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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】オンボディセンサシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/25 20210101AFI20240202BHJP
   G16H 10/60 20180101ALI20240202BHJP
【FI】
A61B5/25
G16H10/60
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021520362
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2019077903
(87)【国際公開番号】W WO2020078962
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】62/746,172
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィスウェスワラ アショカ サタヌアー
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン マーク トーマス
(72)【発明者】
【氏名】メフター モハメド
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0264792(US,A1)
【文献】国際公開第2016/149829(WO,A1)
【文献】特表2018-527107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の皮膚と電気的にインタフェースするための少なくとも2つの皮膚インタフェースユニットであって、生成された信号を身体内にカップリングするための第1の皮膚インタフェースユニットと、カップリングされた前記信号を、前記対象者の皮膚上の離れた場所で検知するための第2の皮膚インタフェースユニットとを含み、前記第1及び第2の皮膚インタフェースユニットのうちの1つは前記身体上の既知の場所に配置される、少なくとも2つの皮膚インタフェースユニットと、
前記皮膚インタフェースユニットを用いた信号生成及び検知を制御し、1つの制御モードにおいて、前記第2の皮膚インタフェースユニットにおいて検知された信号特性と、1つ又は複数の所定の身体伝送パラメータとに基づいて、前記第1及び第2の皮膚インタフェースユニットのうちの1つの位置の指標を決定するように動作可能である、コントローラと、
を備える、オンボディセンサシステムであって、
前記コントローラは、更なる制御モードにおいて、前記第1及び第2の皮膚インタフェースユニットの既知の初期位置に基づいて前記身体伝送パラメータを再決定するための再較正手順を実行するように動作可能であり、前記再較正手順は、
前記第1の皮膚インタフェースユニットを制御して1つ又は複数の基準信号を生成することと、
前記第2の皮膚インタフェースユニットにおいて前記基準信号を検知し、検知された前記信号特性と、前記第1及び第2の皮膚インタフェースユニットの前記既知の初期位置とに基づいて、前記身体伝送パラメータのうちの少なくとも1つを再決定することと、
少なくとも1つの再決定された前記身体伝送パラメータと、対応する所定の身体伝送パラメータとの間の任意の差に基づいて、所定の前記身体伝送パラメータを補正することと、
を含む、オンボディセンサシステム。
【請求項2】
前記第1の皮膚インタフェースユニットは既知の場所に配置され、前記コントローラは、前記1つの制御モードにおいて、前記第2の皮膚インタフェースユニットの位置を決定するように動作可能であり、前記再較正手順は、前記第1の皮膚インタフェースユニットの既知の場所と、前記第2の皮膚インタフェースユニットの既知の初期位置とに基づく、請求項1に記載のオンボディセンサシステム。
【請求項3】
前記第1及び第2の皮膚インタフェースユニットの一方又は双方は、身体装着型ユニットの形態をとる、請求項1又は2に記載のオンボディセンサシステム。
【請求項4】
前記第1の皮膚インタフェースユニットは、前記対象者の前記皮膚の所定の領域に装着するためのオンボディユニット、又は前記対象者の前記皮膚の所定の領域に一時的に配置するためのオフボディユニットである、請求項2又は3に記載のオンボディセンサシステム。
【請求項5】
前記第1の皮膚インタフェースユニットは、前記身体の特定の部分に装着するためのウェアラブルユニットである、請求項2又は3に記載のオンボディセンサシステム。
【請求項6】
少なくとも前記第2の皮膚インタフェースユニットは、前記対象者の前記皮膚に装着するためのセンサパッドの形態をとる、請求項1から5のいずれか一項に記載のオンボディセンサシステム。
【請求項7】
1つ又は複数の前記身体伝送パラメータは、所与の皮膚インタフェースユニット上の2つの電極対間の信号波長、信号伝播速度、位相角差、信号の送信と受信との間の信号伝送時間、信号の送信と受信との間の信号減衰のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のオンボディセンサシステム。
【請求項8】
所定の前記身体伝送パラメータは、所定の身体伝送パラメータの複数の組を含み、各組は、前記コントローラが前記皮膚インタフェースユニットの位置を決定するように動作可能な前記皮膚インタフェースユニットの異なる特定の位置に対応する、請求項1から7のいずれか一項に記載のオンボディセンサシステム。
【請求項9】
所定の前記身体伝送パラメータの各組は、前記コントローラが前記皮膚インタフェースユニットの位置を決定するように動作可能な前記皮膚インタフェースユニットの異なる特定の位置及び向きに対応する、請求項8に記載のオンボディセンサシステム。
【請求項10】
前記オンボディセンサシステムは、対象者の1つ又は複数の生理学的パラメータを監視するためのものであり、前記第1の皮膚インタフェースユニットは、1つ又は複数の前記生理学的パラメータを検知する際に用いるためのものである、請求項1からのいずれか一項に記載のオンボディセンサシステム。
【請求項11】
所定の前記身体伝送パラメータを補正することは、
少なくとも1つの再決定された前記身体伝送パラメータを、対応する所定の前記身体伝送パラメータと比較し、前記比較に基づいてパラメータ補正係数を決定することと、
前記身体伝送パラメータを補正するために、予め記憶された身体伝送パラメータの各々に前記パラメータ補正係数を適用することと、
所定の前記身体伝送パラメータの代わりに補正された前記身体伝送パラメータを記憶することと、
を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のオンボディセンサシステム。
【請求項12】
前記コントローラは更に、1つの制御モードに従って、初期較正手順を実行し、前記第2の皮膚インタフェースユニットにおいて測定された信号特性に基づいて所定の前記身体伝送パラメータを決定及び記憶し、2つの前記皮膚インタフェースユニットは、場所の少なくとも1つの既知の組に配置される、請求項1から11のいずれか一項に記載のオンボディセンサシステム。
【請求項13】
前記初期較正手順は、所定の前記身体伝送パラメータの複数の組を決定及び記憶することを含み、各組は、前記コントローラがその位置を決定するように動作可能な前記皮膚インタフェースユニットの異なる特定の位置に対応する、請求項12に記載のオンボディセンサシステム。
【請求項14】
所定の前記身体伝送パラメータの各組は、前記コントローラがその位置を決定するように動作可能な前記皮膚インタフェースユニットの異なる特定の位置及び向きに対応する、請求項13に記載のオンボディセンサシステム。
【請求項15】
前記コントローラは、1つの制御モードに従って、検知された前記信号特性及び前記身体伝送パラメータを用いた前記皮膚インタフェースユニットの現在の位置の指標の決定に基づいて、前記皮膚インタフェースユニットのうちの1つを位置決めするようにユーザを誘導する、請求項1から14のいずれか一項に記載のオンボディセンサシステム。
【請求項16】
オンボディセンサシステムを構成する方法であって、
前記オンボディセンサシステムは、対象者の皮膚と電気的にインタフェースするための少なくとも2つの皮膚インタフェースユニットであって、生成された信号を身体内にカップリングするための第1の皮膚インタフェースユニットと、カップリングされた前記信号を、前記対象者の皮膚上の離れた場所で検知するための第2の皮膚インタフェースユニットとを含み、前記第1及び第2の皮膚インタフェースユニットのうちの1つは前記身体上の既知の場所に配置される、少なくとも2つの皮膚インタフェースユニットを備え、
前記オンボディセンサシステムは、前記第2の皮膚インタフェースユニットにおいて検知された信号特性と、1つ又は複数の所定の身体伝送パラメータとに基づいて、前記第1及び第2の皮膚インタフェースユニットのうちの1つの位置の指標を決定するように動作可能であり、
前記方法は、
前記第1及び第2の皮膚インタフェースユニットの既知の初期位置に基づいて1つ又は複数の前記身体伝送パラメータを再決定するための再較正手順を実行するステップを有し、前記再較正手順は、
前記第1の皮膚インタフェースユニットを制御して1つ又は複数の基準信号を生成し、前記第2の皮膚インタフェースユニットにおいて前記基準信号を検知することと、
検知された前記信号特性と、2つの前記第1及び第2の皮膚インタフェースユニットの前記既知の初期位置とに基づいて、前記身体伝送パラメータのうちの少なくとも1つを再決定することと、
少なくとも1つの再決定された前記身体伝送パラメータと、対応する所定の身体伝送パラメータとの間の任意の差に基づいて、所定の前記身体伝送パラメータを補正することと、
を含む、方法。
【請求項17】
前記方法は、前記再較正手順に続いて、
前記身体上で前記第1及び第2の皮膚インタフェースユニットのうちの1つを再位置決めするステップと、
前記第2の皮膚インタフェースユニットにおいて検知された信号特性と、補正された前記身体伝送パラメータとに基づいて、再位置決めされた前記皮膚インタフェースユニットの位置を決定するステップと、
を更に有する、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ又は複数のオンボディセンサ素子の位置を確立するための手段を有するオンボディセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
オンボディ検知システムは、対象者の生理学的パラメータの正確な長期監視を可能にする。オンボディシステムは、例えばパッチを含む、身体に装着可能であり、経時的に安定した位置を保つウェアラブルデバイス又はユニットの使用に基づく。皮膚又は身体と電気的にインタフェースすることによって、バイタルサイン又は他のパラメータを監視することができる。
【0003】
オンボディシステムは、通常、一般病棟、及び更には対象者の自宅等の、低感度の環境において用いられる。状態の悪化を可能な限り早期に検出することを可能にすることによって死亡率を低下させるために、一般病棟における生理学的パラメータの監視における信頼性の改善が必要とされている。また、患者の自宅において確実に監視する能力は、検出されない悪化のリスクを伴うことなく、患者の早期の退院を可能にする。監視は、通常、例えば退院から最大30日続く。
【0004】
パッチの事例では、多くの場合、バッテリ充電の枯渇、接着性の劣化、又は皮膚炎に起因して、パッチを2~3日ごとに取り替える必要がある。結果として、パッチの交換及び再取付けは、患者自身、又は親類等の非公式の介護者が行うものとなる。いくつかの場合、パッチは、他の代替的な場所及び向きに移されなくてはならない。交換時のパッチの正確な配置は、生理学的パラメータが正しく決定されることを確実にするために重要である。
【0005】
パッチ等のオンボディ要素の位置の決定を可能にする方法が提案された。これを用いて、身体上に要素を正しく位置決めするようにユーザを誘導することができる。
【0006】
1つの手法は、人体の電場モデルの適用に基づく。モデルは、信号伝送媒体として人体の周波数反応を決定するために使用することができる。これは、人体上の1つの点において既知の周波数及び振幅を有する電気信号を生成し、容量カップリングすることによって測定される。次に、カップリングされた信号が、身体上の異なる離れた点においてセンサによって検知及び測定される。受信信号は分析され、様々な信号特性が導出される。このプロセスは、異なる送信機周波数を有する複数の異なる信号について、及び更には送信場所に対するオンボディ検知要素の様々な距離及び身体の場所について繰り返すことができる。
【0007】
1つの例示的なモデルが、Namjum Cho他(2007)「The Human Body Characteristics as a Signal Transmission Medium for Intrabody Communication」IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniquesに提示されている。この論文において、著者は、腕について2つ、及び人間の胴体について1つの3つの円筒の観点での人体のモデリングに基づいた人体の近接場カップリングモデルを提案している。これについては図1に示されている。
【0008】
図1(a)に示すように、腕及び人間の胴体は、10cm長のブロックでセグメント化され、各々が抵抗及び容量を有する。図1(b)に示すように、腕及び胴体は合わせて、分散型RCネットワークとしてモデル化される。類似の方式で、人間の脚は、対応する抵抗及びインピーダンスを用いてモデル化される。腕モデルは、下付き文字「A」を有する抵抗及び容量を有し、胴体は、下付き文字「T」を有する抵抗及び容量を有する。
【0009】
信号伝送及び検知手法の1つの実際的な実施態様が、Zhang, Y.他、2016年5月、「Skintrack: Using the body as an electrical waveguide for continuous finger tracking on the skin」In Proceedings of the 2016 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems(1491~1503頁)に提示されている。
【0010】
この論文は、SkinTrackと呼ばれる連続指追跡技術を提案している。SkinTrackは、皮膚にわたる連続タッチ追跡を可能にするウェアラブルシステムである。このシステムは、連続高周波数AC信号を放出するリングと、複数のセンサ電極を具現化する検知リストバンドとを備える。身体を通る高周波数AC信号の伝播に内在する位相遅延に起因して、電極対間で位相差を観測することができる。SkinTrackシステムは、これらの位相差を測定して、対象者の皮膚にタッチする対象者の指の2D座標位置を計算する。SkinTrack方法の分解能(すなわち、精度)は約7mmである。
【0011】
同じ論文は、人体の2つの異なる場所において検知された信号間の位相角差が、センサに対する信号送信機の位置特定の尺度として用いられる方法について記載している。図2は、送信機がリング12の形態をとる技法を概略的に示す。スマートウォッチ上の2つのセンサ電極14a、14bに対する送信機の場所が、この技法を用いて識別される。
【0012】
80MHzRF信号が用いられるとき、人体を通って伝播する電磁波の波長は、約91cmである。この結果、波の単一のサイクルについて約4°/cmの位相角差が生じる。位置特定がRF信号の1つの波長以内(すなわち、約91cm以内)で行われる場合、2つの受信信号間の位相角差を測定することによって、2つのセンサに対する送信機の位置を一意に特定することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
皮膚にわたるRF信号伝播特性は、経時的に変動する。この変動は、環境要因に起因し、結果として、皮膚の水分レベルの変化が生じる。皮膚伝送特性におけるこの変化(別途、皮膚チャネル特性としても知られる)の結果として、信号伝播速度、及び結果として信号波長を含む、信号伝播に関連付けられた様々なパラメータの変化が生じる。信号波長のこの変化の結果として、位相角差値、飛行時間値(信号伝送時間)及び信号経路損失値(信号減衰)等の様々な対象信号パラメータの変化が生じる。しかしながら、これらのパラメータは、身体上の送信機の位置及び向きの正確な決定のために必要である。
【0014】
本発明は、特許請求の範囲によって定義される。
【0015】
本発明者らは、オンボディ検知システムの実際の用途において、この皮膚特性の変動により、上記で論考したように患者が自宅でオンボディ要素(パッチ等)を取り替える必要がある事例に複雑性が生じることを認識している。要素のリアルタイム位置の正確な検知は、システムが、正しい位置に要素を配置するようにユーザを誘導することを可能にするために重要である。しかしながら、システムが病院で最初に較正された時点と、患者がパッチを取り替える時点との間で皮膚伝送特性が変化した場合、位相角差、飛行時間及び経路損失値等の測定された信号特性も変化する。これは、送信機の位置の不正確な決定につながり、このため、送信機の正しい位置決めに関する不正確なガイダンスにつながる。これはオンボディ要素の誤った配置につながり、これは生理学的パラメータ監視の信頼性に影響を及ぼす。
【0016】
本発明は、上記の問題に対処することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の態様による例によれば、オンボディセンサシステムであって、
対象者の皮膚と電気的にインタフェースするための少なくとも2つの皮膚インタフェースユニットであって、生成された信号を身体内にカップリングするための第1のユニットと、カップリングされた信号を、対象者の皮膚上の離れた場所で検知するための第2のユニットとを含み、ユニットのうちの1つは身体上の既知の場所に配置される、少なくとも2つの皮膚インタフェースユニットと、
皮膚インタフェースユニットを用いた信号生成及び検知を制御するように適合され、1つの制御モードにおいて、第2のユニットにおいて検知された信号特性と、1つ又は複数の所定の身体伝送パラメータとに基づいて、ユニットのうちの1つの位置の指標を決定するように動作可能である、コントローラと、
を備え、
コントローラは、更なる制御モードにおいて、2つのユニットの既知の初期位置に基づいて前記身体伝送パラメータを再決定するための再較正手順を実行するように動作可能であり、手順は、
第1の皮膚インタフェースユニットを制御して1つ又は複数の基準信号を生成することと、
第2の皮膚インタフェースユニットにおいて基準信号を検知し、検知された信号特性と、2つのユニットの前記既知の初期位置とに基づいて、身体伝送パラメータのうちの少なくとも1つを再決定することと、
少なくとも1つの再決定されたパラメータと、対応する所定のパラメータとの間の任意の差に基づいて、所定の身体伝送パラメータを補正することと、
を含む、オンボディセンサシステムが提供される。
【0018】
本発明は、皮膚と電気的にカップリングして身体を通じて信号を送受信するための手段を有する皮膚インタフェースユニットの対を有するセンサシステムを提案する。各々が、身体内への及び身体からの信号をカップリングするための1つ又は複数の電極対を備える。システムは、1つのユニットから身体を通って他方のユニットへ通過した後の送信信号の特性と、身体上のユニットのうちの1つの既知の位置とに基づいて、皮膚インタフェースユニットのうちの1つの位置の指標を決定することができる。これを行うために、例えば、決定される位置を有するユニットが配置され得る異なる特定の位置について、身体を通る伝播波長及び速度に関係付けるか、又は単に、信号の予測伝送時間、位相角差及び/又は減衰に関係付ける(これらとの比較に基づいて位置指標が導出されることを可能にする)、特定の身体伝送パラメータも用いられる。
【0019】
(皮膚インタフェースユニットの初期配置と、後続の再配置又は再位置決めとの間の)身体伝送パラメータの変化の問題を克服するために、システムは、再較正手順を行うように更に適合される。この手順は、身体伝送パラメータが再計算されることを可能にする。本発明は、この手順を常にインタフェースユニットの除去及び再位置決めに先立って行うことができるという洞察に基づく。これは、常に、(例えば、パラメータがドリフトする前にユニットを最後に配置した際に求められた位置に基づいて、又は臨床医による既知の正確な配置に基づいて)依拠することができるインタフェースユニットの既知の開始位置が存在し、それによって、この情報を用いて新たな更新された身体伝送パラメータを遡及的に決定することができることを意味する。
【0020】
このため、本発明は、いずれの情報が正確なものとして依拠されるか、及びいずれが再計算されることになるかを動的に判断することに基づく。ユニットが適所に置かれ、その位置が計算されると、この位置は、記憶され、既知であると想定される。次に、これを、ユニットを再び除去する前に(すなわち、その位置が変化していない間に)用いて、伝送パラメータを再計算することができる。伝送パラメータが再計算されると、これらを記憶し、既知であると想定することができ、次にこれらを用いて、配置後のユニットの位置の指標を再決定することができる。本発明は、このため、情報の展開を動的にかつインテリジェントに適合させ、各々が変化し得る2つの異なる独立した物理的変数が決定され、正確に保たれることを可能にすることに基づく。
【0021】
本発明はコントローラを利用する。コントローラは、別個の(専用)コントローラであるか、又は制御機能が、皮膚インタフェースユニット自体のうちの一方若しくは双方によって実行される。このため、後者の場合、コントローラは分散型コントローラである。このため、いくつかの例においては、皮膚インタフェースユニットの一方又は双方がコントローラを含み、すなわち、制御機能は、システム自体の皮膚インタフェースユニットの間で分散される。上記及び下記の全ての説明及び記載において、コントローラへの参照は、専用制御ユニット、又は関連制御機能を実行するシステムのインタフェースユニットのうちの1つ若しくは複数を指すものとして理解される。
【0022】
インタフェースユニットの位置は、身体又は皮膚上の位置決めを指す。位置は、ユニット間の相対的位置、例えば距離又は分離を意味する。位置は、(例えば、皮膚に対する)向き及び身体/皮膚上の場所も含む。
【0023】
位置の導出された指標は、位置の直接の又は間接的な指標である。これは例えば、量的座標位置であるか、又は単に、合わせて場所を一意に特性評価する、検知される信号特性又はパラメータの組を含む。これ自体は、例えば、(以下で説明するように)そのようなパラメータが異なる位置について以前に計算されたパラメータと比較される場合に有用である。これらの以前に計算されたパラメータは、所定の身体伝送パラメータである。
【0024】
コントローラは、1つの皮膚インタフェースユニットの位置の指標の決定後に、この決定を表す、又はこの決定に基づく出力情報を生成するように動作可能である。これは、ユニットを目標位置に配置するようにユーザを誘導するためのガイダンス命令を含む。
【0025】
再較正手順は、身体伝送パラメータのうちの少なくとも1つを再決定することを含む。この再決定は、例えば事前に記憶された制御ルーチンに基づく。これは、ステップの所定の組が実行されることを含む。
【0026】
所定の身体伝送パラメータは、例えばメモリに予め記憶されるか、又はパラメータは、リモートコンピュータ若しくはメモリ等のリモートデータソースから取得される。
【0027】
システムは、皮膚内又は身体内への、及び皮膚又は身体内から戻る信号を電気的にカップリングするための皮膚インタフェースユニットを備える。各々が、皮膚と電気的に相互作用又はカップリングするための電極の少なくとも1つの対を含むか、又は異なる信号カップリング手段が用いられる。各ユニットは、好ましくは、皮膚に接触させて、又は皮膚に近接させて、場合によっては小さな隙間若しくは空間を開けて分離して、皮膚に対し装着又は適用するためのものである。
【0028】
皮膚インタフェースユニットの一方又は双方が、皮膚に対し装着するためのパッド、例えばパッチを含むか、又はこれから成る。
【0029】
「信号」とは電気信号を意味し、例えば、身体内に容量カップリングされるか、又は身体内に誘導カップリングされる。同じ又は異なるカップリング機構を用いて、検知のために信号を身体から脱カップリングする。
【0030】
コントローラは、信号を生成し、第1の皮膚インタフェースユニットを用いてこれらの信号を身体に印加する。コントローラは、第2の皮膚インタフェースユニットを用いて、同じ信号を第1の皮膚インタフェースユニットから離れた(すなわち、分離した)場所で検知する。代替的に、信号生成及び分析は、インタフェースユニット自体においてローカルで行われる。いずれの場合も、好ましくは、身体内にカップリングするために生成される信号は、RF周波数範囲10MHz~150MHzにある。なぜなら、この周波数範囲において、身体は信号伝送のための導波路としての役割を果たすためである。
【0031】
皮膚インタフェースユニットの一方又は双方は、皮膚インタフェース電極、例えば皮膚接触電極の複数の対を含む。
【0032】
システムは、信号の生成及び送信のための少なくとも1つと、離れた場所における信号の検知のための別の1つとの少なくとも2つの皮膚インタフェースユニットを有する。第1及び第2のインタフェースユニットは、機能的に交換可能であり、すなわち、各々が信号発生器又は信号受信機/センサとして動作することができる。2つは構造的に同じである。
【0033】
代替的に、第1及び第2の皮膚インタフェースユニットは、身体上のそれらの装着構造の観点、及びそれらのより広い機能の観点において異なる。以下で説明するように、様々な事例において、これは、場所又は伝送パラメータの決定手順を単純化するのに役立つことができる。
【0034】
皮膚インタフェースユニットのうちの1つは、身体上の既知の場所に装着するためのものであり、インタフェースユニットのうちの1つは、コントローラが決定する必要がある可変の位置を有する。ユニットのうちの1つの既知の場所は、測定された信号特性及び所定の伝送パラメータと組み合わせて、ユニットの他方の位置を決定するために用いられる。
【0035】
例えば、第1のインタフェースユニットは既知の場所を有する。この場合、対応する制御モードにおいて、コントローラは、第2のインタフェースユニットの位置を決定するように構成される。更に、再較正手順は、第1のユニットの既知の(静的な)場所、及び第2のユニットの既知の初期位置に基づく。
【0036】
これを容易にするために、皮膚インタフェースユニットの一方又は双方は、身体装着型ユニット、例えばセンサパッチ又はウェアラブルデバイスの形態をとる。
【0037】
特定の例においては、第1のインタフェースユニットは、対象者の皮膚の所定の領域に対し(固定して)装着するためのオンボディユニットの形態をとるか、又は対象者の皮膚の所定の領域に対し一時的に配置するためのオフボディユニットの形態をとる。
【0038】
例えば、第1のインタフェースユニットは、身体の特定の部分に合うような形状のユニット、例えば、例として腕時計、リング、手首バンド若しくは足首バンド、又はイヤーフック等のウェアラブルユニットである。
【0039】
例えば、第1のインタフェースユニットは、身体の特定の部分に装着するように構成されたウェアラブルユニット、例えば手首装着型ユニットである。
【0040】
システムは、1つ又は複数の身体伝送パラメータの組を用いる。これらは、電気信号、すなわち生成された信号を搬送するための媒体としての身体又は皮膚の特性に関する。これらは、代替的に、(皮膚又は身体を通って伝播した後の)検知信号の特性に関係し、これらの特性は、第2のインタフェースユニットにおける信号の測定された特性に基づいて導出可能である。
【0041】
1つ又は複数の身体伝送パラメータは、例えば、(単一の皮膚インタフェースユニット上の2つの電極対間の)信号波長、信号伝播速度、位相角差、(信号の生成と受信との間の)信号伝送時間、(信号の生成と受信との間の)信号減衰のうちの少なくとも1つを含む。
【0042】
有利な例のうちの1つの組において、所定の伝送パラメータは、伝送パラメータの複数の組を含み、各組は、異なる特定の可能な位置、及び任意選択で、位置がコントローラによって決定される皮膚インタフェースユニットの向きに対応する。
【0043】
この場合、少なくとも1つの皮膚インタフェースユニットの位置の決定は、単に、第2のインタフェースユニットにおいて検知された信号を分析し、検知された信号に関連付けられた伝送パラメータを決定し(例えば、測定された信号特性に基づいてこれらを導出し)、次に、単にこれらを所定のパラメータの組の各々と比較して、測定パラメータがいずれの組に最も類似しているかを判断することを必要とする。このとき、これは、少なくとも1つのインタフェースユニットが、所与の所定の組に関連付けられた位置に近いか又は一致する現在の位置を有することを示す。
【0044】
これは、例えば、例として既知の信号速度又は波長を用いて第1の原理から位置を計算し、信号伝送時間を測定することよりも単純な手法である。
【0045】
コントローラは、例において、1つの動作モードに従って、初期較正手順を実行し、第2の皮膚インタフェースユニットにおいて測定された信号特性に基づいて所定の伝送パラメータを決定及び記憶するように動作可能であり、2つのユニットは、場所の少なくとも1つの既知の組に配置される。有利な例において、初期較正手順は、伝送パラメータの複数の組を決定及び記憶することを含み、各組は、コントローラがその位置を決定するように動作可能な皮膚インタフェースユニットの異なる特定の位置及び任意選択で向きに対応する。ユーザは、ユニットのうちの1つ、例えば第2のユニットを、異なる位置及び/又は向き間で動かすのに対し、他方のユニットは固定の既知の場所に留まり、コントローラは、各々について伝送パラメータを決定及び記憶するように構成される。コントローラは、ユニットが次の各位置に動かされたときにこれを示すユーザ入力コマンドを受信するように適合される。
【0046】
1つ又は複数の実施形態によれば、コントローラは、1つの制御モードに従って、検知された信号特性及び記憶された身体伝送パラメータを用いたユニットの現在の位置の指標の決定に基づいて、ユニットのうちの1つを位置決めするようにユーザを誘導するように適合される。いくつかの場合、決定された位置指標は、所定の目標位置と比較され、ガイダンスが導出される。
【0047】
本発明の任意の実施形態によれば、システムは、対象者の1つ又は複数の生理学的パラメータ、例えば対象者のバイタルサインを監視するためのものである。この場合、第2のインタフェースユニットは、1つ又は複数の生理学的パラメータを検知する際に用いるためのものである。
【0048】
本発明の更なる態様による例は、オンボディセンサシステムを構成する方法であって、
システムは、対象者の皮膚と電気的にインタフェースするための少なくとも2つの皮膚インタフェースユニットであって、生成された信号を身体内にカップリングするための第1のユニットと、カップリングされた前記信号を、対象者の皮膚上の離れた場所で検知するための第2のユニットとを含み、ユニットのうちの1つは身体上の既知の場所に配置される、少なくとも2つの皮膚インタフェースユニットを備え、
システムは、第2のユニットにおいて検知された信号特性と、1つ又は複数の所定の身体伝送パラメータとに基づいて、ユニットのうちの1つの位置の指標を決定するように動作可能であり、
方法は、
2つのユニットの既知の初期位置に基づいて1つ又は複数の身体伝送パラメータを再決定するための再較正手順を実行するステップを有し、手順は、
第1の皮膚インタフェースユニットを制御して1つ又は複数の基準信号を生成し、第2の皮膚インタフェースユニットにおいて基準信号を検知することと、
検知された信号特性と、2つのユニットの前記既知の初期位置とに基づいて、身体伝送パラメータのうちの少なくとも1つを再決定することと、
少なくとも1つの再決定されたパラメータと、対応する所定のパラメータとの間の任意の差に基づいて、所定の身体伝送パラメータを補正することと、
を含む、方法を提供する。
【0049】
再構成手順は、皮膚インタフェースユニットうちの1つ、例えば第2のインタフェースユニットの再位置決めの前に行われる。これは、身体伝送パラメータが補正される一方で、インタフェースユニットの双方の正確な位置が既知であることを意味する。位置のこの既知の組は、再較正手順において用いることができる。
【0050】
したがって、1つ又は複数の実施形態によれば、構成方法は、再較正手順に続いて、
身体上で前記インタフェースユニットのうちの1つ(コントローラによって決定される位置を有するインタフェースユニット)、例えば第2のインタフェースユニットを再位置決めするステップと、
第2のインタフェースユニットにおいて検知された信号特性と、補正された身体伝送パラメータとに基づいて、再位置決めされたインタフェースユニットの位置を決定するステップと、
を有する。
【0051】
インタフェースユニットの再位置決めは、例えばユニットを取り替える必要があるときに行われる。例えば、インタフェースユニットの一方又は双方がパッチ又はパッドである場合、これらは、ユーザによって自宅で頻繁に交換される必要がある。これは通常、ユーザがその後に新たなパッチ又はパッドを再取り付けするときの僅かな再位置決めにつながる。
【0052】
更に、更なる実施形態によれば、本方法は、再較正手順の前に、第2の皮膚インタフェースユニットにおける測定された信号特性に基づいて、所定の伝送パラメータを決定及び記憶する初期較正手順を更に有し、2つのユニットは初期の場所の少なくとも1つの既知の組を有し、好ましくは、この手順は、伝送パラメータの複数の組を決定及び記憶することを含み、各組は、決定されることになる位置を有する皮膚インタフェースユニットの異なる特定の位置及び任意選択で向きに対応する。
【0053】
本発明のこれらの及び他の態様が、以下に説明される実施形態より明らとなり、これらの実施形態を参照して説明されることになる。
【0054】
本発明のより良い理解のため、及びそれがどのように実現されるかをより明確に示すため、ここで、単なる例として、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1a】従来技術による、人体の近接場カップリングモデルを概略的に示す図である。
図1b】従来技術による、人体の近接場カップリングモデルを概略的に示す図である。
図2】身体伝送AC信号に基づいてオンボディ位置を決定するための従来技術による技法を概略的に示す図である。
図3】1つ又は複数の実施形態による例示的なシステムをブロック図形式で示す図である。
図4】1つ又は複数の実施形態による例示的なシステムにおいて用いられる例示的な信号送受信機をブロック図形式で示す図である。
図5】1つ又は複数の実施形態による例示的なシステムの構成を示す図である。
図6】実施形態による例示的なシステムを概略的に示す図である。
図7】1つ又は複数の実施形態によるシステムを用いて実施される例示的な較正及び再較正手段のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明を、図面を参照して説明する。
【0057】
詳細な説明及び特定の実施例は、装置、システム、及び方法の例示的な実施形態を示すが、これらは例示のみを目的としたものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない点を理解されたい。本発明の装置、システム、及び方法のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面からより良く理解されるであろう。図面は単なる概略図であり、縮尺通りに描かれていないことを理解されたい。同じ又は類似の部品を示すため、図面を通して同じ参照番号が使用されていることも理解されたい。
【0058】
本発明は、信号の身体内へのカップリング及び身体からの脱カップリングを行うための少なくとも2つの皮膚インタフェースユニットを備えるオンボディセンサシステムを提供し、ユニットのうちの1つは既知の場所に配置される。一方のユニットは、身体に電気信号を印加し、他方のユニットはこれらを離れた場所において検知する。検知された信号を、所定の身体伝送パラメータの組を用いて分析することによって、皮膚インタフェースユニットのうちの1つの位置を決定することができる。これにより、ユニットのうちの1つの正確な配置が可能になり、例えば、このユニットを用いて生理学的パラメータをより正確に監視することが可能になる。身体伝送パラメータは経時的に変化する可能性があるが、インタフェースユニットが適所に置かれると、それらの位置は安定する。このため、システムは、インタフェースユニットの初期位置の少なくとも1つの既知の安定した組を用いて伝送パラメータを再較正する機能も含む。再較正は、既知の位置に基づいてパラメータを再計算するプロセスを含む。次に、これらは、例えば、皮膚インタフェースユニットが再位置決めされるか又は置き換えられる場合に、移動可能な場所を有する皮膚インタフェースユニットのうちの1つの位置の未来の決定のために記憶し及び使用することができる。
【0059】
本発明は、例えば、1つ又は複数の生理学的パラメータを監視するためのボディセンサユニットが、退院後に、自宅で患者によって長期にわたって使用され続けることを可能にすることを目的とする。システムのセンサパッチは、多くの場合、規則的に交換される必要がある。患者は、新たなパッチを位置決めするとき、誤って位置決めする場合がある。システムは、パッチの位置の指標を決定し、任意選択で、これに基づいて患者による配置を誘導する。自宅における期間にわたって、パラメータは変化する可能性がある。このため、再較正機能は、これらが最新に保たれることを可能にする。
【0060】
図3は、1つ又は複数の実施形態による例示的なオンボディ検知システム30をブロック図形式で概略的に示す。
【0061】
システム30は、対象者の皮膚と電気的にインタフェースするための2つの皮膚インタフェースユニット32、34を備える。第1の皮膚インタフェースユニット32は、生成された電気信号を身体内にカップリングするように適合される。第2の皮膚インタフェースユニット34は、カップリングされた前記信号を、対象者の皮膚上の離れた場所で検知するためのものである。図3は、第1及び第2のインタフェースユニットを互いに隣接するものとして示しているが、これは概略にすぎない。使用時に、システムが現場で対象者の身体上に位置決めされた状態では、ユニットは好ましくは身体上で互いに離れて位置する。
【0062】
システムは、皮膚インタフェースユニット32、34に作動的にカップリングされたコントローラ36を更に備える。コントローラは、皮膚インタフェースユニットを使用して信号生成及び検知を制御するように適合される。以下で更に詳細に説明されるように、信号を生成し、受信信号を処理するための回路部は、システムのコンポーネント間で様々な形で分散させることができる。いくつかの例において、この回路部は全てコントローラに含まれる。他の例において、第1の皮膚インタフェースユニットは、電気信号を生成するためのローカル回路を備える。他の例では、信号は、例えばコントローラによって外部で生成される。
【0063】
図3において、コントローラ36は、別個の専用制御ユニットとして示される。しかしながら、上述したように、他の例において、制御機能は、皮膚インタフェースユニット32、34自体のうちの一方又は双方によって行われる。このため、後者の場合、コントローラは分散型コントローラである。このため、いくつかの例において、皮膚インタフェースユニットのうちの一方又は双方がコントローラを備え、すなわち、制御機能はシステムの皮膚インタフェースユニット間で分散される。以下の説明において、コントローラ36への参照は、専用制御ユニット、又は関連制御機能を実行するシステムのインタフェースユニットのうちの1つ若しくは複数を指すものとして理解される。
【0064】
システム30は、生理学的パラメータ監視システムである。特に、皮膚インタフェースユニット32、34のうちの一方又は双方は、1つ又は複数の生理学的信号(例えば、心電図(ECG)又は筋電図(EMG)信号等)を検知するためのものである。この場合、これらの生理学的パラメータの監視が正確となるために、皮膚インタフェースユニットの正確な位置決めが重要である。
【0065】
これを部分的に支援するために、コントローラ36は、1つの制御モードにおいて、第2のユニット34において検知された信号特性と、1つ又は複数の所定の身体伝送パラメータとに基づいて、及び他方のユニットの既知の場所に基づいて、皮膚インタフェースユニット32、34のうちの1つの位置の指標を決定するように動作可能である。身体伝送パラメータは、電気信号、すなわち生成された信号を搬送するための媒体としての身体又は皮膚の特性に関係する。これらは更に又は代替的に、(皮膚又は身体を通じて伝播した後に)検知された信号の特性に関係するか、又はここから導出可能である。
【0066】
1つ又は複数の身体伝送パラメータは、例えば、信号波長、信号伝播速度、位相角差(単一のインタフェースユニットにおける2つの皮膚カップリング電極対間)、信号伝送時間(生成と受信との間)、及び信号減衰(生成と受信との間)を含む。
【0067】
上述したように、身体伝送パラメータは、例えば皮膚上の水分レベルの変化に起因して経時的に変化する可能性がある。これは、パラメータが更新されない限り、位置決定が不正確となることを意味する。これを克服するために、コントローラ36は、更なる制御モードにおいて、インタフェースユニット32、34の双方の既知の初期位置に基づいて、前記身体伝送パラメータを再決定するための再較正手順を実行するように動作可能である。
【0068】
この手順は、要約すると、以下のステップを含む。第1の皮膚インタフェースユニット32は、1つ又は複数の基準信号を身体又は皮膚に印加すなわちカップリングするように制御される。ユニットがこれらを生成するか、又はこれらは外部で生成され、身体に印加するためにユニットに出力される。
【0069】
生成された基準信号は、第2の皮膚インタフェースユニット34において検知され、身体伝送パラメータのうちの少なくとも1つが、検知された信号特性と、ユニット32、34の前記既知の初期位置とに基づいて再決定される。
【0070】
次に、最終的に、少なくとも1つの再決定されたパラメータと対応する所定のパラメータとの任意の差に基づいて、例えばローカルメモリ又はリモートデータストアにおいて、所定の身体伝送パラメータが補正又は更新される。差がない場合、補正が行われる必要がない。
【0071】
皮膚インタフェースユニット32、34のうちの少なくとも1つ(特に、コントローラによって決定可能な位置を有するもの)の既知の初期位置は、コントローラによって以前に決定され、例えばメモリに記憶された位置である。この以前に決定された位置は、特定の閾値時間過去に、例えば、少なくとも1時間過去、又はより好ましくは少なくとも1日過去にコントローラによって決定された位置である。
【0072】
代替的に、既知の初期位置は、例えばメモリに記憶された、予め設定された位置である。例えば、臨床医は、最初に、自身の専門知識を用いてこの予め設定された位置に皮膚インタフェースユニットを配置する。再構成手順の間、ユニットは、この事前設定された位置にあると仮定される。
【0073】
その後、ユニットが再位置決めされると、ユーザは、位置の現在の指標のリアルタイム判定に基づいて、及び任意選択で、これを予め設定された位置指標又は予め設定された位置指標のセットと比較することに基づいて、この同じ予め設定された位置、又は異なる位置にユニットを再配置するように誘導される。
【0074】
皮膚インタフェースユニット32、34のうちの一方は、安定した既知の位置を有し、コントローラは、他方の位置を決定するように動作可能である。好ましくは、第1のインタフェースユニット32(信号送信機ユニット)は既知の場所を有し、コントローラは、1つの制御モードにおいて、第2のインタフェースユニット34の位置を決定するように動作可能である。
【0075】
好ましくは、再較正手順は、第1のインタフェースユニットのこの既知の場所と、第2のインタフェースユニットの既知の初期位置とに基づく。
【0076】
皮膚インタフェースユニットは様々な形態をとることができる。
【0077】
実施形態の好ましい組において、皮膚インタフェースユニットの一方又は双方は、身体装着型ユニット、例えばセンサパッチ又はウェアラブルデバイスの形態をとる。
【0078】
第1のインタフェースユニット32は、好ましくは、対象者の皮膚の所定の領域に対し装着するためのオンボディユニット、又は対象者の皮膚の所定の領域に対し配置するためのオフボディユニットである。
【0079】
例えば、第1のインタフェースユニットは、身体の特定の部分に装着するように構成されたウェアラブルユニットである。有利な例において、第1のインタフェースユニットは手首装着型デバイスの形態をとる。これは、この場合の第1のインタフェースユニットの位置が安定し、確実に既知であるという利点を有する。しかしながら、この効果は、身体の一部分にしっかりと固定することができる他の身体装着型デバイス、例えば、例として胸部ストラップ、足首バンド、又はイヤーフックによっても達成され得る。
【0080】
第1のインタフェースユニットは、スマートウォッチデバイスの形態をとる。スマートウォッチデバイスは、例によるコントローラ36を備える。
【0081】
好ましくは、(検知のための)第2の皮膚インタフェースユニット34は、対象者の皮膚に対し装着するためのセンサパッチ又はパッドの形態をとる。センサパッチは、皮膚又は身体からの電気信号を検知するための可撓性電極を含む。パッチは、パッチを皮膚にカップリングするための接着剤層を有する。
【0082】
第2のインタフェースユニット34は、システム30の生理学的パラメータ監視関数の一部として1つ又は複数の生理学的パラメータを監視する際にも用いられる。生理学的パラメータは、例えばバイタルサインである。
【0083】
信号生成及び処理のハンドリングは、システムのコンポーネント間で様々な形で分散させることができる。例の1つの組において、信号生成及び受信信号の処理は、中央コントローラ36によって集中して行われ、ここで、第1及び第2の皮膚インタフェースユニットは、単に、生成及び受信された信号を、身体内にカップリングし、及び身体から脱カップリングして戻すためのものである。これらは各々が、例えばこれを容易にするために単に1つ又は複数の電極を含む。
【0084】
代替的に、信号生成及び受信信号の処理は、皮膚インタフェースユニット間で分散される。例えば、第1の皮膚インタフェースユニット32は、身体に印加するための信号を生成するための回路部を備え、第2の皮膚インタフェースユニットは、検知された信号を処理するための回路部を備える。
【0085】
更なる例において、第1及び第2の皮膚インタフェースユニットの双方が、選択的に、信号発生器(すなわち、送信機)として、又は信号センサ(すなわち、受信機)として構成可能である。各々が、身体内にカップリングするための信号の生成、及び身体から脱カップリングして戻る信号の処理の双方のための回路部を備える。各皮膚インタフェースユニットは、2つのモード又は機能間で切り替え可能であり、それによって、システムの柔軟性が増大する。そのような皮膚インタフェースユニットは、多機能インタフェースユニットと呼ばれる。
【0086】
図4は、信号生成及び受信信号の処理の双方の実施を可能にする、そのような多機能皮膚インタフェースユニットが含む回路部をブロック図形式で示す。
【0087】
回路部は合わせて、所与の皮膚インタフェースユニットを介して身体を通じた信号の生成及び伝送を制御するための、また、第2の皮膚インタフェースユニットを介して離れた場所で信号を受信するための送受信機ユニット42を形成する。この送受信機ユニットは、RFユニットと呼ばれる。
【0088】
送受信機ユニット42は、この例において、信号生成及び伝送を制御するためのコンポーネントの1つの組(送信機部分44)と、信号の受信を制御するためのコンポーネントの第2の組(受信機部分46)とを含む。双方の部分は、送信機部分44及び受信機部分46を制御するマイクロコントローラユニット(MCU)に作動的に接続される。送信機部分及び受信機部分は共に、電極A1及びA2とラベル付けされた皮膚接触電極51a、51bの対とインタフェースするスイッチ50と接続される。スイッチは、所与のインタフェースユニット32、34を、信号送信モード(電極を送信機部分44に接続する)と、信号受信モード(電極を受信機部分46に接続する)との間で切り替えるためのものである。
【0089】
信号送信部分44は、電極51によって皮膚内にカップリングするための電気信号を生成するように適合された信号発生器56を備える。信号発生器は、有利には、無線周波数の交流信号を生成する。好ましくは、信号は、周波数範囲10MHz~150MHzで生成される。なぜなら、この周波数範囲において、人体は信号伝送のための導波路として挙動するためである。
【0090】
送信機部分44は、生成された生信号を受信し、これらを増幅(すなわち、昇圧)し、スイッチ及び電極51を介して信号の身体への印加を駆動するように適合された昇圧器及びドライバ54を更に備える。
【0091】
信号受信機部分46は、スイッチ50を介して、電極51によって検知された生信号をアナログ形式で受信するためのアナログフロントエンド要素60を含む。フロントエンド要素は、受信信号をアナログ/デジタル変換器62に通信し、アナログ/デジタル変換器62は、信号を処理し、これらをデジタル形式でマイクロコントローラユニット48に出力する。
【0092】
他の例において、皮膚インタフェースユニット32、34の各々は、信号生成又は信号検知のうちの1つのみを行うように構成される。この例において、各々が、図4に示す送信機部分44又は受信機部分46のうちの1つのみを備え、スイッチは省かれる。例えば、第1の皮膚インタフェースユニット32は送信機部分44を備え、第2の皮膚インタフェースユニット46は受信機部分46を備える。
【0093】
更なる例において、図4に示す送受信機ユニット42の送信機部分44及び受信機部分46の双方が、中央コントローラ36に含まれ、コントローラ36は、皮膚インタフェースユニットに対し及び皮膚インタフェースユニットから信号を電気的に通信するように構成される。
【0094】
図4に示される例示された送受信機ユニット42は、本発明の実施形態に従って信号を生成及び処理するのに用いられる回路部の1つの例を表すにすぎない。類似の機能を達成することが可能な他の適切な回路部の実施態様が当業者には明らかであろう。
【0095】
本発明の概念を例示するために、ここで、1つの有利な実施形態を、単なる例として詳細に説明する。
【0096】
この実施形態によるシステム30のレイアウトは、図5に概略的に示される。システムは、現場で対象者70の身体上にコンポーネントが装着された状態で示される。システムは、スマートウォッチデバイスの形態の第1の皮膚インタフェースユニット32を備える。第1の皮膚インタフェースユニットは、生成された信号を身体内にカップリングするためのものである。第2の皮膚インタフェースユニット34は、センサパッチ34の形態で設けられる。センサパッチは、スマートウォッチデバイスによって身体内にカップリングされた信号を検知するためのものである。
【0097】
スマートウォッチが用いられているが、この実施形態の他の例に従って、様々なウェアラブルデバイスが用いられ得る。ここでも代替的に、スマート体重計等のオフボディデバイスが用いられ得る。これは、身体上のデバイスの場所が確実に既知であるという利点をもたらす。なぜなら、これは、対象者の皮膚の特定の場所(すなわち、この場合は足)に適用するように構成されているためである。
【0098】
ウェアラブルデバイス32及びセンサパッチ34は各々、皮膚と直接相互作用するための少なくとも1つの電極対を備える。好ましくは、これらの電極は、(身体に信号を印加するための)送信機電極又は(印加された信号を検知するための)受信機電極となるように、ユニットの各々において構成可能である。このようにして、ウェアラブルデバイス及びパッチは、それぞれ送信機又は受信機として選択的に構成することができる。
【0099】
この場合、ウェアラブルデバイス32及びセンサパッチ34の双方が、各々、図4に示し以下で説明するような送受信機回路42を備える。上記で説明したように、これは、身体チャネル信号(BCS)送信機44及び身体チャネル信号(BCS)受信機46の双方を含む。
【0100】
システムは、専用コントローラ(図示せず)を更に備える。代替的に、制御機能は、皮膚インタフェースユニットの一方又は双方によって実行される。例えば、コントローラは、ウェアラブルデバイス32に含まれる。コントローラへの参照は、いずれかのオプションを指すものとして理解される。
【0101】
パッチ34とウェアラブルデバイス32との間の通信は、有線又は無線の任意の適切な通信媒体又はチャネルを介して容易にされる。快適性及び柔軟性の理由から、無線通信が好ましい。この場合、ウェアラブルデバイス32及びパッチ34の双方が、これを容易にする無線通信モジュールを備える。これらは、例えば、Bluetooth、Wi-Fi、超広帯域(UWB)又は身体カップリング通信等の標準的な通信技術を含む。
【0102】
コントローラは、1つの制御モードにおいて、パッチ34の位置及び向きを決定するように構成される。身体上のパッチの正確な位置及び向きを決定するために、送信機(パッチ又はウェアラブルデバイス)は、多数の送信電極から信号を送信し、この信号が次に、受信機(ウェアラブルデバイス又はパッチ)上の多数の受信電極によって受信される。
【0103】
受信信号の測定された信号特性に基づいて、受信信号の複数の伝送パラメータが検知又は決定される。これらは、例えば、(送信機及び受信機間の)信号伝送時間、(送信機及び受信機間の)信号減衰、及び(第2のインタフェースユニットに含まれる少なくとも2つの電極対間の)位相角差を含む。複数の所定の身体伝送パラメータがコントローラのメモリに記憶されるか、又はリモートで記憶される。
【0104】
好ましくは、これらの身体伝送パラメータは、センサパッチ34において受信される信号について導出されるものと同じだけ多岐にわたる所定の信号伝送パラメータであり、各々が、ウェアラブルデバイスに対するパッチの様々な既知の位置に対応する信号に関する。特に、好ましくは、パッチの様々な可能な正しい位置及び向きに対応する伝送パラメータの複数の組が記憶される。このようにして、測定されたパラメータをこれらの所定のパラメータと比較することによって、パッチの現在の位置が、所定のパラメータが対応する様々な正しい位置の任意のものに一致するか否かを判断することができる。一致しない場合、一致がないことを示すか、又はより好ましくは、正しい位置決めに近づくためにどのようにパッチを動かすべきかに関してユーザに命令を提供するための出力情報が生成され、ユーザに通信される。これは、(例えば、ウェアラブルデバイス32上の)ディスプレイ又はスピーカ等の感覚出力デバイス、又は触覚出力デバイス(例えば、ウェアラブルデバイスの振動)を介して行われる。一致がある場合、これを表す出力情報が生成され、ユーザに通信される。
【0105】
代替的に、例えば、信号搬送媒体としての身体を通じた信号伝送の全体特性に対応する一般化された身体伝送パラメータが記憶される。これらは例えば、信号速度及び信号波長を含む。これらの汎用パラメータを用いて、特定の信号特性(例えば、伝送時間、減衰、位相角差)から、送信機32と受信機34との間の距離又は分離を決定することができる。
【0106】
上述したように、いくつかの場合、身体伝送パラメータは、測定された信号特性から導出可能な信号伝送パラメータであり、所定のパラメータの異なる組は、2つのユニットの異なる独自の相対的位置決めに対応する。この場合、伝送パラメータは、所与の皮膚インタフェースユニットの2つの電極対間の位相角差、信号の送信及び受信間の信号伝送時間、並びに信号の送信及び受信間の信号減衰のうちの1つ又は複数を含む。
【0107】
伝送時間は、信号飛行時間、すなわち、初期送信及び受信間の伝播持続時間を意味する。信号減衰は、信号経路損失、すなわち、初期送信及び受信間の信号強度の変化を意味する。更に又は代替的に他の信号特性が導出されてもよい。
【0108】
ここで、測定可能な信号特性に基づいてこれらのパラメータを導出する手段について説明する。説明は、完全な一般性を有して適用されるため、最も明確にするために、(信号を送信するための)第1の皮膚インタフェースユニット32は、単に、送信ユニット32と呼ばれ、(信号を受信するための)第2の皮膚インタフェースユニット34は、受信ユニット34と呼ばれる。
【0109】
検知される信号の位相角の導出は、標準的な手順であり、当業者であれば、この機能を実施するための手段を認識するであろう。
【0110】
信号飛行時間(伝送時間)の導出は、単に、信号の送信時点及び信号の受信時点を記録し、差を計算することによって達成することができる。これを行うために、送信ユニット32及び受信ユニット34は各々、内部クロックを備え、クロックは同期される。代替的に、中央コントローラ36が、信号の送信時点、及び受信ユニットにおける同じ信号の受信時点を追跡する。直接連続した送信及び受信イベントは、同じ信号に関連するとみなされる。
【0111】
経路損失(信号減衰)の導出は、単に、送信時の信号強度を記録し(又は既知の強度で送信信号を生成し)、受信時に同じ信号の強度を測定し、次に変化を計算することによって達成される。信号の強度は、例えば、例としてボルト単位の信号振幅、例えばピーク間振幅を指す。受信ユニット34及び送信ユニット32は各々、信号強度、例えば信号振幅の測定を可能にする信号処理手段を備える。この場合、ユニットの各々はクロックを備え、クロックは同期され、所与の信号の送信及び受信が互いに一致することが可能になる。特に、直接連続した送信及び受信イベントは、同じ信号に関連するとみなされる。しかしながら、代替的に、中央コントローラは、受信ユニットにおいて受信された信号の信号強度、例えば振幅を測定するための信号処理手段を備え、送信及び受信間の信号減衰を計算するように構成される。
【0112】
有利な例において、受信ユニット34(第2の皮膚インタフェースユニット)は、電極の2つ以上の対を含む。この場合、有利には、ユニット34の2つの電極対間の所与の伝送パラメータの値の差に対応する1つ又は複数の差分伝送パラメータが導出される。
【0113】
例えば、差分伝送パラメータは、位相角差、信号伝送時間(飛行時間)差及び信号減衰(経路損失)差のうちの1つ又は複数である。各々の場合に、差は、受信ユニット34の2つの電極対の各々において測定された値間のものである。受信ユニットの差分伝送パラメータの値は、例えばコントローラ36によって決定されるか、又は受信ユニット34によってローカルで決定される。任意選択で、差分値は、受信ユニットが含む電極対(3つ以上が存在する)のありとあらゆる組み合わせに関して、1つ又は複数の伝送パラメータについて導出される。
【0114】
差分伝送パラメータは、位置決めの特に厳密な特性評価、特に向きを提供する。なぜなら、2つの空間的に離れた電極対における測定値の差は、向きの状態に依拠して一貫して変動するためである。
【0115】
例示のために、図6は、電極の4つの対52、52、52、52を含む例示的な受信ユニット34を示しているが、この概念は、4つ未満の対、例えば2つの対又は3つの対の場合にも適用することができる。受信ユニットは、手首装着型デバイスの形態で送信ユニットと共に現場で身体に位置決めされて示されている。受信ユニットの少なくとも2つの電極対において受信される信号間の全ての可能な位相角差は、以下のように説明することができる。
【数1】
これは、それぞれ電極対52及び52において受信される信号間の位相角差
【数2】
を示す。したがって、電極対52と自身との間の全ての位相角差
【数3】
はゼロであり、ここで、i=1、2、3、4である。それぞれ電極対52及び52間の位相角差
【数4】
は同じであるが、電極対52及び52間の位相角差
【数5】
と逆の符号であり、すなわち、
【数6】
であり、ここで、i=1、2、3、4及びj=1、2、3、4及びi≠jである。
【0116】
例えば、
【数7】
は、電極対52及び52において受信される信号間の位相角差を示し、以下同様である。このため、受信ユニット34が図6に示すように向けられる実施形態において、それぞれ電極対52及び52において受信される信号間の位相角差
【数8】
は負となり、それぞれ電極対52及び52において受信される信号間の位相角差
【数9】
は正となり、電極対52が電極対52よりも送信ユニット32に近いことを示す。
【0117】
電極対52及び52において受信される信号間の位相角差
【数10】
と、電極対52及び52において受信される信号間の位相角差
【数11】
は、電極対102及び102と送信ユニット32との間の等しい(又はほぼ等しい)差に起因してゼロ(又はほぼゼロ)となる。電極対52及び52において受信される信号間の位相角差
【数12】
と、電極対52及び52において受信される信号間の位相角差
【数13】
とは、小さいが負であり、電極対52及び52において受信される信号間の位相角差
【数14】
と、電極対52及び52において受信される信号間の位相角差
【数15】
とは、小さいが正である。このため、これらの位相角差は、送信ユニット32に対する受信ユニット34の向きを厳密に特性評価する。
【0118】
論考されたように、更に又は代替的に導出される別の可能な差分伝送パラメータは、受信ユニット34の少なくとも2つの電極対52、52、52、52のうちの少なくとも1つの他の電極対において受信された信号の飛行時間(ToF)に対する、受信ユニット34の少なくとも2つの電極対52、52、52、52のうちの1つの電極対において受信された信号の飛行時間である。信号の相対飛行時間は、送信ユニット32に対する受信ユニットの向きも示す。より詳細には、電極対52、52、52、52において受信される信号の飛行時間が長いほど、信号対が送信ユニットから離れる。同様に、電極対において受信される信号の飛行時間が短いほど、電極対が送信ユニットに近くなる。
【0119】
例えば、受信ユニット34が図6に示されるように向けられた例において、送信ユニット32から電極対52への飛行時間tは、送信ユニット32から電極対52、52及び52それぞれへの飛行時間t、t及びtと比較して最も低い。送信ユニット32から電極対52への飛行時間tは、最高値を有するのに対し、送信ユニット32から電極対52及び52それぞれへの飛行時間t及びtは等しく(又はほぼ等しく)、送信ユニット32から電極対52への飛行時間tよりも短いが、送信ユニット32から電極対52への飛行時間tよりも長い。
【0120】
このため、受信ユニット34が図6に示すように向けられる場合、信号の相対飛行時間は、以下のように表すことができる。
≦t,t≦t
【0121】
これは、特に、送信ユニット32に対する受信ユニット34の向きに関する情報を提供することができる。特性が飛行時間(ToF)であるいくつかの実施形態において、受信ユニット34は、送信ユニット32からの信号の伝送の前に送信ユニット32と時間同期される(例えば、上述した方式)。これらの実施形態において、受信ユニット34は、受信ユニット34の内部同期クロックを用いて基準信号を生成する。基準信号は、送信ユニット32から送信された信号に対し基準を提供することができる。代替的に、中央コントローラ36は、送信及び受信の時間を追跡する。
【0122】
論考したように、更に又は代替的に導出される伝送パラメータは、少なくとも2つの電極対52、52、52、52のうちの少なくとも1つの他の電極対において受信された信号の振幅に対する、少なくとも2つの電極対52、52、52、52のうちの1つの電極対において受信された信号の振幅である。これらの例において、信号の相対振幅は、特に、送信ユニット32に対する受信ユニット34の向きを示す。
【0123】
身体のインピーダンスに起因して、送信ユニット32から送信された信号は、身体を通って進むにつれ減衰を受ける。このため、送信ユニット32から送信される信号の振幅は、身体を通って進むにつれ減衰する。信号の減衰が発生する。信号が身体を通って長く進むほど、信号はより減衰する(又は信号の振幅が更に減少する)。このため、受信ユニット34の電極対52、52、52、52において受信される信号の振幅が低いほど、電極対52、52、52、52は送信ユニット32から離れている。同様に、受信ユニット34における電極対において受信される信号の振幅が高いほど、電極対は送信ユニット32に近づく。
【0124】
例えば、受信ユニット34が図6に示すように向けられている例において、電極対52において受信される信号の振幅は、他の電極対52、52及び52において受信される信号の振幅と比較して最も低い。同様に、受信機対52において受信される信号の振幅は、他の電極対52、52及び52において受信される信号の振幅と比較して最も高い。受信機対52及び52において受信される信号の振幅は等しく(又はほぼ等しく)、電極対52において受信される信号の振幅未満であるが、電極対は52において受信される信号の振幅よりも大きい。
【0125】
いくつかの実施形態では、信号減衰Gは以下のように導出される。
G=20log10(Vreceive/Vsend
ここで、Vreceiveは、受信ユニット34の少なくとも2つの電極対52、52、52、52において受信される信号の振幅であり、Vsendは、送信ユニット32から送信される信号の振幅である。
【0126】
受信ユニット34の電極対52、52、52、52において受信される信号の信号減衰が大きいほど、電極対は送信ユニット32から離れている。同様に、受信ユニット34の電極対において受信される信号の減衰が少ないほど、電極対52、52、52、52が送信ユニット32に近くなる。このため、受信ユニット34が図6に示すように向けられている実施形態において、電極対52において受信される信号の減衰は、電極対52において受信される信号の減衰よりも大きく、電極対52において受信される信号の減衰は、電極対52において受信される信号の減衰未満である。
【0127】
上記の説明は、導出される伝送パラメータの1組の例を表すにすぎず、本発明を限定するものではない。有利には、双方の差分伝送パラメータ(受信ユニットにおける2つの電極対間の伝送パラメータ値の差)が、同じ伝送パラメータの絶対値に加えて計算される。後者は特性評価に、このため受信ユニット(第2の皮膚インタフェースユニット)の位置の導出に特に有用である。前者は、向きの特性評価に特に有用である。
【0128】
本発明の実施形態によるシステム30は、特に、訓練を受けた看護師又は他の病院スタッフによって病院又は集中治療室において最初に適用された後に、患者が自宅でパッチ34を正確に再適用する問題に対処することを目的としている。
【0129】
これを容易にするために、好ましい実施形態によるシステム30は、訓練を受けた臨床医によってシステムを用いて行われる初期配置及び較正手順、並びに患者によって自宅にいるときにシステムを用いて実行される後続の再較正及び再位置決め手順を含むマルチステージ較正手順を容易にするように適合される。
【0130】
ここで、このマルチステージ手順の例を説明する。手順のステップは、図7にブロック図の形式で示される。
【0131】
第1に、皮膚インタフェースユニットの各々の少なくとも1つの既知の初期の場所に基づいて、上記で論考した所定の伝送パラメータを決定及び記憶する初期較正手順82が実行される。より詳細には、以下で説明されるように、好ましくは、初期較正プロセスは、伝送パラメータの複数の組を決定及び記憶することを含み、各組は、皮膚インタフェースユニットのうちの他方の既知の静的位置に対する、皮膚インタフェースユニットのうちの一方の異なる特定の位置及び任意選択で向きに対応する。
【0132】
パッチ較正手順82中、看護師又は他の治療スタッフは、システムのコントローラに、較正が行われることを示す(88)。これは、例えば、ウェアラブルデバイス又は他の外部コントローラにおいて、パッチを構成するための特定のアプリケーションを実行又は起動することである。これは、そうでなければ、コントローラ又はウェアラブルデバイスを特定の制御モードに切り替えることである。
【0133】
臨床医は、次に、パッチを手に取り、これを患者の身体上の様々な異なる取り得る正しい位置及び向きに配置する(90)。正しいとは、患者が自宅にいるときにパッチを用いて監視されることになる特定の生理学的パラメータの正確な検知及び監視を可能にする位置を意味する。
【0134】
これらの正しいパッチ位置及び向きの各々について、コントローラは、ウェアラブルデバイス及びパッチを制御して、それぞれ信号を生成及び検知する。パッチにおいて検知された信号特性に基づいて、上述した手順に従って、所与の位置について伝送の対象パラメータ(PoI)のリストが決定される(92)。これらの決定されたパラメータは、以下のように正しい位置ごとに表される。
PoIi,orig_j={PoI1,orig_j,PoI2,orig_j,PoI3,orig_j,PoI4,orig_j,PoI5,orig_j,PoI6,orig_j,.......PoIi,orig_j},i∈{1,2,....i},j∈{1,2,....j}
【0135】
下付き文字orig_jは、看護師/治療スタッフが病院/治療センターで患者の身体にパッチを適用するとき、POIパラメータの計算されたリストが、身体上のパッチの正しい位置及び向きのうちのj番目のものに対応することを示す。インデックスiは異なる位置ごとの多数のパラメータに対応する。
【0136】
介護者は、例えば、パッチが(例えばユーザインタフェースを用いて)各新たな位置に移動されたときコントローラに指標を提供し、それによって、次にコントローラは、伝送パラメータの対応する組を計算する。
【0137】
正しい位置の各々の伝送パラメータが計算されると、これらのパラメータはシステムによって記憶される。これは、例えば、コントローラ及び/又はウェアラブルデバイス及び/又はパッチに含まれるシステムのメモリにローカルに記憶されるか、例えば、クラウド又は他のリモートデータストアにリモートで記憶される。
【0138】
初期較正手順82後、看護師又は他の治療スタッフが、患者の身体における可能な正しい位置及び向きのうちの1つにパッチ94を取り付ける。パッチが取り付けられる特定の位置及び向きが、ローカル又はリモートで記録される。
【0139】
次に、患者は、病院又は治療センターから退院する。自宅では、パッチは通常、2~3日ごとに交換する必要がある。これは、パッチを除去し、新たなパッチを再度取り付けることを必要とする。患者が新たなパッチを再適用するとき、システムは、現在の位置の決定に基づいて、その配置に関するガイダンスを提供する。この決定は(この例において)、信号伝送パラメータを導出すること、及びこれらを様々な正しい位置について記憶された伝送パラメータと比較することを必要とする。このプロセスは、記憶されたパラメータが依然として正確である場合にのみ正確に機能する。しかしながら、これらのパラメータは皮膚の水分レベルに依拠するため、同じ所与の位置について経時的に変化する。このため、再較正が必要とされる。
【0140】
このため、現在の位置及び向きからパッチを除去する前に、再較正手順84がトリガーされる。これは、例えば、ウェアラブルデバイス又は他のコントローラ上で実行されるアプリケーションにおいてパッチ再較正ルーチンを始動すること(96)によって、又はそうでない場合、システムコントローラに、再構成が実行されることを示すことによって行われる。
【0141】
再較正手順がトリガーされると、システム30は、パッチが依然として適用される単一の位置についてPoI伝送パラメータ値を再決定する。
【0142】
システムは、次に、再決定されたパラメータを、看護師が最初にシステムを較正した同じ所与の位置について計算されたPoIorigパラメータ値と比較し(100)、それらが異なるか否かを判断する。新たなパラメータが対応する位置のうちの特定の1つが既知である。なぜなら、これは、看護師が病院において最初にパッチを取り付けたときに記憶されているためである。
【0143】
皮膚特性の変化に起因して、パッチ再適用中の身体チャネルは、多くの場合、パッチ適用中のチャネルと異なる。結果として、PoInew値の新たな組は、この所与の位置について記憶されたPoIorig値と異なる場合がある。
【0144】
差が存在すると判断される場合、比較100に基づいて補正係数が計算される(102)。補正係数は、κ=f(PoIorig,PoInew)によって表される。
【0145】
補正係数を計算するための様々なオプションが存在する。これは例えば、PoIorig及びPoInewの単純な比であるか、又はより複雑な関数である。
【0146】
次に、この補正係数が初期較正手順中に計算された可能なパッチ位置及び向きの全てについて、記憶された所定のPoIj,orig値の組全体に適用される(104)。次に、これにより、補正されたパラメータ値の組が得られ、次にこれらは、パッチ、ウェアラブルデバイス、若しくは他のコントローラにおいてローカルに記憶されるか(106)、又は例えばクラウド若しくは他のリモートデータストアにおいてリモートで記憶される。可能な正確な位置の各々について補正されたパラメータ値が、元の値の代わりに記憶され、それによって値が更新される。
【0147】
システム30は、患者又はユーザに、再較正手順84が完了したことを示す感覚出力を提供する。
【0148】
患者は次に、現在のパッチを除去し、交換手順86において、これを新たなパッチと交換する。新たな伝送パラメータがどこに記憶されているかに依拠して、これは、新たなパラメータを新たなパッチに転送することを必要とする。患者が新たなパッチを取り付けるとき、システムは、補正された身体伝送パラメータを用いて支援を提供する(108)。これは、パッチの位置の指標を決定することに基づき、新たに計算されたパラメータを用いて行われる。
【0149】
特に、この例によれば、信号伝送パラメータは、現在の位置について導出され、これらが記憶されたパラメータと比較され、現在の位置についてのパラメータが、正しい位置について記憶されたパラメータのうちの任意のものに一致するか否かを調べる。一致しない場合、システムは、パッチが正しい位置から離れた位置に配置されていることを導出し、これを、例えば感覚出力を用いてユーザに示す。一致が存在する場合、システムは、パッチが正しい位置にあることを導出する。このようにして、パッチを正しい位置及び向きのうちの1つに配置することを支援するためのガイダンスを提供することができる。
【0150】
パッチが正しい位置のうちの1つに配置されると、配置されている位置のうちの特定の1つが(伝送パラメータとの比較により)決定され、記憶される。
【0151】
新たに計算されたパラメータ値PoInewを元の値PoIorigと比較したときに(100)、差がない場合、元の値が保持され、元のパラメータ値に基づいて位置決めガイダンスを提供しながら、パッチが除去され、交換される(110)。
【0152】
上記の手順は、特にパッチ及びウェアラブルデバイスを参照して説明されたが、同じ手順が、任意の第1及び第2の皮膚インタフェースユニットを含むシステム30について実施される。
【0153】
上記で論考したように、実施形態は、専用コントローラ36を利用する。コントローラは、必要とされる様々な機能を実行するために、ソフトウェア及び/又はハードウェアを用いて、多数の態様で実現することができる。プロセッサは、必要な機能を実行するためにソフトウェア(例えば、マイクロコード)を使用してプログラムされる1つ又は複数のマイクロプロセッサを採用する処理システムの一例である。しかしながら、コントローラは、プロセッサを採用するか否かにかかわらず実現されてもよく、また、いくつかの機能を実行するための専用ハードウェアと、他の機能を実行するためのプロセッサ(例えば、1つ又は複数のプログラムされたマイクロプロセッサ及び関連する回路)との組み合わせとして実現されてもよい。
【0154】
本開示の様々な実施形態において採用されるコントローラコンポーネントの例は、限定ではないが、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含む。
【0155】
様々な実施態様において、プロセッサ又はコントローラは、RAM、PROM、EPROM及びEEPROM(登録商標)等の揮発性及び不揮発性コンピュータメモリ等の1つ又は複数の記憶媒体に関連付けられていてもよい。記憶媒体は、1つ又は複数のプロセッサ及び/又はコントローラで実行されるとき、必要とされる機能を実行する1つ又は複数のプログラムで符号化され得る。様々な記憶媒体は、プロセッサ若しくは処理システム内に固定されていてもよく、又は、そこに記憶された1つ若しくは複数のプログラムをプロセッサ若しくはコントローラにロードすることができるように、搬送可能であってもよい。
【0156】
開示された実施形態に対する変形は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の研究から、特許請求の範囲に記載された発明を実施する当業者により理解及び達成され得る。特許請求の範囲において、「有する、備える、含む」という語は他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形は複数を排除するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットは、特許請求の範囲に記載された複数の項目の機能を果たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されるという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又はその一部として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体等の適切な媒体に保存/配布されてもよいが、例えばインターネット又は他の有線/無線通信システムを介してといった他の形態で配布されてもよい。特許請求の範囲における参照符号は、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1(a)】
図1(b)】
図2
図3
図4
図5
図6
図7