(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】プラスミドの組合せおよび改変免疫細胞の調製におけるその適用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/867 20060101AFI20240202BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240202BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240202BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240202BHJP
C12N 15/64 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
C12N15/867 Z ZNA
C07K19/00
C12N5/0783
C12N15/62 Z
C12N15/64 Z
(21)【出願番号】P 2021564893
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(86)【国際出願番号】 CN2020136542
(87)【国際公開番号】W WO2021121227
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】201911301518.8
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011274810.8
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011433671.9
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521477042
【氏名又は名称】合源生物科技(天津)有限公司
【氏名又は名称原語表記】JUVENTAS CELL THERAPY LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100194515
【氏名又は名称】南野 研人
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 芸
(72)【発明者】
【氏名】石 琳
(72)【発明者】
【氏名】呂 ▲路▼▲路▼
(72)【発明者】
【氏名】▲謝▼ 攀
(72)【発明者】
【氏名】曹 蒙蒙
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 旺
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 家▲興▼
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】王 瑞
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104788573(CN,A)
【文献】国際公開第2019/055842(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/028051(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110404061(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109609465(CN,A)
【文献】特表2023-502190(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1775808(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1919871(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108949695(CN,A)
【文献】国際公開第2019/126724(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/223226(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスミドの組合せであって、前記プラスミドの組合せがプラスミドSeq1、PMD2.G、pMDLg-pRREおよびpRSV-Revを含み、前記プラスミドSeq1、PMD2.G、pMDLg-pRREおよびpRSV-Revが
11.8:3.53:6.33:2.3、13.8:3.48:5.31:2.54または14:4.67:4.67:4.67の比で存在
し、
前記プラスミドSeq1は、キメラ抗原受容体をコードする核酸分子を含む標的プラスミドであり、
前記キメラ抗原受容体のアミノ酸配列が、配列番号1に示されるアミノ酸配列である、プラスミドの組合せ。
【請求項2】
前
記キメラ抗原受容体をコードす
る核酸分子が
、配列番号2に示される核酸配列
である、請求項1に記載のプラスミドの組合せ。
【請求項3】
請求項1
または2記載のプラスミドの組合せを細胞に導入する工程を含むレンチウイルスベクターの調製方法。
【請求項4】
前記細胞が293Tである請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
請求項
3または
4に記載の方法によりレンチウイルスベクターを調製する工程を含む改変免疫エフェクター細胞を調製する方法。
【請求項6】
前記レンチウイルスベクターを免疫エフェクター細胞に導入する工程を含む請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記免疫エフェクター細胞がTリンパ球およびナチュラルキラー細胞からなる群より選択される請求項
6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生物医学の分野に関する。より具体的には、本開示は、4プラスミドシステムを使用して293T細胞をトランスフェクトする方法に関し、前記方法は、293T細胞内で4つのプラスミドを使用することによってレンチウイルスを形成する工程と、前記レンチウイルスを抽出および取得する工程と、次いで、T細胞を前記レンチウイルスでトランスフェクトしてCD19を標的とするキメラ抗原受容体を発現する工程とを含む。本開示は、さらに、前記方法を使用することによって得られる免疫エフェクター細胞、前記免疫エフェクター細胞を含む組成物、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、およびB細胞性リンパ腫に対する臨床治療として、主に化学療法、幹細胞移植、および生物学的療法などが行われている。このような治療法は一定の有効性を実現することができるが、再発性または難治性の白血病は未だ取り組むことが困難な大きな問題として残されている。新しい治療戦略として、腫瘍の細胞免疫療法は、最近の研究において注目の話題となっている。CD19はほとんどすべてのB細胞腫瘍細胞の表面に広く発現しているが、他の実質細胞や造血幹細胞にはほとんど発現していない。
【0003】
腫瘍細胞は、様々な経路、例えば、T細胞認識および抗原応答に関与する分子の発現を下方制御すること、または免疫原性を低下させることにより免疫逃避を産生することができるため、生物の免疫系が効果的に腫瘍を除去できないようにする。キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)は腫瘍細胞表面の抗原を認識し、前記腫瘍細胞を特異的に殺傷することができるため、腫瘍の治療に有用であることが研究で明らかになっている。
【0004】
従来技術において現在利用可能なプラスミドパッケージングシステムを用いて調製されたレンチウイルスは、低濃度の生存可能なウイルスおよび低トランスフェクション力価を有する。T細胞トランスフェクションの理想的な効果を実現するためには、より高いコスト、過剰な残存物質および不十分な安全性能という欠点を有するはるかに高い用量のレンチウイルスを添加する必要がある。3プラスミドパッケージングシステムに置き換えて4プラスミドパッケージングシステムが先行技術においても使用されてきたという事実にもかかわらず、良好な安全性能を確保しながらより高いトランスフェクション力価を提供するプラスミドの組合せを実現する適切な比は、いまだ特定されていない。従って、改変免疫エフェクター細胞を調製するレンチウイルスベクターをパッケージするための4つのプラスミドの適切な比をスクリーニングする緊急の必要性が残されている。
【発明の概要】
【0005】
先行技術の欠点を克服するために、本開示は、標的プラスミドおよび3つのヘルパープラスミドから構成される4プラスミドパッケージングシステムであって、前記標的プラスミドがウイルスパッケージングの非必須成分から解放されることにより潜在的な安全上の危険性を効果的に最小化することができる4プラスミドパッケージングシステムを提供する。4つのプラスミドを特定の比で使用することによって、本開示は、得られるレンチウイルスのトランスフェクション力価を効果的に増加させることができ、T細胞に特定のCARを負荷したレンチウイルスベクターをトランスフェクトすることによって、優れた臨床治療効果およびより高い安全性能を示すCAR-T細胞を提供することができる。
【0006】
本開示は配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むキメラ抗原受容体を提供する。本開示は、さらに、前記キメラ抗原受容体をコードする核酸、前記核酸を含むベクター、前記キメラ抗原受容体、前記核酸分子および/または前記ベクターを含む免疫エフェクター細胞、前記免疫エフェクター細胞を調製する方法、前記免疫エフェクター細胞を含む組成物、および前記キメラ抗原受容体の使用を提供する。
【0007】
本開示のキメラ抗原受容体は、以下の発明の効果のうちの少なくとも1つを含む:
(1)高発現レベルでの免疫細胞(T細胞など)表面での安定した発現、
(2)CD19陽性標的細胞を殺傷する強い能力、
(3)免疫細胞がサイトカインを分泌するのを促進する能力、例えば、T細胞がサイトカイン(INF-γまたはIL-6)を少なくとも1回、2回または3回分泌する能力を増強する能力、
(4)非溶血性で、溶血または赤血球の凝集を誘発しにくいこと、
(5)血管刺激性がなく、投与後に局所的または全身的な異常を生じないこと、
(6)発がん性がなく、in vivoまたはin vitroで非発がん性であること、
(7)がん患者の生存期間を延長する能力、
(8)がん(成人の急性リンパ芽球性白血病、小児の急性リンパ芽球性白血病および/または非ホジキンリンパ腫など)の重症度を効果的に改善する能力、および
(9)副作用(例えば、サイトカイン放出症候群またはCAR-T細胞関連脳症症候群)を誘発するリスクが低く、より高い安全性性能を示す能力。
【0008】
本開示の1つの態様は、プラスミドの組合せであって、前記プラスミドの組合せがプラスミドSeq1、PMD2.G、pMDLg-pRREおよびpRSV-Revを含み、前記プラスミドSeq1、PMD2.G、pMDLg-pRREおよびpRSV-Revが2~6:1~1.5:1~3:1~1.5の比で存在するプラスミドの組合せを提供する。
【0009】
特定の実施形態において、プラスミドの組合せにおける前記プラスミドSeq1は、キメラ抗原受容体をコードする核酸分子を含み、前記キメラ抗原受容体は配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む。
【0010】
特定の実施形態において、プラスミドの組合せにおける前記プラスミドSeq1は、キメラ抗原受容体をコードする核酸分子を含み、前記核酸分子は配列番号2に示される核酸配列を含む。
【0011】
特定の実施形態において、プラスミドの組合せにおける前記プラスミドSeq1、PMD2.G、pMDLg-pRREおよびpRSV-Revは、11.8:3.53:6.33:2.3、13.8:3.48:5.31:2.54または14:4.67:4.67:4.67の比で存在する。
【0012】
本開示の1つの態様は、プラスミドの組合せを細胞に導入する工程を含むレンチウイルスベクターを調製する方法を提供する。
【0013】
特定の実施形態において、導入する工程はトランスフェクトする工程を指す。
【0014】
本開示の1つの態様は、細胞を4プラスミドパッケージングシステムでトランスフェクトすることによってレンチウイルスベクターを得る方法であって、前記プラスミドパッケージングシステムが、プラスミドSeq1、PMD2.G、pMDLg-pRREおよびpRSV-Revを含み、前記プラスミドSeq1、PMD2.G、pMDLg-pRREおよびpRSV-Revが2~6:1~1.5:1~3:1~1.5の比で存在するレンチウイルスベクターを得る方法を提供する。
【0015】
特定の実施形態において、前記プラスミドSeq1は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むキメラ抗原受容体を発現することができる。
【0016】
特定の実施形態において、前記プラスミドSeq1は、キメラ抗原受容体をコードする単離された核酸分子を含み、前記核酸分子は、配列番号2に示される核酸配列を含む。
【0017】
特定の実施形態において、前記プラスミドSeq1、PMD2.G、pMDLg-pRREおよびpRSV-Revは、11.8:3.53:6.33:2.3または13.8:3.48:5.31:2.54の比で存在する。
【0018】
特定の実施形態において、細胞は293Tである。
【0019】
特定の実施形態において、細胞は293T/17である。
【0020】
本開示の1つの態様は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むキメラ抗原受容体を提供する。
【0021】
本開示の別の態様は、さらに、本明細書に記載のキメラ抗原受容体をコードする単離された核酸分子を提供する。
【0022】
本開示の別の態様は、さらに、キメラ抗原受容体をコードする単離された核酸分子を提供し、前記核酸分子は配列番号2に示される核酸配列を含む。
【0023】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の核酸分子を含むプラスミドをさらに提供する。
【0024】
本開示の別の態様は、さらに、前記レンチウイルスを調製する方法によってレンチウイルスベクターを調製および取得する工程を含む改変免疫エフェクター細胞を調製する方法を提供する。
【0025】
特定の実施形態において、前記方法は、レンチウイルスベクターを免疫エフェクター細胞に導入する工程をさらに含む。
【0026】
特定の実施形態において、導入する工程は、トランスフェクトする工程を指す。
【0027】
特定の実施形態において、前記免疫エフェクター細胞は、Tリンパ球およびナチュラルキラー細胞からなる群から選択される。
【0028】
本開示の別の態様は、さらに、前記改変免疫エフェクター細胞を調製する方法によって調製および取得される改変免疫エフェクター細胞を含む改変免疫エフェクター細胞を提供する。
【0029】
特定の実施形態において、前記免疫エフェクター細胞は、Tリンパ球およびナチュラルキラー細胞からなる群より選択される。
【0030】
特定の実施形態において、前記免疫エフェクター細胞は、本明細書に記載のキメラ抗原受容体を発現することができる。
【0031】
本開示の別の態様は、さらに、本明細書中に記載される方法によって得られる改変免疫エフェクター細胞を含む組成物を提供する。
【0032】
特定の実施形態において、前記免疫エフェクター細胞は、Tリンパ球およびナチュラルキラー細胞からなる群から選択される。
【0033】
特定の実施形態において、本明細書中に記載されるキメラ抗原受容体は、免疫エフェクター細胞の表面上で発現される。
【0034】
本開示の別の態様は、さらに、医薬の製造における、前記方法によって調製された免疫エフェクター細胞および/または前記免疫エフェクター細胞、前記キメラ抗原受容体、前記核酸分子、前記ベクターおよび/または前記免疫エフェクター細胞を含む組成物の使用を提供し、前記医薬は、CD19発現に関連する疾病または疾患の治療に有用である。
【0035】
本開示の別の態様は、さらに、前記組成物および/または前記免疫エフェクター細胞を適用する工程を含むCD19発現に関連する疾病または疾患を治療する方法を提供する。
【0036】
本開示の別の態様は、さらに、CD19発現に関連する疾病または疾患の治療において使用する組成物および/または免疫エフェクター細胞を提供する。
【0037】
特定の実施形態において、CD19発現に関連する前記疾病または疾患は、非固形腫瘍を含む。
【0038】
特定の実施形態において、非固形腫瘍は、白血病および/またはリンパ腫を含む。
【0039】
特定の実施形態において、CD19発現に関連する前記疾病または疾患は、急性リンパ芽球性白血病および/またはB細胞リンパ腫を含む。
【0040】
特定の実施形態において、前記急性リンパ芽球性白血病は、成人における急性リンパ芽球性白血病および/または小児における急性リンパ芽球性白血病を含む。
【0041】
特定の実施形態において、前記急性リンパ芽球性白血病を治療するための医薬は、0.25×108~0.5×108のCAR陽性T細胞の投与量で投与される。
【0042】
特定の実施形態において、前記B細胞リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫を含む。
【0043】
特定の実施形態において、前記非ホジキンリンパ腫を治療するための医薬は、1×108~2×108CAR陽性T細胞の投与量で投与される。
【0044】
当業者は以下の詳細な説明から本開示の他の態様および利点を容易に理解することができる。以下の詳細な説明では本開示の例示的な実施形態を示し、説明しているにすぎない。当業者が認識するように、本開示の内容は当業者が本開示の発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される特定の実施形態に修正を加えることを可能にする。同様に、本開示の説明における図面および例示は、限定的ではなく、例示的なものにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本開示に含まれる特定の特徴は、添付の特許請求の範囲に示される。本明細書に含まれる開示の特徴および利点が以下に詳細に記載される例示的な実施形態および添付の図面を参照することによって、より良く理解することができる。図面の簡単な説明は以下の通りである:
【
図1】
図1Aおよび
図1Bは、4プラスミドシステムでのトランスフェクション後のトランスフェクション力価および物理的力価を示す。
【
図2】
図2Aおよび
図2Bは、CNCT19細胞の表面上に発現されたCAR分子の検出結果を示す。
【
図3】
図3は、異なる共培養条件下での腫瘍細胞の残存率を示す。
【
図4】
図4は、リアルタイム細胞分析(RTCA)二重目的(DP)システムによってリアルタイムでモニターされる、CNCT19細胞による標的細胞(CHO-CD19)の殺傷を示す。
【
図5】
図5Aは、異なる共培養条件下での上清中のINF-γ濃度のバラツキを示す。
図5Bは、異なる共培養条件下での上清中のIL-6濃度のバラツキを示す。
【
図6】
図6Aは、3時間振盪する前の各試験管の観察結果を示す。
図6Bは、3時間振盪した後の各試験管の観察結果を示す。
【
図7】
図7Aは、CAR-T細胞の投与後の局所注射部位の顕微鏡写真(HE染色、対物レンズ10倍)である。
図7Bは、塩化ナトリウム注射液投与後の局所注射部位の顕微鏡写真である(HE染色、対物レンズ10倍)。
【
図8】
図8は、各群における細胞接種の3週間後の軟寒天コロニー形成を示す。
【
図9】
図9は、異なる細胞で処理されたNalm-6異種移植片腫瘍NCGマウスの生存曲線を示す。
【
図10】
図10は、CNCT19細胞の単回投与後の組織の分布を示す。
【
図11】
図11は、担がん動物および非担がん動物においてin vivoで分布されるCNCT19細胞の比較である。
【
図12】
図12は、単回投与後の動物の種々の組織に分布したCNCT19細胞のバラツキを示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下の具体例は本開示の特定の実施形態を例示する。本技術に精通する者は本明細書に開示される内容から、本開示の他の利点および効果を容易に理解することができる。
【0047】
以下、本開示をさらに説明する。本開示によれば、特に明記しない限り、本明細書で使用される科学用語および技術用語は当業者によって一般に理解される意味を有する。さらに、本明細書中で使用されるタンパク質および核酸化学、分子生物学、細胞および組織培養、微生物学、ならびに免疫学の関連する用語および実験手順はすべて、対応する分野において広く使用される用語および日常的手順である。ここで、本開示をより良く理解するために、関連する用語の定義および説明を以下に示す。
【0048】
本明細書中で使用される場合、「キメラ抗原受容体」(CAR)という用語は通常、抗原に結合可能な細胞外ドメインおよび少なくとも1つの細胞内ドメインを含む融合タンパク質をいう。CARはキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)のコア成分であり、これは、標的化部分(例えば、腫瘍関連抗原(TAA)に結合する部分)、ヒンジ領域、膜貫通領域、および細胞内ドメインを含んでもよい。本開示において、CARは抗体の抗原特異性に基づいて、T細胞受容体活性化細胞内ドメインと組み合わせてもよい。CARを発現するT細胞は標的抗原を発現する悪性細胞を特異的に認識し、除去することができる。
【0049】
本明細書中で使用される場合、「単離された」という用語は通常、天然の状態から人工的な手段により得られるものをいう。ある「単離された」物質または構成要素が天然に存在する場合には、それが存在する天然の環境が変化しているか、天然の環境から単離されているか、またはその両方であることを意味する。例えば、ある非単離ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが生きている動物に天然に存在するとき、この天然の状態から単離された高純度の同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドを、単離されたものと呼ぶ。「単離された」という用語は人工的または合成的な物質と混合される機会を排除するものではなく、物質の活性を損なわない他の不純物の存在を排除するものでもない。
【0050】
本明細書中で使用される場合、「免疫エフェクター細胞」という用語は通常、例えば、免疫エフェクター応答を促進する細胞などの免疫応答に関与する細胞をいう。本開示において、免疫エフェクター細胞は、Tリンパ球およびナチュラルキラー細胞からなる群から選択してもよい。
【0051】
本明細書中で使用される場合、「特異的に結合するおよび/または特異的に認識する」という用語は通常、標的と抗体(またはCAR構造フラグメント)との間の結合など、測定可能かつ再現可能な相互作用をいい、これは分子(生体分子を含む)の不均一な細胞集団が存在する場合に標的の存在を決定することがある。例えば、標的(エピトープでもよい)に特異的に結合する抗体(またはCAR構造フラグメント)は、他の標的への結合と比較して、より簡単な方法で、および/またはより長い期間、より高い親和性および結合活性で標的に結合する抗体(またはCAR構造フラグメント)である。
【0052】
本明細書中で使用される場合、「単離された核酸分子」という用語は通常、その単離された形態において任意の長さのヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはそれらの天然の環境から単離されたかもしくは人工的に合成されたアナログをいう。
【0053】
本明細書中で使用される場合、「プラスミド」、「ベクター」は通常、あるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを挿入することができ、そしてそれによって前記タンパク質を発現することができる、核酸を送達するためのツールをいう。ベクターは、保有する遺伝物質元素が宿主細胞中で発現することができるように、宿主細胞中に形質転換、形質導入、またはトランスフェクトすることができる。例えば、ベクターは、プラスミド、ファージミド、コスミド、人工染色体(酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)またはP1由来人工染色体(PAC)など)、λファージまたはM13ファージなどのファージおよび動物ウイルスなどを含む。ベクターとなる動物ウイルスの種類にはレトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルスなど)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、乳頭腫空胞ウイルス(SV40など)などがある。ベクターはプロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択エレメント、およびレポーター遺伝子を含む、発現を制御する様々なエレメントを含んでもよい。また、ベクターは複製起点を含んでもよい。ベクターは特に限定されないが、ウイルス粒子、リポソームまたはタンパク質コートなどの、細胞への侵入を助ける成分を含んでもよい。
【0054】
本明細書中で使用される場合、「組成物」は通常、患者への投与に適した組成物をいう。例えば、本開示の組成物は本明細書に記載の免疫エフェクター細胞を含んでもよい。さらに、組成物はまた、(薬学的に有効である)キャリア、安定剤、賦形剤、希釈剤、可溶化剤、界面活性剤、乳化剤および/または保存剤の1つ以上の適切な製剤を含んでもよい。前記組成物の許容される成分は使用される任意の用量および濃度でレシピエントに対して無毒である。本開示の組成物は特に限定されないが、液体、および凍結または凍結乾燥組成物を含む。
【0055】
本明細書中で使用される場合、「CD19」は通常、分化クラスター(CD)19タンパク質をいい、これは、白血病前駆細胞上で検出され得る抗原決定基のクラスターである。ヒトおよびマウスCD19のアミノ酸および核酸配列は、公共のデータベース(GenBank、UniProt、およびSwiss-Protなど)に掲載されている。例えば、ヒトCD19のアミノ酸配列は、UniProt/Swiss-Prot寄託番号P15391でアクセスすることができ、ヒトCD19をコードするヌクレオチド配列は、寄託番号NM_001178098でアクセスすることができる。本開示によれば、「CD19」は突然変異を有するタンパク質(例えば、完全長野生型CD19の点突然変異、断片、挿入、欠失、およびスプライスバリアント)を含んでもよい。
【0056】
本明細書中で使用される場合、「被験者」という用語は通常、ヒト、またはネコ、イヌ、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウサギ、マウス、ラット、またはサルを含むがこれらに限定されない非ヒト動物をいう。
【0057】
本明細書中で使用される場合、「レンチウイルスベクター」という用語は通常、レンチウイルスゲノムの少なくとも一部に由来する1つ以上の核酸配列を含むベクターをいう。レンチウイルスベクターは、レンチウイルス由来の1つ以上のタンパク質の非コード配列を含んでもよい。
【0058】
本明細書中で使用される場合、「標的プラスミド」という用語は、例えば、細胞に移入される異種核酸配列(例えば、CARをコードする核酸配列)を含んでもよく、例えば、1つ以上のレンチウイルス遺伝子またはその部分をさらに含んでもよい。
【0059】
本明細書中で使用される場合、「ヘルパープラスミド」は、レンチウイルスタンパク質またはその部分をコードする1つ以上の遺伝子を含んでもよい。例えば、レンチウイルスカプシドタンパク質をコードする遺伝子が含まれてもよく、別の例として、envタンパク質またはその一部をコードする遺伝子が含まれてもよい。宿主細胞は標的プラスミドおよび1つ以上のヘルパープラスミドでトランスフェクトされてウイルスを産生することができ、前記ウイルスは、標的細胞(例えば、T細胞)を感染させて、異種核酸配列に含まれる1つ以上の導入遺伝子(例えば、CARをコードする遺伝子)を標的細胞において発現させるために使用することができる。
【0060】
本明細書中で使用される場合、「含む」という用語は通常、明示的に指定された特徴を含むことを指し、他の要素を除外するものではない。
【0061】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は通常、記載された値より0.5%~10%大きいかまたは小さい範囲内で変化することを指し、例えば、記載された値より0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、または10%大きいかまたは小さい範囲内で変化することを指す。
【0062】
[4プラスミドシステム]
本開示の1つの態様は、プラスミドの組合せを提供し、前記プラスミドの組合せは、プラスミドSeq1、PMD2.G、pMDLg-pRREおよびpRSV-Revを含む。
【0063】
4プラスミドシステムはその説明書に記載された方法に従ってレンチウイルスをトランスフェクトするために本開示において使用される。前記4プラスミドシステムは、標的プラスミド(Seq1)および3つのヘルパープラスミド(PMD2.G、pMDLg-pRREおよびpRSV-Rev)を含んでもよい。
【0064】
本開示によれば、前記標的プラスミドはSeq1であってもよい。前記Seq1は目的の遺伝子配列をもっている。ベクタープラスミドの目的遺伝子をレンチウイルスベクターにより標的細胞(293細胞)のゲノムに挿入し、CARの安定した発現を実現する。トランスファープラスミドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列、および配列番号2に示される核酸配列を有する。
【0065】
ヘルパープラスミド1は水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質GをコードするVSV-G遺伝子を提供するために使用されるPMD2.Gであってもよい。VSVGエンベロープ偽型レンチウイルスベクターは、ベクターの標的細胞向性範囲を広げ、レンチウイルスベクターの安定性を増加させるため、レンチウイルスベクターを高速遠心分離によって濃縮することを可能にし、さらにより高い力価をもたらす。
【0066】
ヘルパープラスミド2は、Revタンパク質結合部位を提供するために使用され、Gag遺伝子およびPol遺伝子を含むpMDLg-pRREであってもよい。前記Gag遺伝子は、ヌクレオカプシドタンパク質、膜タンパク質およびカプシドタンパク質などのウイルス粒子の主要構造タンパク質をコードする。前記pol遺伝子は、プロテアーゼ、逆転写酵素およびインテグラーゼなどのウイルス複製関連酵素をコードする。ウイルスの集合に重要な役割を果たす。
【0067】
ヘルパープラスミド3は、Gag遺伝子およびPol遺伝子の発現レベルを調節し、一本鎖DNAの複製過程を誘導するためのRev遺伝子を提供するために使用され、スプライシング/RNA輸送を調節することができるpRSV-Revであってもよい。ウイルスの集合に重要な役割を果たす。
【0068】
特定の実施形態において、プラスミドの組合せにおけるプラスミドSeq1、PMD2.G、pMDLg-pRREおよびpRSV-Revは、2~6:1~1.5:1~3:1~1.5、例えば、2~5:1~1.5:1~3:1~1.5、2~4:1~1.5:1~3:1~1.5、2~3:1~1.5:1~3:1~1.5、3~6:1~1.5:1~3:1~1.5、3~5:1~1.5:1~3:1~1.5、3~4:1~1.5:1~3:1~1.5、4~6:1~1.5:1~3:1~1.5、4~5:1~1.5:1~3:1~1.5または5~6:1~1.5:1~3:1~1.5の比で存在してもよい。
【0069】
特定の実施形態において、プラスミドの組合せにおけるプラスミドSeq1、PMD2.G、pMDLg-pRREおよびpRSV-Revは、2~6:1~1.5:1~3:1~1.5、例えば、2.1:1~1.5:1~3:1~1.5、2.2:1~1.5:1~3:1~1.5、2.3:1~1.5:1~3:1~1.5、2.4:1~1.5:1~3:1~1.5、2.5:1~1.5:1~3:1~1.5、2.6:1~1.5:1~3:1~1.5、2.7:1~1.5:1~3:1~1.5、2.8:1~1.5:1~3:1~1.5、2.9:1~1.5:1~3:1~1.5、3.0:1~1.5:1~3:1~1.5、3.1:1~1.5:1~3:1~1.5、3.2:1~1.5:1~3:1~1.5、3.3:1~1.5:1~3:1~1.5、3.4:1~1.5:1~3:1~1.5、3.5:1~1.5:1~3:1~1.5、3.6:1~1.5:1~3:1~1.5、3.7:1~1.5:1~3:1~1.5、3.8:1~1.5:1~3:1~1.5、3.9:1~1.5:1~3:1~1.5、4.0:1~1.5:1~3:1~1.5、4.1:1~1.5:1~3:1~1.5、4.2:1~1.5:1~3:1~1.5、4.3:1~1.5:1~3:1~1.5、4.4:1~1.5:1~3:1~1.5、4.5:1~1.5:1~3:1~1.5、4.6:1~1.5:1~3:1~1.5、4.7:1~1.5:1~3:1~1.5、4.8:1~1.5:1~3:1~1.5、4.9:1~1.5:1~3:1~1.5、5.0:1~1.5:1~3:1~1.5、5.1:1~1.5:1~3:1~1.5、5.2:1~1.5:1~3:1~1.5、5.3:1~1.5:1~3:1~1.5、5.4:1~1.5:1~3:1~1.5、5.5:1~1.5:1~3:1~1.5、5.6:1~1.5:1~3:1~1.5、5.7:1~1.5:1~3:1~1.5、5.8:1~1.5:1~3:1~1.5、5.9:1~1.5:1~3:1~1.5または6.0:1~1.5:1~3:1~1.5の比で存在してもよい。
【0070】
特定の実施形態において、プラスミドの組合せにおけるプラスミドSeq1、PMD2.G、pMDLg-pRREおよびpRSV-Revは、2~6:1~1.5:1~3:1~1.5、例えば、2~6:1~1.3:1~3:1~1.5、2~6:1.2~1.5:1~3:1~1.5または2~6:1.1~1.4:1~3:1~1.5の比で存在してもよい。
【0071】
特定の実施形態において、プラスミドの組合せにおけるプラスミドSeq1、PMD2.G、pMDLg-pRREおよびpRSV-Revは、2~6:1~1.5:1~3:1~1.5、例えば、2~6:1.1:1~3:1~1.5、2~6:1.2:1~3:1~1.5、2~6:1.3:1~3:1~1.5、2~6:1.4:1~3:1~1.5または2~6:1.5:1~3:1~1.5の比で存在してもよい。
【0072】
特定の実施形態において、プラスミドの組合せにおけるプラスミドSeq1、PMD2.G、pMDLg-pRREおよびpRSV-Revは、2~6:1~1.5:1~3:1~1.5、例えば、2~6:1~1.5:1~2.5:1~1.5、2~6:1~1.5:1~2.0:1~1.5、2~6:1~1.5:1~1.5:1~1.5、2~6:1~1.5:1.5~3:1~1.5、2~6:1~1.5:1.5~2.5:1~1.5、2~6:1~1.5:1.5~2:1~1.5、2~6:1~1.5:2~3:1~1.5、2~6:1~1.5:2~2.5:1~1.5、または2~6:1~1.5:2.5~3:1~1.5の比で存在してもよい。
【0073】
特定の実施形態において、プラスミドの組合せにおけるプラスミドSeq1、PMD2.G、pMDLg-pRREおよびpRSV-Revは、2~6:1~1.5:1~3:1~1.5、例えば、2~6:1~1.5:1.1:1~1.5、2~6:1~1.5:1.2:1~1.5、2~6:1~1.5:1.3:1~1.5、2~6:1~1.5:1.4:1~1.5、2~6:1~1.5:1.5:1~1.5、2~6:1~1.5:1.6:1~1.5、2~6:1~1.5:1.7:1~1.5、2~6:1~1.5:1.8:1~1.5、2~6:1~1.5:1.9:1~1.5、2~6:1~1.5:2:1~1.5、2~6:1~1.5:2.1:1~1.5、2~6:1~1.5:2.2:1~1.5、2~6:1~1.5:2.3:1~1.5、2~6:1~1.5:2.4:1~1.5、2~6:1~1.5:2.5:1~1.5、2~6:1~1.5:2.6:1~1.5、2~6:1~1.5:2.7:1~1.5、2~6:1~1.5:2.8:1~1.5、2~6:1~1.5:2.9:1~1.5または2~6:1~1.5:3:1~1.5の比で存在してもよい。
【0074】
特定の実施形態において、プラスミドの組合せにおけるプラスミドSeq1、PMD2.G、pMDLg-pRREおよびpRSV-Revは、11.8:3.53:6.33:2.3、13.8:3.48:5.31:2.54または14:4.67:4.67:4.67の比で存在してもよい。
【0075】
特定の実施形態において、プラスミドSeq1、PMD2.G、pMDLg-pRREおよびpRSV-Revは、11.8:3.53:6.33:2.3の比で存在してもよい。
【0076】
特定の実施形態において、プラスミドSeq1、PMD2.G、pMDLg-pRREおよびpRSV-Revは、13.8:3.48:5.31:2.54の比で存在してもよい。
【0077】
特定の実施形態において、プラスミドSeq1、PMD2.G、pMDLg-pRREおよびpRSV-Revは、14:4.67:4.67:4.67の比で存在してもよい。
【0078】
[キメラ抗原受容体、核酸、ベクター、免疫エフェクター細胞、および組成物]
本開示のプラスミドSeq1は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むキメラ抗原受容体を発現できる。本開示は、さらに、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むキメラ抗原受容体を提供する。
【0079】
特定の実施形態において、本明細書に記載のキメラ抗原受容体は、腫瘍抗原に特異的に結合および/または認識することができる。例えば、本明細書に記載のキメラ抗原受容体は、CD19抗原に特異的に結合することができ、そして/またはCD19抗原を認識することができる。
【0080】
特定の実施形態において、本明細書に記載のキメラ抗原受容体は、免疫エフェクター細胞がサイトカインを分泌するのを促進することができる。前記免疫エフェクター細胞は、Tリンパ球およびナチュラルキラー細胞からなる群から選択してもよい。前記サイトカインは、IFN-γおよびIL-6からなる群から選択されてもよい。前記免疫エフェクター細胞は、哺乳動物免疫エフェクター細胞であってもよい。前記Tリンパ球は、哺乳類のTリンパ球であってもよく、前記ナチュラルキラー細胞は、哺乳類のナチュラルキラー細胞であってもよい。Tリンパ球は、ヒトTリンパ球であってもよく、前記ナチュラルキラー細胞はヒトナチュラルキラー細胞であってもよい。
【0081】
特定の実施形態において、本明細書に記載のキメラ抗原受容体は、非溶血性であり、血管刺激がない。
【0082】
特定の実施形態において、本明細書に記載のキメラ抗原受容体は、in vitroで非発がん性である。
【0083】
特定の実施形態において、本明細書に記載のキメラ抗原受容体は、in vivoで非発がん性である。
【0084】
特定の実施形態において、本明細書に記載のキメラ抗原受容体は、腫瘍を効果的に治療することができる。前記腫瘍は、CD19陽性腫瘍であってもよい。例えば、本明細書に記載のキメラ抗原受容体はCD19陽性腫瘍患者の生存期間を効果的に延長することができる。例えば、本明細書に記載のキメラ抗原受容体は、非固形腫瘍患者の生存期間を効果的に延長することができる。例えば、本明細書に記載のキメラ抗原受容体は、リンパ腫および/または白血病の生存期間を効果的に延長することができる。別の例として、本明細書に記載のキメラ抗原受容体は、急性リンパ芽球性白血病の成人患者の生存期間を効果的に延長することができる。別の例として、本明細書に記載のキメラ抗原受容体は、急性リンパ芽球性白血病の小児患者の生存期間を効果的に延長することができる。別の例として、本明細書に記載のキメラ抗原受容体は、B細胞リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫)患者の生存期間を効果的に延長することができる。
【0085】
特定の実施形態において、本明細書に記載のキメラ抗原受容体は、成人における急性リンパ芽球性白血病を効果的に治療することができる。
【0086】
特定の実施形態において、本明細書に記載のキメラ抗原受容体は、小児における急性リンパ芽球性白血病を効果的に治療することができる。
【0087】
特定の実施形態において、本明細書に記載のキメラ抗原受容体は、非ホジキンリンパ腫を効果的に治療することができる。
【0088】
本開示のプラスミドSeq1は、本明細書に記載のキメラ抗原受容体をコードする単離された核酸分子を含む。
【0089】
本開示のプラスミドSeq1は、キメラ抗原受容体をコードする単離された核酸分子を含み、前記核酸分子は、配列番号2に示される核酸配列を含む。
【0090】
本開示のプラスミドSeq1は、キメラ抗原受容体をコードする単離された核酸分子を含み、前記核酸分子は配列番号2に示される配列に類似する核酸配列を含み、前記キメラ抗原受容体をコードする核酸分子である。
【0091】
特定の実施形態において、配列番号2に示される配列に類似する核酸配列は、配列番号2に示される核酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する核酸配列をいう。
【0092】
特定の実施形態において、配列番号2に示される配列に類似する核酸配列は、核酸分子がキメラ抗原受容体をコードできることを意味するが、核酸コドンの3位における塩基のゆらぎ(縮重)のために、配列番号2に示される核酸配列とは異なっている。
【0093】
本開示は1つ以上の生物学的活性を保持する遺伝子およびタンパク質の変異体(例えば、配列番号1に示されるアミノ酸配列の変異体、または本明細書に記載のような配列番号2に示される核酸配列の変異体)を含む。このようなタンパク質またはポリペプチドの変異体は、タンパク質またはポリペプチドが改変または追加の特性を有するように、組換えDNA技術を用いて改変されたかまたは改変することができるタンパク質またはポリペプチドを含み、例えば、この変異体は、血漿中の増強された安定性またはタンパク質に対する増加した活性を付与する。前記変異体は、参照配列とは異なっていてもよく、例えば、天然に存在するポリヌクレオチド、タンパク質またはペプチドとは異なっていてもよい。ヌクレオチド配列レベルにおいて、天然に存在する変異体遺伝子および天然に存在しない変異体遺伝子は代表的には参照遺伝子に対して少なくとも約50%、より代表的には少なくとも約70%、そしてさらにより代表的には少なくとも約80%の同一性(90%以上の同一性)を有する。アミノ酸配列レベルにおいて、天然に存在する変異体タンパク質および天然に存在しない変異体タンパク質は、典型的には参照タンパク質に対して少なくとも約70%、より典型的には少なくとも約80%、そしてさらにより典型的には少なくとも約90%以上の同一性を有しながら、非保存領域においてより高いパーセントの非同一性領域(例えば、同一性パーセントが70%未満、例えば、60%未満、50%未満、またはさらに40%未満)を可能にする。他の実施形態において、前記配列は、参照配列と少なくとも60%、70%、75%以上の同一性(例えば、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性)を有する。ヌクレオチドおよびアミノ酸の改変をポリヌクレオチド、タンパク質またはポリペプチドに導入する手順は当業者に公知である(例えば、Sambrook et al.(1989)を参照のこと)。
【0094】
本明細書中で使用される場合、「同一性」、「相同性」という用語およびそれらの文法的異表記は通常、配列が「整列した」場合、2つ以上の実体が同一であることを意味する。したがって、例えば、2つのポリペプチドが同一の配列を有する場合、それらは少なくとも参照領域または部分内で同一のアミノ酸配列を有する。2つのポリヌクレオチドが同一の配列を有する場合、それらは少なくとも参照領域または部分内で同一のポリヌクレオチド配列を有する。前記同一性は、配列の定義されたゾーン(領域またはドメイン)の同一性であり得る。前記同一性の「ゾーン」または「領域」は、2つ以上の参照実体の同一部分を指す。したがって、2つのタンパク質または核酸配列が1つ以上の配列ゾーンまたは領域において同一である場合、それらはその領域において同一性を有する。「整列した」配列は、参照配列と比較して補足的または追加的な塩基またはアミノ酸(ギャップ)をしばしば含む、より多くのポリヌクレオチドまたはタンパク質(アミノ酸)を指す。2つの配列間の同一性(相同性)の程度は、コンピュータープログラムおよび数学的アルゴリズムを使用して判定できる。パーセント配列同一性(相同性)を算出するこのようなアルゴリズムは、通常比較される領域またはゾーンにおける配列ギャップおよびミスマッチを算出する。例えば、BLAST(例えば、BLAST2.0)検索アルゴリズム(例えば、Altschulet al、J.MolBiol.215:403(1990)(NCBIから公的に入手可能)を参照のこと)としては、ミスマッチ-2、ギャップオープニング5、ギャップエクステンション2などが例示的な検索パラメーターとして挙げられる。
【0095】
本開示によれば、核酸分子は、本明細書に記載のキメラ抗原受容体をコードすることができる限り、単離された形態において、任意の長さのヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、またはそれらの天然の環境から単離されたかまたは人工的に合成されたアナログでもよい。
【0096】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の核酸分子を含むベクターを提供する。
【0097】
本開示によれば、前記ベクターは、保有する遺伝物質元素が宿主細胞中で発現できるように、宿主細胞中に形質転換、形質導入、またはトランスフェクトすることができる。例えば、ベクターは、プラスミド、ファージミド、コスミド、人工染色体(酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)またはP1由来人工染色体(PAC)など)、λファージまたはM13ファージなどのファージおよび動物ウイルスなどを含んでもよい。ベクターとなる動物ウイルスの種類には、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルスなど)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、乳頭腫空胞ウイルス(SV40など)などがある。別の例として、前記ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択的元素、およびレポーター遺伝子を含む発現を制御する種々の元素を含んでもよい。さらに、前記ベクターは、複製起点を含んでもよい。さらに、前記ベクターは、特に限定されないが、ウイルス粒子、リポソームまたはタンパク質コートのような、細胞へのその侵入を補助する成分を含んでもよい。
【0098】
本開示の1つの態様は、レンチウイルスベクターを調製する方法を提供し、前記方法は、プラスミドの組合せを細胞に導入する工程を含む。
【0099】
本開示の別の態様は、本明細書に記載のキメラ抗原受容体、核酸分子および/またはベクターを含む免疫エフェクター細胞を提供する。
【0100】
本開示によれば、前記免疫エフェクター細胞は、Tリンパ球およびナチュラルキラー細胞からなる群から選択してもよい。特定の実施形態において、前記免疫エフェクター細胞は、ヒト免疫エフェクター細胞であってもよい。例えば、前記免疫エフェクター細胞は、ヒトTリンパ球でもよい。別の例として、前記免疫エフェクター細胞は、ヒトナチュラルキラー細胞でもよい。
【0101】
本開示によれば、本明細書に記載のキメラ抗原受容体は、免疫エフェクター細胞の表面上に発現される。
【0102】
特定の実施形態において、本明細書に記載の免疫エフェクター細胞は、腫瘍細胞を効果的に殺傷することができる。前記腫瘍細胞は、CD19陽性細胞であってもよい。例えば、本明細書に記載の免疫エフェクター細胞は、CD19陽性ヒト白血病細胞株Nalm-6細胞の残存率をかなり低下させることができる。
【0103】
特定の実施形態において、本明細書に記載の免疫エフェクター細胞は、CD19陽性細胞と接触するサイトカイン分泌を効果的に促進することができる。前記サイトカインは、IFN-γおよびIL-6からなる群から選択してもよい。例えば、本明細書に記載の免疫エフェクター細胞をCD19陽性ヒト白血病細胞株Nalm-6細胞と共培養すると、IFN-γおよびIL-6サイトカインの分泌が有意に増加する。
【0104】
特定の実施形態において、本明細書に記載の免疫エフェクター細胞は非溶血性であり、そして血管刺激を伴わない。例えば、in vitroでの溶血試験において、本明細書に記載の免疫エフェクター細胞は、溶血および血液凝集を誘導しない。別の例では、本明細書に記載の免疫エフェクター細胞は、血管刺激を伴わない。
【0105】
特定の実施形態において、本明細書に記載の免疫エフェクター細胞は、in vitroで非発がん性である。
【0106】
特定の実施形態において、本明細書に記載の免疫エフェクター細胞は、in vivoで非発がん性である。
【0107】
特定の実施形態において、本明細書に記載の免疫エフェクター細胞は、腫瘍を効果的に治療することができる。前記腫瘍はCD19陽性腫瘍であってもよい。例えば、本明細書に記載の免疫エフェクター細胞は、CD19陽性腫瘍患者の生存期間を効果的に延長することができる。別の例として、本明細書に記載の免疫エフェクター細胞は、急性リンパ芽球性白血病の成人患者の生存期間を効果的に延長することができる。別の例として、本明細書に記載の免疫エフェクター細胞は、急性リンパ芽球性白血病の小児患者の生存期間を効果的に延長することができる。別の例として、本明細書に記載の免疫エフェクター細胞は、B細胞リンパ腫(非ホジキンリンパ腫など)患者の生存期間を効果的に延長することができる。
【0108】
特定の実施形態において、本明細書に記載の免疫エフェクター細胞は、成人における急性リンパ芽球性白血病を効果的に治療することができる。
【0109】
特定の実施形態において、本明細書に記載の免疫エフェクター細胞は、小児における急性リンパ芽球性白血病を効果的に治療することができる。
【0110】
特定の実施形態において、本明細書に記載の免疫エフェクター細胞は、B細胞リンパ腫(非ホジキンリンパ腫など)を効果的に治療することができる。
【0111】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の免疫エフェクター細胞を含む組成物を提供する。
【0112】
本開示によれば、組成物は、(薬学的に有効である)キャリア、安定剤、賦形剤、希釈剤、可溶化剤、界面活性剤、乳化剤および/または防腐剤の1つ以上の適切な製剤を含んでもよい。組成物の許容される成分は、使用される任意の用量および濃度でレシピエントに対して無毒である。本開示の組成物は、特に限定されないが、液体、および凍結または凍結乾燥組成物を含む。
【0113】
特定の実施形態において、前記組成物は非経口、経皮、管腔内、動脈内、髄腔内、および/または鼻腔内投与用の組成物でもよいし、組織への直接注射による組成物であってもよい。例えば、前記組成物は、注入または注射によって患者または被験者に投与されてもよい。他の実施形態において、前記組成物の投与を、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所または皮内投与などの様々な方法よって行ってもよい。他の実施形態において、前記組成物は、中断なく投与することができる。中断されない(または連続的である)投与は、WO2015/036583に記載されるように、患者の体内への治療薬の流入を計量するために患者によって装着される小型ポンプシステムによって達成されてもよい。
【0114】
本開示によれば、組成物の投与計画は、急速注入剤の投与、時間をかけて複数回に分割した投与、または治療状況の重症度および緊急性に応じて増減可能な投与であってもよい。特定の実施形態において、治療計画は、週に1回、2週に1回、3週に1回、4週に1回、月に1回、3ヶ月に1回、または3~6ヶ月に1回管理されてもよい。特定の実施形態において、投薬計画が静脈内投与を含み、投与量が、0.1×108~3×108のCAR陽性T細胞、例えば、0.15×108~2×108のCAR陽性T細胞、0.5×108~2×108のCAR陽性T細胞、1×108~2×108のCAR陽性T細胞、0.2×108~2×108のCAR陽性T細胞、0.2×108~1×108のCAR陽性T細胞、0.25×108~1×108のCAR陽性T細胞、0.25×108~0.5×108のCAR陽性T細胞、または0.5×108のCAR陽性T細胞、または2×108のCAR陽性T細胞であってもよい。
【0115】
投与量は、適応症によって異なる場合がある。特定の実施形態において、再発および難治性急性リンパ芽球性白血病の成人患者の治療のための免疫エフェクター細胞は、0.25×108~0.5×108のCAR陽性T細胞、または0.5×108のCAR陽性T細胞の投与量で投与されてもよく、例えば、0.3×108~0.5×108、0.4×108~0.5×108、0.25×108~0.4×108、0.3×108~0.4×108、または0.4×108~0.5×108のCAR陽性T細胞の投与量で投与されてもよい。特定の実施形態において、再発および難治性急性リンパ芽球性白血病の成人患者の治療のための免疫エフェクター細胞は、0.25×108、0.26×108、0.27×108、0.28×108、0.29×108、0.3×108、0.31×108、0.32×108、0.33×108、0.34×108、0.35×108、0.36×108、0.37×108、0.38×108、0.39×108、0.4×108、0.41×108、0.42×108、0.43×108、0.44×108、0.45×108、0.46×108、0.47×108、0.48×108、0.49×108、または0.5×108のCAR陽性T細胞の投与量で投与されてもよい。
【0116】
特定の実施形態において、再発および難治性急性リンパ芽球性白血病の小児患者の治療のための免疫エフェクター細胞は、0.25×108~0.5×108のCAR陽性T細胞、または0.5×108のCAR陽性T細胞の投与量で投与されてもよく、例えば、0.3×108~0.5×108、0.4×108~0.5×108、0.25×108~0.4×108、0.3×108~0.4×108、または0.4×108~0.5×108のCAR陽性T細胞の投与量で投与されてもよい。いくつかの実施形態において、再発および難治性急性リンパ芽球性白血病の小児患者の治療のための免疫エフェクター細胞は、0.25×108、0.26×108、0.27×108、0.28×108、0.29×108、0.3×108、0.31×108、0.32×108、0.33×108、0.34×108、0.35×108、0.36×108、0.37×108、0.38×108、0.39×108、0.4×108、0.41×108、0.42×108、0.43×108、0.44×108、0.45×108、0.46×108、0.47×108、0.48×108、0.49×108、または0.5×108のCAR陽性T細胞の投与量で投与されてもよい。
【0117】
他の実施形態において、再発および難治性非ホジキンリンパ腫患者の治療のための免疫エフェクター細胞は、1×108~2×108のCAR陽性T細胞、または2×108のCAR陽性T細胞の投与量で投与されてもよく、例えば、1×108~1.8×108、1×108~1.5×108、1×108~1.3×108、1.3×108~2×108、1.3×108~1.5×108、1.5×108~2×108、1.5×108~1.8×108、または1.8×108~2×108のCAR陽性T細胞の投与量で投与されてもよい。他の実施形態において、再発および難治性ホジキンリンパ腫患者の治療のための免疫エフェクター細胞は、1×108、1.1×108、1.2×108、1.3×108、1.4×108、1.5×108、1.6×108、1.7×108、1.8×108、1.9×108または2.0×108のCAR陽性T細胞の投与量で投与されてもよい。
【0118】
[調製方法および使用]
本開示の別の態様は、本明細書に記載のプラスミドまたはベクターを免疫エフェクター細胞に形質導入する工程を含む免疫エフェクター細胞を調製する方法をさらに提供する。
【0119】
特定の実施形態において、前記免疫エフェクター細胞は、Tリンパ球およびナチュラルキラー細胞からなる群から選択される。
【0120】
本開示の別の態様は、CD19発現に関連する疾病または疾患の治療に有用な医薬の製造におけるキメラ抗原受容体、核酸分子、ベクターおよび/または免疫エフェクター細胞の使用をさらに提供する。前記医薬の投与量は、上記のような免疫エフェクター細胞について定義された用量を援用できる。
【0121】
本開示の別の態様は、さらに、本明細書に記載のキメラ抗原受容体、核酸分子、ベクターおよび/または免疫エフェクター細胞を、それを必要とする被験体に適用する工程を含むCD19発現に関連する疾病または疾患を治療する方法を提供する。本開示によれば、組成物の投与は様々な方法、例えば、静脈内、腫瘍内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所または皮内投与によって行ってもよい。
【0122】
別の態様において、本明細書に記載のキメラ抗原受容体、核酸分子、ベクターおよび/または免疫エフェクター細胞は、CD19発現に関連する疾病または疾患の治療に有用である。
【0123】
本開示によれば、前記医薬は、T細胞免疫療法剤を含んでもよい。
【0124】
本開示によれば、CD19発現に関連する前記疾病または疾患は、非固形腫瘍を含んでもよい。
【0125】
本開示によれば、CD19発現に関連する前記疾病または疾患は、白血病および/またはリンパ腫を含んでもよい。
【0126】
特定の実施態様において、CD19発現に関連する前記疾病または疾患は、成人急性リンパ芽球性白血病(ALL)および/または小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)などの急性リンパ芽球性白血病(ALL)を含んでもよい。
【0127】
他の実施形態において、CD19発現に関連する前記疾病または疾患は、成人慢性リンパ性白血病(CLL)を含んでもよい。他の実施形態において、CD19発現に関連する前記疾病または疾患は、B細胞リンパ腫を含んでもよい。例えば、B細胞リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫を含んでもよい。
【0128】
本開示によれば、前記被験者は、ヒトまたは非ヒト動物を含んでもよい。例えば、前記被験者は、特に限定されないが、ネコ、イヌ、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウサギ、マウス、ラット、またはサルを含んでもよい。
【0129】
いかなる理論にも束縛されることを望まないが、以下の実施例は本開示のキメラ抗原受容体、免疫エフェクター細胞、調製方法、および使用を例示しているに過ぎず、発明の範囲を限定するために使用されない。前記実施例は、ベクターおよびプラスミドを構築する方法、タンパク質をコードする遺伝子をこのようなベクターおよびプラスミドに挿入する方法、またはプラスミドを宿主細胞に導入する方法などの伝統的な方法の詳細な説明を含まない。このような方法は当業者に周知であり、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniais,T.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd edition,Cold spring Harbor Laboratory Pressを含む多くの刊行物に記載されている。
【0130】
本開示において引用される全ての特許、出願、および参考文献はそれぞれの文献が個々に参照のために組み込まれる程度まで、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。参照のために組み込まれるいずれかの資料が本明細書と矛盾するか、または一貫性がない場合、明細書はそのような資料のいずにも優先する。
【0131】
[実施例]
[実施例1]レンチウイルスベクターの構築と調製
本開示に記載のCAR構造を含む断片(そのアミノ酸配列およびヌクレオチド配列をそれぞれ配列番号1および配列番号2に示す)を人工的に合成し、改変空ベクター(製造元:SBI Corporation、カタログ番号:CD500-CD800)に構築した。3つのヘルパープラスミドをパッケージングに用いてレンチウイルスベクターを得て、得られたレンチウイルスベクターを発現ベクターCNCT19と命名した。以下、具体的なステップについて説明する。
【0132】
1.1 プラスミドベクターの構築
本開示では、標的プラスミド(Seq1)、PMD2.G、pMDLg-pRREおよびpRSV-Revを含む4プラスミドシステムを使用した。
【0133】
まず、標的プラスミドSeq1を構築した。空のベクター(製造元:SBI System BioScience、名称:PCDH-EF1-MCS-T2A-copGFP、カタログ番号:CD526A-1)を、2つの制限酵素Nhe I(GCTAGC)およびNot I(GCGGCCGC)で切断し、Nhe IおよびNot I酵素消化配列を両端に含み、配列番号1に示すアミノ酸配列をコードするCAR遺伝子断片に連結し、GFP配列を除去してベクター1を得た。ベクター1を2つの制限酵素Not I(GCGGCCGC)およびSal I(GTCGAC)で切断し、T2A配列を除去した。粘着末端をクレノウフラグメント酵素で平滑化し、溶液Iリガーゼを加えて連結し、ベクター2を得た。PCR法により、アンピシリン耐性(AmpR)遺伝子以外のベクター2の配列を増幅し、合成カナマイシン耐性(KanR)遺伝子を増幅した後、2つの断片をリコンビナーゼで連結し、配列番号2に示すヌクレオチド配列を含む標的プラスミドSeq1を得た。
【0134】
その後、3つのヘルパープラスミドを調製したが、ヘルパープラスミド1はPMD2.G(Biovector Corporationから購入、製品番号:Biovector 12259)、ヘルパープラスミド2はpMDLg-pRRE(Biovector Corporationから購入、製品番号:Biovector 012251)、およびヘルパープラスミド3はpRSV-Rev(Biovector Corporationから購入、製品番号:Biovector 012253)であった。
【0135】
4つのプラスミド、Seq1、PMD2.G、pMDLg-pRREおよびpRSV-Revを、以下の異なる4プラスミド比でパッケージングに使用した:
Seq1:PMD2.G:pMDLg-pRRE:pRSV-Revの比1は、11.8:3.53:6.33:2.3であり、
Seq1:PMD2.G:pMDLg-pRRE:pRSV-Revの比2は、13.8:3.48:5.31:2.54であり、
Seq1:PMD2.G:pMDLg-pRRE:pRSV-Revの比3は、14:4.67:4.67:4.67であり、
Seq1:PMD2.G:pMDLg-pRRE:pRSV-Revの比4は、2:1:1:1であり、
Seq1:PMD2.G:pMDLg-pRRE:pRSV-Revの比5は、7:3:5:5であり、
Seq1:PMD2.G:pMDLg-pRRE:pRSV-Revの比6は、9:3:4:6であり、
比較例におけるSeq1:PsPAX2:PMD2.Gの比は、14:10.5:3.5であった。
【0136】
1.2 レンチウイルスベクターの調製
(1)細胞の回収:凍結保存した293T/17細胞を回収し、回収した細胞を37℃、5%CO2で培養した。
(2)細胞の継代培養:細胞増殖密度がフラスコの底面の85~95%に達するまで、回収した細胞をT175培養フラスコ中で継代培養した。
(3)細胞前処理:細胞を5×106細胞/シャーレで10cm培養シャーレに添加し、37℃、5%CO2で培養した。
(4)パッケージングシステムの調製:2mlのDMEMを採取し、標的プラスミドおよび3つのヘルパープラスミドを特定の比で添加して4プラスミドシステムを形成し、28μlのPEIを添加し、混合物を十分に混合し、室温で15分間放置した。
(5)プラスミドトランスフェクション:細胞増殖密度がシャーレの底部の60~90%に達するまで細胞を前処理および培養し、パッケージングシステムの調製液をトランスフェクションのために培養シャーレに移し、トランスフェクションを37℃、5%CO2で行った。
(6)ウイルスの収集:トランスフェクションの16~18時間後、培地を10%のFBSを含む等量のDMEMで交換し、インキュベーションを24時間継続した後、1回目のウイルス液の収集を行い、次に培地を交換し、10%のFBSを含む等量のDMEMを添加し、さらに24時間インキュベートした後、2回目のウイルス液の収集を行い、37℃、5%CO2でインキュベートした。
(7)ウイルス液体の清澄化:レンチウイルスベクター液体を19℃、3000rpmで15分間遠心分離し、沈殿を捨て、上清を得た。
(8)ウイルスの濃度:上清を0.45μmフィルターで高速遠心管に濾過し、50,000gの高速で4℃で90分間遠心分離し、上清を廃棄し、沈殿物をリンパ球培養培地に溶解した後、後の使用のために-80℃の低温冷蔵庫に保存し、4プラスミドシステムによりパッケージされたレンチウイルスベクターを得て、CNCT19レンチウイルスベクターと命名した。
【0137】
1.3 物理的力価およびトランスフェクション力価の判定
濃縮ウイルス溶液を210μl/チューブで採取し、ELISAを用いて物理的力価を判定し、フローサイトメーターを用いてトランスフェクション力価を検出した。物理的力価は、レンチウイルス粒子の数を示す。前記トランスフェクション力価は、有効レンチウイルス粒子の数を表す。
【0138】
試験結果を表1および表2、ならびに
図1Aおよび
図1Bに示す。表1、
図1Aおよび
図1Bの結果は、11.8:3.53:6.33:2.3、13.8:3.48:5.31:2.54および14:4.67:4.67:4.67の4つのプラスミド(Seq1:PMD2.G:pMDLg-pRRE:pRSV-Rev)の品質比におけるレンチウイルスパッケージングシステムの構成がほぼ同じパッケージング効率をもたらし、すべてが比較例より高いトランスフェクション力価をもたらしたことを示している。表2は、7:3:5:5および9:3:4:6の4つのプラスミド(Seq1:PMD2.G:pMDLg-pRRE:pRSV-Rev)の品質比が比4および比較例の比よりも有意に高いトランスフェクション力価をもたらし、トランスフェクション力価が比4および比較例の比から得られるものの2倍以上に達することを示す。結果は、比1、2および3から生じるトランスフェクション力価が比4、5および6および比較例の比から生じるものよりも高く、比1、2および3から生じるトランスフェクション力価が比4および比較例の比から生じるものの2倍以上だったことを示す。
【0139】
【0140】
【0141】
[実施例2]レンチウイルスに感染したT細胞の調製
感染実験を当業者に公知の従来の方法に従って行った。感染ステップを以下に簡単に説明する。
【0142】
1.T細胞の選別
被験者のアフェレーシス細胞から末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、次にPBMC細胞からT細胞を選別した。
【0143】
2.T細胞の活性化
単離されたT細胞を、完全リンパ球培養培地(Xvivo15培地+5%FBS+100IU/mLのIL-2またはXvivo15培地+5%FBS+20ng/mLのIL-21+10ng/mLのIL-7)と(1~2)×106細胞/mLの最終濃度となるように再懸濁し、5~10μLのCD3/CD28刺激磁気ビーズを添加した。混合物をよく混合し、37℃+5%CO2の培養条件下で少なくとも24時間培養用インキュベーターに入れた。
【0144】
3.T細胞のレンチウイルス
感染活性化した培養T細胞を取り出し、最終濃度8μg/mLのポリブレンを加え、よく混合した。実施例1で得たCNCT19レンチウイルスベクターを、MOI=2でゆっくり添加した。十分に混合した後、混合物を遠心分離機に入れ、1500rpmで1.5時間遠心分離した。その後、37℃+5%CO2の培養条件下、少なくとも24時間培養用インキュベーターに入れた。
【0145】
4.感染T細胞の拡大培養
感染細胞を取り出し、細胞密度をモニターし、それを(0.5~1)×106細胞/mLに保ち、その後の実施例で使用した。得られた感染T細胞をCNCT19細胞(すなわち、本明細書に記載の免疫エフェクター細胞)と命名した。
【0146】
[実施例3]CNCT19細胞の表面上のCAR分子の発現の検出
この実施例の実験ステップは以下の通りである:
(1)CNCT19細胞懸濁液を300gで5分間遠心分離し、上清を廃棄し、鞘液を添加して、生細胞密度が(0.5~1)×107細胞/mLに達するまで再懸濁した。
(2)2本のフローサイトメトリーチューブでそれぞれの試料について採取し、チューブ1およびチューブ2と標識した。チューブ1はブランクコントロールであり、抗体を添加する必要はなく、チューブ2には10μLのAlexa Fluor(商標) 647-ヤギ抗マウスIgG F(ab’)2抗体(製造元:Jackson、カタログ番号:115-605-072)を10倍希釈して添加した。
(3)各チューブに100μLの細胞懸濁液を加え、暗所、室温で15~20分間反応させた。
(4)各チューブに2mLの洗浄用シース液を加え、300gで5分間遠心分離した。
(5)上清を廃棄し、20μLのFITC-CD3(製造元:Tongsheng Shidai、カタログ番号:Z6410047-100T)をチューブ2に添加し、暗所、室温で15~20分間インキュベートした。
(6)各チューブに2mLの洗浄用シース液を加え、300gで5分間遠心分離し、上清を廃棄し、洗浄用に各チューブに更に2mLのシース液を加え、300gで5分間遠心分離した。
(7)上清を廃棄し、各チューブに300μLのシース液を加えて再懸濁した後、フローサイトメトリーにより検出を行った。
【0147】
その結果を
図2Aおよび
図2Bに示す。図面から分かるように、
図2Aはブランクコントロールのチューブを表し、その右上のCD3+CAR+象限は細胞集団を示さない。
図2Bは実験的検出チューブを表す。CART細胞をIgG F(ab’)
2およびCD3抗体で標識したところ、CD3
+CAR+象限において、68.6%のCAR発現率をフローサイトメトリーにより明確に検出することができた。この結果から、本開示のCAR分子がCNCT19細胞の表面上で良好に発現されることが分かる。
【0148】
[実施例4]in vitroでの標的細胞に対するCNCT19細胞の殺傷効果の検出
この実施例の実験ステップは以下の通りである:
1)CD19陽性ヒト白血病細胞株Nalm-6(Shanghai Enzyme Research Bioscience Co.,Ltd.から購入、カタログ番号:CH179)およびCD19陰性ヒト白血病細胞株KG-1a(Shanghai Enzyme Research Bioscience Co.,Ltd.から購入、カタログ番号:CC-Y1305)をそれぞれ腫瘍細胞(すなわち標的細胞)として選択し、CD19CAR-T細胞(すなわち実施例2で得られたCNCT19細胞)および非トランスフェクトT細胞(NTDで示す)をそれぞれエフェクター細胞として選択した。
2)前記標的細胞およびエフェクター細胞を、それぞれ1:2および2:1のエフェクター/標的比で混合し、24ウェルプレートに播種した。各ウェルで共培養した細胞の総数は約1×106/ウェルとし、各条件について3つの並行ウェルを設定した。各ウェルに培養液を1mL補充し、プレートを37℃、5%CO2のインキュベーターに入れて培養し、時間を記録した。
3)共培養の24時間後、各ウェル中の細胞懸濁液を回収し、1.5mLのEPチューブに移し、それぞれ標識した。さらに、遠心分離後、各サンプルチューブからの上清を新たな1.5mLのEPチューブに吸引し、その後のサイトカイン検出のために-20℃で凍結保存した(詳細については実施例6を参照のこと)。
4)腫瘍細胞の種類に応じて、対応する検出量の抗体を各ウェルの混合細胞にそれぞれ添加して標識し、抗体説明書に従って操作を行った。PE-CD10抗体を用いてNalm-6細胞を標識し、Percp-cy5.5-CD45抗体を用いてKG-1a細胞を標識した。
5)フローサイトメトリーを用いて、各サンプル中の異なる標的腫瘍細胞の割合の変化を検出した。
【0149】
その結果を
図3に示す。図面から分かるように、非トランスフェクトT細胞(すなわちNTD)との共培養と比較して、CD19陽性腫瘍細胞Nalm-6とCAR-T細胞(すなわちCNCT19細胞)との共培養は、Nalm-6の残存率を有意に低下させたが、CD19陰性腫瘍細胞KG-1aを種々のエフェクター細胞と共培養した後のKG-1aの残存率に有意差はなかった。具体的には、エフェクター/標的比が1:2の場合、CNCT19細胞とNalm-6細胞との共インキュベーションは(2.8±1.3)%の標的細胞の残存率を導き、これは、非トランスフェクトT細胞とNalm-6細胞との共インキュベーションに起因する標的細胞の残存率(12.1±1.2)%(P<0.01)よりも有意に低かった。同様に、エフェクター/標的比が2:1である場合、CNCT19細胞とNalm-6細胞との共インキュベーションは(1.1±0.1)%の標的細胞の残存率を導き、これは、非トランスフェクトT細胞とNalm-6細胞との共インキュベーションに起因する標的細胞の残存率((7.3±1.2)%(P<0.01))よりも有意に低かった。また、CD19陽性腫瘍細胞に対するCNCT19細胞の殺傷効果は、エフェクター/標的比の増加に伴って増強した。
【0150】
[実施例5]CNCT19細胞の死滅機能のリアルタイムモニタリング
この実施例の実験ステップは以下の通りである:
(1)標的細胞CHO-CD19を取り出し、培養フラスコ内の培養液を吸引廃棄し、培養フラスコを生理食塩液で1回洗浄し、EDTAを含むトリプシン液1mLを加え、37℃のインキュベーター内で2~6分間インキュベートした後、消化を停止した。なお、CHO細胞は、Shanghai Enzyme Research Bioscience Co.,Ltd.よりCC-Y2110のカタログ番号のものを購入した。CD19細胞の分子配列はNCBI由来であり、CD19の分子配列は分子生物学的手法によりCHO細胞に構築し、スクリーニングにより標的細胞CHO-CD19細胞株を得た。
(2)培養フラスコに適量の培養培地を加えて細胞懸濁液から標的細胞を作成し、ピペッティングにより細胞を均一化した。細胞懸濁液の濃度を計数板で計数した後、前記細胞懸濁液を、実験に必要とされる1×105細胞/mLの細胞濃度にした。
(3)50μLの培養培地を、RTCA DPシステムのEプレート16のウェルに添加した。Eプレート16をRTCAステーション上に置いた。前記RTCAシステムは自動的にスキャン(「スキャンプレート」)して、接触が良好であったかどうかをチェックする(「接続OK」が「メッセージ」ページに表示された)ベースライン(バックグラウンド)の検出を開始し、選択したウェルが正常に接触していることを確認した。
(4)Eプレート16を取り出し、100μLの十分に混合された標的細胞懸濁液をウェルに1×104細胞/ウェルで添加した。Eプレート16を、室温で30分間、スーパークリーンベンチに置き、次いで、インキュベーター中のRTCAステーション上に置いた。前記システムが自動的にスキャン(「スキャンプレート」)した後、ステップ2を開始して、細胞増殖曲線をリアルタイムで動的に検出した。
(5)Eプレート16を取り出し、前記標的細胞懸濁液およびCNCT19細胞懸濁液をいくつかのウェルに添加し、前記標的細胞懸濁液および非トランスフェクトT細胞(すなわち、NTD)懸濁液を(コントロールとして)他のウェルに添加した。エフェクター/標的比(すなわち、標的細胞に対するエフェクター細胞の比、すなわち、CNCT19細胞:標的細胞、およびNTD:標的細胞)は1:1であり、標的細胞懸濁液の体積は50μLとした。Eプレート16検出プレートをRTCA DP検出プラットフォーム上に60時間リアルタイムモニタリングのために置き、標的細胞に対するCNCT19細胞の効果を観察した。
【0151】
結果を
図4に示す。図中、線1はNTDコントロール群の曲線を表し、線2はCNCT19治療群の曲線を表す。線1と線2を比較することにより、腫瘍細胞(すなわち、標的細胞)の増殖が時間とともにCNCT19細胞によって阻害されたことが分かる。具体的には、非トランスフェクトT細胞との共インキュベーション後の前記標的細胞は増殖傾向に有意な変化を示さなかった(線1)。一方、CNCT19細胞との共インキュベーション後の標的細胞は増殖減少傾向を有意に示し、それらの数の減少さえ示し始めた(線2)。このことから、CNCT19が標的細胞に対して強力な殺傷能力を有することが分かる。
【0152】
[実施例6]CNCT19細胞と標的細胞との共培養後の分泌サイトカインの検出
この実施例の実験ステップは以下の通りである:
1)実施例4の各ウェルにおける混合培養物からの上清サンプル(すなわち、ステップ3で得られたサンプル)を-20℃の冷蔵庫から取り出し、室温で溶融した、
2)LEGENDplex(商標)キット(製造業者:Biolegned Co.,Ltd.、カタログ番号:740013)を使用して、説明書に従って各サンプルを処理した。
3)各サンプル中の異なるサイトカインのレベルを、フローサイトメトリーによって検出した。
【0153】
その結果を
図5Aおよび5Bに示す。非トランスフェクトT細胞(すなわちNTD)と比較して、CAR-T細胞(すなわちCNCT19細胞)とNalm-6細胞(CD19
+)との共培養は、CAR-T細胞によるサイトカインIFN-γおよびIL-6の分泌を有意に増加させた。具体的には、エフェクター/標的比2:1で標的細胞と24時間共培養した後のCNCT19細胞は標的細胞によって刺激されて(6186.37±861.13)pg/mLの量のINF‐γを分泌したが、これは非トランスフェクトT細胞によって分泌されたINF‐γの量(2096.85±228.16pg/mL、P<0.05)よりも有意に高く、CNCT19細胞によって分泌されたIL-6の量(32.22±1.46pg/mL)は非トランスフェクトT細胞によって分泌された量(12.23±4.37pg/mL、P<0.05)よりも有意に高かった。
【0154】
[実施例7]CNCT19細胞の溶血および刺激の検出
7.1.CNCT19細胞のin vitro溶血試験
この実施例の実験ステップは以下の通りである:
1)合計7本のガラス試験管を使用し、1~7の番号を付け、各試験管に2.5mLの2%のウサギ赤血球懸濁液(ニュージーランドウサギから採取し、品質承認番号:11400500032425として国家食品医薬品監督管理局によって製造された)を添加した。
2)異なる用量(0.5~0.1mL)のCNCT19細胞を、1×107細胞/mL(T細胞の総数に基づく)の濃度で、すでに異なる用量(2.0~2.4mL)の塩化ナトリウム注射薬を含む試験管1~5に添加した。一方、2.5mLの塩化ナトリウム注射薬(ネガティブコントロール)および2.5mLの注射用滅菌水(ポジティブコントロール)を、それぞれ試験管6および試験管7に加えた。
3)各試験管の総容積は5.0mLであった。試験管を37℃±0.5℃のインキュベーターに入れ、3時間インキュベートした。試験管をインキュベーターに入れてから15分後、30分後、45分後、1時間後、2時間後および3時間後に赤血球が溶解または凝集したかどうかについて観察した。
【0155】
その結果を
図6Aおよび
図6Bに示す。
図6Aは3時間振盪する前の各試験管の観察結果を示し、
図6Bは3時間振盪した後の各試験管の観察結果を示す。ネガティブコントロール管(No.6)では、上澄み液が無色透明であり、試験管の底部に赤血球が沈み、振盪後、均一に分散し、溶血も凝集もないと判断された。ポジティブコントロール管(No.7)では、溶液は透明で赤色であり、分離層はなく、試験管の底部に赤血球残留物はなく、完全な溶血があったと判断された。異なる投与量のCNCT19細胞を添加した各試験管を3時間観察すると、各試験管中の上澄み液は無色透明であり、赤血球は試験管の底に沈み、振盪後、均一に分散し、溶血も凝集もなかったと判断された。
【0156】
7.2.CNCT19細胞の静脈内注入による血管刺激性試験
この実施例の実験ステップは以下の通りである:
1)検疫検査に合格し注射部位に異常がなかったニュージーランドウサギ6匹(雄3匹、雌3匹)を選抜した。自己コントロール法を使用し、凍結保存したCAR-T細胞(すなわち、CNCT19細胞)およびネガティブコントロール(塩化ナトリウム注射)を、それぞれ、各動物の右耳および左耳に静脈内注入した。
2)右耳辺縁静脈から注入したCAR-T細胞は1×107細胞/mLであり、1×107細胞/kg(T細胞の総数に基づく)の投与量であった。左耳辺縁静脈から感染させた塩化ナトリウム注射薬を、ネガティブコントロールとして用いた。静脈内投与量は、左右耳縁静脈ともに1mL/kgとした。
3)静脈内投与後、一般観察、注射部位の観察、動物の病理学的検査を行った。
【0157】
その結果を
図7Aおよび
図7Bに示す。
図7AはCAR-T細胞投与後の注射部位の顕微鏡写真(HE染色、10×対物レンズ)、
図7Bは塩化ナトリウム注射後の注射部位の顕微鏡写真(HE染色、10×対物レンズ)である。凍結保存したCAR-T細胞を静脈内注入したところ、ネガティブコントロール側と比較して、動物の全身または局所の症状および病理学的異常は認められなかったことが分かる。
【0158】
[実施例8]CNCT19細胞のin vitroにおける発がん性の実験
この実施例の実験ステップは以下の通りである:
1)2人のドナーからのCAR-T細胞(すなわち、CNCT19細胞)を、それぞれ軟寒天培地中でインキュベートした。2人のドナーは、それぞれドナー1(健康なヒトドナーT細胞、ロット番号:TC20180613015)およびドナー2(健康なヒトドナーT細胞、ロット番号:TC20180613016)であった。また、ネガティブコントロールとしてヒト胚性肺線維芽細胞株MRC-5、ポジティブコントロールとしてヒト子宮頸がん細胞株Helaを設定した。
2)6ウェル培養プレートを実験に使用した。各ウェル中の細胞数は約1×103であり、各群について3つの並行ウェルを設定した。培養プレートをCO2インキュベーターに入れ、3週間観察した。
3)培養プレートを1週間毎に取り出し、クローンの形成の有無を顕微鏡で観察し、写真を撮った。実験は、ポジティブコントロール群において明らかなクローンが形成されるまで停止した。
【0159】
その結果を
図8に示す。ポジティブコントロール細胞(Hela)は培地中でクローンを形成し、クローンの大きさは時間と共に有意に増加したことが分かる。観察23日目において、異なるドナー由来のCAR-T細胞およびネガティブコントロール細胞(MRC-5)はクローン性増殖を示さず、それらは全て死滅し、in vitroでの不死化増殖を特徴としなかった。
【0160】
[実施例9]CNCT19細胞のin vivoにおける腫瘍形成性の実験
この実施例の実験ステップは以下の通りである:
1)BALB/cヌードマウスに、2人のドナーからの凍結保存されたCAR-T細胞(すなわち、CNCT19細胞)および対応する非トランスフェクトT細胞(すなわち、NTD)をそれぞれ皮下接種した。2人のドナーは、ドナー2(健康なヒトドナーT細胞、ロット番号:TC20180613016)およびドナー3(健康なヒトドナーT細胞、ロット番号:TC20180808019)であった。
2)CAR-T細胞の接種は、1×107細胞/マウス(T細胞の総数に基づく)で行った。ネガティブコントロール群にはマウスあたり1×107のヒト胚肺線維芽細胞系MRC-5細胞を接種し、ポジティブコントロール群にはマウスあたり1×106のヒト子宮頸がん細胞系Hela細胞を接種した。
3)体重の変化の有無、結節の発生の有無、結節が誘発されて腫瘍性結節となるか否かを検出するため、連続観察を16週間実施した。その結果を陰性細胞群、陽性細胞群と比較した。
4)観察後、肉眼解剖を行った。各器官を秤量し、器官係数を計算した。接種部位および症状の疑いのある組織または器官を病理組織学的検査に供した。
【0161】
その結果は、CAR-T細胞がin vivoで腫瘍形成性でないことを示す。ネガティブコントロール群(MRC-5細胞を接種)では、接種後9日目までに全例の液体結節が消失した。ポジティブコントロール群(HeLa細胞を接種)では、全例の皮下結節が緩徐に増加した。病理学的検査では、これらの結節は腫瘍組織の増殖に起因し、腫瘍形成率は100%であった。要約すると、この実験は有効であった。CAR-T細胞(ドナー2人に由来)と非トランスフェクトT細胞を接種したグループでは、接種後5日目にすべての液体結節が消滅し、114日目に安楽死が実施される前に再び結節は形成されなかった。病理学的検査では、接種部位や転移部位に腫瘍が形成されていないことが示された。
【0162】
[実施例10]Nalm-6異種移植腫瘍NCGマウスにCNCT19細胞を単回静脈内注射した際の毒性試験
この実施例の実験ステップは以下の通りである:
1)6~8週齢のNCGマウス(その半分は雄)を使用した。投与の3日前に、Nalm-6細胞懸濁液を尾静脈に2.5×106細胞/mLの濃度および10mL/kgの投与量で注射した。
2)スクリーニングした動物を、それらの体重に応じて4つの性別バランスのとれた群(すなわち、第2群~第5群)に無作為に分割した。第2群~第5群は溶媒コントロール群、T細胞コントロール群、CAR-T細胞低用量群およびCAR-T細胞高用量群であり、各群40動物(雄20、雌20)が設定された。非担がんコントロール群(すなわち、第1群)および溶媒コントロール群(すなわち、第2群)の両方に、溶媒コントロール(すなわち、4%(W/V)ヒトアルブミンを含む生理食塩水)を与えた。T細胞コントロール群(すなわち、第3群)には、非トランスフェクトT細胞(すなわち、NTD)を1×109細胞/kg(T細胞の総数に基づく、以下同様)の投与量で与えた。CAR-T細胞低用量群(第4群)に1×108細胞/kgを接種し、CAR-T細胞高用量群(第5群)に1×109細胞/kgを接種した。
3)各動物に対する投与量は25mL/kgとし、投与は単回静脈内注射で行い、投与速度は約1mL/分とした。
4)投与後、投与当日4時間観察を継続した。試験中、一般臨床観察は毎日朝1回、午後1回行った。詳細な臨床観察と体重および摂餌量の測定を週1回実施した。試験中、体温、臨床病理学的指標(血球数および血液生化学的指標)および免疫学的指標(Tリンパ球サブセット、サイトカインおよびC反応性タンパク質)が検出された。
5)第1群~第5群では、10匹の動物/性別/群を2日目に安楽死させ、5匹の動物/性別/群を第15日に安楽死させた。それらの器官を秤量し、肉眼的解剖学的観察を行った。第1群および第5群の動物の主な器官を病理組織学的検査に供した。
【0163】
この実験の結果は単回投与に対するCAR-T細胞(すなわち、CNCT19細胞)の最高耐量が1×109細胞/kgより大きかったことを示す。試験中、CAR-T細胞低用量群およびCAR-T細胞高用量群のいずれの動物も死亡または瀕死は認められなかった。一般状態、詳細な臨床所見ともに異常反応は認められなかった。体重、摂餌量、体温、C反応性蛋白、血液生化学的指標に明らかな異常変動は認められなかった。病理組織学的検査では、CAR-T細胞低用量群およびCAR-T細胞高用量群において、T細胞コントロール群と比較して明らかな異常は認められなかった。
【0164】
[実施例11]CNCT19細胞による動物の治療
11.1.Nalm-6異種移植腫瘍NCGマウスに対するCNCT19細胞の治療効果
この実施例の実験ステップは以下の通りである:
1)6~8週齢の雌NCGマウスを用いた。投与3日前に、5×105のNalm-6細胞を尾静脈に注射したが、Nalm-6細胞を2.5×106細胞/mLの生理食塩水に溶解し、それぞれのマウスに200μLの細胞再懸濁を注射した。
2)それぞれの実験群に、対応するCAR-T細胞(すなわち、CNCT19細胞)、非トランスフェクトT細胞(すなわち、NTD)または細胞保存溶液(すなわち、4%(W/V)ヒトアルブミンを含む生理食塩水)を注射した。計5つの群を以下のように分けた:CAR-T低用量群(T細胞の総数に基づいて5×106細胞/マウスでCNCT19細胞を注射、以下同様)、CAR-T培地用量群(1×107細胞/マウスでCNCT19細胞を注射)、CAR-T高用量群(2×107細胞/マウスでCNCT19細胞を注射)、T細胞コントロール群(2×107細胞/マウスで非トランスフェクトT細胞を注射)、および溶媒コントロール群(200μL/マウスで細胞保存溶液を注射)。マウスあたりの注射容量は200μLであった。
3)体重を測定し、一般状態を週2回観察した。マウスの生存を記録し、生存曲線をプロットした。
【0165】
その結果を
図9に示す。図面から分かるように、いずれの投与量でもCNCT19細胞は生存期間の延長に有意な影響を及ぼし、これらの影響は明らかに投与量依存的である。具体的には、生理食塩液コントロール群の生存期間中央値は24日、NTDコントロール群の生存期間中央値は23日、CNCT19低用量群の生存期間中央値は40日であったのに対し、CNCT19中用量群およびCNCT19高用量群の実験動物はいずれも観察期間終了時まで生存した。生理食塩液群およびNTDコントロール群と比較して、CNCT19の全用量群で白血病動物の生存期間を16日以上延長することができる。
【0166】
11.2.動物におけるCNCT19細胞の分布
この実施例の実験ステップは以下の通りである:
1)6~8週齢のNCGマウス(その半分は雄)を使用した。Nalm-6異種移植腫瘍モデルを、実施例11.1の方法によって確立した。
2)担がん動物および非担がん動物の両方に、5×106細胞/マウス(T細胞の総数に基づく)の投与量でCAR-T細胞(すなわち、CNCT19細胞)の単回尾静脈注射行った。
3)担がん群の動物を、投与後24時間(すなわち、D2)、72時間(すなわち、D4)、168時間(すなわち、D8)、336時間(すなわち、D15)、504時間(すなわち、D22)、および672時間(すなわち、D29)にそれぞれ計画通りに安楽死させた。非担がん群の動物を、投与後それぞれ24時間(すなわち、D2)、168時間(すなわち、D8)、および336時間(すなわち、D15)に計画通りに安楽死させた。動物全血(EDTA抗凝固療法)、脳、脊髄(頸部セグメント)、骨格筋、生殖腺(卵巣、精巣および精巣上体)、膀胱、胃、小腸、腸間膜リンパ節、骨髄、肝臓、腎臓、脾臓、心臓、肺およびその他の組織または体液の順に採取した。
4)血液および種々の組織サンプル中のキメラ抗原受容体(すなわち、CAR)の含有量を、検証されたQ-PCR法を用いて判定した。
【0167】
これらの結果から、5×10
6細胞/マウスの投与量で単回静脈内注射によって担がんマウスおよび非担がんマウスに投与された後、CNCT19細胞が肺、肝臓、心臓、および脾臓のような大きな血流を有する全血および組織中に主に分布したことがわかる(
図10参照)。これらの中で、心臓および全血は最大の分布を有し、曲線下部(gDNA時間におけるCARをコードする核酸分子のコピー数、AUC)は約150,000時間*コピー数/μgであった。肺および脊髄を追跡した結果、AUCは約40,000~60,000時間*コピー数/μgであった。脾臓、肝臓およびその他の組織について、AUCは約20,000時間*コピー数/μg未満であった。
【0168】
また、これらの結果から、担がんマウスの組織中のCNCT19細胞含有量は非担がんマウスに比べてやや高いことが示された(
図11参照)。担がんマウスの全血、心臓および脊髄中のCNCT19細胞濃度は投与24時間後に非担がんマウスの約3倍、6倍および5倍であった。
【0169】
その後、各組織中の薬物含量は徐々に減少し、投与2週間後には基本的に方法論的検出限界以下となった。疾病が進行するにつれて、CD19抗原刺激の増強とともに、それに反応してマウスのCNCT19細胞は増殖し(
図12参照)、脳、肺、肝臓、全血、および脊髄におけるCNCT19細胞の濃度が1200コピー/μgDNA以上に増加し、3500コピー/μgDNAにまで達した。
【0170】
[実施例12]CNCT19細胞による急性リンパ芽球性白血病の治療
12.1.CNCT19細胞の臨床使用
臨床適用プロセスを表1に示し、いくつかの段階における特定の実験ステップを以下に記載する。
【0171】
【0172】
1.リンパ節郭清前処理
リンパ節郭清前処理を、CNCT19細胞懸濁液が計画通りに再注入される前に、-5日目に行う。
【0173】
前処理スキームは以下の通りである:
フルダラビンを30mg/m2で1日1回2~4日間連続投与し、シクロホスファミドを500mg/m2で1日1回2日間連続投与する。なお、前処理化学療法における2つの薬物の使用は、同日より開始すること。
【0174】
2.CNCT19細胞懸濁液の再注入
(1)細胞の調製に成功した後、細胞を<-100℃の条件下で凍結保存し、使用のために同じ温度条件下で病院に輸送し、注入前に実験操作ガイドに従って回収する。
(2)細胞を再注入する方法は、以下の通りである。実験操作ガイドに従って細胞を回収し、細胞懸濁液の再注入は回収後30分以内に完了すること。細胞懸濁液が輸血装置を用いて、静脈を通して被験者への単回注入として注入される。細胞懸濁液の袋が2つ以上存在する場合、それらは各袋の再注入の間の時間間隔なしに、連続的に注入することができる。細胞再注入中は被験者を綿密に観察する必要がある。重篤な有害事象が現れた場合は点滴を中止し、特定の有害事象に応じて対応する治療を実施すること。重篤な有害事象が現れない場合は、来院ワークフローに従って経過観察を実施することができる。
(3)細胞再注入後24時間、被験者を綿密に観察する必要がある。重篤な有害事象が現れた場合は、特定の有害事象に応じて対応する治療を実施すること。重篤な有害事象が現れない場合は、来院ワークフローに従って経過観察を実施することができる。
(4)細胞再注入後、被験者は、14日間、または被験者の状態を研究者が包括的に評価して決定した期間、観察のために入院し続ける必要がある。
【0175】
3.CNCT19細胞懸濁液の管理
CNCT19細胞懸濁液を厳密に管理し、使用するために、特別に割り当てられた人員によるCNCT19細胞懸濁液を管理する厳密なシステムが確立されている。研究用細胞懸濁液を病院部門に運搬するために特定の人員が配置され、研究用細胞懸濁液の受領および登録システムの確立のために特定の人員が配置される。注入後、細胞懸濁液のパッケージングは、薬剤管理要員によって回収され、保存/破壊される。
【0176】
4.再発または難治性急性リンパ芽球性白血病の治療におけるCNCT19細胞懸濁液の臨床的有効性および安全性の結果
この実験は2016年9月から2020年10月まで行った。探究的臨床試験および第I相臨床試験中に、再発または難治性の急性リンパ芽球性白血病(ALL)患者63例(成人患者23例、小児患者40例)がCNCTによる治療を受けた。成人ALLに投与された探究投与量は、0.25×108~0.5×108のCAR陽性T細胞の範囲であった。
【0177】
(a)臨床効果のデータを表4および表5に示す。表4は成人および小児を含む63例の回復状況を示す。表5は成人患者23例の回復状況を示す。再発または難治性の急性リンパ芽球性白血病患者63人のうち、CNCT19細胞懸濁液の注射および再輸注後、患者の大多数(93.7%)が完全寛解に達し、患者の88.9%がMRD陰性であったことが分かる。この結果は、CNCT19細胞懸濁液の注射および再輸注が再発または難治性急性リンパ芽球性白血病の成人患者および小児患者を効果的に治療できることを示している。
【0178】
【0179】
[表5]
(注)表4、表5において、
ORRは全寛解率を表し、
MRD(微小残存病変)陰性は、腫瘍細胞が(最も感度の高い方法によって)検出されないことを意味し、
CRは完全寛解を表し、
Criは血球数の回復が不完全な形態学的完全寛解を意味する。
【0180】
b)予備安全性結果のデータを表6および表7に示す。表6は成人および小児患者を含む63例の安全性結果を示し、表7は成人患者23例の安全性結果を示す。63例のALL患者のうち、グレード3以上のCRSおよび脳症の発生率はそれぞれ19%と20.6%であった。年齢群間の比較では成人群の重症CRSの発症率(39.1%)は小児群の発症率(7.5%)より高く、成人群の重症CRESの発症率(17.4%)は小児群の発症率(22.6%)よりわずかに低いか、またはそれに近いことが明らかになっている。これは、初期の試験ではCNCT19が重量部に応じて投与されており、重量部が大きい成人患者ではより高用量が投与されていたことによると考えられる。例えば、初期の試験で46例に与えられた投与量は0.71×106~4.08×106/kgであり、これは0.16×108~2.36×108のCAR陽性T細胞に相当した。初回用量探究により、CNCT19製品の特性が徐々に明らかになったため、その後の臨床試験ではより安全な用量範囲を選択した。例えば、0.2×108~1.1×108のCAR陽性T細胞(中央値:0.5×108)の投与量を受けた患者17例のうち、グレード≧3CRSおよびCRESの発生率は5.9%(1/17)に低下した。
【0181】
CNCT19細胞懸濁液の注射は重篤なCRSまたはCRES副作用を引き起こす可能性が低く、その全体的な安全性は制御可能であり、したがって、CNCT19は良好な安全性能を有することが分かる。CNCT19の良好な安全性能は製品の品質を改善し、臨床上のリスクを低減する。
【0182】
【0183】
[表7]
注:表6および表7において、
CRSはサイトカイン放出症候群を表し、
CRESはCAR-T細胞関連脳症症候群を表す。
【0184】
[実施例13]CNCT19細胞を用いた再発または難治性の非ホジキンリンパ腫の治療
13.1.CNCT19細胞の臨床使用
臨床適用プロセスを表6に示し、いくつかの段階における特定の実験ステップを以下に記載する。
【0185】
【0186】
1.リンパ節郭清前処理
リンパ節郭清前処理はCNCT19細胞懸濁液が計画通りに再注入される前に、-5日目に行われる。
【0187】
前処理スキームは以下の通りである:
フルダラビンを30mg/m2で1日1回2~4日間連続投与し、シクロホスファミドを500mg/m2で1日1回2日間連続投与する。なお、前処理化学療法における2つの薬物の使用は、同日より開始すること
【0188】
2.CNCT19細胞懸濁液の再注入
(1)細胞の調製に成功した後、細胞を<-100℃の条件下で凍結保存し、使用のために同じ温度条件下で病院に輸送し、注入前に実験操作ガイドに従って回収する。
(2)細胞を再注入する方法は以下の通りである。実験操作ガイドに従って細胞を回収し、細胞懸濁液の再注入は、回収後30分以内に完了すること。細胞懸濁液は、輸血装置を用いて静脈を通して被験者への単回注入として注入される。細胞懸濁液の袋が2つ以上存在する場合、それらは各袋の再注入の間の時間間隔なしに、連続的に注入することができる。細胞再注入中は、被験者を綿密に観察する必要がある。重篤な有害事象が現れた場合は、点滴を中止し、特定の有害事象に応じて対応する治療を実施すること。重篤な有害事象が現れない場合は来院ワークフローに従って経過観察を実施することができる。
(3)細胞再注入後24時間、被験者を綿密に観察する必要がある。重篤な有害事象が現れた場合は、特定の有害事象に応じて対応する治療を実施する。重篤な有害事象が現れない場合は、来院ワークフローに従って経過観察を実施することができる。
(4)細胞再注入後、被験者は、14日間、または被験者の状態を研究者が包括的に評価して決定した期間、観察のために入院し続ける必要がある。
【0189】
3.CNCT19細胞懸濁液の管理
CNCT19細胞懸濁液を厳密に管理し、使用するために、特別に割り当てられた人員によるCNCT19細胞懸濁液を管理する厳密なシステムが確立されている。研究用細胞懸濁液を病院部門に運搬するために特定の人員が配置され、研究用細胞懸濁液の受領および登録システムの確立のために特定の人員が配置される。
【0190】
注入後、細胞懸濁液のパッケージングは、薬剤管理要員によって回収され、保存/破壊される。
【0191】
4.再発または難治性の非ホジキンリンパ腫の治療におけるCNCT19細胞懸濁液の臨床的有効性および安全性の結果
この実験は2016年9月から2020年10月まで行った。探究的臨床試験および第I相臨床試験中に、再発または難治性の非ホジキンリンパ腫(NHL)患者50例にCNCT19細胞懸濁液を投与した。NHL(成人のみ)の探究投与量は、1×108~2×108のCAR陽性T細胞の範囲であった。
【0192】
(a)臨床効果のデータを表9に示す。表9は50人の患者の回復を示す。再発または難治性の非ホジキンリンパ腫患者50人のうち、CNCT19細胞懸濁液の注射および再輸注後、患者の約80%が完全寛解または部分寛解にあり、この場合、完全寛解の割合は54%(27例)、部分寛解の割合は24%(12例)であったことが分かる。これは、CNCT19細胞懸濁液が再発性または難治性非ホジキンリンパ腫患者を効果的に治療できることを示している。
【0193】
[表9]
注:表9において、
ORRは全寛解率を表し、
CRは完全寛解を表し、
PRは部分寛解を表す。
【0194】
b)予備安全性結果のデータを表10に示す。表10は、50人の患者についての安全性の結果を示す。CNCT19細胞懸濁液の注射は重篤なCRSまたはCRES副作用を引き起こす確率が低く、グレード3以上のCRSを引き起こす確率は10%未満で、グレード3以上のCRESを引き起こす確率は0%であり、グレード3以上のCRESを引き起こす確率は6%であることが分かる。したがって、CNCT19は良好な安全性能を有する。
【0195】
[表10]
注:表10において、
CRSはサイトカイン放出症候群を表し、
CRESはCAR-T細胞関連脳症症候群を表す。
【0196】
前述の詳細な説明は、説明および実施例として提供されるが、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本開示で列挙された実施形態に対する様々な変更は当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲およびその同等の範囲内に保持される。
【配列表】