(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】化学療法誘発性の医原性疼痛の治療に使用するためのC5aR阻害薬
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4453 20060101AFI20240202BHJP
A61K 31/397 20060101ALI20240202BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20240202BHJP
A61K 31/165 20060101ALI20240202BHJP
A61K 31/427 20060101ALI20240202BHJP
A61K 31/422 20060101ALI20240202BHJP
A61K 31/381 20060101ALI20240202BHJP
A61K 31/426 20060101ALI20240202BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20240202BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240202BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240202BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
A61K31/4453
A61K31/397
A61K31/40
A61K31/165
A61K31/427
A61K31/422
A61K31/381
A61K31/426
A61K31/337
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61P25/04
(21)【出願番号】P 2020532696
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(86)【国際出願番号】 EP2018084277
(87)【国際公開番号】W WO2019115493
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-11-30
(32)【優先日】2017-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】315012541
【氏名又は名称】ドムペ・ファルマチェウティチ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】ブランドリーニ,ローラ
(72)【発明者】
【氏名】クーニャ,ティアゴ・マター
(72)【発明者】
【氏名】アレグレッティ,マルチェッロ
(72)【発明者】
【氏名】アラミーニ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ビアンチーニ,ジャンルーカ
【審査官】平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/121838(WO,A1)
【文献】特表2009-517368(JP,A)
【文献】特表2011-500643(JP,A)
【文献】JIJUN XU ET AL,ROLE OF COMPLEMENT IN PACLITAXEL-INDUCED PERIPHERAL NEUROPATHY,THE ANESTHESIOLOGY ANNUAL MEETIING,[2022年11月15日検索],AMERICAN SOCIETY OF ANESTHESIOLOGISTS,2017年10月22日,A2227,http://www.asaabstracts.com/strands/asaabstracts/abstract.htm?year=2017&index=3&absnum=3878
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(R)-アリールアルキルアミノ誘導体を含む、化学療法誘発性医原性疼痛の治療における経口投与用の医薬組成物であって、前記化学療法誘発性医原性疼痛が、タキサン系によって誘発され、
前記(R)-アリールアルキルアミノ誘導体が、式(I):
【化1】
の化合物又は薬学的に許容可能な塩から選ばれ、
式中、
Rは、-CORaであり、
ここで、
Raは、
式(II):
【化2】
のω-アミノアルキルアミノ基であり、
上記式(II)中、
Xは、直鎖又は分枝C
1
-C
6
アルキレンを表し、
R2及びR3は、それらが結合しているN原子と一緒になって、式(III):
【化3】
の4~6員窒素含有へテロ環式環を形成し、
上記式(III)中、
Yは、CH
2
を表し、pは、0~2の整数を表し、
R1は、メチルであり、
Arは、4’-トリフルオロメタンスルホニルオキシ-フェニルである、
医薬組成物。
【請求項2】
(R)-4-(ヘテロアリール)フェニルエチル化合物を含む、化学療法誘発性医原性疼痛の治療における経口投与用の医薬組成物であって、前記化学療法誘発性医原性疼痛が、タキサン系によって誘発され、
前記(R)-4-(ヘテロアリール)フェニルエチル化合物が、式II:
【化4】
の化合物又はその薬学的に許容可能な塩から選ばれ、
式中、
Xは、S及びOから選ばれるヘテロ原子であり;
Yは、H又はハロゲン、直鎖又は分枝C
1
-C
4
-アルキル及びハロ-C
1
-C
3
-アルキルからなる群から選ばれる;好ましくは、トリフルオロメチル、塩素、メチル及びtert-ブチルからなる群から選ばれる残基であり;
Zは、非置換テトラゾール及びトリアゾールから選ばれる、
医薬組成物。
【請求項3】
化学療法誘発性医原性疼痛に関連する異痛の
治療のために用いられる、請求項1
又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記(R)-アリールアルキルアミノ誘導体が、N-[(1R)-1-(4-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニルエチル]-4-ピペリジン-1-イルブタンアミド及びその塩化物塩から選ばれる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記(R)-4-(ヘテロアリール)フェニルエチル化合物が、1-N-[4-[(1R)-1-(1H-テトラゾール-5-イル)エチル]フェニル}-4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-アミン及びそのナトリウム塩から選ばれる、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記化学療法誘発性医原性疼痛が、パクリタキセル、カバジタキセル及びドセタキセルから選ばれる化学療法薬、好ましくはパクリタキセルによって誘発される、請求項1~
5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学療法が誘発する医原性疼痛(CIIP)、特にそれに関連する異痛(アロディニア)の予防及び治療のためのC5a受容体(C5aR)阻害薬に関する。
【背景技術】
【0002】
抗新生物薬物療法には、軽微な認知障害から認知症又は昏睡さえも伴う脳症にまで及ぶ中枢神経毒性状態や末梢神経毒性を含む様々な種類の神経学的合併症が随伴しうる。医原性疼痛は、がん治療の最も一般的な神経学的合併症で、軽度で一時的な症状から重度で永久的な形態の多発性神経障害まで、一連の症状を示す。
【0003】
この種の神経毒性は抗がん薬の投与によるものなので、一般的に化学療法誘発性の医原性疼痛(CIIP)と示される(M.Cascellaら,CURRENT MEDICAL RESEARCH AND OPINION,2017;42:1-3)。
【0004】
「化学療法誘発性医原性疼痛(CIIP,chemotherapy-induced iatrogenic pain)」とは、末梢神経に対する化学療法の用量制限的神経毒性を指す。いくつかの異なる症状がCIIPと関連付けられる。すなわち、痛覚過敏、異痛(アロディニア)、ならびに灼熱痛(ヒリヒリ)(burning)、疼痛、無感覚(しびれ)、けいれん、及び掻痒などの自発感覚である。特に、化学療法薬の神経毒性によって誘発される一部の症状は患者ごとに異なるが、異常痛覚を招く一般的な感覚障害はすべての罹患患者に共通である。
【0005】
CIIPはがん患者の約60%に発生し(Windebankら,J Peripher Nerv Syst 2008;13:27-46)、用量制限又はさらには治療の中断さえも招きうるので、最終的に患者の生存率にも影響する(Mielkeら,Eur J Cancer 2006;42:24-30)。
【0006】
特に、末梢痛の発生に最も一般的に関連している化学療法薬は、白金系薬物、例えば、シスプラチン、カルボプラチン及びオキサリプラチン;タキサン系、例えば、パクリタキセル、カバジタキセル及びドセタキセル;エポチロン類、例えば、イクサベピロン;植物アルカロイド系、例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン及びエトポシド;サリドマイド、レナリドミド及びポマリドミド;カルフィルゾミブ及びボルテゾミブ;エリブリンなどである(Brewerら,Gynecologic Oncology 2016;140:176-83)。
【0007】
神経保護のための様々な取組みが実験研究においても臨床試験においても検討されてきたが、現時点ではCIIPに対する予防策も効果的な治療法もない。それらの病因がまだ十分に解明されていないこともその理由の一つである。
【0008】
疼痛の発生と持続の根底にある多数の機序が提唱されている。
あるエビデンスによれば、炎症性サイトカイン/ケモカイン、特に、TNF-α、IL-1β、IL-6及びCCL2がCIIPの化学療法薬誘発性疼痛症状に役割を果たしているかもしれないことが示唆されている(Wangら,Cytokine 2012;59(1):3-9)。しかしながら、感覚ニューロンに対する化学療法薬の直接作用を示唆する強力なエビデンスもある(Argyriouら,Crit Rev Onol Hematol 2012;82(1):51-77,Boyette-Davisら,Pain,2011;152:308-13;Pachmanら,Clin Pharmacol Ther 2011;90:377-387)。特に、大部分の化学療法薬は血液神経関門(BNB)を容易に通過し、後根神経節(DRG)及び末梢軸索に結合できることが確立されている(Wangら、上記参照)。また、これらの薬物はその後DRG細胞及び末梢神経の構造を直接損傷し、その結果、感覚線維の変性と表皮層の小神経線維の喪失をもたらすというエビデンスもある(Argyriouら,Cancer Manag Res.2014;6: 135-147)。
【0009】
細胞レベルでは、神経毒性のある化学療法薬は、微小管を損傷し、微小管を基にした軸索輸送を妨害し(LaPointeら,Neurotoxicology 2013;37:231-9)、α-チューブリンのアセチル化を誘導することにより微小管動態(微小管ダイナミクス)に影響を及ぼし、ミトコンドリアの機能を妨害し、又はDNAを直接標的にする。パクリタキセル、オキサリプラチン又はビンクリスチンで処置(治療)された実験動物及び患者の神経生検をすると、同一の形態学的変化を示し、根底にある共通の発症機序を示唆している。
【0010】
補体のC5aペプチドフラグメントは、その走化活性及び炎症活性のために「完全」炎症(誘発)性メディエーターと定義されている。実際、選択ケモカイン(例えば、IL-8、MCP-1及びRANTES)のような他の炎症性メディエーターは自己誘引細胞に対しては高選択的であるが、ヒスタミン及びブラジキニンのような他のものは弱い走化性物質に過ぎない。
【0011】
有力なエビデンスにより、虚血/再潅流、自己免疫性皮膚炎、膜性増殖性特発性糸球体腎炎、気道無反応及び慢性炎症性疾患、ARDS及びCODP、アルツハイマー病、若年性関節リウマチを含むいくつかの病的状態におけるC5aのインビボでの関与が裏付けられている(N.P.Gerard,Ann.Rev.Immunol.,12,755,1994)。
【0012】
抗体依存性II型自己免疫に関連する疾患の発症におけるC5a及びその選択的受容体C5aRの病理学的意義は、特に自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、すなわち自己赤血球(RBC)に対する抗体の産生によって溶血を引き起こすことを特徴とする疾患の暴動(insurgence)においても研究されている。AIHAは極めて稀な疾患で、推定発生率は1~3例/100.000/年とされる。IgG依存性AIHAにおけるC5aの極めて重要な役割が、このアナフィラトキシンの走化機能とは無関係に、実験動物モデルで確認されている(V.Kumar,J.Clin.Invest.,116(2),512,2006)。実際、C5aR欠損マウスはこのIgG自己抗体誘導疾患モデルに対して部分的に抵抗性があることが観察されており、C5aRと特に肝マクロファージ上の活性化型Fcγ受容体とのクロストークが、抗赤血球抗体の投与時にC5aR欠損マウスではクッパー細胞上の活性化型FcγRのアップレギュレーションが見られなかったという観察を通じて確認されている。これと平行して、FcγR欠損マウスでは、C5及びC5aが産生されなくなった。これは、従来未確認だったFcγR媒介性C5a生成経路の最初の証拠であり、抗体依存性自己免疫疾患の発症におけるC5aの役割と、II型自己免疫傷害に関連するAIHAにおけるC5a及び/又はC5aR遮断の治療的利益の可能性を示唆している。
【0013】
WO2007/060215には、(R)-アリールアルキルアミノ誘導体と、C5a(が)誘導(する)ヒトPMN(の)走化性が関与する疾患、例えば、敗血症、乾癬、水疱性類天疱瘡、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、急性呼吸窮迫症候群、特発性線維症、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、糸球体腎炎の治療、ならびに虚血と再潅流によって引き起こされる傷害の予防及び治療におけるそれらの使用が開示されている。
【0014】
WO2009/050258には、(R)-4-(ヘテロアリール)フェニルエチル化合物と、C5a誘導ヒトPMN走化性が関与する疾患、例えば、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、乾癬、水疱性類天疱瘡、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、急性呼吸窮迫症候群、特発性線維症、糸球体腎炎の治療、ならびに虚血と再潅流によって引き起こされる傷害の予防及び治療におけるそれらの使用が開示されている。
【0015】
公表論文、A.Moriconiら,PNAS,111(47),16937-16942,2014には、急性及び慢性炎症性疼痛のいくつかのモデル及びSNI誘導神経障害痛マウスモデル(脛骨及び腓骨の軸索切断を用いて慢性異痛を傷害された後足に誘導する)において、機械的痛覚過敏の低減にC5aアナフィラトキシン受容体(C5aR)の新規強力アロステリック阻害薬が効果を示したことが開示されている。
【0016】
特別なモデルの神経障害及び特定の特徴を誘導するために従う手順は、根底にある機序を理解し、有効な管理療法を考案するために極めて重要である。特に化学療法誘発性の医原性疼痛という状況下においては、治療手法の有効性は特定標的の識別と厳密に相関しているようである。この仮説を裏付けるかのように、科学的エビデンスは、化学療法誘発性の医原性疼痛の管理に、一般的疼痛の治療に有効な薬剤の使用を支持していない(Shinde SSら,Support Care Cancer,24(2):547-553,2016)。
【0017】
公表論文、A.Moriconiら,PNAS,111(47),16937-16942,2014に元来記載されていた外傷性傷害とは異なり、現在のデータは、化学療法に特異的な機序によって誘導された神経毒性の有効モデル、特にタキサン系に言及した(Polomano RCら,Pain,94,293,2001)。タキサン類、特にパクリタキセルは、細胞の生命機能に不可欠な微小管ネットワークの動的生理学的再編成を妨害し、酸化ストレスを誘導する。C5a及びその細胞膜受容体C5aRは、急性の炎症性及び神経障害性疼痛状態に関連付けられてはいるが、化学療法誘発性の医原性疼痛におけるC5a/C5aRの役割はまだ調べられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】国際特許出願公開第WO2007/060215号
【文献】国際特許出願公開第WO2009/050258号
【非特許文献】
【0019】
【文献】M.Cascellaら,CURRENT MEDICAL RESEARCH AND OPINION,2017;42:1-3
【文献】Windebankら,J Peripher Nerv Syst 2008;13:27-46
【文献】Mielkeら,Eur J Cancer 2006;42:24-30
【文献】Brewerら,Gynecologic Oncology 2016;140:176-83
【文献】Wangら,Cytokine 2012;59(1):3-9
【文献】Argyriouら,Crit Rev Onol Hematol 2012;82(1):51-77
【文献】Boyette-Davisら,Pain,2011;152:308-13
【文献】Pachmanら,Clin Pharmacol Ther 2011;90:377-387
【文献】Argyriouら,Cancer Manag Res.2014;6: 135-147
【文献】LaPointeら,Neurotoxicology 2013;37:231-9
【文献】N.P.Gerard,Ann.Rev.Immunol.,12,755,1994
【文献】V.Kumar,J.Clin.Invest.,116(2),512,2006
【文献】A.Moriconiら,PNAS,111(47),16937-16942,2014
【文献】Shinde SSら,Support Care Cancer,24(2):547-553,2016
【文献】Polomano RCら,Pain,94,293,2001
【発明の概要】
【0020】
本発明者らは、驚くべきことに、C5aRの阻害が、化学療法誘発性の医原性疼痛(CIIP)をもたらす全身的な抗がん化学療法の毒性に関連する症状の発生を抑制又は防止できることを見出した。その上、化学療法誘発性医原性疼痛の予防及び/又は治療に有用なC5aR阻害薬は、化学療法薬の活性を全く妨害しない。
【0021】
そこで、本発明の第一の目的は、化学療法誘発性医原性疼痛の予防及び/又は治療に使用するためのC5aR阻害薬、好ましくはC5aR非競合的アロステリック阻害薬である。
【0022】
本発明の第二の目的は、化学療法誘発性医原性疼痛の治療及び/又は予防のための医薬の製造におけるC5aR阻害薬の使用である。
本発明の第三の目的は、CIIPの予防及び/又は治療法であって、それを必要とする対象に、治療上有効量の前記C5aR阻害薬を投与する手順を含む方法である。
【0023】
本発明の第四の目的は、CIIPの予防及び/又は治療のための医薬組成物であって、本発明によるC5aR阻害薬と薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、雄Balb/Cマウスにおける組換えC5aの髄腔内注射(1、10、100、300及び600ng/5μL)の用量反応曲線を示す。A:機械的閾値-von Frey毛髪試験、及び、B:熱的閾値-Hargreaves試験。B:ベースライン。データは平均±SEMで表されている。N=5。統計分析は、二元配置ANOVA、事後Bonferroni検定によって実施された。ビヒクルに対して
*P<0.05。
【
図2】
図2は、雄Balb/Cマウスにおいて化学療法誘発性医原性疼痛(CIIP)発生中の、A:機械的閾値-von Frey毛髪試験、及び、B:熱的閾値-Hargreaves試験を示す。B:ベースライン、PCX:パクリタキセル、WT:野生型。データは平均±SEMで表されている。N=5。統計分析は、二元配置ANOVA、事後Bonferroni検定によって実施された。WT PCX群に対して
*P<0.05。
【
図3a】
図3aは、最初のPCX(パクリタキセル)注射後8日目(A及びB)又は14日目(C及びD)に1mg/kgのDF2593A(矢印)で経口処置後の雄Balb/Cマウスにおける機械的閾値(A及びC)と冷感応答(B及びD)を示す。B:ベースライン。データは平均±SEMで表されている。N=5。統計分析は、二元配置ANOVA、事後Bonferroni検定によって実施された。PCX群に対して
*P<0.05。
【
図3b】
図3bは、最初のPCX(パクリタキセル)注射後8日目(A及びB)又は14日目(C及びD)に1mg/kgのDF2593A(矢印)で経口処置後の雄Balb/Cマウスにおける機械的閾値(A及びC)と冷感応答(B及びD)を示す。B:ベースライン。データは平均±SEMで表されている。N=5。統計分析は、二元配置ANOVA、事後Bonferroni検定によって実施された。PCX群に対して
*P<0.05。
【
図4】
図4は、雄Balb/Cマウスにおいて化学療法誘発性医原性疼痛(CIIP)発生中の、A:機械的閾値-von Frey毛髪試験、及び、B:冷感応答-アセトン試験を示す。B:ベースライン。動物は、12時間おきに7日間、DF2593A 1mg/kgで経口処置された。1、3、5及び7日目、DF2593Aの投与はパクリタキセル(PCX)の1時間前であった。測定はPCX注射4時間後に実施された。データは平均±SEMで表されている。N=5。統計分析は、二元配置ANOVA、事後Bonferroni検定によって実施された。PCX群に対して
*P<0.05。
【
図5a】
図5aは、最初のパクリタキセル(PCX)注射後8日目(A及びB)及び14日目(C及びD)に様々な用量のDF2593Aで髄腔内処置後の雄Balb/Cマウスにおける機械的閾値(A及びC)又は冷感応答(B及びD)を示す。B:ベースライン。データは平均±SEMで表されている。N=5。統計分析は、二元配置ANOVA、事後Bonferroni検定によって実施された。PCX群に対して
*P<0.05。
【
図5b】
図5bは、最初のパクリタキセル(PCX)注射後8日目(A及びB)及び14日目(C及びD)に様々な用量のDF2593Aで髄腔内処置後の雄Balb/Cマウスにおける機械的閾値(A及びC)又は冷感応答(B及びD)を示す。B:ベースライン。データは平均±SEMで表されている。N=5。統計分析は、二元配置ANOVA、事後Bonferroni検定によって実施された。PCX群に対して
*P<0.05。
【
図6】
図6は、雄Balb/Cマウスにおける機械的(A)及び冷感(B)異痛をDF3966A処置3時間後(パクリタキセルの4時間後)に評価したものを示す。群間の有意差は、二元配置分散分析(ANOVA)とその後の多重比較のためのBonferroni事後検定によって決定した。有意水準はCTRに対して
*P<0.05に設定された。
【
図7】
図7は、C5a単独又はDF3966Yとの組合せによるチャレンジ下でのα-チューブリンレベルを示す。データは3つの異なる実験の平均±SEMである。非処置細胞UTに対して
**P<0.01;C5aに対して#p<0.05。
【
図8】
図8は、基本条件下で維持されたDRG細胞における電気生理学的記録の代表的トレースを示す。処置A)パクリタキセルでチャレンジされたDRG細胞における電気生理学的記録の代表的トレース;処置B)パクリタキセル+DF3966YでチャレンジされたDRG細胞における電気生理学的記録の代表的トレース。
【
図9】
図9は、処置C)C5aでチャレンジされたDRG細胞における電気生理学的記録の代表的トレース;処置D)C5a+DF3966YでチャレンジされたDRG細胞における電気生理学的記録の代表的トレースを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実験の項において詳細に開示されている通り、本発明者らは、C5aR活性の阻害薬として作用する分子が、パクリタキセルによって誘発される医原性疼痛の動物モデルで治療効果を有することを見出した。さらに、本発明者らは、C5aR阻害が、化学療法薬の、その神経毒作用に寄与する細胞骨格の成分及び編成に対する活性を抑制できることも見出した。
【0026】
そこで、本発明の第一の目的は、化学療法誘発性医原性疼痛(CIIP)の治療及び/又は予防に使用するためのC5aR阻害薬である。
好適な態様に従って、前記C5aR阻害薬は、化学療法誘発性医原性疼痛(CIIP)に関連する異痛(アロディニア)の予防及び/又は治療に使用するためのものである。
【0027】
本願による「C5aR阻害薬」という用語は、C5a及び/又はC5aRの生物活性を部分的に又は全体的に阻害できる任意の化合物を指す。そのような化合物は、C5aの発現又は活性を低下させることによって、又はC5a受容体によって活性化される細胞内シグナル伝達の発動を阻害することによって作用することができる。前記C5a阻害薬は、500nM以下、好ましくは100nM未満の濃度で、C5aによって誘導されるPMNの走化性の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%を阻害できるのが好適である。
【0028】
本発明の第二の目的は、化学療法誘発性医原性疼痛(CIIP)の治療及び/又は予防のための医薬の製造におけるC5aR阻害薬の使用である。
本発明の好適な態様に従って、前記医薬は、化学療法誘発性医原性疼痛に関連する異痛を治療及び/又は予防するためのものである。
【0029】
本発明の第三の目的は、化学療法誘発性医原性疼痛の治療及び/又は予防法であって、それを必要とする対象に、治療上有効量の上記定義のC5aR阻害薬を投与する手順を含む方法である。
【0030】
本発明の好適な態様に従って、前記方法は、化学療法誘発性医原性疼痛に関連する異痛を治療及び/又は予防するためのものである。
本明細書において「治療上有効量」とは、疾患の治療又は予防を達成するのに足る量を指す。有効量の決定は、所望効果の達成を基にして十分当業者の能力の範囲内である。有効量は、これらの因子に限定されないが、対象の体重及び/又は対象が患っている疾患又は望まざる状態の程度を含む因子に依存する。本明細書中で使用されている用語「治療」及び「予防」とは、それぞれ、治療される疾患又はそれに付随する症状の一つ又は複数の根絶/改善又は発症の予防/遅延を指し、患者が依然としてその基礎疾患に苦しめられているかもしれないという事実には関係しない。
【0031】
本発明の第四の目的は、化学療法誘発性医原性疼痛(CIIP)の治療及び/又は予防に使用するためのC5aR阻害薬と薬学的に適切な賦形剤とを含む医薬組成物である。
本発明の好適な態様に従って、前記医薬組成物は、化学療法誘発性医原性疼痛に関連する異痛を治療及び/又は予防するためのものである。
【0032】
好適な態様に従って、本発明のすべての目的のC5aR阻害薬は、C5a受容体の非競合的アロステリック阻害薬である。
本発明による「C5a受容体の非競合的アロステリック阻害薬」とは、TM(膜貫通)領域に位置するアロステリック部位でC5a受容体と相互作用し、アゴニスト結合によって活性化される細胞内シグナル伝達事象を、内因性リガンドC5aのその受容体への結合に何ら影響することなく阻害する化合物を意味する。
【0033】
本発明による好適なC5aR阻害薬は、(R)-アリールアルキルアミノ誘導体、(R)-4-(ヘテロアリール)フェニルエチル化合物及びそれらの薬学的に許容可能な塩から選ばれる。
【0034】
上記化合物のうち、前記(R)-アリールアルキルアミノ誘導体は、好ましくは、式(I):
【0035】
【0036】
の化合物又はその薬学的に許容可能な塩であり、式中、
Rは、
- 2-チアゾリル又は2-オキサゾリル(非置換であるか又はメチル、tert-ブチルもしくはトリフルオロメチル基から選ばれる基によって置換されている);
- C(Ra)=N-W(ここで、Wは、直鎖又は分枝C1-C4アルキルである)、
- CORa、SORa、SO2Ra、PORa、PO2Ra
から選ばれ、
ここで、
Raは、
- C1-C5-アルキル、C3-C6-シクロアルキル、C2-C5-アルケニル、非置換又は置換フェニル(ハロゲン、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、ハロ-C1-C4-アルコキシ、ヒドロキシ、C1-C4-アシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノから選ばれる基で置換されている);
- ピリジン、ピリミジン、ピロール、チオフェン、フラン、インドール、チアゾール、オキサゾールから選ばれるヘテロアリール基(該ヘテロアリールは、非置換であるか又はハロゲン、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、ハロ-C1-C4-アルコキシ、ヒドロキシ、C1-C4-アシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノから選ばれる基で置換されている);
- 直鎖又は分枝C1-C6-アルキル、C3-C6-シクロアルキル、C2-C6-アルケニル、C1-C6-フェニルアルキルからなるα又はβカルボキシアルキル残基(任意にさらにカルボキシ(COOH)基で置換されていてもよい);
- 式II:
【0037】
【0038】
のω-アミノアルキルアミノ基
から選ばれ;
上記式(II)中、
Xは、
- 直鎖又は分枝C1-C6アルキレン、C4-C6アルケニレン、C4-C6アルキニレン(任意に、CO2R4基又はCONHR5基によって置換されていてもよく、ここで、R4は、水素又は直鎖もしくは分枝C1-C6アルキル基又は直鎖もしくは分枝C2-C6アルケニル基を表し、R5は、水素、直鎖又は分枝C2-C6アルキル又はOR4基を表し、R4は上記定義の通りである);
- (CH2)m-B-(CH2)n基(任意に、上記定義のCO2R4又はCONHR5基によって置換されていてもよく、式中、Bは、酸素、又は硫黄原子、又は窒素原子で、任意にC1-C4アルキル基で置換されていてもよく、mはゼロ又は2~3の整数であり、nは2~3の整数であるか、又は、Bは、CO、SO又はCONH基であり、mは1~3の整数であり、nは2~3の整数である)
を表すか、
- 又は、Xは、それが結合している窒素原子及びR2基と一緒になって、窒素含有3~7員のヘテロ環式、単環式又は多環式環を形成し、R3は、水素、C1-C4アルキル、C1-C4アシル、非置換又は置換フェニル(ハロゲン、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、ヒドロキシ、C1-C4-アシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノから選ばれる基で置換されている)を表し;
R2及びR3は、独立に、
水素、直鎖又は分枝C1-C6アルキル(任意に、酸素又は硫黄原子が介在していてもよい)、C3-C7シクロアルキル、C3-C6アルケニル、C3-C6-アルキニル、アリール-C1-C3-アルキル、ヒドロキシ-C2-C3-アルキル基であるか;
又は、R2及びR3は、それらが結合しているN原子と一緒になって、式(III):
【0039】
【0040】
の3~7員窒素へテロ環式環を形成し、
上記式(III)中、
Yは、
- 単結合、CH2、O、S、又はN-R6基{ここで、R6は、水素、C1-C4アルキル、C1-C4アシル、非置換又は置換フェニル(ハロゲン、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、ヒドロキシ、C1-C4-アシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノから選ばれる基で置換されている)を表す}、
そしてpは、0~3の整数を表し;
- 式SO2R7の残基(ここで、R7は、C1-C6-アルキル、C3-C6-シクロアルキル、C2-C6-アルケニル、アリール及びヘテロアリールである)
を表し;
R1は、直鎖又は分枝C1-C5アルキル、C3-C5シクロアルキルであり;
Arは、フェニル基(非置換であるか、又は、ハロゲン、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、ヒドロキシ、C1-C4-アシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、C1-C4-アシルアミノ、ハロ-C1-C3-アルキル、ハロ-C1-C3-アルコキシ、ベンゾイル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロアリール、直鎖又は分枝C1-C8-アルカンスルホネート、直鎖又は分枝C1-C8-アルカンスルホンアミド、直鎖又は分枝C1-C8アルキルスルホニルメチルから独立に選ばれる一つ又は複数の基によって置換されている)であるか;
又は、Arは、ピリジン、ピロール、チオフェン、フラン、インドールから選ばれるヘテロアリール環である。
【0041】
上記化合物のうち、特に好適なのは、前記式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩において、
Rが、
- 2-チアゾリル又は2-オキサゾリル(非置換であるか又はメチル、tert-ブチルもしくはトリフルオロメチル基から選ばれる基によって置換されている);
- C(Ra)=N-W(ここで、Wは、直鎖又は分枝C1-C4アルキルである)、
- CORa、SORa又はSO2Ra
から選ばれ、
ここで、Raは上記定義の通りであり;
Arが、
3’-ベンゾイルフェニル、3’-(4-クロロ-ベンゾイル)-フェニル、3’-(4-メチル-ベンゾイル)-フェニル、3’-アセチル-フェニル、3’-プロピオニル-フェニル、3’-イソブタノイル-フェニル、4’-イソブチル-フェニル、4’-トリフルオロメタンスルホニルオキシ-フェニル、4’-ベンゼンスルホニルオキシ-フェニル、4’-トリフルオロメタンスルホニルアミノ-フェニル、4’-ベンゼンスルホニルアミノ-フェニル、4’-ベンゼンスルホニルメチル-フェニル、4’-アセトキシフェニル、4’-プロピオニルオキシ-フェニル、4’-ベンゾイルオキシ-フェニル、4’-アセチルアミノ-フェニル、4’-プロピオニルアミノ-フェニル、4’-ベンゾイルアミノ-フェニル、3’-(フラン-2-カルボニル)-フェニル、3’-(ベンゾフラン-2-カルボニル)-フェニル、3’-(チオフェン-2-カルボニル)-フェニル、3’-(ピリジン-2-カルボニル)-フェニル、3’-(チアゾール-2-カルボニル)-フェニル、3’-(オキサゾール-2-カルボニル)-フェニル、3’-(2-フリル)-フェニル、3’-(2-オキサゾリル)-フェニル、3’-(3-イソオキサゾリル)-フェニル、3’-(2-ベンゾオキサゾリル)-フェニル、3’-(3-ベンゾイソオキサゾリル)-フェニル、3’-(2-チアゾリル)-フェニル、3’-(2-ピリジル)-フェニル、3’-(2-チオフェニル)-フェニルから選ばれるか;
又は、Arが、ピリジン、ピロール、チオフェン、フラン又はインドールから選ばれるヘテロアリール環である、式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0042】
上記化合物のうち、特に好適なのは、前記式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩において、
Rが、
- 2-チアゾリル(非置換であるか又はメチルもしくはトリフルオロメチル基から選ばれる基によって置換されている);
- CORa、SO2Ra、SORa
であり、
ここで、
Raは、
- C1-C5-アルキル、C3-C5-シクロアルキル;
- フェニル、2-ピリジル、2-チアゾリル、2-フリル、2-ピロリル、2-チオフェニル、2-インドリル基;
- 直鎖又は分枝C1-C6-アルキル、C1-C6-フェニルアルキル基からなるカルボキシアルキル基;
- 式II:
【0043】
【0044】
のω-アルキルアミノ基
から選ばれ;
上記式(II)中、
Xは、
直鎖又は分枝C1-C6アルキレン、C4-C6アルケニレン、C4-C6アルキニレンを表すか;
又は、Xは、それが結合している窒素原子及びR2基と一緒になって、窒素含有3~7員のヘテロ環式単環式環を形成し、R3は、水素又はC1-C4アルキルを表し;
R2及びR3は、独立に、水素、直鎖又は分枝C1-C6アルキル、C3-C7シクロアルキル、C3-C6アルケニル、C3-C6-アルキニルであるか;
又は、R2及びR3は、それらが結合しているN原子と一緒になって、式(III):
【0045】
【0046】
の4~6員窒素含有へテロ環式環を形成し、
上記式(III)中、
Yは、CH2、O、S、又はN-R6基(ここで、R6は、水素、C1-C4アルキル、C1-C4アシルを表す)を表し、そしてpは、0~2の整数を表し;
R1がメチルであり;
Arが、
3’-ベンゾイルフェニル、3’-(4-クロロ-ベンゾイル)-フェニル、3’-(4-メチル-ベンゾイル)-フェニル、3’-アセチル-フェニル、3’-プロピオニル-フェニル、3’-イソブタノイル-フェニル、4’-イソブチル-フェニル、4’-トリフルオロメタンスルホニルオキシ-フェニル、4’-ベンゼンスルホニルオキシ-フェニル、4’-トリフルオロメタンスルホニルアミノ-フェニル、4’-ベンゼンスルホニルアミノ-フェニル、4’-ベンゼンスルホニルメチル-フェニル、4’-アセトキシフェニル、4’-プロピオニルオキシ-フェニル、4’-ベンゾイルオキシ-フェニル、4’-アセチルアミノ-フェニル、4’-プロピオニルアミノ-フェニル、4’-ベンゾイルアミノ-フェニル;3’-(フラン-2-カルボニル)-フェニル;3’-(ベンゾフラン-2-カルボニル)-フェニル;3’-(チオフェン-2-カルボニル)-フェニル;3’-(ピリジン-2-カルボニル)-フェニル、3’-(チアゾール-2-カルボニル)-フェニル、3’-(オキサゾール-2-カルボニル)-フェニル;3’-(2-フリル)-フェニル、3’-(2-オキサゾリル)-フェニル、3’-(3-イソオキサゾリル)-フェニル、3’-(2-ベンゾオキサゾリル)-フェニル、3’-(3-ベンゾイソオキサゾリル)-フェニル、3’-(2-チアゾリル)-フェニル、3’-(2-ピリジル)-フェニル、3’-(2-チオフェニル)-フェニルから選ばれる、式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩でもある。
【0047】
上記化合物のうち、特に好適なのは、前記式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩において、
Rが、
- 2-チアゾリル(非置換であるか又はメチルもしくはトリフルオロメチル基から選ばれる基によって置換されている);
- CORa、SO2Ra
であり、
ここで、
Raは、
- C1-C5-アルキル、C3-C5-シクロアルキル;
- フェニル、2-ピリジル、2-フリル、2-チオフェニル基;
- 式II:
【0048】
【0049】
の基
から選ばれ;
上記式(II)中、
Xは、
直鎖又は分枝C1-C6アルキレンを表し;
R2及びR3は、それらが結合しているN原子と一緒になって、式(III):
【0050】
【0051】
の4~6員窒素含有へテロ環式環を形成し、
上記式(III)中、
YはCH2を表し、そしてpは0~2の整数を表し;
R1がメチルであり;
Arが、
3’-ベンゾイルフェニル、3’-(4-クロロ-ベンゾイル)-フェニル、3’-(4-メチル-ベンゾイル)-フェニル、4’-トリフルオロメタンスルホニルオキシ-フェニル、4’-ベンゼンスルホニルオキシ-フェニル、3’-(フラン-2-カルボニル)-フェニル
から選ばれる、式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩でもある。
【0052】
特に好適なのは、
4-{(1R)-1-[(フェニルスルホニル)アミノ]エチル}フェニルトリフルオロメタンスルホネート
N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]ベンゼンスルホンアミド
4-{(1R)-1-[(ピリジン-3-イルスルホニル)アミノ]エチル}フェニルトリフルオロメタンスルホネート
N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]メタンスルホンアミド
N-{(1R)-1-[3-(2-フロイル)フェニル]エチル}チオフェン-2-スルホンアミド
N-{(1R)-1-[3-(2-フロイル)フェニル]エチル}メタンスルホンアミド
4-{(1R)-1-[(チエン-2-イルスルホニル)アミノ]エチル}フェニルトリフルオロメタンスルホネート
N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]チオフェン-2-スルホンアミド
N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]-3-ピロリジン-1-イルプロパン-1-スルホンアミド
メチル 5-({[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]アミノ}スルホニル)-2-フロエート
5-({[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]アミノ}スルホニル)-2-フロ酸
4-{(1R)-2-メチル-1-[(メチルスルホニル)アミノ]プロピル}フェニルトリフルオロメタンスルホネート
N-((1R)-1-{4-[1-メチル-1-(フェニルスルホニル)エチル]フェニル}エチル)メタンスルホンアミド
4-[(1R)-1-(イソブチリルアミノ)エチル]フェニルトリフルオロメタンスルホネート
4-{[(1R)-1-(ピリジン-3-イルカルボニル)アミノ]エチル]}フェニルトリフルオロメタンスルホネート
N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]ベンズアミド
N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]-2-フラミド
N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]シクロブタンカルボキサミド
N-[(1R)-1-(4-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニルエチル]-4-ピペリジン-1-イルブタンアミド
4-{(1R)-1-[(4-ピロリジン-1-イルブタノイル)アミノ]エチル]}フェニルトリフルオロメタンスルホネート
3-{(1R)-1-[4-(4-トリフルオロメチル-1,3-チアゾール-2-イル)アミノ]エチル}フェニル)(フェニル)メタノン
から選ばれる、本発明による式(I)の化合物である。
【0053】
特に好適なのは、N-[(1R)-1-(4-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニルエチル]-4-ピペリジン-1-イルブタンアミド(本明細書においてはDF2593Yとしても示される)及びその薬学的に許容可能な塩、好ましくはその塩化物塩(本明細書においてはDF2593Aとしても示される)から選ばれる、本発明による式(I)の化合物である。
【0054】
式(I)の化合物は、WO2007/060215に開示されており、そこにはそれらの合成法、C5aR阻害薬としてのそれらの活性のほか、C5a誘導ヒトPMN走化性が関与する疾患、例えば、敗血症、乾癬、水疱性類天疱瘡、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、急性呼吸窮迫症候群、特発性線維症、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、糸球体腎炎の治療ならびに虚血と再潅流によって引き起こされる傷害の予防及び治療におけるそれらの使用も開示されている。
【0055】
上記C5aR阻害薬のうち、前記(R)-4-(ヘテロアリール)フェニルエチル化合物は、好ましくは、式(II):
【0056】
【0057】
の化合物又はその薬学的に許容可能な塩であり、
式中、
Xは、
- S、O及びN
から選ばれるヘテロ原子であり;
Yは、H又は
- ハロゲン、直鎖又は分枝C1-C4-アルキル、C2-C4-アルケニル、C1-C4-アルコキシ、ヒドロキシ、-COOH、C1-C4-アシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、-NH2、C1-C4-アシルアミノ、ハロ-C1-C3-アルキル、ベンゾイル、直鎖又は分枝C1-C8-アルカンスルホネート、直鎖又は分枝C1-C8-アルカンスルホンアミド、直鎖又は分枝C1-C8-アルキルスルホニルメチル
からなる群から選ばれる残基であり;
Zは、
非置換テトラゾール及び
1個のヒドロキシ基によって置換されている及び任意にさらに、ハロゲン、直鎖又は分枝C1-C4-アルキル、C2-C4-アルケニル、C1-C4-アルキルアミノ、C1-C4-アルコキシ、C1-C4-アルキルチオ、C1-C4-アシルオキシ、シアノ、ニトロ、NH2、C1-C4-アシルアミノ、ハロ-C1-C3-アルキル、ハロ-C1-C3-アルコキシ、直鎖又は分枝C1-C8-アルカンスルホネート及び直鎖又は分枝C1-C8-アルカンスルホンアミドからなる群から選ばれる一つ又は複数の基によって置換されていてもよいトリアゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、チアジアゾール及びオキサジアゾール
からなる群から選ばれるヘテロアリール環である。
【0058】
上記化合物のうち、好適なのは、式(II)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩において、
Xが、
- S及びO
から選ばれるヘテロ原子であり;
Yが、H又は
- ハロゲン、直鎖又は分枝C1-C4-アルキル及びハロ-C1-C3-アルキルからなる群から選ばれる;好ましくは、トリフルオロメチル、塩素、メチル及びtert-ブチルからなる群から選ばれる残基であり;
Zが、
非置換テトラゾール及び
1個のヒドロキシ基によって置換されている及び任意にさらに、ハロゲン、直鎖又は分枝C1-C4-アルキル、C1-C4-アルキルチオ及びハロ-C1-C3-アルキルからなる群から選ばれる;好ましくは、メチル、トリフルオロメチル及び塩素からなる群から選ばれる一つ又は複数の基によって置換されていてもよいトリアゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、チアジアゾール及びオキサジアゾール
からなる群から選ばれるヘテロアリール環である、式(II)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0059】
本発明による式(II)の特に好適な化合物は、
N-{4-[(1R)-1-(1H-テトラゾール-5-イル)エチル]フェニル}-4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-アミン;
4-メチル-N-{4-[(1R)-1-(1H-テトラゾール-5-イル)エチル]フェニル}-1,3-チアゾール-2-アミン;
4-tert-ブチル-N-{4-[(1R)-1-(1H-テトラゾール-5-イル)エチル]フェニル}-1,3-チアゾール-2-アミン;
N-{4-[(1R)-1-(1H-テトラゾール-5-イル)エチル]フェニル}-1,3-チアゾール-2-アミン;
N-{4-[(1R)-1-(1H-テトラゾール-5-イル)エチル]フェニル}-4-(トリフルオロメチル)-1,3-オキサゾール-2-アミン;
4-メチル-N-{4-[(1R)-1-(1H テトラゾール-5-イル)エチル]フェニル}-1,3-オキサゾール-2-アミン;
5-[(1R)-1-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)エチル]-1H ピラゾール-1-オール;
4-メチル-5-[(1R)-1-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)エチル]-1H-ピラゾール-1-オール;
5-[(1R)-1-(4-([4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)エチル]-1H-1,2,3-トリアゾール-1-オール;
5-[(1R)-1-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)エチル]イソオキサゾール-3-オール;
4-メチル-5-[(1R)-1-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)エチル]イソオキサゾール-3-オール;
5-[(1R)-1-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)エチル]イソチアゾール-3-オール;
4-[(1R)-1-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)エチル]-1,2,5-オキサジアゾール-3-オール;
4-[(1R)-1-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)エチル]-1,2,5-チアジアゾール-3-オール;
5-[(1R)-1-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)エチル]-1H 1,2,4-トリアゾール-1-オール
から選ばれる。
【0060】
本発明による式(II)の特に好適な化合物は、1-N-[4-[(1R)-1-(1H-テトラゾール-5-イル)エチル]フェニル}-4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-アミン(本明細書においてはDF3966Yとしても示される)及びその薬学的に許容可能な塩、好ましくはそのナトリウム塩(本明細書においてはDF3966Aとしても示される)から選ばれる。
【0061】
式(II)のC5aR阻害薬は、WO2009/050258に開示されており、そこにはそれらの合成法、C5aR阻害薬としてのそれらの活性のほか、C5a誘導ヒトPMN走化性が関与する疾患、例えば、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、乾癬、水疱性類天疱瘡、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、急性呼吸窮迫症候群、特発性線維症、糸球体腎炎の治療ならびに虚血と再潅流によって引き起こされる傷害の予防及び治療におけるそれらの使用も開示されている。
【0062】
本発明による化学療法誘発性医原性疼痛は、神経毒性の副作用を有する任意の化学療法薬によって誘発されるものでありうる。好ましくは、前記化学療法薬は、白金系薬物、タキサン系、エポチロン類、植物アルカロイド系、サリドマイド、レナリドミド及びポマリドミド、カルフィルゾミブ、ボルテゾミブ及びエリブリンから選ばれる。さらに好ましくは、前記化学療法薬は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、カバジタキセル、ドセタキセル、イクサベピロン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、エトポシド、サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、カルフィルゾミブ、ボルテゾミブ及びエリブリンから選ばれる。好適な態様によれば、化学療法誘発性医原性疼痛は、タキサンによって、さらに好ましくはパクリタキセルによって誘発されるものである。
本発明の態様には、以下も含まれる。
態様1 化学療法誘発性医原性疼痛の予防及び/又は治療に使用するためのC5aR阻害薬。
態様2 化学療法誘発性医原性疼痛に関連する異痛の予防及び/又は治療における、態様1に記載の使用のためのC5aR阻害薬。
態様3 (R)-アリールアルキルアミノ誘導体、(R)-4-(ヘテロアリール)フェニルエチル化合物及びそれらの薬学的に許容可能な塩から選ばれる、態様1又は2に記載の使用のためのC5aR阻害薬。
態様4 前記(R)-アリールアルキルアミノ誘導体が、式(I):
【化10】
の化合物又は薬学的に許容可能な塩から選ばれ、
式中、
Rは、
- 2-チアゾリル又は2-オキサゾリル(非置換であるか又はメチル、tert-ブチルもしくはトリフルオロメチル基から選ばれる基によって置換されている);
- C(Ra)=N-W(ここで、Wは、直鎖又は分枝C
1
-C
4
アルキルである)、
- CORa、SORa、SO
2
Ra、PORa、PO
2
Ra
から選ばれ、
ここで、
Raは、
- C
1
-C
5
-アルキル、C
3
-C
6
-シクロアルキル、C
2
-C
5
-アルケニル、非置換又は置換フェニル(ハロゲン、C
1
-C
4
-アルキル、C
1
-C
4
-アルコキシ、ハロ-C
1
-C
4
-アルコキシ、ヒドロキシ、C
1
-C
4
-アシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノから選ばれる基で置換されている);
- ピリジン、ピリミジン、ピロール、チオフェン、フラン、インドール、チアゾール、オキサゾールから選ばれるヘテロアリール基(該ヘテロアリールは、非置換であるか又はハロゲン、C
1
-C
4
-アルキル、C
1
-C
4
-アルコキシ、ハロ-C
1
-C
4
-アルコキシ、ヒドロキシ、C
1
-C
4
-アシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノから選ばれる基で置換されている);
- 直鎖又は分枝C
1
-C
6
-アルキル、C
3
-C
6
-シクロアルキル、C
2
-C
6
-アルケニル、C
1
-C
6
-フェニルアルキルからなるα又はβカルボキシアルキル残基(任意にさらにカルボキシ(COOH)基で置換されていてもよい);
- 式II:
【化11】
のω-アミノアルキルアミノ基
から選ばれ;
上記式(II)中、
Xは、
- 直鎖又は分枝C
1
-C
6
アルキレン、C
4
-C
6
アルケニレン、C
4
-C
6
アルキニレン(任意に、CO
2
R4基又はCONHR5基によって置換されていてもよく、ここで、R4は、水素又は直鎖もしくは分枝C
1
-C
6
アルキル基又は直鎖もしくは分枝C
2
-C
6
アルケニル基を表し、R5は、水素、直鎖又は分枝C
2
-C
6
アルキル又はOR4基を表し、R4は上記定義の通りである);
- (CH
2
)
m
-B-(CH
2
)
n
基(任意に、上記定義のCO
2
R4又はCONHR5基によって置換されていてもよく、式中、Bは、酸素、又は硫黄原子、又は窒素原子で、任意にC
1
-C
4
アルキル基で置換されていてもよく、mはゼロ又は2~3の整数であり、nは2~3の整数であるか、又は、Bは、CO、SO又はCONH基であり、mは1~3の整数であり、nは2~3の整数である)
を表すか、
- 又は、Xは、それが結合している窒素原子及びR2基と一緒になって、窒素含有3~7員のヘテロ環式、単環式又は多環式環を形成し、R3は、水素、C
1
-C
4
アルキル、C
1
-C
4
アシル、非置換又は置換フェニル(ハロゲン、C
1
-C
4
-アルキル、C
1
-C
4
-アルコキシ、ヒドロキシ、C
1
-C
4
-アシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノから選ばれる基で置換されている)を表し;
R2及びR3は、独立に、
水素、直鎖又は分枝C
1
-C
6
アルキル(任意に、酸素又は硫黄原子が介在していてもよい)、C
3
-C
7
シクロアルキル、C
3
-C
6
アルケニル、C
3
-C
6
-アルキニル、アリール-C
1
-C
3
-アルキル、ヒドロキシ-C
2
-C
3
-アルキル基であるか;
又は、R2及びR3は、それらが結合しているN原子と一緒になって、式(III):
【化12】
の3~7員窒素へテロ環式環を形成し、
上記式(III)中、
Yは、
- 単結合、CH
2
、O、S、又はN-R6基{ここで、R6は、水素、C
1
-C
4
アルキル、C
1
-C
4
アシル、非置換又は置換フェニル(ハロゲン、C
1
-C
4
-アルキル、C
1
-C
4
-アルコキシ、ヒドロキシ、C
1
-C
4
-アシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノから選ばれる基で置換されている)を表す}、
そしてpは、0~3の整数を表し;
- 式SO
2
R7の残基(ここで、R7は、C
1
-C
6
-アルキル、C
3
-C
6
-シクロアルキル、C
2
-C
6
-アルケニル、アリール及びヘテロアリールである)
を表し;
R1は、直鎖又は分枝C
1
-C
5
アルキル、C
3
-C
5
シクロアルキルであり;
Arは、フェニル基(非置換であるか、又は、ハロゲン、C
1
-C
4
-アルキル、C
1
-C
4
-アルコキシ、ヒドロキシ、C
1
-C
4
-アシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、C
1
-C
4
-アシルアミノ、ハロ-C
1
-C
3
-アルキル、ハロ-C
1
-C
3
-アルコキシ、ベンゾイル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロアリール、直鎖又は分枝C
1
-C
8
-アルカンスルホネート、直鎖又は分枝C
1
-C
8
-アルカンスルホンアミド、直鎖又は分枝C
1
-C
8
アルキルスルホニルメチルから独立に選ばれる一つ又は複数の基によって置換されている)であるか;
又は、Arは、ピリジン、ピロール、チオフェン、フラン、インドールから選ばれるヘテロアリール環である、態様3に記載の使用のためのC5aR阻害薬。
態様5
Rが、
- 2-チアゾリル又は2-オキサゾリル(非置換であるか又はメチル、tert-ブチルもしくはトリフルオロメチル基から選ばれる基によって置換されている);
- C(Ra)=N-W(ここで、Wは、直鎖又は分枝C
1
-C
4
アルキルである)、
- CORa、SORa又はSO
2
Ra
から選ばれ、
ここで、Raは上記定義の通りであり;
Arが、
3’-ベンゾイルフェニル、3’-(4-クロロ-ベンゾイル)-フェニル、3’-(4-メチル-ベンゾイル)-フェニル、3’-アセチル-フェニル、3’-プロピオニル-フェニル、3’-イソブタノイル-フェニル、4’-イソブチル-フェニル、4’-トリフルオロメタンスルホニルオキシ-フェニル、4’-ベンゼンスルホニルオキシ-フェニル、4’-トリフルオロメタンスルホニルアミノ-フェニル、4’-ベンゼンスルホニルアミノ-フェニル、4’-ベンゼンスルホニルメチル-フェニル、4’-アセトキシフェニル、4’-プロピオニルオキシ-フェニル、4’-ベンゾイルオキシ-フェニル、4’-アセチルアミノ-フェニル、4’-プロピオニルアミノ-フェニル、4’-ベンゾイルアミノ-フェニル、3’-(フラン-2-カルボニル)-フェニル、3’-(ベンゾフラン-2-カルボニル)-フェニル、3’-(チオフェン-2-カルボニル)-フェニル、3’-(ピリジン-2-カルボニル)-フェニル、3’-(チアゾール-2-カルボニル)-フェニル、3’-(オキサゾール-2-カルボニル)-フェニル、3’-(2-フリル)-フェニル、3’-(2-オキサゾリル)-フェニル、3’-(3-イソオキサゾリル)-フェニル、3’-(2-ベンゾオキサゾリル)-フェニル、3’-(3-ベンゾイソオキサゾリル)-フェニル、3’-(2-チアゾリル)-フェニル、3’-(2-ピリジル)-フェニル、3’-(2-チオフェニル)-フェニルから選ばれるか;
又は、Arが、ピリジン、ピロール、チオフェン、フラン又はインドールから選ばれるヘテロアリール環である、態様4に記載の使用のためのC5aR阻害薬。
態様6
Rが、
- 2-チアゾリル(非置換であるか又はメチルもしくはトリフルオロメチル基から選ばれる基によって置換されている)、
- CORa、SO
2
Ra、SORa
であり、
ここで、
Raは、
- C
1
-C
5
-アルキル、C
3
-C
5
-シクロアルキル;
- フェニル、2-ピリジル、2-チアゾリル、2-フリル、2-ピロリル、2-チオフェニル、2-インドリル基;
- 直鎖又は分枝C
1
-C
6
-アルキル、C
1
-C
6
-フェニルアルキル基からなるカルボキシアルキル基;
- 式II:
【化13】
のω-アルキルアミノ基
から選ばれ;
上記式(II)中、
Xは、
直鎖又は分枝C
1
-C
6
アルキレン、C
4
-C
6
アルケニレン、C
4
-C
6
アルキニレンを表すか;
又は、Xは、それが結合している窒素原子及びR2基と一緒になって、窒素含有3~7員のヘテロ環式単環式環を形成し、R3は、水素又はC
1
-C
4
アルキルを表し;
R2及びR3は、独立に、水素、直鎖又は分枝C
1
-C
6
アルキル、C
3
-C
7
シクロアルキル、C
3
-C
6
アルケニル、C
3
-C
6
-アルキニルであるか;
又は、R2及びR3は、それらが結合しているN原子と一緒になって、式(III):
【化14】
の4~6員窒素含有へテロ環式環を形成し、
上記式(III)中、
Yは、CH
2
、O、S、又はN-R6基(ここで、R6は、水素、C
1
-C
4
アルキル、C
1
-C
4
アシルを表す)を表し、そしてpは、0~2の整数を表し;
R1がメチルであり;
Arが、
3’-ベンゾイルフェニル、3’-(4-クロロ-ベンゾイル)-フェニル、3’-(4-メチル-ベンゾイル)-フェニル、3’-アセチル-フェニル、3’-プロピオニル-フェニル、3’-イソブタノイル-フェニル、4’-イソブチル-フェニル、4’-トリフルオロメタンスルホニルオキシ-フェニル、4’-ベンゼンスルホニルオキシ-フェニル、4’-トリフルオロメタンスルホニルアミノ-フェニル、4’-ベンゼンスルホニルアミノ-フェニル、4’-ベンゼンスルホニルメチル-フェニル、4’-アセトキシフェニル、4’-プロピオニルオキシ-フェニル、4’-ベンゾイルオキシ-フェニル、4’-アセチルアミノ-フェニル、4’-プロピオニルアミノ-フェニル、4’-ベンゾイルアミノ-フェニル;3’-(フラン-2-カルボニル)-フェニル;3’-(ベンゾフラン-2-カルボニル)-フェニル;3’-(チオフェン-2-カルボニル)-フェニル;3’-(ピリジン-2-カルボニル)-フェニル、3’-(チアゾール-2-カルボニル)-フェニル、3’-(オキサゾール-2-カルボニル)-フェニル;3’-(2-フリル)-フェニル、3’-(2-オキサゾリル)-フェニル、3’-(3-イソオキサゾリル)-フェニル、3’-(2-ベンゾオキサゾリル)-フェニル、3’-(3-ベンゾイソオキサゾリル)-フェニル、3’-(2-チアゾリル)-フェニル、3’-(2-ピリジル)-フェニル、3’-(2-チオフェニル)-フェニルから選ばれる、態様4に記載の使用のためのC5aR阻害薬。
態様7
Rが、
- 2-チアゾリル(非置換であるか又はメチルもしくはトリフルオロメチル基から選ばれる基によって置換されている);
- CORa、SO
2
Ra
であり、
ここで、
Raは、
- C
1
-C
5
-アルキル、C
3
-C
5
-シクロアルキル;
- フェニル、2-ピリジル、2-フリル、2-チオフェニル基;
- 式II:
【化15】
の基から選ばれ;
上記式(II)中、
Xは、
直鎖又は分枝C
1
-C
6
アルキレンを表し;
R2及びR3は、それらが結合しているN原子と一緒になって、式(III):
【化16】
の4~6員窒素含有へテロ環式環を形成し、
上記式(III)中、
YはCH
2
を表し、そしてpは0~2の整数を表し;
R1がメチルであり;
Arが、
3’-ベンゾイルフェニル、3’-(4-クロロ-ベンゾイル)-フェニル、3’-(4-メチル-ベンゾイル)-フェニル、4’-トリフルオロメタンスルホニルオキシ-フェニル、4’-ベンゼンスルホニルオキシ-フェニル、3’-(フラン-2-カルボニル)-フェニル
から選ばれる、態様4に記載の使用のためのC5aR阻害薬。
態様8
4-{(1R)-1-[(フェニルスルホニル)アミノ]エチル}フェニルトリフルオロメタンスルホネート
N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]ベンゼンスルホンアミド
4-{(1R)-1-[(ピリジン-3-イルスルホニル)アミノ]エチル}フェニルトリフルオロメタンスルホネート
N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]メタンスルホンアミド
N-{(1R)-1-[3-(2-フロイル)フェニル]エチル}チオフェン-2-スルホンアミド
N-{(1R)-1-[3-(2-フロイル)フェニル]エチル}メタンスルホンアミド
4-{(1R)-1-[(チエン-2-イルスルホニル)アミノ]エチル}フェニルトリフルオロメタンスルホネート
N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]チオフェン-2-スルホンアミド
N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]-3-ピロリジン-1-イルプロパン-1-スルホンアミド
メチル 5-({[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]アミノ}スルホニル)-2-フロエート
5-({[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]アミノ}スルホニル)-2-フロ酸
4-{(1R)-2-メチル-1-[(メチルスルホニル)アミノ]プロピル}フェニルトリフルオロメタンスルホネート
N-((1R)-1-{4-[1-メチル-1-(フェニルスルホニル)エチル]フェニル}エチル)メタンスルホンアミド
4-[(1R)-1-(イソブチリルアミノ)エチル]フェニルトリフルオロメタンスルホネート
4-{[(1R)-1-(ピリジン-3-イルカルボニル)アミノ]エチル]}フェニルトリフルオロメタンスルホネート
N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]ベンズアミド
N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]-2-フラミド
N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]シクロブタンカルボキサミド
N-[(1R)-1-(4-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニルエチル]-4-ピペリジン-1-イルブタンアミド
4-{(1R)-1-[(4-ピロリジン-1-イルブタノイル)アミノ]エチル]}フェニルトリフルオロメタンスルホネート
3-{(1R)-1-[4-(4-トリフルオロメチル-1,3-チアゾール-2-イル)アミノ]エチル}フェニル)(フェニル)メタノン及びそれらの薬学的に許容可能な塩から選ばれ、好ましくは、N-[(1R)-1-(4-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニルエチル]-4-ピペリジン-1-イルブタンアミド及びその塩化物塩から選ばれる、前記態様のいずれかに記載の使用のためのC5aR阻害薬。
態様9 前記(R)-4-(ヘテロアリール)フェニルエチル化合物が、式(II):
【化17】
の化合物又はその薬学的に許容可能な塩から選ばれ、
式中、
Xは、
- S、O及びN
から選ばれるヘテロ原子であり;
Yは、H又は
- ハロゲン、直鎖又は分枝C
1
-C
4
-アルキル、C
2
-C
4
-アルケニル、C
1
-C
4
-アルコキシ、ヒドロキシ、-COOH、C
1
-C
4
-アシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、-NH
2
、C
1
-C
4
-アシルアミノ、ハロ-C
1
-C
3
-アルキル、ベンゾイル、直鎖又は分枝C
1
-C
8
-アルカンスルホネート、直鎖又は分枝C
1
-C
8
-アルカンスルホンアミド、直鎖又は分枝C
1
-C
8
-アルキルスルホニルメチルからなる群から選ばれる残基であり;
Zは、
非置換テトラゾール及び
1個のヒドロキシ基によって置換されている及び任意にさらに、ハロゲン、直鎖又は分枝C
1
-C
4
-アルキル、C
2
-C
4
-アルケニル、C
1
-C
4
-アルキルアミノ、C
1
-C
4
-アルコキシ、C
1
-C
4
-アルキルチオ、C
1
-C
4
-アシルオキシ、シアノ、ニトロ、NH
2
、C
1
-C
4
-アシルアミノ、ハロ-C
1
-C
3
-アルキル、ハロ-C
1
-C
3
-アルコキシ、直鎖又は分枝C
1
-C
8
-アルカンスルホネート及び直鎖又は分枝C
1
-C
8
-アルカンスルホンアミドからなる群から選ばれる一つ又は複数の基によって置換されていてもよいトリアゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、チアジアゾール及びオキサジアゾール
からなる群から選ばれるヘテロアリール環である、態様3に記載の使用のためのC5aR阻害薬。
態様10
Xが、
- S及びO
から選ばれるヘテロ原子であり;
Yが、H又は
- ハロゲン、直鎖又は分枝C
1
-C
4
-アルキル及びハロ-C
1
-C
3
-アルキルからなる群から選ばれる;好ましくは、トリフルオロメチル、塩素、メチル及びtert-ブチルからなる群から選ばれる残基であり;
Zが、
非置換テトラゾール及び
1個のヒドロキシ基によって置換されている及び任意にさらに、ハロゲン、直鎖又は分枝C
1
-C
4
-アルキル、C
1
-C
4
-アルキルチオ及びハロ-C
1
-C
3
-アルキルからなる群から選ばれる;好ましくは、メチル、トリフルオロメチル及び塩素からなる群から選ばれる一つ又は複数の基によって置換されていてもよいトリアゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、チアジアゾール及びオキサジアゾール
からなる群から選ばれるヘテロアリール環である、態様9に記載の使用のためのC5aR阻害薬。
態様11
N-{4-[(1R)-1-(1H-テトラゾール-5-イル)エチル]フェニル}-4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-アミン;
4-メチル-N-{4-[(1R)-1-(1H-テトラゾール-5-イル)エチル]フェニル}-1,3-チアゾール-2-アミン;
4-tert-ブチル-N-{4-[(1R)-1-(1H-テトラゾール-5-イル)エチル]フェニル}-1,3-チアゾール-2-アミン;
N-{4-[(1R)-1-(1H-テトラゾール-5-イル)エチル]フェニル}-1,3-チアゾール-2-アミン;
N-{4-[(1R)-1-(1H-テトラゾール-5-イル)エチル]フェニル}-4-(トリフルオロメチル)-1,3-オキサゾール-2-アミン;
4-メチル-N-{4-[(1R)-1-(1H テトラゾール-5-イル)エチル]フェニル}-1,3-オキサゾール-2-アミン;
5-[(1R)-1-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)エチル]-1H ピラゾール-1-オール;
4-メチル-5-[(1R)-1-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)エチル]-1H-ピラゾール-1-オール;
5-[(1R)-1-(4-([4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)エチル]-1H-1,2,3-トリアゾール-1-オール;
5-[(1R)-1-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)エチル]イソオキサゾール-3-オール;
4-メチル-5-[(1R)-1-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)エチル]イソオキサゾール-3-オール;
5-[(1R)-1-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)エチル]イソチアゾール-3-オール;
4-[(1R)-1-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)エチル]-1,2,5-オキサジアゾール-3-オール;
4-[(1R)-1-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)エチル]-1,2,5-チアジアゾール-3-オール;
5-[(1R)-1-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)エチル]-1H 1,2,4-トリアゾール-1-オール及びそれらの薬学的に許容可能な塩から選ばれ、好ましくは、1-N-[4-[(1R)-1-(1H-テトラゾール-5-イル)エチル]フェニル}-4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-アミン及びそのナトリウム塩から選ばれる、態様9又は10に記載の使用のためのC5aR阻害薬。
態様12 前記化学療法誘発性医原性疼痛が、白金系薬物、タキサン系、エポチロン類、植物アルカロイド系、サリドマイド、レナリドミド及びポマリドミド、カルフィルゾミブ、ボルテゾミブ及びエリブリン、好ましくはタキサン系及び白金系薬物から選ばれる化学療法薬によって誘発される、前記態様のいずれかに記載の使用のためのC5aR阻害薬。
態様13 前記化学療法薬が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、カバジタキセル、ドセタキセル、イクサベピロン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、エトポシド、サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、カルフィルゾミブ、ボルテゾミブ及びエリブリン、好ましくはパクリタキセルから選ばれる、態様12に記載の使用のためのC5aR阻害薬。
態様14 CIIPの予防及び/又は治療のための医薬組成物であって、態様1~11のいずれかに記載のC5aR阻害薬と少なくとも一つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物。
【実施例】
【0063】
方法及び材料
薬物及び試薬
下記材料を表記の供給元から入手した。組換えマウスC5aは、R&Dから購入し(ロットMJJ0714041)、BSA 0.1%中に希釈し、-70℃で保持した。パクリタキセル(Evotaxel(登録商標) Evolabis社、ロットA37053)は4℃で保持し、使用時に生理食塩水中に希釈した。髄腔内注射の場合、使用されたビヒクルはTocris社製のaCSF(人工脳脊髄液)であった。
【0064】
生化学キット及び試薬
CellTag 700 染色ICWキット(Li-cor社、カタログ番号926-41091)
Gro/KC,Peprotech社、カタログ番号400-10
組換えラットCXCL1/GRO アルファ/KC/ CINC-1 タンパク質 - R&D Systems社、カタログ番号515-CN ロット44S0211121
パクリタキセル(タキソール) - Tocris-R&D systems社、1097番 ロット7A/177205
C5a成分 - 組換えマウス補体 - R&D Systems社、2150-c5番 ロットMJJ0715041
Hoechst 33342 - Thermo Fischer Sc.社、H3570番
動物
実験は、雄のBalb/c野生型(WT)及びC5aR欠損(C5aR-/-)マウス(6~8週齢)で実施した。DF2593Aを用いる実験では、サン・パウロ大学リベイラン・プレート(Ribeirao Preto)医学校の動物世話施設にて、動物を20℃±1℃のプラスチックケージに入れ、水と餌を自由に与え、制御された明/暗サイクルで飼育した。経口急性処置を行う場合、動物は2~4時間絶食させた。動物は実験の少なくとも1時間前に試験室に運ばれ、使用は1回きりであった。動物の世話と取扱い手順は、国際疼痛学会(International Association for the Study of Pain)のガイドライン及びリベイラン・プレート医学校の動物実験倫理委員会(Animal Ethic Committee)のプロトコル120/2014による管理に従った。
【0065】
DF3966Aを用いる実験では、イタリア・ナポリ大学薬学部の動物世話施設にて、温度(22±1℃)、湿度(60±10%)及び光(1日12時間)が制御された室内で動物を飼育した。餌と水は自由に与えた。すべての行動試験は午前9時から午後5時の間に実施し、動物の使用は1回きりであった。動物の世話と取扱いは国際及び国内の法律及び政策に従って実施した(動物実験に関するEU指令2010/63/EU、ARRIVEガイドライン及び3R概念(リデュース、リユース、リサイクル)を含むバーゼル宣言)。本明細書中で報告されている手順は、フェデリコ2世ナポリ大学(University of Naples Federico II)の動物実験の倫理に関する機関内委員会(Institutional Committee on the Ethics of Animal Experiments)(CVS)及び保健省(Ministero della Salute)により、プロトコル番号2014-00884607の下、認可されたものであった。
【0066】
CIIP(化学療法誘発性医原性疼痛)実験プロトコル
使用されたプロトコルは、マウスに適応された、POLOMANOら,2001 に従って実施された。動物にはパクリタキセル4mg/kgを隔日に4回(1、3、5、及び7日目)腹腔内(i.p.)投与した。処置期間中、機械的異痛及び冷感異痛をパクリタキセル注射の4時間後に測定した。
【0067】
急性後処置(acute post treatment)
DF2593Aを、最初のパクリタキセル注射後8日目及び14日目に1mg/kgの用量で経口投与した。薬物の効果は投与の2、4、6及び24時間後に評価した。
【0068】
慢性前処置(chronic pre treatment)
DF2593Aを、CIIP誘導期の7日間、12時間おきに1mg/kgの用量で経口投与した。1、3、5及び7日目、DF2593Aの投与はパクリタキセルの1時間前であった。
【0069】
DF3966Aを1日目から14日目に(1日2回、8:00amと20:00pm)30mg/kg/os(経口)投与した。1-3-5-7日目、DF3966Aはパクリタキセルの1時間後に投与された。
【0070】
髄腔内処置
10、30又は100μg/5μLの用量のDF2593Aを最初のパクリタキセル注射(CIIP)後8日目及び14日目に注射した。
【0071】
組換えマウスC5aを5μLの容量で髄腔内経路により投与し、その影響を注射の1、3、5、7及び24時間後に追跡した。
機械的侵害受容足底部試験(mechanical nociceptive paw test)
DF2593A実験では、機械的痛覚過敏をvon Freyフィラメントを用いて試験した。マウスを試験開始15~30分前に静寂室内のワイヤ格子床付きアクリルケージ(12×10×17cm)に入れた。一連の漸増する(太さの)フィラメントをCIIPマウスの右足に当てた。振り回し(flinching)行動を引き起こすことができた細い方のフィラメントを機械的閾値として記録した。動物は処置の前及び後に試験され、結果は機械的閾値の対数として表される。
【0072】
DF3966A実験では、触覚刺激に対する感受性をダイナミック・プランター・エステシオメーター(Dynamic Plantar Aesthesiometer)(DPA、Ugo Basile社、イタリア)を用いて測定した。動物を金属メッシュの床付きチャンバに入れ、これをプラスチックドームで覆った。動物は自由に歩けるがジャンプはできない。次に機械的刺激を後足の中間足底部の皮膚に与えた。カットオフは50gに設定された。試験は、両足に対して、パクリタキセルの最初の投与前及びパクリタキセルの最初の投与後3日目、5日目、7日目、10日目及び14日目に実施した。
【0073】
冷感異痛-アセトン試験
von Frey試験と同じ装置で、機械的試験のおよそ15分後、アセトン試験を実施した。1mL注射器を用いて1滴(50μL)の純アセトンを放出し、液体を足の両面(足の背側と底側)に広がらせた。足を舐める、振り回す又は持ち上げるなどのすべての動きを全2分間の試験時間にクロノメーターで記録した。
【0074】
熱潜時(heat latency)-Hargreaves試験
Hargreaves試験を以前の記述どおりに実施した(HARGREAVESら,1988)。足に赤外光を均一送達できる温度制御されたガラス表面の上で動物を慣らした。光源の活性化後、クロノメーターのスイッチを入れた。漸増温度が足に到達し、動物が光から足を引っ込める動きをした途端クロノメーターを切った。記録された時間が熱潜時と見なされた。足への損傷を回避するために20秒のカットオフが設定された。結果は秒で表される。
【0075】
後根神経節(DRG)ニューロンの初代培養
後根神経節ニューロンは、明確に定義されたプロトコル(O’Mearaら,2011;Owenら,2012)に従って、生後(P2)のSprague Dawleyラットの神経節から切離することによって得た(Envigo社、イタリア・ブレッソ)。培養物への細胞汚染の導入を最小限に抑えるために、過度に長い神経根はすべてDRGから切り取った(トリミングした)。単離後、DRGを下記のように酵素分解した。
【0076】
- 1.5mg/mlパパインへの20分間37℃での暴露
- 4mg/mlコラゲナーゼへの30分間37℃での暴露
その後、単一細胞懸濁物を得るために、火炎研磨されたガラス製パスツールピペットを用いて細胞を機械的に分離した。
【0077】
分離が達成されたら、細胞をラミニンで被覆された(10ug/mL、室温RTで一晩)黒色96マルチウェルプレートに選択密度で播種した。10%FBS、1×N2、1×B27、100IU/mlペニシリン、10mg/mlストレプトマイシンを補充したDMEM高グルコース培地中で1週間インキュベーションした後、細胞を実験の必要性に応じて処置した。
【0078】
α-チューブリン評価のための細胞内(In-cell)ウェスタン分析
前の報告通りに単離された後根神経節ニューロンを以下の実験的チャレンジ(experimental challenge)スキームに付した。
【0079】
【0080】
パクリタキセル、C5a及び薬物を細胞内ウェスタン実験の24時間前に投与した。
前に示したような適切な刺激で24時間処置した後、細胞をPBSで1回(1×PBS)洗浄し、3.7%ホルムアルデヒドで15分間固定した。固定液の除去後、細胞を1×PBSで洗浄し、室温で5分間、1×PBS-0.1%トリトンX-100で透過処理した。次に、細胞を、製造業者のプロコトルに従って、4℃で一晩、抗アセチル化α-チューブリン抗体で染色し、Odysseyブロッキングバッファ中1:500に希釈した。
【0081】
翌日、細胞を1×PBS-0.1%トゥイーン20で洗浄し、二次抗体(プロトコルで推奨されているとおり、Odysseyブロッキングバッファ中1:800に希釈)及びCellTag 700 Stain 0.2Mで染色した。バックグラウンドを低くするために、最終濃度0.2%のトゥイーン20をOdysseyブロッキングバッファに添加した。次に、96ウェルプレートをOdyssey CLx画像システムで読み取り、画像を得た。データ分析はImage Studio 2.1ソフトウェアを用いて実施した。
【0082】
アルファチューブリンのアセチル化
DRG由来ニューロンを7日間培養し、次いで、
- DF3966Y(0.1、1及び10μM)又はDF2593A(0.1、1及び10μM)の存在下又は不在下で、パクリタキセル(200nM、500nM、1μM及び5μM、20μM)
- 又は、DF3966Y(1μM)の存在下又は不在下で、C5a(500ng/ml及び1μg/ml)
で処置した。
【0083】
24時間の処置後、細胞を免疫蛍光により染色した。
免疫蛍光
細胞をサッカロース-パラホルムアルデヒドで固定した後、染色を一晩実施した。一次抗体(抗IIIチューブリン及び抗シナプトタグミン1)を1×PBS-4%BSA-2%ヤギ正常血清及び0.3%トリトンx-100中で1:500に希釈した。
【0084】
翌日、細胞を1×PBS-4%BSAで洗浄し、二次抗体を1×PBS-4%BSA-2%ヤギ正常血清及び0.3%トリトンx-100中で1:500に希釈して使用した。1時間のインキュベーション後、細胞を1×PBSで洗浄した。Hoechstを対比染色として使用した。
【0085】
画像分析
ウェルあたり16枚の画像をArrayScan XTI HCA リーダー(Thermo Fisher Scientific社)を用い、40倍の対物レンズで撮影した。すべての分析はHCS Studioソフトウェア(Thermo Fisher Scientific社)を用いて実施した。
【0086】
シナプス計数に関しては、閾値が設定されていた。特に、シナプトタグミン染色に陽性で0.365~2.457μm2の範囲の全対象物をシナプスと見なした。
電気生理学的処置
後根神経節(DRG)由来ニューロンを7日間培養した後、盲検的に下記組合せで処置した。10nMパクリタキセル、10nMパクリタキセル+1μMのDF3966Y、1μg/mlのC5a、1μg/mlのC5a+1μMのDF3966Y。
【0087】
化合物は、1分30秒間(短期急性刺激)又は5分間(長期慢性刺激)投与された。化合物の適用後は、生理的対照溶液中で等価時間(約10分間)洗い出した。
電気生理学的記録
電気生理学的記録は、全細胞(ホールセル)構成でパッチクランプ技術により実施された。標準細胞外液をbath application法により灌流し、標準細胞外液は下記(mM):NaCl 135、KCl 2、CaCl2 2、MgCl2 2、ヘペス 10、グルコース 5を含有し、pH7.4であった。標準ピペット溶液は、下記(mM):アスパラギン酸カリウム 130、NaCl 10、MgCl2 2、CaCl2 1.3、EGTA 10、ヘペス 10を含有し、pH7.3であった。記録は、pClamp8.2ソフトウェア及びMultiClamp 700A 増幅器(Axon Instruments社)により、電流固定モード(current-clamp mode)で取得した。
【0088】
データ分析
インビボ実験の場合、データは平均±SEMで報告されている。説明文中の文字Nは各実験の各実験群で使用されたマウスの数である。実験群間の差はANOVA(一元配置)によって比較され、個別の比較はその後Bonferroni事後検定(Bonferroni post hoc test)を用いて行われた。刺激注入後、超侵害受容応答が異なる時間で測定された場合、二元配置ANOVAを用いて群を比較した。P<0.05を有意と見なした。
【0089】
結果
組換えC5aの髄腔内注射は機械的及び熱的侵害受容閾値を低下させる
本結果は、マウスへの組換えC5aの髄腔内注射(100、300及び600ng/5μL)が、注射後24時間まで、機械的閾値の用量依存的低下を促進したことを示した。C5aの痛覚誘発作用はC5aR
-/-マウスでは抑止された。より高用量では、注射後5~7時間、熱潜時の減少も引き起こした(
図1のA及びB)。
【0090】
C5a/C5aRがなければ医原性疼痛の発生は少ないと断定される
本発明者らは、CIIPの発生と維持はどちらもC5aR
-/-動物では損なわれることを示した。実際、CIIPの誘導期間中及び維持期間中のいずれにおいても、C5aR
-/-マウスでは機械的(
図2のA)及び熱的(
図2のB)過敏の発生が少ない。
【0091】
これらの結果は、CIIPにおけるC5aの関連性を指摘しており、様々な疼痛経路及び痛覚線維の増感におけるその役割を示し、重要な臨床症状を包含している。
実施例1
CIIPにおけるDF2593Aの効果
雄マウスへの1mg/kgのDF2593Aの経口投与は、CIIPの両期、すなわち8日目の誘導終了期(
図3aのA)及び14日目の確立期(
図3bのC)において、機械的過敏性を低減することができる。その上、CIIPに由来する冷感応答(
図3aのB及び
図3bのD)もDF2593Aによる処置後は低減する。これらの効果は薬物投与後2時間から6時間まで観察される。総合すると、これらのデータは、確立された疼痛状態でのDF2593Aによる経口治療的処置は、物理的又は化学的神経病変に由来する機械的過敏性及び冷感過敏性を投与後少なくとも6時間低減できることを示している。
【0092】
実施例2
CIIP誘導中のDF2593Aによる全身処置は医原性疼痛の発生を防止する
CIIPの誘導期の間に慢性投与すると、DF2593Aは、機械的(
図4のA)及び冷感(
図4のB)侵害受容応答の発生を、処置中だけではあるが、防止する。DF2593A 1mg/kgを1日2回(12/12時間)、CIIPモデルの初日から7日目まで、マウスに餌の制限をせずに経口(p.o.)投与した。薬物は常に、パクリタキセルの投与1時間前に投与した。動物は、ベースライン時とその後最初のパクリタキセル注射から8日目まで毎日、疼痛が確立された時点を測定された。薬物は、CIIPの誘導期の間、機械的応答及び冷感応答の発生を効率的に防止できる。しかしながら、最後のDF2593A投与の24時間後には何の効果も観察されず、前の結果及び薬物の薬物動態プロフィールを裏付けている。
【0093】
同様に、確立されたCIIPを有する雄マウスへの髄腔内経路によるDF2593Aの10、30又は100μg/5μLの注射も(8及び14日目)、侵害受容行動を低減でき、機械的異痛及び冷感異痛を改良する。最も適切な効果は、より高用量、すなわち8日目の30及び100μg/5μLで観察されるが(
図5aのA及びB)、10μg/5μLの効能も依然として統計的に有意である。
【0094】
実施例3
パクリタキセルで誘発される機械的及び冷感異痛におけるDF3966Aの効果
パクリタキセル投与後、ビヒクル対照群(CTR)は、偽処置ラット(Sham rat)と比べて明らかな機械的異痛及び冷感異痛を示した。特に、DPA試験で、疼痛の証拠である足引っ込め閾値は、5、7、10及び14日目に顕著に低下した(
図6のA)。
【0095】
DF3966Aで処置された動物は、ビヒクル対照動物と比べた場合、3、5、7、10及び14日目に機械的異痛の顕著な低減を示した(
図6のA)。対照群での冷感異痛の実験では、疼痛の証拠である足引っ込め閾値の回数が3、5、7、10及び14日目に顕著に増加した(
図6のB)。DF3966Aで処置された動物は、ビヒクル対照動物と比べた場合、3、5、7、10及び14日目に冷感異痛の顕著な低減を示した。得られた結果は明らかに、DF3966Aがパクリタキセルの投与後、5、7、10及び14日目に機械的異痛及び冷感異痛の顕著な低減をもたらすことを示している。
【0096】
実施例4
パクリタキセル処置下でα-チューブリンレベルに及ぼすDF2593A及びDF3966Yの効果
パクリタキセルをDRGニューロンに7日間の培養後200nMの濃度で投与した(Scuteriら,2006)。
【0097】
表1に報告されているように、200nMのパクリタキセルは、対照(UT)細胞に対し、アセチル化α-チューブリンにわずかではあるがなお有意な増加を示した。
【0098】
【0099】
表1に示されているように、化合物DF2593Aは、パクリタキセルの作用を用量依存的に逆転するようである。特に、0.1μM濃度で適用された場合、薬物はパクリタキセルが誘導するアセチル化α-チューブリンの増加を逆転することができない。DF2593Aが1μM濃度で適用されると、薬物はパクリタキセルによるチャレンジ(challenge)を逆転し、観察されたアセチル化α-チューブリンのレベルは対照(UT)細胞と同様であった。10μMでは、薬物は、対照(UT)細胞に対し、アセチル化α-チューブリンを約25%低減し、DRGニューロンに顕著な有益効果を発揮するようである。
【0100】
化合物DF3966Y(0.1、1、10μM)はパクリタキセル誘導チャレンジを著しく逆転した。試験された最低濃度(0.1μM及び1μM)で、薬物はDRGニューロンに有益効果を発揮するようである。
【0101】
実施例5
C5a誘導神経毒性におけるDF3966Yの効果
観察されている作用がC5aによっても誘発されるのかどうかを調べるために、組換えマウスC5a 1μg/ml(111.11nM)を、DF3966Y 1μMの存在下又は不在下で7日間の培養後にDRGニューロンに投与した。
【0102】
24時間のインキュベーション後、アセチル化α-チューブリンを前に説明した細胞内ウェスタン技術を用いて定量した。
図7に、C5a 1μg/mlはアセチル化α-チューブリンのレベルを増加できたこと、そしてDF3966YはC5a暴露によって誘導されたチャレンジを著しく低減したことが示されている。
【0103】
実施例6
神経機能に対するDF3966Yの効果
細胞数、シナプス数及び樹状突起分枝を、非処置細胞ならびにパクリタキセル及びC5a単独又は薬物の存在下で刺激された細胞で評価した。化学療法誘発毒性のマーカーとして、DRGニューロン上のシナプスの総数を、非処置(UT)対照に対するシナプス数のパーセンテージとして定量評価した。
【0104】
樹状突起分枝はシナプスの生成及び入力に直接影響する。よく発達した分枝は機能的なシナプスネットワークを示す。この理由により、樹状突起分枝が占めている面積を定量した。
【0105】
データは、各実験につき1ウェルあたり16領域の分析によって得られた値の合計として得る。相対平均非処置群に対する値のパーセンテージを計算した。4つの別の実験から得られたパーセンテージの平均を以下の表2~7にプロットした。
【0106】
【0107】
DRGニューロンへのパクリタキセルの投与は、細胞数にわずかな減少を誘導した。この作用は、パクリタキセルがその抗増殖作用を行使する増殖性細胞(プルキンエ細胞)の存在によるもので、実際のニューロンの死滅によるものではないと見られる。従って、DF3966Yによる処置は、単独で投与された場合でも又はPACと共に投与された場合でも、細胞数に何の著明な影響も及ぼさなかった。
【0108】
【0109】
得られた結果は、C5aは、単独で投与された場合でも又はDF3966Y 1μMと組み合わせて投与された場合でも、ニューロンの死を誘導しなかったことを示している。
【0110】
【0111】
パクリタキセルはシナプス数に顕著な減少を誘導した。DF3966Y 1μMによる処置は、パクリタキセル誘導作用に著しく対抗した。
これらのデータは、化学療法によって誘発される神経機能障害に対する1μMのDF3966Yのプラスの効果を明らかに示している。
【0112】
【0113】
データは、C5aがこれらの実験条件下で神経活性(ニューロン活動)障害を誘導しなかったことを示している。
【0114】
【0115】
樹状突起分枝によって占められる面積に有意でない減少がパクリタキセルによって誘導され、DF3966Yで実施された処置はそのような減少に対抗するようである。
これらの所見は、シナプス数の定量によって得られた結果と一致し、パクリタキセルの神経機能に対する毒作用と、化合物のプラスの効果を示している。
【0116】
【0117】
データは、急性刺激は細胞損傷を誘導するのに十分でないことを示している。記載された結果は、パクリタキセルの神経機能に対する有害作用を明らかに示している。他方、C5aは、この時点で神経機能に対して何の有意な作用も示さなかった。おそらくは、それが化学療法誘発神経毒性の後期メディエーターであるからかもしれない。
【0118】
DF3966Yによる処置は有益効果を発揮し、パクリタキセルが誘導した神経シナプスの喪失に対抗した。
実施例7
DRGの電気生理学に対するDF3966Yとパクリタキセルの作用
生理学的対照溶液中のDRGニューロンの活動電位発火率は、
図8(基本条件)に示されているように、30~40分間まで長時間安定した状態を保っていた。
【0119】
パクリタキセルが投与されると(
図8-処置A)、脱分極相に典型的な活動電位発火率の即時かつ顕著な増加があり(対照に対し+54.64%)、その後、より長時間の暴露で電位依存性チャネルの不活化により電気的活性は降下した(対照に対し-83.51%)。作用は生理学的対照溶液の投与で完全に回復した。
【0120】
パクリタキセルをDF3966Yの存在下で投与すると(
図8-処置B)、最初の即時相でも又は長時間の暴露でも電気的活性に顕著な変化は観察されなかった。つまり、DF3966Yは、パクリタキセル暴露(短時間暴露でも長時間暴露でも)によって変化した電気的活性を完全に回復させることができるようである。
【0121】
実施例8
DRGの電気生理学に対するDF3966YとC5aの作用
C5aをDRGニューロンに投与すると(
図9-処置C)、発火率の即時増加が観察され(+55.61%)、その後、より長時間暴露で電気的活性は顕著に低下した(約70%低下)。作用は生理学的対照溶液の投与で完全に回復した。
【0122】
C5aをDF3966Yの存在下でDRGニューロンに投与すると(
図9-処置D)、短時間の時点では電気的活性に顕著な変化は観察されなかった。さらに、より長時間暴露で(3~5分間)、DF3966Yは電気的活性を約35%阻害し、C5aによる作用を改善した。作用は生理学的対照溶液の投与で完全に回復した。
【0123】
2つのチャレンジ(challenge)(パクリタキセルとC5a)はどちらも、単独で投与されると、DRGニューロンに対して有害作用を発揮する。もっとも、その実体は異なり、パクリタキセルの方がC5aよりもより強力な刺激である。
【0124】
急性刺激で観察される即時作用は(パクリタキセル及びC5aの場合)、脱分極相に典型的な発火率の増加と、その後のより長時間暴露での電位依存性チャネルの不活化による電気的活性の降下である。
【0125】
この作用は、特にパクリタキセル刺激時、DF3966Yによって中和される。