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  • 特許-SiC素材及びその製造方法 図1a
  • 特許-SiC素材及びその製造方法 図1b
  • 特許-SiC素材及びその製造方法 図2a
  • 特許-SiC素材及びその製造方法 図2b
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】SiC素材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240202BHJP
   C01B 32/956 20170101ALI20240202BHJP
   C30B 29/36 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
H01L21/302 101L
C01B32/956
C30B29/36 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021559358
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-14
(86)【国際出願番号】 KR2020004075
(87)【国際公開番号】W WO2020213847
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-10-14
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】10-2019-0045602
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519053658
【氏名又は名称】トカイ カーボン コリア カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】イ サンチョル
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】河本 充雄
【審判官】松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-003285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00-35/00
C23C16/00-16/56
H01L21/205,21/31,21/365
H01L21/469,21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均結晶粒の大きさが3.0μm以下であり、X線回折分析で(111)面優先成長である低熱伝導度領域が一部に形成されたSiC層を含み、
前記低熱伝導度領域は、下記の式(1)により算出されるX線回折分析の回折強度比(I)が0.5以下であり、
前記低熱伝導度領域の熱伝導度は200W/mk以下である、SiC素材であって、
前記低熱伝導度領域は、前記SiCの面積の50%以上及び100%未満で形成されており、
前記SiCの厚みが2mm以上である、SiC素材。
(式1)
回折強度比(I)=((200)面のピーク強度+(220)面のピーク強度+(311)面のピーク強度)/(111)面のピーク強度
【請求項2】
前記低熱伝導度領域の平均結晶粒の大きさは、0.5μm~3.0μmである、請求項1に記載のSiC素材。
【請求項3】
前記低熱伝導度領域は、下記の式(2)により算出されるX線回折分析の回折強度比(I)が0.5以下である、請求項1に記載のSiC素材。
(式2)
回折強度比(I)=((200)面のピーク強度+(220)面のピーク強度)/(111)面のピーク強度
【請求項4】
前記回折強度比(I)は0.001~0.3である、請求項1に記載のSiC素材。
【請求項5】
前記SiC素材はウェハー載置用リングであり、
前記低熱伝導度領域は、ウェハーが載置される領域に形成される、請求項1に記載のSiC素材。
【請求項6】
基板を準備するステップと、
前記基板上にCVD法を用いてSiC層を形成するステップと、
を含み、
前記SiC層は、平均結晶粒の大きさが3.0μm以下であり、X線回折分析で(111)面優先成長である低熱伝導度領域が少なくとも一部に形成され、
前記低熱伝導度領域は、下記の式(1)により算出されるX線回折分析の回折強度比(I)が0.5以下であり、
前記SiC層の熱伝導度は200W/mk以下である、SiC素材の製造方法であって、
前記低熱伝導度領域は、前記SiC層の面積の50%以上及び100%未満で形成されており、
前記SiC層の厚みが2mm以上である、SiC素材の製造方法。
(式1)
回折強度比(I)=((200)面のピーク強度+(220)面のピーク強度+(311)面のピーク強度)/(111)面のピーク強度
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiC素材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存のCVD SiC素材は3μm~15μmの大小の結晶粒、及び7μm~8μmの平均結晶粒の大きさで緻密に形成されているため、少ない結晶粒界を形成している。従って、結晶粒による熱伝導度が主となり、熱伝導度の高い値を示すことになる。このようなCVD SiC素材の高い熱伝導度は、一部の半導体エッチング工程で用いられる高い工程温度に対する半導体装備の損傷を最小化するための熱放出には有利である。
【0003】
LSI(Large scale integrated circuit)などの低い工程温度を使用する半導体工程において、半導体チップの収率を高めるために、ウェハーエッジの均一なエッチングが必要であるため、ウェハーの均一温度の形成が求められる。このような工程で、従来における高い熱伝導度CVD SiC素材を使用する場合、熱損失によるウェハー内の温度不均一を増加させるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述したような問題点を解決するためのもので、平均結晶粒の大きさを微細化することにより熱伝導度を調整し、低い温度を要求する半導体製造工程に効率よく適用できるSiC素材及びその製造方法に関する。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されない他の課題は、下記記載に基づいて当業者にとって明確に理解できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態により、平均結晶粒の大きさが3.5μm以下であり、X線回折分析で(111)面優先成長である低熱伝導度領域を含むSiC層を含むSiC素材に関する。
【0007】
本発明の一実施形態により、前記低熱伝導度領域の平均結晶粒の大きさは、0.5μm~3.5μmであり得る。
【0008】
本発明の一実施形態により、前記低熱伝導度領域は、下記の式(1)により算出されるX線回折分析の回折強度比(I)が0.5以下であってもよい。
【0009】
(式1)
回折強度比(I)=((200)面のピーク強度+(220)面のピーク強度+(311) 面のピーク強度)/(111)面のピーク強度
【0010】
本発明の一実施形態により、前記低熱伝導度領域は、下記の式(2)により算出されるX線回折分析の回折強度比(I)が0.5以下であってもよい。
【0011】
(式2)
回折強度比(I)=((200)面のピーク強度+(220)面のピーク強度)/(111)面のピーク強度
【0012】
本発明の一実施形態により、前記回折強度比(I)は0.001~0.3であってもよい。
【0013】
本発明の一実施形態により、前記低熱伝導度領域の熱伝導度は200W/mk以下であってもよい。
【0014】
本発明の一実施形態により、前記低熱伝導度領域は、CVD法に基づいて蒸着されることができる。
【0015】
本発明の一実施形態により、前記SiC素材は、半導体非メモリ製造用プラズマ処理装置に用いられる部品の素材であってもよい。
【0016】
本発明の一実施形態により、前記SiC素材はウェハー載置用リングであり、前記低熱伝導度領域は、ウェハーが載置される領域に形成されることができる。
【0017】
本発明の一実施形態により、前記低熱伝導度領域の温度偏差は1℃以下であってもよい。
【0018】
本発明の一実施形態により、前記低熱伝導度領域は、前記SiC層の面積の50%以上及び100%未満で形成されることができる。
【0019】
本発明の一実施形態により、前記SiC層の厚さは2mm以上であってもよい。
【0020】
本発明の一実施形態により、平均結晶粒の大きさが3.5μm以下であり、X線回折分析で(111)面優先成長であるSiC層を含むSiC素材に関する。
【0021】
本発明の一実施形態により、前記SiC層の熱伝導度は200W/mk以下であってもよい。
【0022】
本発明の一実施形態により、前記SiC層は、下記の式(1)により算出されるX線回折分析の回折強度比(I)が0.5以下であってもよい。
【0023】
(式1)
回折強度比(I)=((200)面のピーク強度+(220)面のピーク強度+(311)面のピーク強度)/(111)面のピーク強度
【0024】
本発明の一実施形態により、前記SiC層は、下記の式(2)により算出されるX線回折分析の回折強度比(I)が0.5以下であってもよい。
【0025】
(式2)
回折強度比(I)=((200)面のピーク強度+(220)面のピーク強度)/(111)面のピーク強度
【0026】
本発明の一実施形態により、前記SiC層の厚さは2mm以上であってもよい。
【0027】
本発明の一実施形態により、基板を準備するステップと、前記基板上にCVD法を用いてSiC層を形成するステップとを含み、前記SiC層は、平均結晶粒の大きさが3.5μm以下であり、X線回折分析で(111)面優先成長である低熱伝導度領域が少なくとも一部に形成されるSiC素材の製造方法関する。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、平均結晶粒の大きさを調整し、従来のCVD SiC素材に比べて低い熱伝導度の特性を示す、CVD SiC素材を提供することができる。
【0029】
本発明は、工程条件の変化に応じて熱伝導度を簡単な方法で調整することができるため、低い工程温度が求められる半導体工程に適用可能なCVD SiC素材を経済的な方法で提供することができる。
【0030】
本発明は、LSIのような微細工程の半導体製造工程でウェハーに均一な温度分布を形成させ得るため、ウェハーエッジまで均一なエッチングを達成し、ウェハー収率及び品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1A】本発明の実施形態2で製造されたSiC素材のSEM画像を示す。
図1B】本発明の実施形態2で製造されたSiC素材のXRDパターン分析結果を示す。
図2A】本発明の比較例1で製造されたSiC素材のSEM画像を示す。
図2B】本発明の比較例1で製造されたSiC素材のXRDパターン分析結果を示す。
図3】本発明の実施形態及び比較例で製造されたSiC素材の平均結晶粒の大きさ及び熱伝導度の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付の図面を参照して実施形態を詳細に説明する。しかし、実施形態には多様な変更が加えられることができ、特許出願の権利範囲がこの実施形態により制限されたり限定されたりすることはない。実施形態に対するすべての変更、均等物ないし代替物が権利範囲に含まれるものとして理解されなければならない。
【0033】
本明細書で用いる用語は、単に特定の実施形態を説明するために用いられるものであって、本発明を限定しようとする意図はない。単数の表現は、文脈上、明白に異なる意味をもたない限り複数の表現を含む。本明細書において、「含む」又は「有する」等の用語は明細書上に記載した特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品、又はこれらを組み合わせたものが存在することを示すものであって、一つ又はそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品、又はこれらを組み合わせたものなどの存在又は付加の可能性を予め排除しないものとして理解しなければならない。
【0034】
異なるように定義さがれない限り、技術的であるか又は科学的な用語を含むここで用いる全ての用語は、本実施形態が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に用いられる予め定義された用語は、関連技術の文脈上で有する意味と一致する意味を有するものと解釈すべきであって、本明細書で明白に定義しない限り、理想的又は過度に形式的な意味として解釈されることはない。
【0035】
また、図面を参照して説明する際に、図面符号に拘わらず同じ構成要素は同じ参照符号を付与し、これに対する重複する説明は省略する。実施形態の説明において関連する公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不要に曖昧にすると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【0036】
本発明はSiC素材に関し、本発明の一実施形態により、前記SiC素材は、少なくとも一部に低熱伝導度領域が形成されたSiC層を含んでもよい。前記SiC層は、前記低熱伝導度領域の形成により均一な温度分布を有する領域を提供することができる。
【0037】
前記低熱伝導度領域は、前記SiC層の面積の50%以上及び100%未満で形成されてもよい。
【0038】
前記低熱伝導度領域は、前記SiC層内で平均結晶粒の大きさの調整により形成され、例えば、CVD法に基づいた蒸着工程で工程温度、原料供給速度などのような工程変化を通した成長速度の調整により平均結晶粒の大きさを微細に調整し、熱伝導度を低くすることができる。即ち、前記低熱伝導度領域の平均結晶粒の大きさを減らすことで、結晶粒界の形成を増加して熱伝達を抑制する構造を形成し、低い熱伝導度を示すことができる。
【0039】
前記低熱伝導度領域の平均結晶粒の大きさは、前記SiC層全体の平均結晶粒の大きさ又は最大結晶粒の大きさに比べて低い大きさを有する。例えば、前記低熱伝導度領域の平均結晶粒の大きさは、3.5μm以下、0.01μm~3.5μm、0.1μm~3.5μm、又は、0.5μm~3.5μmであってもよい。前記低熱伝導度領域の平均結晶粒の大きさの範囲内に含まれれば、低い熱伝導度を形成し、前記低熱伝導度領域内で均一な温度分布を形成することができる。前記結晶粒の大きさは、結晶粒の面積、長さ、粒子サイズ、直径などを意味する。
【0040】
前記低熱伝導度領域は、X線回折分析で(111)面優先成長されたものであり、(111)面優先成長によりプラズマ環境などでSiC素材の安定性及び寿命を向上させ得る低熱伝導度領域を形成することができる。即ち、前記SiC層内で前記低熱伝導度領域を除いた領域に比べて、相対的に高い(111)面優先成長が行われることができる。
【0041】
例えば、下記の式(1)及び/又は式(2)によるX線回折分析の回折強度比(I)を示すことができる。前記先回折分析の回折強度比(I)は、0.5以下、0.001~0.3以下、0.01~0.3、又は0.1~0.2であってもよい。
【0042】
(式1)
回折強度比(I)=((200)面のピーク強度+(220)面のピーク強度+(311)面のピーク強度)/(111)面のピーク強度
【0043】
(式2)
回折強度比(I)=((200)面のピーク強度+(220)面のピーク強度)/(111)面のピーク強度
【0044】
前記低熱伝導度領域の熱伝導度は、前記SiC層全体の最大熱伝導度又は平均熱伝導度に比べて低い熱伝導度を有してもよく、例えば、200W/mk以下、20W/mk~200W/mk、又は80~200W/mkであってもよい。前記低熱伝導度領域の温度偏差は、1℃以下、0.8℃以下、又は0.5℃以下である。前記熱伝導度及び温度偏差範囲内に含まれれば均一な温度分布を示し、半導体製造工程で製品の品質及び収率などを向上させることができる。
【0045】
前記SiC層は、2mm以上、10mm以上、又は50mm以上の厚さで形成され、CVD法に基づいて単一又は複数層を蒸着してもよい。前記複数層の形成時において同一であるか、又は異なる構成の層が形成されてもよい。ここで、複数層の成分、厚さ、低熱伝導度領域の平均結晶粒の大きさ、熱伝導度、結晶面の成長方向などが同一であるか、又は互いに異なってもよい。ここで、前記複数層を形成するSiC層に低熱伝導度領域を形成する場合、抵抗偏差が減少し、組織が均一になることで、層間の明確な境界が薄くなるという効果を期待することができる。
【0046】
前記SiC素材は、半導体製造用プラズマ処理装置に用いられる部品の素材であり、例えば、低い工程温度が求められる非メモリの製造工程、即ち、LSI半導体製造工程に適用されるウェハー載置用リングであってもよい。前記SiC素材は、均一な温度分布の形成が必要な部分に低熱伝導度領域を形成し、前記ウェハー載置用リングでウェハーと直接接触される領域に低熱伝導度領域を形成してもよい。これは、LSI半導体製造工程でウェハー全体にわたって均一な温度分布を形成するため、ウェハーエッジまで均一なエッチングが可能であり、半導体チップの収率及び品質を向上させることができる。
【0047】
本発明の一実施形態により、低熱伝導度の特性を有するSiC層を含むSiC素材に関する。
【0048】
前記SiC層の平均結晶粒の大きさは、3.5μm以下、又は、0.01μm~3.5μm、0.1μm~3.5μm、又は、0.5μm~3.5μmであってもよい。前記平均結晶粒の大きさの範囲内に含まれれば、低い熱伝導度を形成し、均一な温度分布を形成することができる。
【0049】
前記SiC層の熱伝導度は、200W/mk以下、20W/mk~200W/mk、又は、80~200W/mkであってもよい。又は、前記SiC層の温度偏差は、1℃以下、0.8℃以下、又は、0.5℃以下であってもよい。前記熱伝導度及び温度偏差範囲内に含まれれば、均一な温度分布を示し、半導体製造工程で製品の品質及び収率などを向上させることができる。
【0050】
前記SiC層は、X線回折分析で(111)面が優先成長されたものであり、(111)面の優先成長によりプラズマ環境で安定的な低熱伝導度素材を提供することができる。例えば、下記の式(1)及び/又は式(2)によるX線回折分析の回折強度比(I)を示す。前記X線回折分析の回折強度比(I)は、0.5以下、0.001~0.3以下、0.01~0.3、又は、0.1~0.2であってもよい。
【0051】
(式1)
回折強度比(I)=((200)面のピーク強度+(220)面のピーク強度+(311) 面のピーク強度)/(111)面のピーク強度
【0052】
(式2)
回折強度比(I)=((200)面のピーク強度+(220)面のピーク強度)/(111)面のピーク強度
【0053】
前記SiC層は、2mm以上、10mm以上、又は、50mm以上の厚さで形成され、CVD法に基づいて単一又は複数層が蒸着されることができる。前記複数層の形成時に同一又は異なる層が形成され、これは層の成分、厚さ、低熱伝導度領域の平均結晶粒の大きさ、熱伝導度、結晶面の成長方向などが同一であるか、又は互いに異なってもよい。ここで、前記複数層を形成するSiC層に低熱伝導度領域を形成する場合、抵抗偏差が返照して組織が均一になることで、層間の明確な境界が薄くなるという効果を期待することができる。
【0054】
本発明は、本発明に係るSiC素材の製造方法を提供することで、本発明の一実施形態により、基板を準備するステップと、前記基板上にCVD法を用いてSiC層を形成するステップとを含む。
【0055】
前記基板を準備するステップは、SiC層又はSiC素材の製造に適用可能であれば、制限されることなく適用されてもよい。
【0056】
前記基板上にCVD法を用いてSiC層を形成するステップは、SiC層全体が低熱伝導度の特性を有するか、又は少なくとも一部に低熱伝導度領域が形成されてもよい。即ち、CVD法の蒸着工程条件、例えば、工程温度及び原料供給流量などを調整して成長速度を制御することで、平均結晶粒の大きさを微細に調整し、結晶粒界を増加(例えば、30%以上)させて熱伝導度を低下させることができる。
【0057】
前記工程温度は、平均結晶粒の大きさの調整のために適切に選択でき、例えば、従来におけるCVD法に基づいたSiC層の蒸着温度に比べて低い温度又は前記SiC層を形成するステップの最大又は平均工程温度に比べて低い温度であってもよい。前記原料供給流量は、平均結晶粒の大きさを調整するために適切に選択することがき、例えば、従来におけるCVD法に基づいたSiC層の蒸着時に適用された供給流量又は前記SiC層を形成するステップの最大、又は平均供給流量に比べて90%以下、60%以下、又は50%以下であってもよい。
【0058】
前記基板上にCVD法を用いてSiC層を形成するステップは、従来のCVD法に基づいたSiC層の蒸着時に適用された成長速度よりも低い成長速度又は前記SiC層を形成するステップの最大、又は平均成長速度に比べて低い成長速度であってもよい。
【0059】
実施形態1
基板上にSiC層(2mmの厚さ)をCVD法に基づいて蒸着し、0.5μm~3μmの結晶粒の大きさ(平均結晶粒の大きさ:0.82μm、ASTM E112測定方法適用)を有するSiC層が形成されたCVD SiC素材を製造した。
【0060】
実施形態2
基板上にSiC層(2mmの厚さ)をCVD法に基づいて蒸着し、0.5μm~3μmの結晶粒の大きさ(平均結晶粒の大きさ:2.2μm、ASTM E112測定方法適用)を有するSiC層が形成されたCVD SiC素材を製造した。
【0061】
比較例1
基板上にSiC層(2mmの厚さ)をCVD法に基づいて蒸着し、3μm~15μmの結晶粒の大きさ(平均結晶粒の大きさ:7.4μm、ASTM E112測定方法適用)を有するSiC層が形成されたCVD SiC素材を製造した。
【0062】
比較例2
基板上にSiC層(2mmの厚さ)をCVD法に基づいて蒸着し、3μm~15μmの結晶粒の大きさ(平均結晶粒の大きさ:9.07μm、ASTM E112測定方法適用)を有するSiC層が形成されたCVD SiC素材を製造した。
【0063】
評価例1
実施形態2及び比較例1のCVD SiC素材のSEM及びXRDを測定して図1図1A及び図1B、実施形態2)、図2図2A及び図2B、比較例1)に示した。
【0064】
XRDは、「Rigaku DMAX200」装備を用いて、測定範囲10~80°、scan speed10及びscan step0.05で測定した。図1を参照すると、実施形態2のCVD SiC素材の結晶粒の大きさは0.5μm~3μmの範囲を有し、(111)面が優先成長され、式(1)による回折強度比(I)が0.01であることが確認される。
【0065】
一方、比較例1のCVD SiC素材は、通常使用されている素材であり、3~15μmの結晶粒の大きさ(平均7.4μm)を有し、(111)面が優先成長されたが、(200)、(220)、(311)面のピーク強度が5000cps以上であるため、本発明の式(1)による回折強度比(I)の範囲を超過することが確認される。
【0066】
評価例2
実施形態及び比較例により製造されたCVD SiC素材の熱伝導度を測定して図3及び表1に示した。CVD SiC素材の粒度は、ASTM E122の方法に基づいて測定した。熱伝導度は、「NETZSCH社、モデル名LFA 447 NanoFlash」の分線装備を用いてKS規格を基準にして試験片を準備して測定した。
【0067】
図3を参照すると、平均結晶粒の大きさが2.2μm以下である場合に低熱伝導性特性を示し、平均結晶粒の大きさが5μm以上で200W/mKを超過し、8μm以上では300W/mKを超過して結晶粒の大きさの増加により熱伝導度が増加するが確認される。
【0068】
【表1】
【0069】
本発明は、CVD蒸着過程で工程変化を介して比較例に比べて成長速度を低くして3μm以下の平均結晶粒の大きさで微細化し、(111)優先成長を誘導し、80W/mK~200W/mKで低い熱伝導度を有するCVD SiC素材を提供することができる。
【0070】
上述したように実施形態をたとえ限定された図面によって説明したが、当技術分野で通常の知識を有する者であれば、上記の説明に基づいて様々な技術的な修正及び変形を適用することができる。例えば、説明された技術が説明された方法と異なる順で実行されるし、及び/又は説明されたシステム、構造、装置、回路などの構成要素が説明された方法と異なる形態で結合又は組み合わせられてもよいし、他の構成要素又は均等物によって置き換え又は置換されたとしても適切な結果を達成することができる。
【0071】
したがって、本発明の範囲は、開示された実施形態に限定されて定められるものではなく、特許請求の範囲及び特許請求の範囲と均等なものなどによって定められるものである。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3