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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】エフィナコナゾール含有爪外用液
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/454 20060101AFI20240202BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240202BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240202BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240202BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20240202BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
A61K31/454
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
A61K9/08
A61P31/10
A61P17/00 101
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020019922
(22)【出願日】2020-02-07
(65)【公開番号】P2020128370
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】62/803,186
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/846,181
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000209049
【氏名又は名称】沢井製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】脇阪 結香
(72)【発明者】
【氏名】春名 誠司
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/110693(WO,A1)
【文献】特表2016-532722(JP,A)
【文献】特表2012-523410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
47/00-47/69
9/00-9/72
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エフィナコナゾールと、
オレイルアルコール、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール及びオクチルドデカノールからなる群から選択される1つ以上の不揮発性溶剤と、
を含むエフィナコナゾール含有爪外用液であって、
前記エフィナコナゾール含有爪外用液はエチルセルロースを含まず、
前記エフィナコナゾール含有爪外用液が前記オレイルアルコールを含む場合は、前記エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、前記オレイルアルコールを10重量%以下の含有量で含み、
前記エフィナコナゾール含有爪外用液が前記イソステアリルアルコールを含む場合は、前記エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、前記イソステアリルアルコールを3重量%以下の含有量で含み、
前記エフィナコナゾール含有爪外用液が前記オレイルアルコール、ヘキシルデカノール及びイソステアリルアルコールのいずれかを含む場合は、前記オレイルアルコール、ヘキシルデカノール及びイソステアリルアルコールの含有量以上のラウロマクロゴールを含まない
ことを特徴とするエフィナコナゾール含有爪外用液。
【請求項2】
エフィナコナゾールと、
オレイルアルコール、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール及びオクチルドデカノールからなる群から選択される1つ以上の不揮発性溶剤と、
を含むエフィナコナゾール含有爪外用液であって、
前記エフィナコナゾール含有爪外用液がラウロマクロゴールをさらに含み、
前記不揮発性溶剤がオレイルアルコール、ヘキシルデカノール及びイソステアリルアルコールからなる群から選択される1つ以上である場合には、前記ラウロマクロゴールの含有量が前記不揮発性溶剤より少ない含有量であることを特徴とすエフィナコナゾール含有爪外用液。
【請求項3】
前記不揮発性溶剤がオレイルアルコール、ヘキシルデカノール及びイソステアリルアルコールの組合せであることを特徴とする請求項1に記載のエフィナコナゾール含有爪外用液。
【請求項4】
前記エフィナコナゾール含有爪外用液は、前記ヘキシルデカノールを含み、
前記エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、前記ヘキシルデカノールを20重量%以下の含有量で含むことを特徴とする請求項1乃至の何れか一に記載のエフィナコナゾール含有爪外用液。
【請求項5】
前記エフィナコナゾール含有爪外用液は、前記オクチルドデカノールを含み、
前記エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、前記オクチルドデカノールを35重量%以下の含有量で含むことを特徴とする請求項1乃至の何れか一に記載のエフィナコナゾール含有爪外用液。
【請求項6】
無水クエン酸と、
ジブチルヒドロキシトルエン又は没食子酸プロピルと、
をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至の何れか一に記載のエフィナコナゾール含有爪外用液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エフィナコナゾール含有爪外用液に関する。
【背景技術】
【0002】
爪真菌症(爪白癬)は、Trichophyton rubrum等の皮膚糸状菌又はAspergillus、Scopulariopsis、Fusarium等の真菌によって引き起こされる爪甲、爪床、又はこの両方に生じる疾患である。エフィナコナゾール((2R,3R)-2-(2,4-Difluorophenyl)-3-(4-methylenepiperidin-1-yl)-1-(1H-1,2,4-triazol-1-yl)butan-2-ol)は、真菌細胞膜の主要構成成分であるエルゴステロールの生合成を阻害することから、爪真菌症を治療する外用薬として用いられている(特許文献1~4)。具体的には、エフィナコナゾールは、エルゴステロールの前駆体であるラノステロールの14位メチル基の脱メチル化反応を阻害する。
【0003】
一方、エフィナコナゾールのようなトリアゾール系抗真菌化合物は、例えば変色などの保存時での不安定性を示すことが知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5623913号公報
【文献】特許第5872656号公報
【文献】特表2016-532722号公報
【文献】特表2017-500374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、安定で爪透過性が良好なエフィナコナゾール含有爪外用液を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によると、エフィナコナゾールと、オレイルアルコール、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール及びオクチルドデカノールからなる群から選択される1つ以上の不揮発性溶剤と、を含むことを特徴とするエフィナコナゾール含有爪外用液が提供される。
【0007】
ラウロマクロゴールをさらに含み、前記不揮発性溶剤がオレイルアルコール、ヘキシルデカノール及びイソステアリルアルコールからなる群から選択される1つ以上である場合には、前記ラウロマクロゴールは、前記不揮発性溶剤より少ない含有量であってもよい。
【0008】
前記不揮発性溶剤がオレイルアルコール、ヘキシルデカノール及びイソステアリルアルコールの組合せであってもよい。
【0009】
前記エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、前記オレイルアルコールを10重量%以下の含有量で含んでもよい。
【0010】
前記エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、前記ヘキシルデカノールを20重量%以下の含有量で含んでもよい。
【0011】
前記エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、前記イソステアリルアルコールを3重量%以下の含有量で含んでもよい。
【0012】
前記エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、前記オクチルドデカノールを35重量%以下の含有量で含んでもよい。
【0013】
無水クエン酸と、ジブチルヒドロキシトルエン又は没食子酸プロピルと、をさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態によると、安定で爪透過性が良好なエフィナコナゾール含有爪外用液が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るエフィナコナゾール含有爪外用液の製造方法を示すフロー図である。
図2】本発明の一実施例及び比較例に係るエフィナコナゾール含有爪外用液の物性を示す図である。
図3】本発明の一実施例及び比較例に係るエフィナコナゾール含有爪外用液の物性を示す図である。
図4】本発明の一実施例及び比較例に係るエフィナコナゾール含有爪外用液の爪透過量の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るエフィナコナゾール含有爪外用液について詳細に説明する。ただし、本発明のエフィナコナゾール含有爪外用液は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0017】
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、エフィナコナゾールを0.5重量%以上15重量%以下含むことができる。一実施形態において、エフィナコナゾールを10重量%含むことができる。
【0018】
本発明の一実施形態に係るエフィナコナゾール含有爪外用液は、エフィナコナゾールと、オレイルアルコール、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール及びオクチルドデカノールからなる群から選択される1つ以上の不揮発性溶剤と、を含む。一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、エフィナコナゾールと、オレイルアルコール、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール及びオクチルドデカノールからなる群から選択される不揮発性溶剤を2つ又は3つ組合せて含有してもよい。
【0019】
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、不揮発性溶剤として、オレイルアルコール、ヘキシルデカノール及びイソステアリルアルコールを組合せて含有することが好ましい。エフィナコナゾールと、不揮発性溶剤として、オレイルアルコール、ヘキシルデカノール及びイソステアリルアルコールを組合せて含有することにより、安定で良好な爪透過性を有するエフィナコナゾール含有爪外用液を提供することができる。
【0020】
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、オレイルアルコールを10重量%以下の含有量で含むことが好ましい。オレイルアルコールを10重量%よりも多く含有すると、保存時のエフィナコナゾール含有爪外用液において、エフィナコナゾールの類縁物質の増加を十分に抑制できないこともあるため、好ましくない。
【0021】
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、ヘキシルデカノールを20重量%以下の含有量で含むことが好ましい。
【0022】
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、イソステアリルアルコールを3重量%以下の含有量で含むことが好ましい。イソステアリルアルコールを3重量%よりも多く含有すると、保存時のエフィナコナゾール含有爪外用液において、エフィナコナゾールの類縁物質の増加を抑制できても、わずかに変色することがある。
【0023】
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、オクチルドデカノールを35重量%以下の含有量で含むことが好ましい。
【0024】
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、不揮発性溶剤として、ラウロマクロゴールをさらに含んでもよい。ラウロマクロゴールは、含有量が多いと、エフィナコナゾール含有爪外用液中の類縁物質が増加する傾向がある。そのため、エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、ラウロマクロゴールは15重量%以下が望ましい。特に、不揮発性溶剤がオレイルアルコール、ヘキシルデカノール及びイソステアリルアルコールからなる群から選択される1つ以上である場合には、ラウロマクロゴールは、不揮発性溶剤より少ない量で含有することができる。この場合、例えば、エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、ラウロマクロゴールを11重量%より少なく、さらに、5重量%以下であることが好ましい。
【0025】
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、湿潤剤をさらに含んでもよい。湿潤剤として、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤を用いることができる。一実施形態において、湿潤剤として、揮発性シリコンを用いることができる。環状揮発性シリコンとしては、シクロメチコンとして一般に知られるポリジメチルシクロシロキサン(シクロペンタシロキサン、シクロテトラシロキサン、およびデカメチルシクロペンタシロキサンなど)、又は、直鎖状ポリシロキサン(ヘキサメチルジシロキサン、およびオクタメチルトリシロキサンなど)を用いることができるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、湿潤剤を0.001重量%以上95重量%以下、5重量%以上80重量%以下、7重量%以上60重量%以下、10重量%以上40重量%以下、又は10重量%以上15重量%以下の含有量で含むことが好ましい。
【0026】
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、抗酸化剤として、無水クエン酸と、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)又は没食子酸プロピルと、をさらに含むことができる。一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、無水クエン酸を0.01重量%以上2重量%以下、0.1重量%以上1重量%以下の含有量で含むことができる。エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、BHT又は没食子酸プロピルを0.01重量%以上2重量%以下、0.1重量%以上1重量%以下の含有量で含むことが好ましい。一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、無水クエン酸と、BHT又は没食子酸プロピルと、を同じ重量割合で含んでもよい。
【0027】
特許文献3においては、BHTを含む製剤の安定性と、没食子酸プロピル(プロピル ガラート)を含む製剤の不安定性が開示されているが、本発明に係るエフィナコナゾール含有爪外用液においては、没食子酸プロピルを用いても安定である。これは、アジピン酸ジイソプロピルと乳酸アルキル(C12-C15)を不揮発性溶剤として用いる特許文献3のエフィナコナゾール含有製剤と、上述した不揮発性溶剤を含有する本発明に係るエフィナコナゾール含有爪外用液との組成の相違に起因するものと推察される。
【0028】
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、安定化剤をさらに含んでもよい。安定化剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム水和物、エデト酸二カリウム、エチレンジアミンコハク酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三ナトリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸、フィチン酸、及び、リンゴ酸を用いることができるが、エデト酸ナトリウム水和物が最も好ましい。一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、安定化剤を0.0001重量%以上1重量%以下、0.0002重量%以上0.1重量%以下の含有量で含むことが好ましい。
【0029】
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、薬学的許容される1つ以上の溶媒を含むことができる。溶媒としては、例えば、水、アルコール、ポリオール、エーテル、エステル、アルデヒド、ケトン、脂肪酸、脂肪アルコール、及び脂肪エステルが挙げられる。例えば、エタノール、3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2,3-プロパントリオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、イソプロピルアルコール及び2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
[pH]
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、エフィナコナゾールの酸解離定数(pKa)以下であることが好ましい。具体的には、エフィナコナゾールは、pKa=6.34であることから、エフィナコナゾール含有爪外用液は、pH6.34以下であることが好ましい。一般に、分子型の薬物は、イオン型の薬物より透過性が高いことが知られている。エフィナコナゾール含有爪外用液がpH6.34以下であることにより、分子型のエフィナコナゾールの割合が大きくなり、エフィナコナゾールの爪透過性が向上するため好ましい。
【0031】
[表面張力]
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、25mN/m以下の表面張力を有することが好ましい。このような低い表面張力を有することにより、エフィナコナゾール含有爪外用液が爪全体、爪と指の隙間へも十分に広がることができる。本明細書において、エフィナコナゾール含有爪外用液の表面張力は、毛管上昇式の測定方法により測定するものとする。
【0032】
[粘度]
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、患部へ塗布する観点から、5mPa・s以下であることが好ましい。本明細書において、エフィナコナゾール含有爪外用液の粘度は、微量差圧式粘度計により測定するものとする。
【0033】
[性状]
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、目視で無色透明~微黄色透明であることが好ましく、特に無色透明であることが好ましい。本明細書において、エフィナコナゾール含有爪外用液の性状は、製造直後と、エフィナコナゾール含有爪外用液を高密度ポリエチレン製の気密容器に入れた状態で60℃、相対湿度60%RHで2週間保存した後で目視により変化の有無を評価するものとする。
【0034】
[エフィナコナゾールの含有量]
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、60℃、相対湿度60%RHで2週間保存した後のエフィナコナゾールの含有量が、規定された含有量の95%以上105%以下であることが好ましい。本明細書において、エフィナコナゾールの含有量は、HPLC法により測定し、実測定値及び蒸散率から、溶媒等の蒸散量を加味して補正して算出するものとする。
【0035】
[総類縁物質量]
本明細書において、安定性の評価として、エフィナコナゾール含有爪外用液を60℃、相対湿度60%RHで2週間保存した後のエフィナコナゾールの総類縁物質量を、HPLC法により測定する。クロマトグラム上に得られたエフィナコナゾールのピーク面積を100とし、エフィナコナゾール由来の各類縁物質のピーク面積の比の総和から、総類縁物質(%)を算出する。このとき、実測定値及び蒸散率から、溶媒等の蒸散量を加味して補正して算出するものとする。一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、60℃、相対湿度60%RHで2週間保存後のエフィナコナゾールに由来する類縁物質の総類縁物質量が0.46%以下、0.45%以下、又は0.40%以下であることが好ましい。本明細書において、総類縁物質量がこの範囲にあれば、後述する比較例1よりも安定である。
【0036】
[爪透過性]
本明細書において、エフィナコナゾールの爪透過性は、Sugiura et.al,Antimicrobial Agents and Chemotherapy 2014,58,7,3837-3842に記載された方法に準じて測定するものとする。一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、爪透過速度が0.3μg/cm2/day以上であることが好ましい。また、一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、累積透過量が例えば6日間で1.0μg/cm2以上、又は1.5μg/cm2以上であることが好ましい。
【0037】
[製造方法]
本発明の一実施形態に係るエフィナコナゾール含有爪外用液は、公知の製造方法により製造することができる。図1は、本発明の一実施形態に係るエフィナコナゾール含有爪外用液の製造方法を示すフロー図である。一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、例えば、溶剤、抗酸化剤及び安定化剤を溶解し、撹拌・混合した後に、エフィナコナゾールを添加して、撹拌・混合する。上記の溶剤を用いて定容し、エフィナコナゾール溶液を調製する。エフィナコナゾール溶液をろ過したエフィナコナゾール含有爪外用液を、容器に充填した後に装栓する。エフィナコナゾール含有爪外用液を充填した容器を包装してもよい。
【実施例
【0038】
[比較例1]
特許文献3の実施例7の記載に基づき、比較例1を製造した。具体的には、95%エタノールに、デカメチルシクロペンタシロキサン、不揮発性溶剤としてアジピン酸ジイソプロピル及び乳酸アルキル(C12-15)、抗酸化剤としてジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、無水クエンを溶解し、溶液1を調製した。精製水にエデト酸ナトリウム水和物を添加して溶解し、溶液1に添加して、撹拌・混合することにより溶液2を調製した。溶液2にエフィナコナゾールを溶解し、95%エタノールを用いて定容し、比較例1のエフィナコナゾール溶液を調製した。比較例1のエフィナコナゾール溶液をろ過し、比較例1のエフィナコナゾール含有爪外用液を調製した。
【0039】
[実施例1~4]
本発明の実施例1~4として、不揮発性溶剤としてアジピン酸ジイソプロピル及び乳酸アルキル(C12-15)に替えて、オレイルアルコール、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール及びオクチルドデカノールから選択された1つ以上の不揮発性溶剤を用い、実施例4において、ラウロマクロゴールをさらに添加し、抗酸化剤としてBHTに替えて、没食子酸プロピルを用いたこと以外は、比較例1の製造方法と同様に、実施例1~4のエフィナコナゾール含有爪外用液を調製した。
【0040】
[比較例2]
比較例2として、アジピン酸ジイソプロピル及び乳酸アルキル(C12-15)に替えて、不揮発性溶剤であるプロピレングリコールと、乳酸を用い、抗酸化剤としてBHTに替えて、没食子酸プロピルを用いたこと以外は、比較例1の製造方法と同様に、比較例2のエフィナコナゾール含有爪外用液を調製した。
【0041】
[比較例3]
比較例3として、アジピン酸ジイソプロピル及び乳酸アルキル(C12-15)に替えて、不揮発性溶剤であるラウロマクロゴールと、乳酸を用い、抗酸化剤としてBHTに替えて、没食子酸プロピルを用いたこと以外は、比較例1の製造方法と同様に、比較例3のエフィナコナゾール含有爪外用液を調製した。
【0042】
[比較例4]
比較例4として、さらに尿素を追加したこと以外は、比較例3の製造方法と同様に、比較例4のエフィナコナゾール含有爪外用液を調製した。
【0043】
[比較例5~7]
比較例5~7として、オレイルアルコール、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール及びオクチルドデカノールから選択された1つ以上の不揮発性溶剤を用い、ラウロマクロゴールをさらに添加し、抗酸化剤としてBHTに替えて、没食子酸プロピルを用いたこと以外は、比較例1の製造方法と同様に、比較例5~7のエフィナコナゾール含有爪外用液を調製した。なお、比較例5~7においては、実施の形態において説明した不揮発性溶剤及びラウロマクロゴールの含有量の範囲から外れた含有量で不揮発性溶剤及びラウロマクロゴールを含む例を示す。
【0044】
[比較例8]
比較例8として、アジピン酸ジイソプロピル及び乳酸アルキル(C12-15)に替えて、不揮発性溶剤であるオレイルアルコール、オクチルドデカノールを用い、抗酸化剤としてBHTに替えて、没食子酸プロピルを用いたこと以外は、比較例1の製造方法と同様に、比較例8のエフィナコナゾール含有爪外用液を調製した。なお、比較例8においては、実施の形態において説明したオレイルアルコールの含有量の範囲から外れた含有量でオレイルアルコールを含む例を示す。
【0045】
比較例1及び実施例1~4のエフィナコナゾール含有爪外用液の組成を表1に示す。
【表1】
【0046】
比較例2~8のエフィナコナゾール含有爪外用液の組成を表2に示す。
【表2】
【0047】
(実施例5~14)
本発明の実施例5~14として、不揮発性溶剤としてアジピン酸ジイソプロピル及び乳酸アルキル(C12-15)に替えて、オレイルアルコール、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール及びオクチルドデカノールから選択された1つ以上の不揮発性溶剤を用い、実施例7及び10において、ラウロマクロゴールをさらに添加したこと以外は、比較例1の製造方法と同様に、実施例5~14のエフィナコナゾール含有爪外用液を調製した。
【0048】
実施例5~9のエフィナコナゾール含有爪外用液の組成を表3に示し、比較例1のエフィナコナゾール含有爪外用液の組成を再掲する。
【表3】
【0049】
実施例10~14のエフィナコナゾール含有爪外用液の組成を表4に示す。
【表4】
【0050】
[比較例9~10]
比較例9~10として、オレイルアルコール及びイソステアリルアルコールから選択された1つ以上の不揮発性溶剤を用い、ラウロマクロゴールをさらに添加したこと以外は、比較例1の製造方法と同様に、比較例9~10のエフィナコナゾール含有爪外用液を調製した。なお、比較例9~10においては、実施の形態において説明した不揮発性溶剤及びラウロマクロゴールの含有量の範囲から外れた含有量で不揮発性溶剤及びラウロマクロゴールを含む例を示す。
【0051】
比較例9~10のエフィナコナゾール含有爪外用液の組成を表5に示す。
【表5】
【0052】
[pH測定]
保存開始前の実施例1~14及び比較例1~10のエフィナコナゾール含有爪外用液について、pHメータを用いて、pHを測定した。測定結果を図2及び図3に示す。実施例1~14及び比較例1~10のエフィナコナゾール含有爪外用液のpHは、エフィナコナゾールのpKaである6.34よりも低く、分子型の比率が大きく、エフィナコナゾールの爪透過性が向上すると推察された。
【0053】
[表面張力測定]
保存開始前の実施例1~14及び比較例1~10のエフィナコナゾール含有爪外用液について、毛管上昇方式表面張力計を用いて、表面張力を測定した。測定結果を図2及び図3に示す。実施例1~14及び比較例1~10のエフィナコナゾール含有爪外用液は、25mN/m以下の表面張力を有し、爪全体、爪と指の隙間へも十分に広がり得ることが明らかとなった。
【0054】
[粘度測定]
保存開始前の実施例1~14及び比較例1~10のエフィナコナゾール含有爪外用液について、微量差圧式粘度計を用いて、粘度を測定した。測定結果を図2及び図3に示す。実施例1~14及び比較例1~10のエフィナコナゾール含有爪外用液は、5mPa・s以下の粘度を有し、患部への塗布が良好に行えることが明らかとなった。
【0055】
[性状の評価]
60℃、相対湿度60%RHで2週間保存した実施例1~14及び比較例1~10のエフィナコナゾール含有爪外用液について、目視による性状の評価を行った。評価結果を図2及び図3に示す。不揮発性溶剤であるプロピレングリコールと乳酸を含む比較例2においては、油滴が確認された。また、不揮発性溶剤であるラウロマクロゴールと乳酸、尿素を含む比較例4においては、黄色に変色したことが確認された。また、実施例4においても黄色に変色したことが確認された。なお、後述するように、比較例4においては、総類縁物質量の増加が確認されたが、実施例4においては総類縁物質量の増加が抑制されていた。
【0056】
また、実施例5~14及び比較例1、9~10のエフィナコナゾール含有爪外用液については、80℃で3日間保存後の性状も評価した。評価結果を図3に示す。実施例5~14及び比較例1、9~10のエフィナコナゾール含有爪外用液は、無色透明な状態を維持することが明らかとなった。
【0057】
[含有量測定]
60℃、相対湿度60%RHで2週間保存した実施例1~14及び比較例1~10のエフィナコナゾール含有爪外用液について、HPLC法にて、エフィナコナゾールの含有量を測定した。実施例1~14及び比較例1~10のエフィナコナゾール含有爪外用液においては、保存後のエフィナコナゾールの含有量は許容範囲にあることが明らかとなった。
【0058】
[総類縁物質量測定]
60℃、相対湿度60%RHで2週間保存した実施例1~14及び比較例1~10のエフィナコナゾール含有爪外用液について、HPLC法にて、エフィナコナゾールに由来する類縁物質の総類縁物質量を測定した。比較例1、3~10のエフィナコナゾール含有爪外用液においては、十分な類縁物質の抑制ができないことが明らかとなった。一方、実施例1~14のエフィナコナゾール含有爪外用液においては、類縁物質の十分な抑制が可能であることが明らかとなった。
【0059】
[爪透過性の評価]
実施例5、11~13及び比較例9のエフィナコナゾール含有爪外用液について、爪透過性を評価した。具体的には、足親指の爪は注射用水に5分浸漬後、6mm角にカットし、注射用水に2時間に浸漬したものを爪サンプルとして用いた。リザーバ液として、4%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH7.4)を用いた。なお、リザーバ液は、滅菌済みPBSでBSAを溶解し、1%アジ化ナトリウム水溶液をBSA溶液に対して1:100の割合で添加し、0.22μmフィルターでろ過し、減圧脱泡器で2時間脱気して調製した。フランツ型拡散セル(パーメギア社、6mL、ジャケット付)と、ネイルアダプター(パーメギア社、ネイルアダプター、3mm径の穴)を用いた。
【0060】
上記のように準備した爪サンプルをネイルアダプターに挟み、フランツ型拡散セル内にリザーバ液を充填した。ネイルアダプターをフランツ型拡散セルに設置した。これを32℃で撹拌しながら一晩インキュベートした。実施例5、11~13及び比較例9のエフィナコナゾール含有爪外用液をそれぞれ、爪甲に5μL添加し、1時間後にサンプリングした。翌日から1日1回、400μLずつサンプリングし、サンプリング後はリザーバ液400μLを補充した。サンプリングした液をLC-MS/MSで解析し、エフィナコナゾールの透過量を測定した。
【0061】
測定した爪透過速度及び累積透過量を表6に示す。また、エフィナコナゾール含有爪外用液の爪透過量の経時変化を図4に示す。
【表6】
【0062】
表6及び図4の結果から、比較例9のエフィナコナゾール含有爪外用液では、十分な爪透過性を得られないことが明らかとなった。一方、実施例5、11~13のエフィナコナゾール含有爪外用液は、良好な爪透過性が得られ、特に、不揮発性溶剤としてオレイルアルコール、ヘキシルデカノール及びイソステアリルアルコールを組合せた実施例13のエフィナコナゾール含有爪外用液は優れた爪透過性を示すことが明らかとなった。
図1
図2
図3
図4