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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】収納室
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/02 20060101AFI20240202BHJP
   E04F 19/08 20060101ALI20240202BHJP
   E04B 2/74 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
E04H1/02
E04F19/08 C
E04B2/74 541A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020003615
(22)【出願日】2020-01-14
(65)【公開番号】P2021110176
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 さや華
(72)【発明者】
【氏名】上田 文子
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-185448(JP,A)
【文献】特開2012-062736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/72 - 2/82
E04H 1/00 - 1/14
H01M 50/20 - 50/298
E06B 9/52 - 9/54
A47B 67/04
A47B 88/00 - 88/994
E04B 1/00 - 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面および側面のうちの少なくとも一つが建物の壁面により構成された収納室であって、
前記背面または前記側面に設けられたコンセントと、
前記コンセントよりも上方位置において、前記背面または前記側面に沿って設けられた棚板と、
前記棚板の下方空間に設置される蓄電池とを備え、
前記棚板よりも上方位置に、前記背面および前記側面によって囲まれた収納空間が設けられ
前記収納空間には、前記棚板の横幅方向に沿って延在するハンガーパイプが配置されており、
前記棚板は、前記ハンガーパイプの位置よりも奥に配置されている、収納室。
【請求項2】
前記棚板は、上方から見て前記蓄電池の全体を覆うように配置されている、請求項1に記載の収納室。
【請求項3】
前記蓄電池は、床面から浮いた状態で、前記建物の壁面に取り付け固定されている、請求項1または2に記載の収納室。
【請求項4】
前記棚板の横幅方向端部から下方に延びて、前記棚板の下方空間を側方から覆う側板をさらに備える、請求項1~のいずれかに記載の収納室。
【請求項5】
前記棚板の下方空間の正面に配置された扉をさらに備える、請求項1~のいずれかに記載の収納室。
【請求項6】
前記棚板は、床面レベルから500mm以上1000mm以下の高さ範囲内に設けられている、請求項1~のいずれかに記載の収納室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納室に関し、特に、建物内に設けられる収納室に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の多くは、リビングおよび個室などの居室、浴室および廊下などの非居室に加え、クローゼットなどの収納室を有している。収納室は、一般的に、平面視において矩形状に形成され、背面および側面のうちの少なくとも一つが建物の壁面により構成されている。
【0003】
近年、災害による停電に備えるために、住宅内に設置可能な家庭用蓄電池が普及しつつある。
【0004】
特開2010-174592号公報では、建物の折り返し階段の側面に囲まれたスペースを蓄電池収納庫とすることで、建物内のデッドスペースを有効利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-174592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
家庭用蓄電池の小型化に伴い、蓄電池の設置場所を比較的自由に定めることができる。たとえば、車輪付きの蓄電池や壁掛けタイプの蓄電池も市販されている。そのため、特許文献1のように折り返し階段の壁内に蓄電池を収納する場合に比べて、蓄電池へのアクセスが容易である。
【0007】
その一方で、蓄電池を居室などの生活空間に設置すると、居住者の通行の妨げになったり、家具の設置に支障をきたす可能性があるため、居住者の快適性が低下するおそれがある。
【0008】
また、蓄電池は電気製品であるため、蓄電池を露出した状態で設置すると、熱による接触物の劣化、水濡れ・埃等によるトラッキング、掃除機等の衝突による破損などの懸念がある。また、居住者が蓄電池の上面に重量物を載せてしまう可能性があり、そのような場合にも蓄電池が破損するおそれがある。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、居住者の快適性を維持しつつ、蓄電池を埃や重量物から保護可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のある局面に従う収納室は、背面および側面のうちの少なくとも一つが建物の壁面により構成された収納室である。収納室は、背面または側面に設けられたコンセントと、コンセントよりも上方位置において、背面または側面に沿って設けられた棚板と、棚板の下方空間に設置される蓄電池とを備え、棚板よりも上方位置に、背面および側面によって囲まれた収納空間が設けられている。
【0011】
好ましくは、収納空間には、棚板の横幅方向に沿って延在するハンガーパイプが配置されており、棚板は、ハンガーパイプの位置よりも奥に配置されている。
【0012】
棚板は、上方から見て蓄電池の全体を覆うように配置されていることが望ましい。
【0013】
好ましくは、蓄電池は、床面から浮いた状態で、建物の壁面に取り付け固定されている。
【0014】
収納室は、棚板の横幅方向端部から下方に延びて、棚板の下方空間を側方から覆う側板をさらに備えていてもよい。
【0015】
また、収納室は、棚板の下方空間の正面に配置された扉をさらに備えていてもよい。
【0016】
好ましくは、棚板は、床面レベルから500mm以上1000mm以下の高さ範囲内に設けられている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、蓄電池が収納室内に設置されるため、生活空間への影響がなく、居住者の快適性を維持できる。また、収納室内に設置される蓄電池の上方には棚板が設けられているため、蓄電池を埃や重量物から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る収納室を有する住宅の間取り例を示す図である。
図2】(A),(B)は、本発明の実施の形態におけるクローゼットの内部構造を模式的に示す図である。
図3】(A)は、本発明の実施の形態におけるハンガーパイプの設置位置を模式的に示す図であり、(B)は、比較例におけるハンガーパイプの設置位置を模式的に示す図である。
図4】(A),(B)は、本発明の実施の形態の変形例1におけるクローゼットの内部構造を模式的に示す図である。
図5】(A),(B)は、本発明の実施の形態の変形例3におけるシューズクロークの内部構造を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0020】
<概要について>
本実施の形態に係る収納室は、住宅の内部に設けられている。図1は、住宅1の間取り例を示す図である。住宅1は、たとえば集合住宅の一住戸に相当する。
【0021】
図1を参照して、住宅1は、一例として3LDKタイプであり、玄関11、キッチン12、リビングダイニング13、3つの個室(洋室)14~16、および廊下17を含む。これらの室(居室および非居室を含む)は、日常生活における居住者の生活空間を形成している。
【0022】
個室14~16には、それぞれ、主に衣類を収納するためのクローゼット21~23が隣接して設けられている。また、玄関11には、靴や雨具を収納可能なシューズクローク24が隣接して設けられ、玄関11に連通する廊下17には、日用品などを収納可能な物入25が隣接して設けられている。
【0023】
クローゼット21~23、シューズクローク24、および物入25は、いずれも収納室である。クローゼット21~23、シューズクローク24、および物入25は、各々、背面および側面のうちの少なくとも一つが建物(住宅1)の壁面により構成されている。収納室は、典型的には、平面視において矩形状(長方形状または正方形状)に形成されている。収納室の正面(前面)には、開閉可能な扉が設けられている。なお、扉の種類は、折り戸、開き戸、および引き戸など、収納室の設置場所、大きさ、用途等に応じて定められている。
【0024】
本実施の形態では、個室14のクローゼット21内に、蓄電池が設置されている。クローゼット21の正面には、クローゼット21の内部空間を遮蔽する扉301が設けられているため、蓄電池が、生活空間を構成する個室14に露出しない。したがって、蓄電池が居住者の通行の妨げになったり、家具の設置に支障をきたしたりする可能性がなく、居住者の快適性を維持することができる。
【0025】
以下に、蓄電池が設置されたクローゼット21の内部構造について詳細に説明する。
【0026】
<クローゼット21の内部構造について>
図2は、本実施の形態におけるクローゼット21の内部構造を模式的に示す図である。図2(A)はクローゼット21の平面図であり、(B)はクローゼット21の正面図である。図2における矢印A1は、クローゼット21の横幅方向を示し、矢印A2は、クローゼット21の前方(正面方向)を示し、矢印A3は、クローゼット21の上下方向を示している。
【0027】
クローゼット21は、正面31、背面32、および一対の側面33,34を有している。クローゼット21は、平面視において略正方形状である。平面視におけるクローゼット21の一辺の長さは、建築設計上の1モジュールに相当する。1モジュールは900mm~1000mm程度であるため、各面31~34の横幅は、たとえば800mm以上900mm以下である。なお、クローゼット21の床面35および天井面36は、典型的には個室14の床面および天井面と同レベル(面一状)である。
【0028】
クローゼット21の正面31は、その全体または大部分が、個室14から収納物(衣類)を出し入するための開口となっている。正面31には、開口を閉鎖する扉301(図1)が設けられている。背面32および一対の側面33,34は、建物の壁面すなわち、住宅1自体の壁(間仕切壁、界壁、外壁など)の垂直面によって構成されている。背面32および側面33,34には、内装材としてのクロスが貼り付けられている。なお、背面32および側面33,34の一部は、住宅1の壁等に取り付けられた板材の垂直面によって形成されていてもよい。
【0029】
クローゼット21の内部には、衣類を吊るすためのハンガーパイプ41、および、収納棚42が設けられている。ハンガーパイプ41および収納棚42は、クローゼットが通常備えている収納用部材40である。なお、図2(A)では、収納棚42の図示を省略している。
【0030】
ハンガーパイプ41および収納棚42は、背面32に沿って配置されている。つまり、ハンガーパイプ41および収納棚42は、一対の側面33,34間に掛け渡されている。収納棚42は、ハンガーパイプ41の上方に位置する枕棚である。収納棚42は、平面視において矩形形状であり、背面32および一対の側面33,34に接している。平面視において、収納棚42の領域と重なる位置に、ハンガーパイプ41が設けられている(図3(A)参照)。
【0031】
クローゼット21は、内部に蓄電池60を設置するために、図2(B)に示されるように、コンセント51,52と、棚板53とを備えている。コンセント51,52および棚板53は、クローゼット21の中央高さよりも下方に設けられていることが望ましい。
【0032】
コンセント51,52は、たとえば背面32に設けられている。コンセント51,52の一方が電力入力用の端子であり、他方が電力出力用の端子である。
【0033】
棚板53は、コンセント51,52よりも上方位置に設けられている。また、棚板53は、収納用部材40よりも下方位置に設けられている。棚板53は、収納用部材40と同様に、背面32に沿って設けられ、一対の側面33,34間に掛け渡されている。つまり、ハンガーパイプ41は、棚板53の横幅方向に沿って延在している。
【0034】
棚板53は、横幅方向に長さを有する矩形形状であり、背面32および両側面33,34に接している。棚板53は、受け桟等の取り付け部530(図3(A))を介して、ビスや釘などの締結部材によって少なくとも背面32(背面32を構成する壁)に固定されている。棚板53の設置高さ(床面35から棚板53の上面までの距離)L3は、500mm以上1000mm以下であり、たとえば800mm程度である。
【0035】
蓄電池60は、棚板53の下方空間S2に設置されている。棚板53の下方空間S2は、蓄電池設置用の空間である。棚板53よりも上方の空間は、収納用部材40を含む収納空間S1である。収納空間S1は、背面32および一対の側面33,34によって三方が囲まれている。
【0036】
蓄電池60は、家庭用の小型(薄型)蓄電池であり、典型的には壁掛けタイプである。本実施の形態において、蓄電池60は、クローゼット21の床面35から浮いた状態で、クローゼット21の背面32に取り付け固定されている。具体的には、背面32の所定位置に、専用の取付金具をビス固定し、取付金具に設けられた被掛止部に、蓄電池60の裏面に設けられた掛止部を掛止させる(図示せず)。なお、少なくとも背面32を構成する内装面材の裏には、締結部材によって棚板53や蓄電池60を取り付け可能とするための下地材が設けられている。
【0037】
蓄電池60の形状は薄型の直方体形状であり、たとえば、幅W:650mm、奥行D:150mm、高さH:390mmである。蓄電池60の形状およびサイズは特に限定されないものの、幅Wが700mm以下、奥行Dが200mm以下、高さHが450mm以下であることが望ましい。蓄電池60の一対の側面の少なくとも一方に、電気供給のための配線や、各種端子の差し込み口が設けられている(図示せず)。蓄電池60の前面(正面)は、差し込み口などがなくフラットな平面となっている。
【0038】
蓄電池60の一方の側面(たとえば左側面)から、想像線で示す2本の配線が延びており、配線先端のプラグがコンセント51,52に接続される。この場合、蓄電池60は、一方の側面とクローゼット21の側面33との間隔が、他方の側面とクローゼット21の側面34との間隔よりも大きくなるように、たとえば右側に偏って配置されている。他方の側面とクローゼット21の側面34との間には、蓄電池60を設置する際に作業者の手が入る程度の隙間が設けられて入ればよい。なお、蓄電池60の側面等に電力出力用の端子が設けられている場合には、クローゼット21の背面32には、コンセント51,52の一方(電力入力用)だけが設けられていてもよい。
【0039】
このように、本実施の形態では、蓄電池60がクローゼット21の背面32に取り付け固定されているため、重量物である蓄電池60の転倒等を防止できる。また、蓄電池60の盗難を防止することもできる。したがって、本実施の形態における蓄電池60の設置形態は賃貸物件にも好適である。
【0040】
また、棚板53の下方空間S2は、クローゼット21の背面32すなわち住宅1自体の壁面に面しているため、棚板53の下方に背板を設ける形態に比べて、蓄電池設置用の空間を小さくすることができる。
【0041】
蓄電池60は発熱するため、棚板53と蓄電池60との間には隙間が設けられていることが望ましい。棚板53を固定した後で蓄電池60を背面32に設置する場合、隙間の高さは、蓄電池60を取付金具に取り付ける際に必要な(蓄電池60の)持ち上げ高さを考慮して定められる。隙間は、300mm以下であることが望ましく、200mm以下であることがより望ましい。これにより、居住者が蓄電池60の上面に物を載せることを防止または抑制できる。
【0042】
図2(A)に示されるように、棚板53は、上方から見て蓄電池60の全体を覆うように配置されている。つまり、棚板53は、クローゼット21の奥行き方向において、蓄電池60よりも前方に突出している。具体的には、棚板53の奥行き寸法L1は、蓄電池60の奥行Dよりも大きく、たとえば160mm以上250mm以下である。棚板53の奥行き寸法L1と蓄電池60の奥行Dとの差は、たとえば、10mm以上100mm以下であり、60mm以下であることがより望ましい。
【0043】
このように、蓄電池60が棚板53によって上方から覆われているため、埃等から蓄電池60を保護できるとともに、重量物を蓄電池60上に載置することによる破損を防止することができる。また、棚板53は、床面レベルから500mm以上1000mm以下の高さ範囲内に設けられており、カウンターとして機能する。そのため、棚板53上に物を置くことができ、棚板53を有効活用することができる。
【0044】
また、棚板53は、ハンガーパイプ41の位置よりも奥に配置されている。つまり、棚板53の奥行き寸法L1は、クローゼット21の背面32からハンガーパイプ41までの最短距離L2よりも小さい。望ましくは、棚板53の奥行き寸法L1は、クローゼット21全体の奥行きの1/3以下である。そのため、棚板53よりも前方の空間は、収納空間S1に含まれる。つまり、棚板53よりも前方の空間にも、衣類等を収納することができる。
【0045】
図3(A)は、本実施の形態におけるハンガーパイプ41の設置位置を模式的に示す図であり、図3(B)は、比較例におけるハンガーパイプ41の設置位置を模式的に示す図である。図3(A)は、図2(B)のIIIA-IIIA線に沿う断面図である。
【0046】
図3(B)に示されるクローゼット121では、一般的なクローゼットと同様に、奥行き方向において、収納空間S100の中央位置(一点鎖線で示す位置)またはその近傍(中央位置からたとえば50mm以下の範囲)に、ハンガーパイプ41が配置されている。具体的には、クローゼット121の背面132からハンガーパイプ41までの最短距離L12は、300mm前後である。一般的なクローゼットでは、ハンガーパイプ41と収納棚(枕棚)42とが一体化されていることもある。
【0047】
比較例におけるクローゼット121の背面132に蓄電池60を取り付け固定した場合、ハンガーパイプ41に吊るす衣類の種類によっては、蓄電池60に接触する可能性がある。このような場合、蓄電池60の熱により衣類が劣化するおそれがある。
【0048】
これに対し、図3(A)に示されるように、本実施の形態におけるクローゼット21では、ハンガーパイプ41は、奥行き方向において、収納空間S1の中央位置(一点鎖線で示す位置)よりも100mm以上前方に配置されている。具体的には、クローゼット21の背面32からハンガーパイプ41までの最短距離L2は、450mm以上であり、たとえば500mm程度である。
【0049】
そのため、本実施の形態のクローゼット21においては、ハンガーパイプ41に吊るした衣類が蓄電池60に接触する可能性が極めて低い。したがって、クローゼット21の内部に蓄電池60を設置したとしても、衣類の劣化を防止できる。また、棚板53が、蓄電池60よりも少し前方へ張り出しているため、ハンガーパイプ41に吊るされた衣類が広がりのある衣類であったとしても、棚板53によって、衣類の蓄電池60への接触をより確実に防止できる。なお、奥行き方向における棚板53とハンガーパイプ41との間の間隔L4(図2(A))は、250mm以上である。
【0050】
<変形例1>
本実施の形態では、蓄電池60が設置されるクローゼット(収納室)の横幅が、建築設計上の1モジュール相当である例について説明したが、図1に示すクローゼット22のように、1モジュールを超える横幅のクローゼットに、蓄電池60を設置してもよい。
【0051】
図4は、本実施の形態の変形例1におけるクローゼット22の内部構造を模式的に示す図である。図4(A)にはクローゼット22の平面図が示され、(B)にはクローゼット22の正面図の一部分(要部)が示されている。
【0052】
個室15に隣接するクローゼット22は、正面31a、背面32a、および一対の側面33a,34aを有している。クローゼット22の両側面33a,34aの横幅は1モジュール相当であるのに対し、正面31aおよび背面32aの横幅は1.5モジュール以上である。ハンガーパイプ41は、両側面33a,34a間に掛け渡されている。
【0053】
本変形例における棚板53の横幅寸法L5は、上記実施の形態における棚板53と同程度であり、800mm以上900mm以下である。棚板53は、両側面33a,34aに掛け渡されるのではなく、一方の側面33aにのみ接している。
【0054】
クローゼット22内には、棚板53の長手方向(横幅方向)両端部から下方に延びる一対の側板54が設けられている。各側板54は、クローゼット22の床面35aに接している。側面33aに接する側板54は、締結部材によって、側面33aを構成する壁に固定されている。側面34aに対面する側板54は、床面35aと棚板53との間を上下方向に延び、棚板53の下方空間S2を側方から覆っている。
【0055】
これにより、クローゼット22の横幅が比較的大きい場合であっても、棚板53の下方空間S2の側面が露出することを防止できるため、棚板53の下方空間S2に設置された蓄電池60の側面を保護することができる。また、居住者が蓄電池60の側方に鞄などの物を収納し難くなるため、蓄電池60の発熱に起因するトラブルを回避することができる。
【0056】
なお、側板54は、下方空間S2が露出する側、すなわちクローゼット22の側面34aに対面する側にのみ設けられていてもよい。
【0057】
また、側板54は、棚板53の下方空間S2の側面全体を覆う形態に限定されない。各側板54は、たとえば格子状に構成されていてもよいし、複数本の脚部により構成されていてもよい。
【0058】
<変形例2>
本実施の形態では、ハンガーパイプ41がクローゼット(収納室)の横幅方向に沿って設けられた例について説明したが、図1に示すクローゼット23のように、ハンガーパイプ41が奥行き方向に沿って設けられたクローゼットに、蓄電池60を設置してもよい。
【0059】
図1を参照して、個室16に隣接するクローゼット23は、正面31b、背面32b、および一対の側面33b,34bを有している。クローゼット23の両側面33b,34bの横幅はたとえば1モジュール相当であり、正面31bおよび背面32bの横幅はたとえば2モジュール相当である。正面31bの開口は横幅方向中央部に設けられており、横幅方向両端部には建物の壁部、すなわち個室16との間仕切壁が配置されている。ハンガーパイプ41は、正面31bの壁部と背面32bとに掛け渡されている。ハンガーパイプ41は、クローゼット23の側面33b側および側面34b側にそれぞれ設けられていてもよいし、いずれか一方にのみ設けられていてもよい。
【0060】
このようなクローゼット23においては、棚板53は、ハンガーパイプ41と平行となるように、クローゼット23の側面33b(または34b)に沿って取り付けられ、棚板53の下方空間に、蓄電池60が設置される(図示せず)。コンセント51,52は、典型的には、蓄電池60が設置される壁面と同じ面、すなわち側面33b(または34b)に設けられる。
【0061】
<変形例3>
本実施の形態では、クローゼット内に蓄電池60を設置する例について説明したが、クローゼット以外の収納室に蓄電池60を設置してもよい。たとえば、図1に示したシューズクローク24、または、廊下17に隣接する物入25に、蓄電池60が設置されてもよい。
【0062】
図5は、本実施の形態の変形例3におけるシューズクローク24の内部構造を模式的に示す図である。図5(A)にはシューズクローク24の正面図の一部(要部)が示され、(B)にはシューズクローク24の断面図の一部(要部)が示されている。図5(B)は、図5(A)のVB-VB線に沿う断面図である。
【0063】
図5(A),(B)を参照して、玄関11に隣接するシューズクローク24は、正面31c、背面32c、および一対の側面33c,34cを有している。本変形例におけるシューズクローク24の一辺の長さは、たとえば1モジュール相当である。
【0064】
棚板53は、シューズクローク24の背面32cに取り付け固定され、一対の側面33c,34c間に掛け渡されている。シューズクローク24内には、棚板53よりも上方位置に、背面32cまたは側面33c(または34c)に沿って収納棚43が設けられている。つまり、シューズクローク24内においても、棚板53よりも上方の空間は収納空間S1となっている。
【0065】
棚板53の奥行き寸法L1(図2(A)参照)は、図2に示したクローゼット21と同様、シューズクローク24全体の奥行きの1/2以下であり、望ましくは1/3以下である。そのため、棚板53よりも前方の空間も収納空間S1に含まれる。棚板53よりも前方の空間に、傘などの雨具やアウトドア用品を収納できる。
【0066】
本変形例では、棚板53の下方空間S2に設置された蓄電池60が水に濡れることを防止するために、下方空間S2の正面に扉55が設けられていることが望ましい。扉55は、両開きであってもよいし、片開きであってもよい。
【0067】
扉55は、棚板53の長手方向(横幅方向)端部から下方に延びる側板56に、開閉可能に取り付けられている。シューズクローク24の床面35cは、玄関11の床面と同レベルであり、玄関土間の一部を構成している。この場合、側板56および扉55は、床面35cから上方に離れて配置されていることが望ましい。本変形例では、側板56および扉55の下端高さが、巾木37の上端高さと略等しくなっている。側板56は、シューズクローク24の側面33c,34cの双方に、締結部材によって固定されている。
【0068】
以上説明した実施の形態および各変形例では、住宅1内に設けられた収納室において、デッドスペースとなりがちな一部の空間を蓄電池60の設置空間としているため、収納室の収納容量の低下を抑制できる。
【0069】
また、万が一、収納室の背面または側面に取り付け固定していた蓄電池60が落下した場合であっても、収納室の正面には扉が設けられているため、居住者が負傷することを防止できる。なお、蓄電池60は壁掛けタイプに限定されず、収納室の床面上に設置されていてもよい。
【0070】
また、蓄電池60の寿命により蓄電池60を撤去した後であっても、コンセント51,52を利用して、棚板53の下方空間S2を、モバイルバッテリーや電気自転車のバッテリーの充電スペース、または、自走式掃除機の収納兼充電スペースとして有効活用することができる。あるいは、棚板53の下方空間S2は収納室自体の床面上に形成されているため、重くかさばる非常用の備蓄品(たとえばペットボトルなど)や非常用持ち出し袋の収納スペースとして利用することもできる。
【0071】
なお、上記の実施の形態および各変形例では、住宅内に設けられた収納室について説明したが、上述の収納室の構造を、住宅以外の建物(たとえば介護施設など)に設けられる収納室にも適用できる。
【0072】
また、上記の実施の形態および各変形例に示した収納室の構成を、適宜組み合わせてもよい。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
1 住宅、21,22,23,121 クローゼット、24 シューズクローク、25 物入、31,31a,31b,31c 正面、32,32a,32b,32c,132 背面、33,33a,33b,33c,34,34a,34c 側面、35,35a,35c 床面、36 天井面、41 ハンガーパイプ、42 収納棚、51,52 コンセント、53 棚板、54,56 側板、55 扉、60 蓄電池、S1,S100 収納空間、S2 下方空間。
図1
図2
図3
図4
図5