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特許7430124リサイクル型熱転写システム、再生ポリビニルアルコール系樹脂フィルム、熱転写用加飾フィルム及び転写成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】リサイクル型熱転写システム、再生ポリビニルアルコール系樹脂フィルム、熱転写用加飾フィルム及び転写成形品
(51)【国際特許分類】
   B44C 1/17 20060101AFI20240202BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240202BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20240202BHJP
【FI】
B44C1/17 L
C08J5/18 CEX
C08J7/04 V
C08J7/04 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020140344
(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公開番号】P2022035790
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 正章
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】大久保 正憲
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-228315(JP,A)
【文献】特開2012-071425(JP,A)
【文献】特開2012-071456(JP,A)
【文献】特開2012-144040(JP,A)
【文献】特開2013-006409(JP,A)
【文献】特開2013-047318(JP,A)
【文献】特開2014-077121(JP,A)
【文献】特開2012-139846(JP,A)
【文献】特開2003-181830(JP,A)
【文献】特開平04-152190(JP,A)
【文献】特開2004-136578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 1/16- 1/175
B41M 5/035
B41M 5/26- 5/52
B32B 1/00-43/00
C08J 5/00- 5/02
C08J 5/12- 5/22
C08J 7/04- 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをベースフィルムとする熱転写用加飾フィルムを用いた熱転写において、少なくとも下記(I)~(III)の工程を含むことを特徴とするリサイクル型熱転写システム。
(I)熱転写後のベースフィルムをリサイクルして再生ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを製造する工程
(II)上記再生ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをベースフィルムとする熱転写用加飾フィルムを製造する工程
(III)上記熱転写用加飾フィルムを用いて熱転写する工程
【請求項2】
上記再生ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを製造する工程(I)が、転写後のベースフィルムを水に溶解させ、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム成分とフィルム成分以外の非水溶性成分とを分離させる工程を含むことを特徴とする請求項1記載のリサイクル型熱転写システム。
【請求項3】
上記熱転写用加飾フィルムが、上記再生ポリビニルアルコール系フィルム上に、硬化性樹脂層、印刷層がこの順で積層され、さらに印刷層上に接着層または粘着層が積層された転写層を有することを特徴とする、請求項1または2記載のリサイクル型熱転写システム。
【請求項4】
上記熱転写用加飾フィルムが、上記再生ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの上に、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む活性エネルギー線硬化樹脂組成物、またはウレタン結合を骨格に含む熱硬化性樹脂組成物から形成される硬化性樹脂層を有することを特徴とする請求項1または2記載の熱転写システム
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の熱転写システムで転写されたことを特徴とする転写成形品の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写システムに関するものであり、詳しくはポリビニルアルコール系樹脂フィルムをベースフィルムとする加飾フィルムを用いた熱転写法において、転写後に不要となるベースフィルム(ポリビニルアルコール系樹脂フィルム)を回収し、再利用して新たにポリビニルアルコール系樹脂フィルムを製造し、新たに製造したポリビニルアルコール系樹脂フィルムをベースフィルムに使用した加飾フィルムを用いて熱転写を行う、リサイクル型の熱転写システムに関するものである。
また、熱転写後に回収したベースフィルムをリサイクルして得られる再生ポリビニルアルコール系樹脂フィルム、再生ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをベースフィルムとする熱転写用加飾フィルム及び熱転写用加飾フィルムで転写された転写成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱転写用加飾フィルムのベースフィルムとしては、従来より、加工適性に優れる点からポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系樹脂フィルムが用いられている。また、離型性の良さを活かしてポリビニルアルコール系フィルムも熱転写用のベースフィルムとして用いられるようになっており、例えば、特許文献1では、離型性に優れ、かつ転写後の被転写体の転写表面の美観に優れるポリビニルアルコール系樹脂フィルムをベースフィルムとした熱転写用積層体が開示されている。
【0003】
これらの熱転写用加飾フィルムに用いられているベースフィルムは、被転写体に加飾フィルムを圧着して転写層を転写した後、剥離除去され、廃棄されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-77121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、環境への意識の高まりから循環型モノづくりが求められている。しかし、熱転写後に剥離除去されたベースフィルムにはハードコート層や印刷層、接着層または粘着層等を含む転写層が一部残存しており、これらを効率的に除去することが困難であるため、実質的にはベースフィルムを再利用することは難しかった。
【0006】
そこで、本発明ではこのような背景下において、比較的簡便に再生可能で熱転写特性にも優れたベースフィルムを用いた、リサイクル型熱転写システムを構築することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
しかるに、本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、ポリビニルアルコール系樹脂をベースフィルムとする熱転写用加飾フィルムにおいて、転写後のベースフィルムを回収し、これを水に溶解することで、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム成分と硬化性樹脂等の非水溶性成分とを効率よく分離することができ、再び製膜することで、熱転写特性に優れた再生ポリビニルアルコール系樹脂フィルムが得られることを見出した。そして、この再生ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを熱転写用加飾フィルムのベースフィルムとして用いることで、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをベースフィルムとする熱転写用加飾フィルムを用いた熱転写において、少なくとも下記(I)~(III)の工程を含むリサイクル型熱転写システムを第1の要旨とする。
(I)熱転写後のベースフィルムをリサイクルして再生ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを製造する工程
(II)上記再生ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをベースフィルムとする熱転写用加飾フィルムを製造する工程
(III)上記熱転写用加飾フィルムを用いて熱転写する工程
【0009】
また、本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをベースフィルムとする熱転写用加飾フィルムの転写後のベースフィルムを用いて得られる再生ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを第2の要旨とする。
【0010】
更に、本発明は、上記第2の要旨の再生ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの上に、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む活性エネルギー線硬化樹脂組成物、またはウレタン結合を骨格に含む熱硬化性樹脂組成物から形成される硬化性樹脂層を有する熱転写用加飾フィルムを第3の要旨とし、上記第3の要旨の熱転写用加飾フィルムで転写された転写成形品を第4の要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをベースフィルムとする熱転写用加飾フィルムを用いた熱転写において、少なくとも上記(I)~(III)の工程を含むリサイクル型熱転写システムである。このリサイクル型熱転写システムは、熱転写法において廃棄物を減らし環境に配慮したシステムとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
【0013】
本発明が対象とする熱転写用加飾フィルムとは、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と称する)系樹脂フィルム(ベースフィルム)上に、硬化性樹脂層、印刷層、接着層または粘着層がこの順で積層された転写層を有するものである。上記PVA系樹脂は、熱可塑性樹脂でありながら水溶性を有するものであり、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の疎水性フィルムとは、諸物性等が大きく異なるものである。
【0014】
上記熱転写用加飾フィルムは、通常、上記のような印刷層を含む転写層を有する熱転写加飾フィルムの粘着層または接着層と被転写体を加熱圧着することにより被転写体に意匠の転写を行い、その後、PVA系樹脂フィルムを被転写体から剥離させて用いられる。
【0015】
上記被転写体から剥離されたPVA系樹脂フィルムには、通常、被転写体に転写されていない硬化性樹脂層、印刷層、粘着層または接着剤層等が残存するものである。本発明は、この被転写体から剥離された、PVA系樹脂フィルムのリサイクルを行う。以下、本発明の方法について詳述する。
【0016】
本発明のリサイクル型熱転写システムは、少なくとも下記の(I)~(III)の工程を含むものである。
(I)熱転写後のベースフィルムをリサイクルして再生PVA系樹脂フィルムを製造する工程
(II)上記再生PVA系樹脂フィルムをベースフィルムとする熱転写用加飾フィルムを製造する工程
(III)上記熱転写用加飾フィルムを用いて熱転写する工程
以下、各工程について詳述する。
【0017】
<(I)熱転写後のベースフィルムをリサイクルして再生PVA系樹脂フィルムを製造する工程>
本発明の方法では、まず転写後の熱転写用加飾フィルムからベースフィルムを回収・再利用して、新たなPVA系樹脂フィルムを製造する。
すなわち、被転写体に転写された後に残るベースフィルムは、通常、廃棄されるが、本発明においては、廃棄されるベースフィルムを回収し、新たなベースフィルムを製造するための原料として用いるものである。
【0018】
上記回収するベースフィルムの形状は、特に限定されず、例えば、ロール状、枚葉状等であってもよい。なかでも回収効率の点からロール状が好ましい。
【0019】
上記回収したベースフィルムは、水に溶解させ、PVA系樹脂フィルム成分とフィルム成分以外の非水溶性成分とを分離させることが好ましい。
上述のとおり回収した転写後のベースフィルには、通常、被転写体に転写されていない硬化性樹脂層、印刷層、粘着層または接着剤層等が残存している。これらは、非水溶性であり、一方PVA系樹脂は水溶性である。そのため、回収ベースフィルムを水で溶解させることにより、PVA系樹脂等のフィルム成分を含む水層と、硬化性樹脂等を含む非水溶性成分とに分離させることができる。
【0020】
上記ベースフィルムを水に溶解させる溶解方法は、特に制限はなく、例えば、ベースフィルムを直接、または、ベースフィルムを粉砕した粉砕品を撹拌機付きの溶解槽の水中に供給し、溶解させればよい。なかでも、溶解性の点から、ベースフィルムを粉砕した粉砕品を用いることが好ましい。
【0021】
上記粉砕品の調製には、例えば、ロータリーカッター式粉砕機、ハンマー式粉砕機、ボール式粉砕機等の公知の粉砕機を用いることができる。
【0022】
上記PVA系フィルムを水に溶解させる方法としては、例えば、常圧熱水溶解法、高圧熱水溶解法等が挙げられる。
【0023】
かかる熱水溶解方法での水温は通常、50~150℃、好ましくは80~120℃である。上記水温が低すぎるとベースフィルムの溶解性が低くなる傾向があり、高すぎるとベースフィルムが分解しやすくなる傾向がある。
【0024】
また溶解時間は通常、0.5~50時間、好ましくは1~25時間、更に好ましくは、1.5~5時間である。かかる溶解時間が短すぎると未溶解分が残る傾向があり、長すぎると経済的に好ましくない傾向がある。
【0025】
上記のようにして得られる回収PVA系樹脂フィルム成分を含む水溶液の固形分濃度としては、その種類や溶解装置等によって多少異なるが、通常、1~40重量%であり、好ましくは3~35重量%、より好ましくは5~30重量%の範囲である。かかる濃度が低すぎると工業的に非効率的になる傾向があり、高すぎると溶解性が低くなり溶解工程の効率が低下する傾向がある。
【0026】
また、上記回収PVA系樹脂フィルム成分を含む水溶液には、PVA系樹脂等のフィルム成分と硬化性樹脂等の非水溶性成分とをより分離させるために、水と相溶しない有機溶剤、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族類等の有機溶剤を添加してもよい。
【0027】
上記で調製した回収PVA系樹脂フィルム成分を含む水溶液は、その後、硬化性樹脂、印刷インキ、粘着剤または接着剤成分等を含むPVA系樹脂フィルム成分以外の非水溶性成分を除去し、非水溶性成分を除去した回収PVA系樹脂フィルム成分を含む水溶液(以下、「非水溶性成分除去PVA水溶液」と称する)を調製する。
【0028】
上記非水溶性成分の除去には、公知の方法を用いることができ、例えば、デカンテーション、遠心分離、濾過等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。なかでも非水溶性成分は水に溶解することなく溶液中で沈降するものが多いため、不溶物が無い上澄み液を上部から採取するデカンテーションが好ましい。
また、回収PVA系樹脂フィルム成分を含む水溶液や非水溶性成分除去PVA水溶液は、不溶解物や異物等を除去するため、適宜ストレーナーや樹脂あるいはディスクフィルター等を通過させることが好ましい。
【0029】
上記非水溶性成分除去PVA水溶液は、そのまま製膜に用いて再生PVA系樹脂フィルムとしてもよいが、品質の点から、上記非水溶性成分除去PVA水溶液にバージンのPVA系樹脂を配合して製膜することが好ましい。
【0030】
上記バージンのPVA系樹脂としては、未変性PVA樹脂を用いることが好ましいが、部分的に変性された変性PVA系樹脂を用いてもよい。変性PVA系樹脂の変性率は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に限定されないが、通常10モル%以下、好ましくは7モル%以下である。
【0031】
上記バージンのPVA系樹脂の平均ケン化度は、通常70モル%以上、例えば、100℃以上の高温における加工適正を重視する用途では平均ケン化度が70~90モル%であることが好ましく、一方で、耐熱性を重視する用途では平均ケン化度が90モル%以上であることが好ましい。ただし、加工条件や目的によって平均ケン化度は70モル%以上の範囲内から適宜選択される。なお、PVA系樹脂の平均ケン化度が低すぎるとフィルム強度が低下するだけでなく、製造時にキャスト面からフィルムを剥離することが困難となる傾向になる。
なお、上記平均ケン化度は、JIS K 6726に準じて測定される。
【0032】
また、上記バージンのPVA系樹脂の20℃における4重量%水溶液粘度は、5~70mPa・sであることが好ましく、より好ましくは15~60mPa・sである。上記4重量%水溶液粘度が低すぎると、フィルムの強度が低下する傾向があり、4重量%溶液粘度が高すぎると、製膜が困難になる傾向がある。なお、上記20℃における4重量%水溶液粘度は、JIS K 6726に準じて測定される。
【0033】
上記バージンのPVA系樹脂を、非水溶性成分除去PVA水溶液に溶解させる場合、バージンのPVA系樹脂の配合量は、非水溶性成分除去PVA水溶液に含まれる回収PVA系樹脂100重量部に対して、バージンのPVA系樹脂1~400重量部が好ましく、20~300重量部がより好ましく、30~200重量部が特に好ましく、40~100重量部が殊に好ましい。バージンのPVA系樹脂の配合量が少なすぎると、フィルムの物性が低下する傾向があり、バージンのPVA系樹脂の配合量が多すぎると、リサイクル効率の点から好ましくない傾向がある。
【0034】
また、上記非水溶性成分除去PVA水溶液には、必要に応じて、可塑剤、界面活性剤、フィラー等のその他のフィルム成分を加えることが好ましい。
【0035】
上記可塑剤としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、等のグリセリン類やトリメチロールプロパン、マンニトール、ソルビトール、ペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコール類等が挙げられる。これらは単独であるいは2種以上併せて用いられる。
【0036】
上記可塑剤の配合量は、非水溶性成分除去PVA水溶液に含まれるPVA系樹脂100重量部に対して、0.5~30重量部であることが好ましく、より好ましくは1~20重量部、特に好ましくは1.5~10重量部である。上記可塑剤の配合量が多すぎると、フィルムの腰がなくなり、硬化性樹脂の塗工や印刷時の見当が合いにくくなり場合によっては皺等の問題が発生しやすくなる。
【0037】
上記フィラーとしては、例えば、澱粉(コーンスターチ、馬鈴薯等の各種未加工澱粉や、エーテル化、酸化、変性品等の加工澱粉等)、ポリメチルメタクリレート等の有機粉末、タルク、雲母、シリカ等の無機粉末等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、澱粉が好適に用いられる。
【0038】
上記フィラーの配合量は、非水溶性成分除去PVA水溶液に含まれるPVA系樹脂100重量部に対して、30重量部以下であることが好ましく、特に好ましくは20重量部以下である。上記フィラーの配合量が多すぎると、実用面でフィルム強度が低下する傾向がある。
【0039】
上記界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なかでも、ノニオン系界面活性剤が好ましい。
【0040】
上記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルエステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類、ポリオキシアルキレンアルキルアミド類、ポリプロピレングリコールエーテル類、アセチレングリコール類、アリルフェニルエーテル類等が挙げられる。
上記アニオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸カリウム等のカルボン酸型、オクチルサルフェート等の硫酸エステル型、ドデシルベンゼンスルホネート等のスルホン酸型、リン酸エステル型のアニオン系界面活性剤が挙げられる。
上記カチオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミン塩酸塩等のアミン類、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩類、ラウリルビリジニウムクロライド等のピリジウム塩等が挙げられる。
上記両性界面活性剤としては、例えば、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン等が挙げられる。
【0041】
上記界面活性剤の配合量は、本発明の目的を損なわない程度であればよく、また、ブリードアウトし、例えば、表面が白化する等のフィルム表面の外観特性が低下することのない程度であればよい。通常は、非水溶性成分除去PVA水溶液に含まれるPVA系樹脂100重量部に対して5重量部以下、好ましくは3重量部以下、特に好ましくは2重量部以下である。
【0042】
なお、回収ベースフィルムに上記各種その他のフィルム成分が含まれている場合、上記のその他のフィルム成分の好適な含有量は、回収したベースフィルムに含まれていたその他のフィルム成分の量も合計した値である。
【0043】
更に、非水溶性成分除去PVA水溶液には、本発明の効果を妨げない範囲で、抗酸化剤(フェノール系、アミン系等)、安定剤(リン酸エステル類等)、着色料、香料、増量剤、消泡剤、防錆剤、紫外線吸収剤、更には他の水溶性高分子化合物(ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、デキストリン、キトサン、キチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)等の他の添加剤を適宜配合してもよい。
【0044】
本発明においては、上記非水溶性成分除去PVA水溶液を用いて再生PVA系樹脂フィルムを製膜するのであるが、製膜前の非水溶性成分除去PVA水溶液のPVA系樹脂濃度は、通常10~30重量%であり、好ましくは15~25重量%である。かかる濃度が低すぎると膜厚の安定性が低下する傾向があり、高すぎると高粘度となり製膜が困難になる傾向がある。
【0045】
〔再生PVA系樹脂フィルムの製造方法〕
再生PVA系樹脂フィルムは、通常のPVA系フィルムと同様、例えば、Tダイから上記非水溶性成分除去PVA水溶液を製膜ベルト上、または製膜ドラム上に流延させ、乾燥させることにより得ることができ、必要に応じて更に熱処理してもよい。
【0046】
上記製膜ベルトとは、一対のロール間に架け渡されて走行する無端ベルトを有し、Tダイから流れ出たポリビニルアルコール系樹脂水溶液を無端ベルト上に流延させるとともに乾燥させるものである。また、上記無端ベルトは、例えば、ステンレススチールからなり、その外周表面は鏡面仕上げが施されているものが好ましい。
【0047】
上記製膜ベルトを用いる場合の乾燥温度は、80~160℃であることが好ましく、特には90~150℃が好ましい。乾燥温度が低すぎると乾燥不足となりベルトからの剥離が重くなる傾向があり、高すぎると水分率が低くなりすぎ、フィルムが脆くなる傾向がある。
【0048】
上記製膜ドラムとは、回転するドラム型ロールのことであり、Tダイから流れ出たPVA系樹脂の水溶液を1個以上の回転ドラム型ロール上に流延し乾燥させるものである。
【0049】
上記製膜ドラムを用いる場合は、製膜第一ドラムの温度が、80~100℃であることが好ましく、特には82~99℃であることが好ましい。製膜第一ドラムの温度が低すぎると乾燥不足となりフィルム水分率が高く破断しやすくなる傾向があり、高すぎると水分率が低くなりすぎ、フィルムが脆くなる傾向がある。ここで、上記製膜第一ドラムとは、Tダイから流れ出たPVA系樹脂の水溶液が流延される最上流側に位置するドラム型ロールのことである。
【0050】
上記乾燥の後、必要に応じて熱処理が行われる。
上記熱処理の方法としては、例えば、熱ロール(カレンダーロールを含む)、熱風(フローティングドライヤー)、遠赤外線、誘電加熱等の方法が挙げられる。また、熱処理は、製膜ベルトまたは製膜ドラムに接した面の反対側となる面から行うことが好ましい。
【0051】
上記熱処理の温度は、50~130℃が好ましく、より好ましくは60~120℃である。すなわち、上記熱処理の温度が低すぎると、製膜ベルト、または製膜第一ドラムに接した面にカールが生じ、扱いづらくなる傾向があり、熱処理の温度が高すぎるとフィルムが柔らかくなる傾向があるため、皺ができないよう長手方向へ引っ張ることとなる。そのため、長手方向への配向が強まり、幅が縮まる傾向がある。
【0052】
上記熱処理に要する時間は、例えば、熱処理ロールの場合、その表面温度にもよるが、通常0.2~15秒間、好ましくは0.5~12秒間とすることが好ましい。
【0053】
かくして再生PV系樹脂フィルムが得られる。得られた再生PVA系樹脂は、巻き取ってロール状としてもよく、枚葉状に裁断してもよい。なかでも、生産性の点からロール状とすることが好ましい。
【0054】
また、上記再生PVA系樹脂フィルムは、例えば、従来公知の防湿包装の処理を行い、10~25℃の雰囲気下、宙づり状態にて保存することが好ましい。
【0055】
上記再生PVA系樹脂フィルムは、後述する熱転写用加飾フィルムに用いることが好ましいが、この用途に限定されるものではなく、一般的にPVA系樹脂フィルムが用いられる用途、例えば、水圧転写用途、シードテープ用途、農薬・薬剤個包装用途、刺繍等の基布用途、液体・粉体洗剤包装等に用いることができる。
【0056】
上記再生PVA系樹脂フィルム(再生PVA系樹脂)の平均ケン化度は、通常70モル%以上、例えば、100℃以上の高温における加工適正を重視する用途では平均ケン化度が70~90モル%であることが好ましく、一方で、耐熱性を重視する用途では平均ケン化度が90モル%以上であることが好ましい。ただし、加工条件や目的によって平均ケン化度は70モル%以上の範囲内から適宜選択される。なお、再生PVA系樹脂の平均ケン化度が低すぎるとフィルム強度が低下するだけでなく、製造時にキャスト面からフィルムを剥離することが困難となる傾向になる。
なお、上記平均ケン化度は、JIS K 6726に準じて測定される。
【0057】
また、再生PVA系樹脂フィルム(再生PVA系樹脂)の20℃における4重量%水溶液粘度は、5~70mPa・sであることが好ましく、より好ましくは15~60mPa・sである。上記4重量%水溶液粘度が低すぎると、フィルムの強度が低下する傾向があり、4重量%溶液粘度が高すぎると、製膜が困難になる傾向がある。なお、上記20℃における4重量%水溶液粘度は、JIS K 6726に準じて測定される。
【0058】
上記再生PVA系樹脂フィルムの水分率としては、0.5~8重量%であることが好ましく、より好ましくは1~6重量%である。水分率が低すぎると脆くなる傾向があり、水分率が高すぎるとブロッキングする傾向がある。なお、再生PVA系樹脂フィルムの水分率は、例えば、カールフィッシャー水分計(京都電子工業社製、「MKS-210」)を用いて測定することができる。
【0059】
上記再生PVA系樹脂フィルムの水分率の調整方法としては、例えば、
(α)PVA系樹脂水溶液を乾燥して製膜する際の乾燥機温度を上下させてPVA系フィルムの加湿・除湿を行う方法;
(β)PVA系フィルムの巻き取り前に調湿槽に通過させることによりPVA系フィルムの加湿・除湿を行う方法;
(γ)PVA系フィルムの巻き取り前、もしくは巻き取り後に、熱処理を行うことによりPVA系フィルムの除湿を行う方法;
等が挙げられる。
本発明においては、上記の方法を組み合わせることにより、フィルムの水分率を調製することが好ましい。
【0060】
上記(α)の方法においては、製膜する際のPVA系樹脂の水溶液の温度は、その温度により乾燥効率に対して影響を及ぼすため、70~98℃の範囲内にて調整することが好ましい。また、水分調製の点から乾燥温度は、好ましくは150~50℃の間で、より好ましくは145~60℃の間で温度勾配を有する少なくとも2つ以上の熱風乾燥機中にて行うことが好ましく、更に、乾燥時間は、好ましくは1~12分間、より好ましくは1~11分間である。上記乾燥温度の勾配範囲が大きすぎたり、乾燥時間が長すぎたりすると、乾燥過多となる傾向があり、逆に乾燥温度の勾配範囲が小さすぎたり、乾燥時間が短すぎたりすると、乾燥不足となる傾向がある。
【0061】
上記温度勾配は、上記乾燥温度の範囲で段階的に乾燥温度を変えていくものであり、通常は、乾燥開始時から温度を徐々に上げていき、所定の水分率になるまで、予め設定した乾燥温度範囲の、最高の乾燥温度まで昇温し、つぎに徐々に乾燥温度を低くすることにより最終的に目的とする水分率とすることが効果的である。これは結晶性や離型性、生産性等を制御するために行われるものであり、例えば、120℃-130℃-115℃-100℃、130℃-120℃-110℃、115℃-120℃-110℃-90℃等の温度勾配設定が挙げられ、適宜温度勾配設定を選択して実施される。
【0062】
また、再生PVA系樹脂フィルムは、そのまま未延伸フィルムとして用いてもよく、また、一軸延伸または二軸延伸フィルムとして用いてもよい。
【0063】
延伸フィルムとして用いる場合において、延伸方法は周知の方法が適用でき、例えば、チャック固定式延伸、ロール式延伸、テンター式延伸等が挙げられる。
上記チャック固定式延伸はバッチ式の延伸フィルムの作製に好適であり、上記ロール式延伸は一軸の延伸に好適である。また、装置が大掛りとなるが、上記テンター式延伸は工業的な規模で延伸フィルムを作製するには有効である。更には、ロール式延伸とテンター式延伸を組み合わせることで逐次二軸延伸を行うこともできる。延伸方法は一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のいずれも採用しても構わないが、なかでも膜厚の均一性の点で、ロール式延伸とテンター式延伸とを組み合わせる二軸延伸が好ましい。
【0064】
かかる延伸フィルムは、フィルムの表面均一性の点で、総延伸倍率が1.5~16倍であることが好ましく、特には2~12倍、更には3~10倍であることが好ましい。または、二軸延伸の場合には延伸倍率が縦方向に1.5~10倍、特には2~8倍、更には3~5倍、横方向に1.5~10倍、特には2~8倍、更には3~5倍に延伸されたものがフィルムの表面均一性の点で好ましく、更には、縦横ともに同倍率であることがより好ましい。延伸倍率が低すぎる場合は、延伸ムラが残りやすく、延伸倍率が高すぎる場合は、フィルムが破断し易くなる傾向がある。
【0065】
また、再生PVA系樹脂フィルムは、必要に応じて、梨地模様やエンボス模様、絹目模様等の凹凸模様を付与してもよく、かかる凹凸模様はエンボスロール等を用いて行うことができる。
【0066】
上記再生PVA系樹脂フィルムの膜厚は、10~150μmであることが好ましく、より好ましくは20~120μm、更に好ましくは30~100μmである。
【0067】
上記再生PVA系樹脂フィルムのヘイズが5~60であることが好ましく、特に好ましくは10~55、更に好ましくは15~50である。ヘイズが小さすぎると再生PVA系樹脂フィルムがブロッキングしやすくなる傾向があり、大きすぎるとフィルムの強度が低下する傾向がある。
【0068】
<(II)上記再生PVA系樹脂フィルムをベースフィルムとする熱転写用加飾フィルムを製造する工程>
次に、上記再生PVA系樹脂を再生ベースフィルムとして熱転写用加飾フィルムを製造する。
上記熱転写用加飾フィルムは、上記再生PVA系樹脂フィルムをベースフィルムとし、その上に、硬化性樹脂層、印刷層、接着層または粘着層をこの順に積層することが好ましい。
【0069】
〔硬化性樹脂層〕
上記硬化性樹脂層は、被転写体に転写後、ベースフィルムの剥離により、被転写体の最表層となる層である。硬化性樹脂層は、ベースフィルムを剥離するまでの間、または剥離後に硬化されて、被転写体の表面を保護するための保護層(ハードコート層)となる。なお、以下において「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルとメタクリロイルとを、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとの双方を包含する。
【0070】
硬化性樹脂層は、硬化性樹脂組成物から形成されるものであり、上記硬化性樹脂組成物としては、例えば、紫外線硬化性樹脂組成物や電子線硬化性樹脂組成物等の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、ポリアクリル樹脂組成物、ポリエステル樹脂組成物、ポリ塩化ビニル樹脂組成物、セルロース樹脂組成物、ゴム樹脂組成物、ポリウレタン樹脂組成物、ポリ酢酸ビニル樹脂組成物等の熱可塑性硬化性樹脂組成物が挙げられる。なかでも、保護層として、耐薬品性、耐磨耗性を付与する観点から、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物及び熱硬化性樹脂組成物が好ましい。
【0071】
[活性エネルギー線硬化性樹脂組成物]
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線の照射により硬化する官能基を有する化合物を含有するものであり、上記活性エネルギー線の照射により硬化する官能基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0072】
上記(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、(メタ)アクリレートモノマーや(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、上記(メタ)アクリレートオリゴマーや、(メタ)アクリレートモノマーと(メタ)アクリレートオリゴマーを含有することが好ましい。
【0073】
上記(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイル基が1つの単官能(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリロイル基が2つ以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。また、各々(メタ)アクリロイル基に接続する構造としては、例えば、直鎖及び分岐アルキル基、脂環式構造、芳香環含有構造等が挙げられ、更には水酸基等の官能基を含有する(メタ)アクリレートモノマーも挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0074】
上記単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の直鎖及び分岐アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマー、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンタニル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート等の脂環式構造を有する(メタ)アクリレートモノマー、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート等の芳香環を含有する(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができる。
【0075】
また官能基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーや、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリルロイルモルホリン等のアミノ基を有する(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができる。
【0076】
上記2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、4,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等のアルキル基またはエーテル骨格を有する(メタ)アクリレートモノマーや、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等の脂環式骨格を有する(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができる。
【0077】
上記3官能の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0078】
また、上記4官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0079】
前記(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリル系(メタ)アクリレート、ジエン系(メタ)アクリレート等が挙げられ、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらオリゴマーの中では、耐摩耗性や速硬化性等の点で多官能ウレタン(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
【0080】
上記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリオールとポリイソシアネートを反応して得られる化合物の両末端に、更に水酸基を含有する(メタ)アクリレートを反応させた構造を挙げることができる。
【0081】
上記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA、ポリカプロラクトン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン、ポリグリセリン、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコール;ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン/オキシプロピレンのブロックまたはランダム共重合の少なくとも1種の構造を有するポリエーテルポリオール;該多価アルコールまたはポリエーテルポリオールと無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、イタコン酸、アジピン酸、イソフタル酸等の多塩基酸との縮合物であるポリエステルポリオール;カプロラクトン変性ポリテトラメチレンポリオール等のカプロラクトン変性ポリオール;ポリオレフィン系ポリオール;水添ポリブタジエンポリオール等のポリブタジエン系ポリオール等が挙げられる。これらのポリオールは、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0082】
また、上記ポリオールとしては、例えば、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、酒石酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ジヒドロキシメチル酢酸、ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、ホモゲンチジン酸等のカルボキシル基含有ポリオールや、1,4-ブタンジオールスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基またはスルホン酸塩基含有ポリオール等も挙げられる。
【0083】
上記ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート;
水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式系ポリイソシアネート;
あるいはこれらポリイソシアネートの3量体化合物または多量体化合物、アロファネート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネート(例えば、日本ポリウレタン工業社製の「アクアネート100」、「アクアネート110」、「アクアネート200」、「アクアネート210」等)等が挙げられる。これらのポリイソシアネートは、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0084】
上記水酸基を含有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、オキシエチレン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、オキシエチレン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でも3個以上のアクリロイル基を有する水酸基含有(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。また、これらは1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0085】
上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物としては、熱転写性と硬度の観点から、特にエチレングリコールとイソホロンジイソシアネート(以下IPDI)を反応させたジイソシアネートに、ペンタエリスリトールトリアクリレート(以下PETA)を更に反応させたウレタンアクリレートが好ましい。
【0086】
上記ウレタン(メタ)アクリレートの合成方法としては特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。反応は無溶媒下でもよいが、オリゴマーの分子量が大きくなるにつれて撹拌が困難となる場合があるため、ブタノン等のケトン類、キシレン等の芳香族不活性溶媒等を用いてもよい。またポリオール及び水酸基と、イソシアネート基との反応には、触媒を用いることが好ましい。上記触媒としては、例えば、ジブチルスズジラウレート等の錫系、ナフテン酸コバルト等の金属アルコキシド系が挙げられる。反応温度は適宜設定可能であるが40~120℃が好ましく、60~100℃が更に好ましい。
【0087】
ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、好ましくは300~30000、更に好ましくは500~20000、特に好ましくは1000~15000である。かかる重量平均分子量が小さすぎると硬化性樹脂層を硬化した後に凝集力不足となる傾向があり、大きすぎると粘度が高くなりすぎ、製造が困難となる傾向がある。
【0088】
なお、上記のウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量とは、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(昭和電工社製、「Shodex GPC system-11型」)に、カラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)を3本直列にして用いることにより測定される。
【0089】
本発明で用いる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線として紫外線等の光線を用いる場合には、上記(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマー以外に、更に光重合開始剤を含有することが好ましい。なお、活性エネルギー線として、電子線を用いる場合には光重合開始剤は不要である。
【0090】
かかる光重合開始剤としては、例えば、
ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;
ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4'-メチル-ジフェニルサルファイド、3,3',4,4'-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;
2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメソクロリド等のチオキサントン類;
2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類;
等が挙げられる。なお、これらの光重合開始剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0091】
また、これら光重合開始剤の助剤として、例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4'-ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4'-ジエチルアミノベンゾフェノン、2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等を併用することも可能である。これらの助剤も単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なかでも、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイルイソプロピルエーテル、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンを用いることが好ましい。
【0092】
光重合開始剤の含有量は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物の合計100重量部に対して、0.1~20重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.5~15重量部、殊に好ましくは1~10重量部である。光重合開始剤の含有量が少なすぎると効果が不充分になる傾向があり、多すぎるとコーティングする際の安定性が低下したり、脆化やブリードアウト等の問題が起こりやすい傾向がある。
【0093】
[熱硬化性樹脂組成物]
前記熱硬化性樹脂組成物は、ウレタン結合を骨格に含む化合物を含有することが好ましく、2液性のポリウレタン樹脂であることがより好ましい。上記2液性のポリウレタン樹脂としては、例えば、主剤としてイソシアネート化合物、硬化剤として活性水素含有化合物を用いたものを挙げることができる。上記記イソシアネート化合物としては、ポリイソシアネートをポリオールによってプレポリマー化した、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーが好ましい。
【0094】
上記ポリイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族、脂環族等の公知のイソシアネートを使用することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート、更にこれらポリイソシアネートの3量体化合物または多量体化合物、アロファネート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0095】
上記ポリオールとしては、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール、ポリブタジエンポリオール、ポリラクトンポリオール、ヒマシ油系ポリオール等が挙げられ、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0096】
上記ポリエーテルポリオールは、2個以上の多価アルコールにアルキレンオキサイドが付加した構造を有し、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール及びこれらの共重合体が挙げられる。
【0097】
上記ポリエステルポリオールは、多価アルコールと多塩基酸とをエステル反応することで得られる。上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。上記多塩基酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多塩基酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸等の脂環族多塩基酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸等の脂肪族多塩基酸が挙げられる。
【0098】
上記ポリオールとポリイソシアネートの反応は、混合して窒素雰囲気下で撹拌しながら60~160℃で反応させて行なうことができる。その際、必要に応じてモノブチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド、テトラオクチル錫、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ラウリレート、ジオクチル錫ラウリレート等の錫系触媒を使用することができる。またポリオールの末端OH基と有機イソシアネートの末端NCO基の配合比は、OH:NCO=1:1.2~8が好ましく、1:1.5~4が更に好ましい。
【0099】
前記硬化剤として用いる活性水素含有化合物は、ポリオールが好ましく、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール、及びポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0100】
主剤と硬化剤を混合する際の配合比としては、主剤中のポリイソシアネート成分のイソシアネート基と、硬化剤中の活性水素成分の水酸基の当量比率(NCO/OH)が、0.8~1.6が好ましく、1.0~1.3が更に好ましい。
【0101】
本発明で用いる硬化性樹脂組成物には、性能を損なわない範囲で必要に応じて、非反応性希釈剤、反応性希釈剤、密着促進剤、酸化防止剤、カップリング剤、ブルーイング剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈澱防止剤、帯電防止剤、導電剤、防曇剤、スリップ剤、抗菌剤、抗カビ剤、抗ウイルス剤、ワックス、つや消し剤、親水剤、撥水剤、紫外線吸収剤、ブルーライト吸収剤、赤外光吸収剤等を添加してもよい。
【0102】
硬化性樹脂層の形成は、例えば、上記の硬化性樹脂組成物をグラビアコート法、ロールコート法、バーコート法、コンマコート法、リップコート法、スプレーコート法、ダイコート法等のコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の印刷法により、ベースフィルム上に積層すればよい。
【0103】
上記硬化性樹脂層の厚みは、耐摩耗性、耐薬品性の点で0.5~150μmであることが好ましく、特には1~120μm、更には1.5~100μmであることが好ましい。かかる厚みが薄すぎると耐摩耗性や耐薬品性が低下することとなる傾向があり、厚すぎると転写後の膜切れ性が低下し、バリ等の原因となる傾向がある。
【0104】
硬化性樹脂層として、上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いた場合には、ベースフィルム上に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなる層(硬化性樹脂層)を積層した後から、被転写体に印刷層が転写され、ベースフィルムが剥離されるまでの間の、任意の段階に活性エネルギー線を照射し硬化させてもよく、また、ベースフィルムが剥離された後の被転写体に、活性エネルギー線を照射し硬化させてもよい。
【0105】
具体的には、例えば、
(a)ベースフィルム上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物層を積層した後、活性エネルギー線を照射し硬化;
(b)ベースフィルム上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物層を積層した後、後述の印刷層を形成し、その後ベースフィルム側より活性エネルギー線を照射して硬化;
(c)更に、後述の接着層まで積層した後にベースフィルム側より活性エネルギー線を照射して硬化;
(d)熱転写用積層体を被転写体に接着させた後にベースフィルム側より活性エネルギー線を照射して硬化;
(e)熱転写用積層体を被転写体に接着させた後に、ベースフィルムを剥離し活性エネルギー線を照射して硬化;
等が挙げられる。なかでも、熱転写時の被転写体への追従性の点から、転写後に硬化させる(d)または(e)の方法が好ましく、特に(e)の方法が好ましい。なお、熱転写用加飾フィルムは、上記(a)~(c)のように、被転写体に接着する前に硬化性樹脂層が硬化されていてもよいが、上記(d)および(e)のように、被転写体に接着させた後に硬化性樹脂層が硬化されることが好ましい。
【0106】
上記硬化性樹脂層を硬化させる活性エネルギー線としては、例えば、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できる。なかでも、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線が好ましい。
【0107】
紫外線により硬化させる場合は、150~450nm波長域の光を発する高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、LED等を用いて、0.01~10J/cm2程度照射すればよい。また紫外線照射後は、必要に応じて冷却・加熱を行って硬化の完全を図ることもできる。
【0108】
〔印刷層〕
本発明で用いる熱転写用加飾フィルムが有する印刷層は絵柄等が印刷された層である。上記印刷層の材質としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂等の樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いることができる。
【0109】
上記印刷層の形成方法としては、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等の通常の印刷法等を用いることができる。特に、多色刷りや階調表現を行うには、オフセット印刷法やグラビア印刷法が好適である。
【0110】
〔接着層または粘着層〕
本発明で用いる熱転写用加飾フィルムは、前記再生PVA系樹脂フィルム(ベースフィルム)上に、硬化性樹脂層、印刷層がこの順で積層され、さらに印刷上に粘着層または接着層が積層されたものである。
【0111】
上記粘着層または接着層は、被転写体に熱転写用加飾フィルムを接着させるものである。接着層または粘着層としては、被転写体の素材に適した感熱性あるいは感圧性の樹脂を適宜使用すればよく、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂等が挙げられる。
【0112】
接着層または粘着層の形成方法としては、例えば、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法、コンマコート法、スプレーコート法、ダイコート法等のコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等の印刷法が挙げられる。また、上記材質よりなる接着性をもつシートをラミネート法等により貼り合わせて接着層としてもよい。
【0113】
接着層または粘着層の厚みは、被着体への追従性の点で0.5~200μmであることが好ましく、特には1~100μm、更には2~50μmであることが好ましい。かかる厚みが薄すぎると、転写時の被転写体への追従性が低下する傾向があり、厚すぎるとコスト高となる傾向があり不経済である。
【0114】
<(III)上記熱転写用加飾フィルムを用いて熱転写する工程>
本発明では、このようにして得られた再生ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをベースフィルムとする熱転写用加飾フィルムを用いて熱転写を行う。
上記熱転写用加飾フィルムの熱転写方法としては通常の熱転写方法を用いることができ、例えば、
(1)被転写体の面に装飾を行う方法
(2)射出成型による成形同時転写法を利用して、被転写体である樹脂成型品の面に装飾を行う方法
等が挙げられる。
以下これらの方法について説明する。
【0115】
〔(1)被転写体の面に装飾を行う方法〕
上記(1)の方法は、上記熱転写用加飾フィルムを加熱し、熱転写用加飾フィルムの転写層を、被転写体の面に密着させ、上記熱転写用加飾フィルムのベースフィルム側から加熱加圧することにより、前記印刷層を被転写体に転写する工程;
上記被転写体から上記ベースフィルムを剥離する工程;
上記被写体の面に転写させた熱転写用加飾フィルムの硬化性樹脂層を硬化させる工程;
を含むものである。
以下、各工程について詳述する。
【0116】
まず、被転写体の面に、熱転写用加飾フィルムの接着層または粘着層を密着させる。つぎに、シリコンラバー等の耐熱ゴム状弾性体を備えたロール転写機、アップダウン転写機等の転写機を用い、温度40~270℃程度、圧力490~1960Pa程度の条件に設定した耐熱ゴム状弾性体を介して、熱転写用加飾フィルムのベースフィルムから熱と圧力とを加える。こうすることにより、接着層または粘着層が被転写体の表面に接着する。
【0117】
その後、被転写体からベースフィルムを剥がすと、ベースフィルムと保護層(硬化された硬化性樹脂層:ハードコート層)との境界面で剥離が起こり、転写が完了する。
【0118】
最後に、必要に応じて活性エネルギー線等により硬化性樹脂層を硬化させ保護層(ハードコート層)を形成する。
【0119】
〔(2)射出成形による成形同時転写法を利用して被転写体である樹脂成形品の面に装飾を行う方法〕
上記(2)の方法は、射出成形による成形同時転写法を利用して被転写体である樹脂成形品の面に装飾を行う方法であり、
上記熱転写用加飾フィルムのベースフィルムを、成形用金型の固定型と向かい合うように配する工程;
上記成形用金型内に成形樹脂を射出充満させて、熱転写用加飾フィルムの接着層または粘着層が接着された被転写体を成形する工程;
被転写体の成形後に、ベースフィルムを剥離する工程;
上記被写体に転写させた熱転写用加飾フィルムの硬化性樹脂層を硬化させる工程;
を含むものである。
以下、各工程について詳述する。
【0120】
まず、成形用金型に熱転写用加飾フィルムを、ベースフィルムが固定型(通常、雌型)側となるように送り込む。熱転写用加飾フィルムの送りこみは、枚葉の熱転写用加飾フィルムを1枚ずつ送り込んでもよいし、ロール状の熱転写用加飾フィルムの必要部分を間欠的に送り込んでもよい。なかでも生産性の点から、ロール状の熱転写用加飾フィルムの必要部分を間欠的に送り込むことが好ましい。
【0121】
上記ロール状の熱転写用加飾フィルムを使用する場合、位置決め機構を有する送り装置を使用して、熱転写用積層体の印刷層と成形用金型との見当合わせ(register)することが好ましい。また、熱転写用加飾フィルムを間欠的に送り込む際に、熱転写用加飾フィルムの位置をセンサーで検出した後に熱転写用加飾フィルムを可動型(雌型)と固定型(雄型)とで固定するようにすれば、常に同じ位置で熱転写用加飾フィルムを固定することができ、印刷層の位置ずれが生じないため好ましい。
【0122】
つぎに成形用金型を閉じた後、ゲートから溶融した成形樹脂を金型内に射出充満させ、被転写体を成形する。被転写体の成形と同時に熱転写用加飾フィルムの接着層または粘着層と被転写体が接着することになる。
【0123】
被転写体の材料となる成形樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AN樹脂等の汎用樹脂、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂等の汎用エンジニアリング樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアリル系耐熱樹脂等のスーパーエンジニアリング樹脂、更には、ガラス繊維や無機フィラー等の補強材を添加した複合樹脂等が挙げられる。これらの樹脂からなる被転写体は、透明、半透明、不透明のいずれでもよい。また、被転写体は着色されていても、着色されていなくてもよい。また、これらの成形樹脂は単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0124】
被転写体である樹脂成形品を冷却した後、成形用金型を開いて樹脂成形品を取り出す。熱転写用加飾フィルムのベースフィルムと硬化性樹脂層との剥離強度は、被転写体と転写層との剥離強度と比べて大変小さいので、ロール状の熱転写用加飾フィルムを用いる場合では、成形品の脱型に際して、硬化性樹脂層とベースフィルムの間で剥離が起こる。また、枚葉の熱転写用加飾フィルムを用いる場合であっても、取り出した成形品から簡単にベースフィルムだけを剥がすことができる。
【0125】
このようにして、硬化性樹脂層が最表層となっている成形品が得られる。脱型、取り出しの時点で、硬化性樹脂層の硬化が完了していない場合には、次いで硬化を完了させる。硬化された硬化性樹脂層は、成形品の保護層となる。
【0126】
上記のようにして熱転写用加飾フィルムを被転写体に熱転写することができる。また、転写後に残るベースフィルムは、回収して本発明のリサイクル型熱転写システムにより、再利用することができる。このように、本発明のリサイクル型熱転写システムによれば、通常、廃棄されるベースフィルムを回収し再生することにより、廃棄されるゴミの量が少なくなり、ゴミ処理の負担を低減することができる等のメリットを有する。
【実施例
【0127】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中「部」、「%」とあるのは、特に断りのない限り重量基準を意味する。
【0128】
<実施例1>
〔再生PVA系樹脂フィルム[i]の製造〕
硬化性樹脂層、印刷層、接着剤層等が残存している熱転写後のPVA系樹脂フィルム(ベースフィルム)を約1~2cm角の大きさに裁断して冷水に撹拌しながら徐々に投入し、その後90℃まで昇温し2時間撹拌して水溶解成分を溶解させ、回収ベースフィルム濃度8%の水溶液を得た。
次に、この水溶液を10メッシュの篩を通過させて未溶解成分を除去し、更に水と分離して水層より下に来る非水溶性成分をデカンテーションにて除去した。
上記で得られた水溶液に、回収ベースフィルム、バージンPVA系樹脂の合計の濃度が15%になるように、バージンのPVA系樹脂を加え、撹拌しながら昇温し90℃で3時間溶解した。その後85℃のオーブン内で10時間脱泡した。
上記で得られた水溶液をアプリケーターを用いて表面温度を85℃に調整したクロムメッキ表面処理した金属板の上に流延した。流延したPVA系樹脂水溶液を温度85℃の金属板上で4分間乾燥させ製膜した後、金属板からフィルムを剥離して厚み41μmの再生PVA系樹脂フィルム[i]を得た。再生PVA系樹脂フィルム[i]の再生率は60%であった。
【0129】
<参考例1>
〔PVA系樹脂フィルム[i’]の製造〕
ケン化度88モル%、20℃における4%水溶液粘度23mPa・sのポリビニルアルコール樹脂100部、フィラーとして澱粉(平均粒子径15μm)10部、可塑剤としてグリセリン5部、界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)0.5部からなる20%水溶液を調整し、この水溶液をアプリケーターを用いて表面温度を85℃に調整したクロムメッキ表面処理した金属板の上に流延した。流延したPVA系樹脂水溶液を温度85℃の金属板上で4分間乾燥させ製膜した後、金属板からフィルムを剥離して厚み40μmのPVA系樹脂フィルム[i’]を作製した。
【0130】
[1]PVA系樹脂フィルムの機械物性測定
得られたPVA系樹脂フィルム[i]について、20℃、65%RH環境下で20時間調湿後、PVA系樹脂フィルムを100mm(長手方向)×15mm(横方向)にカットし、この環境下で島津製作所社製オートグラフAG―Xplusにおいてチャック間距離50mm、引張速度200mm/minの速度で試験を実施し、引張強度(MPa)と引張伸度(%)を島津製作所社製解析ソフトTRAPEZIUMXで求めた。結果を表1に示す。
【0131】
また、比較のために、回収PVA系樹脂フィルムを用いないで製造した参考例1のPVA系樹脂フィルム[i’]についても同様に、機械物性を測定した。結果を表1に示す。
【0132】
[2]評価用サンプルの作製
〔硬化性樹脂組成物の調整〕
下記の通り、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製した。
ウレタンアクリレート「UV-5670(三菱ケミカル社製)」100部に対して光開始剤「OMNIRAD184(IGM Resins B.V.社製)」3部加え、固形分が70%となるように酢酸エチルで希釈した。
【0133】
〔接着剤層用塗布液の調整〕
アクリル樹脂溶液「N-9297(三菱ケミカル社製)」を酢酸エチルにて固形分12.5%に希釈した。
【0134】
〔転写用加飾フィルムの製造〕
上記の再生PVA系樹脂フィルム[i]のマット面側(キャスト面と反対側)に、上記で調製した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を厚さバーコーターNo.8を用いて塗布し、これを65℃で3分間乾燥することで、ベースフィルム上に厚さ15μmの硬化性樹脂層を積層し、高圧水銀ランプにて紫外線を500mJ照射し、硬化性樹脂層を硬化させた。
この硬化性樹脂層面上に、上記の感圧接着剤層塗布液を厚さ250μmとなるようにアプリケーターで塗布し、これを65℃で10分乾燥することで、厚さ15μmの感圧着接着層を形成し、シリコンセパレーターを粘着剤層面に貼合し転写用加飾フィルムを得た。
【0135】
得られた転写用加飾フィルムについて、下記測定評価方法に基づき、剥離性と艶消し性を評価した。結果を表1に併せてに示す。
【0136】
[3]再生PVA系樹脂フィルムの硬化性樹脂層からの剥離性
転写用加飾フィルムを200×100mmサイズにカットし、四辺を固定した状態で150℃のオーブンに1分間入れる。この状態で粘着層側面にABS板80×80mmの板を圧し当て密着させた後、オーブンから取り出し室温に戻した。その後、最外層となる再生PVA系樹脂フィルム[i]を剥離し、剥離性を下記の基準で評価した。
○:容易に剥離できた
×:剥離できなかった
【0137】
[4]艶消し性
PVA系樹脂フィルム[i]の剥離後、硬化性樹脂層の面に蛍光灯を反射させ、蛍光灯の散乱度合いを目視観察し、硬化性樹脂組層の表面性(マット性)を下記の基準により評価した。
◎:蛍光灯の輪郭が確認できない。
○:蛍光灯の輪郭がぼやけて見える。
×:蛍光灯の輪郭がはっきり見える。
【0138】
また、比較のために、回収PVA系樹脂フィルムを用いないで製造した参考例1のPVA系樹脂フィルム[i’]上に、硬化性樹脂層、接着層を、上記と同様にして積層することにより転写用加飾フィルムを作製し、同様に評価した。結果を表1に併せて示す。
【0139】
【表1】
【0140】
表1から、実施例1の再生PVA系樹脂フィルムは、参考例1である再生ベースフィルムを用いないバージンのPVA系樹脂フィルムと同等に、フィルム強度や破断伸度が高く、ベースフィルムとしての機械物性に優れ、また再生PVA系樹脂フィルムをベースフィルムとして用いた転写用加飾フィルムにおいて、硬化性樹脂層との剥離性にも優れており、熱転写印刷用のベースフィルムとして有用であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをベースフィルムとする熱転写用加飾フィルムを用いた熱転写において、ベースフィルムを再生利用するリサイクル型熱転写システムである。このリサイクル型熱転写システムは、熱転写法において廃棄物を減らし環境に配慮したシステムであり有用である。