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特許7430164チタン成分の回収方法、酸化チタンの製造方法及びチタン酸アルカリ金属の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】チタン成分の回収方法、酸化チタンの製造方法及びチタン酸アルカリ金属の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/04 20060101AFI20240202BHJP
   C02F 1/62 20230101ALI20240202BHJP
   C01G 23/047 20060101ALI20240202BHJP
   C01G 23/00 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
C01G23/04 Z ZAB
C02F1/62 Z
C01G23/047
C01G23/00 B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021170119
(22)【出願日】2021-10-18
(65)【公開番号】P2023060484
(43)【公開日】2023-04-28
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】堀川 松秀
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-080086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 23/00-23/08
C02F 1/58- 1/64
B01D 21/01
C22B 3/20,34/12
B01J 21/06,37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン化合物を含む排液からチタン成分を回収するチタン成分の回収方法であって、
該チタン化合物を含む排液を水と接触させ、チタン化合物を加水分解処理する工程(1)と、
加水分解処理を施した処理液に対し、pHが1.5以上2.5未満になるように中和剤として水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを加える一次中和処理を施し、次いで、該一次中和処理を施した処理液に対し、pHが6.5以上7.5以下になるように中和剤として水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを加える二次中和処理を施し、次いで、水酸化チタンを凝集させる凝集処理を行い、水酸化チタンの凝集物を得る工程(2)と、
該工程(2)より後段において、pH2.1~4.9で、該水酸化チタンの凝集物に該チタン化合物を含む排液を接触させるチタン排液接触処理を行い、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る工程(3)と、
を有すること、
を特徴とするチタン成分の回収方法。
【請求項2】
前記工程(2)を行い生じる前記水酸化チタンの凝集物を濃縮させる濃縮処理を行い、水酸化チタンの凝集物の濃縮物を得た後、次いで、該水酸化チタンの凝集物の濃縮物に、pH2.1~4.9で、前記チタン化合物を含む排液を接触させて、該水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理を行い、前記水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る工程(3A)を有することを特徴とする請求項1記載のチタン成分の回収方法。
【請求項3】
前記工程(3A)において、前記工程(2)を行い生じる前記水酸化チタンの凝集物を沈降させることにより、前記水酸化チタンの凝集物の濃縮物を得ることを特徴とする請求項2記載のチタン成分の回収方法。
【請求項4】
前記工程(3A)において、前記工程(2)を行い生じる前記水酸化チタンの凝集物を沈降させた後、水酸化チタンの凝集物の沈降物を分離し、次いで、該水酸化チタンの凝集物の沈降物から液相を除去する脱水処理を行い、水酸化チタンの凝集物の脱水処理物を得ることより、前記水酸化チタンの凝集物の濃縮物を得ることを特徴とする請求項2記載のチタン成分の回収方法。
【請求項5】
前記工程(2)を行い生じる前記水酸化チタンの凝集物を沈降させた後、水酸化チタンの凝集物の沈降物に、pH2.1~4.9で、前記チタン化合物を含む排液を接触させて、該水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理を行い、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る工程(3B)を有することを特徴とする請求項1記載のチタン成分の回収方法。
【請求項6】
前記水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を、6.0以上9.0以下の洗浄水で洗浄する洗浄工程を有することを特徴とする請求項1~5いずれか1項記載のチタン成分の回収方法。
【請求項7】
チタン化合物を含む排液から酸化チタンを製造する酸化チタンの製造方法であって、
該チタン化合物を含む排液を水と接触させ、チタン化合物を加水分解処理する工程(1)と、
加水分解処理を施した処理液に対し、pHが1.5以上2.5未満になるように中和剤として水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを加える一次中和処理を施し、次いで、該一次中和処理を施した処理液に対し、pHが6.5以上7.5以下になるように中和剤として水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを加える二次中和処理を施し、次いで、水酸化チタンを凝集させる凝集処理を行い、水酸化チタンの凝集物を得る工程(2)と、
該工程(2)より後段において、pH2.1~4.9で、該水酸化チタンの凝集物に前記チタン化合物を含む排液を接触させるチタン排液接触処理を行い、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る工程(3)と、
該水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を焼成して、酸化チタンを得る焼成工程と、
を有すること、
を特徴とする酸化チタンの製造方法。
【請求項8】
前記工程(2)を行い生じる前記水酸化チタンの凝集物を濃縮させる濃縮処理を行い、水酸化チタンの凝集物の濃縮物を得た後、次いで、該水酸化チタンの凝集物の濃縮物に、pH2.1~4.9で、前記チタン化合物を含む排液を接触させて、該水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理を行い、前記水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る工程(3A)を有することを特徴とする請求項7記載のチタン成分の製造方法。
【請求項9】
前記工程(3A)において、前記工程(2)を行い生じる前記水酸化チタンの凝集物を沈降させることにより、前記水酸化チタンの凝集物の濃縮物を得ることを特徴とする請求項8記載のチタン成分の製造方法。
【請求項10】
前記工程(3A)において、前記工程(2)を行い生じる前記水酸化チタンの凝集物を沈降させた後、水酸化チタンの凝集物の沈降物を分離し、次いで、該水酸化チタンの凝集物の沈降物から液相を除去する脱水処理を行い、水酸化チタンの凝集物の脱水処理物を得ることより、前記水酸化チタンの凝集物の濃縮物を得ることを特徴とする請求項8記載のチタン成分の製造方法。
【請求項11】
前記工程(2)を行い生じる前記水酸化チタンの凝集物を沈降させた後、水酸化チタンの凝集物の沈降物に、pH2.1~4.9で、前記チタン化合物を含む排液を接触させて、該水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理を行い、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る工程(3B)を有することを特徴とする請求項7記載の酸化チタンの製造方法。
【請求項12】
前記水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を、6.0以上9.0以下の洗浄水で洗浄する洗浄工程を有することを特徴とする請求項7~11いずれか1項記載の酸化チタンの製造方法。
【請求項13】
請求項1~6いずれか1項記載のチタン成分の回収方法により回収された水酸化チタン、又は請求項7~12いずれか1項記載の酸化チタンの製造方法により得られた酸化チタンを原料として用いることを特徴とするチタン酸アルカリ金属の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン成分の回収方法、酸化チタンの製造方法及びチタン酸アルカリ金属の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロピレンなどのオレフィン類の重合が、マグネシウム、チタン、電子供与性化合物およびハロゲン等を含有するオレフィン類重合用固体触媒成分を用いて行われており、これ等固体触媒成分は、例えば、溶液状のマグネシウム化合物と溶液状のチタン化合物とを必要に応じ電子供与性化合物の存在下において接触させることで、作製されている。
【0003】
このようなオレフィン類重合用固体触媒成分を調製する際や、当該固体触媒成分からオレフィン類重合用触媒を調製する際に、固体触媒成分に担持されなかった余剰のチタン化合物や調製時の副反応等で生成したその他のチタン化合物を含有する排液が生じてしまう。
【0004】
従来は、減圧蒸留により廃溶液からチタン化合物を回収していたが、この方法では蒸留母液またはトレーに固形物が析出し、蒸留釜残液の排出が困難になり、塔内差圧の発生等により蒸留の継続が困難になるため、チタン化合物の回収を充分に行わないまま蒸留を停止し、蒸留釜残液を廃棄していた。
【0005】
しかしながら、資源の有効利用、廃棄物の削減等の観点から、回収しきれなかったチタン化合物が含まれる蒸留釜残液から、さらにチタン化合物を回収する方法、回収したチタン化合物を再利用する方法等が求められるようになっている。
【0006】
これらチタン化合物を含有する蒸留釜残液からチタン化合物を回収する方法としては、例えば、特許文献1において、ポリマー製造用触媒成分を調製する際に発生するチタン化合物を含む廃溶液からチタン化合物の一部をフラッシュ蒸留回収した後、回収残分と水とを接触させ、回収残分中のチタン化合物を加水分解し、水相を分離回収後に塩基で中和し、凝集剤等により固形物を凝集・沈降させ、該沈降物を回収後、含水量を減らしてプレスケーキとし、これらプレスケーキを焼成して粗酸化チタンを回収する方法が提案されている。
【0007】
上記分離回収後の水相を中和する際に用いる塩基として、通常は、安価かつ取り扱いの容易なアンモニア水や水酸化カルシウムが好適に用いられていた。
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の方法では回収した粗酸化チタン中に窒素やカルシウムが混入する等して純度の高いチタン化合物を回収し得ない。
【0009】
そこで、特許文献2の実施例では、オレフィン類重合用固体触媒成分を調製した際に発生した、四塩化チタン、ジエトキシマグネシウム、トルエン及びブタンを含む排液を、水と接触させて加水分解を施し、次いで、pHが2になるように水酸化ナトリウムを加えて一次中和処理を施し、次いで、pHが6.5になるように水酸化ナトリウムを加えて二次中和処理を施して、酸化チタンを凝集させることにより、酸化チタンを得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2001-261340号公報
【文献】特開2018-80086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2の方法では、アナターゼ型の酸化チタンに代えてルチル型の酸化チタンが生成し易くなり、高純度なチタン化合物が高収率で得られている。
【0012】
ここで、特許文献2の段落番号0035に「高純度な酸化チタンを得る上では、得られる酸化チタン中に窒素やカルシウム等の異物の混入を抑制するために、中和剤としてアンモニア水や水酸化カルシウム等を使用しないことが好ましい。」と記載されているように、特許文献2の実施例では、高純度なチタン化合物を得るために、中和剤として、水酸化ナトリウムを用いている。
【0013】
ところが、工業的に、排水処理コストを抑制するためには、中和剤には、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを用いる必要がある。そこで、本発明者等が検討行ったところ、特許文献2の実施例の方法において、用いられている中和剤を、水酸化ナトリウムから、水酸化カルシウムに変更すると、得られる水酸化チタンの凝集物中に、低水溶性の水酸化カルシウム又は炭酸カルシウムが残存してしまい、その後の洗浄によっては、カルシウム成分を除去できないことが分かった。
【0014】
そして、回収酸化チタンの利用方法としては、チタン酸カアルカリ金属の製造原料として用いることが挙げられるが、回収酸化チタン中に混入されたカルシウム成分は、回収酸化チタンをチタン酸アルカリ金属の合成原料として用いた場合に、不純物であるチタン酸カルシウムの発生源となるため、回収酸化チタンには、カルシウム分の含有量が低いことが望まれる。
【0015】
本発明者らは、得られる水酸化チタンの凝集物中に、水酸化カルシウム又は炭酸カルシウムが残存するのは、pHが6.5以上の条件下での中和においては、水酸化カルシウム又は炭酸カルシウムの反応性が低いために、チタン化合物の当量数より過剰に水酸化カルシウム又は炭酸カルシウムを添加しないと、十分な中和が行えないこと、水酸化チタンの凝集物中に残存する水酸化カルシウム又は炭酸カルシウムは、後段の工程で、塩酸を接触させることにより、除去可能であることを見出した。
【0016】
しかしながら、後段の塩酸処理により、水酸化チタンの凝集物中に残存する水酸化カルシウム又は炭酸カルシウムは、除去可能であるものの、余分な水酸化カルシウム又は炭酸カルシウムを使用することになり、コストアップの原因となる。
【0017】
そこで、本発明の目的は、チタン化合物を含む排液、好ましくはオレフィン類重合用固体触媒成分又はオレフィン類重合用触媒を調製する際に発生するチタン化合物を含む排液から、チタン成分を回収する方法又は酸化チタンを製造方法において、中和剤として、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを用いても、得られる回収チタン成分又は酸化チタン中のカルシウム含有量が少なく、且つ、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの使用量を少なくすることができるチタン成分の回収方法又は酸化チタンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記技術課題を解決すべく、本発明者等が鋭意検討を行ったところ、チタン化合物を含む排液を水と接触させチタン化合物を加水分解処理し、次いで、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを使用して一次中和処理及び二次中和処理を施して、次いで、水酸化チタンを凝集させて生じる水酸化チタンの凝集物に、一部抜き出したチタン化合物を含む排液を、所定のpH範囲で、接触させることにより、得られる水酸化チタンの凝集物中のカルシウム含有量を少なくすることができ、且つ、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの使用量を少なくすることができることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち、本発明は、
(1)チタン化合物を含む排液からチタン成分を回収するチタン成分の回収方法であって、
該チタン化合物を含む排液を水と接触させ、チタン化合物を加水分解処理する工程(1)と、
加水分解処理を施した処理液に対し、pHが1.5以上2.5未満になるように中和剤として水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを加える一次中和処理を施し、次いで、該一次中和処理を施した処理液に対し、pHが6.5以上7.5以下になるように中和剤として水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを加える二次中和処理を施し、次いで、水酸化チタンを凝集させる凝集処理を行い、水酸化チタンの凝集物を得る工程(2)と、
該工程(2)より後段において、pH2.1~4.9で、該水酸化チタンの凝集物に該チタン化合物を含む排液を接触させるチタン排液接触処理を行い、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る工程(3)と、
を特徴とするチタン成分の回収方法;
(2)前記工程(2)を行い生じる前記水酸化チタンの凝集物を濃縮させる濃縮処理を行い、水酸化チタンの凝集物の濃縮物を得た後、次いで、該水酸化チタンの凝集物の濃縮物に、pH2.1~4.9で、前記チタン化合物を含む排液を接触させて、該水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理を行い、前記水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る工程(3A)を有することを特徴とする(1)のチタン成分の回収方法;
(3)前記工程(3A)において、前記工程(2)を行い生じる前記水酸化チタンの凝集物を沈降させることにより、前記水酸化チタンの凝集物の濃縮物を得ることを特徴とする(2)のチタン成分の回収方法、
(4)前記工程(3A)において、前記工程(2)を行い生じる前記水酸化チタンの凝集物を沈降させた後、水酸化チタンの凝集物の沈降物を分離し、次いで、該水酸化チタンの凝集物の沈降物から液相を除去する脱水処理を行い、水酸化チタンの凝集物の脱水処理物を得ることより、前記水酸化チタンの凝集物の濃縮物を得ることを特徴とする(2)のチタン成分の回収方法;
(5)前記工程(2)を行い生じる前記水酸化チタンの凝集物を沈降させた後、水酸化チタンの凝集物の沈降物に、pH2.1~4.9で、前記チタン化合物を含む排液を接触させて、該水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理を行い、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る工程(3B)を有することを特徴とする(1)のチタン成分の回収方法;
(6)前記水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を、6.0以上9.0以下の洗浄水で洗浄する洗浄工程を有することを特徴とする(1)~(5)いずれかのチタン成分の回収方法;
(7)チタン化合物を含む排液から酸化チタンを製造する酸化チタンの製造方法であって、
該チタン化合物を含む排液を水と接触させ、チタン化合物を加水分解処理する工程(1)と、
加水分解処理を施した処理液に対し、pHが1.5以上2.5未満になるように中和剤として水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを加える一次中和処理を施し、次いで、該一次中和処理を施した処理液に対し、pHが6.5以上7.5以下になるように中和剤として水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを加える二次中和処理を施し、次いで、水酸化チタンを凝集させる凝集処理を行い、水酸化チタンの凝集物を得る工程(2)と、
該工程(2)より後段において、該水酸化チタンの凝集物に前記チタン化合物を含む排液を接触させるチタン排液接触処理を行い、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る工程(3)と、
該水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を焼成して、酸化チタンを得る焼成工程と、
を有すること、
を特徴とする酸化チタンの製造方法;
(8)前記工程(2)を行い生じる前記水酸化チタンの凝集物を濃縮させる濃縮処理を行い、水酸化チタンの凝集物の濃縮物を得た後、次いで、該水酸化チタンの凝集物の濃縮物に、pH2.1~4.9で、前記チタン化合物を含む排液を接触させて、該水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理を行い、前記水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る工程(3A)を有することを特徴とする(7)のチタン成分の製造方法;
(9)前記工程(3A)において、前記工程(2)を行い生じる前記水酸化チタンの凝集物を沈降させることにより、前記水酸化チタンの凝集物の濃縮物を得ることを特徴とする(8)のチタン成分の製造方法;
(10)前記工程(3A)において、前記工程(2)を行い生じる前記水酸化チタンの凝集物を沈降させた後、水酸化チタンの凝集物の沈降物を分離し、次いで、該水酸化チタンの凝集物の沈降物から液相を除去する脱水処理を行い、水酸化チタンの凝集物の脱水処理物を得ることより、前記水酸化チタンの凝集物の濃縮物を得ることを特徴とする(8)のチタン成分の製造方法;
(11)前記工程(2)を行い生じる前記水酸化チタンの凝集物を沈降させた後、水酸化チタンの凝集物の沈降物に、pH2.1~4.9で、前記チタン化合物を含む排液を接触させて、該水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理を行い、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る工程(3B)を有することを特徴とする(7)の酸化チタンの製造方法;
(12)前記水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を、6.0以上9.0以下の洗浄水で洗浄する洗浄工程を有することを特徴とする(7)~(11)いずれかの酸化チタンの製造方法;
(13)(1)~(6)いずれかのチタン成分の回収方法により回収された水酸化チタン、又は(7)~(12)いずれかの酸化チタンの製造方法により得られた酸化チタンを原料として用いることを特徴とするチタン酸アルカリ金属の製造方法;
を提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、チタン化合物を含む排液、好ましくはオレフィン類重合用固体触媒成分又はオレフィン類重合用触媒を調製する際に発生するチタン化合物を含む排液から、チタン成分を回収する方法又は酸化チタンを製造方法において、中和剤として、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを用いても、得られる回収チタン成分又は酸化チタン中のカルシウム含有量が少なく、且つ、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの使用量を少なくすることができるチタン成分の回収方法又は酸化チタンの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のチタン成分の回収方法の形態例のフロー図である。
図2】本発明の第一の形態のチタン成分の回収方法の形態例のフロー図である。
図3】本発明の第一の形態のチタン成分の回収方法のうち、洗浄工程を行う形態例のフロー図である。
図4】本発明の第一の形態のチタン成分の回収方法のうち、洗浄工程を行う他の形態例のフロー図である。
図5】本発明の第二の形態のチタン成分の回収方法の形態例のフロー図である。
図6】本発明の第二の形態のチタン成分の回収方法のうち、洗浄工程を行う形態例のフロー図である。
図7】本発明の第二の形態のチタン成分の回収方法のうち、洗浄工程を行う他の形態例のフロー図である。
図8】製造例1において、チタン化合物を含む排液から水酸化チタンの凝集物(排液接触処理前)を調製するフローである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
先ず、本発明のチタン成分の回収方法について説明する。
本発明のチタン成分の回収方法は、チタン化合物を含む排液からチタン成分を回収するチタン成分の回収方法であって、
該チタン化合物を含む排液を水と接触させ、チタン化合物を加水分解処理する工程(1)と、
加水分解処理を施した処理液に対し、pHが1.5以上2.5未満になるように中和剤として水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを加える一次中和処理を施し、次いで、該一次中和処理を施した処理液に対し、pHが6.5以上7.5以下になるように中和剤として水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを加える二次中和処理を施し、次いで、水酸化チタンを凝集させる凝集処理を行い、水酸化チタンの凝集物を得る工程(2)と、
該工程(2)より後段において、pH2.1~4.9で、該水酸化チタンの凝集物に該チタン化合物を含む排液を接触させるチタン排液接触処理を行い、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る工程(3)と、
を有すること、
を特徴とする。
【0023】
本発明のチタン成分の回収方法について、図1を参照して説明する。なお、ここでは中和剤として水酸化カルシウムを適用した形態を例に挙げて説明するが、本発明においては、中和剤として酸化カルシウムを適用しても水酸化カルシウムを適用した場合と同様の効果が得られる。図1は、本発明のチタン成分の回収方法の形態例のフロー図である。図1中、受水槽1に、チタン化合物を含む排液10を移送し、受水槽1内に水11を供給して、チタン化合物を含む排液10と水11を混合し、加水分解処理を施す。次いで、加水分解処理された処理液を、一次中和処理槽2に移送し、一次中和処理槽2に水酸化カルシウム懸濁液12を供給して、一次中和処理槽2内の処理液のpHが1.5以上2.5未満になるように一次中和処理を施す。次いで、一次中和処理を施した処理液を、二次中和処理槽3に移送し、二次中和処理槽3に水酸化カルシウム懸濁液13を供給して、二次中和処理槽3内の処理液のpHが6.5以上7.5以下になるように二次中和処理を施す。次いで、二次中和処理を施した処理液を、凝集槽4に移送して、凝集槽4に凝集剤を添加して、水酸化チタンを凝集させることにより、水酸化チタンの凝集物を生じさせる。次いで、凝集させた水酸化チタンの凝集物を、チタン排液接触処理槽19に移送して、pH2.1~4.9で、チタン化合物を含む排液10を接触させて、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理を行い、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物20を得る。
【0024】
本発明のチタン成分の回収方法において、チタン成分の回収方法が施される対象は、チタン化合物を含む排液であり、チタン化合物を含むものであれば、特に制限されない。チタン化合物を含む排液としては、オレフィン類重合用固体触媒成分又はオレフィン類重合用触媒を調製する際に発生する「チタンを含む排液」が好ましい。
【0025】
本発明のチタン成分の回収方法において、チタン化合物を含む排液が、オレフィン類重合用固体触媒成分又はオレフィン類重合用触媒を調製する際に発生するチタンを含む排液の場合、オレフィン類重合用固体触媒成分又はオレフィン類重合用触媒としては、オレフィン類の重合に供されるチタン成分を含む固体触媒成分又は触媒であれば特に制限されず、例えば、ポリオレフィン製造に用いられるチーグラーナッタ触媒、メタロセン触媒、ポストメタロセン、ポリエチレンテレフタレート製造用の固体状チタン触媒等の触媒や、これ等の触媒を構成する固体触媒成分から選ばれる1種以上が挙げられ、これらの中でも、ポリオレフィン製造に用いられるチーグラーナッタ触媒、メタロセン触媒及びポストメタロセン触媒やこれ等の触媒を構成する固体触媒成分から選ばれる1種以上が好ましく、チーグラーナッタ触媒またはチーグラーナッタ触媒を構成する固体触媒成分がより好ましい。
【0026】
チーグラーナッタ触媒又はチーグラーナッタ触媒を構成する固体触媒成分としては、上記のうち、マグネシウム化合物、チタン化合物及びハロゲン化合物、更に、必要に応じ電子供与性化合物を、接触させることにより調製されるオレフィン類重合用固体触媒成分が好適である。
【0027】
上記オレフィン類重合用固体触媒成分の調製に使用されるマグネシウム化合物としては、ハロゲンを含有するもの及びハロゲン含有化合物と接触反応させることによりハロゲン含有マグネシウム化合物に変化するものが好ましい。
このようなマグネシウム化合物としては、塩化マグネシウム等の二ハロゲン化マグネシウム、アルコキシマグネシウムハライドなどのジアルキルマグネシウム、アルキルマグネシウムハライドおよびジエトキシマグネシウム等のジアルコキシマグネシウム等から選ばれる1種以上が挙げられ、塩化マグネシウム又はジエトキシマグネシウムが好ましい。
【0028】
本発明のチタン成分の回収方法に係るチタン化合物としては、例えば、下記一般式(1):
Ti(OR)4-N (1)
(式中、Rは、炭化水素基、Xはハロゲン原子を示し、Xが複数存在する場合、各Xは同一であっても異なっていてもよく、Nは、0~4の整数である。)で表されるチタン化合物が挙げられる。
【0029】
一般式(1)で表されるチタン化合物において、Rは、炭素数1~10の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1~6の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1~4の炭化水素基であることがさらに好ましい。
【0030】
一般式(1)で表されるチタン化合物としては、具体的には、四塩化チタン、四フッ化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン等の四ハロゲン化チタン、メトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、N-ブトキシチタントリクロライド等のアルコキシチタントリハライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ-N-ブトキシチタンジクロライド等のジアルコキシチタンジハライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ-N-ブトキシチタンクロライド等のトリアルコキシチタンハライド等のアルコキシチタンハライド等のテトラアルコキシチタンから選ばれる1種以上が挙げられる。
【0031】
上記チタン化合物のうち、ハロゲン含有チタン化合物が好ましく、四塩化チタン、四フッ化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン等から選ばれる四ハロゲン化チタンがより好ましく、四塩化チタンがさらに好ましい。
上記チタン化合物は、炭化水素化合物またはハロゲン化炭化水素化合物などにより希釈されていてもよい。
【0032】
オレフィン類重合用固体触媒成分の調製に使用される電子供与性化合物としては、特に限定されないが、アルコール類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸、酸ハライド類、有機酸または無機酸のエステル類、エーテル類、酸アミド類、酸無水物、アンモニア、アミン類、ニトリル類、イソシアネート、含窒素環状化合物、含酸素環状化合物、有機ケイ素化合物等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0033】
本発明のチタン成分の回収方法において、チタン化合物を含む排液は、オレフィン類重合用固体触媒成分の調製工程において、洗浄時、加熱接触時等に使用する有機溶媒成分、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、灯油、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,2-ジエチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキセン、デカリン、ミネラルオイル等の飽和炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物、オルトジクロルベンゼン、塩化メチレン、1,2-ジクロロベンゼン、四塩化炭素、ジクロルエタン、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素化合物等、アルミ化合物、ケイ素化合物等から選ばれる1種以上の有機溶媒成分を含むものであってもよい。
【0034】
本発明のチタン成分の回収方法において、チタン化合物を含む排液としては、マグネシウム化合物として塩化マグネシウム又はジエトキシマグネシウムを含み、チタン化合物としてアルコキシチタンハロゲン化合物又はハロゲン化チタン化合物を含み、更に電子供与性化合物及び有機溶媒成分を含むものが好適である。
【0035】
本発明のチタン成分の回収方法において、チタン化合物を含む排液は、種々の反応等で生じたチタン化合物を含む。チタン化合物を含む排液は、好ましくはオレフィン類重合用固体触媒成分やオレフィン類重合用触媒の調製時に生じる排液であり、このような排液は、固体触媒成分に担持されなかったチタン化合物やその調製工程における反応などで新たに生じたその他のチタン化合物を含む。本発明のチタン成分の回収方法において、チタン化合物を含む排液は、チタン化合物を、0.01~35.0質量%を含むものが好ましく、0.05~10.0質量%含むものがより好ましく、0.10~5.0質量%含むものがさらに好ましい。
【0036】
チタン化合物を含む排液中、pH2.1~4.9で、水酸化物として析出する全金属元素のうち、チタンの水酸化物のチタン原子換算の含有割合が、90質量%以上、好ましくは95質量%以上である。チタン化合物を含む排液中、pH2.1~4.9で、水酸化物として析出する全金属元素のうち、チタンの水酸化物のチタン原子換算の含有割合が上記範囲にあることにより、得られる水酸化チタン凝集物中の不純物金属含有量を少なくすることができる。
【0037】
本発明のチタン成分の回収方法は、チタン化合物を含む排液を水と接触させ、チタン化合物を加水分解処理する工程(1)を有する。工程(1)において、加水分解方法としては、特に制限されず、排水を受水する受水槽中で別途注入した水と接触させる方法等が挙げられる。
【0038】
工程(1)において、チタン化合物がハロゲン化チタンである場合には、チタン化合物を含む排液を水と接触させることにより、チタン化合物が加水分解されて、ハロゲン化水素及び水酸化チタンを生成する。
【0039】
工程(1)に係る加水分解処理において、チタン化合物を含む排液と水との混合液のpHは、0.5以上2.0以下であることが好ましく、0.7以上1.5以下であることがより好ましく、1.0程度であることがさらに好ましい。チタン化合物を含む排液と水との混合液のpHが上記範囲にあることにより、混合液中で生成した水酸化チタンが析出し難くなり、その後の処理を円滑に行うことができる。
【0040】
工程(1)において、チタン化合物を含む排液と接触させる水の量は、チタン化合物を含む排液1mあたり、3~10mであることが好ましく、4~7mであることがより好ましく、5~6mであることがさらに好ましい。
【0041】
工程(1)において、加水分解処理時の温度は、特に制限されないが、10~90℃であることが好ましく、20~70℃であることがより好ましく、30~60℃であることがさらに好ましい。
【0042】
工程(1)において、チタン化合物を含む排液と水との接触時間は、30~60分間であることが好ましく、35~55分間であることがより好ましく、40~50分間であることがさらに好ましい。
【0043】
本発明のチタン成分の回収方法に係る工程(2)は、工程(1)において加水分解処理を施した排液に対し、一次中和処理を施し、次いで、二次中和処理を施し、次いで、水酸化チタンを凝集させる凝集処理を行い、水酸化チタンの凝集物を得る工程である。
【0044】
工程(2)では、先ず、工程(1)において加水分解処理を施した処理液に対し、pHが1.5以上2.5未満になるように水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを加える一次中和処理を施す。
【0045】
一次中和処理では、工程(1)において加水分解処理を施した処理液に対し、pHが1.5以上2.5未満になるように、好ましくはpHが1.8以上2.3以下となるように、より好ましくはpHが1.8以上2.2以下となるように、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを加える。一次中和処理時におけるpHが、上記範囲にあることにより、凝集、沈降を生じ易くなって、チタン化合物含有排液からチタン成分を高純度で回収し易くなる。一方、一次中和処理時におけるpHが1.5未満であると、円滑な中和処理を行い難くなり、また、pHが2.5以上であると、ゲル状の水酸化チタンが生成し、沈降性やろ過性が低下する。
【0046】
一次中和処理に用いられる中和剤は、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムである。一次中和処理において、中和剤として水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを用いることにより、中和剤コストを抑制することができ、また、中和し得られるチタン化合物の沈降性やろ過性が向上するという利点を有する。一方、一次中和処理に用いる中和剤が、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムであると、中和剤コストが大きくなり、また、中和し得られるチタン化合物の沈降性やろ過性が悪くなり、工業的に不利となる。
【0047】
一次中和処理では、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムが水に分散している懸濁液を、加水分解処理を施した処理液と接触させる。懸濁液中の水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの含有量は、一次中和処理での水相のpHの設定値に応じて適宜選択され、好ましくは10~300g/Lである。懸濁液中の水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの含有量が、上記範囲にあることにより、加水分解処理を施した排液中のpHを、容易に所望範囲に制御し易い。一方、懸濁液中の水酸化カルシウムの含有量が、上記範囲を超えると加水分解処理を施した排液中のpHを制御し難くなり、また、上記範囲未満だと、円滑な中和処理を行い難くなる。
【0048】
一次中和処理時の温度は、特に制限されないが、10℃以上が好ましい。
【0049】
一次中和処理において、加水分解処理を施した処理液と水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムとの接触時間は、特に制限されないが、通常、60~120分間程度である。
【0050】
工程(2)において、一次中和処理を行う方法としては、加水分解処理を施した処理液に対して、中和槽(一次中和処理槽)中で水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを接触させて行うことが好ましく、一次中和処理槽は一槽であってもよいし、複数槽が連通したものであってもよい。
【0051】
工程(2)では、次いで、一次中和処理を施した処理液に対し、pHが6.5以上7.5以下になるように水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを加える二次中和処理を施す。
【0052】
工程(2)に係る二次中和処理時において、一次中和処理を施した処理液に対し、pHが6.5以上7.5以下になるように水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを加える。そして、工程(2)に係る二次中和処理時において、一次中和処理を施した処理液に対し、pHが6.5以上7.5以下となるように水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを加えることが好ましく、pHが6.4以上7.5以下となるように水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを加えることがより好ましく、pHが6.3以上7.5以下となるように水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを加えることがさらに好ましい。
【0053】
二次中和処理におけるpHが、上記範囲にあることにより、凝集処理を経て得られる水酸化チタンの凝集物中のカルシウム含有量が少なくなり、また、凝集、沈降を生じ易くなって、チタン化合物含有排液からチタン成分を高純度で回収し易くなる。一方、二次中和処理時におけるpHが、上記範囲未満だと、水酸化チタンが析出し難くなり、また、上記範囲を超えると、凝集処理を経て得られる水酸化チタンの凝集物中のカルシウム含有量が多くなり過ぎる。
【0054】
二次中和処理に用いられる中和剤は、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムである。二次中和処理において、中和剤として水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを用いることにより、中和剤コストを抑制することができ、また、中和し得られるチタン化合物の沈降性やろ過性が向上するという利点を有する。一方、二次中和処理に用いる中和剤が、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムであると、中和剤コストが大きくなり、また、中和し得られるチタン化合物の沈降性やろ過性が悪くなり、工業的に不利となる。
【0055】
二次中和処理では、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムが水に分散している懸濁液を、一次中和処理を施した処理液と接触させる。懸濁液中の水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの含有量は、二次中和処理での水相のpHの設定値に応じて適宜選択され、好ましくは10~300g/Lである。懸濁液中の水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの含有量が、上記範囲にあることにより、一次中和処理を施した処理液中のpHを、容易に所望範囲に制御し易い。一方、懸濁液中の水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの含有量が、上記範囲を超えると一次中和処理を施した処理中のpHを制御し難くなり、また、上記範囲未満だと、円滑な中和処理を行い難くなる。
【0056】
二次中和処理時の温度は、特に制限されないが、10℃以上が好ましい。
【0057】
二次中和処理において、一次中和処理を施した処理液と水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムとの接触時間は、特に制限されないが、通常、60~120分間程度である。
【0058】
工程(2)において、二次中和処理を行う方法としては、一次中和処理を施した処理液に対して、中和槽(二次中和処理槽)中で水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを接触させて行うことが好ましく、二次中和処理槽は一槽であってもよいし、複数槽が連通したものであってもよい。
【0059】
また、二次中和処理後の処理液中には、水酸化カルシウムが含有されていなことが好ましい。なお、二次中和処理後の処理液中の水酸化カルシウム含有量は、二次中和処理において添加する中和剤の量、二次中和処理でのpHの設定値等により、調節される。
【0060】
工程(2)においては、次いで、二次中和処理を施した処理液中の水酸化チタンを凝集させる凝集処理を施す。凝集処理には、アニオン系高分子凝集剤などの凝集剤を用いて行う化学的処理を適用してもよいし、フィルタープレス、液体サイクロン、遠心分離などの各種装置を用いた機械的処理(脱水処理)を適用してもよい。廃液の成分や濃度などに応じて、凝集処理の方法を適宜選択すればよい。凝集処理を施すことで、後工程における濾過処理の時間を短縮することができる。
【0061】
工程(2)において、水酸化チタンの凝集は、二次中和処理を施した処理液を凝集槽中に送入して同槽内で行うことが好ましい。そして、凝集処理を行うことにより、水酸化チタンの凝集物が生じる。
【0062】
工程(2)では、水酸化チタンを凝集させることにより、水酸化チタンの凝集物が生じるが、工程(2)を行った後は、生じた水酸化チタンの凝集物を含む凝集処理液から、液相の一部又は全部を分離してから、後段の工程を行ってもよいし、あるいは、生じた水酸化チタンの凝集物を含む凝集処理液からの液相の分離を行わずに、後段の工程を行ってもよい。
【0063】
工程(2)又は工程(2)より後段の工程において、水酸化チタンの凝集物を含む凝集処理液から分離した水相については、酸性度を中性(pH6.5~7.5)に調整した上で、適宜、廃液処理することが好ましい。
【0064】
例えば、本発明のチタン成分の回収方法では、工程(2)を行った後、生じた水酸化チタンの凝集物を、沈降槽内で沈降させて、沈降槽内の水酸化チタンの凝集物の沈降物を抜き出すことにより、水酸化チタンの凝集物を、水酸化チタンの凝集物の沈降物の状態で分離する。この水酸化チタンの凝集物の沈降物は、それまでの処理に由来する液相を含んでいるが、工程(2)より後段で行うチタン排液接触処理には、水酸化チタンの凝集物の沈降物中の液相を除去してから供してもよいし、あるいは、水酸化チタンの凝集物の沈降物中の液相を除去せずに供してもよい。
【0065】
本発明のチタン成分の回収方法では、工程(2)より後段の処理工程において、pH2.1~4.9、好ましくはpH2.5~4.5、より好ましくはpH3.0~4.5で、水酸化チタンの凝集物にチタン化合物を含む排液を接触させるチタン排液接触処理を接触させるチタン排液接触処理を施す。本発明のチタン成分の回収方法において、チタン排液接触処理を施す時期は、工程(2)より後段であれば、特に制限されない。そして、本発明のチタン成分の回収方法では、水酸化チタンの凝集物にチタン化合物を含む排液を接触させることにより、水酸化チタンの凝集物中のカルシウム含有量を少なくすることができる。また、チタン排液接触処理において、水酸化チタンの凝集物に接触させるチタン化合物を含む排液中のチタン成分を、水酸化チタンとして、析出させることができる。
【0066】
本発明のチタン成分の回収方法に係るチタン排液接触処理では、工程(2)を行い得られる水酸化チタンの凝集物に、チタン化合物を含む排液を接触させるが、このとき、水酸化チタンの凝集物中に含まれているカルシウム元素の原子換算のモル数に対するチタン化合物を含む排液中のチタン元素の原子換算のモル数の比(Ti/Ca)が、0.5より大きく、且つ、液相のpHが2.1~4.9、好ましくはpHが2.5~4.5、より好ましくはpHが3.0~4.5となるようにチタン化合物を含む排液を接触させる。チタン排液接触処理時の水酸化チタンの凝集物中に含まれているカルシウム元素の原子換算のモル数に対するチタン化合物を含む排液中のチタン元素の原子換算のモル数の比(Ti/Ca)が上記範囲にあることにより、工程(2)を行い得られた水酸化チタンの凝集物に含まれている水酸化カルシウムが、チタン排液接触処理で接触させるチタン化合物を含む排液中のチタン化合物との反応に消費されるので、水酸化チタンの凝集物中のカルシウム含有量を少なくすることができ、且つ、工程(2)で中和剤として使用した水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを、無駄なくチタン成分の回収に用いることができる。また、チタン排液接触処理時の液相のpHが、上記範囲にあることにより、チタン排液接触処理時に、水酸化チタンの凝集物中に含まれている水酸化カルシウムとの反応に使用されなかったチタン化合物を含む排液中のチタン化合物が、水酸化チタンに加水分解されて析出するので、チタン排液接触処理のために使用したチタン化合物を含む排液からのチタン成分の回収率を高くすることができる。チタン排液接触処理時の液相のpHが、上記範囲未満だと、排液に溶解したままのチタン成分の量が多くなってしまい、チタン排液接触処理のために使用したチタン化合物を含む排液からのチタン成分の回収率が低くなる。また、該pHが、上記範囲を超えると、水酸化カルシウム又は炭酸カルシウムの反応性が乏しくなり、水酸化チタンの凝集物中の水酸化カルシウム又は炭酸カルシウムの残存量の低減が困難となる。
【0067】
チタン排液接触処理において、水酸化チタンの凝集物に接触させるのは、工程(1)において加水分解されるチタン化合物を含む排液と同じもの又はその希釈液である。つまり、工程(1)に供給されるチタン化合物を含む排液の一部を抜き出して、チタン排液接触処理において、水酸化チタンの凝集物に接触させるか、あるいは、工程(1)に供給されるチタン化合物を含む排液の一部を抜き出して、水で希釈し、得られる希釈液を、チタン排液接触処理において、水酸化チタンの凝集物に接触させる。
【0068】
チタン排液接触処理時の温度は、特に制限されないが、10℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることがさらに好ましい。
【0069】
チタン排液接触処理において、工程(2)を行い得られる水酸化チタンの凝集物とチタン化合物を含む排液との接触時間は、60~120分間であることが好ましく、60~100分間であることがより好ましく、60~80分間であることがさらに好ましい。
【0070】
本発明のチタン成分の回収方法において、チタン排液接触処理を行い生成する水酸化チタンは、Ti(OH)である。つまり、本発明のチタン成分の回収方法では、水酸化チタンの凝集物の状態で、チタン化合物を含む排液からチタン成分が回収される。そして、回収された水酸化チタンの凝集物(チタン排液接触処理物)は、乾燥及び焼成後、酸化チタンに変換されて、種々のチタン化合物の製造原料として用いられる。
【0071】
本発明のチタン成分の回収方法においては、チタン化合物を含む排水に対し、加水分解処理後、水酸化カルシウムを中和剤として用いて、特定のpHで一次中和処理及び二次中和処理、凝集処理を順次施し、得られる水酸化チタンの凝集物に、pH2.1~4.9、好ましくはpH2.5~4.5、より好ましくはpH3.0~4.5で、チタン化合物を含む排液を接触させるチタン排液接触処理を施すことにより、チタン排液接触処理を行い得られる水酸化チタンの凝集物中のカルシウム含有量を少なくすることができ、且つ、チタン排液接触処理の処理後の排液中にチタン成分が溶解して、未回収チタン成分となってしまうことを、防ぐことができることから、カルシウム含有量が少ない水酸化チタンを高い収率で回収することができる。また、本発明のチタン成分の回収方法においては、工程(2)を行い得られた水酸化チタンの凝集物に含まれている水酸化カルシウムが、チタン排液接触処理で接触させるチタン化合物を含む排液中のチタン化合物との反応に使われるので、工程(2)で中和剤として使用した水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを、無駄なくチタン成分の回収に用いることができる。本発明のチタン成分の回収方法では、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理を行うことにより、該水酸化チタンの凝集物に残存する水酸化カルシウム等の難水溶性未反応物質を溶解除去するので、水酸化チタンの凝集物中のカルシウム含有量を少なくすることができ、且つ、該水酸化チタンの凝集物に残存する水酸化カルシウム等の難水溶性未反応物質を、チタン排液接触処理において、チタン化合物を含む排液中のチタン成分の回収に用いることができる。以上のことから、本発明のチタン成分の回収方法では、水酸化チタンの凝集物中のカルシウム含有量を少なくすることができ、且つ、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを無駄なく使用できるので、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの使用量を少なくすることができる。
【0072】
本発明のチタン成分の回収方法において、チタン排液接触処理を行う方法は、特に制限されず、適宜選択され、チタン排液接触処理を行う時期は、工程(2)より後段であれば、いずれの時期であってよく、また、チタン排液接触処理を行う方法は、水酸化チタンの凝集物とチタン排液接触処理をpH2.1~4.9、好ましくはpH2.5~4.5、より好ましくはpH3.0~4.5で接触させるものであれば、如何なる方法であってもよい。本発明のチタン成分の回収方法としては、以下に示す形態が挙げられる。
【0073】
本発明の第一の形態のチタン成分の回収方法は、工程(2)を行い生じる水酸化チタンの凝集物を濃縮させる濃縮処理を行い、水酸化チタンの凝集物の濃縮物を得た後、次いで、水酸化チタンの凝集物の濃縮物に、pH2.1~4.9、好ましくはpH2.5~4.5、より好ましくはpH3.0~4.5で、前記チタン化合物を含む排液を接触させて、該水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理を行い、前記水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る工程(3A)を有する形態である。
【0074】
すなわち、本発明の第一の形態のチタン成分の回収方法は、チタン化合物を含む排液からチタン成分を回収するチタン成分の回収方法であって、
該チタン化合物を含む排液を水と接触させ、チタン化合物を加水分解処理する工程(1)と、
加水分解処理を施した処理水に対し、pHが1.5以上2.5未満になるように中和剤として水酸化カルシウムを加える一次中和処理を施し、次いで、該一次中和処理を施した処理液に対し、pHが6.5以上7.5以下になるように中和剤として水酸化カルシウムを加える二次中和処理を施し、次いで、水酸化チタンを凝集させる凝集処理を行い、水酸化チタンの凝集物を得る工程(2)と、
該工程(2)を行い生じる該水酸化チタンの凝集物を濃縮させる濃縮処理を行い、水酸化チタンの凝集物の濃縮物を得た後、次いで、該水酸化チタンの凝集物の濃縮物に、pH2.1~4.9、好ましくはpH2.5~4.5、より好ましくはpH3.0~4.5で、前記チタン化合物を含む排液を接触させて、該水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理を行い、前記水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る工程(3A)と、
を有すること、
を特徴とするチタン成分の回収方法である。本発明の第一の形態のチタン成分の回収方法は、工程(2)において水酸化チタンの凝集物を生じさせた後、水酸化チタンの凝集物を濃縮させる濃縮処理を行い、水酸化チタンの凝集物の濃縮物を得た後、水酸化チタンの凝集物の濃縮物に対し、チタン排液接触処理を施す形態である。
【0075】
本発明の第一の形態のチタン成分の回収方法について、図2を参照して説明する。図2は、本発明の第一の形態のチタン成分の回収方法の形態例のフロー図である。なお、ここでも中和剤として水酸化カルシウムを適用した形態を例に挙げて説明するが、本発明においては、中和剤として酸化カルシウムを適用しても、水酸化カルシウムを適用した場合と同様の効果が得られる。図2中、受水槽1に、チタン化合物を含む排液10を移送し、受水槽1内に水11を供給して、チタン化合物を含む排液10と水11を混合し、加水分解処理を施す。次いで、加水分解処理された処理液を、一次中和処理槽2に移送し、一次中和処理槽2に水酸化カルシウム懸濁液12を供給して、一次中和処理槽2内の処理液のpHが1.5以上2.5未満になるように一次中和処理を施す。次いで、一次中和処理を施した処理液を、二次中和処理槽3に移送し、二次中和処理槽3に水酸化カルシウム懸濁液13を供給して、二次中和処理槽3内の処理液のpHが6.5以上7.5以下になるように二次中和処理を施す。次いで、二次中和処理を施した処理液を、凝集槽4に移送して、凝集槽4に凝集剤を添加して、水酸化チタンを凝集させることにより、水酸化チタンの凝集物を生じさせる。次いで、生じた水酸化チタンの凝集物を含む凝集処理液を、沈降槽5に移送し、沈降槽5内で、水酸化チタンの凝集物を沈降させて、沈降槽5の下部又は底部から、水酸化チタンの凝集物の沈降物を抜き出す。次いで、沈降槽5から抜き出した水酸化チタンの凝集物の沈降物を、沈降物貯蔵槽6に移送する。次いで、水酸化チタンの凝集物の沈降物を、フィルタープレス装置7を用いてろ過し、水酸化チタンの凝集物の沈降物から液相を除去して、水酸化チタンの凝集物をろ別し、水酸化チタンの凝集物のプレスケーキを得る。次いで、水酸化チタンの凝集物のプレスケーキを、チタン排液接触処理槽8に移送し、チタン排液接触処理槽8にチタン化合物を含む排液10を供給して、水酸化チタンの凝集物とチタン化合物を含む排液10を混合し、pH2.1~4.9で両者を接触させて、チタン排液接触処理を施す。次いで、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を、フィルタープレス装置9を用いてろ過し、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物から液相を除去して、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物をろ別し、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物のプレスケーキ21を得る。
【0076】
本発明の第一の形態のチタン成分の回収方法は、工程(1)、工程(2)と、工程(3A)と、を有する。本発明の第一の形態のチタン成分の回収方法における工程(1)、工程(2)、用いる排水、処理及び処理方法等については、本発明のチタン化合物の回収方法と共通し、その詳細については、本発明のチタン成分の回収方法の説明で述べた通りである。
【0077】
本発明の第一の形態のチタン成分の回収方法に係る工程(3A)では、工程(2)を行い生じる水酸化チタンの凝集物を濃縮させる濃縮処理を行い、水酸化チタンの凝集物の濃縮物を得る。
【0078】
工程(3A)において、工程(2)を行った後の水酸化チタンの凝集物を含む凝集処理液から、水酸化チタンの凝集物の濃縮物を得る方法としては、特に制限されない。例えば、先ず、(i)工程(2)を行った後の水酸化チタンの凝集物を含む凝集処理液を、沈降槽に移送し、沈降槽内で、水酸化チタンの凝集物を沈降させる。次いで、(ii)沈降槽の下部又は底部から、水酸化チタンの凝集物の沈降物を抜き出して、凝集処理液から水酸化チタンの凝集物の沈降物を分離し、沈降槽から抜き出した水酸化チタンの凝集物の沈降物を、沈降物貯蔵槽に移送して、水酸化チタンの凝集物の沈降物、すなわち、水酸化チタンの凝集物の濃縮物を得る。
【0079】
また、工程(3A)において、工程(2)を行った後の水酸化チタンの凝集物を含む凝集処理液から、水酸化チタンの凝集物の濃縮物を得る方法としては、他には、例えば、工程(2)を行った後の水酸化チタンの凝集物を含む凝集処理液を、液体サイクロン、スクリューデカンタ等で処理して、凝集処理液から水相を分離し、水酸化チタンの凝集物の濃縮物を得る方法が挙げられる。
【0080】
また、工程(3A)において、工程(2)を行った後の水酸化チタンの凝集物を含む凝集処理液から、水酸化チタンの凝集物の濃縮物を得る方法としては、先ず、工程(2)を行い生じる水酸化チタンの凝集物を沈降させた後、凝集処理液から、水酸化チタンの凝集物の沈降物を分離し、次いで、水酸化チタンの凝集物の沈降物から液相を除去する脱水処理を行い、水酸化チタンの凝集物の脱水処理物を得ることにより、水酸化チタンの凝集物の脱水処理物、すなわち、水酸化チタンの凝集物の濃縮物を得る方法が挙げられる。脱水処理方法としては、例えば、フィルタープレス装置、遠心分離装置、液体サイクロン装置等の固液分離装置を用いて、ろ過する方法が挙げられる。
【0081】
工程(3A)では、次いで、水酸化チタンの凝集物の濃縮物に、チタン化合物を含む排液を接触させて、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理を行う。
【0082】
工程(3A)に係るチタン排液接触処理では、水酸化チタンの凝集物の脱水処理物に、チタン化合物を含む排液を接触させるが、このとき、水酸化チタンの凝集物中に含まれているカルシウム元素の原子換算のモル数に対するチタン化合物を含む排液中のチタン元素の原子換算のモル数の比(Ti/Ca)が、0.5より大きく、且つ、液相のpHが2.1~4.9、好ましくはpHが2.5~4.5、より好ましくはpHが3.0~4.5となるようにチタン化合物を含む排液を接触させる。チタン排液接触処理時の水酸化チタンの凝集物中に含まれているカルシウム元素の原子換算のモル数に対するチタン化合物を含む排液中のチタン元素の原子換算のモル数の比(Ti/Ca)が上記範囲にあることにより、工程(2)を行い得られた水酸化チタンの凝集物に含まれている水酸化カルシウムが、チタン排液接触処理で接触させるチタン化合物を含む排液中のチタン化合物との反応に消費されるので、水酸化チタンの凝集物中のカルシウム含有量を少なくすることができ、且つ、工程(2)で中和剤として使用した水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを、無駄なくチタン成分の回収に用いることができる。また、チタン排液接触処理時の液相のpHが、上記範囲にあることにより、チタン排液接触処理時に、水酸化チタンの凝集物中に含まれている水酸化カルシウムとの反応に使用されなかったチタン化合物を含む排液中のチタン化合物が、水酸化チタンに加水分解されて析出するので、チタン排液接触処理のために使用したチタン化合物を含む排液からのチタン成分の回収率を高くすることができる。チタン排液接触処理時の液相のpHが、上記範囲未満だと、排液に溶解したままのチタン成分の量が多くなってしまい、チタン排液接触処理のために使用したチタン化合物を含む排液からのチタン成分の回収率が低くなる。また、該pHが、上記範囲を超えると、水酸化カルシウム又は炭酸カルシウムの反応性が乏しくなり、水酸化チタンの凝集物中の水酸化カルシウム又は炭酸カルシウムの残存量の低減が困難となる。
【0083】
工程(3A)に係るチタン排液接触処理において、水酸化チタンの凝集物に接触させるのは、工程(1)において加水分解されるチタン化合物を含む排液と同じもの又はその希釈液である。つまり、工程(1)に供給されるチタン化合物を含む排液の一部を抜き出して、チタン排液接触処理において、水酸化チタンの凝集物に接触させるか、あるいは、工程(1)に供給されるチタン化合物を含む排液の一部を抜き出して、水で希釈し、得られる希釈液を、チタン排液接触処理において、水酸化チタンの凝集物に接触させる。
【0084】
工程(3A)に係るチタン排液接触処理時の温度は、特に制限されないが、10~50℃であることが好ましく、15~45℃であることがより好ましく、20~40℃であることがさらに好ましい。
【0085】
工程(3A)に係るチタン排液接触処理において、水酸化チタンの凝集物の脱水処理物とチタン化合物を含む排液との接触時間は、60~120分間であることが好ましく、60~100分間であることがより好ましく、60~80分間であることがさらに好ましい。
【0086】
工程(3A)において、チタン排液接触処理を行う方法としては、水酸化チタンの凝集物の脱水処理物に対して、チタン排液接触処理槽中でチタン化合物を含む排液を接触させて行うことが好ましい。このとき、pHの調節を、例えば、チタン化合物を含む排液の添加量を調整することにより行うことができる。
【0087】
工程(3A)において、チタン排液接触処理を行った後は、固液分離装置を用いて、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物から液相を除去して、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物の脱水処理物を得、更に、脱水処理物を60~200℃で乾燥して、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る。この水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物からの液相の除去及び乾燥により、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物から水及び塩化水素が除去され、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物が得られる。
【0088】
本発明の第一の形態のチタン成分の回収方法において、工程(3A)を行い得られる水酸化チタンは、Ti(OH)である。つまり、本発明のチタン成分の回収方法では、水酸化チタンの凝集物の状態で、チタン化合物を含む排液からチタン成分が回収される。そして、回収された水酸化チタンの凝集物(チタン排液接触処理物)は、乾燥及び焼成後、酸化チタンに変換されて、種々のチタン化合物の製造原料として用いられる。
【0089】
本発明の第一の形態のチタン成分の回収方法においては、チタン化合物を含む排水に対し、加水分解処理後、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを中和剤として用いて、特定のpHで一次中和処理及び二次中和処理、凝集処理を順次施し、水酸化チタンの凝集物を生じさせ、次いで、水酸化チタンの凝集物の濃縮処理を行い、得られる水酸化チタンの凝集物の濃縮物に対し、pH2.1~4.9、好ましくはpH2.5~4.5、より好ましくはpH3.0~4.5で、チタン化合物を含む排液を接触させるチタン排液接触処理を施すことにより、チタン排液接触処理を行い得られる水酸化チタンの凝集物中のカルシウム含有量を少なくすることができ、且つ、チタン排液接触処理の処理後の排液中にチタン成分が溶解して、未回収チタン成分となってしまうことを、防ぐことができることから、カルシウム含有量が少ない水酸化チタンを高い収率で回収することができる。また、本発明のチタン成分の回収方法においては、工程(2)を行い得られた水酸化チタンの凝集物に含まれている水酸化カルシウムが、チタン排液接触処理で接触させるチタン化合物を含む排液中のチタン分との反応に使われるので、工程(2)で中和剤として使用した水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを、無駄なくチタン成分の回収に用いることができる。本発明の第一の形態のチタン成分の回収方法では、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理を行うことにより、該水酸化チタンの凝集物に残存する水酸化カルシウム等の難水溶性未反応物質を溶解除去するので、水酸化チタンの凝集物中のカルシウム含有量を少なくすることができ、且つ、該水酸化チタンの凝集物に残存する水酸化カルシウム等の難水溶性未反応物質を、チタン排液接触処理において、チタン化合物を含む排液中のチタン成分の回収に用いることができる。以上のことから、本発明の第一の形態のチタン成分の回収方法では、水酸化チタンの凝集物中のカルシウム含有量を少なくすることができ、且つ、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを無駄なく使用できるので、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの使用量を少なくすることができる。
【0090】
本発明の第一の形態のチタン成分の回収方法は、工程(1)、工程(2)及び工程(3A)に加え、工程(3A)を行い得られる水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を、pH6.0以上9.0以下の洗浄水で洗浄する洗浄工程を有することができる。洗浄工程では、工程(3A)を行い得られる水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物に洗浄水を接触させることにより、洗浄を行うが、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物と洗浄水の接触方法は、特に制限されず、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0091】
図3は、本発明の第一の形態のチタン成分の回収方法のうち、洗浄工程を行う形態の形態例を示すフロー図である。なお、ここでも中和剤として水酸化カルシウムを適用した形態を例に挙げて説明するが、本発明においては、中和剤として酸化カルシウムを適用しても、水酸化カルシウムを適用した場合と同様の効果が得られる。図3中、受水槽1に、チタン化合物を含む排液10を移送し、受水槽1内に水11を供給して、チタン化合物を含む排液10と水11を混合し、加水分解処理を施す。次いで、加水分解処理された処理液を、一次中和処理槽2に移送し、一次中和処理槽2に水酸化カルシウム懸濁液12を供給して、一次中和処理槽2内の処理液のpHが1.5以上2.5未満になるように一次中和処理を施す。次いで、一次中和処理を施した処理液を、二次中和処理槽3に移送し、二次中和処理槽3に水酸化カルシウム懸濁液13を供給して、二次中和処理槽3内の処理液のpHが6.5以上7.5以下になるように二次中和処理を施す。次いで、二次中和処理を施した処理液を、凝集槽4に移送して、凝集槽4に凝集剤を添加して、水酸化チタンを凝集させることにより、水酸化チタンの凝集物を生じさせる。次いで、生じた水酸化チタンの凝集物を含む凝集処理液を、沈降槽5に移送し、沈降槽5内で、水酸化チタンの凝集物を沈降させて、沈降槽5の下部又は底部から、水酸化チタンの凝集物の沈降物を抜き出す。次いで、沈降槽5から抜き出した水酸化チタンの凝集物の沈降物を、沈降物貯蔵槽6に移送する。次いで、水酸化チタンの凝集物の沈降物を、フィルタープレス装置7を用いてろ過し、水酸化チタンの凝集物の沈降物から液相を除去して、水酸化チタンの凝集物をろ別し、水酸化チタンの凝集物のプレスケーキを得る。次いで、水酸化チタンの凝集物のプレスケーキを、チタン排液接触処理槽8に移送し、チタン排液接触処理槽8にチタン化合物を含む排液10を供給して、水酸化チタンの凝集物とチタン化合物を含む排液10を混合し、pH2.1~4.9で両者を接触させて、チタン排液接触処理を施す。次いで、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を、フィルタープレス装置9を用いてろ過し、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物から液相を除去して、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物をろ別することにより、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物のプレスケーキを得る。次いで、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物のプレスケーキを、洗浄槽31に移送し、洗浄槽槽31に洗浄水15を供給して、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物と洗浄水15を混合し、洗浄を行う。次いで、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物の洗浄物を、フィルタープレス装置33を用いてろ過し、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物の洗浄物から液相を除去して、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物をろ別することにより、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物のプレスケーキ22を得る。
【0092】
つまり、洗浄工程の第一の形態は、工程(3A)を行い得られる水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を、フィルタープレス装置、遠心分離装置、液体サイクロン装置等の固液分離装置を用いて、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を液相と分離し、プレスケーキ等の脱水処理物を得、次いで、プレスケーキ等の脱水処理物を、固液分離装置から取り出し、次いで、脱水処理物に洗浄水を接触させることにより、洗浄を行う形態である。
【0093】
第一の形態の洗浄工程において、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物と洗浄水を接触させた後は、フィルタープレス装置、遠心分離装置、液体サイクロン装置等の固液分離装置を用いて、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物と洗浄水を分離し、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る。
【0094】
図4は、本発明の第一の形態のチタン成分の回収方法のうち、洗浄工程を行う他の形態の形態例を示すフロー図である。なお、ここでは中和剤として水酸化カルシウムを適用した形態を例に挙げて説明するが、本発明においては、酸化カルシウムを適用しても水酸化カルシウムを適用した場合と同様の効果が得られる。図4中、受水槽1に、チタン化合物を含む排液10を移送し、受水槽1内に水11を供給して、チタン化合物を含む排液10と水11を混合し、加水分解処理を施す。次いで、加水分解処理された処理液を、一次中和処理槽2に移送し、一次中和処理槽2に水酸化カルシウム懸濁液12を供給して、一次中和処理槽2内の処理液のpHが1.5以上2.5未満になるように一次中和処理を施す。次いで、一次中和処理を施した処理液を、二次中和処理槽3に移送し、二次中和処理槽3に水酸化カルシウム懸濁液13を供給して、二次中和処理槽3内の処理液のpHが6.5以上7.5以下になるように二次中和処理を施す。次いで、二次中和処理を施した処理液を、凝集槽4に移送して、凝集槽4に凝集剤を添加して、水酸化チタンを凝集させることにより、水酸化チタンの凝集物を生じさせる。次いで、生じた水酸化チタンの凝集物を含む凝集処理液を、沈降槽5に移送し、沈降槽5内で、水酸化チタンの凝集物を沈降させて、沈降槽5の下部又は底部から、水酸化チタンの凝集物の沈降物を抜き出す。次いで、沈降槽5から抜き出した水酸化チタンの凝集物の沈降物を、沈降物貯蔵槽6に移送する。次いで、水酸化チタンの凝集物の沈降物を、フィルタープレス装置7を用いてろ過し、水酸化チタンの凝集物の沈降物から液相を除去して、水酸化チタンの凝集物をろ別し、水酸化チタンの凝集物のプレスケーキを得る。次いで、水酸化チタンの凝集物のプレスケーキを、チタン排液接触処理8に移送し、チタン排液接触処理槽8にチタン化合物を含む排液10を供給して、水酸化チタンの凝集物とチタン化合物を含む排液10を混合し、pH2.1~4.9で両者を接触させ、チタン排液接触処理を施す。次いで、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を、フィルタープレス装置9を用いてろ過し、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物から液相を除去した後、更に、フィルタープレス装置9内のろ過物に、0.2~0.5MPaに加圧した洗浄水15を供給して、ろ過物に高圧で洗浄水15を接触させる貫通洗浄により、洗浄を行い、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物のプレスケーキ23を得る。
【0095】
つまり、洗浄工程の第二の形態は、工程(3A)を行い得られる水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を、フィルタープレス装置を用いるろ過により、水酸化チタンの凝集物を液相と分離し、更に、フィルタープレス装置内のろ過物に、0.2~0.5MPaに加圧した洗浄水を供給して、ろ過物に高圧で洗浄水を接触させる貫通洗浄により、洗浄を行う形態である。
【0096】
洗浄工程において用いられる洗浄水のpHは、水酸化チタンを変質させずに洗浄できるpHであればよく、通常、6.0以上9.0以下である。また、水酸化チタンを変質させずに洗浄可能な洗浄水としては、特に限定されないが、例えば、イオン交換水、純水、超純水、工業用水、井戸水、水道水などを適用することができる。
【0097】
洗浄時の温度は、特に制限されないが、10~50℃であることが好ましく、15~45℃であることがより好ましく、20~40℃であることがさらに好ましい。
【0098】
洗浄工程を行った後は、固液分離装置を用いて、洗浄後の水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を含む洗浄処理液から液相を分離し、水酸化チタンの凝集物の脱水処理物を得、次いで、脱水処理物を60~200℃で乾燥して、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る。
【0099】
本発明の第一の形態のチタン成分の回収方法において、オレフィン類重合用固体触媒成分又はオレフィン類重合用触媒を調製する際に発生する、チタン化合物を含む排液が、塩素を含有する場合、洗浄工程を行うことにより、水酸化チタンの凝集物中の塩素含有量を少なくすることができる。
【0100】
本発明の第二の形態のチタン成分の回収方法は、工程(2)を行い生じる水酸化チタンの凝集物を沈降させた後、水酸化チタンの凝集物の沈降物にチタン化合物を含む排液を接触させて、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理を行い、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る工程(3B)を有する形態である。
【0101】
すなわち、本発明の第二の形態のチタン成分の回収方法は、チタン化合物を含む排液からチタン成分を回収するチタン成分の回収方法であって、
該チタン化合物を含む排液を水と接触させ、チタン化合物を加水分解処理する工程(1)と、
加水分解処理を施した処理液に対し、pHが1.5以上2.5未満になるように中和剤として水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを加える一次中和処理を施し、次いで、該一次中和処理を施した処理液に対し、pHが6.5以上7.5以下になるように中和剤として水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを加える二次中和処理を施し、次いで、水酸化チタンを凝集させる凝集処理を行い、水酸化チタンの凝集物を得る工程(2)と、
該工程(2)を行い生じる該水酸化チタンの凝集物を沈降させた後、pH2.1~4.9、好ましくはpH2.5~4.5、より好ましくはpH3.0~4.5で、水酸化チタンの凝集物の沈降物にチタン化合物を含む排液を接触させて、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理を行い、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る工程(3B)と、
を有すること、
を特徴とするチタン成分の回収方法である。本発明の第二の形態のチタン成分の回収方法は、工程(2)において水酸化チタンの凝集物を生じさせた後、凝集処理液から水酸化チタンの凝集物の沈降物を分離し、水酸化チタンの凝集物の沈降物中の液相を除去せずに、水酸化チタンの凝集物の沈降物に対し、チタン排液接触処理を施す形態である。
【0102】
本発明の第二の形態のチタン成分の回収方法について、図5を参照して説明する。図5は、本発明の第二の形態のチタン成分の回収方法の形態例のフロー図である。なお、ここでも中和剤として水酸化カルシウムを適用した形態を例に挙げて説明するが、本発明においては、中和剤として酸化カルシウムを適用しても、水酸化カルシウムを適用した場合と同様の効果が得られる。図5中、受水槽1に、チタン化合物を含む排液10を移送し、受水槽1内に水11を供給して、チタン化合物を含む排液10と水11を混合し、加水分解処理を施す。次いで、加水分解処理された処理液を、一次中和処理槽2に移送し、一次中和処理槽2に水酸化カルシウム懸濁液12を供給して、一次中和処理槽2内の処理液のpHが1.5以上2.5未満になるように一次中和処理を施す。次いで、一次中和処理を施した処理液を、二次中和処理槽3に移送し、二次中和処理槽3に水酸化カルシウム懸濁液13を供給して、二次中和処理槽3内の処理液のpHが6.5以上7.5以下になるように二次中和処理を施す。次いで、二次中和処理を施した処理液を、凝集槽4に移送して、凝集槽4に凝集剤を添加して、水酸化チタンを凝集させることにより、水酸化チタンの凝集物を生じさせる。次いで、生じた水酸化チタンの凝集物を含む凝集処理液を、沈降槽5に移送し、沈降槽5内で、水酸化チタンの凝集物を沈降させて、沈降槽5の下部又は底部から、水酸化チタンの凝集物の沈降物を抜き出す。次いで、沈降槽5から抜き出した水酸化チタンの凝集物の沈降物を、チタン排液接触処理槽18に移送し、チタン排液接触処理槽18にチタン化合物を含む排液10を供給して、水酸化チタンの凝集物の沈降物とチタン化合物を含む排液10を混合し、pH2.1~4.9で両者を接触させて、チタン排液接触処理を施す。次いで、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を、フィルタープレス装置7を用いてろ過し、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物から液相を除去して、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物をろ別することにより、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物のプレスケーキ24を得る。
【0103】
本発明の第一の形態のチタン成分の回収方法は、工程(1)、工程(2)と、工程(3B)と、を有する。本発明の第二の形態のチタン成分の回収方法における工程(1)、工程(2)、用いる排水、処理及び処理方法等については、本発明のチタン化合物の回収方法と共通し、その詳細については、本発明のチタン成分の回収方法の説明で述べた通りである。
【0104】
本発明の第二の形態のチタン成分の回収方法に係る工程(3B)では、工程(2)を行い生じる水酸化チタンの凝集物を沈降させた後、得られる水酸化チタンの凝集物の沈降物にチタン化合物を含む排液を接触させて、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理を行い、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る。
【0105】
工程(3B)において、工程(2)を行った後の水酸化チタンの凝集物を含む凝集処理液から、水酸化チタンの凝集物の沈殿物を得る方法としては、特に制限されない。例えば、先ず、(i)工程(2)を行った後の水酸化チタンの凝集物を含む凝集処理液を、沈降槽に移送し、沈降槽内で、水酸化チタンの凝集物を沈降させる。次いで、(ii)沈降槽の下部又は底部から、水酸化チタンの凝集物の沈降物を抜き出し、沈降槽から抜き出した水酸化チタンの凝集物の沈降物を、チタン排液接触処理槽に移送する方法が挙げられる。
【0106】
また、工程(3B)において、工程(2)を行った後の水酸化チタンの凝集物を含む凝集処理液から、水酸化チタンの凝集物の沈降物を得る方法としては、工程(2)を行った後の水酸化チタンの凝集物を含む凝集処理液を、液体サイクロン、スクリューデカンタ等で処理して、凝集処理液から水相を分離し、水酸化チタンの凝集物の沈降物を得る方法が挙げられる。
【0107】
工程(3B)では、次いで、水酸化チタンの凝集物の沈降物に、チタン化合物を含む排液を接触させて、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理を行い、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る。
【0108】
工程(3B)に係るチタン排液接触処理では、水酸化チタンの凝集物の沈降物に、チタン化合物を含む排液を接触させるが、このとき、水酸化チタンの凝集物中に含まれているカルシウム元素の原子換算のモル数に対するチタン化合物を含む排液中のチタン元素の原子換算のモル数の比(Ti/Ca)が、0.5より大きく、且つ、液相のpHが2.1~4.9、好ましくはpHが2.5~4.5、より好ましくはpHが3.0~4.5となるようにチタン化合物を含む排液を接触させる。チタン排液接触処理時の水酸化チタンの凝集物中に含まれているカルシウム元素の原子換算のモル数に対するチタン化合物を含む排液中のチタン元素の原子換算のモル数の比(Ti/Ca)が上記範囲にあることにより、工程(2)を行い得られた水酸化チタンの凝集物に含まれている水酸化カルシウムが、チタン排液接触処理で接触させるチタン化合物を含む排液中のチタン化合物との反応に消費されるので、水酸化チタンの凝集物中のカルシウム含有量を少なくすることができ、且つ、工程(2)で中和剤として使用した水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを、無駄なくチタン成分の回収に用いることができる。また、チタン排液接触処理時の液相のpHが、上記範囲にあることにより、チタン排液接触処理時に、水酸化チタンの凝集物中に含まれている水酸化カルシウムとの反応に使用されなかったチタン化合物を含む排液中のチタン化合物が、水酸化チタンに加水分解されて析出するので、チタン排液接触処理のために使用したチタン化合物を含む排液からのチタン成分の回収率を高くすることができる。チタン排液接触処理時の液相のpHが、上記範囲未満だと、排液に溶解したままのチタン成分の量が多くなってしまい、チタン排液接触処理のために使用したチタン化合物を含む排液からのチタン成分の回収率が低くなり、また、上記範囲を超えると、水酸化カルシウム又は炭酸カルシウムの反応性が乏しくなり、水酸化チタンの凝集物中の水酸化カルシウム又は炭酸カルシウムの残存量の低減が困難になる。
【0109】
工程(3B)に係るチタン排液接触処理において、水酸化チタンの凝集物に接触させるのは、工程(1)において加水分解されるチタン化合物を含む排液と同じもの又はその希釈液である。つまり、工程(1)に供給されるチタン化合物を含む排液の一部を抜き出して、チタン排液接触処理において、水酸化チタンの凝集物に接触させるか、あるいは、工程(1)に供給されるチタン化合物を含む排液の一部を抜き出して、水で希釈し、得られる希釈液を、チタン排液接触処理において、水酸化チタンの凝集物に接触させる。
【0110】
工程(3B)に係るチタン排液接触処理時の温度は、特に制限されないが、10~50℃であることが好ましく、15~45℃であることがより好ましく、20~40℃であることがさらに好ましい。
【0111】
工程(3B)に係るチタン排液接触処理において、水酸化チタンの凝集物の沈降物とチタン化合物を含む排液との接触時間は、60~120分間であることが好ましく、60~100分間であることがより好ましく、60~80分間であることがさらに好ましい。
【0112】
工程(3B)において、チタン排液接触処理を行う方法としては、水酸化チタンの凝集物の沈降物に対して、チタン排液接触処理槽中でチタン化合物を含む排液を接触させて行うことが好ましい。
【0113】
工程(3B)において、チタン排液接触処理を行って、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得た後は、固液分離装置を用いて、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物から液相を除去して、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物の脱水処理物を得、更に、脱水処理物を60~200℃で乾燥して、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る。この水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物からの液相の除去及び乾燥により、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物から水及び塩化水素が除去され、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物が得られる。
【0114】
本発明の第二の形態のチタン成分の回収方法において、工程(3B)を行い得られる水酸化チタンは、Ti(OH)である。つまり、本発明のチタン成分の回収方法では、水酸化チタンの凝集物の状態で、チタン化合物を含む排液からチタン成分が回収される。そして、回収された水酸化チタンの凝集物(チタン排液接触処理物)は、乾燥及び焼成後、酸化チタンに変換されて、種々のチタン化合物の製造原料として用いられる。
【0115】
本発明の第二の形態のチタン成分の回収方法においては、チタン化合物を含む排水に対し、加水分解処理後、水酸化カルシウムを中和剤として用いて、特定のpHで一次中和処理及び二次中和処理、凝集処理を順次施し、水酸化チタンの凝集物を生じさせて沈降させ、得られる水酸化チタンの凝集物の沈降物に対し、pH2.1~4.9、好ましくはpH2.5~4.5、より好ましくはpH3.0~4.5で、前記チタン化合物を含む排液を接触させるチタン排液接触処理を施すことにより、チタン排液接触処理を行い得られる水酸化チタンの凝集物中のカルシウム含有量を少なくすることができ、且つ、チタン排液接触処理の処理後の排液中にチタン成分が溶解して、未回収チタン成分となってしまうことを、防ぐことができることから、カルシウム含有量が少ない水酸化チタンを高い収率で回収することができる。また、本発明のチタン成分の回収方法においては、工程(2)を行い得られた水酸化チタンの凝集物に含まれている水酸化カルシウムが、チタン排液接触処理で接触させるチタン化合物を含む排液中のチタン化合物との反応に使われるので、工程(2)で中和剤として使用した水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを、無駄なくチタン成分の回収に用いることができる。本発明の第二の形態のチタン成分の回収方法では、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理を行うことにより、該水酸化チタンの凝集物に残存する水酸化カルシウム等の難水溶性未反応物質を溶解除去するので、水酸化チタンの凝集物中のカルシウム含有量を少なくすることができ、且つ、該水酸化チタンの凝集物に残存する水酸化カルシウム等の難水溶性未反応物質を、チタン排液接触処理において、チタン化合物を含む排液中のチタン成分の回収に用いることができる。以上のことから、本発明の第二の形態のチタン成分の回収方法では、水酸化チタンの凝集物中のカルシウム含有量を少なくすることができ、且つ、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを無駄なく使用できるので、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの使用量を少なくすることができる。
【0116】
本発明の第二の形態のチタン成分の回収方法は、工程(1)、工程(2)及び工程(3B)に加え、工程(3B)を行い得られる水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を、pH6.0以上9.0以下の洗浄水で洗浄する洗浄工程を有することができる。洗浄工程では、工程(3B)を行い得られる水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物に洗浄水を接触させることにより、洗浄を行うが、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物と洗浄水の接触方法は、特に制限されず、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0117】
図6は、本発明の第二の形態のチタン成分の回収方法のうち、洗浄工程を行う形態の形態例を示すフロー図である。図6中、受水槽1に、チタン化合物を含む排液10を移送し、受水槽1内に水11を供給して、チタン化合物を含む排液10と水11を混合し、加水分解処理を施す。次いで、加水分解処理された処理液を、一次中和処理槽2に移送し、一次中和処理槽2に水酸化カルシウム懸濁液12を供給して、一次中和処理槽2内の処理液のpHが1.5以上2.5未満になるように一次中和処理を施す。次いで、一次中和処理を施した処理液を、二次中和処理槽3に移送し、二次中和処理槽3に水酸化カルシウム懸濁液13を供給して、二次中和処理槽3内の処理液のpHが6.5以上7.5以下になるように二次中和処理を施す。次いで、二次中和処理を施した処理液を、凝集槽4に移送して、凝集槽4に凝集剤を添加して、水酸化チタンを凝集させることにより、水酸化チタンの凝集物を生じさせる。次いで、生じた水酸化チタンの凝集物を含む凝集処理液を、沈降槽5に移送し、沈降槽5内で、水酸化チタンの凝集物を沈降させて、沈降槽5の下部又は底部から、水酸化チタンの凝集物の沈降物を抜き出す。次いで、沈降槽5から抜き出した水酸化チタンの凝集物の沈降物を、チタン排液接触処理槽18に移送し、チタン排液接触処理槽18にチタン化合物を含む排水10を供給して、水酸化チタンの凝集物の沈降物とチタン化合物を含む排水10を混合し、pH2.1~4.9で両者を接触させて、チタン排液接触処理を施す。次いで、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を、フィルタープレス装置7を用いてろ過し、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物から液相を除去して、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物をろ別することにより、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物のプレスケーキを得る。次いで、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物のプレスケーキを、洗浄槽32に移送し、洗浄槽槽32に洗浄水15を供給して、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物と洗浄水15を混合し、洗浄を行う。次いで、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物の洗浄物を、フィルタープレス装置33を用いてろ過し、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物の洗浄物から液相を除去して、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物をろ別することにより、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物のプレスケーキ25を得る。
【0118】
つまり、洗浄工程の第一の形態は、工程(3B)を行い得られる水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を、フィルタープレス装置、遠心分離装置、液体サイクロン装置等の固液分離装置を用いて、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を液相と分離し、プレスケーキ等の脱水処理物を得、次いで、プレスケーキ等の脱水処理物を、洗浄水を固液分離装置から取り出し、次いで、脱水処理物に洗浄水を接触させることにより、洗浄を行う形態である。
【0119】
第一の形態の洗浄工程において、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物と洗浄水を接触させた後は、フィルタープレス装置、遠心分離装置、液体サイクロン装置等の固液分離装置を用いて、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物と洗浄水を分離し、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る。
【0120】
図7は、本発明の第二の形態のチタン成分の回収方法のうち、洗浄工程を行う他の形態の形態例を示すフロー図である。図7中、受水槽1に、チタン化合物を含む排液10を移送し、受水槽1内に水11を供給して、チタン化合物を含む排液10と水11を混合し、加水分解処理を施す。次いで、加水分解処理された処理液を、一次中和処理槽2に移送し、一次中和処理槽2に水酸化カルシウム懸濁液12を供給して、一次中和処理槽2内の処理液のpHが1.5以上2.5未満になるように一次中和処理を施す。次いで、一次中和処理を施した処理液を、二次中和処理槽3に移送し、二次中和処理槽3に水酸化カルシウム懸濁液13を供給して、二次中和処理槽3内の処理液のpHが6.5以上7.5以下になるように二次中和処理を施す。次いで、二次中和処理を施した処理液を、凝集槽4に移送して、凝集槽4に凝集剤を添加して、水酸化チタンを凝集させることにより、水酸化チタンの凝集物を生じさせる。次いで、生じた水酸化チタンの凝集物を含む凝集処理液を、沈降槽5に移送し、沈降槽5内で、水酸化チタンの凝集物を沈降させて、沈降槽5の下部又は底部から、水酸化チタンの凝集物の沈降物を抜き出す。次いで、沈降槽5から抜き出した水酸化チタンの凝集物の沈降物を、チタン排液接触処理槽18に移送し、チタン排液接触処理槽18にチタン化合物を含む排液10を供給して、水酸化チタンの凝集物の沈降物とチタン化合物を含む排液10を混合し、チタン排液接触処理を施す。次いで、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を、フィルタープレス装置7を用いてろ過し、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物から液相を除去して、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物をろ別することにより、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物から液相を除去した後、更に、フィルタープレス装置7内のろ過物に、0.2~0.5MPaに加圧した洗浄水15を供給して、ろ過物に高圧で洗浄水15を接触させる貫通洗浄により、洗浄を行い、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物のプレスケーキ26を得る。
【0121】
つまり、洗浄工程の第二の形態は、工程(3B)を行い得られる水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を、フィルタープレス装置を用いるろ過により、水酸化チタンの凝集物を液相と分離し、更に、フィルタープレス装置内のろ過物に、0.2~0.5MPaに加圧した洗浄水を供給して、ろ過物に高圧で洗浄水を接触させる貫通洗浄により、洗浄を行う形態である。
【0122】
洗浄工程において用いられる洗浄水のpHは、水酸化チタンを変質させずに洗浄できるpHであればよく、通常、6.0以上9.0以下である。また、水酸化チタンを変質させずに洗浄可能な洗浄水としては、特に限定されないが、例えば、イオン交換水、純水、超純水、工業用水、井戸水、水道水などを適用することができる。
【0123】
洗浄時の温度は、特に制限されないが、10~50℃であることが好ましく、15~45℃であることがより好ましく、20~40℃であることがさらに好ましい。
【0124】
洗浄工程を行った後は、固液分離装置を用いて、洗浄後の水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を含む洗浄処理液から液相を分離し、水酸化チタンの凝集物の脱水処理物を得、次いで、脱水処理物を60~200℃で乾燥して、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る。
【0125】
本発明の第二の形態のチタン成分の回収方法において、オレフィン類重合用固体触媒成分又はオレフィン類重合用触媒を調製する際に発生する、チタン化合物を含む排液が、塩素を含有する場合、洗浄工程を行うことにより、水酸化チタンの凝集物中の塩素含有量を少なくすることができる。
【0126】
このようにして、本発明のチタン成分の回収方法では、オレフィン類重合用固体触媒成分又はオレフィン類重合用触媒を調製する際に発生するチタン化合物を含む排液中のチタン化合物を、水酸化チタンとして回収することができ、カルシウム含有量が少ない水酸化チタンを、高い収率で、簡便に回収することができ、且つ、中和に用いた水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを無駄なく使用できるので、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの使用量を少なくすることができる。
【0127】
次に、本発明の酸化チタンの製造方法について説明する。
本発明の酸化チタンの製造方法は、チタン化合物を含む排液から酸化チタンを製造する酸化チタンの製造方法であって、
該チタン化合物を含む排液を水と接触させ、該チタン化合物を加水分解処理する工程(1)と、
加水分解処理を施した処理液に対し、pHが1.5以上2.5未満になるように中和剤として水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを加える一次中和処理を施し、次いで、該一次中和処理を施した処理液に対し、pHが6.5以上7.5以下になるように中和剤として水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを加える二次中和処理を施し、次いで、水酸化チタンを凝集させる凝集処理を施し、水酸化チタンの凝集物を得る工程(2)と、
該工程(2)より後段において、pH2.1~4.9、好ましくはpH2.5~4.5、より好ましくはpH3.0~4.5で、該水酸化チタンの凝集物に前記チタン化合物を含む排液を接触させるチタン排液接触処理を行い、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を得る工程(3)と、
該水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を焼成して、酸化チタンを得る焼成工程と、
を有すること、
を特徴とする。また、本発明の酸化チタンの製造方法は、工程(3)を行い得られる水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を、pH6.0以上9.0以下の洗浄水で洗浄する洗浄工程を有することができる。
【0128】
本発明の酸化チタンの製造方法は、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を焼成して、酸化チタンを得る焼成工程を有すること以外は、工程(1)、工程(2)、工程(3)、工程(3A)、工程(3B)、洗浄工程、用いる排水、処理及び処理方法等については、本発明のチタン化合物の回収方法と共通し、その詳細については、本発明のチタン成分の回収方法の説明で述べた通りである。
【0129】
本発明の酸化チタンの製造方法に係る焼成工程は、水酸化チタンの凝集物のチタン排液接触処理物を焼成することにより、酸化チタンを得る工程である。
【0130】
焼成工程における焼成条件としては、特に制限されず、水酸化チタンが酸化チタンに変換される条件であればよい。例えば、焼成工程における焼成温度は、好ましくは60~1000℃である。また、焼成時間は、適宜選択される。また、焼成雰囲気は、大気雰囲気下、酸素ガス雰囲気下等の酸化性雰囲気下である。また、焼成工程では、焼成を1回だけ行ってもよいし、あるいは、焼成を2回以上、同じ温度又は異なる温度で行ってもよい。
【0131】
本発明の酸化チタンの製造方法では、工程(1)及び工程(2)を行い得られる水酸化チタンの凝集物に対し工程(3)を行うので、チタン化合物を含む排液から、チタン成分を回収し、水酸化チタンを得る際に、中和剤として水酸化カルシウムを用いても、カルシウム含有量が少ない水酸化チタンを得ることができるので、カルシウム含有量が少ない酸化チタンを得ることができる。また、本発明の酸化チタンの製造方法では、更に、洗浄工程を行うことにより、チタン化合物を含む排液が、塩素を含有する場合、酸化チタン中の塩素含有量を低くすることができる。
【0132】
このようにして、本発明の酸化チタンの製造方法では、チタン化合物を含む排液中のチタン化合物を、酸化チタンとして回収することができ、且つ、カルシウム含有量が少ない酸化チタンを、洗浄工程を行う場合は、カルシウム含有量が少なく且つ塩素含有量が少ない酸化チタンを、簡便に回収することができる。また、中和剤として使用する水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの使用量を少なくすることができる。
【0133】
次に、本発明のチタン酸アルカリ金属の製造方法について説明する。
本発明のチタン酸アルカリ金属の製造方法は、本発明のチタン成分の回収方法で回収された水酸化チタン、又は本発明の酸化チタンの製造方法を行い得られた酸化チタンを原料として用いることを特徴とするものである。
【0134】
本発明のチタン酸アルカリ金属の製造方法は、原料として、本発明のチタン成分の回収方法で回収された水酸化チタン、又は本発明の酸化チタンの製造方法を行い得られた酸化チタンを原料として用いることを除けば、公知の方法を採用することができる。
【0135】
例えば、チタン原料として、本発明のチタン成分の回収方法で回収された水酸化チタンを用いる場合は、適宜の方法で、水酸化チタンを酸化して、酸化チタンに変換した後、得られる酸化チタンを、チタン原料として用いるとともに、アルカリ原料として、カリウム化合物を用い、両者を含む原料混合物を焼成処理し、粉砕処理することにより、チタン酸アルカリ金属を製造することができる。また、チタン原料として、本発明の酸化チタンの製造方法を行い得られた酸化チタンを用いる場合は、本発明の酸化チタンの製造方法を行い得られた酸化チタンを、チタン原料として用いるとともに、アルカリ原料として、カリウム化合物を用い、両者を含む原料混合物を焼成処理し、粉砕処理することにより、チタン酸アルカリ金属を製造することができる。
【0136】
得られたチタン酸アルカリ金属は、例えば、自動車、鉄道車両、航空機および産業機械類等における制動装置を構成する、ブレーキライニング、ディスクパッド、クラッチフェージング等の摩擦摺動部材用の摩擦材として好適に用いられる。
【0137】
本発明のチタン酸アルカリ金属の製造方法によれば、オレフィン類重合用固体触媒成分又はオレフィン類重合用触媒を調製する際に発生するチタン化合物含有排液から、得られたカルシウム含有量が少ない高純度なチタン化合物を原料に用いることから、高純度なチタン酸アルカリ金属を低コストで製造することができる。
【実施例
【0138】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の例により何ら制限されるものではない。
【0139】
(製造例1)
<水酸化チタンの凝集物(排液接触処理前)の調製>
図8に示す処理フローを用いて、チタン化合物を含む排液から水酸化チタンの凝集物(排液接触処理前)を調製した。
すなわち、チーグラーナッタ触媒の製造工場において、オレフィン類重合用固体触媒成分を調製した際に発生する、四塩化チタン、ジエトキシマグネシウム、トルエンおよびヘプタンを含む液温25℃の排液を処理対象とし、当該排液を容量250mの受水槽1に送入することで混合し、加水分解を施した。このとき、受水槽中の排液のpHが1になるように受水槽中に加水分解用の水11を送入した。
上記加水分解処理された処理液を、10m/hの速度で容量10mの一次中和処理槽2に送入し、液温25℃の12.5mol/L水酸化カルシウム水溶液12を用いて、一次中和処理槽2内に送入された処理液のpHが2.0になるように一次中和処理を施した。
次いで、上記一次中和処理を施した処理液を、10m/hの速度で容量10mの二次中和処理槽3に送入し、液温25℃の12.5mol/L水酸化カルシウム水溶液13を用いて、二次中和処理槽3内に送入された処理液のpHが7.2になるように二次中和処理を施した。
二次中和処理を施した液温25℃の処理液は、10m/hの速度で容量10mの凝集槽4内に送入して、凝集剤(クリタ・ケミカル北陸(株)製クリファームPA-833)を用いて凝集させて凝集処理液を得た後、該凝集処理液を、沈降槽5に移送し、沈降槽5内で沈降させて、沈降槽5から沈降物を抜き出し、水酸化チタンの凝集物(排液接触処理前)27を得た。
【0140】
(実施例1、比較例1~3)
500mLのビーカーに、上記で得た水酸化チタンの凝集物(排液接触処理前)を、表1に示す量入れ、マグネティックスターラーで撹拌させながら、四塩化チタン水溶液(Ti含有量が9.20質量%、Cl含有量が27.6質量%)をイオン交換水2075gで希釈した疑似排液(疑似チタン化合物を含む排液)を、表1に示す量添加して、表1に示すpHに調整した後、80分間撹拌を行った。
次いで、撹拌終了後、ろ過を行い、水酸化チタンの凝集物(排液接触処理後)と、ろ液を得た。
次いで、ろ液については、ICP発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy;ICP-AES)により、ろ液中のTi含有量を測定した。その結果を表1に示す。なお、ろ液中のTi含有量の測定には、株式会社日立ハイテクサイエンス製のPS3520UVDDIIを用いた。
また、水酸化チタンの凝集物(排液接触処理後)については、イオン交換水200gと混合し、スラリー化した後、15分間撹拌した。撹拌終了後、ろ過を行い、洗浄した水酸化チタンの凝集物(排液接触処理後)を得、次いで、洗浄物を120℃で16時間乾燥し、乾燥した水酸化チタンの凝集物(排液接触処理後)を得た。次いで、乾燥した水酸化チタンの凝集物(排液接触処理後)を、蛍光X線元素分析法(X-ray Fluorescence Analysis;XRF)により、水酸化チタンの凝集物中のCa含有量を測定した。その結果を表1に示す。なお、水酸化チタンの凝集物中のCa含有量の測定には、株式会社リガク製のEDXL300を用いた。
【0141】
【表1】
【0142】
実施例1では、チタン排液接触処理を、pH3.5で行うことにより、乾燥後の水酸化チタン凝集物中のCa含有量を少なくし、且つ、チタン排液接触処理の排液に溶解して回収できないTi量を非常に少なくすることができた。
一方、比較例1では、チタン排液接触処理を、pH2.0で行ったために、乾燥後の水酸化チタン凝集物中のCa含有量を少なくできたものの、チタン排液接触処理の排液に溶解して回収できないTiが多くなってしまった。
また、比較例2では、チタン排液接触処理を、pH5.0で行ったために、チタン排液接触処理の排液に溶解して回収できないTi量は少なかったものの、乾燥後の水酸化チタン凝集物中にCaが多く残留してしまった。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明によれば、チタン化合物を含有する排液、例えば、オレフィン類重合用固体触媒成分又はオレフィン類重合用触媒を調製する際に発生するチタン化合物含有排液等のチタン化合物を含有する排液から、中和剤として水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを用いても、チタン化合物を高純度で簡便に回収する方法を提供することができるとともに、チタン化合物を含有する排液、例えば、オレフィン類重合用固体触媒成分又はオレフィン類重合用触媒を調製する際に発生するチタン化合物含有排液等のチタン化合物を含有する排液から、中和剤として水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムを用いても、チタン化合物を高純度で簡便に製造する方法を提供することができ、さらに、高純度なチタン酸アルカリ金属を低コストに製造する方法を提供することができる。また、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの使用量を低減できる。
【符号の説明】
【0144】
1 受水槽
2 一次中和処理槽
3 二次中和処理槽
4 凝集槽
5 沈殿槽
6 沈殿物貯蔵槽
7、9、33 フィルタープレス装置
8、18 チタン排液接触処理槽
10 チタン化合物を含む排液
11 水
12、13 水酸化カルシウム懸濁液
15 洗浄水
19 水酸化チタン化合物の凝集物
20 水酸化チタン化合物の凝集物のチタン排液接触処理物
21、22、23、24、25、26 水酸化チタン化合物の凝集物のチタン排液接触処理物のプレスケーキ
27 水酸化チタン化合物の凝集物(チタン排液接触処理後)
31、32 洗浄槽
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8