(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】配管保持治具および配管閉塞方法
(51)【国際特許分類】
F16L 55/10 20060101AFI20240202BHJP
B23B 41/08 20060101ALI20240202BHJP
B23B 49/00 20060101ALI20240202BHJP
F16L 3/10 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
F16L55/10
B23B41/08
B23B49/00 A
F16L3/10 Z
(21)【出願番号】P 2020009039
(22)【出願日】2020-01-23
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】391037814
【氏名又は名称】株式会社東京エネシス
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】大浦 仁
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第01588714(GB,A)
【文献】米国特許第06200068(US,B1)
【文献】国際公開第2006/017879(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0216565(US,A1)
【文献】米国特許第04649948(US,A)
【文献】米国特許第05353831(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/10
B23B 41/08
B23B 49/00
F16L 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管を充填材で閉塞するために用いられる配管保持治具であって、
配管を挟持する第1型と第2型を備え、
上記第2型には、上記第1型と対向する面に配管保持用の直線状の保持溝が形成されるとともに、
それぞれ直線的に延びるドリル挿入孔とノズル挿入孔が貫通形成され、上記ドリル挿入孔と上記ノズル挿入孔の一端が上記保持溝の内面で交差することにより、上記ドリル挿入孔と上記ノズル挿入孔は上記保持溝の内面において共通の開口を有しており、
さらに、上記第2型には、上記ドリル挿入孔とこのドリル挿入孔に挿入されるドリル工具のシャンク部との間をシールするための第1シール手段と、上記ノズル挿入孔とこのノ
ズル挿入孔に挿入される充填材注入用のノズルとの間をシールするための第2シール手段が、設けられていることを特徴とする配管閉塞用の配管保持治具。
【請求項2】
上記保持溝の内面には、上記共通の開口を囲むようにしてシール材が取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の配管保持治具。
【請求項3】
配管を充填材で閉塞するために用いられる配管保持治具であって、
配管を挟持する第1型と第2型を備え、
上記第2型には、上記第1型と対向する面に配管保持用の直線状の保持溝が形成されるとともに、ドリル挿入孔とノズル挿入孔が貫通形成され、上記ドリル挿入孔と上記ノズル挿入孔の一端が上記保持溝の内面で交差することにより、上記ドリル挿入孔と上記ノズル挿入孔は上記保持溝の内面において共通の開口を有しており、
さらに、上記第2型には、上記ドリル挿入孔とこのドリル挿入孔に挿入されるドリル工具のシャンク部との間をシールするための第1シール手段と、上記ノズル挿入孔とこのノ
ズル挿入孔に挿入される充填材注入用のノズルとの間をシールするための第2シール手段が、設けられ、
上記第2型において上記ドリル挿入孔の他端が開口する第1面領域には、上記第1シー
ル手段として弾性材料からなる板状の第1パッキンが配置され、上記第1パッキンに上記ドリル工具の上記シャンク部より径の小さい第1挿通孔が形成され、上記シャンク部が上記第1挿通孔に挿入されることにより、上記ドリル工具と上記ドリル挿入孔との間がシールされるようになっており、
上記第2型において上記ノズル挿入孔の他端が開口する第2面領域には、上記第2シール手段として弾性材料からなる板状の第2パッキンが配置され、上記第2パッキンに上記ノズルより径の小さい第2挿通孔が形成され、上記ノズルが上記第2挿通孔に挿入されることにより、上記ノズルと上記ノズル挿入孔との間がシールされるようになっていることを特徴
とする配管保持治具。
【請求項4】
上記第1型の上記第2型と対向する面に、上記配管を位置決めするための直線状の位置
決め溝が形成され、
さらに、上記第1型に対して上記第2型を位置決めする位置決め手段と、上記第2型を上記位置決め状態で上記第1型にクランプするクランプ機構を、備えていることを特徴とする請求項
1または2に記載の配管保持治具。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の配管保持治具を用いて配管の内部に充填材を注入することにより、配管を閉塞する方法であって、
上記第2型の上記保持溝に上記配管を保持させた状態で上記第1型と上記第2型により上記配管を挟持する配管挟持工程と、
上記第2型の上記ノズル挿入孔に上記ノズルを挿入し、上記ノズルと上記ノズル挿入孔との間を第2シール手段でシールする工程であって、上記ノズルの先端部を上記共通の開口から後退させた位置にするノズル挿入工程と、
上記ドリル挿入孔にドリル工具を差し込み、上記ドリル工具のシャンク部と上記ドリル挿入孔との間を上記第1シール手段でシールした状態で、上記配管における上記共通の開口に対応する部位を上記ドリル工具のドリル部で穿孔することにより、注入口を形成する注入口形成工程と、
上記ドリル工具のシャンク部と上記ドリル挿入孔との間を上記第1シール手段でシールした状態を維持したまま、上記ドリル部を上記共通の開口から後退
させるドリル工具後退工程と、
上記ノズルを
、上記先端部が上記共通の開口から後退した位置から、上記配管の上記注入口まで前進
させ、上記ノズルから上記配管の内部に充填材を注入する充填材注入工程と、
を
順に実行し、
上記注入口形成工程から上記ドリル工具後退工程を経て上記充填材注入工程に至るまで、上記ドリル挿入孔に上記ドリル工具のシャンク部が挿入されて上記第1シール手段による上記ドリル挿入孔のシール状態が維持されるとともに、上記ノズル挿入孔に上記ノズルが挿入されて上記第2シール手段による上記ノズル挿入孔のシール状態が維持されることを特徴とする配管閉塞方法。
【請求項6】
さらに、上記下型を支持する支持台とこの支持台に設けられた支柱と、ドリル装置を支持するとともに上記支柱に沿って移動させる移動機構が、用意され、
上記配管挟持工程において、上記ドリル装置の上記ドリル工具が上記第2型の上記ドリル挿入孔と同軸をなしており、
上記注入口形成工程において、上記移動機構により上記ドリル装置が上記第2型に向かって移動することにより、上記ドリル工具が上記ドリル挿入孔に挿入されることを特徴とする請求項5に記載の配管閉塞方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内部に充填材を注入して閉塞するために用いられる配管保持治具と、この配管保持治具を用いた配管閉塞方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントにおいては、原子炉に多数の計測用配管が接続されている。廃炉する際にはこれら計測用配管を切断して原子炉から切り離す必要がある。しかし、単に配管を切断すると、原子炉からの有害物質例えば放射性物質が切断口から漏出する可能性がある。化学プラント等の配管を切断する場合でも、切断口から有害物質が漏出する問題が生じる。
【0003】
特許文献1は、配管を所定長さにわたって圧潰し、この圧壊部を切断することにより、切断口からの有害物質の漏出防止を図る技術が開示されている。しかし、圧壊だけでは切断口の閉塞が完全ではなく、有害物質の漏出を確実に防止できない。
【0004】
特許文献2では、配管に注入口を形成し、この注入口から充填材を配管内部に供給して配管内部を閉塞し、この充填材の硬化を待って配管を切断する。この技術によれば、切断口が充填材で閉塞されているので、切断口からの有害物質の漏出を確実に防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭57-70036号公報
【文献】特開平9-297197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2の技術では、注入口を形成してから充填材を注入するまでの間に、注入口から有害物質が漏出する可能性がある。特に配管の一端側から圧力が付与されている状況では、この問題が無視できなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、配管を充填材で閉塞するために用いられる配管保持治具であって、配管を挟持する第1型と第2型を備え、上記第2型には、上記第1型と対向する面に配管保持用の直線状の保持溝が形成されるとともに、ドリル挿入孔とノズル挿入孔が貫通形成され、上記ドリル挿入孔と上記ノズル挿入孔の一端が上記保持溝の内面で交差することにより、上記ドリル挿入孔と上記ノズル挿入孔は上記保持溝の内面において共通の開口を有しており、さらに、上記第2型には、上記ドリル挿入孔とこのドリル挿入孔に挿入されるドリル工具のシャンク部との間をシールするための第1シール手段と、上記ノズル挿入孔とこのノズル挿入孔に挿入される充填材注入用のノズルとの間をシールするための第2シール手段が、設けられていることを特徴とする。
上記構成によれば、ドリル挿入孔とノズル挿入孔を外部から遮断した状態で、配管の注入口の形成と、注入口から配管内部への充填材の注入を行うことができ、配管内部の有害物質の漏出を防止することができる。
【0008】
好ましくは、上記保持溝の内面には、上記共通の開口を囲むようにしてシール材が取り付けられている。
上記構成によれば、注入口を囲むようにして保持溝内面と配管の外面との間をシールすることができるので、より確実に有害物質の漏出を防止できる。
【0009】
好ましくは、上記第2型において上記ドリル挿入孔の他端が開口する第1面領域には、上記第1シール手段として弾性材料からなる板状の第1パッキンが配置され、上記第1パッキンに上記ドリル工具の上記シャンク部より径の小さい第1挿通孔が形成され、上記シャンク部が上記第1挿通孔に挿入されることにより、上記ドリル工具と上記ドリル挿入孔との間がシールされるようになっており、上記第2型において上記ノズル挿入孔の他端が開口する第2面領域には、上記第2シール手段として弾性材料からなる板状の第2パッキンが配置され、上記第2パッキンに上記ノズルより径の小さい第2挿通孔が形成され、上記ノズルが上記第2挿通孔に挿入されることにより、上記ノズルと上記ノズル挿入孔との間がシールされるようになっている。
上記構成によれば、第1、第2パッキンにより比較的簡単な構成で、ドリル挿入孔とドリル工具との間およびノズル挿入孔とノズルとの間をシールすることができる。
【0010】
好ましくは、上記第1型の上記第2型と対向する面に、上記配管を位置決めするための直線状の位置決め溝が形成され、さらに、上記第1型に対して上記第2型を位置決めする位置決め手段と、上記第2型を上記位置決め状態で上記第1型にクランプするクランプ機構を、備えている。
上記構成によれば、第1、第2型により安定して配管を挟持することができる。
【0011】
本発明の他の態様は、上記配管保持治具を用いて配管の内部に充填材を注入することにより、配管を閉塞する方法であって、
上記第2型の上記保持溝に上記配管を保持させた状態で上記第1型と上記第2型により上記配管を挟持する配管挟持工程と、
上記第2型の上記ノズル挿入孔に上記ノズルを挿入し、上記ノズルと上記ノズル挿入孔との間を第2シール手段でシールする工程であって、上記ノズルの先端部を上記共通の開口から後退させた位置にするノズル挿入工程と、
上記ドリル挿入孔にドリル工具を差し込み、上記ドリル工具のシャンク部と上記ドリル挿入孔との間を上記第1シール手段でシールした状態で、上記配管における上記共通の開口に対応する部位を上記ドリル工具のドリル部で穿孔することにより、注入口を形成する注入口形成工程と、
上記ドリル工具のシャンク部と上記ドリル挿入孔との間を上記第1シール手段でシールした状態を維持したまま、上記ドリル部を上記共通の開口から後退させ、上記ノズルを上記配管の上記注入口まで前進させた状態で、上記ノズルから上記配管の内部に充填材を注入する充填材注入工程と、
を備えている。
【0012】
好ましくは、さらに、上記下型を支持する支持台とこの支持台に設けられた支柱と、ドリル装置を支持するとともに上記支柱に沿って移動させる移動機構が、用意され、上記配管挟持工程において、上記ドリル装置の上記ドリル工具が上記第2型の上記ドリル挿入孔と同軸をなしており、上記注入口形成工程において、上記移動機構により上記ドリル装置が上記第2型に向かって移動することにより、上記ドリル工具が上記ドリル挿入孔に挿入される。
上記方法によれば、ドリル工具を正確にドリル挿入孔に挿入することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、配管に注入口を形成しこの注入口から充填材を充填するまでの間において、注入口からの有害物質の漏出を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る配管閉塞装置の正面図である。
【
図3】同配管閉塞装置における配管保持治具の拡大正面図であり、下型に配管が設置され上型が分離されている状態を示す。
【
図4】同配管保持治具の拡大正面図であり、下型に配管と上型が設置された状態を示す。
【
図5】同配管保持治具の拡大平面図であり、下型に配管が設置され上型が設置されていない状態を示す。
【
図6】同配管保持治具の位置決め板の拡大正面図である。
【
図7】同配管保持治具の拡大平面図であり、下型に配管と上型が設置された状態を示す。
【
図8】同配管保持治具の拡大側断面図であり、下型と上型とで配管が挟持された状態を示す。
【
図9】同配管保持治具で用いられる第1、第2パッキンの平面図である。
【
図10】同配管保持治具の側面図であり、下型と上型で配管を挟持した状態で、充填材注入用の吐出ガンのノズルを上型に挿入する工程を示す。
【
図11】同配管保持治具の拡大側断面図であり、ドリル装置のドリル工具を上型に挿入して配管に注入口を形成する工程を示す。
【
図12】同配管保持治具の拡大側断面図であり、吐出ガンのノズルから充填材を配管内部に注入する工程を示す。
【
図13】上記充填材により閉塞された配管の拡大縦断面図であり、切断箇所を一点鎖線で示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る配管閉塞装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の配管Tは、例えば原子炉に接続される計測用配管である。原子炉を廃炉にする場合、廃炉に先立って配管Tを原子炉から切り離す必要がある。単に配管Tを切断した場合、配管T内の放射性物質(有害物質)が漏出する可能性があるので、切断に先立ち、本願の配管閉塞装置を用いて配管Tの内部に充填材を充填することにより、配管Tを閉塞する。
【0016】
配管閉塞装置の概略構成
図1,
図2に示すように、配管閉塞装置は、水平をなす支持台1と、支持台1に垂直をなして設けられた支柱2と、支持台1に設置された配管保持治具3と、配管保持治具3の真上に配置されたドリル装置4と、ドリル装置4を上記支柱2に沿って移動させる移動機構5と、吐出ガン6(充填材注入装置;
図10参照)とを備えている。
【0017】
ドリル装置4は、本体4aと、本体4aのチャック部4bに着脱可能に取り付けられるドリル工具4c(
図10参照)とを有している。本体4aにはモータが内蔵されており、このモータでドリル工具4cを回転駆動するようになっている。ドリル工具4cは基部をなす円柱形状のシャンク部4xと、先部をなすドリル部4yとを有している。シャンク部4xはドリル部4yより径が大きい。例えば、ドリル部4yの径が5.1mmであるのに対してシャンク部4xの径は6.0mmである。
【0018】
移動機構5は、支柱2にスライド可能に支持された昇降台5aと、昇降台5aに取り付けられたレバー5bを有している。昇降台5aには、ドリル装置4の本体4aがチャック部4bを下にして支持されている。ドリル工具4cはチャック部4bにチャックされた状態で垂直をなして支持台1に向かって延びている。
【0019】
図10に示す吐出ガン6は、2液混合型の充填材としてエポキシ樹脂を吐出するようになっている。簡単に説明すると、吐出ガン6は、エポキシ樹脂と硬化剤を分離して収容したシリンダ6aと、このシリンダ6aの先端から同軸をなして延びるミキシングノズル6b(以下、単にノズルと言う)と、操作レバー6cとを有している。ノズル6bの先端部は先細をなしている。操作レバー6cを引き絞ると、シリンダ6a内のエポキシ樹脂と硬化剤がノズル6bで混合され、その先端の吐出口から吐出される。吐出されたエポキシ樹脂は短時間で硬化する。
【0020】
配管保持治具の構成
本願発明の重要な構成である配管保持治具3について詳述する。配管保持治具3は、支持台1に固定された平面形状が四角をなす板状のベース10と、このベース10に固定された板状の下型20(第1型)と、下型20の上に設置される円柱形状の上型30(第2型)と、上型30を下型20にクランプする複数例えば2つのクランプ機構50とを備えている。
【0021】
図3~
図5に示すように、下型20は平面形状が円形をなし、ベース10の中央に形成された円形の凹部11に下半分を収容された状態で、ベース10にネジで固定されている。下型20の上面には、直径方向に延びる直線状のV溝21(位置決め溝)が形成されている。さらに下型20の上面には、V溝21と直交する方向に対峙する一対の位置決め突起22が形成されている。本実施形態では、下型20に形成された穴にピンを打ち込むことにより、この位置決め突起22が構成されている。
【0022】
図5、
図6に示すように、ベース10において上記V溝21の延び方向に対峙する一対の側面には、位置決め板15が固定されている。これら一対の位置決め板15は垂直をなす当接縁15aを有しており、この当接縁15aを配管Tに当てることにより、配管Tを下型20のV溝21に位置決めすることができる。
【0023】
図3、
図4、
図8に示すように、上型30には、その下端面に直径方向に延びる断面半円の直線状の保持溝31が形成されている。保持溝31の内径は配管Tの外径より若干大きい。
上型30の下端部外周には、下型20と同径をなす円形のフランジ部30aが形成されている。このフランジ部30aには、上記保持溝31の延び方向と直交する方向に対峙する一対の位置決め穴32が形成されている。この位置決め穴32と下型20の位置決め突起22により、上型30のための位置決め手段が構成されている。
【0024】
図8に示すように、上型30には、その中心軸線に沿って垂直をなすドリル挿入孔35が貫通形成されるとともに、傾斜したノズル挿入孔36が貫通形成されている。本実施形態ではドリル挿入孔35とノズル挿入孔36と保持溝31は垂直をなす同一平面上に配置されている。後述する上型30の設置状態において、ドリル挿入孔35はドリル工具4cと同軸をなす。
【0025】
ドリル挿入孔35とノズル挿入孔36の下端は、保持溝31の中央部内面において交差している。これにより、ドリル挿入孔35とノズル挿入孔36は保持溝31の内面において共通の開口37を有している。保持溝31の内面には、共通の開口37を囲むようにして粘弾性を有するシール材38が接着されている。
【0026】
図7、
図8に示すように、上型30の上面においてドリル挿入孔35の上端が開口する水平面領域(第1面領域)には、平板状のゴム(弾性材料)製の第1パッキン41(第1シール手段)とパッキン押え板42が重なり状態に設けられている。
図9に示すように、第1パッキン41には、一対のネジ挿通孔41aが形成されている。同様にパッキン押え板42にもネジ挿通孔(図示せず)が形成されている。一対のネジ43を第1パッキン41のネジ挿通孔41aおよびパッキン押え板42のネジ挿通孔から挿入して上型30の水平面領域に形成されたネジ穴にねじ込むことにより、パッキン押え板42は、第1パッキン41を圧縮状態で保持することができる。パッキン押え板42には、上型30のドリル挿入孔35の上端開口に対応する位置に、ドリル挿通孔42aが形成されている。
【0027】
同様に上型30の上面においてノズル挿入孔36の上端が開口する傾斜面領域(第2面領域)には、平板状のゴム(弾性材料)製の第2パッキン45(第2シール手段)とパッキン押え板46が重なり状態で設けられている。
図9に示すように、第2パッキン45には、一対のネジ挿通孔45aが形成されている。同様にパッキン押え板46にもネジ挿通孔(図示せず)が形成されている。一対のネジ47を第2パッキン45のネジ挿通孔45aおよびパッキン押え板46のネジ挿通孔から挿入して上型30の傾斜面領域に形成されたネジ穴にねじ込むことにより、パッキン押え板46は、第2パッキン45を圧縮状態で保持することができる。第2パッキン45とパッキン押え板46には、上型30のノズル挿入孔36の上端開口に対応する位置に、挿通孔45b,46bが形成されている。第2パッキン45の挿通孔45b(第2挿通孔)の内径は、ノズル6bの外径より小さい。
【0028】
図3、
図5に示すように、クランプ機構50は、上型30を下型20にクランプするためのものであり、押さえ駒51とボルト52とを有している。押さえ駒51は、平面形状が細長く形成され、その長手軸方向に沿って長孔51aが形成されており、その長手軸方向一端部には、押さえ部51bが水平方向に突設されている。ボルト52は、押さえ駒51の長孔51aに垂直をなして貫通し、ベース10に形成されたネジ穴12に螺合されている。
【0029】
上記構成をなす配管閉塞装置の作用を工程順に説明する。
配管位置決め工程
上述したように位置決め板15の当接縁15aに配管Tを当てることにより、配管Tを下型20に対して位置決めし、下型20のV溝21に配管Tの下半分を設置する。
【0030】
配管挟持工程
次に、上型30を下型20に設置する。この際、上型30の位置決め穴32が下型20の位置決め突起22に挿入されることにより、上型30が下型20に対して位置決めされ、保持溝31に配管Tの上半分が保持される。
上型30を下型20に設置する前は、
図3、
図5に示すように、クランプ機構50の押さえ駒51は下型20から径方向外方向に後退した位置にある。上型30を下型20に設置した後、
図4、
図7に示すように、押さえ駒51を径方向内方向に前進させて、その押さえ部51bを上型30のフランジ部30aの上面に載せ、この状態でボルト52を締め付ける。これにより、上型30のフランジ部30aが、押さえ駒51の押さえ部51bによって下型20に向かって押圧され、配管Tが下型20と上型30との間で挟持される。
【0031】
図8に示すように、配管Tの挟持状態において、配管Tの周壁における上型30の共通開口38に対向する部位が、注入口形成予定部Taとなる。上型30の保持溝31の内面に付着されたシール材38は、圧縮され注入口形成予定部Taを囲んでいる。
【0032】
ノズル挿入工程
次に、
図10に示すように、吐出ガン6のノズル6bをパッキン押え板46および第2パッキン45の挿通孔46a,45aから上型30のノズル挿入孔36に挿入する。このノズル6bの先端は共通の開口37から上方に後退した位置にあり、後述するようにドリル挿入孔35に挿入されるドリル工具4cとの干渉を回避することができる。
第2パッキン45の挿通孔45aの径はノズル6bの径より小さいので、第2パッキン45はノズル6bの外周に弾性力を伴って密着し、これによりノズル挿入孔36とノズル6bとの間がシールされ、ノズル挿入孔36が外部と遮断される。
【0033】
注入口形成工程
次に、ドリル装置4を駆動させるとともに、移動機構5のレバー5bを下方に回動させる。これにより、ドリル工具5cは
図10に示す上型30のドリル挿入孔35の真上の待機位置から下方に移動し、
図11に示すように、パッキン押え板42の挿通孔42aから第1パッキン41を穿孔して挿通孔41bを形成し、さらに下方に移動して、配管Tの注入口切削予定部Taを穿孔して注入口Txを形成する。
【0034】
注入口Txが形成された時に、配管Tの内部が、注入口Txおよび上型30の共通の開口37を介して、ドリル挿入孔35およびノズル挿入孔36と連なる。しかし、第1パッキン41に形成された挿通孔41b(第1挿通孔)は、ドリル工具4cのドリル部4yにより穿孔されるのでドリル部4yの径とほぼ等しくシャンク部4xの径より小さく、しかも注入口Txの形成時には、この挿通孔41bにシャンク部4xが深く挿入されている。そのため、第1パッキン41がシャンク部4xの外周に弾性力を伴って密着し、ドリル工具4cとドリル挿入孔35との間をシールしており、ドリル挿入孔35が外部と遮断されている。また、前述したようにノズル挿入孔36に挿入されたノズル6bの外周に第2パッキン46が弾性力を伴って密着し、ノズル6bとノズル挿入孔36との間をシールしており、ノズル挿入孔36が外部から遮断されている。その結果、配管Tの内部に放射性物質のような有害物質が存在していても、ドリル挿入孔35、ノズル挿入孔36から外部へ漏出するのを防止できる。
【0035】
また、上型30の保持溝31の内面に接着されたシール材38は、圧縮状態で注入口Txを囲んでいるので、配管Tの外面と保持溝31内面との間もシールすることができる。そのため、配管T内部の有害物質が注入口Txから配管Tと保持溝31の間を経て漏出するのも確実に防止することができる。
【0036】
充填材注入工程
次に、レバー5bを操作してドリル工具4cを上方に移動させ、ノズル6bが共通の開口37に向かって前進する際に干渉しない位置まで後退させる。ただし、この後退位置でもドリル工具4cのシャンク部4xが第1パッキン41の挿通孔41bに留まっており、ドリル挿入孔35のシール状態は維持されている。
次に、ノズル6bを前進させて、その先端部を共通の開口37を経て配管Tの注入口Txに挿入する。
次に、吐出ガン6のレバー6cを引き絞り、充填材としてのエポキシ樹脂を配管T内に注入する。このエポキシ樹脂の硬化により配管閉塞が完了する。
【0037】
最終工程
上記エポキシ樹脂の注入後に、移動機構5のレバー5bを操作して、ドリル装置4を上方に移動させ、ドリル工具4cを上型30のドリル挿入孔35、第1パッキン41およびパッキン押え板42の挿通孔41a,42aから引き抜く。
次に、クランプ機構50のボルト52を緩めて押さえ駒51を上型30から後退させ、上型30のクランプ状態を解除する。
次に、ハンマで上型30を叩き、その衝撃で吐出ガン6のノズル6bの薄肉の先端部を破断する。
次に、上型30の吐出ガン6を装着したまま、上型30を下型20から取り外す。本実施形態では上型30と吐出ガン6は使い捨てとなる。
図13に示すように、配管Tの注入口Txには、破断されたノズル6bの先端6xが残される。
【0038】
図13に示すように、硬化したエポキシ樹脂により配管T内部に閉塞部100が形成される。配管Tを閉塞部100とともに例えば図中1点鎖線で示す位置で切断することができる。配管Tの切断口は硬化したエポキシ樹脂で満たされているので、配管Tから有害物質の漏出を防止することができる。なお、配管Tが閉塞部100の一方側で原子炉に接続され、一方側が加圧状態にあり他方側が加圧状態にない場合には、閉塞部100の他方側で切断してもよい。
【0039】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、上型のドリル挿入孔とノズル挿入孔は、保持溝と直交する平面上に配置してもよい。
第1、第2パッキンは一体に連なっていてもよい。
第1、第2シール手段は、板状のパッキンの代わりに、ドリル挿入孔、ノズル挿入孔の内周に配置されたシールリングであってもよい。
第1パッキンの第1挿通孔は、第2パッキンの第2挿通孔と同様に予め形成されていてもよい。この場合、注入口形成工程において、ドリル工具は穿孔を伴わずに通過するか、または第1挿通孔の内周を切削して拡径しながら第1挿通孔を通過する。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、配管の閉塞に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 支持台
2 支柱
3 配管保持治具
4 ドリル装置
4c ドリル工具
4x シャンク部
4y ドリル部
5 移動機構
6 吐出ガン(充填材注入装置)
6b ノズル
20 下型(第1型)
21 V溝(位置決め溝)
30 上型(第2型)
31 保持溝
35 ドリル挿入孔
36 ノズル挿入孔
37 共通の開口
38 シール材
41 第1パッキン
41b 挿通孔(第1挿通孔)
45 第2パッキン
45b 挿通孔(第2挿通孔)
100 閉塞部
T 配管
Tx 注入口