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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】不織布及び自動車内装用表皮材
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/587 20120101AFI20240202BHJP
   D04H 1/435 20120101ALI20240202BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
D04H1/587
D04H1/435
B60R13/02 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019213785
(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公開番号】P2021085109
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】津村 達彦
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-038974(JP,A)
【文献】特開平01-031856(JP,A)
【文献】特開平06-192525(JP,A)
【文献】特開2016-156120(JP,A)
【文献】特開2011-168905(JP,A)
【文献】特開平05-271359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00 - 18/00
C09D 1/00 - 10/00
B60R 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート繊維のみから構成された構成繊維同士が、フッ化ビニリデンポリマー及びアクリルポリマーが分子レベルで相溶されている樹脂を含むバインダにより接着している、不織布。
【請求項2】
不織布に含まれるバインダ量が10g/m以下である、請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
請求項1または2に記載の不織布から構成されている、自動車内装用表皮材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布及び不織布から構成された自動車内装用表皮材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井材などの自動車内装材の表皮材として、表皮材が汚れた場合に汚れを拭き取る場合があることから、耐摩耗性付与のために、例えば、特開2014-214395号公報(特許文献1)に開示されているプリント不織布のような、フッ素を含む樹脂を含む不織布が用いられている。また、フッ素を含む樹脂は撥水撥油性を示すことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-214395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本願出願人がフッ素を含む樹脂を含む不織布を製造したところ、表皮材が汚れた際に汚れを拭き取っても、汚れが定着して十分に汚れを拭き取れないことがあり、また擦り取った後の外観品位が劣ることがあった。そこで、汚れが不織布に定着しにくい、ガラス転移温度が高く、硬い樹脂を用いることを検討したが、ガラス転移温度が高く硬い樹脂を含む不織布は成型加工の際に型に追従しにくく、成型加工性に劣るものであった。
【0005】
本発明はこのような状況下でなされたものであり、汚れが付着しても取れやすく防汚性に優れ、また成型加工性に優れた不織布及び自動車内装用表皮材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る発明は、「構成繊維同士が、フッ素系ポリマー及びアクリルポリマーが分子レベルで相溶されている樹脂を含むバインダにより接着している、不織布。」である。
【0007】
本発明の請求項2に係る発明は、「構成繊維がポリエチレンテレフタレート繊維である、請求項1に記載の不織布。」である。
【0008】
本発明の請求項3に係る発明は、「不織布に含まれるバインダ量が10g/m以下である、請求項1又は2に記載の不織布。」である。
【0009】
本発明の請求項4に係る発明は、「請求項1~3のいずれか1項に記載の不織布から構成された、自動車内装用表皮材。」である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に係る不織布は、不織布に含まれるバインダに、フッ素系ポリマー及びアクリルポリマーが分子レベルで相溶されている樹脂を含んでいると、防汚性及び成型加工性の両方が優れることを見出した。
【0011】
本発明の請求項2に係る不織布は、構成繊維が疎水性の繊維であるポリエチレンテレフタレート繊維であることから、不織布に汚れが付着しにくく、防汚性に優れる。
【0012】
本発明の請求項3に係る不織布は、不織布に含まれるバインダ量が10g/m以下でありバインダに汚れが付着しにくくなることから、結果として不織布に汚れが付着しにくく、防汚性に優れる。
【0013】
本発明の請求項4に係る自動車内装用表皮材は、防汚性に優れた不織布から構成されているため、防汚性に優れる自動車内装用表皮材である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の不織布は、不織布に含まれるバインダに、フッ素系ポリマー及びアクリルポリマーが分子レベルで相溶されている樹脂を含んでいる。この樹脂を含んでいることで、防汚性及び成型加工性が優れる理由は完全にはわかっていないが、フッ素系ポリマー及びアクリルポリマーが分子レベルで相溶されていることで、フッ素系ポリマーとアクリルポリマーが混合したものに比べて汚れが付着しにくく、また、バインダが均質でバインダの硬さにムラがないためと考えられる。
フッ素系ポリマー及びアクリルポリマーが分子レベルで相溶されている樹脂としては、例えば、フッ化ビニリデンポリマー及びアクリルポリマーが分子レベルで相溶されているSIFCLEAR(登録商標、JSR株式会社製)が挙げられる。なお、このバインダによる接着は、不織布を構成する繊維ウエブの片面に、バインダを含浸、泡立て含浸、コーティング、又はスプレーした後に、乾燥して実施できる。
【0015】
不織布に含まれるバインダ量は、多ければ多いほど不織布の強度及び耐摩耗性が優れることから、2g/m以上が好ましく、3g/m以上がより好ましく、5g/m以上が更に好ましい。一方で、バインダ量が多すぎると、防汚性及び成型加工性が悪くなるおそれがあることから、上限は30g/m以下が好ましく、20g/m以下がより好ましく、10g/m以下が更に好ましい。
【0016】
本発明の不織布は、装飾及び耐摩耗性の付与のために、不織布の表面にプリントを有していても良い。
【0017】
プリントを構成する樹脂は、特に限定するものではないが、例えば、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、或いはポリエステル系樹脂であることができ、バインダと同様の、フッ素系ポリマー及びアクリルポリマーが分子レベルで相溶されている樹脂を含んでいてもよい。これらの中でも、成型時に適度に軟化し、金型への追従性に優れ、皺や微細な凹凸を発生しにくい、アクリル系樹脂(特に、自己架橋型アクリル系樹脂)であるのが好ましい。アクリル系樹脂の中でも、ガラス転移温度が低く、柔らかいアクリル系樹脂であると、伸びやすく、成型加工性に優れているため好適である。より具体的には、ガラス転移温度が50℃以下であるのが好ましく、30℃以下であるのがより好ましく、0℃以下であるのが更に好ましい。一方で、ガラス転移温度が低過ぎると、耐磨耗性が悪くなる傾向があるため、-50℃以上であるのが好ましい。
【0018】
このようなプリントの量は特に限定するものではないが、不織布の成型加工性を損なわないように、30g/m以下であるのが好ましく、20g/m以下であるのがより好ましく、10g/m以下であるのが更に好ましい。
【0019】
なお、プリントはどのような模様であっても良く、特に限定するものではないが、例えば、円、四角形などの点状、直線状、曲線状、文字、図形、記号、絵などの模様単位が、規則的に又は不規則に配置した模様であることができる。なお、模様単位は同じである必要はなく、異なる模様単位の組合せであっても良い。
【0020】
なお、プリントは不織布のバインダで接着した面に対して施されていても良いし、バインダで接着していない面に対して施されても良い、バインダで接着した面は平滑であることから、鮮明にプリントすることができるため、バインダで接着した面に対してプリントが施されているのが好ましい。
【0021】
本発明の不織布を構成する繊維は、例えば、ポリエステル系(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)繊維、ナイロン系繊維、アクリル系繊維、ビニロン系繊維、レーヨン繊維などを挙げることができる。これらの中でも、防汚性及び耐摩耗性に優れることから、ポリエステル系繊維が好ましく、ポリエステル系繊維の中でもポリエチレンテレフタレート繊維であるのがより好ましい。
【0022】
なお、不織布を製造する際に熱圧着する場合、低融点樹脂を含む接着性繊維を含んでいると、熱圧着によって接着してしまい、厚さが薄く、引張り応力が強くなって成型加工性が悪くなるばかりでなく、風合いが硬くなるため、低融点樹脂を含む接着性繊維を含んでいないのが好ましい。
【0023】
本発明の不織布を構成する繊維の繊維長は特に限定するものではないが、25~105mmであるのが好ましく、30~75mmであるのがより好ましく、38~51mmであるのが更に好ましい。この「繊維長」は、JIS L 1015(2010)8.4.1c)直接法(C法)に則って測定した値をいう。
【0024】
また、不織布を構成する繊維の繊度は特に限定するものではないが、繊維が太過ぎると、不織布表面が凸凹になる傾向があることから、不織布に汚れが付着した際に汚れが凹凸に引っ掛かり汚れが取れにくくなる傾向があり、細過ぎると、不織布の強度が低下する傾向があることから、1.0~10dtexであるのが好ましく、1.3~6.6dtexであるのがより好ましく、1.7~3.3dtexであるのが更に好ましい。
【0025】
なお、通常、繊維は白色を有するが、不織布構成繊維は白色であっても、白色以外の色に着色していても良い。なお、着色した繊維は顔料及び染料を含有させることによって調製できる。
【0026】
本発明の不織布の目付、厚さは特に限定するものではないが、成型加工性に優れるように、目付は100~300g/mであるのが好ましく、120~250g/mであるのがより好ましく、150~200g/mであるのが更に好ましい。厚さは1.0~4.0mmであるのが好ましく、1.3~3.0mmであるのがより好ましく、1.5~2.0mmであるのが更に好ましい。なお、厚さは2.0kPa荷重時の値をいう。
【0027】
次に、本発明の不織布の製造方法について、簡単に説明する。
【0028】
まず、前述のような繊維を用いて、繊維ウエブを形成する。なお、繊維ウエブの形成方法は特に限定するものではないが、成型加工時の追従性に優れるように、ある程度の嵩がある方が好ましいため、カード法、エアレイ法などの乾式法により形成するのが好ましい。なお、繊維ウエブの目付は特に限定するものではないが、90~298g/mであるのが好ましい。
【0029】
次いで、このように形成した繊維ウエブは取り扱いにくい傾向があるため、水流又はニードルにより絡合するのが好ましい。特に、厚さを損なわず、結果として成型加工性を損なわないように、ニードルによって絡合するのが好ましい。好適であるニードル絡合条件は繊維ウエブの地合いを乱さなければ良く、特に限定するものではないが、針密度200~600本/cmで絡合するのが好ましく、250~500本/cmで絡合するのがより好ましい。
【0030】
続いて、繊維ウエブの少なくとも片面をフッ素系ポリマー及びアクリルポリマーが分子レベルで相溶されている樹脂を含むバインダで接着することもできるが、バインダで接着する前に熱圧着してもよい。熱圧着した際に、繊維が微視的に、若干収縮し、表面が平滑となり、防汚性に優れるためである。なお、この「熱圧着」とは、溶融又は可塑化変形して接着した状態にはなく、繊維同士が密着した状態であることを意味するため、熱圧着によって繊維ウエブが薄くなり、引張り応力が強くなって、不織布の成型加工性が悪くなったり、風合いが硬くなったりするということはない。
【0031】
なお、熱圧着条件は、特に限定するものではないが、例えば、加熱ロール間を通過させる熱カレンダー加工の場合、ロール温度は100~220℃であるのが好ましく、130~190℃であるのがより好ましい。また、加熱ロール間の間隔は、表面が平滑な不織布が得られやすいように、繊維ウエブの厚さよりも狭いのが好ましい。なお、加熱と加圧は同時であっても良いし、加熱後に加圧しても良い。例えば、加熱ロールを用いれば加熱と加圧を同時に実施することができ、オーブン等により加熱した後に一対のロールによって加圧すれば、加熱と加圧を別に実施することができる。
【0032】
次いで、繊維ウエブをバインダ樹脂によって接着することで、本発明の不織布を製造することができる。この接着は、例えば、繊維ウエブの片面に、バインダ樹脂を含浸、泡立て含浸、コーティング、又はスプレーした後に、乾燥して実施できる。なお、繊維ウエブの両面をバインダ樹脂で接着する場合には、前記操作を繰り返しても良いし、繊維ウエブの片面にバインダ樹脂を付与し、他面にもバインダ樹脂を付与した後に、乾燥して実施することもできる。
【0033】
なお、本発明の不織布に、必要に応じてプリントを付与してもよい。なお、プリントは不織布のバインダで接着した面に対して施しても良いし、バインダで接着していない面に対して施しても良いが、バインダで接着した面は平滑であることから、鮮明にプリントすることができるため、バインダで接着した面に対してプリントを施すのが好ましい。
【実施例
【0034】
以下、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
原着ポリエステル延伸短繊維(繊度:2.2dtex、繊維長:51mm,ポリエチレンテレフタレート一成分からなる)100mass%をカード機により開繊して繊維ウエブを形成した後、片面から針密度400本/mでニードルパンチ処理を行い、ニードルパンチウエブ(目付:150g/m2、厚さ1.8mm)を形成した。
次いで、このニードルパンチウエブを、ニードルパンチ処理を行った面の反対面のロール温度が180℃、ニードルパンチ処理を行った面のロール温度が20℃、ロール間隔0.5mmの熱カレンダーロール間へ供給し、ニードルパンチ処理を行った面の反対面を熱圧着して平滑にする熱カレンダー加工を行って、ニードルパンチ処理を行った面の反対面が平滑な熱圧着ウエブを形成した。
その後、次の割合で配合したバインダ溶液Aを、熱圧着ウエブのニードルパンチ処理を行った面の反対面(熱カレンダー加工を行った面)に対して泡立て含浸した後、温度170℃のキャンドライヤーで乾燥して、不織布(目付:154g/m、厚さ:1.5mm、バインダ樹脂量:4g/m)を調製した。
(バインダ溶液A)
(1)フッ化ビニリデンポリマー及びアクリルポリマーが分子レベルで相溶されている樹脂を含むバインダ[SIFCLEAR(登録商標) F104、JSR(株)製、アクリルポリマーのガラス転移温度:-10℃]・・・12重量部
(2)界面活性剤・・・2重量部
(3)水・・・86重量部
【0036】
(実施例2)
バインダ樹脂量が異なることを除いては、実施例1と同様に、不織布(目付:152g/m、厚さ:1.5mm、バインダ樹脂量:2g/m)を調製した。
【0037】
(実施例3)
バインダ樹脂量が異なることを除いては、実施例1と同様に、不織布(目付:160g/m、厚さ:1.5mm、バインダ樹脂量:10g/m)を調製した。
【0038】
(比較例1)
実施例1と同様にして、熱圧着ウエブを形成した。
その後、次の割合で配合したバインダ溶液Bを、熱圧着ウエブのニードルパンチ処理を行った面の反対面(熱カレンダー加工を行った面)に対して泡立て含浸した後、温度170℃のキャンドライヤーで乾燥して、不織布(目付:156g/m、厚さ:1.5mm、バインダ樹脂量:6g/m)を調製した。
(バインダ溶液B)
(1)アクリル系バインダa(アクリルポリマーのガラス転移温度:-40℃)・・・11重量部
(2)フッ素系バインダa・・・9重量部
(3)界面活性剤・・・2重量部
(4)水・・・78重量部
【0039】
(比較例2)
実施例1と同様にして、熱圧着ウエブを形成した。
その後、次の割合で配合したバインダ溶液Cを、熱圧着ウエブのニードルパンチ処理を行った面の反対面(熱カレンダー加工を行った面)に対して泡立て含浸した後、温度170℃のキャンドライヤーで乾燥して、不織布(目付:156g/m、厚さ:1.5mm、バインダ樹脂量:6g/m)を調製した。
(バインダ溶液C)
(1)アクリル系バインダa(アクリルポリマーのガラス転移温度:-40℃)・・・11重量部
(2)フッ素系バインダb・・・9重量部
(3)界面活性剤・・・2重量部
(4)水・・・78重量部
【0040】
(比較例3)
実施例1と同様にして、熱圧着ウエブを形成した。
その後、次の割合で配合したバインダ溶液Dを、熱圧着ウエブのニードルパンチ処理を行った面の反対面(熱カレンダー加工を行った面)に対して泡立て含浸した後、温度170℃のキャンドライヤーで乾燥して、不織布(目付:155g/m、厚さ:1.5mm、バインダ樹脂量:5g/m)を調製した。
(バインダ溶液D)
(1)アクリル系バインダb(アクリルポリマーのガラス転移温度:-5℃)・・・12重量部
(2)界面活性剤・・・2重量部
(3)水・・・86重量部
【0041】
(不織布の評価)
実施例1~3及び比較例1~3の防汚性及び成型加工性について、次の方法により評価した。これらの結果は表1に示す通りであった。
【0042】
(防汚性の評価)
(1)実施例及び比較例の不織布を3cm×23cmの長方形にサンプルを切り取った。
(2)分光光度計(エックスライト(株)製、Color i5)を用いて、(1)のサンプルのニードルパンチ処理を行った面の反対面(熱カレンダー加工を行った面)の明度L及び色度a,b(CIE1976L色空間)を、反射測定径1cmの測定範囲で重ならないように5点測定し、5点の明度及び色度の平均値を求めた。
(3)JIS L 0803(2011)に記載の3-1の白綿布を、5cm×5cmの大きさで10枚用意し、容積1Lの金属缶に、前記白綿布と以下に記載の割合で配合した試験用汚染粉0.5gを入れ、ふたをしたのちによく振り、汚染布を作成した。
[試験用汚染布の配合]
JIS Z 8901(2006) 7種:20g
JIS Z 8901(2006) 5種:80g
JIS K 5107(1965) カーボンブラック:0.1g
(4)JIS L 0849(2013) 9.2摩擦試験機II形(学振形)法に従い、摩擦試験機II型(学振形)に(1)で採取したサンプルを取り付け、摩擦子に(3)で作成した汚染布を取り付け、200gの荷重で20往復させ、汚れを付着させた。次に、摩擦子に取り付けた汚染布を取り換え、汚れを付着させる操作を同一サンプルで合計5回繰り返し、汚れ付着試験を行った。
(5)(4)で行った汚れ付着試験のサンプルの汚れ付着部を、摩擦試験機II型(学振形)に取り付け、摩擦子として、JIS L4105(2000)の1号の2cm×5cmのタオルを前記タオルと同量の水で濡らしたものを取り付け、200gの荷重で20往復させ、汚れを拭き取った。その後、このサンプルを、標準状態で24時間放置し乾燥させた。
(6)(5)で汚れを拭き取ったサンプルを(2)と同様の方法で測色を行って明度及び色度の平均値を求め、(2)の測色結果との色差ΔEを、JIS Z8781-4(2013)に従い算出した。
【0043】
(成型加工性の評価)
実施例及び比較例の不織布の20%モジュラス強度を、次のようにして測定した後、下記の基準によって評価した。なお、20%モジュラス強度が小さいということは、小さい力で伸びやすいことを意味するため、20%モジュラス強度が小さい程、成型加工性に優れていることを意味している。
(1)不織布の長手方向(ニードルパンチウエブ製造時における流れ方向)に対して3cm幅で、不織布の短手方向に対して20cm長の長方形状に切断して、試料を調製した。
(2) 前記試料を引張り強さ試験機(例えば、オリエンテック製、テンシロンUTM-III-100)のチャック間(距離:100mm)に固定し、引張り速度200mm/min.で引っ張り、チャック間距離が120mm(20%伸長)となった時の応力を測定した。
(3)上記(1)~(2)の操作を繰り返し、3枚の試料について前記応力を測定し、その算術平均を20%モジュラス強度とした。
(評価基準)
○:20%モジュラス強度が35N/3cm未満(成型加工性に優れる)
×:20%モジュラスが35N/3cm以上(成型加工性が悪い)
【0044】
【表1】

A:不織布の目付(g/m)、B:バインダ量(g/m)、C:バインダにおける、フッ素系ポリマー及びアクリルポリマーが分子レベルで相溶されている樹脂の有無、D:防汚性の評価におけるΔE、E:成形加工性の評価
【0045】
実施例及び比較例の比較から、不織布がフッ素系ポリマー及びアクリルポリマーが分子レベルで相溶されている樹脂を含むバインダにより接着していることで、汚染粉付着前の不織布と、汚染粉を付着させ拭き取った後の不織布の色差が小さく防汚性に優れ、また成型加工性に優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の不織布は、防汚性及び成型加工性に優れているため、例えば、自動車内装材(例えば、天井、ドアサイド、ピラーガーニッシュ、リヤパッケージなど)の表皮材、パーティション用表皮材、壁装材用表皮材などの用途に、好適に使用することができる。