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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】車輌用灯具及び車輌用灯具のカバー
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/29 20180101AFI20240202BHJP
   F21S 41/20 20180101ALI20240202BHJP
   F21S 45/10 20180101ALI20240202BHJP
   F21V 17/00 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
F21S41/29
F21S41/20
F21S45/10
F21V17/00 150
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021528143
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(86)【国際出願番号】 JP2020022866
(87)【国際公開番号】W WO2020255827
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2019115321
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】西崎 昌彦
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-123547(JP,A)
【文献】特開2001-297608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/29
F21S 41/20
F21S 45/10
F21V 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有し溶着面が形成されたランプハウジングと前記内部空間を覆うカバーとを備え前記カバーが前記ランプハウジングに熱板溶着によって接合される車輌用灯具であって、
前記カバーには外面が車輌の外方を向く意匠面部と前記意匠面部から突出され前記溶着面に溶着される溶着脚部と前記意匠面部における前記溶着脚部より外側に位置された遮蔽部とが設けられ、
前記溶着脚部には、前記意匠面部に連続する連続部と、前記連続部に対して前記遮蔽部側に屈曲され先端部が前記溶着面に溶着される屈曲部とが設けられ
前記連続部の前記意匠面部からの突出方向は熱板溶着において前記カバーが前記ランプハウジングに圧着されるときの圧着方向に対して30度より大きくされた
車輌用灯具。
【請求項2】
前記連続部と前記屈曲部の境界部分が屈曲端部として形成され、
前記屈曲部における前記先端部と前記屈曲端部を結ぶ方向が結び方向とされ、
前記結び方向が前記圧着方向に一致された
請求項1に記載の車輌用灯具。
【請求項3】
前記意匠面部の外周部が前記溶着脚部より外側に位置された
請求項1又は請求項2に記載の車輌用灯具。
【請求項4】
内部空間を有し溶着面が形成されたランプハウジングに熱板溶着によって接合される車輌用灯具のカバーであって、
外面が車輌の外方を向く意匠面部と前記意匠面部から突出され前記溶着面に溶着される溶着脚部と前記意匠面部における前記溶着脚部より外側に位置された遮蔽部とが設けられ、
前記溶着脚部には、前記意匠面部に連続する連続部と、前記連続部に対して前記遮蔽部側に屈曲され先端部が前記溶着面に溶着される屈曲部とが設けられ
前記連続部の前記意匠面部からの突出方向が熱板溶着において前記ランプハウジングに圧着されるときの圧着方向に対して30度より大きくされた
車輌用灯具のカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーがランプハウジングに熱板溶着によって接合される車輌用灯具及び車輌用灯具のカバーについての技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用灯具は、一般に、開口を有するランプハウジングと開口を閉塞する状態でランプハウジングに接合されるカバーとを有し、ランプハウジングとカバーによって構成された灯具外筐の内部にランプユニット等の所要の各部が配置されている。
【0003】
このような車輌用灯具においては、ランプハウジングにカバーを接合する方法としてホットメルトを用いた接着による方法があるが、ランプハウジングとホットメルトの分離が困難であり、近年、資源のリサイクルの観点から溶着によりカバーがランプハウジングに接合されることも多くなっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
溶着による方法には熱板溶着による方法があり、熱板溶着による方法は高い溶着強度が確保され接着剤等の消耗材が必要なく対象となる樹脂の選択の範囲が広く三次元形状の製品の接合に適する等の利点を有しており、カバーのランプハウジングに対する接合方法として普及している。
【0005】
熱板溶着によりカバーをランプハウジングに接合する場合には、ランプハウジングに溶着面が形成されカバーには意匠面部における外周側の部分から突出された溶着脚部が設けられることにより行われる。意匠面部は外面が車輌の外方を向く部分であり、溶着脚部は溶着面に熱板溶着によって接合される部分であり、溶着脚部の先端部が溶融されることにより溶着面に接合される。
【0006】
熱板溶着によるカバーのランプハウジングに対する接合時には、ランプハウジングとカバーがそれぞれ第1の治具と第2の治具によって保持され溶着脚部と接合面が熱板によって加熱されて溶融可能な状態にされており、第2の治具が第1の治具に近付く方向へ移動されることによりカバーがランプハウジングに圧着方向において押圧され、溶着面に押し付けられた溶着脚部の先端部が溶融される。従って、圧着方向は第2の治具の第1の治具に対する移動方向である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-750232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、車輌用灯具のカバーは、特許文献1にも示されるように、意匠面部が車体の形状等に応じて湾曲されることが多く、溶着脚部は意匠面部における外周側の部分から突出されるため、溶着脚部の意匠面部からの突出方向が熱板溶着による接合時における圧着方向に一致しない。
【0009】
従って、溶着脚部がランプハウジングの溶着面に押し付けられるときの両者の接する方向と熱板溶着による接合時における圧着方向とが異なる方向になってしまい、カバーのランプハウジングに対する接合強度が低下するおそれがある。
【0010】
そこで、本発明車輌用灯具及び車輌用灯具のカバーは、カバーのランプハウジングに対する高い接合強度を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1に、本発明に係る車輌用灯具は、内部空間を有し溶着面が形成されたランプハウジングと前記内部空間を覆うカバーとを備え前記カバーが前記ランプハウジングに熱板溶着によって接合される車輌用灯具であって、前記カバーには外面が車輌の外方を向く意匠面部と前記意匠面部から突出され前記溶着面に溶着される溶着脚部と前記意匠面部における前記溶着脚部より外側に位置された遮蔽部とが設けられ、前記溶着脚部には、前記意匠面部に連続する連続部と、前記連続部に対して前記遮蔽部側に屈曲され先端部が前記溶着面に溶着される屈曲部とが設けられ、前記連続部の前記意匠面部からの突出方向は熱板溶着において前記カバーが前記ランプハウジングに圧着されるときの圧着方向に対して30度より大きくされたものである。
【0012】
これにより、溶着脚部がランプハウジングの溶着面に押し付けられるときの両者の接する方向が熱板溶着による接合時における圧着方向に近付く方向に屈曲部が連続部に対して屈曲される。
【0014】
これにより、意匠面部における溶着脚部より内周側の部分である光を透過する部分の大きさが大きくなるため、光源から出射される光のカバーにおける透過領域が大きくなる。
【0015】
記した本発明に係る車輌用灯具においては、前記連続部と前記屈曲部の境界部分が屈曲端部として形成され、前記屈曲部における前記先端部と前記屈曲端部を結ぶ方向が結び方向とされ、前記結び方向が前記圧着方向に一致されることが望ましい。
【0016】
これにより、熱板溶着においてカバーがランプハウジングに接合されるときに、結び方向が圧着方向に一致された屈曲部が溶着面に突き当てられる。
【0017】
記した本発明に係る車輌用灯具においては、前記意匠面部の外周部が前記溶着脚部より外側に位置されることが望ましい。
【0018】
これにより、意匠面部の外周部が溶着脚部を遮蔽する遮蔽部として機能し、溶着脚部の溶着面との接合部分が車体とカバーの隙間から視認され難い。
【0019】
発明に係る車輌用灯具のカバーは、内部空間を有し溶着面が形成されたランプハウジングに熱板溶着によって接合される車輌用灯具のカバーであって、外面が車輌の外方を向く意匠面部と前記意匠面部から突出され前記溶着面に溶着される溶着脚部と前記意匠面部における前記溶着脚部より外側に位置された遮蔽部とが設けられ、前記溶着脚部には、前記意匠面部に連続する連続部と、前記連続部に対して前記遮蔽部側に屈曲され先端部が前記溶着面に溶着される屈曲部とが設けられ、前記連続部の前記意匠面部からの突出方向が熱板溶着において前記ランプハウジングに圧着されるときの圧着方向に対して30度より大きくされたものである。
【0020】
これにより、溶着脚部がランプハウジングの溶着面に押し付けられるときの両者の接する方向が熱板溶着による接合時における圧着方向に近付く方向に屈曲部が連続部に対して屈曲される。また、意匠面部における溶着脚部より内周側の部分である光を透過する部分の大きさが大きくなるため、光源から出射される光のカバーにおける透過領域が大きくなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、溶着脚部がランプハウジングの溶着面に押し付けられるときの両者の接する方向が熱板溶着による接合時における圧着方向に近付く方向に屈曲部が連続部に対して屈曲されるため、カバーのランプハウジングに対する高い接合強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図2乃至図8と共に本発明車輌用灯具及び車輌用灯具のカバーの実施の形態を示すものであり、本図は、車輌用灯具を示す断面図である。
図2】カバーの一部を示す図である。
図3】熱板溶着においてカバーとランプハウジングが熱板によって加熱されている状態を示す断面図である。
図4】熱板溶着においてカバーがランプハウジングに接合された状態を示す断面図である。
図5】本発明に至った経緯を示す図である。
図6】屈曲部の結び方向における長さと連続部の意匠面部からの突出方向における長さとが略同じ長さにされた例を示す図である。
図7】屈曲部の結び方向における長さが連続部の意匠面部からの突出方向における長さに対して長くされた例を示す図である。
図8】連続部の意匠面部からの突出方向における長さが屈曲部の結び方向における長さに対して長くされた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明車輌用灯具及び車輌用灯具のカバーを実施するための形態について添付図面を参照して説明する。
【0024】
<車輌用灯具の構成>
先ず、車輌用灯具1の構成について説明する(図1及び図2参照)。
【0025】
車輌用灯具1はランプハウジング2とカバー3を有し、カバー3がランプハウジング2に熱板溶着によって接合される。以下の説明においては理解を容易にするために、熱板溶着による接合時においてランプハウジング2とカバー3が保持される位置に対応して前後上下左右の方向を示すものとする。従って、カバー3が位置する側を上方とし、ランプハウジング2が位置する側を下方とし、各図に示す断面形状においてカバー3の外周部が位置する方向を便宜上左右方向とする。
【0026】
但し、以下に示す前後上下左右の方向は説明の便宜上のものであり、本発明の実施に関しては、これらの方向に限定されることはない。
【0027】
また、参照する各図には、本発明の理解を容易にするために、例として、車輌用灯具1を回転対称の簡素な形状にして示す。
【0028】
車輌用灯具1は、上記したように、カバー3がランプハウジング2に熱板溶着によって接合され、熱板溶着においてカバー3がランプハウジング2に圧着されることにより接合される。従って、圧着方向Sは上下方向にされている(図1参照)。
【0029】
ランプハウジング2は、例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル共重合体樹脂)等の樹脂材料によって形成され、内部空間を有している。ランプハウジング2は上方に開口された凹状の本体部4と本体部4の上端部から外方に張り出された環状のフランジ部5とフランジ部5から上方に突出された環状の接合用突部6とを有している。接合用突部6の上面は溶着面6aとして形成されている。
【0030】
カバー3は、例えば、アクリル等の透明な樹脂材料によって形成され、外面3aが車輌の外方を向く意匠面部7と意匠面部7の内面7aにおける外周寄りの部分から突出された溶着脚部8とが一体に形成されて成る。カバー3は内部空間を覆う状態でランプハウジング2に接合される。
【0031】
意匠面部7は車体の形状に応じてランプハウジング2の反対側に凸になるように湾曲されており、曲面状に形成されている。意匠面部7における溶着脚部8より外側の部分は遮蔽部9として設けられている(図1及び図2参照)。意匠面部7は、溶着脚部8が突出された部分である遮蔽部9の内側の部分が突部形成部10として設けられ、突部形成部10の内側の部分、即ち、遮蔽部9と突部形成部10以外の部分が光透過部11として設けられている。
【0032】
溶着脚部8は意匠面部7に連続する連続部12と連続部12に対して屈曲された屈曲部13とから成る。溶着脚部8は屈曲部13の先端面が接合面8aとして形成され、接合面8aを含む屈曲部13の先端部が接合部8bとして設けられている(図2参照)。溶着脚部8は連続部12と屈曲部13の境界部分が屈曲端部8cとして形成されている。
【0033】
連続部12は遮蔽部9と突部形成部10が連続する方向Aに対して、例えば、略直交する方向に突出され、連続部12の突出方向Pは圧着方向Sに対する傾斜角度θが30度より大きくされている。屈曲部13は連続部12に対して意匠面部7の外周側、即ち、遮蔽部9側に屈曲されている。屈曲部13は接合部8bと屈曲端部8cを結ぶ方向が結び方向Qとされている。
【0034】
屈曲部13は結び方向Qが圧着方向Sに一致されている。但し、結び方向Qは圧着方向Sに対して一定の角度以下にされていればよく、圧着方向Sに対して、例えば、30度以下にされていてもよい。
【0035】
<接合作業の手順>
以下に、カバー3のランプハウジング2に対する熱板溶着による接合作業の手順について簡単に説明する(図3及び図4参照)。
【0036】
熱板溶着によるカバー3のランプハウジング2に対する接合時には、ランプハウジング2とカバー3がそれぞれ第1の治具50と第2の治具60によって保持され、カバー3がランプハウジング2の上方において離隔して位置される(図3参照)。
【0037】
次に、ランプハウジング2とカバー3がそれぞれ第1の治具50と第2の治具60によって保持された状態において、ランプハウジング2とカバー3の間に熱板70が移動され、ランプハウジング2の接合用突部6とカバー3の溶着脚部8とが熱板70によって加熱される。熱板70の加熱により接合用突部6の溶着面6aを含む上端部と溶着脚部8の接合部8bとが溶融可能な状態にされる。
【0038】
次いで、熱板70が移動されてランプハウジング2とカバー3の間から退避されると共に第2の治具60が下降されてカバー3がランプハウジング2に圧着方向Sにおいて押し付けられ、接合用突部6の溶着面6aに溶着脚部8の接合面8aが上方から圧着される(図4参照)。このとき接合用突部6の溶着面6aを含む上端部と溶着脚部8の接合部8bとが溶融可能な状態にされているため、接合用突部6の上端部と溶着脚部8の接合部8bとが溶融され、カバー3がランプハウジング2に接合される。
【0039】
ランプハウジング2とカバー3はそれぞれ第1の治具50と第2の治具60から取り出され、熱板溶着によるカバー3のランプハウジング2に対する接合作業が終了する。
【0040】
カバー3がランプハウジング2に接合されることによりランプハウジング2とカバー3によって灯具外筐14が構成される(図1参照)。灯具外筐14の内部は灯室14aとして形成され、灯室14aには光源やリフレクター等の所要の各部を有する図示しない灯具ユニットが配置され、車輌用灯具1が構成される。
【0041】
車輌用灯具1において、光源から出射された光は、例えば、リフレクターで反射され、カバー3の光透過部11を透過され外部へ向けて照射される。
【0042】
<本発明に至った経緯>
続いて、本発明に至った経緯について説明する(図5参照)。
【0043】
カバーにおいては、上記したように、意匠面部7が車体100の形状に応じて湾曲される形状に形成されるため、意匠面部7に対して略直交する方向に突出された溶着脚部8Aが設けられた場合には、接合用突部6の溶着面6aに対して溶着脚部8Aが傾斜する(図5(A)参照)。従って、カバー3のランプハウジング2に対する接合強度が低下するおそれがある。
【0044】
そこで、意匠面部7に対して溶着脚部8Bを圧着方向Sに一致する方向へ突出させることにより、カバー3のランプハウジング2に対する高い接合強度を確保することができる(図5(B)参照)。
【0045】
しかしながら、カバー3がランプハウジング2に接合された状態においては、接合部8bと接合用突部6が溶融されて生じる溶融によるはみ出し部分である所謂バリBが存在し、溶着脚部8Bを圧着方向Sに一致する方向へ突出させた場合には、溶着脚部8Bの先端部が車体100に近付いて位置されるため、バリBが車体100とカバー3の隙間から視認され易くなる。
【0046】
従って、カバー3のランプハウジング2に対する高い接合強度を確保することができるものの、被視認性の低下を来すおそれがある。
【0047】
そこで、意匠面部7に対して溶着脚部8Bを圧着方向Sに一致する方向へ突出させた場合に、意匠面部7における溶着脚部8Bの外側の部分を外周側に大きくした幅広の遮蔽部9Cを設けることにより、バリBが車体100とカバー3の隙間から視認され難くなり、被視認性の向上を図ることができる(図5(C)参照)。
【0048】
しかしながら、幅広の遮蔽部9Cが設けられた場合には、意匠面部7に溶着脚部8Bから外側に大きく突出された幅広の部分が存在してしまうため、幅広の遮蔽部9C自体の存在による被視認性の低下を来すおそれがある。また、意匠面部7の全体の大きさは車体100の大きさや形状に応じて一定の大きさに定められるため、大きな遮蔽部9Cが設けられる場合には、その分、溶着脚部8Bを内周側に設ける必要が生じ、光透過部11の大きさが小さくなる。
【0049】
従って、カバー3のランプハウジング2に対する高い接合強度を確保することができるものの、遮蔽部9C自体による被視認性の低下や照射領域の低減を来すおそれがある。
【0050】
そこで、本発明車輌用灯具1及びカバー3においては、意匠面部7に連続する連続部12と連続部12に対して意匠面部7の外周側に屈曲された屈曲部13とから成る溶着脚部8を設けている(図5(D)参照)。
【0051】
<まとめ>
車輌用灯具1においては、上記のような連続部12と屈曲部13が設けられることにより、溶着脚部8がランプハウジング2の溶着面6aに押し付けられるときの両者の接する方向が熱板溶着による接合時における圧着方向Sに近付く方向に屈曲部13が連続部12に対して屈曲されるため、カバー3のランプハウジング2に対する高い接合強度を確保することができる。
【0052】
また、溶着脚部8の全体が圧着方向Sに一致する方向に延びる形状にされないため、溶融によるはみ出し部分であるバリBが車体100とカバー3の隙間から視認され難く、バリBが視認され難くするための幅広の遮蔽部9Cを設ける必要もなく、被視認性の向上を図ることができる。
【0053】
さらに、幅広の遮蔽部9Cを設ける必要がないため、意匠面部7の光透過部11の大きさが小さくならず、光源から出射される光の照射領域を広範囲にすることができる。
【0054】
さらにまた、連続部12の意匠面部7からの突出方向Pはカバー3がランプハウジング2に圧着されるときの圧着方向Sに対して30度より大きくされている。
【0055】
従って、意匠面部7における溶着脚部8より内周側の部分である光透過部11の大きさが大きくなるため、光源から出射される光のカバー3における透過領域が大きくなり、照射領域を一層大きくして輝度の向上を図ることができる。
【0056】
また、屈曲部13の結び方向Qが圧着方向Sに一致されているため、熱板溶着においてカバー3がランプハウジング2に接合されるときに、結び方向Qが圧着方向Sに一致された屈曲部13が溶着面6aに突き当てられるため、カバー3のランプハウジング2に対する一層高い接合強度を確保することができる。
【0057】
さらに、意匠面部7の外周部が溶着脚部8より外側に位置されているため、意匠面部7の外周部が溶着脚部8を遮蔽する遮蔽部9として機能し、溶着脚部8の溶着面6aとの接合部分が車体100とカバー3の隙間から視認され難く、被視認性の向上を図ることができる。
【0058】
さらにまた、溶着脚部8がランプハウジング2の溶着面6aに傾いた状態で押し付けられ難いため、溶着により発生するバリBが溶着脚部8の外周側と内周側で均等の大きさで生じ易い。従って、接合用突部6にバリBの過度のはみ出しを防止するための溝や壁を形成する必要がなく、溶着面6aを平面状に形成することが可能になり、ランプハウジング2の形状が簡素になりランプハウジング2の成形を容易に行うことができる。
【0059】
<連続部と屈曲部の寸法関係>
次に、連続部12と屈曲部13の寸法関係について説明する(図6乃至図8参照)。
【0060】
屈曲部13の結び方向Qにおける長さをXとし、連続部12の意匠面部7からの突出方向Pにおける長さをYとし、XとYが略同じ長さにされた場合を基準とする(図6参照)。屈曲部13には接合時に溶融される接合部8bが存在し、屈曲部13の結び方向Qにおける長さは接合前より接合後の方が短くなる。Xは接合前の長さであり、溶融される接合部8bが存在することを考慮して、例えば、2mm~3mmにされている。Yは、例えば、3mm程度にされている。
【0061】
XとYがこのような寸法の場合には、車体100における車輌用灯具1の外周部を配置する配置凹部101が浅い凹部になり、車体100の設計上の制約は少なくなる。尚、配置凹部101は、例えば、金属材料を用いた絞り加工によって形成される。
【0062】
また、カバー3は金型を用いた射出成形により形成されるが、XとYの合計の長さが過度に長くならないため、射出成形の冷却工程において突部形成部10に生じるヒケが小さくなり、カバー3の高い成形精度を確保することができる。
【0063】
さらに、バリBが車体100とカバー3の隙間から視認され難くなり、被視認性の向上を図ることができる。
【0064】
一方、XとYの合計の長さが過度に短いと、熱板溶着において熱板70による加熱時に遮蔽部9が熱板70に近付いて位置されるため遮蔽部9に熱による変形が生じたり、接合部8bと遮蔽部9が近付いて位置されるため接合部8bの溶融により生じるバリBが遮蔽部9に付着するおそれがある。しかしながら、XとYの合計の長さが過度に短くされていないため、このような遮蔽部9の熱による変形や遮蔽部9へのバリBの付着を防止することができる。
【0065】
次に、連続部12の意匠面部7からの突出方向Pにおける長さYを変えずに、屈曲部13の結び方向Qにおける長さXを長くした場合について説明する(図7参照)。
【0066】
XとYがこのような寸法の場合には、車体100における車輌用灯具1の外周部を配置する配置凹部101が深目の凹部になり、車体100の設計上の制約が生じる可能性がある。
【0067】
また、バリBが車体100とカバー3の隙間から視認され易くなり、被視認性の観点において支障を来すおそれがある。
【0068】
さらに、XとYの合計の長さが長くなるため、突部形成部10に生じるヒケが大きくなる可能性がある。一方、XとYの合計の長さが長いため、熱板溶着において熱板70による加熱時に遮蔽部9が熱板70から離れて位置されるため遮蔽部9の熱による変形が生じ難く、接合部8bと遮蔽部9が離れて位置されるため遮蔽部9へのバリBの付着を防止することができる。
【0069】
次いで、屈曲部13の結び方向Qにおける長さXを変えずに、連続部12の意匠面部7からの突出方向Pにおける長さYを長くした場合について説明する(図8参照)。
【0070】
XとYがこのような寸法の場合には、車体100における車輌用灯具1の外周部を配置する配置凹部101が深目の凹部になり、車体100の設計上の制約が生じる可能性がある。
【0071】
一方、バリBが車体100とカバー3の隙間から視認され難くなり、被視認性の向上を図ることができる。
【0072】
また、XとYの合計の長さが長くなるため、突部形成部10に生じるヒケが大きくなる可能性がある。一方、XとYの合計の長さが長いため、熱板溶着において熱板70による加熱時に遮蔽部9が熱板70から離れて位置されるため遮蔽部9の熱による変形が生じ難く、接合部8bと遮蔽部9が離れて位置されるため遮蔽部9へのバリBの付着を防止することができる。
【0073】
<その他>
上記には、意匠面部7に溶着脚部8の外周側に位置された遮蔽部9が設けられた例を示したが、カバー3は溶着脚部8が意匠面部7の外周部から突出され遮蔽部9が存在しない構成にされてもよい。この場合には、遮蔽部9が存在しないため遮蔽部9自体の存在による被視認性の低下は生じず、被視認性の向上を図ることができる。また、溶着脚部8が意匠面部7の外周部から突出される分、光透過部11の大きさを大きくすることが可能になり、光源から出射される光の照射領域を一層広範囲にすることができる。
【符号の説明】
【0074】
1…車輌用灯具、2…ランプハウジング、3…カバー、3a…外面、6a…溶着面、7…意匠面部、8…溶着脚部、12…連続部、13…屈曲部
図1
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図7
図8