(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 15/00 20060101AFI20240202BHJP
B25J 15/06 20060101ALN20240202BHJP
【FI】
B25J15/00 F
B25J15/00 Z
B25J15/06 M
(21)【出願番号】P 2020063912
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】高山 裕規
(72)【発明者】
【氏名】本間 敏行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真平
(72)【発明者】
【氏名】松田 吉平
(72)【発明者】
【氏名】志鷹 拓哉
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-279114(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0265392(US,A1)
【文献】特開平03-284538(JP,A)
【文献】実開平06-080582(JP,U)
【文献】特開平03-008618(JP,A)
【文献】特開2001-225946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
B65G 47/00 - 47/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットハンドを搭載するロボットと、
前記ロボットの動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記ロボットハンド
は、物品を保持し、保持した前記物品を移送する移送機構を備え、
前記移送機構は、
移動軌道に沿って移動し、前記物品に対して保持又は保持解除を行うように作用する作用部と、
前記作用部を前記移動軌道に沿って移動させるための駆動力を発生させる駆動部と、
前記移動軌道に対応する循環軌道に沿って循環可能なループ状の部材であり、前記駆動部が発生させた前記駆動力により循環することで前記作用部を移動させる循環部材と、
を有
し、
前記移動軌道は、湾曲部を有し、
前記湾曲部を前記作用部が移動するのに伴って、前記作用部の向きが変化し、
前記制御装置は、前記作用部が保持しようとする前記物品の姿勢に応じて、前記作用部が当該物品を保持するときの位置を前記湾曲部の範囲内で調整することを特徴とするロボット
システム。
【請求項2】
請求項
1に記載のロボット
システムであって、
前記作用部は複数備えられていることを特徴とするロボット
システム。
【請求項3】
請求項
2に記載のロボット
システムであって、
複数の前記作用部のうち、少なくとも1つの作用部は、他の作用部と異なる構成であることを特徴とするロボット
システム。
【請求項4】
請求項
3に記載のロボット
システムであって、
複数の前記作用部は、それぞれ、前記物品を保持するための保持部を有し、
前記少なくとも1つの作用部は、前記保持部に関して、前記他の作用部の保持部とは異なる構成を有することを特徴とするロボット
システム。
【請求項5】
請求項1から
4までの何れか一項に記載のロボット
システムであって、
前記移動軌道は直線部を有しており、
前記循環部材の内周側に、前記直線部に沿うように延びて当該循環部材を案内するガイド部材が設けられていることを特徴とするロボット
システム。
【請求項6】
請求項1から
5までの何れか一項に記載のロボット
システムであって、
前記移送機構が複数備えられていることを特徴とするロボット
システム。
【請求項7】
請求項
6に記載のロボット
システムであって、
複数の前記移送機構は、互いに異なる構成の前記作用部を有することを特徴とするロボット
システム。
【請求項8】
請求項
6又は
7に記載のロボット
システムであって、
複数の前記移送機構のうち、少なくとも2つの移送機構における各作用部を、1つの前記物品に作用させることができるように構成されていることを特徴とするロボット
システム。
【請求項9】
請求項
6から
8までの何れか一項に記載のロボット
システムであって、
前記ロボットの取付部に固定可能な支持部を備え、
複数の前記移送機構のうち1つである第1移送機構、及び、別の1つである第2移送機構が、何れも前記支持部に支持され、
前記第1移送機構及び前記第2移送機構において、前記駆動部はモータであり、
前記第1移送機構の循環部材と、前記第2移送機構の循環部材とが、前記支持部に挟んで互いに反対側に配置され、
前記第1移送機構の前記モータのハウジングは、前記支持部に対して、前記第2移送機構の循環部材と同じ側に配置され、
前記第2移送機構の前記モータのハウジングは、前記支持部に対して、前記第1移送機構の循環部材と同じ側に配置されていることを特徴とするロボット
システム。
【請求項10】
請求項
6から
9までの何れか一項に記載のロボット
システムであって、
複数の前記移送機構は、前記循環部材の長さが異なる2つの前記移送機構を含むことを特徴とするロボット
システム。
【請求項11】
請求項
1から10までの何れか一項に記載のロボットシステムであって、
前記物品を前記ロボットハンドから受けることができる搬送装置又は収納装置を備え、
前記制御装置は、前記ロボットハンドを動作させて、当該ロボットハンドに保持されている前記物品を前記搬送装置又は前記収納装置に投入することができるように構成されていることを特徴とするロボットシステム。
【請求項12】
請求項
11に記載のロボットシステムであって、
前記制御装置は、前記移動軌道において、前記作用部が前記物品を保持する位置と、前記作用部が前記物品を前記搬送装置又は前記収納装置に投入する位置と、が異なるように制御することを特徴とするロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上方が開いた箱体内に収容された物品等のワークを取り出し(ピッキングし)、他の場所に向かって搬送するロボットが知られている。特許文献1は、この種のロボットであるピッキング装置を開示する。
【0003】
特許文献1のピッキング装置は、アームロボットと、アーム先端部に取り付けられたロボットハンドと、を備える。ロボットハンドは、部品箱内のワークをピッキングするものである。ロボットハンドは、第1の吸着パッド部と、第2の吸着パッド部と、を有する。第1の吸着パッド部と第2の吸着パッド部とは、互いに異なる向きに配置され、揺動可能に設けられている。第1及び第2の吸着パッド部は、それぞれ、第1及び第2のピッキング手段として、互いに独立的にワークをピッキングすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の構成においては、複数のワークが部品箱内に乱雑に配置されている場合、ピッキング作業時に、第1の吸着パッド部又は第2の吸着パッド部によりピッキングされたワークが、当該部品箱や他のワークと干渉し易い。そのため、このような干渉によりピッキング作業が妨げられることがある。そこで、ピッキング作業は、ピッキングされたワークが部品箱や他のワークと干渉しないように、第1の吸着パッド部又は第2の吸着パッド部を部品箱や他のワークに対して回避するようアームを動作させなければならない。この場合、アームが回避動作を行うことにより作業時間が増加してしまう。従って、特許文献1のピッキング装置は作業効率が必ずしも高くなく、この点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、物品のピッキング作業の作業効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成のロボットシステムが提供される。即ち、このロボットシステムは、ロボットハンドを搭載するロボットと、前記ロボットの動作を制御する制御装置と、を備える。前記ロボットハンドは、移送機構を備える。前記移送機構は、物品を保持し、保持した前記物品を移送する。前記移送機構は、作用部と、駆動部と、循環部材と、を有する。前記作用部は、移動軌道に沿って移動し、前記物品に対して保持又は保持解除を行うように作用する。前記駆動部は、前記作用部を前記移動軌道に沿って移動させるための駆動力を発生させる。前記循環部材は、前記移動軌道に対応する循環軌道に沿って循環可能なループ状の部材であり、前記駆動部が発生させた前記駆動力により循環することで前記作用部を移動させる。前記移動軌道は、湾曲部を有する。前記湾曲部を前記作用部が移動するのに伴って、前記作用部の向きが変化する。前記制御装置は、前記作用部が保持しようとする前記物品の姿勢に応じて、前記作用部が当該物品を保持するときの位置を前記湾曲部の範囲内で調整する。
【0009】
これにより、複数の物品が乱雑に配置された状態において、作用部の移動時に、当該作用部が保持した物品が他の物品と干渉することを回避することができる。従って、ピッキング作業を効率良く行うことができる。不規則な姿勢の物品を、作用部の向きを調整することで円滑に保持することができる。作用部の向きを変化させるために作用部及びロボットハンド自体を大きく動かす必要がない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、物品のピッキング作業の作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るロボットハンドを備えたロボット及びロボットシステムを概略的に示す図。
【
図3】ピッキング作業において、ロボットハンドが1つ目のワークを保持する様子を模式的に示す図。
【
図4】ロボットハンドで保持された1つ目のワークを退避させる様子を模式的に示す図。
【
図5】ロボットハンドが2つ目のワークを保持する様子を模式的に示す図。
【
図6】ロボットハンドが1つ目のワークを搬送装置に渡す様子を模式的に示す図。
【
図7】ロボットハンドが2つ目のワークを搬送装置に渡す様子を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るロボットハンド5を備えたロボット2及びロボットシステム1を概略的に示す図である。
【0013】
図1に示すように、ロボットシステム1は、ロボット2と、制御装置3と、を備える。
【0014】
ロボット2は、複数の関節2a~2fを備える多関節型のアームロボットである。ロボット2は、複数の関節2a~2fが設けられたロボット本体と、ロボットハンド5と、を備える。ロボットハンド5は、ワーク(物品)Wを保持することができる。ロボットハンド5は、ロボット本体に、その先端部に設けられたフランジ(取付部)7を介して取り付けられている。
【0015】
制御装置3は、ロボット2と電気的に接続されている。制御装置3は、ロボット2の動作を制御する。例えば、制御装置3は、ロボット本体の複数の関節2a~2fの制御を行うことにより、ロボットハンド5の位置や姿勢を変更することができる。なお、制御装置3は、本実施形態ではロボット2とは別体に構成されているが、ロボット2と一体的に構成されても良い。
【0016】
次に、ロボットハンド5について詳細に説明する。
図2は、ロボットハンド5の斜視図である。
【0017】
ロボットハンド5は、ロボット2におけるエンドエフェクタとして機能する。
図2に示すように、ロボットハンド5は、支持部11と、移送機構12と、を備える。本実施形態において、ロボットハンド5は、2つの移送機構12を備える。なお、ロボットハンド5における移送機構12の数は、これに限定されず、1つ以上であれば任意である。
【0018】
支持部11は、本実施形態ではT字状の部材である。支持部11は、ロボット本体のフランジ7に固定されている。支持部11は、フランジ7から突出するように設けられている。支持部11は、2つの移送機構12のそれぞれを支持している。支持部11は、固定部16と、突出部17と、を有している。なお、支持部11の形状はT字状に限定されない。
【0019】
固定部16は、フランジ7に対応する板状部材から構成されている。固定部16は、フランジ7に沿うように配置されている。固定部16は、フランジ7と隣接するように配置され、当該フランジ7に固定されている。
【0020】
突出部17は、短辺と長辺とを有する長方形状に形成された板状部材から構成されている。突出部17の長手方向一側の端部に相当する短辺が、固定部16に固定されている。突出部17は、固定部16からフランジ7と反対側へ突出している。
【0021】
以下では、説明の便宜上、
図2に示す状態のロボットハンド5において、突出部17の長辺方向(突出方向を含む)を上下方向とし、突出部17の短辺方向を前後方向とし、突出部17の長辺方向及び短辺方向の何れにも垂直な方向を左右方向とする。これらの方向の呼びは、ロボットハンド5が使用される向きを限定するものではない。
【0022】
ロボットハンド5には、2つの移送機構12として、第1移送機構12Aと、第2移送機構12Bと、が備えられている。第1移送機構12Aと第2移送機構12Bとは実質的に同じ構成であるので、以下では、主として第1移送機構12Aの構成について説明する。
【0023】
第1移送機構12Aは、ワークWに作用する作用部21Aと、モータ(駆動部)22Aと、チェーン(循環部材)23Aと、を備える。一方、第2移送機構12Bは、作用部21Bと、モータ(駆動部)22Bと、チェーン(循環部材)23Bと、を備える。
【0024】
本実施形態では、作用部21Aとして、2つの作用部21Aa,21Abが備えられている。一方の作用部21Aaと他方の作用部21Abとは、チェーン23Aの長手方向で適宜の間隔をあけて設けられている。なお、第1移送機構12Aにおける作用部21Aの数は、これに限定されず、1個以上であれば良い。
【0025】
本実施形態では、第2移送機構12Bが備える作用部21Bの数は、
図2では1つ(作用部21Bb)しか現れていないが、2つである。従って、第1移送機構12Aにおける作用部21Aの数は、第2移送機構12Bにおける作用部21Bの数と同じである。しかし、両者の数は、互いに異なっても良い。
【0026】
作用部21Aは、ワークWを保持又は保持解除することができるように構成されている。作用部21Aは、移動軌道25に沿って、循環的に移動することができる。この移動軌道25は、2つの直線部25aと、2つの湾曲部25bと、を含む長円状に形成されている。それぞれの湾曲部25bは、2つの直線部25aの上端部同士又は下端部同士を接続している。
【0027】
2つの直線部25aは、突出部17の長手方向に沿って上下方向に延びる。2つの直線部25aは、前後方向に所定間隔をあけて、互いに平行に配置される。2つの湾曲部25bのうち、上側の湾曲部25bは突出部17の上端部付近に位置し、下側の湾曲部25bは突出部17の下端部付近に位置する。なお、2つの直線部25aは、互いに平行に配置されなくても良い。
【0028】
作用部21Aは、チェーン23Aの移動により移動軌道25に沿って移動する。作用部21Aが下側の湾曲部25bに従って移動するとき、作用部21Aはその向きを変えることができる。作用部21Aは、移動軌道25に沿って移動することで、又はロボットハンド5自体が移動することで、移送対象であるワークWに接近及び接触することができる。作用部21Aは、移動軌道25上の任意の位置で、ワークWの保持/保持解除を行うことができる。
【0029】
作用部21Aは、取付部35と、少なくも1つの吸着パッド(保持部)36と、を備える。第1移送機構12Aでは、吸着パッド36は、一方の作用部21Aaに1つ備えられ、他方の作用部21Abに2つ備えられている。なお、一方の作用部21Aaと他方の作用部21Abとは、主として吸着パッド36に関して構成が異なっているが、同じ構成としても良い。
【0030】
取付部35は、ブロック状の部材である。取付部35は、チェーン23Aの外周側に位置するように、チェーン23Aに取り付けられている。一方の作用部21Aaの取付部35と、他方の作用部21Abの取付部35とは、チェーン23Aの長手方向の間隔を保ちつつ、それぞれチェーン23Aと一体的に移動することができる。
【0031】
吸着パッド36は、取付部35に取り付けられている。2つのうち1つの作用部21Abでは、2つの吸着パッド36が、チェーン23Aの周方向に所定間隔をあけて並べられている。それぞれの吸着パッド36は、チェーン23Aの外周側に突出するように、取付部35に固定されている。吸着パッド36は、チェーン23Aの外周側を向くように配置されている。
【0032】
吸着パッド36は、取付部35に設けられた接続部37を介して、可撓性を有する図略のチューブ等と接続されている。チューブ等は、真空ポンプ又はエジェクタ等の真空発生装置に接続されている。吸着パッド36は、その内部空間が減圧されることで、ワークWを吸引して保持することができる。
【0033】
本実施形態では、一方の作用部21Aaの吸着パッド36は、ワークWに対して、他方の作用部21Abにおける各吸着パッド36よりも大きくなっている。
【0034】
なお、作用部21Aは、吸着パッド36を備える構成に限定されず、何らかの方法でワークWを保持可能な構成であれば良い。例えば、作用部21Aは、複数本の把持爪によりワークWを保持しても良いし、ワークWが金属部材であれば磁力によりワークWを保持しても良い。
【0035】
また、本実施形態では、後述の箱体48の上方に、図略の認識部が設けられている。認識部は、ワークWに関する情報(例えば、ワークWの位置)を認識する。認識部としては、距離画像センサ又は3次元位置計測可能なカメラ等の、公知の装置を利用することができる。認識部により計測された情報は、制御装置3に送信される。なお、認識部は、フランジ7又はその近傍に設けても良いし、取付部35に設けても良い。
【0036】
ワークWのピッキング作業を行う場合、制御装置3は、認識部から得た情報に基づいて、ピッキング対象のワークWに対して作用部21Aが適切な位置となるように、ロボット2の動作(ロボットハンド5の動作を含む)を制御する。また、制御装置3は、認識部から得た情報に基づいて、作用部21AがワークWの保持に成功したか否かを判定する。
【0037】
なお、作用部21AがワークWの保持に成功したか否かの判定は、例えば、吸着パッド36に設けられる接触センサ又は近接センサの計測値に基づいて行っても良い。また、この判定は、吸着パッド36に接続されたチューブ等に設けられる圧力センサ又は流量センサの計測値に基づいて行っても良い。
【0038】
モータ22Aは、作用部21Aを移動軌道25に沿って移動させるための駆動力を発生させる。モータ22Aは、突出部17に取り付けられている。モータ22Aが有する出力軸は、左右方向(言い換えれば、突出部17の厚み方向)に延びている。モータ22Aは、制御装置3により制御される。制御装置3は、例えば、CPU、ROM、RAM等を備える公知のコンピュータから構成されている。
【0039】
チェーン23Aは、ループ状の部材である。チェーン23Aは、移動軌道25に対応する循環軌道に沿って走行するように循環可能に構成されている。循環軌道は、移動軌道25の内周側に、移動軌道25と平行に配置されている。本実施形態では、循環軌道は、上下方向の仮想の軸に関して対称である。第1移送機構12Aのチェーン23Aの長さは、第2移送機構12Bのチェーン23Bの長さと異なっている。チェーン23Aは、チェーン23Bよりも長い。
【0040】
チェーン23Aは、第1スプロケット41と、第2スプロケット42と、に巻かれて案内される。第1スプロケット41及び第2スプロケット42は、上下方向に所定間隔をあけて配置されている。第1スプロケット41及び第2スプロケット42の軸は、モータ22Aの出力軸と同様に、左右方向(言い換えれば、突出部17の厚み方向)に延びている。第1スプロケット41は、第2スプロケット42よりも上方に位置する。
【0041】
本実施形態では、第1スプロケット41は、駆動スプロケットである。突出部17の上部側には、減速機付きのモータ22Aが支持されている。第1スプロケット41は、減速機の出力軸に取り付けられている。第2スプロケット42は、従動スプロケットである。第2スプロケット42は、突出部17の下部側に回転可能に支持されている。そして、両者に巻かれたチェーン23Aの適宜の位置に、各作用部21Aが取り付けられている。
【0042】
この構成で、モータ22Aが駆動力を発生させた場合、チェーン23Aはモータ22Aの駆動力を各作用部21Aに伝達する。言い換えれば、チェーン23Aが循環軌道に沿って走行するのに伴い、各作用部21Aが移動軌道25に沿って移動する。
【0043】
また、チェーン23Aに対しては、その張りを調整するための調整機構45が設けられている。この調整機構45は、第1スプロケット41の上下位置を、モータ22Aとともに変更することができる。調整機構45は、図略の長孔に沿って移動可能なベース部材を備える公知の構造とすることができる。調整機構45を適宜用いることにより、チェーン23Aの弛みを防止することができる。なお、調整機構45の代わりにチェーンテンショナが設けられても良い。
【0044】
本実施形態では、第1移送機構12Aと第2移送機構12Bとは、突出部17に対して異なる位置で支持されている。具体的には、第1移送機構12Aと第2移送機構12Bとは、突出部17を左右方向で挟むように配置されている。
【0045】
第1移送機構12Aのチェーン23Aは、突出部17の左側に配置されている。第2移送機構12Bのチェーン23Bは、突出部17の右側に配置されている。なお、第1移送機構12Aと第2移送機構12Bは、突出部17に対して同じ位置(同じ側)で支持されても良い。
【0046】
第1移送機構12Aのモータ22Aのハウジングは、突出部17に対して、チェーン23Aと反対側に、即ち右側に配置されている。モータ22Aのハウジングは、突出部17から右側へ突出するように設けられており、第2移送機構12Bのチェーン23Bの外側のスペースに収められている。モータ22Aの出力軸は、突出部17を貫通するようにハウジングから左側へ延びている。モータ22Aの出力軸の端部に、第1スプロケット41が固定されている。
【0047】
本実施形態では、第2移送機構12Bは、第1移送機構12Aと比べて上下方向の長さが小さくなっている。これらの移送機構12A,12Bは、上下方向において下端位置が揃えられた状態で配置されている。そのため、突出部17の右側においては、第2移送機構12Bの上方に空きスペースが形成されている。このスペースに、モータ22Aのハウジングが配置される。
【0048】
第2移送機構12Bのモータ22Bのハウジングは、突出部17に対して、チェーン23Bと反対側に、即ち左側に配置されている。モータ22Bのハウジングは、突出部17から左側へ突出するように設けられており、第1移送機構12Aのチェーン23Aの内側のスペースに収められている。モータ22Bの出力軸は、突出部17を貫通するようにハウジングから右側へ延びている。モータ22Bの出力軸の端部に、第1スプロケット41が固定されている。
【0049】
本実施形態では、第1移送機構12Aは、第2移送機構12Bと比べて上下方向の長さが大きくなっている。また、第1移送機構12Aでは、第1スプロケット41と第2スプロケット42との間に、上下方向の比較的大きな隙間が形成されている。そのため、突出部17の左側においては、第1スプロケット41と第2スプロケット42との間に空きスペースが形成されている。このスペースに、モータ22Bのハウジングが配置される。
【0050】
これにより、ロボットハンド5において、第1移送機構12Aのモータ22A及び第2移送機構12Bのモータ22Bの配置スペースを確保して、第1移送機構12A及び第2移送機構12Bのそれぞれを効率良く配置することができる。従って、ロボットハンド5のコンパクト化を実現できる。
【0051】
また、ロボットシステム1は、ロボットハンド5からワークWを受けることができる装置を更に備えている。本実施形態では、この装置として、
図3等に示す搬送装置50が備えられている。搬送装置50は、搬送コンベア52と、シュータ53と、を有している。なお、搬送コンベア52に代えて、無人搬送車又は搬送ロボットが用いられても良い。
【0052】
詳細は後述するが、ロボットハンド5は、ワークWの搬送後、当該ワークWをシュータ53に投入する。シュータ53は、ワークWを収納する収納部(本実施形態では、箱体48)の近傍に配置されている。シュータ53に投入されたワークWは、搬送コンベア52に移載される。搬送コンベア52は、ワークWを所定の搬送位置まで搬送する。
【0053】
このような構成において、例えば、制御装置3がロボット2(ロボットハンド5を含む)の動作を制御して、箱体48内に乱雑に収容されたワークWのピッキングを行う場合、制御装置3によりロボット2(ロボットハンド5を含む)の動作の制御が行われる。具体的には、まず、ピッキング対象のワークWに対して、ロボットハンド5が箱体48内に移動する。
【0054】
そして、ロボットハンド5においてチェーン23Aが駆動される。これにより、2つのうち一方の作用部21Aaが、その向きを変えつつ、ピッキング対象のワークWに対応する保持位置P1まで移動する。保持位置P1は、移動軌道25のうち下側の湾曲部25bの範囲内で、ピッキングしようとするワークWの姿勢を考慮して、その都度定められる。保持位置P1は、半円状の湾曲部25bのうち、作用部21Aaをどこに位置させてワークWを保持するかを意味する。従って、保持位置P1の調整は、取付部35の姿勢(言い換えれば、吸着パッド36の向き)の調整を意味する。
【0055】
作用部21Aaは、
図3に示すように、保持位置P1でピッキング対象のワークWを保持する。このとき、残りの作用部21Abは、退避位置P2にある。2つの作用部21Aa,21Abは連動して移動するので、保持位置P1が上述のように一定しないことに伴って、退避位置P2も一定しない。
【0056】
その後、ロボットハンド5が少し上方に退避する。続いて、
図4の白抜き矢印で示すように、退避していた作用部21Abが、退避位置P2から、ピッキング対象の別のワークWに対応する保持位置P1に移動する。湾曲部25bのうちどの位置で作用部21AbがワークWを保持するかに応じて、作用部21Abの姿勢を変更することができる。
【0057】
作用部21Abの移動と同時に、
図4に示すように、ワークWを保持した状態の作用部21Aaが、保持位置P1から退避位置P2まで移動する。この退避位置P2は、下側の湾曲部25bから直線部25aに沿って上方へ離れた位置となっている。上述のように退避位置P2は一定しないが、何れの位置も、作用部21Aaが保持したワークWを、箱体48内のワークWから十分に(接触しない程度に)離すことができる位置となっている。
【0058】
続いて、ロボットハンド5が再び下方に進出して、保持位置P1にある作用部21AbをワークWに近づける。この状態で、
図5に示すように、保持位置P1にある作用部21Abが、別のワークWを保持する。このとき、先にワークWを保持した作用部21Aaは、退避位置P2に移動している。そのため、作用部21Aaによって先に保持されたワークWに邪魔されることなく、作用部21Abが別のワークWを保持することができる。こうして、2つの作用部21AによるワークWの保持が順次行われる。
【0059】
なお、上述のとおり、2つの作用部21Aa,21Abは互いに異なる構成となっている。制御装置3は、ワークWの種類、形状、積まれた状態等に応じて、2つの作用部21Aa,21Abのうち何れを使用してワークWを保持するかを適宜決定する。
【0060】
作用部21Abが別のワークWを保持した後、
図6に示すようにロボットハンド5が移動する。このロボットハンド5の移動と並行して、先にワークWを保持した作用部21Aaが、シュータ53に対応する位置に移動する。そして、
図6に示すように、ロボットハンド5が、作用部21Aaにより保持されていたワークWを、搬送装置50のシュータ53へ投入する。
【0061】
ロボットハンド5がワークWをシュータ53へ投入すると、ワークWは搬送装置50においてシュータ53により案内されて、搬送コンベア52まで運ばれる。ワークWは、搬送コンベア52まで運ばれた後、当該搬送コンベア52により所定の搬送位置まで搬送される。
【0062】
その後、
図7に示すように、ロボットハンド5が更に移動する。これに伴って、作用部21Abが、シュータ53に対応する位置に移動する。そして、
図7に示すように、ロボットハンド5が、作用部21Abにより保持されていたワークWを、搬送装置50のシュータ53へ投入する。投入されたワークWは、先に投入されたワークWと同様に、搬送装置50によって搬送される。なお、作用部21Abの移動のみで当該作用部21Abをシュータ53に対応する位置に移動させることが可能であれば、ロボットハンド5の移動は不要である。
【0063】
以上の動作により、1度に2つのワークWをピッキングして搬送装置50へ移動させることができる。今回の説明では第2移送機構12Bが使用されていないが、第2移送機構12Bを第1移送機構12Aと同様に動作させることで、1度に最大4個のワークWを移送することが可能である。ワークWが積まれている場所とシュータ53との間でロボットハンド5を往復移動させる回数を減らすことができるので、効率的なピッキングを実現することができる。
【0064】
本実施形態の第1移送機構12Aでは、1つのモータ22A及びチェーン23Aにより、作用部21AがワークWを保持するときの姿勢の調整を行うことができ、また、ワークWを保持する位置と退避する位置との間での作用部21Aの移動も行うことができる。なお、第2移送機構12Bにおいても同様である。従って、上述のように効率に優れたピッキングを、簡素な構成で実現することができる。
【0065】
2つの作用部21Aa,21Abの両方が同時にワークWを保持する状態とせずに、何れか一方だけがワークWを保持する度に搬送装置50のシュータ53へ投入することもできる。第1移送機構12Aが1回で1つのワークWを移送するか、2つのワークWを移送するかは、状況等に応じて任意に選択することができる。
【0066】
チェーン23Aには、
図3に示すように、ガイド部材55が設けられている。なお、
図2においてガイド部材55は省略されている。ガイド部材55は、チェーン23Aの内周側に配置され、移動軌道25のうち少なくとも退避位置P2を含む直線部25aに沿うように延びている。ガイド部材55は、チェーン23Aに接触して、当該チェーン23Aを案内することができる。
【0067】
よって、ワークWを保持した一方の作用部21Aaがチェーン23Aの循環により退避位置P2に移動したとき、当該ワークWに掛かる重力等の影響によりチェーン23Aが内周側へ撓むように変形しようとしても、ガイド部材55によりチェーン23Aの変形を阻止することができる。従って、保持したワークWの位置を安定させるとともに、チェーン23Aの循環を円滑にすることができる。
【0068】
また、本実施形態では、第1移送機構12Aと第2移送機構12Bとは、互いに異なる構成の作用部を備えている。即ち、第2移送機構12Bは、前述のように2つ備えられており、図略の一方の作用部と、
図2に示す他方の作用部21Bbと、を有している。
【0069】
前述のとおり、第1移送機構12Aの他方の作用部21Abは、2つの吸着パッド36を備えている。第2移送機構12Bの他方の作用部21Bbは、1つの吸着パッド36を備えている。つまり、両者は吸着パッドの数が異なるように構成されている。
【0070】
しかも、第2移送機構12Bの他方の作用部21Bbは、ピッキング対象のワークWに対して、第1移送機構12Aの他方の作用部21Abにおける各吸着パッド36よりも大きな接触面積を有するように構成されている。
【0071】
このような構成により、ワークWのピッキング作業において、制御装置3は、ワークWの種類又は形状等に応じて、2つの吸着パッド36を有する第1移送機構12Aの他方の作用部21Ab、及び1つの吸着パッド36を有する第2移送機構12Bの他方の作用部21Bbのうち、使用する作用部を選択することができる。
【0072】
従って、2つの吸着パッド36を有する第1移送機構12Aの作用部21A、及び1つの吸着パッド36を有する第2移送機構12Bの作用部21Bのうち、ピッキング対象のワークWに対し適切な作用部を用いて、ピッキングを行うことが可能となる。
【0073】
また、本実施形態では、他方の作用部21AbがワークWに作用する場合、2つの吸着パッド36を機能させて、ワークWを良好に保持することができる。よって、他方の作用部21Abと同じ構成の作用部を退避位置P2に移動させるように構成した場合には、退避位置P2におけるワークWの保持に関し安定性を向上させることができる。
【0074】
以上に説明したように、本実施形態のロボットハンド5は、ロボット2に搭載される。ロボットハンド5は、移送機構12として、第1移送機構12Aを備える。第1移送機構12Aは、ワークWを保持し、保持したワークWを移送する。第1移送機構12Aは、作用部21Aと、モータ22Aと、チェーン23Aと、を有する。作用部21Aは、移動軌道25に沿って移動し、ワークWに対して保持又は保持解除を行うように作用する。モータ22Aは、作用部21Aを移動軌道25に沿って移動させるための駆動力を発生させる。チェーン23Aは、移動軌道25に対応する循環軌道に沿って循環可能なループ状の部材であり、モータ22Aが発生させた駆動力により循環することで作用部21Aを移動させる。
【0075】
これにより、特に、複数のワークWが箱体48内に乱雑に配置された状態において、作用部21Aが退避位置にあるとき、当該作用部21Aが保持したワークWが他のワークWと干渉することを回避することができる。特に、本実施形態では、ロボットハンド5が2つの作用部21Aa,21Abを備えるので、ピッキング作業を連続的に効率良く行うことができる。
【0076】
本実施形態のロボットハンド5において、移動軌道25は、湾曲部25bを有する。湾曲部25bを作用部21Aが移動するのに伴って、作用部21Aの向きが変化する。
【0077】
これにより、不規則な姿勢のワークWを、作用部21Aの向きを調整することで円滑に保持することができる。作用部21Aの向きを変化させるために作用部21A及びロボットハンド5自体を大きく動かす必要がないので、箱体48との干渉が起こりにくくなる。
【0078】
また、本実施形態のロボットハンド5において、作用部21Aは複数(2つ)備えられている。即ち、2つの作用部21Aとして、一方の作用部21Aaと、他方の作用部21Bbと、が備えられている。
【0079】
これにより、ワークWのピッキング作業において、ロボットハンド5全体を大きく移動させることなく、複数の作用部21Aを用いてワークWのピッキングを連続的に行うことができる。例えば、複数のワークWが箱体48内に乱雑に配置された状態であっても、一方の作用部21Aaにより保持されたワークWを、他方の作用部21Abが別のワークWを保持しようとする際に邪魔にならない位置まで移動させることができる。従って、ピッキング作業時の作業効率を高めることができる。
【0080】
また、本実施形態のロボットハンド5において、複数の作用部21Aのうち、少なくとも1つの作用部21Aは、他の作用部21Aと異なる構成である。即ち、複数の作用部21Aである一方の作用部21Aaと他方の作用部21Abとが互いに異なっている。
【0081】
これにより、ワークWに対して、その種類及び/又は形状等に応じて適切な作用部21Aを使用することができる。従って、1つの移送機構12で異なるワークWに対応することができ、汎用性を向上させることができる。
【0082】
また、本実施形態のロボットハンド5において、複数の作用部21Aは、それぞれ、前記ワークWを保持するための吸着パッド36を有する。少なくとも1つの作用部21Aは、吸着パッド36に関して、他の作用部21Aとは異なる構成を有する。
【0083】
これにより、様々な状況に柔軟に対応しながら、ワークWのピッキング作業を行うことができる。
【0084】
また、本実施形態のロボットハンド5において、移動軌道25は直線部25aを有する。チェーン23Aの内周側に、ガイド部材55が設けられている。ガイド部材55は、直線部25aに沿うように延びてチェーン23Aを案内する。
【0085】
これにより、ワークWを保持した作用部21Aが直線部25aに位置する状態で、当該ワークWに掛かる重力等の影響によりチェーン23Aが撓むように変形することを、ガイド部材55により防止することができる。
【0086】
また、本実施形態のロボットハンド5において、移送機構12が複数備えられている。即ち、移送機構12として、第1移送機構12A及び移送機構12Bが備えられている。
【0087】
これにより、ロボットハンド5全体を大きく移動させることなく、複数の移送機構12のそれぞれの作用部21A,21Bを用いてワークWのピッキングを連続的に行うことができる。例えば、複数のワークWが箱体48内に乱雑に配置された状態であっても、一の移送機構12により保持されたワークWを、他の移送機構12が別のワークWを保持しようとする際に邪魔にならない位置まで移動させることができる。従って、ピッキング作業時の作業効率を高めることができる。
【0088】
また、本実施形態のロボットハンド5において、複数の移送機構12は、互いに異なる構成の作用部を有する。即ち、第1移送機構12Aが2つの吸着パッド36を含む他方の作用部21Abを有し、第2移送機構12Bが1つの吸着パッド36を含む他方の作用部21Bbを有している。
【0089】
これにより、ワークWに対して、その種類及び/又は形状等に応じて適切な移送機構12の作用部を使用することができる。従って、1つのロボットハンド5で異なる構成のワークWに対応可能となり、汎用性を向上させることができる。
【0090】
また、本実施形態のロボットハンド5は、支持部11を備える。支持部11は、ロボット2のフランジ7に固定可能である。ロボットハンド5は、2つの移送機構12、具体的には、第1移送機構12A及び第2移送機構12Bを備える。第1移送機構12A及び第2移送機構12Bは、それぞれ、支持部11に支持されている。第1移送機構12Aのチェーン23Aと、第2移送機構12Bのチェーン23Bとが、支持部11を挟んで互いに反対側に配置されている。第1移送機構12Aのモータ22Aのハウジングは、支持部11に対して第2移送機構12Bのチェーン23B側に配置される。第2移送機構12Bのモータ22Bのハウジングは、支持部11に対して第1移送機構12Aのチェーン23A側に配置されている。
【0091】
これにより、ロボットハンド5において、2つの移送機構12を効率良く配置することができる。従って、ロボットハンド5をコンパクトに構成することができる。
【0092】
また、本実施形態のロボットハンド5において、2つの移送機構12A,12Bにおいて、チェーン23A,23Bの長さが異なる。本実施形態では、第1移送機構12Aのチェーン23Aが、第2移送機構12Bのチェーン23Bよりも長い。
【0093】
これにより、独立して駆動される複数の移送機構12A,12Bを、全体としてコンパクトに配置することができる。
【0094】
また、本実施形態のロボット2は、ロボットハンド5を備える。
【0095】
これにより、複数のワークWが箱体48内に乱雑に配置された状態において、作用部21Aの移動時に、当該作用部21Aが保持したワークWが他のワークWと干渉することを回避可能なロボット2を実現することができる。従って、このロボット2を用いて、ピッキング作業を連続的に効率良く行うことができる。
【0096】
また、本実施形態のロボットシステム1は、ロボットハンド5を備えるロボット2と、ロボット2の動作を制御する制御装置3と、を備える。
【0097】
これにより、複数のワークWが箱体48内に乱雑に配置された状態において、作用部21Aの移動時に、当該作用部21Aが保持したワークWが他のワークWと干渉することを回避可能なロボットシステム1を実現することができる。従って、このロボットシステム1を用いて、ピッキング作業を連続的に効率良く行うことができる。
【0098】
また、本実施形態のロボットシステム1は、ワークWをロボットハンド5から受けることができる搬送装置50を備える。制御装置3は、ロボットハンド5を動作させて、当該ロボットハンド5に保持されているワークWを搬送装置50に投入することができるように構成されている。
【0099】
従来では、ロボット(ロボットハンド)によりワークを搬送装置に移動させるとき、ワークを搬送装置に置く動作をロボットに行わせる必要があった。しかし、本実施形態のロボットシステム1によれば、ワークWを搬送装置50に投入する動作をロボット2(ロボットハンド5)に行わせれば良いだけなので、従来のような置く動作を省くことができる。従って、ワークWを速やかに搬送装置50に搬送することができ、ピッキング作業の効率を高めることができる。
【0100】
また、本実施形態のロボットシステム1において、制御装置3は、移動軌道25において、作用部21AaがワークWを保持位置P1で保持し、作用部21Aaが当該ワークWを退避位置P2で搬送装置50に投入するように制御する。移動軌道25において、退避位置P2は保持位置P1とは異なっている。
【0101】
これにより、ワークWの搬送作業を全体として効率的に行うことができる。
【0102】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0103】
ピッキング作業時には、第1移送機構12Aの作用部21A、及び第2移送機構12Bの作用部21Bを用いて(即ち、2つの作用部を用いて)、1つのワークWのピッキングを行うようにしても良い。この場合、1つの作用部のみで移送可能なワークWに比べて大きなワークWを移送することができ、汎用性を向上させることができる。2つの作用部21A,21Bは、例えば、それぞれ同期して動作する吸着パッドとすることもできるし、それぞれに設けられて他の作用部と協働してワークWを挟むように動作する爪状部材とすることができる。
【0104】
上記の実施形態では、ロボットハンド5により移送された後に投入されるワークWを受けることができる装置は、搬送コンベア52及びシュータ53を備える搬送装置50としているが、これに代えて、箱体又はストッカ等の収納装置としても良い。
【0105】
上記の実施形態では、ワークWのピッキング作業時に第1移送機構12Aの作用部21A及び第2移送機構12Bの作用部21Bのうち何れの作用部を用いるかについては、制御装置3が自動的に選択している。しかし、この選択が作業者等の指示に応じて行われても良い。
【0106】
上記の実施形態では、第1移送機構12A(第2移送機構12B)に備えられている複数の作用部21A(21B)は互いに異なる構成としているが、一部又は全部を同じ構成としても良い。
【0107】
移動軌道25は、長円状に代えて、例えば3角形状等の多角形状とすることができる。
【0108】
上述の実施形態では、例えば第1移送機構12Aにおいて、作用部21AがワークWを保持していない状態では、作用部21Aは移動軌道25に沿ってほぼ1周することができる。即ち、移動軌道25はループ状である。ただし、移動軌道25は、ループ状に代えて、非ループ状に形成されても良い。非ループ状の例としては、例えば、U字状、V字状等を挙げることができる。
【0109】
循環部材としては、チェーンに代えて、例えばベルト又はロープを用いることもできる。この場合、ベルト又はロープに応じたプーリがスプロケットの代わりに用いられる。
【0110】
ロボットハンド5は、ロボット2に限定されず、他のロボットにも適用することができる。
【0111】
上述の実施形態では、ロボットハンド5はシュータ53から分離している。しかし、シュータがロボットハンド5に接続されても良い。この場合、シュータは、変形可能な中空状の部材(例えば、ジャバラ状のホース)で構成することができる。シュータの内部には、ワークWの移動経路が構成される。ロボットハンド5の移動に応じてシュータは適宜変形し、ロボットハンド5と搬送コンベア52との間が移動経路で接続された状態を維持する。シュータに投入されたワークWは、シュータの床面に形成される下り傾斜により自重で滑って移動したり、適宜の手段によりシュータ内に発生する吸引空気流により移動したりして、搬送コンベア52に至る。これにより、ロボットハンド5自体を移動させることなくワークWをシュータに投入することができ、ピッキング作業を速やかにかつ連続的に行うことが可能になる。
【0112】
上述の教示を考慮すれば、本発明が多くの変更形態及び変形形態をとり得ることは明らかである。従って、本発明が、添付の特許請求の範囲内において、本明細書に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0113】
1 ロボットシステム
2 ロボット
5 ロボットハンド
7 フランジ(取付部)
11 支持部
12 移送機構
12A 第1移送機構
12B 第2移送機構
21A 作用部
21B 作用部
22A モータ(駆動部)
22B モータ(駆動部)
23A チェーン(循環部材)
23B チェーン(循環部材)
25 移動軌道
36 吸着パッド(保持部)
50 搬送装置
W ワーク(物品)