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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】血管インプラント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/852 20130101AFI20240202BHJP
   A61F 2/07 20130101ALI20240202BHJP
   A61F 2/86 20130101ALI20240202BHJP
   A61F 2/90 20130101ALI20240202BHJP
【FI】
A61F2/852
A61F2/07
A61F2/86
A61F2/90
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019545262
(86)(22)【出願日】2018-02-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 US2018018943
(87)【国際公開番号】W WO2018156574
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-02-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】62/461,616
(32)【優先日】2017-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510015338
【氏名又は名称】シルク・ロード・メディカル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SILK ROAD MEDICAL, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100136777
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100221589
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 俊博
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ピー・ウォレス
(72)【発明者】
【氏名】ハーバート・メンドーサ
(72)【発明者】
【氏名】ロイ・レグイドレグイド
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】井上 哲男
【審判官】安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-508083(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0133388(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0208067(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0274858(US,A1)
【文献】特表2004-531356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/852
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内に留置するのに適したステントアセンブリであって、
複数のクラウンを有するように相互接続された複数のストラットで形成された複数の内側リング構造と、隣接する前記内側リング構造の間を相互接続する複数のストラットと、を含む内側ステント構造と、
複数のクラウンを有するように相互接続された複数のストラットで形成された複数の外側リング構造と、隣接する前記外側リング構造の間を相互接続する複数のストラットと、を含む外側ステント構造であって、前記内側ステント構造は、前記外側ステント構造との間に空間を形成するように前記外側ステント構造内に配置され、前記内側ステント構造および外側ステント構造は集合的に、血管内に適合するサイズおよび形状のステント本体を形成する、外側ステント構造と、
前記内側ステント構造および外側ステント構造にサンドイッチ配置で取り付けられ、且つ、前記内側ステント構造と外側ステント構造との間の前記空間に、長さ方向において少なくとも部分的に配置されたメッシュ構造と、を含み、
前記内側ステント構造の壁厚は、前記外側ステント構造の壁厚よりも厚く
管内に留置されたときに、前記内側ステント構造と外側ステント構造との間に生じる正味の力が、前記ステント本体全体を血管壁に向かって押すように、前記内側ステント構造が、前記外側ステント構造よりも高い半径方向外向きの力を発揮し、
前記内側ステント構造の材料は、前記外側ステント構造の材料と同じであり、
前記メッシュ構造は、織り込まれた又は編み込まれた1つ以上の繊維または縫合糸で形成されている、ステントアセンブリ。
【請求項2】
前記メッシュ構造は形状記憶合金でできている、請求項1に記載のステントアセンブリ。
【請求項3】
前記メッシュ構造は複数の涙滴形の孔を形成し、前記涙滴形の孔の少なくとも2つは、第1の端部に、拡大された曲線状の領域を有し、第2の端部により小さい領域を有し、前記涙滴形の孔の少なくとも2つの拡大された曲線状の領域は互いに接触している、請求項1に記載のステントアセンブリ。
【請求項4】
前記メッシュ構造は裾を含む、請求項1に記載のステントアセンブリ。
【請求項5】
前記メッシュ構造の少なくとも一部はポリマーで形成され、前記ステント構造の一部はニッケルチタンである、請求項1に記載のステントアセンブリ。
【請求項6】
前記内側ステント構造が前記外側ステント構造内に配置されていないときにおいて、前記内側ステント構造の直径は、前記外側ステント構造の直径と同じである、請求項1に記載のステントアセンブリ。
【請求項7】
ステントアセンブリを形成する方法であって、
複数のクラウンを有するように相互接続された複数のストラットで形成された複数の内側リング構造と、隣接する前記内側リング構造の間を相互接続する複数のストラットと、を含む内側ステント構造を形成する工程と、
複数のクラウンを有するように相互接続された複数のストラットで形成された複数の外側リング構造と、隣接する前記外側リング構造の間を相互接続する複数のストラットと、を含む外側ステント構造を形成する工程と、
前記内側ステント構造を、前記外側ステント構造との間に空間を形成するように、前記外側ステント構造内に配置する工程であって、前記内側ステント構造および外側ステント構造は集合的に、血管内に適合するサイズおよび形状のステント本体を形成する、配置する工程と、
前記内側ステント構造と外側ステント構造との間の前記空間に、長さ方向において少なくとも部分的にメッシュ構造を配置する工程と、
前記メッシュ構造を前記内側ステント構造および外側ステント構造に取り付けるために、前記内側ステント構造と外側ステント構造との間の前記空間に前記メッシュ構造をサンドイッチする工程と、を含み、
前記内側ステント構造の壁厚は、前記外側ステント構造の壁厚よりも厚く
管内に留置されたときに、前記内側ステント構造と外側ステント構造との間に生じる正味の力が、前記ステント本体全体を血管壁に向かって押すように、前記内側ステント構造が、前記外側ステント構造よりも高い半径方向外向きの力を発揮し、
前記内側ステント構造の材料は、前記外側ステント構造の材料と同じであり、
前記メッシュ構造は、織り込まれた又は編み込まれた1つ以上の繊維または縫合糸で形成されている、方法。
【請求項8】
前記メッシュ構造に裾を形成する工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記メッシュ構造に裾を形成する工程は、前記メッシュ構造に裾を取り付けることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記メッシュ構造に裾を形成する工程は、前記メッシュ構造の一部をそれ自体の上に折り畳むことを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記メッシュ構造内に複数の涙滴形の孔を形成する工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記涙滴形の孔は、前記涙滴形の孔の少なくとも2つが第1の端部に拡大した曲線状の領域を有し、且つ第2の端部により小さな領域を有するように配置され、前記涙滴形の孔の少なくとも2つの拡大された曲線状の領域は互いに接触している、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記外側ステント構造を形成する工程において、前記外側ステント構造の直径は、前記内側ステント構造の直径と同じである、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2017年2月21日に出願された米国仮出願第62/461616号の優先権を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。仮出願は、その全体が参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
経管的留置(又は経管的インプラント:transluminal implantation)用のステントは、一般に、血管の内側などの人体の一部に挿入される金属の支持体でできている。ステントは通常、一般に円筒形であり、体内の所定位置で一度半径方向に拡張するように構築および配置される。いくつかのステントは、治癒段階で身体に留置された(又は身体に埋め込まれた:body-implanted)ステントを介して疾患(又は病気:disease)がヘルニアになるリスクを最小化または排除するために使用できるグラフトまたはメッシュ構造を含む。
【0003】
ステントアセンブリのメッシュ構造は、ステントの全体幅を増大させる可能性があり、望ましくない可能性がある。従って、メッシュ構造とステント構造との間の機械的取付がサイズの観点から効率的であるようにステントを製造することが望ましい。また、メッシュ構造がステントの支持部に適切に且つ安全に(又はしっかりと:securely)取り付けられていることも重要である。
【発明の概要】
【0004】
本明細書には、血管ステントアセンブリの使用および構築に関する方法およびデバイスが開示されている。ステントアセンブリは、ステント構造の上に配置され、及び/又は少なくとも部分的にステント構造に取り付けられたメッシュ構造を含む。メッシュ構造をステント構造に安全に取り付けるためのデバイスおよび方法も開示されている。ステントアセンブリはまた、ステントアセンブリを患者の血管内に送達するように構成されたステントデリバリーシステムを含むか、またはそれと結合することができる。
【0005】
一態様では、複数の相互接続されたストラット(又は支柱:struts)で形成された内側ステント構造と;複数の相互接続されたストラットで形成された外側ステント構造であって、内側ステント構造は外側ステント構造内に配置され、それらの間に空間を形成し、内側ステント構造および外側ステント構造は集合的に、血液内に適合する(又は収まる:fit)サイズおよび形状のステント本体を形成する、外側ステント構造と;メッシュ構造であって、メッシュ構造がサンドイッチ配置で(又は挟持配置で:in a sandwich arrangement)内側ステント構造および外側ステント構造に取り付けられるように、内側ステント構造と外側ステント構造の間の空間に少なくとも部分的に配置される、メッシュ構造と、を含む、血管内に留置する(又は埋め込む:implanted)のに適したステントアセンブリが開示される。
【0006】
別態様では、複数の相互接続されたストラットの内側ステント構造を形成する工程と;複数の相互接続されたストラットの外側ステント構造を形成する工程と;内側ステント構造を外側ステント構造内に、それらの間に空間を形成するように配置する工程であって、内側ステント構造および外側ステント構造は、血管内に適合するサイズおよび形状のステント本体を集合的に形成する、配置する工程と;内側ステント構造と外側ステント構造との間の空間に少なくとも部分的にメッシュ構造を配置する工程と、メッシュ構造を内側ステント構造および外側ステント構造に取り付けるように、内側ステント構造と外側ステント構造との間の空間にメッシュ構造をサンドイッチする(又は挟持する:sandwiching)工程と、を含むステントアセンブリを形成する方法が開示される。
【0007】
他の特徴および利点は、本開示の原理を例として示す様々な実施形態の以下の記載から明らかになるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、ステントアセンブリの例を示す。
図2図2は、メッシュ構造をステント構造に取り付けるために使用される裾(又は縁、又はヘム:hem)構造の概略図を示す。
図3図3は、溶融可能なポリマーリーダー(a meltable polymer leader)がニッケルチタン(NiTi)メッシュ構造に取り付けられている例を示す。
図4図4は、メッシュ構造を配置および取り付けることができる空間をそれらの間に形成する内側ステント構造および外側ステント構造を含む2つのステント構造を含んでいるステントアセンブリの概略図を示す。
図5図5は、別個のサンドイッチ保持要素がステント構造に取り付けられている実施形態を示す。
図6図6は、メッシュ構造の端部を通して手縫いされた繊維(又はフィラメント:filament)の例を示す。
図7図7は、閉ループアンカーおよび開ループアンカーを有するステント構造のクラウン領域の拡大図を示す。
図8図8は、ステント構造のクラウンに配置できるアンカーの実施形態を示す。
図9図9は、涙滴形の孔を有するステントアセンブリの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書では、血管ステントの使用および構築に関する方法およびデバイスが開示される。ステントアセンブリは、支持体またはステント構造の上に配置され、及び/又は少なくとも部分的に支持体またはステント構造に取り付けられたメッシュ構造を含む。ステント構造は、血管内に適合するサイズの管状体を集合的に形成する1つ以上のストラットで形成される。メッシュ構造は、本明細書に記載の構成のいずれかに従ってステント構造に結合される構造を形成するために織り込まれた又は編み込まれた1つ以上の繊維または縫合糸(又は縫合:sutures)で形成される。メッシュ構造は、ステント構造を少なくとも部分的に覆ってもよく、ステント構造によって少なくとも部分的に覆われてもよい。
【0010】
ステントアセンブリはまた、ステントアセンブリを患者の血管内に送達するように構成されたステントデリバリーシステムを含むか、それと結合することができる。例示的なステントデリバリーシステムは、経皮的方法(percutaneous manner)などで血管内に挿入することができる細長いステントデリバリーカテーテルを含む。ステントアセンブリは、ステントデリバリーカテーテルに、例えばステントデリバリーカテーテルの遠位領域などに、実装する(又は取り付ける:mounted)ことができる。次に、ステントデリバリーカテーテルを標的部位に展開し(又は配備し:deployed)、ステントアセンブリをステントデリバリーカテーテルから解放して、ステントアセンブリを展開して血管内の標的位置に保持することができる。
【0011】
ステントアセンブリは、頸動脈を含む任意の血管内への留置に使用できる。ステントアセンブリのメッシュ構造を使用して、留置の最初の30日間など、ステントアセンブリが患者に留置される治癒段階でステントを介して疾患がヘルニアになるリスクを最小化または排除することができる。
【0012】
ステントアセンブリは、自己拡張型ステント、またはバルーンを膨張させることにより半径方向に拡張可能な、または拡張部材により拡張されるステントを含む、任意のステントであり得る。ステントはまた、金属材料、金属合金(例えば、ニッケルチタン)、または高分子複合体さえも含む、任意の所望の材料で作ることもできる。ステントは、任意のワイヤーまたはセルのデザインを有し得る。本発明のステントを展開できる管には、血管などの自然の身体血管が含まれるが、これに限定されない。
【0013】
本明細書には、ステント構造に結合するためのメッシュ構成のさまざまな例が記載される。メッシュ構成には、例えば、(1)メッシュの材料;(2)メッシュの糸の(又はより糸の:thread)構成;(3)メッシュを形成する繊維のサイズと量;(4)メッシュとステントとの間の取り付け方法など、およびそれらの組み合わせが含まれる。メッシュ構造に取り付けるためのステント構造の様々な実施形態も本明細書に記載される。
【0014】
図1は、メッシュ本体110(またはメッシュ構造)に結合されたステント本体105(またはステント構造)を含むステントアセンブリ100の斜視図を示す。ステント本体は、相互に取り付けられて複数のセルまたは開口部を形成する、相互接続された複数のストラットまたはワイヤーで形成される。ストラットは、任意のさまざまな方法で相互に取り付けることができる。ステント本体は一般に、頸動脈などの血管内に適合するようなサイズおよび形状の円筒形を形成する。
【0015】
一実施形態では、メッシュ構造(「ニット」と称することがある)は、ニッケルチタン(NiTiまたはニチノール)などの形状記憶合金でできている。例示的な実施形態では、メッシュ構造は、ステント一面に(又はステントの上に:over the stent)配置された0.0005インチのニチノール繊維から形成される。別の例示的な実施形態では、メッシュ構造は、ポリエステルの単繊維または複数繊維で形成される。
【0016】
ポリエチレンテレフタレート(「PET」)メッシュ構造を有するステントは、デリバリーシステムに装着するためステント構造に圧着され得る。メッシュ構造は、全体のステントアセンブリの全厚を増加させないまたは大幅に増加させないような壁厚を有する。これに関して、メッシュ構造は、それがステント構造の壁厚の2倍未満の壁厚を有するように寸法決めされてもよい。
【0017】
ここで、メッシュ構造をステント構造に取り付けるためのさまざまな構造および方法を記載する。
【0018】
(接着剤による取付)
メッシュ構造110をステント構造105に取り付けるための実施形態では、裾が形成され、メッシュ構造110とステント構造105との間の機械的な接合部分として使用される。例えば、メッシュ構造を形成するために使用される材料の平面部分は、そのような裾を形成するためにそれ自体が裏返される。裾は、ステント構造105の対応する部分を挿入および固定できる空間を規定する。図2は、メッシュ構造110およびステント構造105に取り付けられた裾構造205の概略図を示す。
【0019】
別個の裾構造205は、縫製(又は裁縫:sewing)または接着などによりメッシュ構造110に取り付けられる。次に、メッシュ構造110は、任意の様々な方法を介してステント構造105に接着される。例えば、メッシュ構造は、NiTiメッシュ構造をステント構造に金はんだ付けするなどにより、ステント構造にはんだ付けすることができる。あるいは、ポリマー接着剤、溶融物、溶媒ポリマー結合など、またはコンフォーマルポリマーコーティングを使用することができる。図3は、溶融可能なポリマーリーダー305がNiTiメッシュ構造110に取り付けられているいくつかの本例を示す。メッシュ構造の取り付けられたポリマー部分は、次にステント構造に溶融、接着、またはそうでなければ機械的に取り付けられる。
【0020】
このように、ステントアセンブリは、ニチノールなどの形状記憶材料からステントアセンブリの端部のポリマー材料への推移(又は変遷:transition)を含む。
【0021】
(サンドイッチによる機械的取付)
メッシュ構造110をステント構造105に取り付けるための別の実施形態では、メッシュ構造110は、内側ステント構造105aと外側ステント構造105bとの間にサンドイッチされる。すなわち、ステントアセンブリは、図4に概略的に示すように、内側ステント構造105aおよび外側ステント構造105bを含む2つのステント構造を含んでいる。ステント構造105aおよび105bは、それらの間にメッシュ構造110を少なくとも部分的に配置できる空間を形成する。このように、メッシュ構造110は、ステント構造105aと105bの間に挟まれるか、またはサンドイッチされて、それらの間に確実な取り付けを形成する。
【0022】
一例では、内側ステント構造および外側ステント構造に対し以下の仕様を使用できる。
・NiTiメッシュ構造上のA.003インチの外側ステント構造と、0.006インチの内側ステント構造。
・NiTiメッシュ構造上のA.002インチの外側ステント構造と、0.008インチまたは0.009インチの内側ステント構造。
【0023】
図5に示すように、別のサンドイッチの実施形態では、別個のサンドイッチ保持要素505がステント構造のクラウンの端部にのみ追加される。図5にはメッシュ構造を示していない。
【0024】
ここで、サンドイッチの実施形態についてさらに記載する。内側ステント構造および外側ステント構造は、それらの間にメッシュ構造を配置することによりメッシュ構造を包み込む(又はカプセル化する:encapsulate)ことができる。内側ステント構造は、外側ステント構造よりも高い半径方向強度または半径方向外向きの力を発揮し、内側ステント構造と外側ステント構造との間に生じる正味の力は、留置時にステントアセンブリデバイス全体を血管壁に向かって(例えば、半径方向外向きに)押す。長さ方向では、内側ステント構造と外側ステント構造の両方がメッシュ構造の長さよりも長い。一実施形態では、内側ステント構造と外側ステント構造の両方は、2つのパラメータを除いて同一の仕様を有する。1つ目のパラメータは、ステント構造のストラットのストラット長(SL)である。2つ目のパラメータは、ステント構造の壁厚(wt)である。
【0025】
一例では、内側ステント構造のSLは約15%短く、外側ステント構造のSLは約15%長い。すなわち、内側ステント構造のストラット長の全ては、外側ステント構造の最短のストラットよりも短い。SLの正味の差は、内部ステント構造と外部ステント構造の間で30%である。SLを短くすると、半径方向の強度が高くなる。SLを長くすると、半径方向の強度が低くなる。従って、ステントアセンブリデバイス全体の半径方向強度は、その半径方向強度を外向きに(すなわち、血管壁に向かって)発揮する。
【0026】
内側ステント構造のwtは0.006インチで、外側ステント構造のwtは0.003インチである。より薄いwtを有することにより、半径方向強度はより低くなる。より厚いwtを有することにより、半径方向強度はより高くなる。従って、複合デバイスの半径方向強度は、その半径方向強度を外向きに(例えば、血管壁の方向に向かって)発揮する。また、複合デバイスの正味のwtは、0.009インチ以下のしきい値のwtである。内側ステントと外側ステントの両方の半径方向強度を高くしたり低くしたりするために、wtとSLの両方を調整することにより、複合デバイスの正味の半径方向強度は、血管壁に向かって外向きの力を発揮する。
【0027】
(ミシン縫い(又は機械裁縫:Machine Sewing)による取付)
前述のように、メッシュ構造に裾を形成できる。メッシュはミシン(sewing machine)を使用して形成でき、裾はステント構造に取り付けられる。メッシュ構造を、ステント構造のストラットに直接ミシン縫いすることもできる。そのようなプロセスに従って、繊維を使用して、メッシュ構造をステント構造に取り付けるステッチパターンを形成する。縫製ステッチパターンは、例えば、205の手縫いおよび301の本縫いを含む、任意のさまざまな繊維から形成できる。ステッチは、ステントのストラットに沿って(またはステントのストラットを横切って)円周方向に形成できる。ステッチの幅は一定でも、デバイスの周囲で変化してもよい。
【0028】
ステッチは、一定の、又は可変のステッチ長を有してもよい。例えば、ステッチは、ステント構造に沿った一定数の個別の位置でよりきつく結ばれてもよく、残りの位置であまりきつく結ばれなくてもよい。ニット構造は、さまざまな形状とサイズの孔を形成することもできる。
【0029】
(手縫いによる取付)
別の実施形態では、メッシュ構造は、メッシュ構造の端部をそれ自体及び/又はステントに手縫いすることによりステント構造に取り付けられる。好ましい縫製パターンをステントのカスタム機能と共に使用して、ステントに縫合糸を簡単に取り付けることができる。縫製パターンの例には、テストの301の本縫いと205の手縫いが含まれる。
【0030】
図6は、メッシュ構造110の端部を通して手縫いされている繊維605の例を示す。次に、縫合糸の個々のループを使用して、メッシュ構造をステント構造のクラウンに取り付ける。繊維は、ループに出入りするように縫い付けられる。ループの量は異なってもよい。一実施形態では、10~100個のループが存在する。
【0031】
一実施形態では、繊維(PET繊維など)は、NiTiメッシュ構造の端部を通して縫い付けられ、ステント構造に接続される。繊維は、メッシュ構造の1つ以上のループと、ステント構造のクラウンに沿ったドーナツの穴または開口部に縫い付けられる。
【0032】
(縫合アンカーによる手縫いによる取付)
ステントアセンブリのクラウン領域は、1つ以上のタイプの縫合アンカーを含み得る。ステントのクラウンは、縫合アンカーがその周囲に沿って隙間または開口部と共に部分的なループを形成する「スプリット0」構成の第1のタイプの縫合アンカーを含む。隙間または開口部は、縫合糸をアンカーに挿入するための通路を提供する。
【0033】
第2のタイプの縫合アンカーは、「中実円(solid circle)」または閉じたループで、縫合アンカーは完全に閉じたループを形成する。図7は、閉ループアンカー705および開ループアンカー710を有するステント構造のクラウン領域の拡大図を示す。縫合糸は、開ループアンカーを通してループ状にされ、クリート方式(cleat manner)で固定されてもよく、縫合糸はまた、開ループアンカーを通して延びる。縫合糸は、交互に、閉ループアンカーの周りにループ状にすることができ、また、アンカーの土台の周りに巻き付けて、それらと縫合糸をさらに固定することができる。
【0034】
メッシュ構造は、望ましくは、ステント構造の長軸に沿って遠位方向と近位方向の両方に適用される力に対してメッシュ構造をステント構造に固定するであろう方法で、ステント構造に固定される。すなわち、ステント構造とメッシュ構造との間の相対的な力の方向に関係なく、メッシュ構造は固定されたままであり、ステント構造から分離しないだろう。
【0035】
図8は、ステント構造のクラウンに配置することができるアンカー805の実施形態を示す。アンカーは閉ループを形成し、縫合糸をアンカーにさらに固定するための構造として機能する1つ以上の「耳(ears)」、プロング、バーブ、または突起810を含む。図8に示すように、縫合糸805は、閉ループおよび耳の周りも包んでそれらと縫合糸を固定することができ、送達システムからのステントアセンブリの装着及び/又は取り外し中にステント構造から外れないようにすることができる。耳の構造は単なる例であり、縫合糸をステント構造にさらに固定するために他の構造を使用できることを理解すべきである。
【0036】
(相互接続する特徴による機械的な取付)
別の実施形態では、メッシュはステントの特徴と機械的に相互接続する。メッシュ構造をステント構造に機械的に取り付けるために、さまざまな方法を使用できる。例えば、メッシュ構造の端部をステント構造の端部にループさせることができ、またはメッシュ構造をそれ自体の内側に、ステントの外側のニットの両方の層と共にループさせる。2つのニット層は、その後この構成と共に結合または縫合できる。
【0037】
あるいは、ニットの端部は「仕上げ(finished)」られて、編物(又はニット:knitting)に使用される繊維がほぐれたり、ほどけたりしないようにすることができる。ニットの端部は、本開示で記載される方法のいずれかで固定される。次に、メッシュ構造の端部をステントのいくつかの特徴上でループさせる。これらの特徴には、ステントのクラウンまたは指状の突起構造が含まれ得る。突起は、メッシュ構造がより容易に係合する(又はかみ合う:engage)のを助けるために、離れた方向または外側に向けられてもよい。
【0038】
(ポリマーコーティングによる取付)
別の実施形態では、ポリマーコーティングを使用して、メッシュ構造の端部を仕上げ、及び/又はメッシュ構造をステント構造に取り付けることができる。ステント構造に取り付ける前にメッシュ構造がほどけるのを防ぐために、メッシュ構造の端部にポリマーの薄層が追加される。
【0039】
あるいは、ポリマーコーティングを使用して、メッシュ構造の端部を「仕上げる」のを助け、また、メッシュステントストラットを一度に取り付ける機構としても機能する。本例では、ステントアセンブリの端部だけにポリマーをスプレーすることができ、それによってステント/メッシュ構造の中心にポリマーが一切残らないようにすることができる。ポリマーコーティングは、ニット要素の1つ以上の列、ニット要素の1つ未満の列、1つ以上のストラットラング要素、または1つ未満のストラットラング要素に適用できる。ニットの端部だけをコーティングするために、コーティングプロセスの完了後に除去できるマスキング剤でステント構造の中心をマスクする必要があり得る。
【0040】
ポリマーコーティングは、さまざまなレベルの固体を使用した浸漬またはスプレープロセスで実現できる。適切なコーティングを得るには、複数のパスが必要となり得る。重要なことは、ニット繊維-ステントストラット要素全体をコーティングで封止して、それが適切に取り付けられることを確保することであろう。
【0041】
メッシュの端部を固定する、及び/又はステントに接着するためのさまざまなポリマーの接着またはコーティングオプションを以下の表に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
使用できる他の材料には、例えば以下のものが含まれる:
【0044】
パリレンC:蒸着により形成されたコンフォーマルコーティング。医療デバイスでの長い歴史がある。
【0045】
PEVA:ゴム状共重合体。幅広い酢酸ビニルの範囲のものが利用できる。非常に低いVA含有量(10%未満)は溶解が困難である。より高いVA(18~33%)は非常に柔軟で粘着性があるだろう。
【0046】
PBMA:硬くて丈夫な材料。PEVAほど柔軟ではない。いくつかの溶媒に容易に溶解可能。
【0047】
SIBS:丈夫でゴム状の材料。いくつかの溶媒に溶解可能。
【0048】
PC:自己組織化単分子膜として形成される傾向がある。
【0049】
PVP:水溶性ポリマー。
【0050】
ポリフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン。溶融加工可能。
【0051】
(溶接による取付)
別の実施形態では、メッシュ構造をステント構造に溶接することもできる。例えば、溶接プロセスでは次の材料を使用できる:
【0052】
(ニットからの)NitiワイヤーとNitiステントの溶接:レーザー溶接、抵抗溶接
【0053】
(ニットからの)ポリマー繊維とNitiステントの溶接
【0054】
さまざまなメッシュ構成を使用できる。孔径が任意の1つ以上のポリマーもしくは金属繊維またはそれらの組み合わせから形成され得る、円状に編み込む方法を使用することができる。NiTiまたはPET繊維の例は、直径約0.001インチ、0.00075インチ、0.0005インチのワイヤーである。
【0055】
(メッシュまたはステント構造の例示的なセルパターン)
図9に示す実施形態では、ニットまたはメッシュ構造を形成及び/又は後加工して、キス孔(kissing pore)または細胞パターンを形成できる。例えば、メッシュ構造は、第1の端部に拡大された曲線的な領域と、第2の端部により小さい尖った領域とを有する複数の涙滴形の孔905を形成する。接吻パターンでは、少なくとも2つの涙滴形の孔の拡大された曲線状領域が互いに接触または当接している。涙滴形の孔は長軸に沿って延びることができ、孔の曲線状領域は第1の端部でその軸に沿って配置され、尖った領域は第2の端部でその軸に沿って配置されており、その軸は直線である。孔は、2つの孔のより大きな領域が「キス(kissing)」配列で直接接触し、2つの孔のより小さな領域が互いに間隔を空けるように、列に配置することができる。一連の孔(細孔905aおよび905bなど)は、共通の長軸に沿って同軸にある。このパターンを達成できる1つの方法は、個々の孔を有する管状ニット構造を編むことであり、孔の少なくともいくつかは一般に円形、正方形または長方形の形状である。管状ニットは、より小さな直径のマンドレル上に長手方向に引き伸ばして、キスパターンまたは涙滴形のパターンを示す細長い孔を生じさせることができる;その後構造は、この形状を保持するために、任意でヒートセットされてもよい。
【0056】
上記の涙滴形の孔の配列は、特定のワイヤーを使用してより小さい孔径を達成し、直径0.0005インチから0.001インチのニチノールワイヤーなどのステントアセンブリおよび孔を形成することができる。例示的な実施形態において、「キス」孔構成は、100~250μmの最小孔幅および3:1~10:1の範囲の長さ:幅比を達成することができる。
【0057】
本明細書は多くの特定事項(又は詳細:specifics)を含むが、これらは請求される発明の範囲または請求される可能性のある発明の範囲に対する限定としてではなく、特定の実施形態に特有の特徴の記載として解釈されるべきである。別個の実施形態の事情(又は状況:context)で本明細書に記載されている一定の特徴は、単一の実施形態中で組み合わせて実装することもできる。逆に、単一の実施形態の事情で記載される様々な特徴は、複数の実施形態で個別に、または任意の適切なサブコンビネーションで実装することもできる。さらに、一定の組み合わせで機能するものとして特徴を上記に記載し、最初にそのように請求する場合もあり得るが、いくつかのケースでは、請求されたコンビネーションから1つ以上の特徴をそのコンビネーションから削除することができ、請求されたコンビネーションはサブコンビネーションまたは、サブコンビネーションのバリエーションに向けられてもよい。同様に、図面には特定の順序で操作が描かれているが、これは、望ましい結果を達成するために、そのような操作が示された特定の順序または順番で実行されること、または図示されたすべての操作が実行されることを要求するものとして理解されるべきではない。いくつかの例と実装のみが開示されている。開示された内容に基づいて、記載された例と実装、および他の実装に対する変更、修正、および拡張を行うことができる。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
血管内に留置するのに適したステントアセンブリであって、
複数の相互接続されたストラットで形成された内側ステント構造と、
複数の相互接続されたストラットで形成された外側ステント構造であって、前記内側ステント構造は、前記外側ステント構造との間に空間を形成するように前記外側ステント構造内に配置され、前記内側ステント構造および外側ステント構造は集合的に、血液内に適合するサイズおよび形状のステント本体を形成する、外側ステント構造と、
前記内側ステント構造および外側ステント構造にサンドイッチ配置で取り付けられるように、前記内側ステント構造と外側ステント構造との間の前記空間に少なくとも部分的に配置されたメッシュ構造と、を含むステントアセンブリ。
(態様2)
血管内に留置されたときに、前記内側ステント構造と外側ステント構造との間に生じる正味の力が、前記ステント本体全体を血管壁に向かって押すように、前記内側ステント構造が、前記外側ステント構造よりも高い半径方向外向きの力を発揮する、態様1に記載のステントアセンブリ。
(態様3)
前記内側ステント構造の前記ストラットは、前記外側ステント構造の前記ストラットよりも短い、態様1に記載のステントアセンブリ。
(態様4)
前記メッシュ構造は形状記憶合金でできている、態様1に記載のステントアセンブリ。
(態様5)
前記メッシュ構造は複数の涙滴形の孔を形成し、前記涙滴形の孔の少なくとも2つは、第1の端部に、拡大された曲線状の領域を有し、第2の端部により小さい領域を有し、前記涙滴形の孔の少なくとも2つの拡大された曲線状の領域は互いに接触している、態様1に記載のステントアセンブリ。
(態様6)
前記メッシュ構造は裾を含む、態様1に記載のステントアセンブリ。
(態様7)
前記裾は、前記内側ステント構造および外側ステント構造の少なくとも1つが少なくとも部分的に配置される空間を規定する、態様6に記載のステントアセンブリ。
(態様8)
前記裾は、前記裾の構造に一体的に取り付けられている、態様6に記載のステントアセンブリ。
(態様9)
前記裾は、糸によって前記裾の構造に取り付けられている、態様6に記載のステントアセンブリ。
(態様10)
前記メッシュ構造の少なくとも一部はポリマーで形成され、前記ステント構造の一部はニッケルチタンである、態様1に記載のステントアセンブリ。
(態様11)
ステントアセンブリを形成する方法であって、
複数の相互接続されたストラットの内側ステント構造を形成する工程と、
複数の相互接続されたストラットの外側ステント構造を形成する工程と、
前記内側ステント構造を、前記外側ステント構造との間に空間を形成するように、前記外側ステント構造内に配置する工程であって、前記内側ステント構造および外側ステント構造は集合的に、血管内に適合するサイズおよび形状のステント本体を形成する、配置する工程と、
前記内側ステント構造と外側ステント構造との間の前記空間に少なくとも部分的にメッシュ構造を配置する工程と、
前記メッシュ構造を前記内側ステント構造および外側ステント構造に取り付けるために、前記内側ステント構造と外側ステント構造との間の前記空間に前記メッシュ構造をサンドイッチする工程と、を含む方法。
(態様12)
前記メッシュ構造に裾を形成する工程をさらに含む、態様11に記載の方法。
(態様13)
前記内側ステント構造および外側ステント構造のうちの1つの少なくとも一部を前記裾内に配置する工程をさらに含む、態様12に記載の方法。
(態様14)
前記メッシュ構造に裾を形成する工程は、前記メッシュ構造に裾を取り付けることを含む、態様12に記載の方法。
(態様15)
前記メッシュ構造に裾を形成する工程は、前記メッシュ構造の一部をそれ自体の上に折り畳むことを含む、態様12に記載の方法。
(態様16)
前記メッシュ構造内に複数の涙滴形の孔を形成する工程をさらに含む、態様11に記載の方法。
(態様17)
前記涙滴形の孔は、前記涙滴形の孔の少なくとも2つが第1の端部に拡大した曲線状の領域を有し、且つ第2の端部により小さな領域を有するように配置され、前記涙滴形の孔の少なくとも2つの拡大された曲線状の領域は互いに接触している、態様11に記載の方法。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9