IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-荷電粒子線描画装置および描画方法 図1
  • 特許-荷電粒子線描画装置および描画方法 図2
  • 特許-荷電粒子線描画装置および描画方法 図3
  • 特許-荷電粒子線描画装置および描画方法 図4
  • 特許-荷電粒子線描画装置および描画方法 図5
  • 特許-荷電粒子線描画装置および描画方法 図6
  • 特許-荷電粒子線描画装置および描画方法 図7
  • 特許-荷電粒子線描画装置および描画方法 図8
  • 特許-荷電粒子線描画装置および描画方法 図9
  • 特許-荷電粒子線描画装置および描画方法 図10
  • 特許-荷電粒子線描画装置および描画方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】荷電粒子線描画装置および描画方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240202BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240202BHJP
   H01J 37/147 20060101ALI20240202BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
H01L21/30 541D
H01L21/30 541J
G03F7/20 504
H01J37/147 C
H01J37/22 502B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020057467
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021158234
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】小澤 寛司
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼野 靖久
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 頼博
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-120824(JP,A)
【文献】特開昭58-056418(JP,A)
【文献】特開昭59-208720(JP,A)
【文献】特開平01-107533(JP,A)
【文献】特開昭54-025675(JP,A)
【文献】特開2001-110700(JP,A)
【文献】特開2012-015227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
9/00
H01J 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
描画材料に荷電粒子線でパターンを描画する荷電粒子線描画装置であって、
前記荷電粒子線を発生させる荷電粒子線源と、
前記荷電粒子線を偏向させる偏向器と、
スキャン周波数を求めるスキャン周波数演算部と、
前記スキャン周波数に応じて、クロック信号の周波数を切り替えるクロック信号出力部と、
前記クロック信号に基づいて、前記偏向器に前記荷電粒子線を偏向させる偏向器制御部と、
複数の部分パターンで構成された前記パターンのパターンデータと、複数の前記部分パターンの各々に設定されたショット時間条件を含む描画条件と、が記憶された記憶部と、
前記パターンデータから前記ショット時間条件が同じ前記部分パターンを抽出することによって、複数の部分パターンデータを生成するパターンデータ生成部と、
複数の前記部分パターンを前記部分パターンデータごとに配列して、部分パターン列を生成するソート処理部と、
を含み、
前記部分パターン列に配列された順に、前記部分パターンを描画する処理を行い、
前記部分パターンを描画する処理は、
前記スキャン周波数演算部、前記ショット時間条件に基づいて前記スキャン周波数を求める処理と、
前記偏向器制御部、前記偏向器に、前記部分パターンを前記スキャン周波数演算部が求めた前記スキャン周波数で描画させる処理と、
を含む、荷電粒子線描画装置。
【請求項2】
請求項において、
前記クロック信号出力部は、
第1クロック生成回路と、
第2クロック生成回路と、
前記第1クロック生成回路で生成されるクロック信号、または、前記第2クロック生成
回路で生成されるクロック信号を選択するセレクターと、
を有し、
前記第2クロック生成回路が生成するクロック信号の周波数は、前記第1クロック生成回路が生成するクロック信号の周波数よりも高く、
前記第2クロック生成回路のクロック信号の周波数を切り替えるための切替時間は、前記第1クロック生成回路のクロック信号の周波数を切り替えるための切替時間よりも長い、荷電粒子線描画装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記パターンデータ生成部は、
前記パターンデータから前記スキャン周波数が閾値以下の部分パターンを抽出して部分パターンデータを生成し、
前記パターンデータから前記スキャン周波数が前記閾値よりも大きい部分パターンを抽出し、抽出された部分パターンから前記ショット時間条件が同じ部分パターンを抽出することによって、複数の部分パターンデータを生成し、
前記ソート処理部は、複数の前記部分パターンを、前記パターンデータ生成部が生成した前記部分パターンデータごとに配列して部分パターン列を生成し、
前記部分パターンを描画する処理は、
前記スキャン周波数が前記閾値以下の場合、前記セレクターが前記第1クロック生成回路で生成されたクロック信号を選択し、前記スキャン周波数が前記閾値よりも大きい場合、前記セレクターが前記第2クロック生成回路で生成されたクロック信号を選択する処理を含み、
前記偏向器制御部は、選択された前記クロック信号に基づいて、前記偏向器に前記部分パターンを描画させる、荷電粒子線描画装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記クロック信号出力部は、
複数のクロック生成回路と、
前記複数のクロック生成回路の各々に対して、クロック信号の周波数を設定する制御回路と、
前記複数のクロック生成回路で生成されるクロック信号のうちの1つを選択するセレクターと、
を有する、荷電粒子線描画装置。
【請求項5】
描画材料に荷電粒子線でパターンを描画する描画方法であって、
複数の部分パターンで構成された前記パターンのパターンデータと、複数の前記部分パターンの各々に設定されたショット時間条件を含む描画条件と、を取得する工程と、
前記パターンデータから前記ショット時間条件が同じ前記部分パターンを抽出することによって、複数の部分パターンデータを生成する工程と、
複数の前記部分パターンを前記部分パターンデータごとに配列して、部分パターン列を生成する工程と、
前記部分パターン列に配列された順に、前記部分パターンを描画する工程と、
を含み、
前記部分パターンを描画する工程は、
記ショット時間条件に基づいて、前記部分パターンを描画させるときのスキャン周波数を求める工程と、
前記荷電粒子線を偏向させる偏向器に、前記部分パターンを前記スキャン周波数で描画させる工程と、
を含む、描画方法。
【請求項6】
描画材料に荷電粒子線でパターンを描画する描画方法であって、
複数の部分パターンで構成された前記パターンのパターンデータと、複数の前記部分パターンの各々に設定されたショット時間条件を含む描画条件と、を取得する工程と、
複数の前記部分パターンの各々において、前記ショット時間条件に基づいて前記部分パターンを描画させるときのスキャン周波数を求める工程と、
前記パターンデータから前記スキャン周波数が閾値以下の部分パターンを抽出して部分パターンデータを生成し、前記パターンデータから前記スキャン周波数が前記閾値よりも大きい部分パターンを抽出し、抽出された部分パターンから前記ショット時間条件が同じ部分パターンを抽出することによって、複数の部分パターンデータを生成する工程と、
複数の前記部分パターンを、前記部分パターンデータごとに配列して部分パターン列を生成する工程と、
前記部分パターン列に配列された順に、前記部分パターンを描画する工程と、
を含み、
前記部分パターンを描画する工程は、
記ショット時間条件に基づいて、前記部分パターンを描画させるときの前記スキャン周波数を求める工程と、
前記荷電粒子線を偏向させる偏向器に、前記部分パターンを前記スキャン周波数で描画させる工程と、
を含み、
前記偏向器に前記部分パターンを描画させる工程では、前記スキャン周波数に応じてクロック信号の周波数を切り替えるクロック信号出力部から出力される前記クロック信号に基づいて、前記偏向器に前記荷電粒子線を偏向させ、
前記クロック信号出力部は、
第1クロック生成回路と、
第2クロック生成回路と、
前記第1クロック生成回路で生成されるクロック信号、または、前記第2クロック生成回路で生成されるクロック信号を選択するセレクターと、
を有し、
前記第2クロック生成回路が生成するクロック信号の周波数は、前記第1クロック生成回路が生成するクロック信号の周波数よりも高く、
前記第2クロック生成回路のクロック信号の周波数を切り替えるための切替時間は、前記第1クロック生成回路のクロック信号の周波数を切り替えるための切替時間よりも長く、
前記偏向器に前記部分パターンを描画させる工程では
前記スキャン周波数が前記閾値以下の場合、前記セレクターが前記第1クロック生成回路で生成されたクロック信号を選択し、前記スキャン周波数が前記閾値よりも大きい場合、前記セレクターが前記第2クロック生成回路で生成されたクロック信号を選択する、描画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線描画装置および描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子線描画装置は、描画材料に荷電粒子線でパターンを描画するための装置である。このような荷電粒子線描画装置として、細く絞った荷電粒子線で材料上を走査して、任意のパターンを描画する直接描画方式の装置が知られている。このような荷電粒子線描画装置として、例えば、特許文献1には、描画材料に電子線でパターンを描画する電子線描画装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-15227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子線描画装置において、レジストの感度Q[C/cm]、ビーム電流I[A]、描画面積S[cm]、および描画時間T[s]には、次の関係がある。
【0005】
Q=IT/S
【0006】
また、電子線で描画材料を走査してパターンを描画するときの電子線の走査速度F[Hz]は、電子線の走査ステップをp[cm]とした場合、次式で与えられる。
【0007】
F=I/(Qp
【0008】
したがって、描画時間Tを短くするためには、ビーム電流Iを増加させるか、感度Qの小さいレジストを選択する必要がある。ビーム電流Iを増加させる場合でも、感度Qの小さいレジストを選択する場合でも、電子線の走査速度Fはより速くなる。そのため、描画時間Tを短くして、描画のスループットを向上させるためには、走査速度Fを速く、すなわち、スキャン周波数を大きくすることが求められる。
【0009】
走査速度を決めるクロック信号を出力するクロック出力回路として、例えば、PLL(Phase Locked Loop)回路を用いたクロック出力回路が用いられている。PLL回路を用いたクロック出力回路では、例えば、リングオシレーターを用いたクロック出力回路と比べて、極めて高い周波数のクロック信号を得ることができる。
【0010】
ここで、電子線描画装置において、電子線の走査速度は一定ではない。例えば、描画中のビーム電流の変化によるドーズ量の変化を補正する場合や、描画するパターンごとに要求されるドーズ量が異なる場合には、走査速度を変化させる。
【0011】
しかしながら、PLL回路を用いたクロック出力回路では、クロック信号の周波数を切り替えるために時間を要する。そのため、描画のスループットが低下してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る荷電粒子線描画装置の一態様は、
描画材料に荷電粒子線でパターンを描画する荷電粒子線描画装置であって、
前記荷電粒子線を発生させる荷電粒子線源と、
前記荷電粒子線を偏向させる偏向器と、
スキャン周波数を求めるスキャン周波数演算部と、
前記スキャン周波数に応じて、クロック信号の周波数を切り替えるクロック信号出力部
と、
前記クロック信号に基づいて、前記偏向器に前記荷電粒子線を偏向させる偏向器制御部と、
複数の部分パターンで構成された前記パターンのパターンデータと、複数の前記部分パターンの各々に設定されたショット時間条件を含む描画条件と、が記憶された記憶部と、
前記パターンデータから前記ショット時間条件が同じ前記部分パターンを抽出することによって、複数の部分パターンデータを生成するパターンデータ生成部と、
複数の前記部分パターンを前記部分パターンデータごとに配列して、部分パターン列を生成するソート処理部と、
を含み、
前記部分パターン列に配列された順に、前記部分パターンを描画する処理を行い、
前記部分パターンを描画する処理は、
前記スキャン周波数演算部、前記ショット時間条件に基づいて前記スキャン周波数を求める処理と、
前記偏向器制御部、前記偏向器に、前記部分パターンを前記スキャン周波数演算部が求めた前記スキャン周波数で描画させる処理と、
を含む
【0013】
このような荷電粒子線描画装置では、同じスキャン周波数で描画される部分パターンが連続して描画されるため、スキャン周波数を切り替える回数を少なくでき、描画のスループットを向上できる。
【0014】
本発明に係る描画方法の一態様は、
描画材料に荷電粒子線でパターンを描画する描画方法であって、
複数の部分パターンで構成された前記パターンのパターンデータと、複数の前記部分パターンの各々に設定されたショット時間条件を含む描画条件と、を取得する工程と、
前記パターンデータから前記ショット時間条件が同じ前記部分パターンを抽出することによって、複数の部分パターンデータを生成する工程と、
複数の前記部分パターンを前記部分パターンデータごとに配列して、部分パターン列を生成する工程と、
前記部分パターン列に配列された順に、前記部分パターンを描画する工程と、
を含み、
前記部分パターンを描画する工程は、
記ショット時間条件に基づいて、前記部分パターンを描画させるときのスキャン周波数を求める工程と、
前記荷電粒子線を偏向させる偏向器に、前記部分パターンを前記スキャン周波数で描画させる工程と、
を含む。
本発明に係る描画方法の一態様は、
描画材料に荷電粒子線でパターンを描画する描画方法であって、
複数の部分パターンで構成された前記パターンのパターンデータと、複数の前記部分パターンの各々に設定されたショット時間条件を含む描画条件と、を取得する工程と、
複数の前記部分パターンの各々において、前記ショット時間条件に基づいて前記部分パターンを描画させるときのスキャン周波数を求める工程と、
前記パターンデータから前記スキャン周波数が閾値以下の部分パターンを抽出して部分パターンデータを生成し、前記パターンデータから前記スキャン周波数が前記閾値よりも大きい部分パターンを抽出し、抽出された部分パターンから前記ショット時間条件が同じ部分パターンを抽出することによって、複数の部分パターンデータを生成する工程と、
複数の前記部分パターンを、前記部分パターンデータごとに配列して部分パターン列を
生成する工程と、
前記部分パターン列に配列された順に、前記部分パターンを描画する工程と、
を含み、
前記部分パターンを描画する工程は、
前記ショット時間条件に基づいて、前記部分パターンを描画させるときのスキャン周波数を求める工程と、
前記荷電粒子線を偏向させる偏向器に、前記部分パターンを前記スキャン周波数で描画させる工程と、
を含み、
前記偏向器に前記部分パターンを描画させる工程では、前記スキャン周波数に応じてクロック信号の周波数を切り替えるクロック信号出力部から出力される前記クロック信号に基づいて、前記偏向器に前記荷電粒子線を偏向させ、
前記クロック信号出力部は、
第1クロック生成回路と、
第2クロック生成回路と、
前記第1クロック生成回路で生成されるクロック信号、または、前記第2クロック生成回路で生成されるクロック信号を選択するセレクターと、
を有し、
前記第2クロック生成回路が生成するクロック信号の周波数は、前記第1クロック生成回路が生成するクロック信号の周波数よりも高く、
前記第2クロック生成回路のクロック信号の周波数を切り替えるための切替時間は、前記第1クロック生成回路のクロック信号の周波数を切り替えるための切替時間よりも長く、
前記偏向器に前記部分パターンを描画させる工程では
前記スキャン周波数が前記閾値以下の場合、前記セレクターが前記第1クロック生成回路で生成されたクロック信号を選択し、前記スキャン周波数が前記閾値よりも大きい場合、前記セレクターが前記第2クロック生成回路で生成されたクロック信号を選択する。
【0015】
このような描画方法では、同じスキャン周波数で描画される部分パターンが連続して描
画されるため、スキャン周波数を切り替える回数を少なくでき、描画のスループットを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る電子線描画装置の構成を示す図。
図2】描画材料に描画されるパターンのパターンデータを説明するための図。
図3】実施形態に係る電子線描画装置のクロック信号出力部の構成を示す図。
図4】実施形態に係る電子線描画装置の動作の一例を示すフローチャート。
図5】パターンデータ生成部の処理を説明するための図。
図6】ソート処理部の処理を説明するための図。
図7】パターンを描画する方法の一例を示す図。
図8】部分パターン列の一例を説明するための図。
図9】第1変形例に係る電子線描画装置のクロック信号出力部の構成を示す図。
図10】第2変形例に係る電子線描画装置の動作の一例を示すフローチャート。
図11】第2変形例に係る電子線描画装置のパターンデータ生成部の処理を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0018】
なお、以下では、本発明に係る荷電粒子線描画装置として、描画材料に電子線でパターンを描画する電子線描画装置を例に挙げて説明するが、電子線以外の荷電粒子線(イオンビーム等)でパターンを描画する装置であってもよい。
【0019】
1. 電子線描画装置
まず、本発明の一実施形態に係る電子線描画装置について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る電子線描画装置100の構成を示す図である。
【0020】
電子線描画装置100は、描画材料M上を細く絞った電子線で走査して、描画材料Mにパターンを描画する装置である。電子線描画装置100は、例えば、レチクルなどのフォトマスクを製造するために用いられる。描画材料Mは、例えば、石英基板上にクロム膜などの金属膜が成膜されたマスクブランクス上に、レジストが塗布されたものである。電子線描画装置100では、電子線で描画材料Mのレジストを露光する。
【0021】
電子線描画装置100は、図1に示すように、電子源10(荷電粒子線源の一例)と、加速電極11と、ブランキング絞り12と、ブランカー13と、静電レンズ14と、コンデンサーレンズ15aと、コンデンサーレンズ15bと、対物絞り16と、対物レンズ17と、非点収差補正器18と、偏向器19と、ステージ20と、高さ測定器21と、ファラデーカップ22と、を含む。
【0022】
さらに、電子線描画装置100は、高電圧制御部30と、ブランキング制御部31と、レンズ制御部32と、スキャン周波数演算部33と、クロック信号出力部34と、副偏向器制御部35と、主偏向器制御部36と、高さ測定制御部37と、電流計38と、ステージ制御装置39と、を含む。
【0023】
さらに、電子線描画装置100は、描画制御部40と、情報処理装置50と、を含む。
【0024】
電子源10は、電子線を発生させる。加速電極11は、電子源10で発生した電子線を
加速させる。
【0025】
ブランキング絞り12は、電子線を遮断するための絞りである。ブランカー13は、電子線をブランキング絞り12上で偏向させる。静電レンズ14は、電子線をブランキング絞り12上に集束させる。
【0026】
例えば、電子線を描画材料Mに照射しない場合には、ブランカー13によって電子線を偏向させてブランキング絞り12で電子線を遮蔽する。また、電子線を描画材料Mに照射する場合には、ブランカー13で電子線を偏向させずに、ブランキング絞り12の絞り穴から電子線を通過させる。このように、ブランカー13の動作によって、電子線のオン、オフを切り替えることができる。
【0027】
コンデンサーレンズ15aおよびコンデンサーレンズ15bは、電子線を集束させる。対物絞り16は、電子線の開き角を制御する。対物レンズ17は、電子線を描画材料M上に集束させる。非点収差補正器18は、対物レンズ17の非点収差を補正する。
【0028】
偏向器19は、電子線を偏向させる。偏向器19は、副偏向器19aと、主偏向器19bと、を有している。
【0029】
主偏向器19bが電子線を偏向できる主偏向領域は、副偏向器19aが電子線を偏向できる副偏向領域よりも大きい。副偏向器19aは、主偏向器19bよりも電子線を高速に偏向させる。主偏向器19bは、例えば、副偏向領域の位置を変えるために用いられる。副偏向器19aは、例えば、副偏向領域内で、電子線を走査するために用いられる。
【0030】
ステージ20は、描画材料Mを保持する。ステージ20は、描画材料Mを移動させることができる。高さ測定器21は、描画材料Mの高さを測定する。ファラデーカップ22は、ビーム電流を測定する。ビーム電流は、描画材料Mに照射される電子線の電流量である。
【0031】
電子線描画装置100では、電子源10から放出された電子ビームは、コンデンサーレンズ15a、コンデンサーレンズ15b、および対物レンズ17で集束されて、描画材料Mに照射される。電子線は、ブランカー13によってオン、オフが切り替えられる。また、電子線は偏向器19で所望の位置に照射される。ステージ20で描画材料Mを移動させることによって、主偏向領域よりも広い範囲の描画が可能となる。電子線描画装置100では、描画を行う前に、高さ測定器21で描画材料Mの表面の高さが測定され、ファラデーカップ22を用いてビーム電流が測定される。
【0032】
高電圧制御部30は、加速電極11に加速電圧を印加する。また、高電圧制御部30は、静電レンズ14を制御する。ブランキング制御部31は、ブランカー13を制御する。レンズ制御部32は、コンデンサーレンズ15a、コンデンサーレンズ15b、対物レンズ17、および非点収差補正器18を制御する。
【0033】
スキャン周波数演算部33は、描画条件に基づいて、スキャン周波数を求める。スキャン周波数は、電子線の走査速度に対応する。
【0034】
クロック信号出力部34は、クロック信号を出力する。クロック信号は、電子線を走査するためのタイミングクロックである。クロック信号出力部34は、スキャン周波数演算部33で求められたスキャン周波数に応じて、クロック信号の周波数を切り替える。クロック信号出力部34から出力されたクロック信号は、副偏向器制御部35に送られる。
【0035】
副偏向器制御部35は、副偏向器19aを制御する。副偏向器制御部35は、クロック信号に基づいて、副偏向器19aを動作させる。これにより、スキャン周波数演算部33で求められたスキャン周波数で、電子線を走査できる。また、副偏向器制御部35は、情報処理装置50からのパターンの情報を受け付けて、当該パターンの情報に基づいて副偏向器19aを制御する。これにより、描画材料Mに当該パターンを描画できる。
【0036】
例えば、副偏向器制御部35は、情報処理装置50からのパターンの情報およびクロック信号に基づいて、走査信号を生成する。走査信号は、パターンの情報およびスキャン周波数の情報を含む。副偏向器制御部35は、生成した走査信号を副偏向器19aに供給する。これにより、走査信号に基づいて副偏向器19aが動作し、所望のスキャン周波数で、所望のパターンが描画される。
【0037】
主偏向器制御部36は、主偏向器19bを制御する。主偏向器制御部36は、情報処理装置50からのパターンの情報を受け付けて、当該パターンの情報に基づいて偏向信号を生成し、主偏向器19bに供給する。これにより、偏向信号に応じて主偏向器19bが動作し、描画材料Mの所望の位置に電子線が照射される。
【0038】
高さ測定制御部37は、高さ測定器21を制御する。また、高さ測定制御部37は、高さ測定器21で測定された描画材料Mの高さの情報を取得し、情報処理装置50に送る。
【0039】
高電圧制御部30、ブランキング制御部31、レンズ制御部32、スキャン周波数演算部33、副偏向器制御部35、主偏向器制御部36、および高さ測定制御部37の機能は、例えば、プログラムに従って動作するマイクロコントローラーやマイクロプロセッサーなどの汎用回路で実現されてもよいし、ASIC(application specific integrated circuit)などの専用回路で実現されてもよい。
【0040】
電流計38は、ファラデーカップ22に入射したビーム電流を計測する。電流計38で計測されたビーム電流は、情報処理装置50に送られる。
【0041】
ステージ制御装置39は、ステージ20を動作させる。ステージ20は、描画材料Mを水平方向に移動させる移動機構を有している。ステージ制御装置39は、ステージ20の移動機構を動作させて、ステージ20に描画材料Mを水平方向に移動させる。
【0042】
高電圧制御部30、ブランキング制御部31、レンズ制御部32、スキャン周波数演算部33、副偏向器制御部35、主偏向器制御部36、高さ測定制御部37、およびステージ制御装置39は、情報処理装置50によって制御される。
【0043】
描画制御部40は、情報処理装置50を介して、電子線描画装置100の全体の動作を制御する。描画制御部40は、例えば、各種プロセッサ(CPU(Central Processing Unit)、DSP(digital signal processor)等)などのハードウェアで、記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより実現できる。
【0044】
情報処理装置50は、処理部52と、操作部54と、記憶部56と、を有している。
【0045】
操作部54は、ユーザーが操作情報を入力するためのものであり、入力された操作情報を処理部52に出力する。操作部54の機能は、キーボード、マウス、ボタン、タッチパッドなどのハードウェアにより実現することができる。
【0046】
記憶部56は、処理部52の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラムや各種データを記憶している。また、記憶部56は、処理部52のワーク領域としても機能
する。記憶部56の機能は、ハードディスク、RAM(Random Access Memory)などにより実現できる。
【0047】
記憶部56には、パターンデータが記憶されている。パターンデータは、描画材料Mに描画されるパターンを構成する複数の部分パターンのデータを含む。部分パターンのデータは、部分パターンの位置の情報、部分パターンの形状の情報、および部分パターンのサイズの情報を含む。また、記憶部56には、描画条件が記憶されている。描画条件は、複数の部分パターンの各々に設定されたショット時間条件を含む。また、描画条件は、ビーム電流などを含む。
【0048】
図2は、描画材料Mに描画されるパターン2のパターンデータDを説明するための図である。図2には、主偏向領域A1に描画されるパターン2を図示している。
【0049】
主偏向領域A1は、主偏向器19bで電子線を偏向できる領域である。副偏向領域A2は、副偏向器19aで電子線を偏向できる領域である。電子線描画装置100では、主偏向器19bで副偏向領域A2の原点位置に電子線を偏向させ、副偏向器19aで副偏向領域A2内の部分パターン4の描画を行う。副偏向領域A2内の部分パターン4の描画が終了すると、主偏向器19bで次の副偏向領域A2の原点位置に電子線を偏向させる。これを繰り返すことで、主偏向領域A1にパターン2を描画できる。
【0050】
図2に示すように、パターン2は、複数の部分パターン4で構成されている。部分パターン4は、例えば、パターン2を、台形や長方形などの基準形状に分割して得られたパターンである。パターン2の描画は、部分パターン4ごとに行われる。部分パターン4の描画は、例えば、パターンデータDで指定された位置で、パターンデータDで指定された形状およびサイズの領域を電子線で走査することによって行われる。1つの部分パターン4を描画するときの電子線の走査速度は、一定である。
【0051】
ここで、電子線でパターンを描画する場合、近接効果を補正するために、描画される部分パターン4ごとに要求されるドーズ量が異なる。そのため、部分パターン4ごとに、ショット時間条件が異なる。ショット時間条件は、電子線の1ショットあたりの時間である。すなわち、電子線が1点に滞在する時間である。ショット時間条件から電子線の走査速度、すなわち、スキャン周波数を決めることができる。1つの主偏向領域A1内において、ショット時間条件が同じであれば、スキャン周波数は同じになる。
【0052】
なお、近接効果は、レジストを透過して基板表面で散乱された後方散乱電子によりレジストが感光することによってパターン寸法誤差が生じる現象である。
【0053】
図2では、部分パターン4に設定されるショット時間条件の違いを、ハッチングの違いで表している。すなわち、同じショット時間が設定された部分パターン4には、同じハッチングを付している。
【0054】
図1に示す処理部52は、パターンを描画するための処理を行う。処理部52の機能は、各種プロセッサ(CPU、DSP等)などのハードウェアで、プログラムを実行することにより実現できる。処理部52は、パターンデータ生成部520と、ソート処理部522と、を含む。
【0055】
パターンデータ生成部520は、パターンデータDからショット時間条件が同じ部分パターン4を抽出することによって、複数の部分パターンデータを生成する。
【0056】
ソート処理部522は、パターンデータ生成部520で生成された複数の部分パターン
データに含まれる部分パターン4を、描画順に配列して、記憶部56に記憶する。
【0057】
パターンデータ生成部520の処理およびソート処理部522の処理の詳細については後述する「3. 電子線描画装置の動作」で説明する。
【0058】
2. クロック信号出力部
図3は、クロック信号出力部34の構成を示す図である。
【0059】
クロック信号出力部34は、図3に示すように、制御回路340と、クロック生成回路342と、を含む。
【0060】
制御回路340は、スキャン周波数演算部33で求められたスキャン周波数の情報を受け付ける。制御回路340は、スキャン周波数演算部33で求められたスキャン周波数に応じた周波数のクロック信号を生成するための設定データを生成する。制御回路340は、設定データをクロック生成回路342に設定する。これにより、クロック生成回路342は、スキャン周波数に応じた周波数のクロック信号を生成する。例えば、クロック生成回路342は、スキャン周波数演算部33で求められたスキャン周波数と同じ周波数のクロック信号を生成する。
【0061】
制御回路340は、設定データをクロック生成回路342に設定している間は、イネーブル信号を利用して、クロック生成回路342にクロック信号の生成を停止させる。制御回路340は、クロック生成回路342が生成したクロック信号を副偏向器制御部35に出力する。
【0062】
クロック生成回路342は、クロック信号を生成する。クロック生成回路342は、例えば、PLL回路である。
【0063】
なお、制御回路340とスキャン周波数演算部33が、1つのFPGA(field programmable gate array)で構成されていてもよい。
【0064】
3. 電子線描画装置の動作
電子線描画装置100の動作について説明する。図4は、電子線描画装置100の動作の一例を示すフローチャートである。以下では、主偏向領域A1にパターン2を描画する場合について説明する。
【0065】
描画制御部40が、描画材料Mにパターン2を描画する処理を開始する指示を受け付けると、電子線描画装置100を構成する各部を動作させる。
【0066】
まず、パターンデータ生成部520が、パターン2のパターンデータDを取得する(S100)。
【0067】
パターンデータ生成部520は、記憶部56からパターン2のパターンデータDを読み出す。パターンデータDは、パターン2を構成する複数の部分パターン4のデータを含む。パターンデータ生成部520は、さらに、記憶部56から描画条件を読み出す。描画条件は、複数の部分パターン4の各々に設定されたショット時間条件を含む。
【0068】
次に、パターンデータ生成部520は、パターンデータDからショット時間条件が同じ部分パターン4を抽出することによって、複数の部分パターンデータを生成する(S102)。
【0069】
図5は、パターンデータ生成部520の処理を説明するための図である。
【0070】
図5に示すように、パターンデータ生成部520は、パターン2からショット時間条件が同じ部分パターン4を抽出して、部分パターンデータを生成する。部分パターンデータは、同じショット時間条件に設定された部分パターン4のデータである。部分パターンデータは、部分パターンの位置の情報、部分パターンの形状の情報、および部分パターンのサイズの情報を含む。
【0071】
図5に示す例では、パターンデータDから4つの部分パターンデータ(第1部分パターンデータD-1、第2部分パターンデータD-2、第3部分パターンデータD-3、および第4部分パターンデータD-4)が生成されている。
【0072】
第1部分パターンデータD-1は、パターン2を構成する複数の部分パターン4のうち、ショット時間が第1ショット時間に設定された部分パターン4のデータである。第2部分パターンデータD-2は、パターン2を構成する複数の部分パターン4のうち、ショット時間が第2ショット時間に設定された部分パターン4のデータである。第3部分パターンデータD-3は、パターン2を構成する複数の部分パターン4のうち、ショット時間が第3ショット時間に設定された部分パターン4のデータである。第4部分パターンデータD-4は、パターン2を構成する複数の部分パターン4のうち、ショット時間が第4ショット時間に設定された部分パターン4のデータである。
【0073】
次に、ソート処理部522は、部分パターンデータごとに部分パターン4を配列し、記憶部56に記憶する(S104)。
【0074】
図6は、ソート処理部522の処理を説明するための図である。
【0075】
ソート処理部522は、図6に示すように、第1部分パターンデータD-1に含まれる部分パターン4、第2部分パターンデータD-2に含まれる部分パターン4、第3部分パターンデータD-3に含まれる部分パターン4、第4部分パターンデータD-4に含まれる部分パターン4の順で、部分パターン4を配列する。
【0076】
すなわち、ソート処理部522は、第1部分パターンデータD-1に含まれる部分パターン4を全て並べた後に、第2部分パターンデータD-2に含まれる部分パターン4を全て並べる。また、第2部分パターンデータD-2に含まれる部分パターン4を全て並べた後に、第3部分パターンデータD-3に含まれる部分パターン4を全て並べる。また、第3部分パターンデータD-3に含まれる部分パターン4を全て並べた後に、第4部分パターンデータD-4に含まれる部分パターン4を全て並べる。
【0077】
上記の処理により、部分パターン列6が生成される。部分パターン列6では、同じショット時間条件の部分パターン4が連続して配列される。すなわち、部分パターン列6では、同じスキャン周波数で描画される部分パターン4が連続して配列される。部分パターン列6のデータは、記憶部56に記憶される。
【0078】
なお、図示はしないが、電子線描画装置100は、部分パターン列6を記憶するための記憶部を、記憶部56とは別に有していてもよい。例えば、電子線描画装置100は、部分パターン列6を記憶するための専用の記憶部を有していてもよい。当該記憶部の機能は、ハードディスク、RAMなどにより実現されてもよい。
【0079】
スキャン周波数演算部33は、部分パターン列6の1番目(N=1)の部分パターン4のショット時間条件に基づいて、スキャン周波数を求める(S106)。
【0080】
スキャン周波数は、例えば、ビーム電流とショット時間から求めることができる。ビーム電流は、例えば、主偏向領域A1の描画を行う前に測定される。ビーム電流は、例えば、主偏向領域A1ごとに測定される。すなわち、1つの主偏向領域A1内では、部分パターン4を描画するときのビーム電流の条件は、一定である。ビーム電流の情報は、描画条件に含まれ、記憶部56に記憶されている。なお、スキャン周波数演算部33は、スキャン周波数をショット時間条件のみから計算してもよいし、ショット時間条件だけでなくその他の描画条件を考慮して計算してもよい。
【0081】
スキャン周波数演算部33がスキャン周波数を求めると、クロック信号出力部34は、スキャン周波数演算部33で求められたスキャン周波数に応じた周波数のクロック信号を出力する。
【0082】
副偏向器制御部35および主偏向器制御部36は、偏向器19に、部分パターン列6の1番目の部分パターン4を描画させる(S108)。
【0083】
例えば、まず、主偏向器制御部36が、主偏向器19bに、1番目の部分パターン4を含む副偏向領域A2の原点位置に電子線を偏向させる。次に、副偏向器制御部35が、副偏向器19aに、1番目の部分パターン4を描画させる。このとき、副偏向器制御部35は、クロック信号に基づいて、副偏向器19aを動作させる。これにより、スキャン周波数演算部33で求められたスキャン周波数で、電子線が走査される。以上の処理により、1番目の部分パターン4を描画できる。
【0084】
次に、スキャン周波数演算部33は、部分パターン列6の2番目(N=2)の部分パターン4のショット時間条件に基づいて、スキャン周波数を求め(S106)、制御回路340は、求めたスキャン周波数を1つ前の描画時のスキャン周波数と比較し、異なる場合には、設定データをクロック生成回路342に設定し(スキャン周波数の切り替え)、同じ場合には、設定データをクロック生成回路342に設定せずに、1つ前の描画と同じクロック信号を用いる。副偏向器制御部35および主偏向器制御部36は、偏向器19に、2番目の部分パターン4を描画させる(S108)。
【0085】
スキャン周波数の演算(S106)および描画処理(S108)が、部分パターン列6の最後の部分パターン4(M番目の部分パターン)に対して行われるまで(N=Mとなるまで)、スキャン周波数の演算(S106)および描画処理(S108)が繰り返し行われる。
【0086】
副偏向器制御部35および主偏向器制御部36が、偏向器19に、M番目の部分パターン4を描画させて、M番目の部分パターン4の描画が終了すると(S108のYes)、描画制御部40はパターン2を描画する処理を終了する。
【0087】
以上の処理により、主偏向領域A1に、パターン2を描画できる。
【0088】
このように電子線描画装置100では、第1部分パターンデータD-1に含まれる部分パターン4が全て描画された後に、第2部分パターンデータD-2に含まれる部分パターン4が全て描画される。同様に、第2部分パターンデータD-2に含まれる部分パターン4が全て描画された後に、第3部分パターンデータD-3に含まれる部分パターン4が全て描画される。同様に、第3部分パターンデータD-3に含まれる部分パターン4が全て描画された後に、第4部分パターンデータD-4に含まれる部分パターン4が全て描画される。
【0089】
この結果、スキャン周波数の切り替え回数が3回となる。
【0090】
なお、ステージ20で描画材料Mを移動させることによる主偏向領域A1の移動と、図4に示す主偏向領域A1へのパターンの描画を繰り返すことによって、主偏向領域A1よりも広い領域に、パターンの描画を行うことができる。
【0091】
4. 作用効果
電子線描画装置100では、パターンデータ生成部520は、パターンデータDからショット時間条件が同じ部分パターン4を抽出することによって、複数の部分パターンデータを生成する。また、スキャン周波数演算部33は、第1部分パターンデータD-1のショット時間条件に基づいて、第1部分パターンデータD-1に含まれる部分パターン4を描画させるときのスキャン周波数である第1スキャン周波数を求める処理と、第2部分パターンデータD-2のショット時間条件に基づいて、第2部分パターンデータD-2に含まれる部分パターン4を描画させるときのスキャン周波数である第2スキャン周波数を求める処理と、を行う。また、副偏向器制御部35は、偏向器19に、第1部分パターンデータD-1に含まれる部分パターン4を前記第1スキャン周波数で描画させる処理と、偏向器19に第2部分パターンデータD-2に含まれる部分パターン4を第2スキャン周波数で描画させる処理と、を行う。
【0092】
このように、電子線描画装置100では、ショット時間条件が同じ部分パターン4を抽出することによって複数の部分パターンデータを生成し、部分パターンデータごとに部分パターン4を描画する。すなわち、電子線描画装置100では、同じスキャン周波数で描画される部分パターン4が連続して描画される。そのため、電子線描画装置100では、スキャン周波数を切り替える回数を少なくでき、描画のスループットを向上できる。
【0093】
図7は、パターン2を描画する方法の一例を示す図である。
【0094】
例えば、図7に示すように、1つの副偏向領域A2内の部分パターン4を全て描画した後に、隣接する副偏向領域A2内の部分パターン4を全て描画することを繰り返して、主偏向領域A1にパターン2を描画する。この場合、副偏向領域A2ごとに、部分パターン4の描画が行われる。このときの部分パターン列8を、図8に示す。
【0095】
副偏向領域A2ごとに部分パターン4の描画を行う場合、図8に示すように、スキャン周波数を切り替える回数が多くなる。図8に示す例では、1つの部分パターン4を描画するごとにスキャン周波数を切り替えなければならない。
【0096】
これに対して、電子線描画装置100では、上記のように、同じスキャン周波数で描画される部分パターン4が連続して描画されるため、副偏向領域A2ごとに部分パターン4の描画を行う場合と比べて、スキャン周波数を切り替える回数を少なくできる。これにより、クロック信号出力部34において、クロック信号の周波数を切り替える回数を少なくできる。したがって、電子線描画装置100では、描画のスループットを向上できる。
【0097】
電子線描画装置100では、副偏向器制御部35および主偏向器制御部36は、偏向器19に、第1部分パターンデータD-1に含まれる全ての部分パターン4を描画させた後に、第2部分パターンデータD-2に含まれる全ての部分パターン4を描画させる。そのため、電子線描画装置100では、スキャン周波数を切り替える回数を少なくでき、描画のスループットを向上できる。
【0098】
5. 変形例
5.1. 第1変形例
5.1.1. 電子線描画装置の構成
第1変形例に係る電子線描画装置は、クロック信号出力部34の構成が上述した電子線描画装置100と異なる。以下では、上述した電子線描画装置100の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0099】
図9は、第1変形例に係る電子線描画装置のクロック信号出力部34の構成を示す図である。
【0100】
クロック信号出力部34は、制御回路340と、第1クロック生成回路342aと、第2クロック生成回路342bと、セレクター344と、を有している。
【0101】
第1クロック生成回路342aは、低周波数のクロック信号を生成する回路である。第2クロック生成回路342bは、高周波数のクロック信号を生成する回路である。すなわち、第2クロック生成回路342bが生成するクロック信号の周波数は、第1クロック生成回路342aが生成するクロック信号の周波数よりも高い。
【0102】
第1クロック生成回路342aは、例えば、リングオシレーターである。第2クロック生成回路342bは、例えば、PLL回路である。リングオシレーターでは、動作速度が、ディレイICとロジック回路の遅延時間に依存するため、生成できるクロック信号の周波数は、例えば、100MHz以下である。これに対して、PLL回路では、数GHz程度の高い周波数のクロック信号を生成可能である。
【0103】
第2クロック生成回路342bのクロック信号の周波数を切り替えるための切替時間は、第1クロック生成回路342aのクロック信号の周波数を切り替えるための切替時間よりも長い。
【0104】
切り替え時間とは、プログラム時間と安定時間の和である。プログラム時間とは、クロック生成回路に周波数を設定するための時間である。安定時間とは、クロック生成回路に周波数が設定されてから、クロック生成回路が設定された周波数のクロック信号を安定して出力するまでの時間である。PLL回路の特性上、PLL回路の切り替え時間は、リングオシレーターの切り替え時間よりも長い。
【0105】
第1クロック生成回路342aおよび第2クロック生成回路342bは、セレクター344の入力に接続されている。
【0106】
セレクター344は、第1クロック生成回路342aで生成されたクロック信号、または、第2クロック生成回路342bで生成されたクロック信号を選択する。セレクター344の動作は、制御回路340で制御される。セレクター344で選択されたクロック信号が、制御回路340から出力される。
【0107】
5.1.2. 電子線描画装置の動作
図10は、第2変形例に係る電子線描画装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0108】
描画制御部40は、描画を開始する前に、ファラデーカップ22に電子線を照射し、電流計38でビーム電流を計測する(S200)。
【0109】
パターンデータ生成部520は、主偏向領域A1に描画されるパターン2のパターンデータDおよび描画条件を取得する(S202)。描画条件は、パターン2を構成する複数の部分パターン4の各々に設定されたショット時間条件を含む。
【0110】
スキャン周波数演算部33は、複数の部分パターン4の各々について、ショット時間条件およびビーム電流に基づいてスキャン周波数を計算し、スキャン周波数の最大値を求める(S204)。
【0111】
描画制御部40は、スキャン周波数の最大値と、あらかじめ設定された閾値と、を比較する(S206)。
【0112】
閾値は、例えば、第1クロック生成回路342aで生成できるクロック信号の周波数の最大値に設定される。
【0113】
スキャン周波数の最大値が閾値以下の場合(S208のYes)、パターンデータ生成部520は部分パターンデータを生成せずに、ソート処理部522が、例えば、副偏向領域A2ごとに部分パターン4を配列して、図8に示す部分パターン列8を生成する。これにより、図7に示すように、副偏向領域A2ごとに部分パターン4が描画される(S210)。
【0114】
具体的には、スキャン周波数演算部33は、部分パターン列8の1番目の部分パターン4のショット時間条件に基づいて、スキャン周波数を求める。クロック信号出力部34は、スキャン周波数演算部33で求められたスキャン周波数に応じた周波数のクロック信号を出力する。このとき、クロック信号出力部34では、セレクター344によって第1クロック生成回路342aで生成されたクロック信号が選択される。副偏向器制御部35および主偏向器制御部36は、偏向器19に、部分パターン列8の1番目の部分パターン4を描画させる。
【0115】
部分パターン列8の2番目以降の部分パターン4の描画も、1番目の部分パターン4の描画と同様に行われる。以上の処理により、主偏向領域A1にパターン2を描画できる。
【0116】
スキャン周波数の最大値が閾値よりも大きい場合(S208のNo)、パターンデータ生成部520は、図11に示すように、パターンデータDから、スキャン周波数が閾値以下の部分パターン4を抽出して、第1部分パターンデータD-1を生成する。また、パターンデータ生成部520は、パターンデータDからスキャン周波数が閾値よりも大きい部分パターン4を抽出し、抽出された部分パターン4からショット時間条件ごとに部分パターン4を抽出して、複数の部分パターンデータ(第2部分パターンデータD-2、第3部分パターンデータD-3)を生成する(S212)。
【0117】
ソート処理部522は、部分パターンデータごとに部分パターン4を配列し、部分パターン列を生成する。ソート処理部522は、例えば、第1部分パターンデータD-1に含まれる部分パターン4、第2部分パターンデータD-2に含まれる部分パターン4、第3部分パターンデータD-3に含まれる部分パターン4の順で、部分パターン4を配列する。
【0118】
なお、ソート処理部522は、第2部分パターンデータD-2に含まれる部分パターン4、第3部分パターンデータD-3に含まれる部分パターン4、第1部分パターンデータD-1に含まれる部分パターン4の順で、部分パターン4を配列してもよい。
【0119】
スキャン周波数演算部33は、生成された部分パターン列の順にスキャン周波数を演算し、副偏向器制御部35および主偏向器制御部36は、生成された部分パターン列の順に部分パターン4を描画する(S214)。
【0120】
具体的には、スキャン周波数演算部33は、部分パターン列の1番目の部分パターン4のショット時間条件に基づいて、スキャン周波数を求める。ここで、1番目の部分パターン4のスキャン周波数が閾値以下の場合、セレクター344によって第1クロック生成回路342aで生成されたクロック信号が選択される。また、部分パターン列の1番目の部分パターン4のスキャン周波数が閾値よりも大きい場合、セレクター344によって第2クロック生成回路342bで生成されたクロック信号が選択される。副偏向器制御部35および主偏向器制御部36は、偏向器19に、部分パターン列の1番目の部分パターン4を描画させる。
【0121】
部分パターン列の2番目以降の部分パターン4の描画も、1番目の部分パターン4の描画と同様に行われる。以上の処理により、主偏向領域A1に、パターン2を描画できる。
【0122】
5.1.3. 作用効果
第1変形例に係る電子線描画装置では、クロック信号出力部34は、第1クロック生成回路342aと、第2クロック生成回路342bと、を有し、第2クロック生成回路342bが生成するクロック信号の周波数は、第1クロック生成回路342aが生成するクロック信号の周波数よりも高く、第2クロック生成回路342bのクロック信号の周波数を切り替えるための切替時間は、第1クロック生成回路342aのクロック信号の周波数を切り替えるための切替時間よりも長い。
【0123】
そのため、第1変形例に係る電子線描画装置では、低スキャン周波数で描画する場合には、切り替え時間が短い第1クロック生成回路342aを用いる。そのため、低スキャン周波数で描画する場合には、パターンデータ生成部520による部分パターンデータを生成する処理が不要となり、描画のスループットを向上できる。また、第1変形例に係る電子線描画装置では、高スキャン周波数で描画する場合には、上述した電子線描画装置100と同様の動作を行うため、描画のスループットを向上できる。
【0124】
5.2. 第2変形例
第2変形例に係る電子線描画装置は、クロック信号出力部34の構成が上述した電子線描画装置100と異なる。以下では、上述した電子線描画装置100の例および第1変形例に係る電子線描画装置の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0125】
図9に示す第1変形例に係る電子線描画装置では、第1クロック生成回路342aはリングオシレーターであり、第2クロック生成回路342bはPLL回路であった。
【0126】
これに対して、第2変形例に係る電子線描画装置では、第1クロック生成回路342aおよび第2クロック生成回路342bは、PLL回路である。以下、第2変形例に係る電子線描画装置について、図9を参照しながら説明する。
【0127】
クロック信号出力部34では、第1クロック生成回路342aおよび第2クロック生成回路342bに対して、それぞれ個別に周波数を設定できる。すなわち、第1クロック生成回路342aがクロック信号を生成している間に、第2クロック生成回路342bに周波数を設定可能である。そのため、第2変形例に係る電子線描画装置では、スキャン周波数の切り替える際の待ち時間を短縮できる。
【0128】
例えば、図6に示す部分パターン列6を描画する場合、制御回路340は、第1クロック生成回路342aに第1スキャン周波数に対応するクロック信号を生成させ、第1部分パターンデータD-1に含まれる部分パターン4が描画されている間に、第2クロック生成回路342bに第2スキャン周波数に対応する周波数を設定する処理を開始する。
【0129】
また、制御回路340は、第2クロック生成回路342bに第2スキャン周波数に対応するクロック信号を生成させて、第2部分パターンデータD-2に含まれる部分パターン4が描画されている間に、第1クロック生成回路342aに第3スキャン周波数に対応する周波数を設定する処理を開始する。
【0130】
この処理を繰り返すことによって、スキャン周波数を切り替える際の待ち時間を短縮できる。
【0131】
なお、上記では、クロック生成回路が2つの場合について説明したが、クロック生成回路の数は2つ以上であってもよい。クロック生成回路の数を増やすことで、よりスキャン周波数を切り替える際の待ち時間を短縮できる。
【0132】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0133】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0134】
2…パターン、4…部分パターン、6…部分パターン列、8…部分パターン列、10…電子源、11…加速電極、12…ブランキング絞り、13…ブランカー、14…静電レンズ、15a…コンデンサーレンズ、15b…コンデンサーレンズ、16…対物絞り、17…対物レンズ、18…非点収差補正器、19…偏向器、19a…副偏向器、19b…主偏向器、20…ステージ、21…高さ測定器、22…ファラデーカップ、30…高電圧制御部、31…ブランキング制御部、32…レンズ制御部、33…スキャン周波数演算部、34…クロック信号出力部、35…副偏向器制御部、36…主偏向器制御部、37…高さ測定制御部、38…電流計、39…ステージ制御装置、40…描画制御部、50…情報処理装置、52…処理部、54…操作部、56…記憶部、100…電子線描画装置、340…制御回路、342…クロック生成回路、342a…第1クロック生成回路、342b…第2クロック生成回路、344…セレクター、520…パターンデータ生成部、522…ソート処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11