(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】電気装置
(51)【国際特許分類】
H05K 5/02 20060101AFI20240202BHJP
H05K 7/14 20060101ALI20240202BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
H05K5/02 L
H05K7/14 D
B60R16/02 610A
(21)【出願番号】P 2020120903
(22)【出願日】2020-07-14
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆之介
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 一人
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-075641(JP,A)
【文献】特開平07-231190(JP,A)
【文献】特開2014-203896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00- 5/06
H05K 7/14
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気装置であって、
回路基板と、
前記回路基板を収容したケースと、
前記回路基板の少なくとも一部を覆う第1カバーと、
前記第1カバーと前記ケースとの間に挟まれた弾性部材と、を備え
、
前記第1カバーは、前記弾性部材を囲む第1壁部を備え、
前記第1カバーと前記回路基板とは固定されており、
前記弾性部材は、前記回路基板および前記ケースによって圧縮されており、
前記弾性部材は、摩耗により塵埃が生じる、電気装置。
【請求項2】
前記弾性部材における前記ケース側の面を少なくとも覆う第2カバーをさらに備え、
前記第2カバーは、前記弾性部材を囲む第2壁部を備える請求項
1に記載の電気装置。
【請求項3】
前記第1壁部および前記第2壁部の一方は、他方よりも前記弾性部材に近い側に設けられている、請求項
2に記載の電気装置。
【請求項4】
前記第1壁部と前記第2壁部とは、一部の側面どうしが対向している、請求項
3に記載の電気装置。
【請求項5】
前記弾性部材は、前記回路基板の上方に設けられている、請求項1から
4の何れか1項に記載の電気装置。
【請求項6】
前記弾性部材が無い場合に前記回路基板の振動が最大となる位置に前記弾性部材が少なくとも設けられている、請求項1から
5のいずれか1項に記載の電気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気装置に関し、具体的には、該電気装置の振動抑制構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気装置は、外部からの粉塵などの侵入による不具合を防止するために、回路基板をケースに収容することが一般的である。例えば、車載用電気装置のように、ケースが外力によって振動する場合、回路基板にも振動が伝播し、回路基板の不具合の原因になる。そのため、回路基板の振動を抑制するために、回路基板とケースとの間に、例えばスポンジのような弾性部材を設けることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術は、経年の振動によって弾性部材が摩耗し、ケース内部で塵埃が発生する可能性が考えられる。そして、当該塵埃が回路基板に付着することにより、回路基板に何らかの不具合が発生する可能性が考えられる。
【0005】
そこで、本発明の一態様は、回路基板の振動を抑制でき、かつ、ケース内の塵埃が回路基板に付着することを防止できる電気装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る電気装置は、回路基板と、前記回路基板を収容したケースと、前記回路基板の少なくとも一部を覆う第1カバーと、前記第1カバーと前記ケースとの間に挟まれた弾性部材と、を備える。
【0007】
上記の構成によれば、回路基板とケースとの間に弾性部材が挟まれているので、前記回路基板の振動を抑制できる。また、前記回路基板の少なくとも一部を覆う第1カバーを前記回路基板と前記弾性部材との間に設けている。これにより、前記弾性部材における前記回路基板側の面の摩耗により生じた塵埃は、前記第1カバーが存在することにより、前記回路基板に付着することを防止できる。
【0008】
本態様に係る電気装置では、前記第1カバーは、前記弾性部材を囲む第1壁部を備えてもよい。この場合、前記第1壁部により前記塵埃が周囲に拡散することを防止できる。その結果、当該塵埃の拡散により前記ケース内の部品に不具合が発生することを防止できる。
【0009】
本態様に係る電気装置は、前記弾性部材における前記ケース側の面を少なくとも覆う第2カバーをさらに備え、前記第2カバーは、前記弾性部材を囲む第2壁部を備えてもよい。この場合、前記弾性部材の前記ケース側の面の摩耗により生じた塵埃は、前記第2壁部により周囲に拡散することを防止できる。その結果、当該塵埃の拡散により前記ケース内の部品に不具合が発生することを防止できる。
【0010】
本態様に係る電気装置では、前記第1壁部および前記第2壁部の一方は、他方よりも前記弾性部材に近い側に設けられていてもよい。この場合、振動により前記弾性部材が圧縮されても、前記第1壁部と前記第2壁部とが衝突することを回避することができる。
【0011】
本態様に係る電気装置では、前記第1壁部と前記第2壁部とは、一部の側面どうしが対向していてもよい。この場合、前記第1壁部と前記第2壁部とは一部が重なり合うことになる。その結果、前記弾性部材からの塵埃が周囲に拡散することを確実に防止できる。
【0012】
本態様に係る電気装置では、前記弾性部材は、前記回路基板の上方に設けられてもよい。この場合、前記弾性部材からの塵埃は、前記第1カバー上に落下するので、前記回路基板に付着することを防止できる。また、前記第1壁部よりも前記第2壁部の方が前記弾性部材に近い側に設けられている場合、前記弾性部材の前記ケース側の面(上面)から発生した塵埃は、前記第1カバー上に確実に落下させることができる。これにより、前記塵埃が前記回路基板に付着することを確実に防止できる。
【0013】
本態様に係る電気装置では、前記弾性部材が無い場合に前記回路基板の振動が最大となる位置に前記弾性部材が少なくとも設けられてもよい。この場合、前記回路基板の振動を効率的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、回路基板の振動を抑制でき、かつ、ケース内の塵埃が回路基板に付着することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電気装置を示す断面図である。
【
図3】本発明の他の実施形態に係る電気装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各実施形態に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付記し、適宜その説明を省略する。
【0017】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について、
図1・
図2を参照して説明する。
【0018】
(電気装置1の構成)
図1は、本実施形態に係る電気装置1を示す断面図である。本実施形態の電気装置1は、例えば、電動トラクタ、バックホーなどの作業機に搭載される車載用電気装置に好適である。
【0019】
図1に示すように、電気装置1は、ケース底部11a(ケース)、ケース蓋部11b(ケース)、基板取付板12、回路基板13、下カバー21(第1カバー)、弾性部材22、および上カバー23(第2カバー)を備える。基板取付板12と、回路基板13と、下カバー21と、弾性部材22と、上カバー23とは、ケース底部11aおよびケース蓋部11bを備えるケースに収容される。
【0020】
電気装置1は、任意の回路基板13の振動を抑制する構造を有しており、このような回路基板13の例としては、車載用電力変換装置が挙げられる。回路基板13の種類は特にこれに限定されず、任意の回路基板13であってよい。
【0021】
ケース底部11aは、例えば金属で形成され、一面が開放された箱体の底部であってもよい。ケース底部11aには、ボス111が設けられ、該ボス111に基板取付板12をネジにて取り付けできるようになっている。
【0022】
基板取付板12は、回路基板13が取り付けられるプレートであり、ケース底部11aに取り付けられる。基板取付板12は、回路基板13を取り付けるためのボス121を備える。なお、ボス121に限定されず、単なる取付穴が開いており、回路基板13を取り付けできるようになっていてもよい。また、基板取付板12を省略して、回路基板13がケース底部11aに取り付けられてもよい。
【0023】
回路基板13は、電子回路用の配線および部品が施されたプリント基板である。回路基板13は、基板取付板12のボス121にネジにて取り付けられるようになっている。なお、回路基板13はプレス加工により基板取付板12に取り付けられてよい。
【0024】
下カバー21は、回路基板13に両面テープなどで取り付けられる、樹脂などの絶縁性部材であり、底部211および第1壁部212を備える。底部211は、回路基板13の少なくとも一部を覆う。第1壁部212は、底部211の縁部に垂直方向に設けられている。これにより、第1壁部212は、弾性部材22を囲むように設けられることになる。なお、底部211の形状は丸型、四角型など様々な形をとることができ、限定されない。
【0025】
弾性部材22は、下カバー21または上カバー23に対し取り付けられる絶縁性弾性体であり、例えばゴム材などであってもよい。また、電気装置1を組み立てた
図1の状態において、弾性部材22は、上カバー23またはケース蓋部11bと下カバー21とによって圧縮されている。
【0026】
上カバー23は、ケース蓋部11bに両面テープなどで取り付けられる、樹脂などの絶縁性部材であり、頂部231および第2壁部232を備える。頂部231は、弾性部材22の上面を少なくとも覆う。第2壁部232は、頂部231の縁部に垂直方向に設けられている。これにより、第2壁部232は、弾性部材22の周囲に設けられることになる。上カバー23は、下カバー21の上方に設けられる。なお、頂部231の形状は丸型、四角型など様々な形をとることができ、限定されない。
【0027】
また、第2壁部232は、第1壁部212よりも内側(弾性部材22に近い側)である。また、電気装置1を組み立てた
図1の状態において、第2壁部232および第1壁部212は、一部が重なり合っている。換言すれば、第2壁部232と第1壁部212とは、一部の側面どうしが対向している。
【0028】
(電気装置1の作用効果)
上記構成の電気装置1において、ケース底部11aおよびケース蓋部11bを備えるケースに上下方向の振動が外部から加わると、該ケースに収容された回路基板13も上下方向に振動する。このとき、回路基板13およびケース蓋部11bの間に弾性部材22が挟まれているので、弾性部材22が緩衝材として機能し、回路基板13の振動を抑制できる。
【0029】
また、回路基板13の少なくとも一部を覆う下カバー21を回路基板13と弾性部材22との間に設けている。これにより、弾性部材22の下面(回路基板13側の面)の摩耗により生じた塵埃は、下カバー21が存在することにより、回路基板13に付着することを防止できる。
【0030】
また、弾性部材22を囲む第1壁部212により上記塵埃が周囲に拡散することを防止できる。その結果、当該塵埃の拡散により上記ケース内の部品に不具合が発生することを防止できる。また、弾性部材22の上面(ケース蓋部11b側の面)の摩耗により生じた塵埃は、第2壁部232により周囲に拡散することを防止できる。その結果、当該塵埃の拡散により上記ケース内の部品に不具合が発生することを防止できる。
【0031】
なお、電気装置1に左右振動が加わると、第1壁部212および第2壁部232が弾性部材22と擦れあい、塵埃を発生させる場合が考えられる。しかしながら、当該塵埃は、第1壁部212および第2壁部232により周囲に拡散することを防止できる。
【0032】
また、第1壁部212よりも第2壁部232の方が内側(弾性部材22に近い側)に設けられているので、振動により弾性部材22が圧縮されても、第1壁部212と第2壁部232とが衝突することを回避することができる。また、第1壁部212と第2壁部232とは、一部が重なり合っているので、弾性部材22からの塵埃が周囲に拡散することを確実に防止できる。
【0033】
また、弾性部材22は、回路基板13の上方に設けられているので、弾性部材22からの塵埃は、下カバー21上に落下する。従って、上記塵埃が回路基板13に付着することを防止できる。また、第1壁部212よりも第2壁部232の方が内側に設けられているので、弾性部材22の上面から発生した塵埃は、下カバー21上に確実に落下させることができる。これにより、上記塵埃が回路基板13に付着することを確実に防止できる。
【0034】
(電気装置1の組立方法)
図2は、本実施形態に係る電気装置1を示す組立図である。
【0035】
まず、図示しないケース底部11aに、基板取付板12を固定する。固定にあたっては、ケース底部11aのボスに基板取付板12をネジにて締結すればよい。次に、基板取付板12上に、回路基板13を固定する。固定にあたっては、基板取付板12のボスに回路基板13をネジにて締結すればよい。なお、基板取付板12上に、回路基板13を固定した後、基板取付板12をケース底部11aに固定してもよい。
【0036】
次に、回路基板13上に下カバー21を両面テープまたは接着剤により固定する。また、ケース蓋部11bに上カバー23を両面テープまたは接着剤により固定する。このとき、上カバー23は、ケース底部11aにケース蓋部11bを重ねたときに、下カバー21および弾性部材22との隙間に勘合するように位置が調整される。
【0037】
次に、弾性部材22を下カバー21に対し、両面テープまたは接着剤により固定する。次に、ケース底部11aにケース蓋部11bを重ねる。このとき、上カバー23は、下カバー21および弾性部材22との隙間に勘合する。そして、ケース蓋部11bをケース底部11aに固定する。このとき、弾性部材22は底部211および頂部231を介して、回路基板13およびケース蓋部11bによって圧縮される。
【0038】
なお、別の組立方法として、弾性部材22を下カバー21に固定する代わりに、上カバー23に固定してもよい。この場合、上カバー23は、ケース底部11aにケース蓋部11bを重ねたときに、下カバー21に勘合するように位置が調整されればよく、組立てが容易となる。
【0039】
また、弾性部材22は、
図1に示すように1個であってもよいし、
図2に示すように複数個であってもよい。また、弾性部材22が無い場合に回路基板13の振動が最大となる位置(腹の位置)に弾性部材22が少なくとも設けられていてもよい。
もよい。この場合、回路基板13の振動を効率的に抑制することができる。例えば、回路基板13の四隅を基板取付板12に固定している場合では、回路基板13の中央が上記腹の位置に該当する。また、回路基板13の四隅および中央を基板取付板12に固定している場合では、
図2に示す弾性部材22の位置が上記腹の位置に該当する。
【0040】
(付記事項)
なお、下カバー21および上カバー23は、弾性部材22に比べて摩耗し難い材料であることが好ましい。
【0041】
また、電気装置1は、
図1に示す上下方向を逆にして利用してもよいし、
図1に示す上下方向を左右方向にして利用してもよい。この場合でも、弾性部材22から生じる塵埃は第1壁部212および第2壁部232により、周囲に拡散することを防止できる。
【0042】
また、第1壁部212の方が第2壁部232よりも内側(弾性部材22に近い側)に設けられていてもよい。すなわち、第1壁部212および第2壁部232の一方が他方よりも内側(弾性部材22に近い側)に設けられていてもよい。
【0043】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、
図3を参照して説明する。
【0044】
図3は、本実施形態に係る電気装置2を示す断面図である。本実施形態の電気装置2は、
図1・
図2に示す電気装置1に比べて、上カバー23が省略されている点と、下カバー21に代えて下カバー21aが設けられている点とが異なり、その他の構成は同様である。
【0045】
下カバー21aは、回路基板13に両面テープなどで取り付けられる樹脂などの絶縁性部材であり、底部211aおよび第1壁部212aを備える。下カバー21aは、
図1・
図2に示す下カバー21に比べて、第1壁部212aの先端部によって形成される開口部213aが広がっている点が異なり、その他の構成は同様である。
【0046】
上記の構成によると、上カバー23が無くても、弾性部材22の上面および上部側面から生じた塵埃を下カバー21aにて収容することができる。その結果、部品点数を減らすことができる。なお、開口部213aの大きさは、上記塵埃を下カバー21aにて収容できる程度の大きさであればよい。
【0047】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1、2 電気装置
11a ケース底部(ケース)
11b ケース蓋部(ケース)
12 基板取付板
13 回路基板
21、21a 下カバー(第1カバー)
22 弾性部材
23 上カバー(第2カバー)
111、121 ボス
211、211a 底部
212、212a 第1壁部
213a 開口部
231 頂部
232 第2壁部