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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】リーン型車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 5/10 20130101AFI20240202BHJP
   B62K 5/027 20130101ALI20240202BHJP
   B62K 5/08 20060101ALI20240202BHJP
   B62K 5/05 20130101ALI20240202BHJP
   B60B 35/02 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
B62K5/10
B62K5/027
B62K5/08
B62K5/05
B60B35/02 L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019236735
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021104735
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】中島 健志
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏志
(72)【発明者】
【氏名】岩本 太郎
(72)【発明者】
【氏名】長坂 和哉
(72)【発明者】
【氏名】稲場 太一
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/002161(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0267870(US,A1)
【文献】特開2006-248289(JP,A)
【文献】中国実用新案第204688204(CN,U)
【文献】欧州特許出願公開第1362779(EP,A2)
【文献】特開2012-214109(JP,A)
【文献】村田和弘,経済産業省 第3回多様なモビリティ普及推進会議 提出資料,日本,ヤマハ発動機株式会社,2019年10月16日
【文献】PIYABONGKARN, D. et al.,ACTIVE DIRECT TILT CONTROL FOR STABILITY ENHANCEMENT OF A NARROW COMMUTER VEHICLE,International Journal of Automotive Technology,KR,The Korean Society of Automotive Engineers,2004年06月,Vol. 5, No. 2,pp.77-88,ISSN 1229-9138
【文献】noslisu,“noslisu Promotion Video (Full ver.)”,米国,YouTube[online][video],2020年09月09日,[令和5年12月27日検索],インターネット<URL: https://www.youtube.com/watch?v=MkznyhH3vDQ>
【文献】川崎重工業、電動三輪モビリティ「noslisu」を発表。2022年度の発売を目指す!,バイシクル ジャパン,日本,株式会社ライジング出版,2020年10月20日,vol.195,p.120
【文献】“抜群の安定感でスイスイ走れる3輪電動ビークル「ノスリス」試乗レビュー、幅広いニーズに対応しつつカワサキの職人技が光る仕上がり”,Gigazine,日本,株式会社OSA,2021年06月12日,[令和5年12月27日検索],インターネット<URL:https://gigazine.net/news/20210612-noslisu-review>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 5/027- 5/05, 5/08- 5/10,
B60B 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
車幅方向の第1側に位置している第1ホイールと、
車幅方向の第1側の反対側である第2側に位置している第2ホイールと、
前記第1ホイールに取り付けられる第1タイヤと、
前記第2ホイールに取り付けられる第2タイヤと、
1ベアリングと、
2ベアリングと、
前記第1ベアリングに挿入される第1車軸と、
前記第2ベアリングに挿入される第2車軸と、
前記第1ホイールを車幅方向の内側から支持するための第1支持部材と、
前記第2ホイールを車幅方向の内側から支持するための第2支持部材と、
前記車体が前後方向を回転中心として傾斜した際に前記第1ホイール及び前記第2ホイールを前後方向を回転中心として傾斜させるリーン機構と、
を備え、
前記第1ホイールには、前記第1タイヤのタイヤ幅中央位置よりも車幅方向の外側のみに位置するハブが設けられており、当該ハブにハブ孔が形成されており、
前記第2ホイールには、前記第2タイヤのタイヤ幅中央位置よりも車幅方向の外側のみに位置するハブが設けられており、当該ハブにハブ孔が形成されており、
前記第1ホイールの前記ハブ孔に挿入されるベアリングは、単一の前記第1ベアリングであり、
前記第2ホイールの前記ハブ孔に挿入されるベアリングは、単一の前記第2ベアリングであることを特徴とするリーン型車両。
【請求項2】
請求項1に記載のリーン型車両であって、
前記第1ベアリングの軸長さの中央は、前記第1ホイールの前記ハブ孔の軸長さの中央よりも、車幅方向の内側であり、
前記第2ベアリングの軸長さの中央は、前記第2ホイールの前記ハブ孔の軸長さの中央よりも、車幅方向の内側であることを特徴とするリーン型車両。
【請求項3】
車体と、
車幅方向の第1側に位置している第1ホイールと、
車幅方向の第1側の反対側である第2側に位置している第2ホイールと、
前記第1ホイールに取り付けられる第1タイヤと、
前記第2ホイールに取り付けられる第2タイヤと、
前記第1ホイールのハブ孔に挿入される第1ベアリングと、
前記第2ホイールのハブ孔に挿入される第2ベアリングと、
前記第1ベアリングに挿入される第1車軸と、
前記第2ベアリングに挿入される第2車軸と、
前記第1ホイールを車幅方向の内側から支持するための第1支持部材と、
前記第2ホイールを車幅方向の内側から支持するための第2支持部材と、
前記車体が前後方向を回転中心として傾斜した際に前記第1ホイール及び前記第2ホイールを前後方向を回転中心として傾斜させるリーン機構と、
を備え、
前記第1ホイールの前記ハブ孔に挿入されるベアリングは、単一の前記第1ベアリングであり、
前記第2ホイールの前記ハブ孔に挿入されるベアリングは、単一の前記第2ベアリングであり、
前記第1タイヤのタイヤ幅中央位置よりも車幅方向の外側に前記第1ベアリングが位置しており、
前記第2タイヤのタイヤ幅中央位置よりも車幅方向の外側に前記第2ベアリングが位置しており、
前記リーン機構が、車幅方向において、前記第1ベアリングと前記第2ベアリングの間に位置していることを特徴とするリーン型車両。
【請求項4】
請求項3に記載のリーン型車両であって、
前記リーン機構が前記第1ホイールを傾斜させる回転中心と、前記第1タイヤのタイヤ幅の中央と、が一致しており、
前記リーン機構が前記第2ホイールを傾斜させる回転中心と、前記第2タイヤのタイヤ幅の中央と、が一致していることを特徴とするリーン型車両。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載のリーン型車両であって、
前記リーン機構は、上アームと、下アームと、前記第1支持部材と、前記第2支持部材と、を含んでおり、
前記第1支持部材及び前記第2支持部材は、実舵角を変更するためのナックル部材としても機能し、
正面視において、前記第1ホイールと前記第1支持部材が重なるとともに、前記第2ホイールと前記第2支持部材が重なり、
車幅方向において、前記第1タイヤのタイヤ幅中央位置と前記第1支持部材が重なるとともに、前記第2タイヤのタイヤ幅中央位置と前記第2支持部材が重なることを特徴とするリーン型車両。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載のリーン型車両であって、
車幅方向の中央と重なるように位置し、前記第1タイヤ又は前記第2タイヤを介して前記車体に伝達される振動を軽減する筒状のサスペンションを備え、
前記車体は車体フレームを備え、
前記車体フレームと前記リーン機構とは、前記サスペンションを介して連結されていることを特徴とするリーン型車両。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載のリーン型車両であって、
車幅方向において、前記第1ベアリングを基準として、前記第1支持部材の反対側にブレーキディスクが配置され、
車幅方向において、前記第2ベアリングを基準として、前記第2支持部材の反対側にブレーキディスクが配置されることを特徴とするリーン型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、旋回時等に車体を傾斜させるリーン型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なリーン型車両である自動二輪車において、前輪は、並べて配置された2つのベアリング及び車軸を介して車体に支持されている。
【0003】
特許文献1は、2つの前輪と、1つの後輪と、を備える三輪の車両を開示する。それぞれの前輪は、ホイール孔部(ハブ孔)が形成されたホイールを備える。ホイール孔部には、2つのベアリング及びシャフト部材が挿入されている。これにより、特許文献1の三輪の車両においても、一般的な自動二輪車と同様に、2つのベアリング及び車軸を介して前輪が車体に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/002161号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、リーン型車両において、前輪は2つのベアリング及び車軸を介して車体に支持される。しかし、この構成では、部品点数が多くなったり、ハブ孔の軸長さが長くなることがある。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、単純な構成で前輪を車体に支持することが可能なリーン型車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成のリーン型車両が提供される。即ち、このリーン型車両は、車体と、第1ホイールと、第2ホイールと、第1タイヤと、第2タイヤと、第1ベアリングと、第2ベアリングと、第1車軸と、第2車軸と、第1支持部材と、第2支持部材と、リーン機構と、を備える。前記第1ホイールは、車幅方向の第1側に位置している。前記第2ホイールは、車幅方向の第1側の反対側である第2側に位置している。前記第1タイヤは、前記第1ホイールに取り付けられる。前記第2タイヤは、前記第2ホイールに取り付けられる。前記第1ベアリングは、前記第1ホイールのハブ孔に挿入される。前記第2ベアリングは、前記第2ホイールのハブ孔に挿入される。前記第1車軸は、前記第1ベアリングに挿入される。前記第2車軸は、前記第2ベアリングに挿入される。前記第1支持部材は、前記第1ホイールを車幅方向の内側から支持する。前記第2支持部材は、前記第2ホイールを車幅方向の内側から支持する。前記リーン機構は、前記車体が前後方向を回転中心として傾斜した際に前記第1ホイール及び前記第2ホイールを前後方向を回転中心として傾斜させる。前記第1ホイールには、前記第1タイヤのタイヤ幅中央位置よりも車幅方向の外側のみに位置するハブが設けられており、当該ハブにハブ孔が形成されている。前記第2ホイールには、前記第2タイヤのタイヤ幅中央位置よりも車幅方向の外側のみに位置するハブが設けられており、当該ハブにハブ孔が形成されている。前記第1ホイールのハブ孔に挿入されるベアリングは、単一の前記第1ベアリングである。前記第2ホイールのハブ孔に挿入されるベアリングは、単一の前記第2ベアリングである。
【0009】
これにより、ホイールのハブ孔の車幅方向の両側にベアリングを挿入する構成と比較して、ベアリングの数(部品点数)を減らしたり、ホイールのハブ孔の軸長さを短くしたりすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、単純な構成で前輪を車体に支持することが可能なリーン型車両を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態のリーン型車両の側面図。
図2】リーン型車両の前部の側面図。
図3】リーン型車両の前部の平面図。
図4】リーン機構の斜視図。
図5】リーン動作を示す概略正面図。
図6】ハブ、車軸、及び左アームの斜視図。
図7】ホイール及びそれに取り付けられる部材を前後方向に垂直な平面で切った断面図。
図8】第2実施形態のリーン型車両の前部の側面図。
図9】第2実施形態のリーン機構の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明では、リーン型車両1に乗車した運転者から見た方向で、リーン型車両1の左右方向を定義する。従って、リーン型車両1が直立している状態では、前後方向は車長方向に一致し、左右方向は車幅方向に一致する。また、上下方向(鉛直方向)は高さ方向に一致する。
【0013】
以下の説明では、AがBに取り付けられる(支持される)と記載した場合は、AがBに直接取り付けられる(支持される)構成だけでなく、別の部材を介して取り付けられる(支持される)構成も含むものとする。また、Aが車幅方向中央と重なるとは、例えば平面視又は正面視においてリーン型車両の車幅方向中央を通る仮想線がAと重なることである。また、前部とは、前後方向に2分割又は3分割した場合の最も前側の部分である(後部等についても同様)。また、部材の位置について説明するときは、リーン型車両1が直立している状態、舵角が中立である状態、かつ、自重以外の荷重が掛かっていない状態における位置を示すものとする。
【0014】
初めに、図1図2を参照して、リーン型車両1の概要について説明する。
【0015】
リーン型車両1は、車体2と、左前輪(第1前輪)31Lと、右前輪(第2前輪)31Rと、後輪9と、を備える。車体2は、リーン型車両1の骨格となる車体フレーム3を含んでいる。車体フレーム3は、複数のフレーム要素がボルト又は溶接等で連結された構成である。
【0016】
左前輪31Lは、車幅方向中央に対して左側(第1側)に配置されている。左前輪31Lは、車幅方向中央に対して右側(第2側)に配置されている。左前輪31L及び右前輪31Rは、車体フレーム3に取り付けられる。左前輪31L及び右前輪31Rの詳細な取付方法については後述する。
【0017】
後輪9は、車幅方向中央に配置されている。車体フレーム3の後部には、車体フレーム3に対して上下に搖動可能なスイングアーム4が取り付けられている。後輪9は、スイングアーム4に取り付けられている。
【0018】
車体フレーム3には、エンジン5が取り付けられている。エンジン5は、リーン型車両1を走行させるための駆動源である。エンジン5が発生させた動力は、ドライブチェーン6を介して後輪9に伝達される。これにより、リーン型車両1を走行させることができる。エンジン5に代えて又は加えて他の駆動源、例えば走行用の電動モータが設けられていてもよい。あるいは、エンジン5に代えて、走行用の動力を運転者が付与するためのペダル等が設けられていてもよい。
【0019】
車体フレーム3には、バーハンドル型のステアリングハンドル7が取り付けられている。運転者がステアリングハンドル7に回転操舵力を加えることで、この回転操舵力が後述の機構及び操舵ロッド26を介して左前輪31L及び右前輪31Rに伝達される。その結果、リーン型車両1の進行方向を変化させることができる。以下では、リーン型車両1の進行方向が変化することをリーン型車両1が旋回すると称することがある。また、リーン型車両1は、後述のリーン機構により、旋回時において、路面に対して旋回中心側に傾斜する(リーンする)。なお、ステアリングハンドル7は、バーハンドル型に限られず、ステアリングホイールであってもよい。
【0020】
ステアリングハンドル7の後方には、運転者が着座するためのシート8が配置されている。車体2の左側面と右側面にはそれぞれ図略のステップが配置されている。運転者は、シート8に跨って、左右のステップに足を載せる。このように、リーン型車両1は、運転者がシート8に跨って着座する種類の車両(鞍乗型車両)である。
【0021】
次に、図2及び図3を参照して、リーン型車両1が備える前側のサスペンション10について説明する。
【0022】
サスペンション10は、車体2と、左前輪31L及び右前輪31Rと、を連結している。サスペンション10は、路面の凹凸等による左前輪31L及び右前輪31Rの振動が車体2に直接伝達しないように、車体2に伝達される振動を軽減する。また、以下の説明では、サスペンション10を境界として、左前輪31L及び右前輪31R側(振動する側)に取り付けられている部材を「振動側の部材」と称する。サスペンション10を境界として、車体2側(制振されている側)に取り付けられている部材を「制振側の部材」と称する。
【0023】
サスペンション10は、第1筒状サスペンション11と、第2筒状サスペンション12と、第3筒状サスペンション13と、を備える。以下では、第1筒状サスペンション11、第2筒状サスペンション12、及び第3筒状サスペンション13をまとめて「筒状サスペンション11,12,13」と称する。筒状サスペンション11,12,13は、それぞれ同じ構成である。筒状サスペンション11,12,13は、自動二輪車に一般的に採用されるフロントフォークと同じ構成である。なお、サスペンション10は、フロントフォーク型に限られない。
【0024】
筒状サスペンション11,12,13は、それぞれ、筒体10aと、スライド体10bと、スプリング10cと、を備える。
【0025】
筒体(アウターチューブ)10aは、細長い筒状の部材である。筒体10aには、スライド体(インナーチューブ)10bが挿入されている。スライド体10bは、径が筒体10aよりも小さい細長い筒状の部材である。スライド体10bは、筒体10aに対して、長手方向に沿って相対移動可能である。スライド体10bの内部にはスプリング10cが挿入されている。筒体10aとスライド体10bは、スプリング10cを介して接続されている。この構成により、スライド体10bから筒体10aに伝達される振動を軽減できる。サスペンション10の内部にはオイルが封入されており、筒体10aに対してスライド体10bを移動させることでオイルが移動する。このオイルの移動が抵抗力(減衰力)となり、振動を短時間で減衰することができる。
【0026】
本実施形態では、筒体10aがスライド体10bよりも上側に位置しており、上述の「制振側の部材」は基本的には筒体10aと一体的に振動する。スライド体10bは、筒体10aよりも下側に位置している。上述の「振動側の部材」は、基本的にはスライド体10bと一体的に振動する。なお、筒体10aとスライド体10bの上下の位置を反転させてもよい。
【0027】
筒状サスペンション11,12,13のそれぞれのスライド体10bは、一体的にスライドする構成である。具体的には、サスペンション10は、上連結部材14と、下連結部材15と、を備える。
【0028】
上連結部材14は、筒状サスペンション11,12,13のそれぞれの筒体10aを連結する。これにより、筒状サスペンション11,12,13のそれぞれの筒体10aが相対移動できないため、それぞれの筒体10aを一体化できる。また、筒状サスペンション11,12,13の筒体10aの少なくとも1つは、車体フレーム3の前部に位置する前フレーム3aに取り付けられている。
【0029】
下連結部材15は、筒状サスペンション11,12,13のそれぞれのスライド体10bを連結する。これにより、筒状サスペンション11,12,13のそれぞれのスライド体10bが相対移動できないため、それぞれのスライド体10bを一体的にスライドさせることができる。また、筒状サスペンション11,12,13のスライド体10bの少なくとも1つは、下連結ベース16に取り付けられている。下連結ベース16には、後述の機構を介して、左前輪31L及び右前輪31Rが取り付けられている。
【0030】
次に、図1及び図2を参照して、前輪の概要について説明する。
【0031】
左前輪31Lと右前輪31Rは、車幅方向中央を基準として左右対称である。そのため、以下では、左前輪31Lのみを説明し、右前輪31R(右ホイール32R、右タイヤ33R)及び右ブレーキ34R等に関する説明を省略する。
【0032】
左前輪31Lは、左ホイール32Lと、左タイヤ33Lと、を備える。また、左ホイール32Lの車幅方向外側には、左ブレーキ(前輪ブレーキ機構)34Lが取り付けられている。左ブレーキ34Lは、左ホイール32Lに取り付けられたブレーキディスク34aをブレーキキャリパー34bで挟むことで、左前輪31Lを制動する。なお、左ブレーキ34Lは、左ホイール32Lの車幅方向内側に取り付けられていてもよい。
【0033】
左ホイール32Lは、ハブ32aと、スポーク32bと、リム32cと、を備える。ハブ32aには、車軸が挿入されるハブ孔が形成されている。スポーク32bは、ハブ32aから放射状に外側に延びる形状である。リム32cは、スポーク32bの径方向外側に接続されており、左タイヤ33Lが取り付けられる。
【0034】
左ホイール32Lには、左ナックル部材としての左アーム45が取り付けられている。上述の操舵ロッド26の車幅方向外側の端部は左アーム45に回転可能に取り付けられている。操舵ロッド26は、左アーム45を介して、操舵力を左前輪31Lに伝達する。なお、左アーム45は、後述のリーン機構の一部としても構成されている。つまり、本実施形態の左アーム45は、実舵角を変更するためのナックル部材と、リーン型車両1をリーンさせるための部材と、を共通化したものである。
【0035】
次に、図2及び図3を参照して、運転者が加えた回転操舵力を伝達する機構について説明する。
【0036】
ステアリングハンドル7の下方には、リアブラケット21が設けられている。ステアリングハンドル7とリアブラケット21は、例えば固定具で連結されている。ステアリングハンドル7及びリアブラケット21は、操舵回転軸線7a(上下方向に略平行な線)を回転中心として一定的に回転可能である。また、この操舵回転軸線7aを中心としたステアリングハンドル7の回転角度を操舵角と称することがある。
【0037】
リアブラケット21には伝達アーム(回転伝達部)22の後端が回転可能に取り付けられている。伝達アーム22は、リアブラケット21と、第1操舵部23と、を接続する。伝達アーム22は、ステアリングハンドル7に加えられた回転操舵力を第1操舵部23に伝達する。
【0038】
第1操舵部23は、リアブラケット21及びステアリングハンドル7の前方に位置している。また、第1操舵部23は、車幅方向中央に重なるように位置している。第1操舵部23には、伝達アーム22の前端が取り付けられている。この構成により、ステアリングハンドル7及びリアブラケット21の回転に伴って、第1操舵部23を回転させることができる。
【0039】
第1操舵部23には、パンタグラフ機構24が取り付けられている。パンタグラフ機構24は、車幅方向中央に重なるように位置している。パンタグラフ機構24は、第1リンク部24aと、第2リンク部24bと、を備える。第1リンク部24aは、第1操舵部23に、車幅方向を回転中心として回転可能に取り付けられている。第2リンク部24bは、後述の第2操舵部25に、車幅方向を回転中心として回転可能に取り付けられている。また、第2操舵部25は、「振動側の部材」である。第1リンク部24aと第2リンク部24bは、車幅方向を回転中心として回転可能に互いに連結されている。
【0040】
以上の構成により、第1操舵部23と第2操舵部25の相対距離が変化した場合であっても、第1操舵部23と第2操舵部25が連結された状態を維持することができる。従って、路面の凹凸等によりサスペンション10が伸縮した場合であっても、回転操舵力が伝達可能な状態を維持できる。
【0041】
第2操舵部25は、車幅方向中央に重なるように位置している。第2操舵部25は、パンタグラフ機構24を介して伝達された回転操舵力を操舵ロッド26に伝達する。第2操舵部25は、サスペンション取付部25aと、ロッド取付部25bと、を備える。
【0042】
サスペンション取付部25aは、パンタグラフ機構24(詳細には第2リンク部24b)に取り付けられている。サスペンション取付部25aは、更に、下連結ベース16に取り付けられている。第2操舵部25は操舵に応じて回転するが、下連結ベース16は操舵に応じて回転しない。そのため、第2操舵部25は、下連結ベース16に対して相対回転可能に取り付けられている。
【0043】
ロッド取付部25bは、サスペンション取付部25aの下部に取り付けられている。ロッド取付部25bは、略L字状であり、サスペンション取付部25aから前方に延びる部分と、下方に延びる部分と、を含んでいる。この構成により、サスペンション取付部25aの下方に空間を形成できる。この空間には、後述のリーン機構の一部が配置される。
【0044】
操舵ロッド26は、ロッド取付部25bに対して回転可能に取り付けられている。操舵ロッド26の長手方向は車幅方向に一致している。操舵ロッド26の左端は、左前輪31L(詳細には左前輪31Lのうち車軸よりも前方)に取り付けられている。操舵ロッド26の右端は、右前輪31R(詳細には右前輪31Rのうち車軸よりも前方)に取り付けられている。運転者が加えた回転操舵力によってロッド取付部25bが所定の回転軸線を中心に回転することで、操舵ロッド26が左右の何れかに移動する。その結果、実舵角が変化する。実舵角とは、左前輪31L及び右前輪31Rの向き(詳細には略上下方向を回転中心とした回転角度)である。以上のようにして、運転者の操作に応じてリーン型車両1の進行方向を変化させることができる。
【0045】
次に、図4及び図5を参照して、リーン機構42について説明する。
【0046】
また、リーン機構42の説明において、回転可能に取り付けられているとは、前後方向を回転中心として、相対回転可能に取り付けられていることを意味する。
【0047】
下連結ベース16の後部には、下連結ベース16から下側に延びるリーンベース41が取り付けられている。リーンベース41は、リーン機構42を支持するとともに、リーン機構42を車体2側(車体フレーム3側)に連結するための部材である。リーンベース41は、車幅方向中央と重なるように位置している。
【0048】
リーンベース41及びリーン機構42は、下連結ベース16に取り付けられているので、「振動側の部材」である。また、リーンベース41及びリーン機構42は、比較的低い位置(側面視で一部又は全体が左前輪31Lと重なる位置)に配置されている。これにより、重量物を低い位置に配置できるので、リーン型車両1を安定させることができる。
【0049】
リーンベース41は、上取付部41aと、下取付部41cと、を備える。上取付部41a及び下取付部41cは、前側(前後方向の一側、以下同じ)の面に形成されている。上取付部41aは、下取付部41cよりも上方かつ後方に位置している。上取付部41aには、前方に突出する上突出筒41bが形成されている。下取付部41cには、前方に突出する下突出筒41dが形成されている。なお、後述の第2実施形態で示すように、リーンベース41の構成は第1実施形態とは異なっていてもよい。
【0050】
リーン機構42は、上アーム43と、下アーム44と、左アーム(第1アーム)45と、右アーム(第2アーム)46と、を備える。上アーム43は、下アーム44よりも上方に位置している。上アーム43の左端、及び、下アーム44の左端には、左アーム45がそれぞれ回転可能に連結されている。上アーム43の右端、及び、下アーム44の右端には、右アーム46がそれぞれ回転可能に連結されている。リーン機構42は、車幅方向中央と重なるように位置しており、左アーム45と右アーム46は車幅方向中央を基準として左右対称である。
【0051】
上アーム43の左端には二股状の取付部がそれぞれ形成されている。上アーム43は、二股状の取付部で左アーム45の上部を前後方向で挟み込むようにして、左アーム45に取り付けられる。これにより、左前輪31Lを適切に傾斜させることができる。上アーム43の右端、下アーム44の左端及び右端についても、同様に二股状の取付部が形成されている。
【0052】
上アーム43の長手方向の中央には、上支点部43aが形成されている。上支点部43aは、軸方向が前後方向となる筒状の部分である。上支点部43aは上取付部41aに回転可能に取り付けられている。また、上支点部43aの前端には、連結リンク48が回転可能に取り付けられている。連結リンク48は、上支点部43aの前端に加え、上突出筒41bの前端にも回転可能に取り付けられている。これにより、リーンベース41と連結リンク48で上アーム43を前後方向で挟み込むように支持できるので、片持ちの場合と比較して上アーム43を安定的に支持できる。なお、上突出筒41bと連結リンク48は省略してもよい。
【0053】
下アーム44は、上アーム43と同様に取り付けられている。具体的には、下アーム44の長手方向の中央には、下支点部44aが形成されている。下支点部44aは、軸方向が前後方向となる筒状の部分である。下支点部44aは下取付部41cに回転可能に取り付けられている。また、下支点部44aの前端には、リーンブラケット49が回転可能に取り付けられている。リーンブラケット49は、下支点部44aの前端に加え、下突出筒41dの前端にも回転可能に取り付けられている。これにより、リーンベース41とリーンブラケット49で下アーム44を前後方向で挟み込むように支持できるので、片持ちの場合と比較して下アーム44を安定的に支持できる。
【0054】
また、本実施形態のリーンブラケット49は、下アーム44だけでなく、リーンに関する別の機構(例えばリーンブレーキ機構50の一部)をリーンベース41に取り付ける機能も有している。リーンブレーキ機構50は、リーン動作を制動するための機構である。なお、リーンブラケット49は、下アーム44のみを取り付けるための部材(連結リンク48と同様の部材)であってもよい。
【0055】
また、上突出筒41b及び下突出筒41dは、何れも、上アーム43より下方であって、下アーム44よりも上方に位置している。これにより、例えば上突出筒41bが上取付部41aよりも上方にある構成等と比較して、リーン機構42の上下方向のサイズを小さくすることができる。
【0056】
左アーム45は、左ホイール32Lに回転可能に取り付けられている。具体的には、左アーム45は、左ホイール32Lのハブ32aに取り付けられている。左アーム45は、左ホイール32Lと一体的に動くように、左ホイール32Lに固定されている。同様に、右アーム46は、右ホイール32Rのハブ32aに固定されている。
【0057】
4つのアームは平行リンクを構成している。従って、図5に示すように、リーン動作時においても、上アーム43と下アーム44は平行を維持する。また、上アーム43は、上支点部43aを回転中心として、リーンベース41に対して相対回転する。同様に、下アーム44は、下支点部44aを回転中心として、リーンベース41に対して相対回転する。このように、リーン機構42は、リーンベース41に対して相対回転する。
【0058】
また、4つのアームは平行リンクなので、リーン動作時においても、左アーム45と右アーム46は平行を維持する。従って、左前輪31Lと右前輪31Rを同じリーン角度で傾斜させることができる。リーン角度とは、リーン型車両1の車高方向と、路面に垂直な方向と、がなす角である。
【0059】
また、リーンベース41は、上アーム43の長手方向の中央(上支点部43a)と、下アーム44の長手方向中央(下支点部44a)と、を連結している。従って、リーンベース41は、左前輪31L及び右前輪31Rと同じリーン角度で傾斜する。言い換えれば、車体2も左前輪31L及び右前輪31Rと同じリーン角度で傾斜する。また、後輪9は車体2と一体的にリーンする。以上のようにして、リーン型車両1はリーン可能に構成されている。
【0060】
次に、図6及び図7を参照して、左前輪31L及びそれに取り付けられる部材の詳細について説明する。
【0061】
左前輪31Lに取り付けられている部品と右前輪31Rに取り付けられている部品は、車幅方向中央を基準として左右対称である。そのため、以下では、主として左前輪31Lに取り付けられている部品を説明し、右前輪31Rに取り付けられている部品の説明を簡略化又は省略することがある。
【0062】
左前輪31Lには、ベアリング35と、車軸36と、が取り付けられている。
【0063】
ベアリング35は、ハブ32aのハブ孔に挿入されている。ベアリング35は圧入等の方法でハブ孔に取り付けられている。圧入は、左ホイール32Lの車幅方向内側から行われている。そのため、ハブ孔のうち左寄り(車幅方向内側寄り)にベアリング35が位置している。言い換えれば、ハブ孔の軸長さ(車幅方向の長さ)の中央よりも車幅方向の内側に、ベアリング35(詳細にはベアリング35の車幅方向の長さの中央)が位置している。ハブ孔に取り付けられるベアリングは、単一のベアリング35のみである。ベアリング35は、軸方向に並べて複数の玉が配置される複列式である。また、ベアリング35は、玉とリングが所定の接触角を有するアンギュラベアリングである。この構成により、様々な方向の荷重を受けることができる。なお、ベアリング35に代えて、異なる構成のベアリングを用いてもよい。
【0064】
一般的なリーン型車両である自動二輪車では、1つの前輪に車幅方向に並べて2つのベアリングが挿入される。なぜなら、自動二輪車では前輪を2本のフロントフォークで挟んでいるため、前輪に2つのベアリングを挿入しないと、安定して前輪を支持できないからである。
【0065】
これに対し、本実施形態では左前輪31L及び右前輪31Rは、それぞれ車幅方向の内側のみで支持されている。そのため、例えば車幅方向の内側から挿入した単一のベアリング35のみを用いて左前輪31L又は右前輪31Rを支持しても、左前輪31L又は右前輪31Rを安定して支持できる。また、1つの車輪に2つのベアリングを取り付ける構成と比較して、部品点数を削減したり、構成を簡素化したり、ハブ孔の長さを短くしたりすることができる。
【0066】
車軸36は、ベアリング35のインナーリングに挿入される。車軸36は圧入等の方法でベアリング35に取り付けられている。車軸36は、円筒状である。車軸36の外表面の少なくとも一部には、突起36aが形成されている。突起36aは、軸方向に沿って形成されている。また、突起36aは、円周方向の全体にわたって形成されている。つまり、車軸36は、中空状のスプラインシャフトである。突起36aは、軸方向の全体にわたって形成されていてもよいし、ベアリング35が配置される箇所を避けた部分(即ち、後述の左アーム45と取付部材37が取り付けられる部分)のみに形成されていてもよい。
【0067】
車軸36は、ベアリング35から車幅方向の内側と外側の両方に突出するように取り付けられている。車軸36のうち車幅方向の内側部分には、左アーム(第1支持部材、第1部材、内側部材)45が取り付けられている。車軸36のうち車幅方向の外側部分には、取付部材(第1部材、外側部材)37と、が取り付けられている。
【0068】
左アーム45は、上述のようにナックル部材であるとともに、リーン機構42の一部でもある。左アーム45は、車軸36等を介して左前輪31Lを車幅方向の内側から支持している。また、左アーム45には、車軸36を挿入するための取付孔45aが形成されている。取付孔45aの内壁には溝45bが形成されている。溝45bは、突起36aに対応する形状であり、軸方向に沿って形成されている。また、溝45bは、円周方向の全体にわたって形成されている。
【0069】
溝45bと突起36aを合わせるようにして、左アーム45の取付孔45aに車軸36が挿入される。これにより、左アーム45と車軸36は一体的に回転することとなる。つまり、左アーム45と車軸36の相対回転を防止する構造を回転防止構造80と称したときに、左アーム45と車軸36は回転防止構造80を介して連結されることとなる。なお、左アーム45はベアリング35を介してハブ32aに取り付けられているので、左前輪31Lが回転しても車軸36及び左アーム45は回転しない。
【0070】
なお、回転防止構造80は、上記の溝45bと突起36aに限られない。例えば、溝45bに代えて、円周方向に単一の溝(キー溝)が形成されていてもよい。この場合、突起36aに代えて、円周方向に単一の突起が形成される。また、左アーム45側に突起を形成し、車軸36側に溝を形成してもよい。また、ロックピンを用いて相対回転を防止する構成であってもよい。
【0071】
取付部材37は、車軸36等を介して左前輪31Lを車幅方向の外側から支持している。取付部材37には、左アーム45と同様に、取付孔と溝が形成されている。取付部材37の取付孔にも車軸36が挿入される。従って、取付部材37は、左アーム45と同様に、回転防止構造80によって相対回転が防止されている。これにより、取付部材37と車軸36は一体的に回転することとなる。なお、取付部材37はベアリング35を介してハブ32aに取り付けられているので、左前輪31Lが回転しても車軸36及び取付部材37は回転しない。
【0072】
取付部材37には、キャリパーブラケット39がボルト等の固定具により取り付けられている。従って、取付部材37とキャリパーブラケット39は一体的に回転可能である。キャリパーブラケット39には、ブレーキキャリパー34bが取り付けられる。一方、ハブ32aには、ディスクブラケット38がベアリング35を介さずに取り付けられている。従って、ディスクブラケット38は左ホイール32Lと一体的に回転する。また、ディスクブラケット38にはブレーキディスク34aが取り付けられている。以上の構成により、リーン型車両1の走行時において、キャリパーブラケット39とディスクブラケット38が相対回転する。そのため、キャリパーブラケット39を作動させて図略のブレーキパッドでディスクブラケット38を押圧することで、ブレーキを作動させることができる。
【0073】
左アーム45と取付部材37は、ベアリング35を車幅方向で挟み込むように位置している。この状態において、車軸36にボルトとナットを取り付けることで、左アーム45と取付部材37が固定される。また、上述した溝45bと突起36aが噛み合うことにより、車軸36、左アーム45、及び取付部材37は一体的に回転する。
【0074】
そのため、例えば左アーム45の取付角度(回転位相)と、取付部材37の取付角度(回転位相)と、が常に同じとなる。従って、例えばブレーキキャリパー34bの取付角度が左アーム45に対して変化することを防止できる。これにより、例えば左アーム45の取付角度を適切にするだけで、キャリパーブラケット39の取付角度も適切となる。なお、取付部材37には、キャリパーブラケット39以外の部材(例えば車速センサを取り付けるための部材)が取り付けられていてもよい。
【0075】
次に、左前輪31Lのリーンの回転中心位置C1とトレッド幅の関係について説明する。左前輪31Lは、左アーム45の長手方向の中央を回転中心としてリーンする。厳密には、左前輪31Lのリーンの回転中心(以下、回転中心位置C1)は、上アーム43と左アーム45の連結点と、下アーム44と左アーム45の連結点と、を結ぶ線分の中央である。ここで、タイヤ幅中央位置P1から離れた位置に回転中心位置C1がある場合、リーンすることで左右のタイヤ間の距離(トレッド幅)が変化するため、横滑りが発生する可能性がある。
【0076】
しかし、一般的な前輪は、タイヤ幅中央位置P1に重なる位置にハブ孔が形成されており、このハブ孔にベアリングが挿入されている。そのため、タイヤ幅中央位置P1と回転中心位置C1とを一致させることは困難であった。
【0077】
これに対し、本実施形態では、左前輪31Lのタイヤ幅中央位置P1よりも車幅方向の外側にハブ32aが位置しており、そこにベアリング35が位置している。そのため、タイヤ幅中央位置P1に重なる位置に、左前輪31Lをリーンさせるための部材(即ち、左アーム45)を位置させることができる。その結果、本実施形態では、左前輪31Lの回転中心位置C1が左タイヤ33Lのタイヤ幅中央位置P1に一致している。また、上述したように、右前輪31R及び右アーム46等は左右対称なので、右側についても回転中心位置C1とタイヤ幅中央位置P1が一致している。以上により、リーン動作時においてトレッド幅が殆ど又は全く変化しないので、横滑りが発生しにくい。
【0078】
次に、図8及び図9を参照して、第2実施形態のリーン型車両1について説明する。
【0079】
第2実施形態の説明では、主として第1実施形態と相違する構成について説明する。また、第2実施形態の説明では、第1実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略又は簡略化する場合がある。
【0080】
第1実施形態のサスペンション10は、3本の筒状サスペンション11,12,13を備える。これに対し、第2実施形態のサスペンション10は、2本の筒状サスペンション11,12を備える。第1筒状サスペンション11と第2筒状サスペンション12は車幅方向に並ぶように位置している。
【0081】
第1実施形態では、ステアリングハンドル7の回転操舵力は第1操舵部23を介してパンタグラフ機構24に伝達される。これに対し、第2実施形態では、ステアリングハンドル7の回転操舵力は、パンタグラフ機構24に直接伝達される。従って、ステアリングハンドル7と同軸で回転する部材にパンタグラフ機構24が取り付けられる。
【0082】
また、第2実施形態では、下連結ベース16が第2操舵部25と交差しておらず、下連結ベース16の真下にリーンベース41が位置している。また、上アーム43及び下アーム44は、リーンベース41よりも後方側に位置している。それに伴い、操舵ロッド26及びリーンブレーキ機構50についても、リーンベース41よりも後方側に位置している。このように、リーン及び操舵に関する部材をリーンベース41の一側(第1実施形態では前側、第2実施形態では後側)にすることで、リーン及び操舵に関する部材を集約して配置できる。
【0083】
また、図9に示すように、上アーム43及び下アーム44の取付構造についても、第1実施形態とは異なる。第1実施形態では、リーンベース41の上取付部41aと下取付部41cは、前後方向の位置が異なっていた。これに対し、第2実施形態では、上取付部41aと下取付部41cの前後方向の位置は同じである。そのため、上アーム43及び下アーム44は、前後方向の位置が同じである。
【0084】
また、第1実施形態では、リーンベース41には、上突出筒41bと下突出筒41dが形成されていたが、第2実施形態では、この両方の機能を有する中突出筒41eが形成されている。従って、リーンブラケット49は、上支点部43a、中突出筒41e、下支点部44a、及びリーンブレーキ機構50をまとめてリーンベース41に取り付ける。
【0085】
以上に説明したように、上記実施形態のリーン型車両1は、車体2と、左ホイール(第1ホイール)32Lと、右ホイール(第2ホイール)32Rと、左右のベアリング(第1ベアリング及び第2ベアリング)35と、左右の車軸(第1車軸及び第2車軸)36と、左アーム45と、右アーム46と、リーン機構42と、を備える。左ホイール32Lは、車幅方向の第1側(左側)に位置している。右ホイール32Rは、車幅方向の第1側の反対側である第2側(右側)に位置している。左側のベアリング35は、左ホイール32Lのハブ孔に挿入される。右側のベアリング35は、右ホイール32Rのハブ孔に挿入される。左側の車軸36は、左側のベアリング35に挿入される。右側の車軸36は、右側のベアリング35に挿入される。左アーム(第1支持部材)45は、左ホイール32Lを車幅方向の内側から支持する。右アーム(第2支持部材)46は、右ホイール32Rを車幅方向の内側から支持する。リーン機構42は、車体2が前後方向を回転中心として傾斜した際に左ホイール32L及び右ホイール32Rを前後方向を回転中心として傾斜させる。左ホイール32Lのハブ孔に挿入されるベアリングは、単一のベアリング35である。右ホイール32Rのハブ孔に挿入されるベアリングは、単一のベアリング35である。
【0086】
これにより、左右のホイールのハブ孔の車幅方向の両側にベアリング35をそれぞれ挿入する構成と比較して、ベアリングの数(部品点数)を減らしたり、ホイールのハブ孔の軸長さを短くしたりすることができる。
【0087】
また、上記実施形態のリーン型車両1において、左側のベアリング35の軸長さの中央は、左ホイール32Lのハブ孔の軸長さの中央よりも、車幅方向の内側である。右側のベアリング35の軸長さの中央は、右ホイール32Rのハブ孔の軸長さの中央よりも、車幅方向の内側である。
【0088】
これにより、車幅方向内側(ホイールが支持される側)に近くなるようにベアリング35を配置することができるので、ホイールを安定させることができる。
【0089】
また、上記実施形態のリーン型車両1は、左タイヤ(第1タイヤ)33Lと、右タイヤ(第2タイヤ)33Rと、を備える。左タイヤ33Lは、左ホイール32Lに取り付けられる。右タイヤ33Rは、右ホイール32Rに取り付けられる。左タイヤ33Lのタイヤ幅中央位置P1よりも車幅方向の外側に左側のベアリング35が位置している。右タイヤ33Rのタイヤ幅中央位置P1よりも車幅方向の外側に右側のベアリングが位置している。リーン機構42が、車幅方向において、第1ベアリングと第2ベアリングの間に位置している。
【0090】
これにより、タイヤ幅中央位置P1を避けた位置に左右のベアリング35が位置しているため、タイヤ幅中央位置P1の近くにリーン機構42を位置させることができる。そのため、リーン動作時の回転中心位置C1とタイヤ幅中央位置P1とを近づけることができる。そのため、リーン動作時のタイヤのトレッド幅の変化を小さくすることができる。
【0091】
また、上記実施形態のリーン型車両1において、リーン機構42が左ホイール32Lを傾斜させる回転中心位置C1と、左タイヤ33Lのタイヤ幅中央位置P1と、が一致している。リーン機構42が右ホイール32Rを傾斜させる回転中心位置C1と、右タイヤ33Rのタイヤ幅中央位置P1と、が一致している。
【0092】
これにより、リーン動作時のタイヤトレッド幅の変化を殆ど0にすることができる。
【0093】
また、上記実施形態のリーン型車両1は、左側の車軸36に取り付けられる左アーム45又は取付部材37を備える。左側の車軸36と左アーム45又は取付部材37は、相対回転を防止する回転防止構造80を介して連結される。
【0094】
これにより、車軸36に対して左アーム45又は取付部材37が相対回転することを防止したり、車軸36と左アーム45又は取付部材37を一体的に回転させたりすることができる。
【0095】
また、上記実施形態のリーン型車両1は、左アーム45及び取付部材37を備える。左アーム45は、ベアリング35よりも車幅方向の内側に位置している。取付部材37は、ベアリング35よりも車幅方向の外側に位置している。回転防止構造80は、左アーム45、取付部材37、及び車軸36のそれぞれの相対回転を防止する。
【0096】
これにより、左アーム45と取付部材37の位置を合わせることができる。
【0097】
また、上記実施形態のリーン型車両1において、回転防止構造80は、溝45bと、突起36aと、を備える。溝45bは、車軸36に軸方向に沿って形成される。突起36aは、左アーム45及び取付部材37に軸方向に沿って形成される。
【0098】
これにより、車軸36に左アーム45及び取付部材37を取り付けるだけで、上記の効果を発揮させることができる。
【0099】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0100】
上述した第1実施形態と第2実施形態の特徴を適宜組み合わせてもよい。例えば、第2実施形態の筒状サスペンションの本数又はリーン機構42等を第1実施形態に適用することができる。他の特徴についても同様である。
【0101】
上述した様々な機構において、部品の形状、部品のレイアウト、部品の取付構造、動力の伝達構造等は一例であり、異なる構成であってもよい。例えば、左アーム45と操舵力を伝達する部品を共通とせずに、別々の部品とすることができる。
【0102】
上記実施形態では、2つの前輪及び1つの後輪を有するリーン型車両1に本発明を適用する例を説明したが、車輪数はこれに限られず、後輪が2つであってもよい。また、リーン型車両1に乗車可能な人の数も1又は2に限られず、3以上であってもよい。
【符号の説明】
【0103】
1 リーン型車両
2 車体
7 ステアリングハンドル
10 サスペンション
23 第1操舵部
24 パンタグラフ機構
25 第2操舵部
31L 左前輪(第1前輪)
31R 右前輪(第2前輪)
32L 左ホイール(第1ホイール)
32R 右ホイール(第2ホイール)
42 リーン機構
50 リーンブレーキ機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9