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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】コイルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/22 20060101AFI20240202BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20240202BHJP
   H01F 5/00 20060101ALI20240202BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
H02K3/22
H02K15/04 Z
H01F5/00 F
H01F5/00 D
H01F41/04 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020013218
(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2021119729
(43)【公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】512158446
【氏名又は名称】本郷 武延
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】本郷 武延
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-004210(JP,U)
【文献】実開昭59-171312(JP,U)
【文献】実開昭52-062403(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/22
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の金属部材により第一の螺旋構造体を形成する工程と、
前記第一の金属部材の表面を第二の金属部材で覆う工程と、
前記第一の金属部材を除去し、内部が中空の前記第二の金属部材による第二の螺旋構造体を形成する工程と、
を有することを特徴とするコイルの製造方法
【請求項2】
前記第一の金属部材を溶解し、排出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のコイルの製造方法
【請求項3】
前記第二の螺旋構造体の内部に液体注入する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコイルの製造方法
【請求項4】
前記第一の金属部材によって構成される複数の帯状の導体を準備し、
前記導体の帯長手方向の端面同士を連続して押圧し、前記第一の螺旋構造体を形成する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のコイルの製造方法
【請求項5】
押圧によるバリを除去する工程を有する、
ことを特徴とする請求項4に記載のコイルの製造方法。
【請求項6】
前記第一の螺旋構造体および前記第二の螺旋構造体は、1周分の領域が略矩形状となるように形成される、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のコイルの製造方法。
【請求項7】
前記第の金属部材は平導体である、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のコイルの製造方法。
【請求項8】
前記第二の螺旋構造体を樹脂で被覆する工程を有する、
ことを特徴とする請求項乃至請求項7のいずれか一項に記載のコイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固定子鉄心(ステータ)のコア(ステータコア)の周囲にコイルを配設したコイル装置として、例えば、モータ、発電機、トランスなどの電気機器が挙げられる。そしてこのようなコイル装置において高効率化を図るために、コア内の占積率を向上させて放熱性を向上させたコイルが開発されている(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5592554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば車載用のモータなどのコイル装置の場合、更なる高効率化および軽量化が求められ、これを構成するコイルの放熱性を更に向上させたい要望がある。
【0005】
本発明は、斯かる実情に鑑み、更なる放熱性の向上が可能なコイルおよびその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第一の金属部材により第一の螺旋構造体を形成する工程と、前記第一の金属部材の表面を第二の金属部材で覆う工程と、前記第一の金属部材を除去し、内部が中空の前記第二の金属部材による第二の螺旋構造体を形成する工程と、を有することを特徴とするコイルの製造方法に係るものである。

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、更なる放熱性の向上が可能なコイルおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態のコイルを示す概略図であり、(A)平面図、(B)側面図、(C)断面図、(D)断面図である。
図2】本実施形態のコイルの製造方法の流れの一例を示すフロー図である。
図3】本実施形態のコイル片を示す図であり、(A)平面図、(B)断面図、(C)~(G)平面図である。
図4】本実施形態のコイルの製造方法を示す図であり、(A)~(C)平面図、(D)~(G)側面図である。
図5】本実施形態のコイルの製造方法を示す展開平面図である。
図6】本実施形態のコイルの製造方法を示す断面図である。
図7】他の実施形態のコイルを示す図であり、(A)断面図、(B)平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
<コイル>
図1は、本発明の第1実施形態のコイル10を示す概略図であり、同図(A)が螺旋軸方向から見た平面図、同図(B)が同図(A)を図示の左方向から見た側面概略図、同図(C)および同図(D)が同図(A)のX-X線断面概略図である。
【0012】
本実施形態のコイル10は、一例として平導体22によって螺旋構造を構成してなり、螺旋構造の周回部分の軸が略一致するように(周回部分がコイル10の螺旋軸方向に略重畳するように)巻回された、所謂、集中巻きのエッジワイズコイルである。
【0013】
平導体22は、導電性の良好な金属部材(例えば、銅(Cu)など)であるが、銅以外の金属部材(例えば、アルミニウム(Al)など)であってもよい。
【0014】
図1(A)に示すように、コイル10は一例として、螺旋構造の1周分の領域(同図に一点鎖線で示す領域、以下、1周分領域CRという。)は、略矩形状である。詳細には、螺旋構造体52の1周分領域CRは、角部が略直角であり、螺旋構造体52の軸方向から見た平面視において外周側および内周側のいずれも(略)矩形状となる。
【0015】
螺旋構造体52の1周分領域CRを外周側及び内周側のいずれにおいても略直角の矩形状に構成することで、例えば不図示のステータのコア等に取り付ける場合において、コイル10の占積率を高めることができる。つまり、コアとコイル10の間に無駄な空間がなくなるため、当該空間に熱が滞留する事象を防ぎ、放熱性が向上する。このようにコイル10の蓄熱による抵抗が低減できるため、当該コイル10が組み込まれたコイル装置(例えば、モータなど)の高効率化が図れる。
【0016】
更に本実施形態のコイル10は、同図(C)に示すように、螺旋構造の内部11が中空となっている。より詳細には、コイル10を構成する平導体22は同図(C)に示すように断面視において略矩形型(あるいは矩形の角が湾曲した略O型)の扁平管である。
【0017】
螺旋構造体52の内部11は、いずれの箇所においても遮蔽や分断がされることなく、螺旋構造体52の螺旋進行方向の一端から他端(平導体22の長手方向の始端部SEから終端部EE)まで、中空の領域が連続していることが望ましい。
【0018】
螺旋構造体52の螺旋進行方向の両端部(始端部SEと終端部EE)には、例えば、不図示の端子が設けられる。
【0019】
このように、本実施形態のコイル10は、螺旋構造体52の内部11を中空としたため、内部11において空気が流動可能となる。つまり、所謂ヒートパイプの原理によって内部11の空気の移動に伴って熱の移動(拡散)が可能となるため、内部11も金属が存在する場合と比較して、熱の移動(拡散)の効率を高めることができる。特に、螺旋構造体52の螺旋進行方向における中央付近など、局所的に高温となる領域が生じた場合には(高温になった場合のみ)、当該高温の領域から温度が比較的低い領域(例えば、端子付近など)に熱を高効率で移動させることができる。つまり、コイル10の形状のみならず、ヒートパイプの原理により、より放熱性を高め、蓄熱によるコイル10の抵抗増大を抑制できるので、モータなどコイル装置としての高効率化を図ることが可能となる。
【0020】
さらに同図(D)に示すように、コイル10の内部11には液体13が注入されるものであってもよい。当該液体13は、冷媒(作動液)となるものであり例えば水であるが、熱を伝達可能な流体であれば水に限らない。冷媒(作動液)となる液体13を注入することにより、さらに熱を高効率で移動させることが可能となる。
【0021】
螺旋構造体52の両端部SE、EEが端子(不図示)などに接続されることにより液体13は、その内部11に封入される。
【0022】
更に、図示は省略するが、本実施形態のコイル10は、全体が樹脂で被覆される。樹脂は、螺旋構造体52(平導体22)の全体を被覆する。つまり、螺旋構造体52の1周分領域CR毎に被覆され、軸芯方向に重畳する1周分領域CRの間(ある層の1周分領域CRとそれに連続する層の1周分領域CRの間)は樹脂で絶縁される。
【0023】
以上、第1実施形態のコイル10は、ステータやモータなどのコイル装置への適用に限らず、他のあらゆる装置に適用可能である。また、電気的な素子に限らず、例えば、コイルばねなど弾性手段としての適用も可能である。
【0024】
<コイルの製造方法>
図2図6を参照して本実施形態のコイル10の製造方法について説明する。図2は、コイル10の製造方法の処理の流れの一例を示すフロー図である。同図に示すように、コイル10の製造方法は、第一の金属部材21により第一の螺旋構造体51を形成する工程(ステップS01)と、第一の金属部材21の表面を第二の金属部材22で覆う工程(ステップS03)と、第一の金属部材21を除去し(ステップS05)、内部が中空の第二の金属部材22による第二の螺旋構造体52を形成する工程(ステップS07)と、を有する。
【0025】
図3図5を参照して、まず、第一の螺旋構造体51の製造方法(図2のステップS01)について説明する。図3は、第一の螺旋構造体51を形成する導体Cの一例を示す概要図であり、同図(A)が、第一の螺旋構造体51を軸芯方向から見る場合の導体Cを示す平面図、同図(B)が同図(A)のY-Y線断面図、同図(C)~同図(G)が同図(A)と同様の平面図である。
【0026】
第一の螺旋構造体51は、第一の金属部材21によって構成される複数の帯状の導体Cを準備し、導体Cの帯長手方向の端面TS同士を連続して押圧して形成する。
【0027】
図2に示すように導体Cは、所定方向(例えば図示上下方向)に長く、帯長手方向BLと帯短手方向BSを有する帯状部材である。また、帯長手方向BL(螺旋構造の進行方向)の直線部に交差(直交)する方向(帯短手方向BS)に切断した場合の切断面(X-X線断面、帯短手方向BSに平行な断面)が、同図(B)の上図に示すように、対向する2つの幅広面WSと、対向する2つの幅狭面WTを有する(略)矩形状の導体(平導体)Cである場合を例に説明するが、同図(B)の下図に示すように角丸矩形状の平導体Cであってもよい。以下、この(平)導体Cをコイル片Cという場合もある。
【0028】
本実施形態の、コイル片Cはそれぞれ、第一の金属部材(例えばアルミニウム(Al))21で構成される。より詳細には、コイル片Cは、アルミニウム板(例えば、厚さ0.1mm~5mm程度)を所望の形状に打ち抜いて得られたものである。
【0029】
同図(C)~同図(F)に示すように、複数のコイル片Cの少なくとも一部は、直線部STRと少なくとも1つの方向変換部TN(ドットのハッチングで示す)を有する。方向変換部TNは、帯長手方向の延在方向を変化させるように曲折した部位である。
【0030】
より詳細に、この例のコイル片Cは、帯長手方向BL(大破線で示す)に沿って第一の方向に延在する第一直線部STR1と、第二の方向に延在する第二直線部STR2と、第一直線部STR1と第二直線部STR2との間に配置された方向変換部TNを少なくとも有している。
【0031】
また、以下、コイル片Cの帯長手方向BLの両端部の面(帯長手方向BLに直交する切断面に平行な端部の面)を端面TSという。本実施形態のコイル片Cの端面TSは、コイル片Cの方向変換部TNを除いた直線部に位置するものとする。
【0032】
直線部STR(第一直線部STR1と第二直線部STR2)とは、それぞれ端面TSに連続し、且つ、帯長手方向BLに沿う方向において押圧による圧接量(押圧長さ)よりも長い直線領域を有する部位である。つまり、コイル片Cはいずれも、帯長手方向BLに沿う押圧方向Pに押圧され、連続して接続される。
【0033】
方向変換部TNを有するコイル片Cは、連続させた場合に螺旋形状となるように、帯長手方向BLに沿って同一方向(平面視において常に右方向、または左方向)に曲折しているものとする。またその方向変換部TNの少なくとも1つ(好適には全て)は、非湾曲(例えば、略直角)形状の角部であることが望ましい。この例では、方向変換部TNは同図(D)にハッチングで示すように、略正方形状領域である。コイル片Cを金属部材の打ち抜きで形成することで、方向変換部TNを略直角形状の角部にすることが可能となる。
【0034】
より具体的に、複数のコイル片Cの少なくとも一部は、方向変換部TNが1個のL字状(同図(C)),方向変換部TNが2個のU字状(同図(D)),方向変換部TNが3個のC字状(同図(E))、方向変換部TNが4個のC字状(同図(G))のいずれかの形状である。複数のコイル片Cは、全てのコイル片Cが同じ形状であってもよいし、同図(C)~同図(F)の少なくともいずれかの形状の組合せであってもよい。また、同図(C)~同図(F)の少なくともいずれかの形状のコイル片Cと、方向変換部TNを有しない直線状(I字状)のコイル片Cの組合せであってもよい。さらに図示は省略するが、方向変換部TNが4個のO字状のコイル片Cであってもよい。以下の例では、全てのコイル片Cが同図(D)に示すU字状である場合を例に説明する。
【0035】
このような複数のコイル片(平導体)Cは、同図(G)に示すように、螺旋進行方向の端面TS同士を突合せて圧接(例えば、冷間圧接)により接合され、第一の螺旋構造体51が形成される。より詳細には、帯状の複数の平導体(コイル片)Cをそれらの直線部STRにおいて帯長手方向BL(螺旋進行方向)に沿ってつなぎ合わせ、螺旋進行方向の端面TS同士を突き合わせて押圧方向Pに押圧(圧接、例えば、冷間圧接)し、1周分領域CRを所望の巻き数連続させて螺旋構造を形成する。
【0036】
図4および図5を参照して、一例として図3(D)に示すようなU字形状の複数のコイル片Cを順次圧接して第一の螺旋構造体51を形成する方法について具体的に説明する。なお、以下の説明において、複数のコイル片(平導体)Cを連続(接続)させた螺旋構造体であって、完成状態の第一の螺旋構造体51となる以前の螺旋構造体(コイル片Cを引き続き接続する予定の螺旋構造体)もコイル片Cに含まれるものとする。つまり、以下の説明において、コイル片Cには、直線状、または帯長手方向において一または複数の方向変換部TNを有する最小単位のコイル片(接続前のコイル片)と、該最小単位のコイル片を複数接続し、完成予定の第一の螺旋構造体51の1周分領域CRより長い螺旋構造が形成されたコイル片とが含まれる。また、説明の便宜上、これらの区別が必要な場合には、最小単位のコイル片を単位コイル片C0(C01、C02、C03・・・C0N)といい、単位コイル片C0を複数接続したものであって完成予定の第一の螺旋構造体51となる以前のコイル片の接合体を接合コイル片CC(CC1,CC2…、CCN)という。
【0037】
図4(A)~同図(C)は、第一の螺旋構造体51の螺旋軸方向から見た平面図であり、同図(D)は同図(A)に、同図(E)は同図(B)に、同図(F)および同図(G)は同図(C)に対応し、例えば、同図(A)~同図(C)を図示下方から見た場合の側面図である。
【0038】
同図(A)、同図(D)に示すように第一の螺旋構造体51の1周目の1周分領域CR1を形成するために2つのU字状の単位コイル片C01,C02を準備する。
【0039】
同図(B)、同図(E)に示すように、2つのU字状の単位コイル片C01,C02は、それぞれの直線部STRにおいてそれぞれの帯長手方向(螺旋進行方向)の一方側の端面TS12,TS21同士を当接させた状態(圧接前の状態)で仮想的な螺旋構造体の1周分領域(同図(B)に二点鎖線で示す。以下、仮想1周分領域CR´)を形成可能である。
【0040】
そして、不図示の接合装置(圧接装置)によって、単位コイル片C01,C02を保持し、単位コイル片C01の一方の端面TS12と、単位コイル片C02の一方の端面TS21同士を突き合わせ、押圧方向Pに沿って押圧(冷間圧接)して接合コイル片CC1を形成する(同図(C)、同図(F))。このとき、接合装置は例えば、単位コイル片C01と単位コイル片C02の端面TS12,TS21同士を押圧し、直線部STRの長さを短縮することで、接合コイル片CC1の1周分領域(接合1周分領域)の長さをコイル10の1周分領域CR(一点鎖線で示す)の長さに一致させる。
【0041】
つまり、接合前の単位コイル片C01、C02は、押圧方向Pに沿う長さ(同図(B)、同図(E)に示す仮想1周分領域CR´の長辺領域の長さLS)が、接合後の(完成状態の)押圧方向Pに沿う長さ(同図(C),同図(F)に示す1周分領域CRの長辺領域の長さLE)より圧接量CPL分長くなるように設定されている。なお、単位コイル片C0はいずれも、接合前において圧接量CPL分長くなるように設定されてるため、接合される端面とは別の端面側(この例では単位コイル片C01の他方の端面TS11側など)が干渉する。このため、当該別の端面側は少なくとも一方のコイル片C0を(一時的に)弾性変形および/または塑性変形して接合する。
【0042】
同図(C)に示すように、単位コイル片C01,C02の押圧による接合部15は両者の直線部STR(方向変換部TN(角部)を除く領域)に形成される。換言すると、接合部15は、方向変換部TN(角部)には含まれない。
【0043】
ここで、同図(F)に示すように、接合部15には押し出しによってコイル片Cの幅広面WSに対して垂直方向に突出するバリ60が生じる。従って、接合部15の形成後には、同図(G)に示すようにそのバリを切断や切削により除去する。なお、既述のとおり接合部15は実際には視認困難(不能)であるが説明の便宜上実線で示している。
【0044】
以下同様にコイル片Cを接続する。図5は、この接続の状態を簡易的に示す図であって第一の螺旋構造体52の軸方向から見た展開概要図であり、同図(A)が図4(C)に対応している。
【0045】
同図(B)では、同図(A)に示す接合コイル片CC1に、単位コイル片C02を接続する。すなわち、単位コイル片C02と同形状の単位コイル片C03を準備し、接合コイル片CC1(例えば、単位コイル片C02)の他方の端面TS22と、単位コイル片C03の一方の端面TS31とを同様に冷間圧接し、接合コイル片CC2を形成する。また、圧接後に接合部15のバリを除去する。
【0046】
以降必要に応じて圧接とバリの除去を所定の巻き数N分繰り返すことにより、Nターンの1周分領域CRを有する第一の螺旋構造体51が形成される(同図(C))。また、第一の螺旋構造体51の1周分領域CRは略矩形状となる(図1(A)参照)。
【0047】
図6は、第二の螺旋構造体52の形成方法を説明する概要図であり、図1(A)のX-X線断面(図1(C),図1(D))に対応する断面図である。
【0048】
同図(A)は、図5(C)で完成した状態の第一の螺旋構造体51の断面図である。同図に示すように、第一の螺旋構造体51の1周分領域CRを互いに離間させた状態で、その全体を第二の金属部材22で被覆する(同図(B))。第二の金属部材22は、例えば、第一の金属部材21とは異なる金属であって、好適には導電性の高い金属であり、例えば銅(Cu)である。つまり第一の金属部材21は、長尺の螺旋構造の全体に亘り、その表面が第二の金属部材22によって被覆される。第二の金属部材22は例えばめっきなどの手法によって第一の金属部材21の表面に連続且つ均一的に付着される。これにより、第一の金属部材21と第二の金属部材22による2層構造の螺旋構造体が形成される。
【0049】
その後、同図(C)に示すように、内側の第一の金属部材21のみを除去し、内部11が中空の第二の金属部材21による第二の螺旋構造体52を形成する。第一の金属部材21の除去は、例えば、第一の金属部材21を薬剤等により溶解し、外部に排出することによって行なう。第一の金属部材21が例えば、Alの場合、酸性または塩基性の水溶液などで溶解可能である。またこれに限らず、物理的な削り出し(押出し)などによる除去でもよい。
【0050】
これにより、第二の金属部材22のみが図1に示す平導体22として残存し、その内部が中空の第二の螺旋構造体52(図1に示す螺旋構造体52)が形成される。つまり、第二の螺旋構造体52もその1周分領域CR(内周領域、および外周領域のいずれも)は第一の螺旋構造体51と同様の略矩形状となる。
【0051】
そして、第一の螺旋構造体51を構成するコイル片Cが平導体の場合、第二の螺旋構造体52は、螺旋構造の進行方向(帯長手方向)に交差(直交)する方向に切断した場合の切断面が対向する2つの幅広面WSと、対向する2つの幅狭面WTを有する略矩形型(あるいは矩形の角が湾曲した略O型)の扁平管となる。
【0052】
また第二の螺旋構造体52の内部11は、いずれの箇所においても遮蔽や分断がされることなく、第二の螺旋構造体52の螺旋進行方向の一端から他端(平導体22の長手方向の始端から終端)まで、中空の領域が連続する。
【0053】
なお、第二の金属部材22は、第一の金属部材21の除去(例えば、溶解による除去)であってもその形状や性質が変化および/または劣化しない材質であることが望ましい。一方、第一の金属部材21を例えば物理的に除去する場合などにおいては、第一の金属部材21と第二の金属部材22は同一、同質の部材であってもよい。
【0054】
更に、同図(D)に示すように、(必要に応じて)第二の螺旋構造体52の内部11に冷媒(作動液)となる液体13を注入する。この場合、図示は省略するが、例えば第二の螺旋構造体52の一端のみに端子等を接続し、一端を密閉した状態で開放されている他端から液体13を注入する。この場合、当該端子は、予め、第一の螺旋構造体51の端部となるコイル片Cに接続(圧接)しておいてもよい(端子が接続されたコイル片Cに新たなコイル片Cを接続するものであってもよい)。液体13の注入後、他端にも端子等を接続して液体13を第二の螺旋構造多い52の内部11に封入する。
【0055】
なお、第二の螺旋構造体52の両端を開放した状態でその内部11に液体13を注入し、両端にそれぞれ端子等を接続するものであってもよい。
【0056】
第二の螺旋構造体52と端子の接続は、コイル片C同士の接続と同様に押圧(例えば、冷間圧接)によって行なう。
【0057】
その後、例えば両端子部分を除き、第二の螺旋構造体52の全体を不図示の樹脂で被覆する。樹脂は、螺旋構造の1周分領域CR毎に被覆され、軸芯方向に重畳する1周分領域CRの間(ある層の1周分領域CRとそれに連続する層の1周分領域CRの間)は樹脂(不図示)で絶縁される。
【0058】
このようにして、本実施形態のコイル10が形成される。完成径のコイル10を構成する第二の螺旋構造体52は、第一の螺旋構造体51の皮膜として形成されるので、接続部は存在せず、螺旋進行方向において(略)均一な膜厚で連続している。
【0059】
つまり、コイル10は、(第二の)螺旋構造体52の1周分領域CRが略矩形状でありながら、螺旋進行方向のいずれにも接続部は存在していない。複数のコイル片Cを接着材(固着材、ロウ付けなど)で平面接続したり、溶接などにより接続するような構成では接続部において抵抗値などの特定が変化する(不安定となる)ことは不可避である。しかしながら本実施形態では、接続部が存在しないため接続部の存在によって生じる問題を一切排除できる。
【0060】
また、コイル10はその平面視(同図(A))の形状(特に内周側の形状)を略矩形状にすることができるので、例えば、モータのステータに取り付ける場合においてコイル10の占積率を高めることができる。これにより、当該コイル10を採用したモータの低抵抗化・高効率化を実現できる。
【0061】
更に、コイル10は、その外形状のみならず、その内部11が中空であるため、ヒートパイプの原理により、より放熱性を高め、蓄熱によるコイル10の抵抗増大を抑制できるので、モータなどコイル装置としての高効率化を図ることが可能となる。
【0062】
また、内部11に冷媒(作動液)を注入することでさらに放熱性を高めることが可能となる。
【0063】
加えて、コイル10の内部11が中空であるため、内部11が中実(第一の金属部材21または第二の金属部材22が存在している状態)の場合と比較して、コイル10の重量を軽量化できる。
【0064】
なお、第一の金属部材21および第二の金属部材22の材質は上記の例に限らない。例えば、第一の金属部材21は、非鉄金属系材料など冷間圧接できる金属部材であればよい。具体的には、第一の金属部材21は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、銅ニッケル合金、真鍮、亜鉛、銀、銀合金、ニッケル、金、その他合金等の金属部材であってもよく、錫メッキ、銀メッキ、ニッケルメッキを含む部材であってもよい。
【0065】
また、第二の金属部材21は上述のいずれかの金属部材が適用可能であるが、第一の金属部材21を溶融により除去する場合には、その際に材質に変化および/または劣化が生じない部材が選択される。
【0066】
以上、第一の螺旋構造体51を構成する複数のコイル片Cが平導体である場合を例に説明したが、これに限らず、複数のコイル片Cは、丸線の導体であってもよい。
【0067】
また、方向変換部TNは、平面視において略正方形状に限らず、所定の曲率の湾曲形状であってもよい。
【0068】
更に、第一の螺旋構造体51は、第一の金属部材(例えば、Al)によって構成される長尺の(例えば、螺旋構造体の1周分領域の複数倍の)導体を所定数巻回して螺旋構造を構成したものであってもよい。この場合の導体は、平導体であってもよいし、丸線(または角線)であってもよい。その場合も第一の螺旋構造体51の形成後にその表面を第二の金属部材22で覆い、第一の金属部材21を除去して内部11が中空の第二の螺旋構造体52を形成する。
【0069】
<第2実施形態>
図7を参照して本発明の第2実施形態について説明する。図7(A)は、図1(C)に対応する断面図であり、同図(B)は、図1(A)に対応する平面図である。
【0070】
第2実施形態は、主にステータ(モータ)などの部品(電気的な素子)として適用可能なコイル10の一例を示す。一例として本実施形態のコイル10は、ステータコアのティース部分に取り付けられてステータ(固定子)を構成する。
【0071】
第2実施形態のコイル10は、一例として丸線の導体22´によって螺旋構造を構成してなり、螺旋構造の周回部分の軸が略一致するように(周回部分がコイル10の螺旋軸方向に略重畳するように)巻回された、所謂、集中巻きのコイルである。
【0072】
この場合も、図1(A)に示すように、螺旋構造体52の1周分領域CRは、角部が略直角であり、螺旋構造体52の軸方向から見た平面視において外周側および内周側のいずれも(略)矩形状となることが望ましい。しかしながら、図7(B)に示すように、角部が湾曲した形状であってもよい。
【0073】
第2実施形態のコイル10は導体22´の形状が異なる以外は、第1実施形態と同様である。すなわち、同図(A)に示すように、螺旋構造の内部11が中空となっている。より詳細には、コイル10を構成する22´は、螺旋構造の進行方向(帯長手方向)に交差(直交)する方向に切断した場合の切断面が略円形(または楕円形)の円筒管(ストロー状の管)である。
【0074】
螺旋構造体52の内部11は、いずれの箇所においても遮蔽や分断がされることなく、螺旋構造体52の螺旋進行方向の一端から他端(導体22´の長手方向の始端部SEから終端部EE)まで、中空の領域が連続していることが望ましい。
【0075】
また図示は省略するが、この場合も、内部11に冷媒(作動液)となる液体を注入するとより好ましい。
【0076】
なお、導体22´は丸線に限らず、角線(同図(A)に相当する断面形状が略正方形状の導線)であってもよい。
【0077】
第2実施形態のコイル10は、第1実施形態のコイル10と同様に製造することができる。すなわち、第一の金属部材(例えば、Al)によって構成される複数の帯状の丸線の導体(コイル片)C´の帯長手方向の端面同士を連続して押圧して、第一の螺旋構造体51を形成し、第一の金属部材21の表面を第二の金属部材(例えば、Cu)22で覆い、Alを溶融して内部が中空の第二の螺旋構造体52を形成する。
【0078】
あるいは、第一の金属部材(例えば、Al)によって構成される長尺(第一の螺旋構造体51分の長さ)の丸線の導体22´を所定数巻回して第一の螺旋構造体51を形成し、第二の金属部材22で覆い、第一の金属部材21を溶融して第二の螺旋構造体52を形成してもよい。
【0079】
また、第一の螺旋構造体51の形成に際し、圧接する2つのコイル片Cは、その端面TSの形状が異なるものであってもよい。例えば端面TSの形状として幅(帯短手方向BSの長さ)が異なるコイル片C同士を圧接する構成であってもよいし、厚み(幅広面WS間の長さ)が異なるコイル片C同士を圧接する構成であってもよいし、幅と厚みが異なるコイル片C同士を圧接する構成であってもよい。
【0080】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、ステータ及びモータに適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
10 コイル
11 内部
13 液体
15 接合部
21 第一の金属部材
22 導体(第二の金属部材)
51 第一の螺旋構造体
52 第二の螺旋構造体
60 バリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7