検出部11において算出されたガンマ線の線量、及び、中性子線Nの線量に基づいて、加速器2による荷電粒子線K,Rの出射状況を判定してもよい。複数の第2制御部は、荷電粒子線Rの線量、ガンマ線の線量及び中性子線Nの線量のそれぞれに対して設定された閾値を、荷電粒子線Rの線量、ガンマ線の線量及び中性子線Nの線量のそれぞれが下回っている場合にそれぞれ独立して加速器2を制御してもよい。なお、中性子線Nの線量は、コリメータ10において、シンチレータ、光ファイバー、光検出器等を用いて検出される。
【0095】
第2制御部70は、時間計測部50に対して、電子換算出力が予定出力に対して許容誤差範囲内に収まらなくなったタイミング及び電子換算出力が予定出力に対して許容誤差範囲内に収まるようになったタイミングを時間計測部50に送信してもよい。第2制御部71は、時間計測部50に対して、電流換算出力が予定出力に対して許容誤差範囲内に収まらなくなったタイミング及び電流換算出力が予定出力に対して許容誤差範囲内に収まるようになったタイミングを時間計測部50に送信してもよい。時間計測部50は、これらのタイミングに基づいて出射時間T0の計測をおこなってもよい。例えば、出射判定部40における全ての判定において加速器2から荷電粒子線K,Rが出射されていると判定され、且つ、第2制御部70,71において電子換算出力及び電流換算出力が予定出力に対して許容誤差範囲内に収まる場合に、時間計測部50は、出射時間T0の計測を行う。
【0096】
中性子捕捉療法装置1は、加速器2がライナックであってもよい。この場合、加速器2は、DTL(Drift Tube Linac)を有してもよい。出射判定部40は、イオン源判定部及び信号源判定部の他に、DTLのモニタからのエネルギー情報に基づき、加速器2が荷電粒子線K,Rを出射しているか否かを判定するDTL判定部を有してもよい。DTL判定部は、予め定められた閾値であるDTL閾値とモニタから得られたエネルギー情報とを比較して加速器2が荷電粒子線K,Rを出射しているか否かを判定する。出射判定部40において、イオン源情報に基づく判定、高周波電力情報に基づく判定、及びエネルギー情報に基づく判定のうち、1又は複数の判定が実施される。また、複数の第2制御部に接続し、荷電粒子線Rの出射状況を監視するモニタとして、CT(Current Transformer:電流センサ)、DCCT又はACCT(AlternateCurrent Transformer:交流電流センサ)等が用いられる。
【0097】
中性子捕捉療法装置1は、加速器2が静電加速器であってもよい。この場合、複数の第2制御部に接続し、荷電粒子線Rの出射状況を監視するモニタとして、DCCT、核分裂監視装置(Fission Monitor)、3He比例計数管、又はH2
+モニタ等が用いられる。
【0098】
放射線治療装置は、中性子捕捉療法装置1でなくてもよい。放射線治療装置は、陽子線治療装置であってもよい。陽子線治療装置は、加速器2がシンクロトロンであってもよい。加速器2は、イオン源装置、ライナック及びメインリング等を有する。出射判定部40は、イオン源装置の動作状況、ライナックの動作状況、メインリングの動作状況、又は加速器2内のストッパが退避しているか否か等に基づく判定のうち、1又は複数の判定が実施される。また、複数の第2制御部に接続し、荷電粒子線Rの出射状況を監視するモニタとして、電離箱が用いられる。
【0099】
陽子線治療装置は、加速器2がサイクロトロンであってもよい。加速器2は、イオン源装置、信号源、及びチョッパー等を有する。出射判定部40は、イオン源装置の動作状況、信号源の動作状況、チョッパーの動作状況、又は加速器2内のストッパが退避しているか否か等に基づく判定のうち、1又は複数の判定が実施される。また、複数の第2制御部に接続し、荷電粒子線Rの出射状況を監視するモニタとして、電離箱が用いられる。
【符号の説明】
【0100】
1…中性子捕捉療法装置、2…加速器、3…ビームダクト、4…四極電磁石、5…電流モニタ、6…走査電磁石、7…ターゲット、8…減速材、9…遮蔽体、10…コリメータ、11…ガンマ線検出部、21…真空箱、22…イオン源装置、23…イオン供給口、24…加速電極、25…信号源、26…ストッパ、27…フォイルストリッパー、27a…ストリッパー駆動軸、27b…フォイル、27c…フォイル駆動部、28…出射口、29…インターロック、30…コントローラ、31,32,33…電子制御ユニット、40…出射判定部、50…時間計測部、60…第1制御部、70,71…第2制御部、100…患者、K,R…荷電粒子線、M…中性子線生成部、N…中性子線、P…負イオン、T0…出射時間、T1…予定出射時間。