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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】無線システム、主装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/16 20060101AFI20240202BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
H04B1/16 Z
H04B1/04 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020028063
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021132354
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】山口 智裕
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/139409(WO,A1)
【文献】特開2020-028084(JP,A)
【文献】特開2016-134781(JP,A)
【文献】特開2010-056634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/16
H04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主ボリューム及び副ボリュームが設けられた複数の子機と、混合音声情報を出力する主装置と、前記混合音声情報を前記子機へと送信する親機と、から構成される無線システムであって、
前記子機は、
当該子機に入力された音声を主音声情報として前記主装置へと送信する送信部と、
前記副ボリュームの設定に応じてミキシング量情報を生成し、当該ミキシング量情報を前記主装置へと送信するミキシング量決定部と、
前記主ボリュームの設定に応じて前記混合音声情報の音量を調整する音量調整部と、を備え、
前記主装置は、
前記ミキシング量情報に応じて、前記主音声情報と外部音声機器または他の子機から受信した副音声情報との混合割合を調整するミキシング量調整部と、
前記混合割合に基づいて前記主音声情報と前記副音声情報とをミキシングして前記混合音声情報とするミキシング部と、
前記混合音声情報を前記親機に出力する出力部と、
前記ミキシング量調整部と前記ミキシング部とを複数組備え、複数組の前記ミキシング量調整部と前記ミキシング部とによりそれぞれミキシングされた複数の前記混合音声情報をミキシングするミキシング部と、を備える、
無線システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線システムを構成する主装置であって、
前記ミキシング量情報に応じて、前記主音声情報と外部音声機器または他の子機から受信した副音声情報との混合割合を調整するミキシング量調整部と、
前記混合割合に基づいて前記主音声情報と前記副音声情報とをミキシングして前記混合音声情報とするミキシング部と、
前記混合音声情報を前記親機に出力する出力部と、
前記ミキシング量調整部と前記ミキシング部とを複数組備え、複数組の前記ミキシング量調整部と前記ミキシング部とによりそれぞれミキシングされた複数の前記混合音声情報をミキシングするミキシング部と、を備える主装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音量調整機能に改良を施した無線システムと、その無線システムを構成する子機及び主装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレスインカム等の無線システムの一つに、子機、主装置、及び親機から構成されるものが知られている。この無線システムにおいては、子機と外部音声機器または他の子機から主装置へと送信された音声は、主装置においてミキシングされた後、親機を介して再び子機へと送信される。例えば、図8(a)に示す無線システムの子機は、当該子機及び外部音声機器からの音声を同時に受信可能であり、図8(b)に示す無線システムの子機は、当該子機及び他の子機からの音声を同時に受信可能である。すなわち、子機は2系統の音声を同時に受信可能であり、2系統の音声とは、当該子機からの音声、及び外部音声機器または他の子機からの音声である。このような無線システムは、主に放送局や劇場などにおいて使用されている。なお、特に図示はしないが、子機と外部音声機器または他の子機から主装置への送信も、主装置から子機への送信と同様に親機を介して行われている。
【0003】
この無線システムにおいて、子機は、これら2系統の音声の音量を個別に調整するための2つの音量調整ボリュームを備える。ユーザがこの音量調整ボリュームを操作することで、受信する2系統の音声の音量を個別に調整することが出来る。例えば、図8(a)及び(b)において、子機に設けられた2つの音量調整ボリュームのうち、当該子機から送信される音声データの音量を調整するものをボリュームA、外部音声機器または他の子機から送信される音声データの音量を調整するものをボリュームBとする。ボリュームA及びBは、ユーザが個別に操作することにより、それぞれボリューム情報VA及びVBを生成し、当該ボリューム情報VA及びVBを主装置へと送信する。主装置は、ボリューム情報VA及びVBに基づいて、2系統の音声データに対して個別に音量調整を行う。その後、主装置は、個別に音量調整を行った2系統の音声データをミキシングし、親機を介して子機へと送信する。子機は、個別に音量調整がなされた2系統の音声データを同時に聴取することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-058872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術においては、以下のような3つの課題があった。第1に、調整可能な音量の上下限値は主装置を含めた無線システム全体で規定されているため、子機がこの上下限値を超えるようなボリューム情報VA及びVBを送信した場合、主装置において音量調整された音声がひずんでしまうことがあった。
【0006】
第2に、主装置は、外部音声機器または他の子機から送信される音声データに加え、1台の子機から、音声データと、これら2系統の音声データを制御する2つのボリューム情報VA及びVBとを受信する必要がある。また、主装置は、ボリューム情報VA及びVBに基づいて音量調整を行い、さらに2系統の音声データのミキシングも行わなくてはならない。そのため、主装置に接続する子機の台数が増えるほど、主装置の負荷が増大してしまう。
【0007】
第3に、子機は主装置に対してボリューム情報VA及びVBを無線通信によって送信するが、データの送受信に掛かる時間を短縮して、ボリューム調整の応答性を向上するためには、ボリューム情報VA及びVBを構成するデータの間引きが必要となる。また、上述のような主装置の負荷を減らし、大幅な遅延を防ぐためにもデータの間引きが必要となる。これにより、音量変化の直線性が失われてしまう。
【0008】
本発明は、上記課題を解決すべく、音量調整による音声のひずみを抑制し、主装置の負荷を低減し、さらに音量変化の直線性を維持することを可能とした無線システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の無線システムは、次のような構成を備える。
(1)主ボリューム及び副ボリュームが設けられた複数の子機と、混合音声情報を出力する主装置と、前記混合音声情報を前記子機へと送信する親機と、から構成される無線システムである。
(2)前記子機は、当該子機に入力された音声を主音声情報として前記主装置へと送信する送信部と、前記副ボリュームの設定に応じてミキシング量情報を生成し、当該ミキシング量情報を前記主装置へと送信するミキシング量決定部と、前記主ボリュームの設定に応じて前記混合音声情報の音量を調整する音量調整部と、を備える。
(3)前記主装置は、前記ミキシング量情報に応じて、前記主音声情報と外部音声機器または他の子機から受信した副音声情報との混合割合を調整するミキシング量調整部と、前記混合割合に基づいて前記主音声情報と前記副音声情報とをミキシングして前記混合音声情報とするミキシング部と、前記混合音声情報を前記親機に出力する出力部と、前記ミキシング量調整部と前記ミキシング部とを複数組備え、複数組の前記ミキシング量調整部と前記ミキシング部とによりそれぞれミキシングされた複数の前記混合音声情報をミキシングするミキシング部と、を備える。
【0011】
前記無線システムを構成する子機及び主装置も、本発明の一態様である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の無線システムは、音量調整による音声のひずみを抑制し、主装置の負荷を低減し、さらに音量変化の直線性を維持することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る無線システムを示す概略図。
図2】実施形態に係る子機を示す外観図。
図3】実施形態に係る子機の機能ブロック図。
図4】実施形態に係る主装置の機能ブロック図。
図5】実施形態に係る無線システムの一部を示すブロック図。
図6】実施形態に係る無線システムの作用を示すフローチャート。
図7】他の実施形態に係る無線システムを示すブロック図。
図8】従来の無線システムを示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態]
[構成]
[1.無線システム]
図1に示すように、本実施形態の無線システム1は、ヘッドセットHを備える複数の子機2a、2b、2p、2q、2x、2yと、複数の子機2a、2b、2p、2q、2x、2yと無線通信を行う主装置3と、主装置3とLANケーブルなどの有線を介して接続され、複数の子機2a、2b、2p、2q、2x、2yと無線通信を行う複数の親機4a、4bと、を備える。無線通信の周波数は、例えば一般的な無線LANに対応する2.4GHz帯や、DECT規格に対応する1.9GHz帯などを用いることが出来る。なお、子機2a、2b、2p、2q、2x、2yを区別せずに説明する場合またはまとめて説明する場合には、子機2a、2b、2p、2q、2x、2yを単に子機2と表記する。他の符号においても同様の表記を行う。
【0015】
[2.子機]
子機2について、図2及び3を参照しつつ説明する。図2に示すように、子機2は、2つの音量調整ボリュームを備える。本実施形態の子機2においては、2つの音量調整ボリュームのうち、一方を主ボリュームM、他方を副ボリュームSとする。主ボリュームMは、親機4から送信された混合音声情報の音量を調整する。副ボリュームSは、混合音声情報における2系統の音声データの混合割合を調整する。具体的には、2系統の音声データのいずれか一方に対する他方のミキシング量を調整する。図3に示すように、子機2は、第1の受信部21と、音量調整部22と、第1の送信部23と、第2の受信部24と、第2の送信部25と、ミキシング量決定部26と、を備える。これらの各構成には、電子回路やDSPなどのプロセッサを利用することが出来る。
【0016】
第1の受信部21は、親機4から送信された音声データを受信する。詳細は後述するが、この音声データは、主装置3の複数の信号処理部32におけるミキシングによりそれぞれ生成された混合音声情報をさらにミキシングしたものである。
【0017】
音量調整部22は、第1の受信部21の後段に設けられ、主ボリュームMの設定に応じて、第1の受信部21から入力された混合音声情報の音量調整を行う。第1の送信部23は、音量調整部22の後段に設けられ、音量調整部22において音量調整が行われた混合音声情報を、子機2に付属するヘッドセットH(図1参照)へと送信する。
【0018】
第2の受信部24は、子機2に付属するヘッドセットHに対してユーザが発した音声を音声データとして受信する。第2の送信部25は、第2の受信部24の後段に設けられ、この音声データを子機2に付属するヘッドセットHと主装置3へと送信する。すなわち、子機2のユーザは、自分の声をほとんど遅延なく聴取することが出来る。なお、子機2から主装置3への音声データ及び後述のミキシング量情報MSの送信は親機4を介して行われているが、データの経路を分かり易くするために以降の説明や図では特に示さない。
【0019】
ミキシング量決定部26は、ミキシング量情報生成部261と、ミキシング量情報送信部262と、を備える。ミキシング量情報生成部261は、副ボリュームSの設定に応じてミキシング量情報MSを生成する。ミキシング量情報MSは、2系統の音声データの混合割合を定める。具体的には、子機2aから主装置3へと送信される音声データに対する、後述の外部音声機器5または他の子機2bから主装置3へと送信される音声データのミキシング量を定める。ミキシング量情報送信部262は、ミキシング量情報生成部261が生成したミキシング量情報MSを主装置3へと送信する。なお、本実施形態のミキシング量情報MSは、一度送信されると、副ボリュームSの設定が変更されない限り生成及び送信されないものとする。
【0020】
[3.主装置]
図4に示すように、主装置3は、複数の受信部31と、それぞれがミキシング量調整部321と第1のミキシング部322とを備える複数の信号処理部32と、第2のミキシング部33と、出力部34と、送信指令部35と、を備える。これらの各構成には、電子回路やDSPなどのプロセッサを利用することが出来る。
【0021】
受信部31及び信号処理部32は、少なくとも子機2の台数に対応する数が設けられる。本実施形態では、主装置3に設けられる受信部31及び信号処理部32は、子機2の台数に等しい。子機2aから音声データを主音声情報として受信する受信部31を受信部31a、当該主音声情報及び後述の副音声情報に対して信号処理を行う信号処理部32を信号処理部32aとする。
【0022】
子機2aにとっての主音声情報は、例えば子機2a、2p、2qが属するグループ1において子機2a、2p、2q間で送受信される音声データであって、子機2aから受信部31aへと送信される音声データである。この音声データは、信号処理部32aにおいて信号処理され、親機4を介して子機2p、2qへと送信される。また、子機2p、2qからそれぞれ受信部31p、31qへと送信され、信号処理部32p、32qにおいて信号処理された後、親機4を介して子機2aへと送信される音声データもまた、子機2aにとっての主音声情報である。
【0023】
子機2aにとっての副音声情報は、例えば外部音声機器5から受信部31aへと送信される音声データ、または子機2aが属さないグループ2に属する他の子機2b、2x、2y間で送受信される音声データであって、例えば他の子機2bから受信部31aへと送信される音声データである。外部音声機器5は、無線システム1に対して音声データを送信するもので、無線システム1に含まれないものである。外部音声機器5は、例えば音声調整卓や有線インカムである。外部音声機器5が送信する音声データは、例えば番組進行に係る指示などを含む。
【0024】
副音声情報について、図5(a)及び(b)を参照しつつより詳細に説明する。なお、図5(a)及び(b)においては、上述の各構成のうち主要なもののみを示している。まず、図5(a)は、外部音声機器5からの音声データが副音声情報となる場合を示す。この場合、子機2aにとっての副音声情報は、外部音声機器5から受信部31aへと送信される音声データであって、信号処理部32aにおいて信号処理された後、親機4を介して子機2aへと送信される音声データである。
【0025】
次に、図5(b)は、子機2aとは異なるグループに属する他の子機2からの音声データが副音声情報となる場合を示す。この場合、子機2aにとっての副音声情報は、例えば他の子機2bから受信部31aへと送信される音声データであって、信号処理部32aにおいて信号処理された後、親機4を介して子機2aへと送信される音声データである。また、子機2aとは異なるグループ2に属する他の子機2x、2yから受信部31aへと送信される音声データもまた、子機2aにとっての副音声情報となりうる。
【0026】
受信部31aは、子機2aの第2の送信部25から音声データを、子機2aのミキシング量情報送信部262からミキシング量情報MSを、それぞれ受信する。さらに、受信部31aは、外部音声機器5または他の子機2bの第2の送信部25からも音声データを受信する。但し、以降の説明においては、子機2aからの音声データを主音声情報、外部音声機器5からの音声データを副音声情報とし、他の子機2bからの音声データを副音声情報とする場合については説明を省略する。
【0027】
信号処理部32は、受信部31の後段に設けられ、受信部31が受信した2系統の音声データに対して信号処理を行う。
【0028】
信号処理部32が備えるミキシング量調整部321は、ミキシング量情報MSに基づき、主音声情報に対する副音声情報のミキシング量を調整する。この2系統の音声データのミキシング量の比は、両者の音量の比に等しくなる。この音量の比は、ミキシング後の音声データが主装置3から子機2へと送信され、音量調整部22により音量調整が行われる前後で不変である。また、ミキシング量調整部321は、最新のミキシング量情報MSに基づいて主音声情報に対する副音声情報のミキシング量を調整する。すなわち、新たにミキシング量情報MSが送信されるまでは、一度調整されたミキシング量は不変である。
【0029】
信号処理部32が備える第1のミキシング部322は、主音声情報と、ミキシング量調整部321においてミキシング量を調整された副音声情報とをミキシングし、混合音声情報を生成する。
【0030】
第2のミキシング部33は、複数の信号処理部32の後段に設けられ、複数の信号処理部32においてそれぞれ生成された複数の混合音声情報をミキシングする。この時、第2のミキシング部33がミキシングする混合音声情報は、送信先の子機2によって異なる。例えば、子機2aのユーザからの音声データを含む混合音声情報は、子機2aには送信されない。これは子機2aのユーザが遅れて聞こえる自分の声を聴きながらでは話しにくいためである。すなわち、この混合音声情報は、子機2aと同じグループ1に属する子機2p、2qへと送信される。このように、ミキシング部33がミキシングする混合音声情報は、主音声情報として音声データを送信した子機2と、同じグループに属する子機2とで互いに異なる。
【0031】
出力部34は、第2のミキシング部33の後段に設けられ、第2のミキシング部33において複数の混合音声情報がミキシングされた音声データを親機4へと出力する。送信指令部35は、出力部34が親機4へと出力した音声データを、親機4に複数の子機2へと送信するように指示する。出力部34及び送信指令部35は、親機4とLANケーブルなどの有線を介して接続される。
【0032】
[4.親機]
親機4は、送信指令部35からの指令により、出力部34から入力された音声データを複数の子機2へと送信する。親機4は、複数の子機2が属するグループの数だけ設けられることが好ましい。また、1台の親機4が一度に送信できる子機2の台数は、例えば10台である。親機4は、電子回路やDSPなどのプロセッサを含んで構成される。
【0033】
[作用]
本実施形態における無線システム1の作用について、図6のフローチャートを参照しつつ説明する。まず、図3に示すように、子機2aの第2の受信部24は、子機2aに付属するヘッドセットHを介して、ユーザが発した音声を音声データとして受信する。第2の送信部25は、第2の受信部24から入力されたこの音声データを主装置3へと送信する(ステップS01)。なお、この音声データが子機2aにとっての主音声情報である。
【0034】
次に、ミキシング量決定部26のミキシング量情報生成部261は、副ボリュームSの設定に応じてミキシング量情報MSを生成する。副ボリュームSは、予め初期値に設定されていてもよいし、ユーザが操作した値に設定されてもよい。これにより、ミキシング量情報生成部261が生成するミキシング量情報MSが定まる。ミキシング量情報送信部262は、ミキシング量情報生成部261が生成したミキシング量情報MSを主装置3へと送信する(ステップS02)。
【0035】
さらに、外部音声機器5は、当該外部音声機器5において生成した音声データを主装置3へと送信する(ステップS03)。なお、この音声データが子機2aにとっての副音声情報である。
【0036】
上述のステップS01~S03は、どのような順序で行ってもよい。例えば、ステップS02、S03、S01の順序で行うことも出来る。
【0037】
ステップS01乃至S03の後、図4に示すように、主装置3の受信部31aは、子機2aから主音声情報及びミキシング量情報MSを、外部音声機器5から副音声情報を受信する。信号処理部32aのミキシング量調整部321は、受信部31aが受信したミキシング量情報MSに基づき、主音声情報に対する副音声情報のミキシング量を調整する(ステップS04)。第1のミキシング部322は、主音声情報と、ミキシング量調整部321においてミキシング量を調整された副音声情報とをミキシングし、混合音声情報を生成する(ステップS05)。
【0038】
ステップS05の後、第2のミキシング部33は、複数の信号処理部32においてそれぞれ生成された複数の混合音声情報をミキシングする(ステップS06)。出力部34は、第2のミキシング部33において複数の混合音声情報がミキシングされた音声データを親機4へと出力する(ステップS07)。親機4は、送信指令部35からの指令により、出力部34から入力された音声データを複数の子機2へと送信する(ステップS08)。なお、上述のように、主音声情報として子機2aからの音声データを含むこの音声データは子機2aには送信されない。従って、以降のステップの説明は、主音声情報として子機2pからの音声データを含む音声データが上記ステップS01~S08を経て子機2aへと送信されたものとして説明する。
【0039】
ステップS08の後、子機2aの第1の受信部21は、親機4から第2のミキシング部33によりミキシングされた音声データを受信する。最後に、子機2aの音量調整部22は、主ボリュームMの設定に応じて、第1の受信部21から入力された混合音声情報の音量調整を行う(ステップS09)。主ボリュームMは、予め初期値に設定されており、本実施形態では初期値を0(無音)として設定している。第1の送信部23は、音量調整部22において音量調整が行われた混合音声情報を子機2aに付属するヘッドセットHへと送信する。なお、ヘッドセットHは、図示しない信号処理部及び出力部により、混合音声情報から主音声情報と副音声情報とを個別に出力する。これにより、子機2aのユーザは、2系統の音声を同時に聴取する。
【0040】
[効果]
(1)本実施形態の無線システム1は、子機2に設けられた主ボリュームM及び副ボリュームSと、子機2に設けられた音量調整部22及びミキシング量決定部26と、主装置3に設けられたミキシング量調整部321及び第1のミキシング部322と、を備える。これにより、主音声情報と副音声情報の音量比が適切である場合は、主ボリュームMを操作するだけで2系統の音声データを一度に音量調整することが出来る。一方で、主音声情報と副音声情報の一方のみ聞こえづらい場合は、副ボリュームSを操作し、主音声情報と副音声情報の音量比を調整することにより、全体の音量を変えずに聞きづらい方の音声情報を明瞭に聞き取ることが出来る。このように、2つのボリュームM、Sを操作することにより、全体の音量とミキシング量を自在に調整することが出来る。
【0041】
また、調整可能な音量の上下限値は子機2に依存するため、主装置において音量調整を行う場合のように、子機2からのボリューム情報がその上下限値を超えてしまい、音量調整後の音声がひずんでしまうおそれがない。このように、無線システム全体として規定されている上下限値を変更することなく、子機2単体で音声データをひずませずに音量調整を行うことが出来る。
【0042】
さらに、図8(a)及び(b)に示すように、従来の無線システムにおける主装置は、1台の子機から、そのユーザが発する音声の音声データと、2つのボリューム情報、すなわち当該音声データに係るボリューム情報VA及び外部音声機器または他の子機からの音声データに係るボリューム情報VBとを受信する必要があった。また、主装置は、音量調整も行わなくてはならない。この場合、主装置に接続する子機の台数が増えるほど、主装置の負担が増加してしまう。しかしながら、本実施形態の無線システム1の主装置3は、子機2から、そのユーザが発する音声の音声データと、1つのミキシング量情報MSのみを受信するだけでよい。しかも、このミキシング量情報MSは、主音声情報に比べて音量調整の頻度が少ない副音声情報の音量を調整するためのものなので、その受信頻度も比較的少ない。また、主装置3は音量調整を行わず、ミキシング量情報MSに基づいて、2系統の音声データをミキシングするだけでよい。これにより、主装置3に接続される子機2の台数が増えても主装置3の負担は少ないため、主装置3のリソースを多機能化や高速化に回すことが出来る。
【0043】
加えて、本実施形態の無線システム1においては、従来技術のようにボリューム情報VA及びVBを無線通信によって主装置へと送信するのではなく、子機2が音量調整を行う。これにより、主装置の負担を減らし大幅な遅延を無くすためにボリューム情報のデータを間引く必要性も当然ないため、音量調整に係る音量変化の直線性が失われることがない。
【0044】
(2)本実施形態の無線システム1は、主装置3に設けられた第2のミキシング部33を更に備える。これにより、複数の第1のミキシング部322によりミキシングされた複数の混合音声情報を、さらにミキシングすることにより、複数の混合音声情報を一度に送信することが出来る。
【0045】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。具体的には、次のような他の実施形態も包含する。
【0046】
(1)上記実施形態の無線システム1は、6台の子機2a、2b、2p、2q、2x、2y、1台の主装置3、2台の親機4a、4bを備えたが、子機2、主装置3、親機4の台数はこれに限られない。例えば、図7に示すように、60台の子機2と、1台の主装置3と、16台の親機4とを備えた、大規模な無線システムに対しても本発明を適用可能である。この無線システムにおいて、1台の主装置3は、60組の受信部31及び信号処理部32を備える。また、複数の子機2にとっての副音声情報は、いずれも外部音声機器5からの音声データであるものとする。このような子機2が多数設けられた無線システムにおいては、主装置3に高い演算性能が求められるところ、個々の子機2から送信される情報が比較的少ないために主装置3の負担を減らすという効果がより顕著である。
【0047】
(2)上記実施形態の無線システム1においては、主音声情報に対して副音声情報のミキシング量を調整したが、副音声情報に対して主音声情報のミキシング量を調整してもよい。
【0048】
(3)上記実施形態の無線システム1においては、グループ1の子機2にとっての副音声情報は、異なるグループ2に属する他の子機2間で送受信される音声データとしたが、同じグループ1に属する子機2間で送受信される音声データであってもよい。例えば、子機2aのユーザは子機2pからの音声データを主音声情報として聴取しながら、子機2qから送信される音声データを副音声情報として聴取することが出来る。
【0049】
(4)上記実施形態の主装置3は、1台設けることとしたが、複数台設けてもよい。この場合、複数の主装置3の後段に、さらにミキシング部を設けることも出来る。
【0050】
(5)上記実施形態の主装置3は、子機2の台数に対応する数の受信部31及び信号処理部32を備えたが、複数台の子機2に対して1組の受信部31及び信号処理部32を備えてもよい。例えば、主装置3に接続する子機2の台数が比較的少ない場合に好適である。
【0051】
(6)上記実施形態の各構成は、有線または無線により接続したが、全て無線により接続してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…無線システム
2…子機
21…第1の受信部
22…音量調整部
23…第1の送信部
24…第2の受信部
25…第2の送信部
26…ミキシング量決定部
261…ミキシング量情報生成部
262…ミキシング量情報送信部
3…主装置
31…受信部
32…信号処理部
321…ミキシング量調整部
322…第1のミキシング部
33…第2のミキシング部
34…出力部
35…送信指令部
4…親機
5…外部音声機器
図1
図2
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図8